特開2015-110761(P2015-110761A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-110761(P2015-110761A)
(43)【公開日】2015年6月18日
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/00 20060101AFI20150522BHJP
   C09J 123/06 20060101ALI20150522BHJP
   C09J 113/02 20060101ALI20150522BHJP
【FI】
   C09J123/00
   C09J123/06
   C09J113/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-222307(P2014-222307)
(22)【出願日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-228308(P2013-228308)
(32)【優先日】2013年11月1日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】森 文三
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040CA031
4J040DA001
4J040DA021
4J040GA07
4J040HA191
4J040JA03
4J040JB01
4J040KA03
4J040LA03
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB02
4J040PB05
4J040PB08
(57)【要約】
【課題】組成物を調製する際の配合性に優れる接着剤組成物であり、特に積層体を製造する際に使用された際に、接着用フィルムを挟み込む工程やホットメルト接着剤等を散布もしくは塗布する工程を省略することができ、かつ通気性を維持したまま剥離強度に優れる積層体を得ることができる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 ポリオレフィン系パウダー100重量部に対して、合成ゴムラテックス5〜100重量部(固形分換算)を含有し、該ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径が150μmを超えることを特徴とする接着剤組成物。好ましくは、合成ゴムラテックスとしてカルボキシ変性された合成ゴムラテックスを使用する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系パウダー100重量部に対して、合成ゴムラテックス5〜100重量部(固形分換算)を含有し、該ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径が150μmを超えることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径が、150μmを超え、800μm以下であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項3】
合成ゴムラテックスが、カルボキシ変性された合成ゴムラテックスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物
【請求項4】
合成ゴムラテックスが、カルボキシ変性されたジエン系共重合体ラテックスであることを特徴とする請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
ポリオレフィン系パウダーが、メタロセン中・高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
積層体を製造する際に、基材同士を貼りあわせる面に塗工して用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関する。詳しくは、調製する際の配合性に優れる接着剤組成物であり、特に積層体を製造する際に、接着用フィルムやホットメルト接着剤等を塗布する加工工程を省略することができるにも関わらず、剥離強度に優れる積層体を得ることができる接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用内装材や建材などに使用されている積層体は、外観を持たせる層と、機能を持つ層などとの二層以上の積層体である。例えば、車両本体のフロアーカーペットには、外部からの騒音を低減させるため、表面側にパイルが稙設されたタフテッドカーペット生地やニードルバンチカーペットと、不織布吸音層とを一体化させた積層体が使用されている。また、例えば、オプションマット等の車両用内装材として、表皮材と、クッション性を持つ基材シートとを加熱接着した積層体が使用されている。
【0003】
従来、積層体を得るためには、熱可塑性の接着フィルムを介して、表皮材であるカーペット生地と不織布等の基材を一体化していたが、その場合には、不織布の特徴である通気性が阻害され、またそれが原因となって吸音効果が十分に発揮できないなどの不具合があった。そこで、例えば特許文献1では、接着フィルムの代わりに、熱可塑性樹脂パウダーを散布して加熱溶融することで、通気性のある接着樹脂層を設けることができることが開示されている。また、例えば、特許文献2や3では、ホットメルト接着剤の粉末を、アルカリ増粘タイプのアクリル系共重合体エマルジョンや微架橋型のポリアクリル酸等の増粘剤を使用して分散させ、その分散液をスプレー塗布後乾燥することで、メッシュロール塗工に比べてホットメルト接着剤を歩留りよく基材表面に点状に散在させたバッキング材を形成させることができ、通気性を阻害せずにかつ十分な接着強度が得られることが記載されている。
【0004】
しかし、上述の方法では、表皮材として用いられるタフテッドカーペットやニードルパンチカーペットに対して必要とされる抜糸強度や耐摩耗性、寸法安定性などの性能を付与するために接着剤組成物により裏打ち加工がまず必要であり、さらに、その表皮材の裏側もしくは基材の表面に、熱可塑性樹脂パウダーを散布する、もしくはホットメルト接着剤分散液をスプレー塗布するといった加工工程を経て、加熱接着することで積層体が得られている。また、接着剤層が点状に存在するため、積層体の通気性は保たれているものの、さらなる剥離強度の改善が難しいといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−219989号公報
