【解決手段】検査領域R内の磁界の変化を検出する検出部12と、その作動を制御する検出制御部14とを備えた金属検出機本体10を診断する金属検出機の診断装置であって、検出部12を複数種類の作動条件で作動させる作動条件切替部51と、種類毎の作動条件での作動結果について許容可能度合を個別判定する個別判定部52と、種類毎の作動結果を基に2種類以上の種類毎の作動結果を組み合わせて金属の検出性能に関連する結合作動結果を作成し、その結果について許容可能度合を判定する少なくとも1つの結合判定を実行する結合判定部53と、個別判定結果および結合判定結果に応じて金属検出性能の良否を判定する総合判定を実行する総合判定部55とを有する。
被検査物(W)が通過する検査領域(R)内の磁界の変化を検出して前記被検査物中の金属を検出する検出手段(12)と、前記検出手段の作動を制御する検出制御手段(14)とを備えた金属検出機(10)を診断する金属検出機の診断装置であって、
前記検出制御手段と協働して、前記検出手段を予め設定された複数種類の作動条件で作動させる作動条件切替手段(51)と、
前記複数種類のうち種類毎の作動条件での作動結果について許容可能度合を個別判定する個別判定手段(52)と、
前記複数種類の作動条件についての前記種類毎の作動条件での作動結果を基に、2種類以上の前記種類毎の作動条件での作動結果を組み合わせて前記金属の検出性能に関連する少なくとも1つの結合作動結果を作成し、該結合作動結果について許容可能度合を判定する少なくとも1つの前記結合判定を実行する結合判定手段(53)と、
前記個別判定の結果および前記少なくとも1つの前記結合判定の結果に応じて、前記金属の検出性能の良否を判定する総合判定を実行する総合判定手段(55)と、を有することを特徴とする金属検出機の診断装置。
前記総合判定の結果に対応する第1の診断情報と、前記個別判定又は前記結合判定の結果に対応する第2の診断情報とを出力する診断情報出力手段(27,55)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属検出機の診断装置。
前記診断情報出力手段は、前記第1の診断情報が前記金属の検出性能が良好でないことを表す情報である場合に、前記個別判定又は前記結合判定の結果に対応する第2の診断情報を表示することを特徴とする請求項3に記載の金属検出機の診断装置。
前記検出手段が、予め定められた周波数範囲に含まれる設定周波数の交番磁界を前記検査領域内に発生させる磁界発生部(22)と、前記被検査物が前記交番磁界中を通過することに起因する前記交番磁界の変化を前記設定周波数に対応する検出動作周波数で検出する磁界検出部(23)とを有し、
前記複数種類の作動条件が、前記検出手段の前記磁界発生部における発生磁界の強さ、前記検出手段の前記磁界検出部における検出動作周波数、および、前記移動手段の作動の有無のうち、少なくとも1つの点で互いに相違していることを特徴とする請求項2ないし4のうちいずれか1項に記載の金属検出機の診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来の金属検出機にあっては、その設置環境や使用状態によって磁界が乱されると、金属検出能力が変わってしまうものの、その金属検出能力を的確に診断する機能が欠けていた。そのため、誤検出等の問題が起きたときには、その要因を容易に特定できず、熟練のサービスマンが問題を切り分けながら対応することが必要になり、金属検出機を用いる製造ラインの稼働率を低下させてしまう場合があった。
【0008】
また、検査領域の周辺の電動機器等からの外来電磁ノイズが大きくなり、あるいは、目視し難い搬送ベルト裏面や継ぎ目等に磁界影響の大きい物が付着したり搬送ベルトが帯電したりして、微小異物検出に要求される検出感度に余裕が無くなっている場合でも、微小異物の検出が要求される特定の被検査物を検査したり誤検出が生じたりするまで、その検出能力の低下状態を使用者が把握できなかった。そのため、誤検出等の問題が発生することを未然に防止することが困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、金属検出能力の低下状態を的確に診断して誤検知等の問題の発生を未然に防止できる金属検出機の診断装置および金属検出機を提供し、併せて、金属検出能力の低下要因を容易に特定できる金属検出機の診断装置および金属検出機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決のため、本発明に係る金属検出機の診断装置は、(1)被検査物が通過する検査領域内の磁界の変化を検出して前記被検査物中の金属を検出する検出手段と、前記検出手段の作動を制御する検出制御手段とを備えた金属検出機を診断する金属検出機の診断装置であって、前記検出制御手段と協働して、前記検出手段を予め設定された複数種類の作動条件で作動させる作動条件切替手段と、前記複数種類のうち種類毎の作動条件での作動結果について許容可能度合を個別判定する個別判定手段と、前記複数種類の作動条件についての前記種類毎の作動条件での作動結果を基に、2種類以上の前記種類毎の作動条件での作動結果を組み合わせて前記金属の検出性能に関連する少なくとも1つの結合作動結果を作成し、該結合作動結果について許容可能度合を判定する少なくとも1つの前記結合判定を実行する結合判定手段と、前記個別判定の結果および前記少なくとも1つの前記結合判定の結果に応じて、前記金属の検出性能の良否を判定する総合判定を実行する総合判定手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明では、特定の1つ又は複数の要因により、金属検出能力が変化すると、それらの要因が変化する複数種類の動作条件での動作で得られた個別判定結果や結合判定結果が変化し、それに応じて金属検出性能の良否を判定する総合判定の結果が変化することになる。したがって、金属検出能力の低下状態を総合判定の結果から容易に把握でき、誤検知等の問題が発生することを未然に防止することができる。しかも、個別判定結果や結合判定の結果を利用すれば、金属検出能力を低下させている要因を容易に特定可能となる。
