特開2015-110980(P2015-110980A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ SMC株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015110980-直線運動ロッドのロック装置 図000003
  • 特開2015110980-直線運動ロッドのロック装置 図000004
  • 特開2015110980-直線運動ロッドのロック装置 図000005
  • 特開2015110980-直線運動ロッドのロック装置 図000006
  • 特開2015110980-直線運動ロッドのロック装置 図000007
  • 特開2015110980-直線運動ロッドのロック装置 図000008
  • 特開2015110980-直線運動ロッドのロック装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-110980(P2015-110980A)
(43)【公開日】2015年6月18日
(54)【発明の名称】直線運動ロッドのロック装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/26 20060101AFI20150522BHJP
【FI】
   F15B15/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-253495(P2013-253495)
(22)【出願日】2013年12月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 光朗
(72)【発明者】
【氏名】工藤 政行
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB14
3H081BB15
3H081CC20
3H081CC23
3H081DD24
3H081EE30
3H081FF09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロッドに外嵌してそれを締め付けることによりロックするロック装置を、小型、軽量化すると同時に、生産性の向上、製品の低廉化を図れるようにする。
【解決手段】ロッド2に外嵌してそれをロックするブレーキ部材20を、ロッドの外径よりも小さい内径の厚肉円筒の一部に軸線方向の開口部20aを切設して形成し、該開口部その両側の受圧部21間を、ピストン室への圧力流体の給排で駆動するロック解除用のピストン13で押し開いてロックを解除できるものとする。上記ピストン室内にピストンをロック開放方向に押圧する押圧子15を設け、ロック装置本体11の螺挿孔に螺挿した該押圧子の押圧ネジ15bを外部からの操作でねじ込んで、ロッドのロックを解除可能とし、該ネジのねじ戻しによるロッドのロック時には、押圧子に設けたシール材17で螺挿孔の内端をシールさせ、押圧子の操作端15cを螺挿孔から外部に突出させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック装置本体内に、直線運動するロッドに外嵌して該ロッドを締め付けることによりそれをロックするブレーキ部材を備え、該ブレーキ部材は、上記ロッドの外径よりも小さい内径を有する厚肉円筒で、その周面の一部に、軸線方向に向けて切設したスリット状の開口部を切設して、該開口部の両側において対峙する一対の受圧部を形成し、この一対の受圧部間をロック装置本体内に設けたロック解除用のピストンの駆動で押し開くことにより、上記ブレーキ部材によるロッドの締め付けを解除し、該ピストンの復帰により該ブレーキ部材自体の弾性力によるロッドの締め付けで、それをロックできるように構成した直線運動ロッドのロック装置において、
上記ロック装置本体に、その内面と上記ロック解除用のピストンとの間に区画形成したピストン室に連通する圧力流体の給排ポートを開設すると共に、上記ピストン室内に上記ピストンをロック開放方向に押圧する押圧子を設け、該押圧子における押圧ネジをロック装置本体の螺挿孔に螺挿してその操作端をロック装置本体外に臨ませ、該押圧ネジのねじ込みによる上記ロッドのロック解除時には該押圧ネジの操作端が螺挿孔から突出せず、該押圧ネジのねじ戻しによる上記ロッドのロック時には、上記操作端が螺挿孔から外部に突出し、且つ、上記押圧子におけるピストン室内でロック装置本体内面の螺挿孔の周辺に当接する部位に設けたシール材で該螺挿孔の周囲をシールするように構成した、
