【解決手段】スライド弁は、入口側ポートが開口する弁室6を画定する弁本体5、弁室内に配置され、弁座面7aにおいて少なくとも1つの出口側ポート8,9が弁室に対して開口する弁座7、ソレノイド18により駆動されるプランジャ15、プランジャに一体的に組み込まれている連結杆12、連結杆に保持され、少なくとも1つの出口側ポートを開閉する弁体11であって、弁座の弁座面上でスライドし、出口側ポートを開閉するシール面およびシール面に対向する背面を備えている弁体、および弁体の背面に当接し、弁体を弁座の弁座面に押し付ける板バネ13を少なくとも含んでいる弁体アセンブリを少なくとも備え、出口側ポートを開閉するスライド弁において、板バネには、突起が形成され、弁体の背面には、板バネに形成されている突起が当接する底面を含む段部が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のスライド弁においては、弁室に開口する入口側ポートは、通常、圧縮機の吐出側に接続されている。したがって、入口側ポートから弁室内に流入する高圧の流体は、板バネの押圧力に加えて出口側ポートが開口する弁座面に対してスライド弁の弁体(のシール面)を押し付けることに寄与し、弁体が閉じている出口側ポートへの流体の流れを確実に遮断している。
【0008】
しかしながら、例えば、圧縮機が停止した場合において、入口側ポートから入ってくる流体の圧力がほとんど無くなる。他方、閉じられていた出口側ポートの下流側に存在する流体の圧力は、瞬間的には変わらないため、弁体を挟む前後の圧力は、相対的に下流側の圧力が高くなる場合が生じる。この場合、弁体を挟む流体の圧力差が、弁体を弁座(面)に押しつけている板バネの押圧力を越える(逆圧状態になる)と、弁体が、閉じられている出口側ポートが開口する弁座の弁座面から浮き上がり、弁体によるシール状態が壊される。通常は、瞬時に流体の圧力差が無くなることで、弁体が元の状態に戻り、シール状態も元に戻り、弁体のスライドにもなんら影響を及ぼすことが無い。
【0009】
ところで、上述したように、弁体は、貫通孔内に出入り自在に挿入される構造になっており、弁体と貫通孔との間に設計公差による若干の隙間が存在する。このような設計公差などに伴う隙間の存在により、逆圧により弁体が浮き上がると、弁体が傾斜し、場合によっては弁体の傾斜状態がロックされてしまう。言い換えると、弁体は、該弁体がスライドする方向に対して直角を成す状態を維持することができなくなり、したがって、弁体のシール面が弁座の弁座面に対して傾斜することになる。このように弁体が傾斜すると、弁体は、出口側ポートに対してシールをすることが不可能になるとともに、弁体の一部が出口側ポート内に入り込むことで弁体がスライドすることができなくなる恐れも生じる。
【0010】
あるいは、ソレノイドに通電し、プランジャが動き始めると、弁体の動きとともに、2つの出口側ポートの両方が「開」となる瞬間がある。このとき、入口側ポートの径の大きさ(供給量)より出口側ポートの径の大きさが大きくなるため、圧力バランスが崩れ、さらに、ポート切り換えの最中で弁体が動いているので、該弁体が傾斜し、そのままロックされることもある。
【0011】
このような弁体の傾斜を避けるために、弁体を押圧する板バネのバネ定数を大きくしたり、弁体の高さ(背面とシール面との間の距離)を大きくしたり、あるいは、設計公差を厳しくすることが考えられる。しかしながら、これらの解決策では、単純に材料費や製造費を上昇させるので好ましくない。
【0012】
本発明の目的は、簡単な構造で逆圧時に傾斜することが防止されるスライド弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係るスライド弁は、入口側ポートが開口する弁室を画定する弁本体、弁室内に配置され、弁座面において少なくとも1つの出口側ポートが弁室に対して開口する弁座、ソレノイドにより駆動されるプランジャ、該プランジャに一体的に組み込まれている連結杆、該連結杆に保持され、少なくとも1つの出口側ポートを開閉する弁体であって、弁座の弁座面上でスライドし、該出口側ポートを開閉するシール面および該シール面に対向する背面を備えている弁体、および弁体の背面に当接し、該弁体を弁座の弁座面に押し付ける板バネを少なくとも含んでいる弁体アセンブリを少なくとも備え、出口側ポートを開閉するスライド弁において、板バネには、突起が形成され、弁体の背面には、板バネに形成されている突起が当接する底面を含む段部が形