【解決手段】 本発明の熱収縮性筒状ラベル長尺体10は、熱収縮性フィルム4及び内層5を有するラベル基材2を筒状に形成した長尺筒状体3を有し、前記内層5の表面5aが、長尺筒状体3の最内面を構成しており、前記内層5が、バインダー樹脂と、アミド系滑剤、アミン系滑剤及びエステル系滑剤から選ばれる少なくとも1種からなる滑剤と、を含み、前記バインダー樹脂と滑剤が相溶している。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料容器などの各種容器の周囲に熱収縮性筒状ラベルが装着された、ラベル付き容器が広く流通している。熱収縮性筒状ラベルは、加熱することにより径内方向に収縮するものであり、筒状シュリンク、シュリンクチューブなどとも呼ばれる。
熱収縮性筒状ラベルは、通常、長尺帯状の熱収縮性フィルムを筒状に形成した熱収縮性筒状ラベル長尺体を、所定長さに切断することによって得られる。そして、この熱収縮性筒状ラベルを容器の外周に被せ且つ加熱することによって、ラベル付き容器が得られる。以下、熱収縮性筒状ラベルを「筒状ラベル」、熱収縮性筒状ラベル長尺体を「筒状ラベル長尺体」という場合がある。
筒状ラベルを容器に装着して得られるラベル付き容器において、容器のキャップを開けようとすると筒状ラベルが容器に対して空回りし、比較的力の弱い人では、容器のキャップを開けることができないことがある。特に、大気圧よりも高い状態で収納物が封入された容器(例えば、炭酸飲料入り容器)に筒状ラベルが装着されたラベル付き容器にあっては、容器のキャップを少し開けると内圧が下がり、容器が僅かに小さくなるので、筒状ラベルが胴部に対して空回りを起こし易い。
【0003】
また、前記ラベル付き容器は、次のような工程を経て機械的且つ連続的に製造される。すなわち、扁平状に畳んだ筒状ラベル長尺体をロールに巻き取り、このロールをラベラー(ラベル装着装置)に装填する工程、ロールから扁平状の筒状ラベル長尺体を引き出してライン上に送る工程、容器の直前で筒状ラベル長尺体を所定長さに切断して1つの筒状ラベルを形成する工程、その筒状ラベルを開口させる工程、開口した筒状ラベルを容器に被せて装着する工程、によりラベル付き容器が得られる。
しかしながら、前記筒状ラベルを開口させる工程において、扁平状の筒状ラベルの内面がブロッキングを生じ、筒状ラベルが開口し難いことがある。また、前記開口した筒状ラベルを容器に被せる工程において、容器の外面に対する筒状ラベルの内面の滑り性が悪いと、容器の所定位置に筒状ラベルを被せることができないことがある。
【0004】
このような問題点に鑑みて、特許文献1には、筒状体の最内面の大半を滑り層で構成し且つその最内面の一部分にブロッキング部を設けた筒状ラベルが開示されている。
かかる筒状ラベルは、最内面の大半が滑り層の表面で構成されているので、容器に良好に装着でき、他方、部分的に設けられたブロッキング部が容器に対する筒状ラベルの摩擦抵抗を大きくするため、空回りを防止できる。
しかしながら、特許文献1の筒状ラベルにあっては、特定の位置にブロッキング部を設け、特定の容器に装着しなければ、空回りを十分に防止できないという問題点がある。
なお、仮に、特許文献1のブロッキング部を、筒状ラベルの最内面の全体又はより多くの面積に設けた場合には、筒状ラベルの内面がブロッキングを生じ、筒状ラベルを容器に良好に装着できないおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
ただし、方向を示す用語として、「内面」とは、熱収縮性筒状ラベルとした際の内側の面を指す。「外面」とは、前記「内面」とは反対側の面であって、熱収縮性筒状ラベルとした際の外側の面を指す。「長尺」は、第1方向の長さが第2方向(第1方向と直交する方向)の長さよりも十分に大きい形状をいい、例えば、第1方向の長さが第2方向の長さの10倍以上、好ましくは50倍以上である。また、「PPP〜QQQ」という記載は、「PPP以上QQQ以下」を意味する。各図における筒状ラベル及び各構成要素の厚み及び大きさなどは、実際のものと異なっていることに留意されたい。