ことを特徴とする直線運動ロッドのロック装置。
【請求項2】
上記ブレーキ部材を収容するロック装置本体を、上記ロッドを備えた流体圧シリンダ装置と一体に連結するに当たり、上記ロッドが貫通する側の一方の端面を、上記ロッドを備える流体圧シリンダ装置におけるロッドカバーの外面で閉鎖すると共に、他方の端面を、上記ロッドを貫通させて支持する端板の固定によって閉鎖し、それによって、ロッドのサイズを異にする流体圧シリンダ装置に対してロック装置本体の部品の一部を共用可能にした、
ことを特徴とする請求項1に記載の直線運動ロッドのロック装置。
【請求項3】
上記ブレーキ部材における一対の受圧部と、該受圧部間を押し開くロック解除用のピストンに設けたテーパ状拡開部材との間に、軸線を該拡開部材の押入方向と直交させて介在させる一対のローラを転動可能に保持するローラホルダを備え、
該ローラホルダは、そのホルダ本体における周枠の対向位置に、一対の平行配置のローラの各両端を相互に接離する方向に移動可能に嵌入して保持する貫通長孔を有し、該周枠に、対向する該貫通長孔に端部を嵌入した一対のローラがその軸線方向に該貫通長孔から離脱するのを抑止する抑止部材を備えている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の直線運動ロッドのロック装置。
【請求項4】
上記ローラホルダにおける一対のローラが貫通長孔から離脱するのを抑止する抑止部材を、ローラホルダの周枠の内周に設けた段部に穿設されている薄板挿入孔に挿入垂下させた抑止板により構成し、該抑止板は、上端に上記段部に係止する係止部を設けて該段部から上記貫通長孔に嵌入したローラの端部に当接するように垂下させている、
ことを特徴とする請求項3に記載の直線運動ロッドのロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダ等において直線運動するロッドの移動を必要に応じてロックするためのロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、流体圧シリンダ等における直線運動するロッドのロック装置として、ロックしようとする該ロッドを備えた流体圧シリンダ等のロッド導出部に、該ロッドを貫通させるロック装置本体を固定し、そのロック装置本体内に上記ロッドに外嵌してそれを締め付けるブレーキ部材を設けたものは、従来から一般的に知られている。上記ブレーキ部材は、上記ロッドの外径よりも小さい内径を有する厚肉円筒形のもので、その周面の一部に、軸線方向に向けて切設したスリット状の開口部が設けられ、更に、上記ブレーキ部材には該開口部の両側において対峙する一対の受圧部が設けられ、この一対の受圧部間をロック装置本体内に設けたロック解除用ピストンの駆動で押し開くことにより、ブレーキ部材によるロッドの締め付けを解除し、或いは、該ピストンを復帰させて、該ブレーキ部材自体の弾性力によりロッドを締め付けてロックできるように構成している。
【0003】
更に具体的に説明すると、このロック装置では、上記ブレーキ部材における一対の受圧部の間にそれぞれローラを介してテーパ状拡開部を圧入できるようにし、このテーパ状拡開部を上記ロック解除用ピストンに設けて、ロック装置本体内において上記ピストンにより区画されるピストン室に外部から圧力流体を給排することにより、該ピストンを駆動できるようにしている。即ち、上記テーパ状拡開部を、ピストン室に供給した圧力流体の駆動力で、ブレーキ部材の受圧部に当接する一対のローラ間に圧入できるように配設し、このテーパ状拡開部の圧入によってブレーキ部材の受圧部を拡開させて上記ロッドのロックを解除し、また、上記ピストン室からの圧力流体の排出により、上記ピストンに作用させている復帰スプリングの付勢力で該ピストンを復帰させ、該ブレーキ部材自体の弾性力により上記ロッドの周面を締め付けてロックするように構成している。
【0004】
上述のようなロッドのロック装置においては、手動でロッドのロック及びロック解除を可能にすると共に、その手動によるロックの状態で上記ロック解除用ピストンによるロック解除及び再ロックを可能にすることが望まれている。そして、上記ロック装置は、図6に示すような手動操作ボルト60によるロック及びロック解除を可能にした構成を備えている製品として、既に市場に供給されているものがある。
【0005】