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るスライド弁は、また、入口側ポートが開口する弁室を画定する弁本体、弁室内に配置され、弁座面において1つの出口側ポートおよび2つの出入口兼用ポートが弁室に対して開口する弁座、ソレノイドにより駆動されるプランジャ、該プランジャに一体的に組み込まれている連結杆、該連結杆に保持され、弁座面において開口する出口側ポートと2つの出入口兼用ポートのうちの一方のポートを、通路を介して連通させるとともに、2つの出入口兼用ポートのうちの他方のポートを、弁室に対して開かせる弁体であって、弁座の弁座面上でスライドし、通路、弁室に対して通路をシールするシール面および該シール面に対向する背面を備えている弁体、および弁体の背面に当接し、該弁体を弁座の弁座面に押し付ける板バネを少なくとも含んでいる弁体アセンブリを少なくとも備え、流体の流路を切り換えるスライド弁において、板バネには、突起が形成され、弁体の背面には、板バネに形成されている突起が当接する底面を含む段部が形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るスライド弁は、また、弁体の背面に形成される段部が、溝部であってもよいし、背面突出部であってもよい。
【0016】
本発明に係るスライド弁において、連結杆は、基端部および末端部を有し、連結杆の末端部には、弁体が挿入され、保持される貫通孔が形成されるとともに、弁体と貫通孔との間に隙間が形成されていることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明に係るスライド弁においては、板バネは、基端部、弾性変形部および末端部を有し、板バネの基端部は、連結杆の基端部に固定され、板バネの末端部には、段部の底面に当接する突起が形成されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係るスライド弁においては、プランジャは、ソレノイドにより駆動されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るスライド弁は、上述のような構成を備えているので、弁体が逆圧で浮き上がったとき、弁体が傾斜したり、ずれたりすることが抑えられ、弁体が傾斜し、あるいはずれたままの状態で弁体がロックされることがない。したがって、弁体のシール性能が低下することがない。また、スライド弁を組み立てるとき、弁体のシール面との明確な構造の違いにより、弁体を連結杆の貫通孔内に容易に且つ正しく挿入することができる。さらに、弁体の構造が簡単であるので製作コストの上昇が抑えられる。また、弁体と貫通孔との間に隙間が形成されることで、弁体の移動が円滑に実行され得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、本発明に係るスライド弁の代表的な実施形態の断面図が示されている。本発明に係る実施形態として
図1に示されているスライド弁は、自動販売機に用いられる三方弁として例示されているが、本発明は、これに限られるものではなく、後述するように、空気調和機や冷凍機等に組み込まれる四方弁としてのスライド弁にも適用可能である。
【0022】
本実施形態に係るスライド弁1は、
図1において上下方向垂直に延在する中心軸O−Oを有し、概略、弁本体5、弁体アセンブリ10、ソレノイド18を備えている。
【0023】
スライド弁1を構成する弁本体5は、入口側ポート(不図示)を介して上流側流路に連通する入口側継手2に連結され、出口側ポート8および9を介してそれぞれ下流側流路に連通する出口側継手3および4に連結される弁室6を画定している。弁室6内には出口側継手3および4の開口端部が差し込まれている弁座7が設けられ、弁座7の弁座面7aには、それぞれ出口側継手3および4に連通する出口側ポート8および9が開口するように形成されている。なお、入口側継手2、出口側継手3および4は、限定されるものではないが、それぞれの軸がスライド弁1の中心軸O−Oに対して直交するように配置され、弁座7の弁座面7aは、中心軸O−Oに対して平行に配置されることが好ましい。
【0024】
本実施形態において、スライド弁1を構成する弁体アセンブリ10は、
図2および3に示されるように、概略、弁体11、板バネ13、連結杆12およびプランジャ15を備える。また、
図2および3に示されるように、スライド弁1の中心軸O−Oが、連結杆12およびプランジャ15の中心を通っている。
