(54)【発明の名称】アルミニウム材の表面にニッケル層を形成する方法、その形成方法を用いた半導体ウエハのアルミニウム電極表面へのニッケル層の形成方法及びその形成方法を用いて得られる半導体ウエハ基板
【解決手段】この目的を達成するため、アルミニウム材の表面に無電解ストライクめっき法を用いてニッケルストライクめっき層を形成し、次いで、当該アルミニウム材の表面に無電解めっき法を用いて無電解ニッケルめっき層又は無電解ニッケル−リン合金めっき層若しくは無電解ニッケル−銅−リン合金めっき層を形成する方法を採用する。また、本件発明は、半導体ウエハのアルミニウム電極の表面へのニッケル層の形成に応用することができる。
請求項3に記載の半導体ウエハ基板の製造方法を用いて、当該半導体ウエハの絶縁層の表面にニッケル層又はニッケル−リン合金層若しくはニッケル−銅−リン合金層からなる導体回路を備えることを特徴とする半導体ウエハ基板。
前記ニッケル層又はニッケル−リン合金層若しくはニッケル−銅−リン合金層の表面に、無電解めっき法により形成されたパラジウム層を備える請求項4に記載の半導体ウエハ基板。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本件発明に係る「アルミニウム材表面へのニッケル層の形成方法」と「その形成方法を用いた半導体ウエハのアルミニウム電極表面へのニッケル層の形成方法」と「その形成方法を用いて得られる半導体ウエハ基板の製造方法」及び「その半導体ウエハ基板の製造方法を用いて得られる半導体ウエハ基板」の好ましい実施の形態を説明する。
【0022】
<本件発明に係るアルミニウム材表面へのニッケル層の形成方法の形態>
まず、本件発明に係るアルミニウム材表面へのニッケル層の形成方法について説明する。本件発明に係るアルミニウム材表面へのニッケル層の形成方法は、アルミニウム材の表面に無電解ストライクめっき法を用いてニッケルストライクめっき層を形成し、次いで、当該アルミニウム材の表面に無電解めっき法を用いて無電解ニッケルめっき層、又は、無電解ニッケル−リン合金めっき層、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金めっき層を形成することを特徴としたものである。本件発明においてアルミニウム材表面に形成されるニッケル層とは、アルミニウム材の表面に形成されたニッケルストライクめっき層と、当該アルミニウム材の表面に無電解めっき法により形成された無電解ニッケルめっき層又は無電解ニッケル−リン合金めっき層、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金めっき層とから構成されるものである。従って、本件発明において、アルミニウム材表面に形成されたニッケル層とは、ニッケルストライクめっき層と無電解ニッケルめっき層との組合せのみならず、ニッケルストライクめっき層と、無電解ニッケル−リン合金めっき層や無電解ニッケル−銅−リン合金めっき層などの無電解ニッケル合金めっき層との組合せも含むものである。以下、当該アルミニウム材の表面にニッケル層を備えるものについては、同様とする。
【0023】
本件発明に係るアルミニウム材表面へのニッケル層の形成方法では、アルミニウム材の表面近傍のアルミニウムが、無電解ストライクめっき法によって、ニッケルと置換して、当該アルミニウム材の表面にニッケルが析出し、ニッケルストライクめっき層を形成する。その後に、無電解ニッケルめっき浴、又は、無電解ニッケル−リンめっき浴、若しくは、無電解ニッケル−銅−リンめっき浴中に当該アルミニウム材を浸漬することにより、当該アルミニウム材の表面に形成されたニッケルストライクめっき層を核として本めっきであるニッケルめっき層、又は、ニッケル−リン合金めっき層、若しくは、ニッケル−銅−リン合金めっき層を無電解ニッケルめっき法によりアルミニウム材の表面に形成する。
【0024】
本件発明において、アルミニウム材の表面に形成されたニッケル層は、アルミニウム材の表面に無電解ストライクめっき法により形成されたニッケルストライクめっき層を核として析出形成されるものであるので、アルミニウム材との密着性に優れ、均一な厚さの層を形成することができる。
【0025】
<本件発明に係る半導体ウエハのアルミニウム電極表面へのニッケル層の形成方法の形態>
次に、上述した本件発明のアルミニウム材の表面にニッケル層を形成する方法の代表的な利用形態として、半導体ウエハ上のアルミニウム電極の表面にニッケル層を形成する方法について述べる。本件発明に係るニッケル層の形成方法は、半導体ウエハのアルミニウム電極の表面に無電解ストライクめっき法を用いてニッケルストライクめっき層を形成し、次いで、当該アルミニウム電極の表面に無電解めっき法を用いて無電解ニッケルめっき層、又は、ニッケルとリンの合金めっき層、若しくは、ニッケルと銅とリンの合金めっき層を形成することを特徴としたものである。
【0026】
従来では、ストライクめっき法ではなく、亜鉛置換法を用いていたため、アルミニウム電極の表面が大量に苛性ソーダが含まれた溶液中に曝されていた。ゆえに、従来では処理の過程において、アルミニウム電極の表面が0.3μm〜0.5μm程度エッチングされることとなり、当該アルミニウム電極表面へのダメージ発生を避けることができなかった。これに対し、本件発明では、無電解ストライクめっき法を採用しているため、アルミニウム電極表面のエッチング量は、0.2μm以内に抑えることができ、従来と比べて、アルミニウム電極表面へのダメージを抑制できる点で有利である。
【0027】
また、本件発明に係るニッケル層の形成方法では、半導体ウエハ上のアルミニウム電極の表面近傍のアルミニウムが、無電解ストライクめっき法によって、ニッケルと置換して、当該アルミニウム電極の表面にニッケルが析出しニッケルストライク層を形成する。その後に、無電解ニッケルめっき浴、又は、無電解ニッケル−リンめっき浴、若しくは、無電解ニッケル−銅−リンめっき浴中に当該アルミニウム電極を浸漬することにより、当該アルミニウム電極の表面に形成されたニッケルストライクめっき層を核として本めっきであるニッケルめっき層、又は、ニッケルとリンの合金めっき層、若しくは、ニッケルと銅とリンの合金めっき層を無電解ニッケルめっき法によりアルミニウム電極の表面に形成する。
【0028】
本件発明において、アルミニウム電極の表面に形成されたニッケル層は、アルミニウム電極の表面に無電解ストライクめっき法により形成されたニッケルストライクめっき層を核として析出形成されるものであるので、アルミニウム電極との密着性に優れ、均一な膜厚を実現することが可能となる。