図6及び図7を参照してその構成について説明すると、上記ロック解除用ピストン43は、ロック装置本体41の内面との間に区画形成したピストン室42に収容して、該ロック装置本体41に上記ピストン室42に連通する圧力流体の給排ポート44を開設し、一方、上記ピストン43にはそれを外部からロック開放方向に押圧する押圧突子45を一体に設けて、該押圧突子45をロック装置本体41に付設した手動操作ボルト60の螺挿孔46に嵌入し、その操作端を該螺挿孔46内でそれに螺挿した手動操作ボルト60で押圧できるようにし、この押圧によって、上記ブレーキ部材50における一対の受圧部51の間にテーパ状拡開部43bを圧入し、ブレーキ部材50により上記ロッドの周面を締め付けるロックを手動で解除できるようにしている。なお、図6及び図7においては、上記手動操作ボルト60を螺脱し、螺挿孔46上に防塵カバー61をネジ止めした状態を示している。
【0006】
このように、ロック解除用ピストン43に手動で押圧する押圧突子45を一体に設け、上記手動操作ボルト60で該押圧突子45を押圧するという手段を採用すると、構成的に簡易な点で有利ではあるが、上記手動操作ボルト60及び螺挿孔46の防塵カバー61を別途準備して不使用時にはそれらを別に保管する必要がある。
【0007】
また、上記手動操作ボルト60の螺挿孔46は、上記ピストン室42に給排ポート44から導入される圧力流体の流出を抑止するために、それに嵌入しているピストン43上の押圧突子45との間をシールする必要があり、このシールのために、上記螺挿孔46内にシールリング47を設ける必要がある。更に、該シールリング47よるシールは、少なくともピストン43のストローク長の全範囲において行う必要があり、また、手動操作ボルト60の螺挿孔46は、上記ストローク長に対して手動操作ボルト60の螺入を開始できるようにするためのネジ溝の余裕を付加した長さを持つように形成する必要があり、結果的に、上記螺挿孔46が比較的長くなり、それだけロック装置本体41の上下方向長さが大きくなるという問題がある。
【0008】
一方、近年では生産設備における各種装置の小型、軽量化、低廉化、組立の容易性等が要求され、このような点では、上述したロック装置本体41の図における上下方向長さが大きい点にも問題があるが、ロック装置本体41を流体圧シリンダ等の直線運動するロッドを備えた装置と連結するに当たり、その連結構造を一層簡素化することによっても、上記の要求を満たし得る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−68567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の技術的課題は、直線運動するロッドに外嵌して該ロッドを締め付けることによりそれをロックするブレーキ部材を備えた既知のロック装置を、その部品の構造の改変、組立の容易性を図ることにより、より小型、軽量化すると同時に、生産性の向上、製品の低廉化を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明によれば、ロック装置本体内に、直線運動するロッドに外嵌して該ロッドを締め付けることによりそれをロックするブレーキ部材を備え、該ブレーキ部材は、上記ロッドの外径よりも小さい内径を有する厚肉円筒で、その周面の一部に、軸線方向に向けて切設したスリット状の開口部を切設して、該開口部の両側において対峙する一対の受圧部を形成し、この一対の受圧部間をロック装置本体内に設けたロック解除用のピストンの駆動で押し開くことにより、上記ブレーキ部材によるロッドの締め付けを解除し、該ピストンの復帰により該ブレーキ部材自体の弾性力によるロッドの締め付けで、それをロックできるように構成した直線運動ロッドのロック装置において、上記ロック装置本体に、その内面と上記ロック解除用のピストンとの間に区画形成したピストン室に連通する圧力流体の給排ポートを開設すると共に、上記ピストン室内に上記ピストンをロック開放方向に押圧する押圧子を設け、該押圧子における押圧ネジをロック装置本体の螺挿孔に螺挿してその操作端をロック装置本体外に臨ませ、該押圧ネジのねじ込みによる上記ロッドのロック解除時には該押圧ネジの操作端が螺挿孔から突出せず、該押圧ネジのねじ戻しによる上記ロッドのロック時には、上記操作端が螺挿孔から外部に突出し、且つ、上記押圧子におけるピストン室内でロック装置本体内面の螺挿孔の周辺に当接する部位に設けたシール材で該螺挿孔の周囲をシールするように構成したことを特徴とする直線運動ロッドのロック装置が提供される。
【0012】