【0006】
【特許文献2】特開2000−309772号公報
【0007】
【特許文献3】特開2000−319615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は前述の諸事情に鑑み現状の問題点を解決すべく、ポリオレフィン系パウダーと合成ゴムラテックスを含有することを特徴とする水性分散体で、表皮材として必要な物性を満足させ、かつ、積層体における表皮材と裏打ち材との剥離強度が良好な接着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特定の粒子径を持つポリオレフィン系パウダーと合成ゴムラテックスを特定の割合で含有することを特徴とする水性分散体の接着剤組成物であって、接着剤組成物調製時の配合性に優れ、表皮材として求められる物性を満足させ、同時に積層体を製造する際に、接着用フィルムやホットメルト接着剤等による加工工程を省略することができ、かつ表皮材と裏打ち材との剥離強度に優れる積層体を得ることができる接着剤組成物を提供する。
【0010】
さらには、特定の合成ゴムラテックス、または特定のポリオレフィン系パウダーを使用することで、さらに上述する効果に優れる接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接着剤組成物は、接着剤組成物調製時の配合性に優れ、かつ該組成物を表皮材の加工に使用することで、表皮材として求められる物性を満足させ、同時に表皮材と基材との積層体における剥離強度を発揮できる。そのため、表皮材と基材の間に接着用フィルムを挟み込む工程、もしくは、ホットメルト接着剤等を散布もしくは塗布する工程を省略することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリオレフィン系パウダーとしては、例えば、ポリプロピレンパウダー、ポリエチレンパウダーなどが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上使用することができる。中でも、ポリエチレンパウダーが好ましい。また、剥離強度の観点から、中・高密度のポリエチレンのパウダーであることが好ましく、さらに分子量分布の狭いメタロセン中・高密度ポリエチレンのパウダーであることが、最も好ましい。
ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径は150μmを超えることが必要である。150μm以下であると、表皮材に塗布した際の歩留まりが悪く、積層体における剥離強度が劣る。 なお、接着剤組成物の配合性及び基材への塗布のしやすさの観点から、800μm以下が好ましい。より好ましくは、700μm以下、さらに好ましくは600μm以下である。
【0013】
本発明における合成ゴムラテックスとしては、例えば、ブタジエン・スチレン系共重合体ラテックス、ブタジエン・アクリロニトリル系共重合体ラテックス、ブタジエン・メチルメタクリレート系共重合体ラテックス、ブタジエン・スチレン・ビニルピリジン系共重合体ラテックスなどのジエン系共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、アクリロニトリル・スチレン共重合体ラテックス、及びカルボキシル基やグリシジル基等の官能基で変性した上述の共重合体ラテックスが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上使用することができる。中でも、カルボキシ変性された合成ゴムラテックスが好ましい。
【0014】
カルボキシ変性された合成ゴムラテックスを得るためには、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を使用する。エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。カルボキシ変性された合成ゴムラテックスを構成する単量体100重量部とした場合に、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が、0.1〜10重量部、エチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な単量体が90〜99.9重量部の範囲であることが好ましい。さらには、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.5〜7.5重量部、エチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な単量体が92.5〜99.5重量部の範囲であることがより好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.1重量部を下回ると、接着剤組成物の配合性が低下する傾向があり、10重量部を超えると共重合体ラテックスの粘度が高くなる傾向になり、取扱いづらくなることから好ましくない。
【0015】
上記エチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な単量体としては、共役ジエン系単量体、芳香族ビニル系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体など公知のものが挙げられる。これらの単量体は得られる接着剤組成物の性能を阻害するものでない限り、種類、使用量に特に制限はないが、合成ゴムラテックスを構成する単量体100重量部とした場合に、共役ジエン系単量体が20〜60重量部、より好ましくは30〜50重量部の範囲にあることが、積層体における剥離強度と風合いの観点から好ましい。
【0016】