【0029】
また、上述の無電解ストライクめっき法によるニッケルストライクめっき層の形成方法では、従来のように強アルカリ性のジンケート液を用いないため、半導体ウエハの絶縁層の表面が損傷することなく、UVによりガラスマスクを用いて絶縁層をパターン改質したところのみにパラジウム触媒を浸透させて、アルミニウム電極の表面及びそのパラジウムが浸透した回路形状の上に、無電解ニッケルめっき層、又は、無電解ニッケル−リン合金めっき層、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金めっき層を形成することが可能となる。
【0030】
ここで、本件発明に係る無電解ニッケルめっき層の形成方法において、無電解ストライクめっき法によって、アルミニウム電極の表面に形成されるニッケルストライクめっき層は、めっき厚が0.2μm〜0.5μmであることが好ましい。当該ニッケルストライクめっき層のめっき厚が0.5μmを超えるような条件で無電解ストライクめっき法によるめっき処理を行った場合、当該アルミニウム電極の表面の損傷が著しくなり、その後に行われる無電解ニッケルめっき法による無電解ニッケルめっき層の膜厚を均一に形成することが困難となるからである。一方、当該ニッケルストライクめっき層のめっき厚が0.1μmを下回る場合には、当該ニッケルストライクめっき層がニッケルめっき層の析出形成の際に十分に核として機能することが困難となり、安定した密着性を備えたニッケルめっき層の形成が困難となるからである。
【0031】
また、本件発明に係るニッケル層の形成方法において、無電解ニッケルめっき法によってアルミニウム電極の表面に形成される無電解ニッケルめっき層、又は、無電解ニッケル−リン合金めっき層、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金めっき層は、めっき厚が2μm〜15μmであることが好ましい。当該無電解ニッケルめっき層等のめっき厚が15μmを超える場合には、半導体上の配線として使用するために隣接する配線と十分なスペースを確保することができなくなるためである。一方、当該無電解ニッケルめっき層等のめっき厚が2μmを下回る場合には、めっき膜抵抗が高いため十分な通電が得られないためである。
【0032】
以下に、本件発明のニッケル層の形成方法の工程について
図1及び
図2を参照して各工程毎に分けて説明する。なお、
図2において示す半導体ウエハの層構成は、その層構成の概念を模式的に示したものである。従って、当該
図2は、各層の積層状態を把握できるように記載したものであって、各層の厚さに関しては、現実の製品の厚さを反映させていない。
【0033】
本件発明のニッケル層の形成方法を採用することができる半導体ウエハは、例えば、
図2の(a)に示すように、当該半導体ウエハ10上に、下地絶縁層11を介して半導体素子の各領域と接続すると共に入出力端子用電極となるアルミニウム電極12が形成されている。当該
図2では、構成の説明を容易とするため、アルミニウム電極12を一つのみ形成した状態を示している。実際には、一つの半導体チップに対し、信号用電極、接地用電極、或いは、電源用電極等が複数形成されている。当該アルミニウム電極12が形成された下地絶縁層11の表面には、ポリイミドやポリジメチルシロキサンなどの絶縁層構成材料からなる絶縁層13が形成されている。そして、この絶縁層13には、選択的なエッチング処理により、アルミニウム電極12に無電解ニッケルめっき層18を形成するための開口部15が形成されている。なお、この段階では、アルミニウム電極12の表面には薄い自然酸化膜16が形成されている。
【0034】
<ニッケル層の形成工程>
中性脱脂工程:
ステップS1として、中性脱脂工程を行う。当該中性脱脂工程では、アセトンやエタノール、中性洗剤等を用いて、アルミニウム電極12表面の中性脱脂処理を行う。当該中性脱脂処理によって、アルミニウム電極12の表面に付着した油分等を除去処理することができる。当該中性脱脂工程の終了後は、水洗処理を行い、次の酸浸漬工程に移行する。
【0035】
酸浸漬工程:
ステップS2としての酸浸漬工程では、硝酸や、リン酸等の酸性溶液を用いて、アルミニウム電極12が設けられた半導体ウエハ10の酸浸漬処理を行う。当該酸浸漬処理により、アルミニウム電極12の表面に形成されていた自然酸化膜16を除去することができる。
図2の(b)には、自然酸化膜16を除去した状態を示す。当該酸浸漬工程の終了後は、水洗処理を行い、次の還元処理工程に移行する。
【0036】
還元処理工程:
ステップS3としての還元処理工程は、アルミニウム電極12の表面の還元処理を行う工程であり、次のステップS4としての無電解ストライクめっき処理を行う前に、行うことが好ましい工程である。当該還元処理工程では、アルミニウム電極の表面を還元処理することで、次工程における無電解ストライクめっき法により形成されるニッケルストライクめっき層とアルミニウム電極の表面との密着性及び当該ニッケルストライクめっき層の析出速度を向上させることができる。
【0037】
当該還元処理工程において用いられる還元剤は、特に制限されない。例えば、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン(DMAB)、塩酸ヒドラジンや硫酸ヒドラジンなどのヒドラジン化合物などを挙げることができる。
【0038】
また、当該還元剤は、その後の工程で用いる無電解ストライクニッケルめっき浴や無電解ニッケルめっき浴中に含まれる還元剤と同一のものを用いると、還元処理後のアルミニウム電極を水洗処理することなく無電解ストライクめっき処理又は無電解めっき処理を行うことができるための好ましい。また、無電解ストライクめっき浴や無電解めっき浴の組成を変化させるおそれも少ないため好適である。
【0039】
無電解ストライクめっき工程:
ステップS4としての無電解ストライクめっき工程は、アルミニウム電極12の表面に無電解ストライクめっき法によって、ニッケルストライクめっき層17を形成する工程である。
図2の(c)には、ニッケルストライクめっき層17を形成した状態を示す。当該無電解ストライクめっき工程において用いる無電解ストライクめっき浴は、一般的にニッケルの無電解ストライクめっきに用いられるものを採用することが可能である。当該無電解ストライクニッケルめっき浴は、ニッケル塩と、還元剤と、錯化剤と、安定剤とが含まれている。
【0040】