上記構成を有する直線運動ロッドのロック装置によれば、上記押圧子における押圧ネジのねじ戻しによる上記ロッドのロック時には、ピストン室内でロック装置本体内面の螺挿孔の周辺に対向するように設けた上記押圧子におけるシール材が、螺挿孔の周囲に当接してそれを安定的にシールするので、ロック装置本体の給排ポートから上記ロッドのロック解除のためにピストン室に圧力流体を供給すれば、ロック解除用のピストンが安定的に駆動され、上記ロッドのロックが解除される。
【0013】
また、上記ロック装置では、上記ピストン室内に、上記ピストンをロック開放方向に押圧する押圧子を設け、該押圧子における押圧ネジをロック装置本体の螺挿孔に螺挿しているため、図6及び図7に示す既知のものと比較して、押圧子の押圧ネジをロック装置本体の螺挿孔に深くまでねじ込んでブレーキ部材の一対の受圧部間を押し開いた状態にある時には、螺挿孔において完全に気密が保たれていないが、螺挿孔内にシール部材(図6のシールリング47)を設けないことから、該螺挿孔の長さをそれだけ短くし、結果的に該螺挿孔を設けたロック装置本体をそれだけ薄型化することができる。
【0014】
この構成は、後述するように、ロック装置本体のロッドが貫通する側の端面を、該ロッドを備える流体圧シリンダ装置のロッドカバーの外面で閉鎖すると共に、該ロック装置本体の他方の端面を、上記ロッドを貫通させて支持する端板の固定によって閉鎖することと相俟って、ロック装置本体の外殻部分の構成を小型、軽量化、低廉化を可能にするものであり、また、ロッドのサイズや製品シリーズ等を異にする流体圧シリンダ装置に対してロック装置本体の部品の一部の共用を可能にすることができるものである。
【0015】
また、本発明に係る直線運動ロッドのロック装置の他の好ましい実施形態においては、上記ブレーキ部材を収容するロック装置本体を、上記ロッドを備えた流体圧シリンダ装置と一体に連結するに当たり、上記ロッドが貫通する側の一方の端面を、上記ロッドを備える流体圧シリンダ装置におけるロッドカバーの外面で閉鎖すると共に、他方の端面を、上記ロッドを貫通させて支持する端板の固定によって閉鎖し、それによって、ロッドのサイズや製品シリーズ等を異にする流体圧シリンダ装置に対してロック装置本体の部品の一部を共用可能にしたものとして構成される。
【0016】
かかる構成は、前記ロック装置本体の部品の一部を共用により、ロッドのサイズや製品シリーズ等を異にする一連のシリーズ化された流体圧シリンダ装置の製造コストを安価にすることができるだけでなく、一般的に、ロック装置本体と上記流体圧シリンダ装置との間に介在させるスペーサ63(図7参照)を省略するので、製品を小型、軽量化し、この点でも製造コストの低廉化を図ることができる。
【0017】
更に、本発明に係る直線運動ロッドのロック装置の他の好ましい実施形態においては、上記ブレーキ部材における一対の受圧部と、該受圧部間を押し開くロック解除用のピストンに設けたテーパ状拡開部材との間に、軸線を該拡開部材の押入方向と直交させて介在させる一対のローラを転動可能に保持するローラホルダを備え、該ローラホルダは、そのホルダ本体における周枠の対向位置に、一対の平行配置のローラの各両端を相互に接離する方向に移動可能に嵌入して保持する貫通長孔を有し、該周枠に、対向する該貫通長孔に端部を嵌入した一対のローラがその軸線方向に該貫通長孔から離脱するのを抑止する抑止部材を備えているものとして構成される。
【0018】
上記ローラホルダをこのように構成すると、ローラホルダの本体における上記貫通長孔に対する一対のローラの嵌入、組付けを、特許文献1の図5図9に示されているような複雑な操作で行う必要がなく、その操作を簡単化することができ、必要に応じて上記ローラの嵌入、組付けを機械化することもできる。
【0019】
上記ロック装置においては、上記ローラホルダにおける一対のローラが貫通長孔から離脱するのを抑止する抑止部材を、ローラホルダの周枠の内周に設けた段部に穿設されている薄板挿入孔に挿入垂下させた抑止板により構成し、該抑止板は、上端に上記段部に係止する係止部を設けて該段部から上記貫通長孔に嵌入したローラの端部に当接するように垂下させるのが望ましい。