これらの合成ゴムラテックスのガラス転移点は−40〜140℃の範囲であることが好ましく、さらには−30〜130℃の範囲であることがより好ましい。剥離強度の観点からは、より高いガラス転移点であることが好ましい。得られる共重合体のガラス転移点は、例えばFoxの式など公知の方法により理論的に計算することが可能であり、構成する単量体の組成あるいは単量体を重合系に加える公知の方法により適宜調整できる。
【0017】
また、合成ゴムラテックスとして、(A)ガラス転移温度が90℃以上140℃以下である合成ゴムラテックスと、(B)ガラス転移温度が70℃以下である合成ゴムラテックスを含有することで、熱成型時の接着剤組成物の相転移連続層の良好な形成性を付与することができ、優れた熱成型性、保型性、剛性を発揮できるとともに、繊維の固着力にも優れる接着剤組成物を得ることが可能となる。さらに、(A)/(B)の比率が、40/60〜80/20(重量比)とすることで、さらにその効果を高めることが可能となる。
【0018】
本発明の接着剤組成物に使用する合成ゴムラテックスは、各単量体を乳化重合することによって得られる。乳化重合における各種成分の添加方法については特に制限するものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法の何れでも採用することができる。また重合方法としても、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることができる。
更に、乳化重合の際には、常用の乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、炭化水素系溶剤、電解質、重合促進剤、キレート剤などを使用することができる。
【0019】
合成ゴムラテックスを乳化重合する際に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体などの非イオン性界面活性剤、ベタイン型などの両性界面活性剤を1種又は2種以上併用して使用することができる。
【0020】
合成ゴムラテックスの重合時に使用する連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、α−メチルスチレンダイマー、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0021】
合成ゴムラテックスの重合時に使用する重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、レドックス系重合開始剤、過酸化ベンゾイル等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に水溶性重合開始剤の使用が好ましい。
【0022】
また、合成ゴムラテックスの重合時に際して、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素系溶剤を使用しても良い。
【0023】
本発明の接着剤組成物は、ポリオレフィン系パウダー100重量部に対して合成ゴムラテックスを5〜100重量部(固形分換算)含有することが必要である。5重量部を下回ると接着剤組成物の配合時における配合性が劣る。100重量部を超えると積層体における剥離強度が劣る。
【0024】
本発明の接着剤組成物には、他にポリオレフィン系パウダーの配合時の分散状態を調整する為、乳化剤、分散剤などを配合することも可能である。これらは種類、使用量ともに特に限定されず、接着剤の性能を阻害しない範囲で適宜適量使用することが出来る。
【0025】
また、本発明の接着剤組成物には、充填剤として、炭酸カルシウム、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイトなどの無機充填剤を1種または2種以上使用することができる。充填剤の使用量は、ポリオレフィン系パウダー100重量部に対して300重量部以下が好ましい。300重量部を超えると抜糸強度及び耐水性が低下する傾向がある。
【0026】
本発明の接着剤組成物には、その他の添加剤として老化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、防腐剤、抗菌剤、消臭剤、pH調整剤、増粘剤、浸透剤、起泡剤、消泡剤、着色顔料、香料など公知の添加剤を配合することも可能である。また、ブリスター防止の機能を有しているポリオルガノシロキサンや澱粉などを併用しても良い。これらは種類、使用量ともに特に限定されず、接着剤としての性能を阻害しない範囲で適宜適量使用することが出来る。
【0027】
本発明の接着剤組成物を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールコート法、発泡ダイレクトコート法、スプレー法などが挙げられる。塗布後の乾燥については、加熱処理して乾燥する方法が好ましいが、加熱温度は100〜220℃が好ましく、より好ましくは120〜210℃である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。また実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。その評価結果は、表−1から表−3に示した。
【0029】
ガラス転移温度
合成ゴムラテックスを、ガラス板に0.5g程度塗り、70℃で4時間乾燥してフィルムを作成した。乾燥後のフィルムをDSC試験用のアルミニウムパンにセットし、再度加熱によりサンプルを均一化し、その後、測定温度を−100〜150℃まで速度10℃/分で昇温して、相変化の吸熱の開始点を読み取って合成ゴムラテックスのガラス転移温度(℃)とした。
【0030】
合成ゴムラテックスA、Bの作製
耐圧性の重合反応機に、純水100部、過硫酸カリウム0.6部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.5部を仕込み、十分攪拌した後、表―1に示す各単量体とt−ドデシルメルカプタン0.2部、シクロヘキセン2部を加えて70℃にて重合を開始し、最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた合成ゴムラテックスをアンモニアでpH7.5〜8.5に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、合成ゴムラテックスA、Bを得た。
【0031】
合成ゴムラテックスCの作製