【0012】
本発明の金属検出機の診断装置は、(2)前記金属検出機が、前記被検査物を前記検査領域に対して移動させる移動手段を備えており、前記作動条件切替手段は、前記複数種類の作動条件として、前記移動手段により前記検出手段の検出感度テスト用のテストピースを前記検査領域に対し移動させつつ前記検出手段により前記検査領域内の磁界の変化を検出する第1の作動条件と、前記テストピースを用いることなく前記移動手段を作動させつつ前記検出手段により前記検査領域内の磁界の変化を検出する第2の作動条件とを含み、前記結合判定手段は、前記1つの結合判定として、前記検出手段を前記第1の作動条件で作動させるときのテストピース検出感度相当の検出信号レベルと、前記検出手段を前記第2の作動条件で作動させるときの前記磁界の変化の検出信号のピークレベルとの間に予め設定された余裕があるか否かを判定するものであってもよい。
【0013】
この構成により、金属検出機の使用状態での環境影響等が大きくなり、検出手段を第1の作動条件で作動させるときのテストピース検出感度相当の検出信号レベルと、検出手段を第2の作動条件で作動させるときの検査領域内の磁界の変化の検出信号のピークレベルとの間に余裕がなくなると、総合判定結果が不良判定となる。したがって、金属検出能力の低下が誤検知等の問題を発生させ得る程度に進む前に、総合判定結果が不良判定となることで、金属検出能力の低下をユーザに報知でき、誤検知等の問題が発生することを未然に確実に防止することができる。
【0014】
本発明の金属検出機の診断装置は、(3)前記総合判定の結果に対応する第1の診断情報と、前記個別判定又は前記結合判定の結果に対応する第2の診断情報とを出力する診断情報出力手段を設けたものであってもよい。
【0015】
この構成により、金属検出能力の変化に応じて個別判定結果や結合判定結果としての許容可能度合がそれぞれ変化し、金属検出性能の良否判定結果が変化すると、総合判定の結果に対応する第1の診断情報の出力から金属検出能力の低下状態が容易に把握される。したがって、誤検知等の問題が発生することを未然に防止することができる。しかも、個別判定結果や結合判定の結果に対応する第2の診断情報の出力によって、金属検出能力を低下させている要因が容易に特定可能となる。
【0016】
本発明の金属検出機の診断装置においては、(4)前記診断情報出力手段は、前記第1の診断情報が前記金属の検出性能が良好でないことを表す情報である場合に、前記個別判定又は前記結合判定の結果に対応する第2の診断情報を表示するものであってもよい。
【0017】
この構成により、外来電磁ノイズその他の環境影響の増加に対して微小金属物を検出するための感度に余裕がなくなってきたような場合に、その金属検出能力を低下させている要因を容易に特定可能な第2の診断情報を表示することで、必要なメンテナンスを適時に的確に実行可能になる。
【0018】
本発明の金属検出機の診断装置は、(5)前記検出手段が、予め定められた周波数範囲に含まれる設定周波数の交番磁界を前記検査領域内に発生させる磁界発生部と、前記被検査物が前記交番磁界中を通過することに起因する前記交番磁界の変化を前記設定周波数に対応する検出動作周波数で検出する磁界検出部とを有し、前記複数種類の作動条件が、前記検出手段の前記磁界発生部における発生磁界の強さ、前記検出手段の前記磁界検出部における検出動作周波数、および、前記移動手段の作動の有無のうち、少なくとも1つの点で互いに相違しているものであってもよい。
【0019】
この構成により、金属検出能力の低下状態が生じたときに、その金属検出能力を低下させている要因を個別判定結果や結合判定の結果からより的確に把握可能となる。
【0020】
本発明に係る金属検出機は、上記課題の解決のため、(6)上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載された金属検出機の診断装置を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る金属検出機では、上記のいずれかの構成を有する診断装置によって、金属検出能力の低下状態を総合判定の結果から容易に把握でき、誤検知等の問題が発生することを未然に防止することができる。しかも、個別判定結果や結合判定の結果を利用すれば、金属検出能力を低下させている要因を容易に特定可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金属検出能力の低下状態を的確に診断して誤検知等の問題の発生を未然に防止できる金属検出機の診断装置および金属検出機を提供することができ、併せて、金属検出能力の低下要因を容易に特定できる金属検出機の診断装置および金属検出機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(一実施形態)
図1から
図3は、本発明の一実施形態に係る金属検出機の診断装置およびその診断装置を用いた診断処理が実行される金属検出機を示している。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の金属検出機は、金属検出機本体10と、この金属検出機本体10の金属検出性能に関する診断処理を実行する診断装置50とを備えている。