上述のような抑止板を用いて上記ローラを貫通長孔に保持させると共に、該ローラが貫通長孔から脱出しないように保持させる構成は、ローラホルダの本体の成形を容易にするだけでなく、組立の容易性を図ることにより、より小型、軽量化すると同時に、生産性の向上、製品の低廉化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上に詳述した本発明の直線運動ロッドのロック装置によれば、直線運動するロッドに外嵌して該ロッドを締め付けることによりそれをロックするブレーキ部材を備えた既知のロック装置を、その部品の構造の改変、組立の容易性を図ることにより、より小型、軽量化すると同時に、生産性の向上、製品の低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る直線運動ロッドのロック装置の実施例の手動によるロッドのロック開放状態を示す直線運動ロッドに直交する断面図である。
図2】同実施例の手動によるロック状態を示す断面図である。
図3】上記実施例における直線運動ロッドに沿う方向の要部縦断面図である。
図4】上記実施例において用いているローラホルダの分解斜視図である。
図5】上記ローラホルダにおけるローラの保持状態を示す要部拡大断面図である。
図6】既知の直線運動ロッドのロック装置についての上記図2と同様な位置での断面図である。
図7】同既知の直線運動ロッドのロック装置についての上記図3と同様な位置での要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2は、本発明に係る直線運動ロッドのロック装置の代表的な実施例を、それぞれ手動によるロック開放状態及びロック状態において、その直線運動ロッドに直交する断面図により示すものであり、図3は、該実施例を直線運動ロッドに沿う方向の要部縦断面図によって示している。
この直線運動ロッドのロック装置10は、図3に示す流体圧シリンダ装置1等の直線運動するロッド2を備えた機器において、該ロッド2の軸線方向移動をロックするための装置として、ロックしようとするロッド2を備えた上記流体圧シリンダ装置1等における該ロッド2の導出部であるロッドカバー3に取り付けられるものである。
【0023】
上記流体圧シリンダ装置1等に固定されるロック装置本体11は、ロック装置10において上記ロッド2を貫通させるケーシングを形成するもので、該ロック装置本体11の内部に、上記ロッド2に外嵌して該ロッドを締め付けることによりそれをロックするブレーキ部材20を備えている。上記ブレーキ部材20は、上記ロッド2の外径よりも小さい内径を有する金属製の厚肉円筒で、その周面の一部に、軸線方向に向けて切設したスリット状の開口部20aを切設して該開口部の両側において相対峙する一対の受圧部21を形成したものである。
【0024】
また、上記ロック装置本体11には、その上蓋11aの内面と該ロック装置本体11の内部に収容したロック解除用のピストン13との間にピストン室12が区画形成され、ロック装置本体11の上面の上蓋11aには、該ピストン室12に連通する圧力流体の給排ポート14を開設している。上記ロック解除用のピストン13は、給排ポート14を通じての上記ピストン室12への圧力流体の供給により、後述するように、ブレーキ部材20における一対の受圧部21間を押し開くものである。上記ブレーキ部材20における受圧部21と上記ピストン13との間には、該ピストンに対して給排ポート14からの圧力流体が作用しなくなったときに該ピストンを図2の位置に復帰させる復帰バネ18を介装している。
【0025】
一方、上記ロック装置本体11の上蓋11aには、上記ピストン13を手動によりロック開放状態に保つ位置に移動させるため、ピストン室12内において上記ピストン13の中心部をロック開放方向に押圧する押圧子15を設け、該押圧子15における周囲に押圧ネジ15bを刻設した軸部15aを、ロック装置本体11の上蓋11aの螺挿孔16に螺挿し、該螺挿孔16内においてその螺動用操作端15cをロック装置本体11外に臨ませている。
【0026】
更に、上記押圧子15には、ピストン13の上面中央の凹部内に当接する円板状の押圧板部15dを設け、該押圧板部15dにおけるピストン室12内で上記上蓋11a内面の螺挿孔16の周辺に当接する部位に、シール材17を付設している。上記押圧子15は、ロック装置本体11外からの手動による押圧ネジ15bのねじ込みにより、上記押圧板部15dでピストン13をロック解除位置まで押し込み可能なものであり、また、押圧ネジ15bのねじ戻しによるロッド2のロック時には、該螺挿孔16の周囲を上記シール材17でシールするものである。
【0027】