【0025】
弁体アセンブリ10を構成するプランジャ15は、
図1において、ソレノイド18にリード線25を介して電流が流れたとき、コイルバネ16の付勢力に抗して移動し、弁体11をスライドさせる部材である。
図1において、弁体11が上方にスライドすると、出口側ポート8が開けられ、出口側ポート9が閉じられることで流路が切り換えられる。プランジャ15は、
図1〜3に示されるように、中心軸O−Oに沿って、プランジャ15を上下に貫通する中心孔15aが形成されている。該中心孔15aは、断面円形であり、中間に上から第1段部15bおよび第2段部15cを備え、直径を変化させている。第1段部15bでは、直径を小さくすることで、コイルバネ16の一端部を保持する。なお、コイルバネ16の他端部は、吸引子17に保持される。第2段部では、直径を大きくすることで、連結杆12の基端部12bを収容する。さらに、プランジャ15の中心孔15aの下端部には、中心孔15aを閉じるように開口縁15dが形成され、中心孔15a内に収容された連結杆12の基端部12bに対して開口縁15dを変形させてカシメ固定することで、連結杆12をプランジャ15に装着する。
【0026】
弁体アセンブリ10を構成する連結杆12は、弁体11を保持する扁平な板状部材であって、基端部12bおよび末端部12cを備えている。連結杆12の末端部12cにおいて断面長円形の貫通孔12aが形成され、弁体11を保持する。貫通孔12aは、連結杆12を含む弁体アセンブリ10がスライド弁1として組み立てられたとき、弁体11の中心軸A−Aがスライド弁1の中心軸O−Oに対して直角を成すように、連結杆12の末端部12cに形成される。貫通孔12aの断面形状は、弁体11の基部11aの断面形状と概略同じであって、本実施形態では、貫通孔12aの断面形状は長円形である。貫通孔12aの大きさは、少なくとも、弁体11の基部11aが(
図3において左右方向に)出入り可能な大きさに所望の寸法公差の範囲内で設定されればよい。なお、本実施形態においては、貫通孔12aの長さ(
図3において、貫通孔12aの上下方向の長さ)は、弁体11の長さ(
図4(a)において、基部11aの左右の長さ)に対して若干の隙間が存在するように、弁体11の長さより大きく形成されている。このように貫通孔12aの長さを弁体11の長さより若干大きく形成すると、
図1において、プランジャ15と一体に形成されている連結杆12が上下方向に移動するとき、先に連結杆12が移動して後、弁体11が移動するように構成することができる。したがって、弁体11の移動(スライド)が円滑に行われる。
【0027】
弁体アセンブリ10を構成する板バネ13は、基端部13aおよび末端部13bを備え、基端部13aにおいて固定金具14により連結杆12に固定され、末端部13bにおいて、突起13cを介して弁体11の溝部11eの底面11fを押圧する。本実施形態では、突起13cの断面形状は、円弧状である。板バネ13は、基端部13aと末端部13bとの間に弾性変形部としての傾斜部13eが形成されている。
【0028】
弁体アセンブリ10を構成する弁体11は、シール面11cが弁座7の弁座面7aに面接触しながらスライドし、出口側ポート8および9を開閉し、通路を切り換える部材である。弁体11は、中心軸A−Aを有し、上述したように、連結杆12に保持される。本実施形態に係る弁体11は、
図4(a)〜(d)に示されるように、断面長円形の基部11a、断面略正方形の突出部11bを備えている。弁体11の基部11aは、平坦な背面11dに、該背面11dに対して段部を形成する溝部11eが形成される。また、弁体11の突出部11bは、基部11aから上方に突出し、その上面は、基部11aの背面11dに対向し、平坦なシール面11cとして形成される。
【0029】
弁体11は、スライド弁1として組み立てられたとき、
図1に示されるように、弁体11の中心軸A−Aがスライド弁1の中心軸O−Oに対して、したがって、弁座面7aに対して、直角を成すように連結杆12に保持される。弁体11の基部11aの背面11dに形成される段部としての溝部11eの底面11fには、板バネ13の末端部13bに形成される円弧状の突起13cが当接する。それにより、弁体11のシール面11が、弁座7の弁座面7aに押し付けられる。したがって、弁体11は、出口側ポート8または9を開閉するとともに、シールする。
【0030】
なお、弁体11の背面11dに形成される溝部11eは、本実施形態では、