【0028】
金属検出機本体10は、被検査物であるワークWを所定方向に搬送するコンベア11と、コンベア11により搬送されるワークWが通過する検査領域Rを有する検出部12と、コンベア11および検出部12の作動を制御する検出制御部14とを有している。
【0029】
ワークWは、製造される任意の製品、例えば量産される食品を包装材で個々に、あるいは所定数の輸送時の個数単位で包装したものであり、箱入り製品のような定形のものでも、流動物等を封入した可撓性の袋入り製品のような不定形のものでよい。
【0030】
コンベア11は、詳細を図示しないが、無端帯状の搬送ベルトを互いに平行な複数のローラの間に巻き掛けて、その一部の走行区間(通常は上走区間)に略平坦なワーク搬送路11aを形成する公知のものである。このコンベア11は、ワーク搬送路11a上に載置されたワークWを予め設定された搬送速度で所定方向に搬送することで、ワークWを検査領域Rに対して相対的に移動させることができるようになっている。
【0031】
検査領域Rは、コンベア11により搬送されるワークWの移動経路中に設定されており、検出部12は、ワークWが検査領域R内を通過することによる磁界の変化(磁界変動)を検出することで、ワークW中に金属異物等の金属物が含まれるか否かを判定可能な検出信号を出力するようになっている。
【0032】
ここにいう金属物とは、ワークW中の異物検出を行う場合には金属からなる異物もしくは金属成分を含んだ異物であり、ワークW中の欠品検出を行う場合には金属からなるもしくは金属成分を含んだその構成要素である。説明の便宜上、以下の説明においては、金属物が金属異物であるものとして説明する。
【0033】
検出制御部14は、コンベア11によるワークWの搬送および検出部12による磁界変動検出をそれぞれ作動制御するとともに、検出部12の出力信号を基にワークW中の金属異物の有無を判定するようになっている。
【0034】
図2に示すように、検査領域Rの入り口付近には、ワークWの検査領域R内への進入又は進入前所定位置への到達を検知する例えば光学式のワーク検知センサ13が設置されている。
【0035】
検出部12は、予め設定された振幅および周波数の送信信号を発生する信号発生部21と、信号発生部21からの信号により送信コイルを電流駆動する磁界発生部22(磁界発生手段)と、差動検出器等で構成される磁界検出部23とを含んで構成されている。
【0036】
詳細は図示しないが、信号発生部21は、ワーク検知センサ13に応動する基準信号発生器、測定期間を特定するためのタイマー、電力増幅器、同調回路等を有しており、ワークWが検査領域Rを通過するとき、基準信号に対応する設定周波数の送信信号を発生して磁界発生部22の送信コイルを駆動する。
【0037】
磁界発生部22の送信コイルは、コンベア11のワーク搬送路11aの近傍に配置されており、信号発生部21からの電流駆動により励磁されたときに、前記送信信号の設定周波数に対応する交番磁界を検査領域R中に発生させるようになっている。
【0038】
磁界検出部23は、信号発生部21および磁界発生部22と協働して複数のワークWについて、そのワークW中の金属異物を検出するようになっており、差動接続された一対の受信コイル、同調回路および増幅器等からなる。この磁界検出部23は、磁界発生部22からの交番磁界のみに対しては一対の受信コイルの誘起電圧が略平衡し、両者の差動出力が略ゼロになるように調整されている。
【0039】
磁界中を通過する磁性金属には磁束密度の大きさに比例してより多くの磁束が引き寄せられ、磁界中を通過する非磁性金属にはその移動による磁束密度の変化を打ち消すような向きでうず電流が生じ、ジュール熱が消費されるという性質がある。したがって、コンベア11上のワークWが検査領域Rを通過するとき、磁界検出部23の受信コイル間の出力の平衡状態がくずれる。
【0040】
磁界検出部23は、このようにコンベア11上のワークWの移動により両受信コイル間の出力平衡状態がくずれたとき、その磁界の変化に応じた検出信号を出力する。この検出信号は、磁界発生部22側からの交番磁界に対応して前記送信信号の設定周波数を有する交流信号成分に、ワークWの磁界通過により変化する低周波信号成分が重畳した信号形態となる。
【0041】
磁界検出部23の検出信号は信号レベル測定部24に取り込まれるようになっており、この信号レベル測定部24は、詳細を図示しないが、直交検波を行なう一対の同期検波器、移相器、バンドパスフィルタ、増幅器およびA/D変換器等によって構成されている。
【0042】
信号レベル測定部24の一対の同期検波器は、直交検波のために前記基準信号を位相調整した信号を取り込み、検出信号から送信信号相当の高周波成分を取り除いた検波出力を生成する。信号レベル測定部24は、この検波出力に更にフィルタによるノイズ除去およびA/D変換を施した信号を金属有無判定部26と検出制御部14とにそれぞれ出力する。
【0043】
なお、前記直交検波の出力は、例えば磁束密度の変化が大きいほど外部磁界変化を引き起こす非磁性金属の影響が大きい検出信号や、磁束密度が大きいほど外部磁界変化を引き起こす磁性金属の影響の大きい検出信号となる。また、信号レベル測定部24から出力される低周波成分の検出信号は、差動検出信号の所定位相位置の瞬時値を結ぶ包絡線の波形、および前記所定位相位置から送信信号周期の1/4周期分、つまり90度だけ位相がずれた瞬時値を結ぶ包絡線の波形を形成するものとなる。
【0044】