上記押圧子15は、ロック装置本体11の螺挿孔16に上記軸部15aを該本体11の内側から螺挿し、該螺挿孔16内においてその操作端15cをロック装置本体11外に出没可能に形成し、ロック装置本体11外からの手動でのねじ込みよりピストン13を押圧し、図1に示すような上記ロッド2のロック解除位置まで移動させることが可能なものであるが、該軸部15aは、上記ロッド2のロック解除時には、その操作端15cが螺挿孔16から外部に突出しない長さを有している。一方、該押圧ネジ15bのねじ戻しによる上記ロッド2のロック時には、図2に示すように、上記操作端15cが螺挿孔16から外部に突出し、且つ、上記押圧子15における押圧板部15dに設けたシール材17により螺挿孔16の周囲をシールするものである。
【0028】
上記押圧子15の操作端15cを螺挿孔16から外部に突出または非突出とするのは、該押圧ネジ15bの手動でのねじ戻しによるロッド2のロック時と、上記押圧子15のねじ込みによるロック解除時とを外部から目視で確認するためのインジケータとして機能させるためである。この構成は、図6及び図7に示す既知のものに較べて、インジケータとしても利用できる手動操作ボルト60或いは防塵カバー61の不使用時における別途保管と使用時におけるそれらの装着の必要をなくし、簡易な押圧子15の螺挿、螺脱のみによって、ロッド2のロック及びその解除を行うと同時に、その状態をインジケータにより表示可能にできる点で有利なものである。
【0029】
上記構成を有する直線運動ロッドのロック装置によれば、ロック装置本体11の螺挿孔16に対して、押圧子15の押圧ネジ15bを深くまでねじ込み、即ち、ロック解除用のピストン13の手動による押入で、ブレーキ部材20における一対の受圧部21間を押し開いた状態にあるとき(図1参照)には、上記ブレーキ部材20によるロッド2の締め付けが解除されていることから、給排ポート14からピストン室12に圧力流体を供給したりすることなく、流体圧シリンダ装置1の駆動によりそれを自由に動作させることができる。
また、上記押圧ネジ15bのねじ戻しにより上記押圧子15によるピストン13の押圧を解除すれば、図2に示すように、該ブレーキ部材20自体の弾性力によるロッド2の締め付けでブレーキ部材20がロック位置に戻される。
【0030】
これに対し、上記押圧子15における押圧ネジ15bのねじ戻しによる上記ロッド2のロック時には、ピストン室12内でロック装置本体11内面の螺挿孔16の周辺に対向する押圧子のシール材17が、螺挿孔16の周囲に当接してそれを安定的にシールするので、ロック装置本体11の給排ポート14から上記ロッド2のロック解除のためにピストン室12に圧力流体を供給すれば、ロック解除用のピストン13が安定的に駆動される。ピストン室12内の圧力流体を上記給排ポート14から排出すれば、復帰バネ18の付勢力によりピストン13が復帰して再びロッドがロックされるのは勿論である。
【0031】
上記ロック解除用のピストン13は、上記給排ポート14を通してピストン室12に給排される圧力流体で駆動され、或いは、上記押圧子15での押圧によっても駆動されるものであるが、該ロック解除用ピストン13は、流体圧が作用するピストン部材13aと、上記ブレーキ部材20における一対の受圧部21を押し開くためのテーパ状拡開部材13bとを、接合面の凹凸部の嵌合及び連結ネジ13cの螺挿により結合一体化して形成したものである。なお、上記ピストン部材13aと拡開部材13bとの連結は、図示の構造に限らず適宜手段を用いて行うことができる。
【0032】
このような構成によれば、後述のローラ33を介して上記ブレーキ部材20における一対の受圧部21を押し開くために局部的に大きな力を受けるテーパ状拡開部材13bと、全面的にピストン室12の流体圧が作用して局部的に大きな力の作用が殆どないピストン部材13aとを、例えば、前者に適した耐摩耗性材料や、後者に適した合成樹脂材料等でそれぞれ個別的に成形することにより、ロック解除用のピストン13を安価で耐久性が高いものとすることが可能になる。
【0033】
また、前述したように、上記押圧子15は、ロック装置本体11内面の螺挿孔16の周辺に当接するシール材17を設け、押圧子15のネジ戻しによるロック時に、該シール材17で該螺挿孔16の周囲をシールするように構成しているが、この構成は、上記図6及び図7に示す既知のものに較べて、螺挿孔16のシールの安定化及びロック装置本体11の薄型化のために非常に有効なものである。
【0034】
即ち、先に詳述しているように、図6及び図7に示す既知のものでは、手動操作ボルト60の螺挿孔46とそれに嵌入しているピストン43上の押圧突子45との間を、該螺挿孔46の内部に設けたシールリング47でシールしているため、上記螺挿孔46の長さを、ピストン43のストロークに、手動操作ボルト60の螺入を開始できるようにするためのネジ溝の余裕を付加した長さに形成する必要がある。