図4(c)に示されるように、背面11dを左右方向に横切って延在するように形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、
図4(c)において、溝部11eが左右両端を基部11aにより塞がれている状態、すなわち、断面矩形状の凹部として形成されていてもよい。該凹部は、背面11dに対して段部を成している。本実施形態においては、凹部で段部を形成するとき、凹部の長さ(
図4(c)において、凹部の左右方向の長さ)は、貫通孔12aの長さと弁体11の長さとの間の差(貫通孔12aと弁体11との間に形成される隙間の長さ)より大きく設定される。このように設定する理由は、以下の通りである。すなわち、本実施形態では、上述したように、板バネ13が連結杆12と一体にされており、また、連結杆12とプランジャ15も同様に一体にされている。したがって、プランジャ15が移動を開始した瞬間は、弁体11は停止したままであり、連結杆12のみが貫通孔12aと弁体11との間の隙間分先に移動する。同様に、連結杆12と一体である板バネ13の突起13cは、停止している弁体11の背面11dに形成されている凹部の底面上を移動する。貫通孔12aと弁体11との関係をこのように構成することで、弁体11の移動が円滑に実行され得る。
【0031】
本実施形態では、また、板バネ13の末端部13bは、該末端部13bに形成された突起13cが弁体11の溝部11eの底面11fに当接するように構成される。また、板バネ13の突起13cを除く平坦な末端部13bが弁体11の背面11dの少なくとも一部を覆うように配置されることが好ましい。このように配置することで、例えば、
図1に示されるように閉じていた出口側ポート8から弁体11が逆圧で浮き上がったとき、弁体11の背面11dが、該背面11dを覆っている板バネ13の平坦な末端部13bに当接する。それにより、弁体11の回転が妨げられ、弁体11が中心軸A−Aに対して傾斜したり、弁体11がずれたりする度合いが抑えられる。そのため、逆圧が解消されたときには、弁体11は、傾斜状態にロックされること無く、当初の位置、すなわち出口側ポート8を閉じ、これをシールする位置に速やかに戻ることができる。
【0032】
弁体11の変形例が
図5(a)〜(d)に例示されている。本変形例において、弁体11は、基部11aの背面11dから後方(シール面11cと逆方向)に突出する断面円形状の背面突出部11gが形成される点でのみその構成が異なり、その他の構成は、上記実施形態と同じである。形成される背面突出部11gは、上記溝部11eとは凹凸逆ではあるが、背面11dに対して段部を形成している。この変形例の場合、板バネ13の末端部13bに形成される突起13cには、背面突出部11gが通り抜けできるように所望の形状(例えば、円形またはスリット状)の窓13dが開けられている。したがって、突起13cは、段部の底面としての背面11dに当接し、弁体11を弁座7に向けて押圧する。このように構成することで、当該変形例における弁体も上記
図4(a)〜(d)に示される実施例と同じ作用効果を奏する。
【0033】
また、弁体11の背面11dにこのような段部(溝部、凹部または突出部)を形成することで、弁体11をスライド弁1として組み立てられるとき、シール面11cとの明確な構造の違いにより、連結杆12の貫通孔12a内に正しく挿入される。
【0034】
弁体11のさらに別の変形例が
図6(a)〜(d)に例示されている。本変形例において、弁体11は、基部11aの楕円形の平坦な背面11dに楕円形の段部を形成する溝部11eが形成されることと、平坦な背面11d上に、溝部11eから楕円形の長軸方向に背面11dの周囲まで伸び、弁室6に連通する逆組立検知用溝11hが2本形成される構成が異なり、その他の構成は、上記
図4(a)〜(d)に示す実施形態と同じである。
【0035】
弁体11の基部11aの背面11dに形成される段部としての溝部11eの底面11fには、板バネ13の末端部13bに形成される円弧状の突起13cが当接する。それにより、弁体11のシール面11が、弁座7の弁座面7aに押し付けられる。したがって、弁体11は、出口側ポート8または9を開閉するとともに、シールする。
【0036】
弁体11は、スライド弁1として組み立てられたとき、