一方、検出制御部14は、検出部12の検出信号および操作器16からのユーザの操作入力に基づいて所定の制御プログラムに従った演算処理を実行し、その処理結果を信号発生部21および磁界検出部23にそれぞれ出力するようになっている。
【0045】
検出制御部14は、例えばCPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェースを含むマイクロコンピュータ構成のもので、ROM内に格納された制御プログラムを、RAMとの間でデータ授受を行ないながらCPUにより実行し、I/Oインターフェースを介して取り込んだ信号レベル測定部24からの信号等に基づいて、後述する検出処理を実行するようになっている。
【0046】
この検出制御部14は、機能的には、
図2中に示す振幅設定部31、検出周波数設定部32、磁界検出制御部33、記憶部34および検出周波数選択部35を構成するよう、これらに対応する制御プログラムや設定情報を内蔵している。また、検出制御部14は、操作器16からの診断要求操作入力や金属検出機本体10の作動状態に応じて、診断装置50による診断処理を実行することが要求されるか否かを予め設定された診断要求条件に基づいて判定し、診断処理が必要である場合に診断装置50に診断処理要求信号を出力する機能を併有している。
【0047】
信号発生部21の発生信号の振幅は振幅設定部31により設定され、信号発生部21の送信信号の設定周波数は検出周波数設定部32により設定される。
【0048】
ここで、振幅設定部31は、信号発生部21と共に、磁界発生部22の発生磁界の強度レベルを通常検出動作の磁界強度レベルである第1の強度レベルと、その第1の強度レベルより低い第2の強度レベルとのうち任意の一方の磁界強度レベルに切り替える磁界制御手段として機能し得る。また、検出周波数設定部32は、通常検出時の磁界発生部22の発生磁界周波数を規定すべく信号発生部21の設定周波数(発生信号周波数)を設定する機能と、磁界検出制御部33を介して磁界検出部23の検出動作周波数(ここでは単に検出周波数ともいう)を設定する機能とを有している。
【0049】
ここにいう第1の強度レベルとは、通常の金属検出動作を行なう際に磁界発生部22で発生される範囲の磁界強度レベルであり、第2の強度レベルは、信号発生部21から磁界発生部22への送信信号出力を停止して磁界発生部22による磁界の発生を停止した状態、すなわち発生磁界強度が通常の残留値レベル程度と言えるレベルである。
【0050】
磁界検出制御部33は、磁界検出部23の検波器に検波クロック信号を供給するとともに検出周波数設定部32からの設定周波数情報に基づいて、その検波クロック信号の周波数および位相(信号発生部21の基準信号に対する位相差)を調整する機能を有しており、磁界発生部22の作動の有無(磁界発生の有無)に関係なく、磁界検出部23の検出動作周波数を規定することができる。
【0051】
記憶部34は、RAM又および書き換え可能な不揮発性のメモリデバイスで構成されており、通常動作時の検出動作周波数をはじめとして、金属検出に関する各種設定情報や信号レベル測定部24での測定結果のデータを記憶保持することができる。
【0052】
検出周波数選択部35は、検出周波数設定部32、磁界検出制御部33および信号レベル測定部24と共に測定手段36を構成しており、この測定手段36は、磁界発生部22の発生磁界が前記第2の強度レベルとなっている状態で、磁界検出部23の複数の異なる検出動作周波数で、検査領域R中の電磁ノイズを測定できるようになっている。
【0053】
また、検出周波数選択部35は、検出周波数設定部32および磁界検出制御部33と協働して、前記複数の異なる検出動作周波数のうち測定手段36で測定された電磁ノイズレベルが相対的に小さくなるいずれかの周波数を選択し、磁界発生部22の設定周波数およびそれに対応する磁界検出部23の検出動作周波数を可変設定するようになっている。
【0054】
ところで、金属有無判定部26は、検査領域Rに搬送された各ワークWの検出信号振幅レベルを予め定めた閾値レベルと比較し、ワークW中に金属異物が含まれているか否か、すなわち製品としての品質の合否を公知の判定方法で判定して、その判定結果を表示部27に出力する判定手段となっている。この金属有無判定部26は、併せて、コンベア11の検査領域Rより下流側に設けられた選別部28に対し、不良品を良品と分けるための選別指令信号を出力するようになっている。
【0055】
一方、金属検出機本体10について診断処理を実行する診断装置50は、
図1に示すように、作動条件切替部51、個別判定部52、結合判定部53および総合判定部55を含んで構成されている。
【0056】
作動条件切替部51は、金属検出機本体10側で予め設定される検査条件の設定情報や診断条件の設定情報を記憶する情報記憶部51Mを有しており、金属検出機本体10の診断時には、情報記憶部51Mの記憶情報を基に金属検出機本体10の作動条件を切り替えながら、検出制御部14と協働して金属検出機本体10を予め設定された診断処理用の複数種類の作動条件で順次作動させるようになっている。
【0057】
個別判定部52は、予め設定された個別判定規格や過去の個別判定結果を記憶する情報記憶部52Mを有しており、金属検出機本体10の診断時に、前記複数種類のうち種類毎の作動条件での金属検出機本体10の作動結果について、その許容可能度合を個別判定するようになっている。
【0058】
結合判定部53は、予め設定された結合判定規格や過去の結合判定結果を記憶する情報記憶部53Mを有しており、金属検出機本体10の診断時に、前記複数種類の作動条件についての種類毎の作動条件での金属検出機本体10の作動結果を基に、2種類以上の種類毎の作動条件での作動結果を組み合わせて金属検出性能に関連する少なくとも1つの結合作動結果を作成し、その結合作動結果について許容可能度合を判定する結合判定を実行するようになっている。