耐圧性の重合反応機に、純水80部、過硫酸カリウム1.2部、アルキルスルホン酸ナトリウム1.5部、表−1に示す各単量体の混合物100重量部のうち8重量部と、t−ドデシルメルカプタン0.25部を加えて、70℃にて重合を開始した。残りの単量体混合物92重量部について、15時間かけて連続添加し、最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた合成ゴムラテックスを水酸化ナトリウムでpH7.5〜8.5に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、その後100メッシュのステンレス製金網にて凝集物等を除去し、合成ゴムラテックスCを得た。
【0032】
合成ゴムラテックスDの作製
耐圧性の重合反応機に、純水100部、過硫酸カリウム0.2部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部を仕込み、十分攪拌した後、表―1に示す各単量体の混合物100重量部の混合物のうち5重量部とt−ドデシルメルカプタン0.1部を加えて70℃にて重合を開始した。重合開始1時間後から、残りの単量体混合物とt−ドデシルメルカプタン0.7部を、9時間かけて連続添加した。最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた合成ゴムラテックスを水酸化ナトリウムでpH7.5〜8.5に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、その後100メッシュのステンレス製金網にて凝集物等を除去し、合成ゴムラテックスDを得た。
【0033】
合成ゴムラテックスEの作製
耐圧性の重合反応機に、純水90部、過硫酸カリウム1.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部を仕込み、十分攪拌した後、表―1に示す各単量体とt−ドデシルメルカプタン1.0部、シクロヘキセン4部を加えて70℃にて重合を開始し、最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた合成ゴムラテックスを水酸化ナトリウムでpH7.5〜8.5に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、その後100メッシュのステンレス製金網にて凝集物等を除去し、合成ゴムラテックスEを得た。
なお、合成ゴムラテックスFは、上記で得られた合成ゴムラテックスDと合成ゴムラテックスEを、固形分比で55/45にて混合したものを用いた。
【0034】
【表-1】
【0035】
ポリエチレンパウダー
P1:中心粒子径 200μm、メタロセン中・高密度ポリエチレン、融点123℃
P2:中心粒子径 200μm、メタロセン中・高密度ポリエチレン、融点124℃
P3:中心粒子径 300μm、低密度ポリエチレン、融点107℃
P4:中心粒子径 20μm、低密度ポリエチレン、融点106℃
【0036】
接着剤組成物の作製
表−2及び表−3に示した配合処方に従って、各成分を配合し、増粘剤及び水を用いて、固形分50重量%、粘度5000±1000mPa・sに調整し、本発明の組成物1〜17を作製した。
【0037】
接着剤組成物の配合性の評価
上述の方法にて接着剤組成物を配合した際に、配合物の分散状態を目視にて観察し、配合性について下記の通り評価した。
◎:分散していて、配合物の表面もなめらかであった。
○:分散しているが、配合物の表面に、少し粒粒感があった。
△:配合物の表面に粒粒感があるが、後の塗布工程において問題なく塗布できた。
×:継粉が発生し、分散していない。
【0038】
積層体の作製
得られた組成物1〜17を、ポリエステル製不織布(350g/m)の裏面に、発泡ダイレクト塗工(5倍発泡)により、200g/m(固形分)の塗布量になるよう塗布した後、180℃の熱風で15分乾燥させた。該不織布の接着剤塗布面と、未塗布の不織布とを重ね合わせて、180℃に予備加熱しておいた金属板に挟み、180℃、2kg/mにて10分間、加圧加熱接着を行った。得られた各積層体を1インチ幅に切り出し、剥離試験に供した。なお、組成物15については、分散性が悪く、うまく塗布できなかったため、積層体の作製は断念した。
【0039】
剥離強度の評価
得られた積層体1〜17の剥離強度について、サンプル幅を1インチにした他は、JIS L 1021−9のB法に準じて測定した。
【0040】
【表-2】
【0041】
【表-3】
【0042】
表−2に示すとおり、本願発明である実施例1〜11に示す接着剤組成物は、いずれも接着剤組成物の配合性及び積層体の剥離強度のバランスに優れていた。
【0043】
表−3に示すとおり、比較例12、13、16はいずれもポリオレフィン系パウダーを使用しておらず、比較例14は合成ゴムラテックスの配合量が多く、本発明範囲外であることから、配合性は良好であるものの、積層体の剥離強度が大きく劣っていた。また、比較例15は合成ゴムラテックスを配合しておらず、本発明範囲外であることから、組成物の配合性が大きく劣り、塗布できず積層体を得ることができなかった。比較例17は、ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径が本発明範囲外であり、配合性は良好であるものの、積層体の剥離強度が大きく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上記のとおり、本発明の接着剤組成物を、例えば表皮材の裏面もしくは基材の表面といった、積層体を構成する基材に塗布した後、重ね合わせて加熱接着することで、剥離強度の良好な積層体を得ることが可能である。従って、自動車用内装材や建材に使用される積層体を製造する際、表皮材としての物性を満足しつつ、従来の接着フィルム表皮材と基材の間に接着用フィルムを挟み込む工程、もしくは、ホットメルト接着剤等を散布もしくは塗布する加工工程を省略することが可能となり、生産性の改善が期待できる。また、加熱接着と同時に成形加工することも可能であることから、不織布同士の積層体にとらわれず、例えば樹脂の成形体と表皮材との積層体の成形加工など、様々な積層体に広く応用することができ、工業的に非常に有用である。