図1に示されるように、弁体11の中心軸がスライド弁1の中心軸O−Oに対して、すなわち、弁座面7aに対して、直角を成すように連結杆12に保持される。さらに、弁体11が逆に設置して組み立てられないように、自動検査器で検査される。自動検査器では、出力側ポート8及び9のいずれかを弁体11で閉じた状態にして、入力側継手2からエアを送り込み、出力側ポートでエアの漏れがないかを検出する。このとき逆組立検知用溝11hがない場合には、逆置きして組み立てられたときに出力側ポート8及び9に、弁体11の背面11dが、隙間なく接触し、エアが漏れない場合がある。逆組立検知用溝11hがある場合には、弁体11が逆置きして組み立てられた場合、この逆組立検知用溝11hからエアが漏れ、弁体11が逆置きして組み立てられたことを確実に検出できる。
【0037】
その他の構成については、上記
図4(a)〜(d)、
図5(a)〜(d)に示される実施例と同じ構成を有し、当該変形例における弁体も上記
図4(a)〜(d)、
図5(a)〜(d)に示される実施例と同じ作用効果を奏する。なお、本実施形態では、逆組立検知用溝11hは、楕円形の長軸方向に2本設けるものとしたが、これには限定されず、1本設けるものとしても、4本設けるものとしてもよく、自動検査器で弁体11が逆置きされた場合にエアが抜け、逆置きして組み立てられたことを検出できればよい。
【0038】
最後に、スライド弁1を構成するソレノイド18は、中心に弁体アセンブリ10のプランジャ15を収容することができる空間18aを備えるように、外函19内に電気絶縁性の合成樹脂でモールド成形されている。本実施形態では、上部が外函19で塞がれている空間18a内に、吸引子17と溶接により一体化されているプランジャチューブ20が挿入され、取り付けビス21により吸引子17が外函19に固定される。このとき、プランジャチューブ20内には弁体アセンブリ10のプランジャ15が嵌め込まれており、プランジャ15は、
図1において、プランジャチューブ20内を上下方向に移動することができる。また、上述したように、吸引子17とプランジャ15との間には、コイルバネ16が装着される。該コイルバネ16により、吸引子17とプランジャ15とは、互いに離れる方向に付勢されている。本実施形態では、上述したことから理解されるように、吸引子17、プランジャチューブ20、コイルバネ16、弁体アセンブリ10、弁本体5および入口側継手2、出口側継手3および4は、予め一体にされる。該一体化された弁部材(吸引子17やプランジャ15)をソレノイド18の空間18a内に挿入することで、スライド弁1として容易に組み立てられることができる。
【0039】
本実施形態においては、ソレノイド18に電流が流れていないときは、
図1に示されるように、プランジャ15は、コイルバネ16に付勢されて下方に位置し、したがって、弁体11は、出口側ポート8を閉じている。この場合、出口側ポート9が開いているので、流体は、継手2から継手4に流れる。他方、リード線25を介してソレノイド18に電流が流れると、吸引子17がプランジャ15を引き寄せることで、プランジャ15が駆動され、上方に移動する。それにより、プランジャ15と一体化されている弁体11は、
図1において、弁座面7a上を上方にスライドし、出口側ポート8が開けられ、出口側ポート9が閉じられる。この場合、出口側ポート8が開いているので、流体は、継手2から継手3に流れる。
【0040】
次に、空気調和機や冷凍機等に組み込まれ、流路を切り換える四方弁としてのスライド弁100について
図7を用いて簡単に説明する。
【0041】
本実施形態に係るスライド弁100は、
図1に示される第1の実施形態と同様に、
図7において上下方向垂直に延在する中心軸O−Oを有し、概略、弁本体105、弁体アセンブリ、ソレノイド118を備えている。
【0042】
スライド弁100を構成する弁本体105は、弁室106を画定している。本実施形態では、弁室106は、入口側ポート101aおよび出口側ポート103aを介してそれぞれ上流側流路に連通する第1の継手101および下流側流路に連通する第3の継手103に連結されている。弁室106は、また、出入口兼用ポート102aおよび104aを介してそれぞれ第2の継手102および第4の継手104に連結される。第2の継手102および第4の継手104は、弁体111がスライドすることにより流路としての機能を切り換えられる。例えば、第2の継手は、スライド弁100に対して上流側流路から下流側流路に、また、第4の継手は、下流側流路から上流側流路に切り換えられる。弁室6内には、第2〜第4の継手102〜104の開口端部が差し込まれている弁座107が設けられる。弁座107の弁座面107aには、第2、第3および第4の継手102、103および104にそれぞれ連通する出入口兼用ポート102a、出口側ポート103aおよび出入口兼用ポート104aが弁室106に対して開口している。