【0059】
総合判定部55は、予め設定された総合判定規格や過去の総合判定結果を記憶する情報記憶部55Mを有しており、金属検出機本体10の診断時に、少なくとも結合判定部53での結合判定の結果に応じて、金属検出機本体10の金属検出性能の良否を判定する総合判定を実行するようになっている。
【0060】
具体的には、作動条件切替部51における診断処理用の複数種類の作動条件は、少なくとも検出部12の作動条件が異なる第1の作動条件と第2の作動条件とを含んでいる。
【0061】
第1の作動条件とは、磁界発生部22による磁界の発生状態下で、コンベア11により検出部12の検出感度テスト用のテストピースTpを検査領域Rに対し移動させつつ検出部12により検査領域R内の磁界の変化を検出する作動条件である。ここにいう検出感度テスト用のテストピースTpは、例えば金属検出機本体10のカタログ仕様感度程度の高感度時に検出可能な小サイズの金属ピース(鉄もしくはステンレス)又は小サイズの金属ピースを埋め込んだ樹脂ブロックである。
【0062】
第2の作動条件とは、磁界発生部22による磁界の発生状態下で、テストピースTpを用いることなくコンベア11を作動させつつ検出部12により検査領域R内の磁界の変化を検出する作動条件である。ここで、検出部12により検出される検査領域R内の磁界の変化は、磁界検出部23の受信コイル間の出力平衡状態がテストピースTp以外の要因(例えば、外来電磁ノイズ等の影響)でくずれた結果として現れる。
【0063】
作動条件切替部51における診断処理用の複数種類の作動条件は、さらに、検出部12の磁界発生部22における発生磁界の強さ、検出部12の磁界検出部23における検出周波数、選別機28の作動の有無、および、コンベア11の作動の有無のうち、少なくとも1つの点で互いに相違している複数の作動条件を含み得る。
【0064】
磁界発生部22における発生磁界は、例えば多段階の強度レベルLv0,1,2,3,4,5のいずれかに択一的に選択されて設定され、磁界検出部23における検出周波数は、例えば異なる複数の検出動作周波数fa,fb,fc,fd,feのいずれかに択一的に選択されて設定される。
【0065】
そして、個別判定部52は、例えば次の(1−1)ないし(1−4)を含む複数種類の作動条件について、個別判定を実行する。
【0066】
(1−1)コンベア11を停止した状態(搬送速度を速度0m/minとした状態)で、磁界発生部22における発生磁界の強さに相当する送信出力レベルを標準的なLv3、発生磁界周波数を500kHzとし、検出磁界(A/m)の許容レベルの上限値に相当する個別判定規格レベルを例えば1000として、磁界検出部23における磁界受信性能を診断する。
【0067】
この場合、磁界検出部23における磁界検出信号レベルが例えば800であれば、個別判定結果はOK判定(良判定、正常判定)となる。
【0068】
(1−2)コンベア11の搬送速度を例えば10m/minとした状態で、磁界発生部22における発生磁界の強さに相当する送信出力レベルを標準的なLv3、発生磁界周波数を500kHzとし、許容レベルの上限値に相当する個別判定規格レベルを例えば1200として、検出部12を前述の第2の作動条件で作動させるときの検査領域R内の磁界変化の検出信号のピークレベルである環境影響レベルAを計測することにより、磁界検出部23における磁界受信性能を診断する。
【0069】
この場合、磁界検出部23における検出信号レベル(環境影響レベルA)が例えば1000であれば、個別判定結果はOK判定となる。
【0070】
(1−3)コンベア11の搬送速度を10m/minとした状態で、磁界発生部22における発生磁界の強さに相当する送信出力レベルを標準的なLv3、発生磁界周波数を500kHzとし、検出感度テスト用のテストピースTpをコンベア11により検査領域R内に通したときの磁界検出部23の検出信号を基に、テストピースTpを確実に異物として判定検出可能なテストピース検出感度相当の検出信号レベルBを計測して、テストピース検出感度相当の検出信号レベルBが予め設定したテストピース検出感度相当の検出信号レベルの個別判定規格レベルを超えているか否かを判定して磁界検出部23における磁界受信性能を診断する。
【0071】
この場合、テストピース検出感度相当の検出信号レベルBが例えば9000以上であれば、個別判定結果はOK判定となる。
【0072】
(1−4)コンベア11を停止させるとともに磁界発生部22での磁界の発生を停止させた状態で、磁界検出部23の複数の異なる検出動作周波数fa,fb,fc,fd,feでそれぞれで磁界検出部23を作動させ、電磁ノイズレベルの上限値に相当する個別判定規格レベルを例えば800として、磁界検出部23における磁界受信性能を診断する。
【0073】
この場合、磁界検出部23における磁界検出信号レベルがいずれの検出動作周波数でも例えば600であれば、個別判定結果はOK判定となる。
【0074】
なお、個別判定部52は、(1−1)ないし(1−4)のような複数種類の作動条件について個別判定を実行した結果を、前述のOK,NGの判定結果としてではなく、それぞれの作動条件での金属検出機本体10の作動結果に応じた段階的な許容可能度合としてレベル付けしてもよい。
【0075】
個別判定部52は、あるいは、例えば次の(2−1)ないし(2−4)を含む複数種類の作動条件について、個別判定を実行する。
【0076】