ニッケル塩としては、一般的にニッケルの無電解ストライクめっきに使用されるものを用いることができる。ニッケル塩の具体例としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、クエン酸ニッケルなどを挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。本件発明では、ニッケル塩として、硫酸ニッケル6水和物を用いることが最も好ましい。当該ニッケル塩は、0.05mol/L〜0.3mol/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0041】
還元剤としては、上述した還元処理工程において用いられる還元剤と同様に、例えば、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン(DMAB)、塩酸ヒドラジンや硫酸ヒドラジンなどのヒドラジン化合物などを挙げることができる。本件発明では、還元剤としてジメチルアミンボラン(DMAB)を用いることが最も好ましい。当該還元剤は、0.1g/L〜10g/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0042】
錯化剤としては、一般的に無電解ストライクめっき法において使用されるものを用いることができる。錯化剤の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸およびシュウ酸などのカルボン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸、アラニン、バリン、チロシン、グリシン、アスパラギン酸、ヒスチジンなどのアミノ酸などを挙げることができる。本件発明では、錯化剤として、グリシンとコハク酸とを組み合わせて用いることが好ましい。当該錯化剤は、0.01mol/L〜0.6mol/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0043】
安定剤としては、一般的に無電解ストライクめっき法において使用されるものを用いることができる。安定剤の具体例としては、例えば、ビスマス、アンチモン、チオ硫酸、モリブデン、硫酸鉛等を挙げることができる。本件発明では、安定剤として、ビスマスを用いることが好ましい。当該安定剤は、0.01mg/L〜5.0mg/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0044】
本件発明における無電解ストライクニッケルめっき浴は、上述した以外にも、例えば、光沢剤(チオ硫酸ナトリウム、鉛、銅など)、pH緩衝材(硫酸アンモニウム、ホウ酸、塩化アンモニウムなど)、pH調整剤(硫酸、アンモニア)などの成分を含むものであっても良い。本件発明では、pH緩衝材として、硫酸アンモニウムと、ホウ酸を含み、光沢剤としてチオ硫酸ナトリウムを含んでいることが好ましい。
【0045】
また、本件発明における無電解ストライクニッケルめっき浴は、pHが6.0〜8.0の中性領域であることが好ましい。そして、当該無電解ストライクニッケルめっき浴の温度は、25℃〜50℃であることが好ましい。
【0046】
当該無電解ストライクめっき工程では、上述した無電解ストライクニッケルめっき浴に半導体ウエハを浸漬することにより、アルミニウム電極12の表面に厚さが1μm〜5μmのニッケルストライクめっき層17を析出させる。当該無電解ストライクめっき工程の終了後は、水洗処理を行い、次の還元処理工程に移行する。
【0047】
還元処理工程:
ステップS4の無電解ストライクめっき工程の終了後におけるステップS5としての還元処理工程は、表面にニッケルストライクめっき層17が形成されたアルミニウム電極12の表面の還元処理を行う工程である。当該還元処理工程は、ステップS3の場合と同様に、次のステップS5としての無電解めっき処理を行う前に、行うことが好ましい工程である。還元処理工程においても用いる還元剤は、上述のステップS3と同様であるため、ここでは説明を省略する。当該還元処理工程では、ニッケルストライクめっき層17が形成されたアルミニウム電極12の表面の還元処理することで、次工程の無電解めっき処理工程で、ニッケルストライクめっき層17を核として形成されるニッケルめっき層又はニッケル−リン合金めっき層、若しくは、ニッケル−銅−リン合金めっき層18とアルミニウム電極12との密着性及び当該ニッケルめっき層等の析出速度を向上させることができる。当該還元処理工程において、次工程で用いる無電解ニッケルめっき浴中に含まれる還元剤と同一のものを用いる場合には、還元処理後にアルミニウム電極12を水洗処理することなく無電解めっき処理工程に移行することができる。
【0048】
無電解めっき工程:
ステップS6としての無電解めっき工程は、表面にニッケルストライクめっき層17が形成されたアルミニウム電極12の表面に無電解めっき法によって、ニッケルめっき層又はニッケル−リン合金めっき層、若しくは、ニッケル−銅−リン合金めっき層18を形成する工程である。
図2の(d)には、無電解ニッケルめっき層を形成した状態を示す。当該無電解めっき工程において用いる無電解めっき浴は、一般にニッケル、又は、ニッケル−リン合金、若しくは、ニッケル−銅−リン合金の無電解めっきに用いられるものを採用することが可能である。すなわち、当該無電解ニッケルめっき浴には、ニッケル塩と、還元剤と、錯化剤と安定剤とが含まれている。また、当該無電解ニッケル−リン合金めっき浴は、ニッケル塩と、次亜リン酸塩と、還元剤と、錯化剤と、安定剤とが含まれる。また、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴には、ニッケル塩と、銅塩と、次亜リン酸塩と、還元剤と、錯化剤と、安定剤とが含まれる。
【0049】
上述した無電解ストライクめっき工程と同様に無電解ニッケルめっき浴において用いられるニッケル塩としては、一般的にニッケルの無電解めっきに使用されるものを用いることができる。ニッケル塩の具体例としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、クエン酸ニッケルなどを挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。本件発明では、ニッケル塩として、硫酸ニッケル6水和物を用いることが最も好ましい。当該ニッケル塩は、0.05mol/L〜0.3mol/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0050】