図7に示されるように、弁座面107aに開口するポートは、出入口兼用ポート104a、出口側ポート103a、出入口兼用ポート102aの順に上から配置されている。出口側ポート103aを挟んで2つの出入口兼用ポート102aおよび104aが配置されることで、弁体111がスライドすると、後述するように、流路が切り換えられる。なお、第1〜第4の継手101〜104は、上記第1の実施形態と同様に、それぞれの軸がスライド弁1の中心軸O−Oに対して直交するように配置され、弁座107の弁座面107aは、中心軸O−Oに対して平行に配置されることが好ましい。
【0043】
本実施形態において、弁体111、板バネ113、連結杆112およびプランジャ115を備える弁体アセンブリは、上記第1の実施形態と同様に、スライド弁100の中心軸O−Oが、連結杆112およびプランジャ115の中心を通っている。
【0044】
本実施形態においては、弁体アセンブリは、上記第1の実施形態と比べて、弁体111の構造が若干異なる(具体的には、通路111hを備えている)のみでその他の構造は、上記第1の実施形態と同じである。したがって、ここでは、弁体111の構造について上記第1の実施形態と異なる部分について説明するのみでその他の部分についての説明は省略する。なお、本実施形態に係る弁体アセンブリのその他の部分の詳細な説明は、上記第1の実施形態の弁体アセンブリ10に関連する説明において、数字100を加えて読むことで理解することができる。
【0045】
本実施形態における弁体アセンブリを構成する弁体111は、シール面111cが弁座107の弁座面107aに面接触しながらスライドする点では、上記第1の実施形態と同じである。本実施形態では、弁体111は、出入口兼用ポート102aおよび104aと出口側ポート103aとの連通の態様を変更し、流体の流路を切り換える部材である。弁体111は、中心軸を有し、連結杆112に保持される。本実施形態に係る弁体111は、
図7に示されるように、シール面111c、該シール面111cに対向する背面および溝状の通路111hを備えている。シール面111cは、弁座面107aに接触し、
図7において上下方向にスライドするとともに、通路111hの周囲をシールする。通路111hは、シール面111cで開放する断面概略U字形の空間であって、弁座面107aに開口する出口側ポート103aと出入口兼用ポート102aまたは104aとを連通させる。
【0046】
本実施形態におけるスライド弁100を構成するソレノイド118についても、上記第1の実施形態と同様の構造を備えており、説明は省略する。なお、具体的な構造は、上記第1の実施形態のソレノイド118に関連する説明において、数字100を加えて読むことで理解することができる。
【0047】
本実施形態においては、ソレノイド118に電流が流れていないときは、
図7に示されるように、プランジャ115は、コイルバネ116に付勢されて下方に位置する。このとき、弁体111は、通路111hを介して入口側ポートとして機能する出入口兼用ポート102aと出口側ポート103aを連通させるとともに、出入口兼用ポート104aを弁室106に対して出口側ポートとして機能するように開放させる。したがって、流体は、入口側継手としての第1の継手101から出口側継手として機能する第4の継手104へおよび入口側継手として機能する第2の継手102から出口側継手としての第3の継手103に流れる。他方、リード線25を介してソレノイド118に電流が流れると、吸引子117がプランジャ115を引き寄せることで、プランジャ115が駆動され、上方に移動する。それにより、プランジャ115と一体化されている弁体111は、
図7において、弁座面107a上を上方にスライドする。このとき、弁体111は、流路111hを介して入口側ポートとしての出入口兼用ポート104aと出口側ポート103aを連通させるとともに、出入口兼用ポート102aを弁室106に対して出口側ポートとして機能するように開ける。したがって、流体は、入口側継手としての第1の継手101から出口側継手として機能する第2の継手102へおよび入口側継手としての第4の継手104から出口側継手としての第3の継手103へ流れることで、流体の流路が切り換えられる。
【0048】
本明細書では、三方弁や四方弁について説明してきたが、本発明に係るスライド弁は、弁座に4つ以上のポートが開口する多方弁の場合にも同様に適用可能である。