これに対し、本発明のロック装置においては、上記押圧子15に螺挿孔16の周辺に当接するシール材17を設けているので、該螺挿孔16を十分に短くすることができ、結果的に、ロック装置本体11の上蓋11aを薄くし、ひいてはロック装置本体をそれだけ薄型化、軽量化することができる。
【0035】
更に、ロック装置10においては、上記ブレーキ部材20を収容するロック装置本体11を、上記ロッド2を備えた流体圧シリンダ装置1等と一体に連結するに当たり、上記ロッド2が貫通する側の一方の端面を該流体圧シリンダ装置1におけるロッドカバー3の外面で閉鎖すると共に、他方の端面を、上記ロッド2を貫通させて支持する端板4を押え板5でロック装置本体11に固定することによって閉鎖し、それにより、一般的に、ロック装置本体11と上記流体圧シリンダ装置1との間に介在させるスペーサ63(図7参照)を省略し、製品が小型、軽量化され、また、ロッドのサイズが同一である別シリーズの流体圧シリンダ装置に対し、或いは、上記ロック装置本体11の他方の端面を閉鎖する端板4とブレーキ部材20をロッドのサイズに適合させるものとして別設することにより、ロッドのサイズを異にする流体圧シリンダ装置1に対しても、ロック装置本体11の部品の一部を共用可能に構成している。
【0036】
上記ブレーキ部材20における一対の受圧部21と、該受圧部21間を押し開くロック解除用のピストン13に設けたテーパ状拡開部材13bとの間には、図4及び図5に明瞭に示すように、摩擦力の軽減のために、軸線を該拡開部材13bの押入方向と直交させて介在させる一対のローラ33を転動可能に保持するローラホルダ30を備えている。該ローラホルダ30は、そのホルダ本体31における筒状の周枠31aの内側下部における対向位置に、ローラ支持用の対向壁31bを設け、該対向壁31bに一対の平行配置のローラ33の各両端を、該一対のローラ33が相互に接離する方向に移動可能に嵌入することにより、それらを遊動自在に保持する貫通長孔31dを穿設している。対向する該貫通長孔31dに嵌入した一対のローラ33がその軸線方向に該貫通長孔31dから離脱するのを抑止するには、上記周枠31aに、その離脱を抑止する抑止部材34を設ければよい。
このように構成したローラホルダ30は、特許文献1の図5図9に示されているものに比して構成が簡単であるだけでなく、組立が非常に容易なものである。
【0037】
該抑止部材34としては、ローラ33がその軸線方向に移動するのを抑止する手段であればよいが、図4及び図5に示すように、ローラホルダ30の周枠31a内周の対向壁31b上の段部31cに、一対のローラ33の移動幅よりも長いスリット状の薄板挿入孔31eを穿設し、該薄板挿入孔31eに挿入してローラ33の端部まで垂下させるようにした係止部34b付きの抑止板34aにより構成するのが、簡単で組立が容易であることから望ましい。上記抑止板34aは、上記段部31cに係止する係止部34bを折曲形成した金属板などで簡単に形成できるものである。なお、上記抑止板34aは、一対のローラ33の移動幅よりも長いものである必要はなく、一対のローラ33の軸線方向の移動を抑止できるものであればよい。
【0038】
更に、上記ローラホルダ30は、ブレーキ部材20における一対の受圧部21と、ロック解除用のピストン13のテーパ状拡開部材13bとの間において円滑に転動させるため、上記ピストン13の移動方向に若干移動可能とし、上記段部31cとホルダ本体31における周枠31aの上端に形成したフランジ部31fとの間に復帰バネ35を介装し、ピストン13側に付勢するようにしている。
このように、上記段部31cに上記抑止板34aの係止部34bを係止させると共に、該段部31cを、復帰バネ35のバネ座とすることにより、上記薄板挿入孔31eに挿入してローラ33の端部まで垂下させるようにした抑止板34aの係止部34bを上記復帰バネ35で常に上記段部31cに押し付けることができ、該抑止板34aの装着を一層安定化させることができる。
【符号の説明】
【0039】
2 ロッド
10 ロック装置
11 ロック装置本体
12 ピストン室
13 ピストン
14 給排ポート
15 押圧子
15b 押圧ネジ
15c 操作端
16 螺挿孔
17 シール材
20 ブレーキ部材
20a 開口部
21 受圧部
30 ローラホルダ
33 ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7