無電解ニッケルめっき浴において用いられる還元剤としては、上述した還元処理工程において用いられる還元剤と同様に、例えば、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン(DMAB)、塩酸ヒドラジンや硫酸ヒドラジンなどのヒドラジン化合物などを挙げることができる。本件発明では、還元剤として次亜リン酸ナトリウムを用いることが最も好ましい。当該還元剤は、0.01mol/L〜0.5mol/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0051】
無電解ニッケルめっき浴において用いられる錯化剤としては、一般的に無電解めっき法において使用されるものを用いることができる。錯化剤の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸およびシュウ酸などのカルボン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸、アラニン、バリン、チロシン、グリシン、アスパラギン酸、ヒスチジンなどのアミノ酸などを挙げることができる。本件発明では、錯化剤として、リンゴ酸とコハク酸とを組み合わせて用いることが好ましい。当該錯化剤は、0.01mol/L〜0.6mol/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0052】
無電解ニッケルめっき浴において用いられる安定剤としては、一般的に無電解めっき法において使用されるものを用いることができる。安定剤の具体例としては、例えば、ビスマス、アンチモン、チオ硫酸、モリブデン、硫酸鉛等を挙げることができる。本件発明では、安定剤として、硫酸鉛を用いることが好ましい。当該安定剤は、0.01mol/L〜2.0mol/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0053】
本件発明における無電解ニッケルめっき浴及び無電解ニッケル−リン合金めっき浴は、上述した以外にも、例えば、pH調整剤(硫酸、水酸化ナトリウム)などの成分を含むものであっても良い。
【0054】
また、本件発明における無電解ニッケルめっき浴及び無電解ニッケル−リン合金めっき浴は、pHが4.5〜6.0の中性領域であることが好ましい。そして、当該無電解めっき浴の温度は、60℃〜90℃であることが好ましい。
【0055】
また、当該無電解ニッケル−リン合金めっき浴において用いられるニッケル塩、還元剤、錯化剤、安定剤等は、上述したものと同様のものを採用することができ、次亜リン酸塩としては、一般的に無電解めっき法において使用されるものを用いることができる。次亜リン酸塩の具体例としては、例えば、次亜リン酸ナトリウムや次亜リン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0056】
さらに、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴において用いられるニッケルイオン及び銅イオンの供給源としては、硫酸銅5水和物及び硫酸ニッケル6水和物のような、各種の水性塩、例えば、塩化物、硫酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、炭酸塩、水酸化物又はその他の塩等を用いることができる。銅イオンの濃度Cは、0.005mol/L〜0.3mol/Lの範囲で用いることが好ましい。0.005mol/L以上含まれていれば、析出反応が安定して進行させることができ、0.3mol/L以下であれば、硫酸銅等の沈殿が生じることがないからである。また、銅イオンの濃度Cとニッケルイオンの濃度Nとは、(銅イオン濃度C/ニッケルイオン濃度N)が1〜10の範囲で用いることが好ましい。C/Nが1以上であれば、銅の析出反応が連続して進行することが可能となり、C/Nが1を下10以下であれば、めっき層中のニッケル含有率が低くなり低抵抗となるからである。
【0057】
また、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴において用いられる錯化剤としては、クエン酸3ナトリウム無水和物のような各種の水溶性化合物、例えば、ロッシェル塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アスパラギン酸、グルタミン酸、コハク酸、クエン酸、又は前記化合物の塩若しくは、誘導体等を用いることができる。錯化剤の濃度は、上述した銅イオン濃度Cとニッケルイオン濃度Nの合計濃度(C+N)に対して0.5〜4倍であることが好ましい。4倍以下であれば、沈殿が生じることなく、0.5倍以上であれば、濃縮液の製造が容易となるからである。
【0058】
また、還元剤としては、次亜リン酸を用いることができる。次亜リン酸の供給源としては、次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸カリウム等を用いることができる。次亜リン酸イオンの濃度は、銅イオン濃度Cとニッケルイオン濃度Nとの合計濃度(C+N)に対して、1〜10倍の濃度であることが好ましい。次亜リン酸イオンの濃度が(C+N)と当量以上であれば、析出反応が安定して進行させることができ、次亜リン酸イオンの濃度が(C+N)の10倍以下であれば、めっき浴が自己分解することがないからである。
【0059】
当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴には、pH調整及び導電性向上のために水酸化リチウムを添加しても良い。当該水酸化リチウムは、必須成分ではなく、水酸化ナトリウム等を用いても良い。また、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴は、pHが8〜11の範囲であることが好ましい。また、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴は、界面活性剤は必須成分ではないが、ストライクニッケルめっき層が形成されたアルミニウム電極表面との濡れ性改善等のために添加されていることが好ましい。界面活性剤には従来からめっき浴に添加されているカチオン系、アニオン系、ノニオン系又は両性界面活性剤を用いることができる。
【0060】