(2−1)コンベア11を停止させるとともに磁界発生部22での磁界の発生を停止させた状態で、磁界検出部23の複数の異なる検出動作周波数fa,fb,fc,fd,feでそれぞれで磁界検出部23を作動させ、磁界検出部23における磁界受信性能を診断する。
【0077】
この場合、磁界検出部23による磁界変動検出信号レベルが金属検出機本体10の工場出荷時の診断結果レベルに対し予め定められた基準値または基準倍率(例えば1.2倍)未満であれば、個別判定結果はOK判定となるが、外来電磁ノイズの影響等によりその基準値または基準倍率以上となると、NG判定(不良判定、異常判定)となる。
【0078】
(2−2)コンベア11を停止させた状態で、磁界発生部22における発生磁界の強さに相当する送信出力レベルを最大のLv5とし、磁界検出部23の複数の異なる検出動作周波数faからfeでそれぞれで磁界検出部23を作動させ、磁界検出部23における磁界受信性能を診断する。
【0079】
この場合、磁界検出部23による磁界変動検出信号レベルが金属検出機本体10の工場出荷時のノイズ許容限界レベルに対し予め定められた基準値または基準倍率(例えば1.5倍)未満であれば、個別判定結果はOK判定となるが、送信側と受信側の同調周波数や検波位相のずれ等によってその基準値または基準倍率以上になると、異常判定となる。
【0080】
(2−3)コンベア11の搬送速度を10m/minとした状態で、磁界発生部22における発生磁界の強さに相当する送信出力レベルを最大のLv5とし、磁界検出部23の複数の異なる検出動作周波数faからfeのそれぞれで磁界検出部23を作動させ、磁界検出部23における磁界受信性能を診断する。
【0081】
この場合、磁界検出部23による磁界変動検出信号レベルが金属検出機本体10の工場出荷時のノイズ許容限界レベルに対し予め定められた基準値または基準倍率(例えば2.0倍)未満であれば、個別判定結果はOK判定となるが、ベルトやモータ回転等の影響でその基準値または基準倍率以上になると、異常判定となる。
【0082】
(2−4)コンベア11の搬送速度を10m/minとした状態で、磁界発生部22における発生磁界の強さに相当する送信出力レベルを最大のLv5とし、検出感度テスト用のテストピースTpをコンベア11により検査領域R内に通したときの磁界検出部23の検出信号を複数の異なる検出動作周波数faからfeについて取得するように磁界検出部23を作動させ、磁界検出部23における磁界受信性能を診断する。
【0083】
この場合、検出感度テスト用のテストピースTpを確実に異物として判定検出可能なテストピース検出感度相当の検出信号レベルBを計測して、テストピース検出感度相当の検出信号レベルBが、金属検出機本体10の工場出荷時の値に対し予め定められた基準値または基準倍率(例えば2.0倍)未満であれば、個別判定結果はOK判定となるが、複数の要因による感度への影響でその基準値または基準倍率以上になると、異常判定となる。
【0084】
このように個別判定部52が前述の(2−1)ないし(2−4)の作動条件を含む複数種類の作動条件について個別判定を実行する場合、個別判定部52は、複数種類の個別判定を、例えば条件1判定部52aから条件5判定部52eによって実行する。
【0085】
一方、結合判定部53は、1つの結合判定として、条件1判定部52aおよび条件2判定部52bの個別判定結果およびその判定に係るデータ(磁界検出部23の検出値等)を基に、第1結合判定部53aにおいて、例えば次のような結合判定を実行する。
【0086】
(3−1)前述の個別判定(1−2)の実行時に得られた、検出部12を前述の第2の作動条件で作動させるときの検査領域R内の磁界変化の検出信号のピークレベルである環境影響レベルAと、前述の個別判定(1−3)の実行時に得られたテストピースTpを確実に異物として判定検出可能なテストピース検出感度相当の検出信号レベルB(複数回のテスト搬送の結果でもよい)とから、環境影響レベルAとテストピース検出感度相当の検出信号レベルBの信号レベル(仮に、環境影響レベルAの信号レベルを[A]とし、テストピース検出感度相当の検出信号レベルBの信号レベルを[B]とする)が同じ範囲に存在することがなく、SN比([B]/[A]の値)がn倍以上であったり、[A]と[B]の間のギャップである余裕Mが問題ないレベルであることが確保されていることによって判定する。ここで、[A]と[B]の間の余裕Mが問題ないレベルであることは、例えば、[A]、[B]の各信号レベルの最大値 +(最大値−最小値)/m の値、および、最小値−(最大値−最小値)/mの値の範囲が、それぞれ同じ範囲に存在することが無いか否かを判定する(n,mは任意の値である)。
【0087】
この結合判定は、テストピースTpのテストピース検出感度相当の検出信号レベルBと検査領域R内の環境影響レベルAとの間に、予め設定された余裕Ma以上の余裕Mがある(M=|B−A|>Ma)か否かを、テストピース検出感度相当の検出信号レベルBおよび環境影響レベルAの個別判定時におけるそれぞれの動作影響を共に含む結合動作結果として、安定的に判定するものである。
【0088】
結合判定部53は、また、他の結合判定として、条件3判定部52cおよび条件4判定部52dの個別判定結果およびその判定に係るデータ(磁界検出部23の検出データ等)を基に、第2結合判定部53bにおいて、例えば次のような結合判定を実行するようになっている。
【0089】
(3−2)前述の個別判定(1−1)の実行時に得られた磁界検出部23の検出信号レベル[C]と、前述の個別判定(1−2)の実行時に得られた磁界検出部23のコンベアON時の検出信号レベル[D]との情報から、[D]/[C]の値がn倍を超えるか超えないかを判定する(nは任意の値))。