当該無電解めっき工程では、上述した無電解ニッケルめっき浴に半導体ウエハを浸漬することにより、表面にニッケルストライクめっき層17が形成されたアルミニウム電極12の表面に厚さが2μm〜15μmの無電解ニッケルめっき層、又は、無電解ニッケル−リン合金めっき層、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金めっき層18を析出させる。当該無電解めっき工程の終了後は、水洗処理を行う。
【0061】
上述したように、本願発明の無電解ニッケルめっき層の形成方法では、半導体ウエハ上のアルミニウム電極12の表面のアルミニウムが、無電解ストライクめっき法によって、ニッケルと置換して、当該アルミニウム電極の表面にニッケルが析出したニッケルストライクめっき層を形成する。そして、当該ニッケルストライクめっき層が形成された半導体ウエハを、その後無電解めっき浴中に浸漬することにより、当該アルミニウム電極の表面に形成されたニッケルストライクめっき層を核として本めっきである無電解ニッケルめっき層、又は、無電解ニッケル−リン合金めっき層、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金めっき層を無電解ニッケルめっき法によりアルミニウム電極の表面に形成する。ゆえに、本願発明における無電解ニッケルめっき層は、ニッケルストライクめっき層を核として析出形成されるものであるので、アルミニウム電極との密着性に優れ、均一な膜厚を実現することが可能となる。
【0062】
特に、本件発明において用いられる無電解ストライクめっき浴及び無電解めっき浴は、pHがそれぞれ、中性領域の溶液である。よって、従来の強アルカリ性の領域のジンケート液等を用いる場合とは異なり、アルミニウム電極表面や半導体ウエハの絶縁層の表面がダメージを受ける不都合を回避することが可能となる。よって、絶縁層13の表面に導体回路を形成する際において、絶縁層表面は平滑性が維持されているため、ファインピッチの導体回路の形成が可能となる。
【0063】
なお、上述した無電解めっき工程の終了後は、水洗処理したのち、乾燥させ、アニール処理を施すことが好ましい。
【0064】
<本件発明に係る上述したニッケル層を備える半導体ウエハ基板の製造方法の形態>
次に、本件発明に係るニッケル層を備える半導体ウエハ基板の製造方法について説明する。本件発明に係る半導体ウエハ基板の製造方法は、上述した形成方法によりニッケル層を備える半導体ウエハの絶縁層の表面に、導体回路を形成する半導体ウエハ基板の製造方法である。本件発明に係る半導体ウエハ基板の製造方法は、当該半導体ウエハの絶縁層の表面を、UVガラスマスクを使用し、選択的に表面改質処理して、当該改質部分のみに選択的に触媒を付与し、当該触媒を付与した部分のみに選択的に無電解めっき法により無電解ニッケル層、又は、無電解ニッケル−リン合金層、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金層を形成することを特徴とする。
【0065】
具体的には、本件発明に係る半導体ウエハ基板の製造方法は、半導体ウエハのアルミニウム電極12の表面にのみ上述したように無電解ニッケルめっき層を形成し、無電解ニッケルめっき層が形成されている以外の絶縁層の表面の一部を、UV照射によって表面の改質処理を行い、アルカリ脱脂、触媒付与を行った後、無電解ニッケルめっき浴又は無電解ニッケル−リン合金めっき浴、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴に浸漬して、改質処理を行った部分のみに無電解ニッケル層、又は、無電解ニッケル−リン合金層、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金層による導体回路を形成する。
【0066】
以下に、本件発明に係る半導体ウエハ基板の製造方法について
図3及び
図4を参照して、各工程毎に分けて説明する。なお、
図4において示す半導体ウエハ基板の層構成は、その層構成の概念を模式的に示したものである。従って、当該
図4は、各層の積層状態を把握できるように記載したものであって、各層の厚さに関しては、現実の製品の厚さを反映させていない。
【0067】
本件発明に係る半導体ウエハ基板を製造する方法についての説明では、上述したアルミニウム電極12の表面に無電解ニッケル層(又は、無電解ニッケル−リン合金層、若しくは、無電解ニッケル−銅−リン合金層)18が形成された半導体ウエハ10を用いて説明する。
【0068】
<半導体ウエハ基板の製造工程>
表面改質工程:
ステップS10としての表面改質工程は、アルミニウム電極12の表面にニッケルめっき層18が形成された半導体ウエハ10の絶縁層13表面の改質を行う工程である。当該表面改質工程では、導体回路のパターンを形成したフォトマスクを用いて、有酸素雰囲気下でUVを照射し、導体回路を形成する箇所のみを表面改質する。この際、184.9nmと257.3nmの波長が優先的に発現する低圧水銀灯を用いて、合成石英マスクを通して部分的に当該波長のUVを半導体ウエハ10の絶縁層13表面に露光することが好ましい。
【0069】
ポリイミドやポリジメチルシロキサンなどの絶縁層構成材料からなる絶縁層13は、当該波長のUVが部分的に露光されることによって、当該露光部分が選択的に表面改質処理される。具体的には、大気雰囲気下などの有酸素雰囲気下で照射されるUVエネルギーによって、ポリイミドやポリジメチルシロキサンなどの絶縁層構成材料からなる絶縁層表面には、−OH基や−C=O基が形成される。当該表面改質工程後、ステップS11に移行し、アルカリ浸漬工程に移行する。
【0070】
アルカリ浸漬工程:
ステップS11としてのアルカリ浸漬工程では、表面改質処理後の半導体ウエハ10を水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、表面の脱脂処理を行う。また、当該アルカリ溶液に浸漬されることによって、絶縁層を構成するポリイミドのイミド環が開環して[−(NH)C=O]と、[−(C=O)OH]が形成され、[−(C=O)OH]の水素が水酸化ナトリウム水溶液中のNaによって置換される。よって、絶縁層13の表面に[−(C=O)ONa]、すなわち、−COONaが形成される。当該アルカリ浸漬工程の終了後、半導体ウエハを水洗処理したのち、次の触媒付与工程に移行する。
【0071】
触媒付与工程:
ステップS12としての触媒付与工程では、アルカリ浸漬工程後の半導体ウエハ10を例えば、パラジウムイオン等の触媒を含有する溶液中に浸漬することによって、絶縁層13の表面の−COONaのNaをパラジウムイオンで置換して、カルボシキル基にパラジウムイオンを吸着させる。絶縁層13の表面に触媒を吸着させた半導体ウエハ10を水洗処理したのち、次の還元処理工程に移行する。
【0072】
還元処理工程:
ステップS13としての還元処理工程では、触媒付与工程後の半導体ウエハ10を、還元溶液中に浸漬することによって、−COOPdのパラジウムイオンをNaで置換してパラジウムイオンを還元し、還元したパラジウムイオンをPd触媒として絶縁層13の表面に析出させる。絶縁層13の表面に触媒を還元して析出させた後、半導体ウエハ10を水洗処理して、次の無電解めっき工程に移行する。
【0073】
無電解めっき工程:
ステップS14としての無電解めっき工程は、選択的に触媒が析出形成された絶縁層13の表面に無電解めっき法によって、ニッケル層、又は、ニッケル−リン合金層、若しくは、ニッケル−銅−リン合金層20を形成する工程である。
図4には、ニッケル層又はニッケル−リン合金層若しくはニッケル−銅−リン合金層を形成した状態を示す。当該無電解めっき工程において用いる無電解めっき浴は、一般にニッケル又はニッケル−リン合金若しくはニッケル−銅−リン合金の無電解めっきに用いられるものを採用することが可能である。当該無電解ニッケルめっき浴は、ニッケル塩と、還元剤と、錯化剤と安定剤とが含まれている。また、当該無電解ニッケル−リン合金めっき浴は、ニッケル塩と、次亜リン酸塩と、還元剤と、錯化剤と、安定剤とが含まれている。また、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴には、ニッケル塩と、銅塩と、次亜リン酸塩と、還元剤と、錯化剤と、安定剤とが含まれている。
【0074】
上述したステップS4の無電解ストライクめっき工程やステップS5の無電解めっき工程と同様に、無電解ニッケルめっき浴において用いられるニッケル塩としては、一般的にニッケルの無電解めっきに使用されるものを用いることができる。ニッケル塩の具体例としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、クエン酸ニッケルなどを挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。本件発明では、ニッケル塩として、硫酸ニッケル6水和物を用いることが最も好ましい。当該ニッケル塩は、0.05mol/L〜0.3mol/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0075】
無電解ニッケルめっき浴において用いられる還元剤としては、上述した還元処理工程において用いられる還元剤と同様に、例えば、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン(DMAB)、塩酸ヒドラジンや硫酸ヒドラジンなどのヒドラジン化合物などを挙げることができる。本件発明では、還元剤として次亜リン酸ナトリウムを用いることが最も好ましい。当該還元剤は、0.01mol/L〜0.5mol/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0076】
無電解ニッケルめっき浴において用いられる錯化剤としては、一般的に無電解めっき法において使用されるものを用いることができる。錯化剤の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸およびシュウ酸などのカルボン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸、アラニン、バリン、チロシン、グリシン、アスパラギン酸、ヒスチジンなどのアミノ酸などを挙げることができる。本件発明では、錯化剤として、クエン酸とグリシンとを組み合わせて用いることが好ましい。当該錯化剤は、0.01mol/L〜0.5mol/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0077】
無電解ニッケルめっき浴において用いられる安定剤としては、一般的に無電解めっき法において使用されるものを用いることができる。安定剤の具体例としては、例えば、ビスマス、アンチモン、チオ硫酸、モリブデン、硫酸鉛等を挙げることができる。本件発明では、安定剤として、ビスマスを用いることが好ましい。当該安定剤は、0.01mg/L〜3.0mg/Lの範囲で用いることが好ましい。
【0078】
また、当該無電解ニッケル−リン合金めっき浴において用いられるニッケル塩、還元剤、錯化剤、安定剤等は、上述したものと同様のものを採用することができ、次亜リン酸塩としては、一般的に無電解めっき法において使用されるものを用いることができる。次亜リン酸塩の具体例としては、例えば、次亜リン酸ナトリウムや次亜リン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0079】
本件発明における無電解ニッケルめっき浴及び無電解ニッケル−リン合金めっき浴は、上述した以外にも、例えば、光沢剤(チオ硫酸ナトリウム、鉛、銅など)、pH緩衝材(硫酸アンモニウム、ホウ酸、塩化アンモニウムなど)、pH調整剤(硫酸、水酸化ナトリウム)などの成分を含むものであっても良い。本件発明では、pH緩衝材として、硫酸アンモニウムを含み、光沢剤としてチオ硫酸ナトリウムを含んでいることが好ましい。
【0080】
また、本件発明における無電解めっき浴及び無電解ニッケル−リン合金めっき浴は、pHが4.5〜8.0の中性領域〜弱アルカリ領域であることが好ましい。そして、当該無電解めっき浴の温度は、40℃〜80℃であることが好ましい。
【0081】
さらに、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴において用いられるニッケルイオン及び銅イオンの供給源としては、硫酸銅5水和物及び硫酸ニッケル6水和物のような、各種の水性塩、例えば、塩化物、硫酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、炭酸塩、水酸化物又はその他の塩等を用いることができる。銅イオンの濃度Cは、0.005mol/L〜0.3mol/Lの範囲で用いることが好ましい。0.005mol/L以上含まれていれば、析出反応が安定して進行させることができ、0.3mol/L以下であれば、硫酸銅等の沈殿が生じることがないからである。また、銅イオンの濃度Cとニッケルイオンの濃度Nとは、(銅イオン濃度C/ニッケルイオン濃度N)が1〜10の範囲で用いることが好ましい。C/Nが1以上であれば、銅の析出反応が連続して進行することが可能となり、C/Nが1を下10以下であれば、めっき層中のニッケル含有率が低くなり低抵抗となるからである。
【0082】
また、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴において用いられる錯化剤としては、クエン酸3ナトリウム無水和物のような各種の水溶性化合物、例えば、ロッシェル塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アスパラギン酸、グルタミン酸、コハク酸、クエン酸、又は前記化合物の塩若しくは、誘導体等を用いることができる。錯化剤の濃度は、上述した銅イオン濃度Cとニッケルイオン濃度Nの合計濃度(C+N)に対して0.5〜4倍であることが好ましい。4倍以下であれば、沈殿が生じることなく、0.5倍以上であれば、濃縮液の製造が容易となるからである。
【0083】
また、還元剤としては、次亜リン酸を用いることができる。次亜リン酸の供給源としては、次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸カリウム等を用いることができる。次亜リン酸イオンの濃度は、銅イオン濃度Cとニッケルイオン濃度Nとの合計濃度(C+N)に対して、1〜10倍の濃度であることが好ましい。次亜リン酸イオンの濃度が(C+N)と当量以上であれば、析出反応が安定して進行させることができ、次亜リン酸イオンの濃度が(C+N)の10倍以下であれば、めっき浴が自己分解することがないからである。
【0084】
当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴には、pH調整及び導電性向上のために水酸化リチウムを添加しても良い。当該水酸化リチウムは、必須成分ではなく、水酸化ナトリウム等を用いても良い。また、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴は、pHが8〜11の範囲であることが好ましい。また、当該無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴は、界面活性剤は必須成分ではないが、ストライクニッケルめっき層が形成されたアルミニウム電極表面との濡れ性改善等のために添加されていることが好ましい。界面活性剤には従来からめっき浴に添加されているカチオン系、アニオン系、ノニオン系又は両性界面活性剤を用いることができる。
【0085】
上述した無電解めっき工程の終了後は、水洗処理したのち、乾燥させ、アニール処理を施すことが好ましい。以上の工程を経ることによって、本件発明に係るニッケルめっき層が形成された半導体ウエハ基板を得ることができる。
【0086】
<本件発明に係る上述した半導体ウエハ基板の製造方法により得られた半導体ウエハ基板の形態>
次に、本件発明に係る半導体ウエハ基板について説明する。本件発明に係る半導体ウエハ基板は、上述した製造方法により得られる半導体ウエハ基板であり、半導体ウエハ上のアルミニウム電極の表面には、詳細は上述したようにニッケルめっき層が設けられている。そして、当該半導体ウエハの絶縁層の表面には、無電解めっき法によりニッケル層又はニッケル−リン合金層若しくはニッケル−銅−リン合金層からなる導体回路が形成されていることを特徴とする。
【0087】
当該無電解めっき法により形成されるニッケル層又はニッケル−リン合金層若しくはニッケル−銅−リン合金層の厚さは、2.0μm〜10μmとすることが好ましい。
【0088】
また、無電解めっき法により形成された当該ニッケル層又はニッケル−リン合金層若しくはニッケル−銅−リン合金層の表面には、さらに、無電解めっき法によりパラジウム層を形成しても良い。当該無電解パラジウム層の厚さは、0.03μm〜0.3μmとすることが好ましい。
【0089】
さらに、当該無電解パラジウム層の表面には、無電解めっき法により金めっき層を形成しても良い。当該無電解金めっき層の厚さは、0.03μm〜0.3μmとすることが好ましい。
【0090】
当該導体回路を構成するニッケル層又はニッケル−リン合金層若しくはニッケル−銅−リン合金層の表面に形成される金属層の厚さは、上述した材料や厚さに限定されるものではなく、得られる半導体ウエハ基板の用途に応じて、任意の材料や厚さを選択すればよい。
【0091】
上述したように、無電解めっき法により形成されたニッケル層又はニッケル−リン合金層若しくはニッケル−銅−リン合金層20の表面に、さらに、無電解めっき法によって、パラジウム層や、金めっき層を形成することにより、電気伝達性や密着性の向上を図ることができる。
【0092】
上述した如き本願発明における絶縁層の表面に無電解めっき法により導体回路としてニッケル層又はニッケル−リン合金層若しくはニッケル−銅−リン合金層が形成された半導体ウエハ基板は、当該絶縁層の表面をUV照射によって部分改質して無電解めっき法によって導体回路が形成されたものである。ここで、本願発明における絶縁層の表面は、アルミニウム電極表面にニッケルめっき層を形成する過程において、強アルカリ性溶液によるダメージを受けていない。ゆえに、本願発明は、平滑な状態の絶縁層の表面に、UV照射を部分的に行って表面改質処理を行い無電解めっき法によって導体回路を形成したものであるので、支障なく、当該絶縁層の表面と導体回路との間に強固なアンカーが得られることとなり、密着性の高い導体回路を実現することが可能となる。
【実施例1】
【0093】
以下に、本件発明のアルミニウム材の表面へのニッケル層の形成方法の具体的な実施例としてアルミニウム電極の表面にニッケル層を形成した半導体ウエハ、及び当該半導体ウエハの絶縁層上にニッケル層からなる導体回路を備えた半導体ウエハ基板の実施例1を示す。
【0094】
当該実施例1において採用される半導体ウエハには、下地絶縁層を介してアルミニウム電極が形成されており、当該アルミニウム電極が形成された下地絶縁層の表面には、ポリイミドからなる絶縁層が形成されている。そして、半導体ウエハ上に形成された絶縁層には、選択的なエッチング処理によって開口部が形成され、アルミニウム電極が露出している。
【0095】