【0090】
そして、総合判定部55は、結合判定部53の第1結合判定部53aおよび第2結合判定部53bでの結合判定の結果に応じて、あるいは、さらに個別判定部52での個別判定の結果に応じて、例えばすべての結合判定結果がOK(合格)であれば、総合判定もOKとし、あるいは、すべての結合判定結果および条件5判定部52eからの特定の個別判定結果のすべての結合判定結果がOKであれば、総合判定もOKとする。
【0091】
この総合判定部55は、総合判定の結果がOKかNGかの情報を、総合判定の結果に対応する第1の診断情報として表示部27により表示出力させる。さらに、総合判定部55は、テストピーステストピース検出感度相当の検出信号レベルBと環境影響レベルAとの間の余裕Mを低下させる主な要因やその要因ごとの影響度合いを表示するための情報を、個別判定又は結合判定の結果に対応する第2の診断情報として表示部27により表示出力させるようになっている。
【0092】
これら総合判定部55および表示部27は、本発明にいう診断情報出力手段を構成しており、例えば表示部27に表示される第1の診断情報が金属検出性能が良好でないことを表す情報である場合に、あるいは、表示部27に第1の診断情報が表示されるときには常に、第2の診断情報を表示するようになっている。
【0093】
次に、診断装置50で実行される診断処理の手順について説明する。
【0094】
図4は、診断装置50で実行される診断処理プログラムの概略の流れを示している。
【0095】
同図に示すように、まず、検出制御部14から診断装置50に診断処理要求が出されているか否かが判断され(ステップS11)、診断処理要求が無ければ(ステップS11でNOの場合)、今回の処理は終了する。
【0096】
一方、検出制御部14から診断装置50に診断処理要求が出ていれば(ステップS11でYESの場合)、次いで、作動条件切替部51により金属検出機本体10の作動条件を検査時の作動条件から又は診断処理における前回の作動条件から今回の作動条件に切り替える処理を実行し(ステップS12)、作動条件切替部51および検出制御部14により金属検出機本体10を切替え後の作動条件で作動制御する(ステップS13)。
【0097】
そして、金属検出機本体10を今回の作動条件で作動させた結果を個別判定部52で個別判定処理する(ステップS14)。ここでの個別判定は、作動条件切替部51により設定された今回の作動条件に対応する条件1判定部52aないし条件5判定部52eのいずれかにより、その判定条件となる個別判定規格に従って実行される。また、個別判定部52での個別判定結果は、種類ごとの作動条件に対応付けて情報記憶部52Mに記憶される(ステップS15)。
【0098】
次いで、未判定のいずれかの結合判定を実行するのに必要な個別判定結果が揃い、未判定の結合判定が可能になったか否かが判別される(ステップS16)。
【0099】
このとき、必要な個別判定結果が揃っておらず、いずれの結合判定もできなければ(ステップS16でNOの場合)、作動条件切替部51により金属検出機本体10の作動条件を次の作動条件に切り替える処理を実行した後(ステップS12)、その作動条件に対応する個別判定の記憶までの一連の処理(ステップS13〜S15)を再度実行する。
【0100】
そして、必要な個別判定結果が揃い、未判定のいずれかの結合判定が可能になると(ステップS16でYESの場合)、次いで、結合判定部53によってその結合判定が実行され(ステップS17)、その結合判定結果が情報記憶部53Mに記憶される(ステップS18)。
【0101】
次いで、総合判定を実行するのに必要な結合判定結果が揃うか、あるいはそれら結合判定結果に加えて特定の個別判定結果が揃うことにより総合判定が可能になったか否かが判別される(ステップS19)。
【0102】
このとき、必要な結合判定結果が揃っておらず、あるいは特定の個別判定結果が揃っておらず、総合判定ができなければ(ステップS19でNOの場合)、作動条件切替部51により金属検出機本体10の作動条件を次の作動条件に切り替える処理(ステップS12)と、その作動条件に対応する個別判定とその個別判定結果を用いた結合判定の結果の記憶までの一連の処理(ステップS13〜S18)とを再度実行する。
【0103】
そして、必要な個別判定結果が揃い、総合判定が可能になると(ステップS19でYESの場合)、次いで、総合判定部55によって総合判定が実行され(ステップS20)、その総合判定結果が情報記憶部55Mに記憶される(ステップS21)とともに、第1の診断情報として表示部27から表示出力される(ステップS22)。
【0104】
次いで、総合判定部55による総合判定の結果がNG(不良、不合格)か否かが判別され(ステップS23)、NG判定であれば(ステップS23でYESの場合)、次いで、総合判定部55および表示部27によって第2の診断情報が表示出力される(ステップS24)。
【0105】
一方、総合判定部55による総合判定の結果がOK判定であるか(ステップS23でNOの場合)、又は、第2の診断情報が表示出力されると、今回の処理を終了する。
【0107】
上述のように構成された本実施形態の金属検出機の診断装置においては、特定の1つ又は複数の要因により、金属検出機本体10の金属検出能力が変化すると、それらの要因が変化する複数種類の動作条件での動作について個別判定部52で得られる個別判定結果や結合判定部53で得られる結合判定結果がそれぞれ変化し、それら許容可能度合に応じて金属検出性能の良否を判定する総合判定部55での総合判定の結果が変化することになる。