まずはじめに、中性脱脂工程を行った。当該実施例における中性脱脂工程では、食器用中性洗剤(P&G社製のカスケードコンプリート)を5%で希釈した45℃の50ml/Lの溶液に、アルミニウム電極が露出して設けられた半導体ウエハを2分間浸漬して行った。その後、当該半導体ウエハを水洗処理したのち、酸浸漬工程を行った。
【0096】
実施例における酸浸漬工程では、硫酸50ml/L、リン酸50ml/L、東邦化学株式会社製のPEG−1000(ポリエチレングリコール)100g/Lからなる45℃の酸性溶液に、中性脱脂工程後の半導体ウエハを5分間浸漬して行った。その後、当該半導体ウエハを水洗処理したのち、還元処理工程を行った。
【0097】
実施例における還元処理工程では、45℃のジメチルアミンボラン(DMAB)2.5g/Lに、酸浸漬工程後の半導体ウエハを1分間浸漬して行った。その後、水洗処理は行わずに、無電解ストライクめっき工程を行った。
【0098】
実施例における無電解ストライクめっき工程では、以下に示す組成のめっき浴及び、めっき条件によって、半導体ウエハのアルミニウム電極の表面にニッケルストライクめっき層を形成した。当該無電解ストライクめっき工程の終了後には、水洗処理を行った。
無電解ストライクニッケルめっき浴組成:
硫酸ニッケル6水和物 0.1mol/L
ジメチルアミンボラン(DMAB)2.5g/L
グリシン 0.1mol/L
コハク酸 0.1mol/L
ビスマス 1.0mg/L
硫酸アンモニウム 0.2mol/L
ホウ酸 10g/L
チオ硫酸ナトリウム 2.0mg/L
pH調整として硫酸及びアンモニア
めっき条件:
浴pH 5.5
浴温 50℃
めっき時間 10分間
【0099】
実施例1における無電解めっき工程では、以下に示す組成のめっき浴及び、めっき条件によって、半導体ウエハのアルミニウム電極の表面に無電解ニッケルめっき層を形成した。
無電解ニッケルめっき浴組成:
硫酸ニッケル6水和物 0.1mol/L
次亜リン酸ナトリウム 0.2mol/L
リンゴ酸 0.1mol/L
コハク酸 0.15mol/L
硫酸鉛 0.1mg/L
pH調整として硫酸及び水酸化ナトリウム
めっき条件:
浴pH 7.0
浴温 80℃
めっき時間 15分間
【0100】
当該無電解めっき工程の終了後には、水洗処理を行い、その後、乾燥させ、150℃、60分間、アニール処理を行った。以上の工程により、アルミニウム電極表面にニッケルめっき層が形成された半導体ウエハを得ることができた。
【0101】
次に、上述したアルミニウム電極の表面にニッケル層を備える半導体ウエハの絶縁層の表面に導体回路を形成した半導体ウエハ基板の実施例について説明する。
【0102】
まずはじめに、表面改質工程において、導体回路を形成したフォトマスクを用いて、大気雰囲気下で江東電気社製のUVランプからUVを照射し、導体回路を形成する箇所の絶縁層の表面のみを表面改質した。UVランプと絶縁層の表面との距離は、30mmとし、1分間UV照射を行った。
【0103】
次に、アルカリ浸漬工程において、65℃の水酸化ナトリウムの濃度1g/Lの溶液に1分間、当該半導体ウエハを浸漬した。当該アルカリ浸漬工程の終了後、半導体ウエハを水洗処理したのち、触媒付与工程を行った。当該触媒付与工程では、45℃の塩化パラジウム(II)の濃度10.3g/Lの溶液に1分間、当該半導体ウエハを浸漬した。その後、水洗処理を行った後、還元処理工程を行った。当該還元処理工程では、45℃のNaH
2PO
2・H
2Oの濃度35g/Lの溶液に1分間、当該半導体ウエハを浸漬した。その後、水洗処理を行った後、無電解めっき工程を行った。
【0104】
当該実施例における無電解めっき工程では、以下に示す組成のめっき浴及び、めっき条件によって、半導体ウエハの絶縁層の表面改質処理され、触媒が付与された部分の表面にニッケル−リン合金層を形成した。当該無電解めっき工程の終了後には、水洗処理を行った。
無電解ニッケル−リンめっき浴組成:
硫酸ニッケル6水和物 26.3g/L
次亜リン酸ナトリウム 21.2g/L
グリシン 7.5g/L
クエン酸(無水) 19.2g/L
ビスマス 1.0ppm
硫酸アンモニウム 26.4g/L
チオ硫酸ナトリウム 20g/L
水酸化ナトリウム 20g/L
めっき条件:
浴pH 8.0
浴温 45℃
めっき時間 40分間
【0105】
当該無電解めっき工程の終了後には、水洗処理を行い、その後、乾燥させ、150℃、60分間、アニール処理を行った。以上の工程により、絶縁層の表面にニッケル−リン合金層からなる導体回路が形成された半導体ウエハ基板を得ることができた。当該導体回路が形成された半導体ウエハ基板は、ポリイミドやポリジメチルシロキサンなどの絶縁層構成材料からなる絶縁層の表面を低圧水銀灯によるUV照射によって部分改質して無電解めっき法によって導体回路が形成されたものである。よって、当該絶縁層の表面と導体回路との間には、強固なアンカーが得られることとなり、密着性の高い導体回路を実現することが可能となった。
【実施例2】
【0106】
当該実施例2としてのアルミニウム電極の表面にニッケル層を形成した半導体ウエハ及び当該半導体ウエハの絶縁層上にニッケル層からなる導体回路を備えた半導体ウエハ基板について述べる。実施例2における半導体ウエハは、上述の実施例1とは、無電解めっき工程において用いられるめっき浴のみが異なり、それ以外は、同様である。ここでは、無電解めっき工程において用いられるめっき浴についてのみ述べる。
【0107】
実施例2における無電解めっき工程では、以下に示す組成のめっき浴及びめっき条件によって、半導体ウエハのアルミニウム電極の表面に無電解ニッケル−銅−リン合金めっき層を形成した。
無電解ニッケル−銅−リン合金めっき浴組成:
硫酸銅5水和物 0.03mol/L
硫酸ニッケル6水和物 0.01mol/L
クエン酸3ナトリウム無水和物 0.06mol/L
炭酸ナトリウム 0.25mol/L
次亜リン酸ナトリウム1水和物 0.18mol/L
界面活性剤 適量
水酸化リチウム 0.1g/L
浴pH 9.0
浴温 45℃
めっき時間 50分
【0108】
実施例2により、アルミニウム電極表面にニッケル−銅−リン合金めっき層が形成された半導体ウエハを得ることができた。実施例2の場合にも実施例1と同様に、当該半導体ウエハ基板の絶縁層の表面に絶縁層の表面にニッケル−リン合金層からなる導体回路を形成した。実施例2の場合においても、アルミニウム電極表面にニッケル層を形成する際に、絶縁層の表面に大きなダメージが加えられていないため、絶縁層の表面と導体回路との間には、強固なアンカーが得られることとなり、密着性の高い導体回路を実現することができた。