【0108】
したがって、金属検出機本体10の金属検出能力の低下状態を総合判定部55での総合判定の結果から容易に把握でき、金属検出機本体10での誤検知等の問題が発生することを未然に防止することができる。
【0109】
また、本実施形態では、金属検出機本体10の使用状態での環境影響等が大きくなり、検出部12を第1の作動条件で作動させるときのテストピース検出感度相当の検出信号レベルBと検出部12を第2の作動条件で作動させるときの環境影響レベルAとの間に余裕がなくなると、環境影響レベルAの個別判定結果や検出信号レベルBの個別判定結果がOK判定であったとしとも、それらの間の余裕の有無を判定する結合判定の結果がNG判定となり、総合判定部55での総合判定結果がNG判定となる。したがって、金属検出能力の低下が誤検知等の問題を発生させ得る程度に進む前に、金属検出機本体10の金属検出能力の低下により誤検知等の問題が発生することを未然に確実に防止することができる。
【0110】
さらに、本実施形態では、総合判定部55での総合判定の結果のみならず、個別判定部52での個別判定結果や結合判定部53での結合判定結果やその判定に用いたデータを基に、例えば
図3中にC1−C4で示すように表示部27からの表示出力を要因ごとに分けて表示したり、不良となる主要因を表示したりすることができる。あるいは、第2の診断情報として、金属検出機本体10の金属検出能力に問題があるか、許容範囲であるか、および、改善方法があるか等を表示出力するようにして、ユーザが容易に確認できるようにしてもよい。
【0111】
すなわち、金属検出機本体10の金属検出能力の変化に応じて個別判定結果や結合判定結果としての許容可能度合がそれぞれ変化し、金属検出機本体10の金属検出性能の良否判定結果が変化すると、総合判定の結果に対応する第1の診断情報の表示出力によって金属検出能力の低下状態が容易に把握されることに加えて、第2の診断情報の表示出力によって金属検出能力を低下させている要因が容易に特定可能となる。
【0112】
その結果、外来電磁ノイズその他の環境影響の増加に対して微小異物を検出するための感度に余裕がなくなってきたような場合に、その金属検出能力を低下させている要因を容易に特定して、必要なメンテナンスを適時に的確に実行できることになる。
【0113】
加えて、本実施形態では、前記複数種類の作動条件が、検出部12の磁界発生部22における発生磁界の強さ、検出部12の磁界検出部23における検出動作周波数、選別機28の作動の有無、および、コンベア11の作動の有無のうち、少なくとも1つの点で互いに相違している条件を含むので、金属検出機本体10の金属検出能力の低下状態が生じたときに、その金属検出能力を低下させている要因を個別判定結果や結合判定の結果からより的確に把握できる。
【0114】
このように、本実施形態によれば、金属検出能力の低下状態を的確に診断して誤検知等の問題の発生を未然に防止できる金属検出機の診断装置を提供することができ、併せて、金属検出機本体10の検出能力の低下要因を容易に特定できる金属検出機の診断装置を提供することができる。
【0115】
なお、上述の一実施形態の説明においては、金属検出機本体10と別に構成された診断装置50として説明したが、診断装置50を既存の金属検出機の制御装置に接続して使用する別体の診断装置として構成するか、金属検出機に内蔵された少なくとも自己診断機能を有する金属検出機と一体の診断装置として構成するかは任意である。また、金属検出機の診断装置が別体に構成される場合、外付けの小型の診断装置として構成されてもよいし、ネットワークを介して少なくとも1台の金属検出機の制御装置に接続され、それらの動作を監視する装置の一部として構成されてもよい。そして、いずれの場合も、総合判定の結果に対応する第1の診断情報と、個別判定又は結合判定の結果に対応する第2の診断情報とを出力する機能を有するものとなる。
【0116】
診断装置50を内蔵する金属検出機を構成する場合、その診断装置50によって、金属検出能力の低下状態を総合判定の結果から容易に把握でき、誤検知等の問題が発生することを未然に防止することができる自己診断等が可能となる。しかも、個別判定結果や結合判定の結果を利用して、誤検知等の問題が発生する前に、金属検出能力を低下させている要因を容易に特定可能となる。
【0117】
また、上述の一実施形態では、総合判定に特定の1つの個別判定結果を用いる場合には、それを考慮して総合判定するものとしたが、複数の結合判定の結果のみで総合判定し、特定の個別判定結果の結果やその判定に要した情報を第2の診断情報の出力にのみ用いるようにしてもよい。よって、特定の複数の個別判定結果を用いてもよい。
【0118】
さらに、結合判定部53の第1結合判定部53aおよび第2結合判定部53bは、それぞれ2つの個別判定結果を用いて結合判定するものとしたが、2つ以上の個別判定結果を組み合わせて結合判定してもよい。本発明にいう金属検出機は、その磁界発生方式や磁界検出方式が前述の一実施形態のような方式に限定されるものでないことはいうまでもない。また、着磁された金属物の発生磁界を検出する場合には、磁界発生手段を装備しない金属検出機であってもよい。
【0119】
以上説明したように、本発明は、金属検出能力の低下状態を的確に診断して誤検知等の問題の発生を未然に防止できる金属検出機の診断装置および金属検出機を提供することができ、併せて、金属検出能力の低下要因を容易に特定できる金属検出機の診断装置および金属検出機を提供することができるものであり、かかる本発明は、磁界を用いて金属検出を行う金属検出機の診断装置および同装置を備えた診断機能を有する金属検出機全般に有用である。