【0013】
(熱収縮性筒状ラベル及び熱収縮性筒状ラベル長尺体)
本発明の熱収縮性筒状ラベルは、熱収縮性筒状ラベル長尺体を所定長さに切断することによって得られる。つまり、熱収縮性筒状ラベル長尺体は、筒状ラベルの前駆体の如きものであって、複数の熱収縮性筒状ラベルが連続的に繋がったものである。
【0014】
図1及び
図2において、熱収縮性筒状ラベル長尺体10は、長尺状のラベル基材2を筒状に形成した細長い長尺筒状体3を有する。ラベル基材2は、熱収縮性フィルム4と、熱収縮性フィルム4の裏面側に設けられた内層5と、を有し、前記内層5の表面5a(内層の表面は、上記定義に従えば、内層の内面と言うべきであるが、内層の2つの面のうち積層されていない側の表出した面であることから、便宜上、表面という)は、長尺筒状体3の最内面を構成している。必要に応じて、熱収縮性フィルム4の外面又は熱収縮性フィルム4と内層5の間には、意匠印刷層61や背景印刷層62などの印刷層、断熱層やガスバリア層などの機能層が設けられていてもよい。通常、熱収縮性フィルム4の外面又は熱収縮性フィルム4と内層5の間には、前記印刷層が少なくとも設けられる。
筒状ラベル長尺体10の長手方向(一方向)の長さは、特に限定されない。機械的且つ連続的にラベル付き容器を製造するために用いられる筒状ラベル長尺体10にあっては、長手方向の長さが、例えば10m以上、好ましくは50m以上、より好ましくは100m以上である。
【0015】
具体的には、筒状ラベル長尺体10は、通常、
図1及び
図2に示すように、対向する2つの折り線1a,1bで扁平状に折り畳まれており、ロールに巻かれた状態で保管及び運搬される(ロールに巻かれた状態は不図示)。この折り線1a,1bは、それぞれ筒状ラベル長尺体10の長手方向に延びている。扁平状の筒状ラベル長尺体10は、向かい合う最内面同士(つまり、内層5の表面5a同士)が密着している。ただし、
図2において、見やすくするために、向かい合う最内面を離した状態で表しているが、実際は、密着した状態であることに留意されたい。
図1の二点鎖線で示す切断線Xに沿って筒状ラベル長尺体10を切断することにより、筒状ラベルが得られる。
図3は、円筒状に開口させた状態の筒状ラベル1を示す。
筒状ラベル1は、少なくとも周方向に熱収縮しうる。つまり、加熱によって収縮する性質(熱収縮性)を有する筒状ラベルである。筒状ラベル1は、周方向だけでなく、縦方向(この縦方向は、筒状ラベル長尺体10の長手方向に相当する)にも若干熱収縮又は熱膨張するものでもよい。さらに、筒状ラベル1は、熱収縮だけでなく、周方向又は縦方向に伸縮性を有していてもよい。前記伸縮性は、常温下、引っ張ると伸び且つその引っ張り力を解除するとほぼ元に復元する性質をいう。このような伸縮性を有する熱収縮性筒状ラベル1は、シュリンクストレッチラベルとも呼ばれる。
【0016】
前記筒状ラベル長尺体10は、熱収縮性を有するラベル基材2を筒状に形成した長尺筒状体3からなる。なお、特に図示しないが、前記長尺筒状体3に、長手方向に延びる開封用補助線が設けられていてもよい。この場合、筒状ラベル長尺体10は、長尺筒状体3と、開封用補助線と、からなる。前記開封用補助線としては、代表的には、ミシン目線が挙げられる。
長尺筒状体3(筒状ラベル長尺体10)は、ラベル基材2の主たる熱収縮方向を周方向とし且つ内層5を内側として、長尺状のラベル基材2を筒状に丸め、その一側端部2aを他側端部2bの外面に重ね合わせ、溶剤又は接着剤を用いてセンターシール(接着)することにより得られる。
【0017】
図4は、長尺状のラベル基材2を示す。
図4に示すように、ラベル基材2は、熱収縮性フィルム4と、意匠印刷層61と、背景印刷層62と、内層5と、を有する。図示例では、外側から内側に向かって、熱収縮性フィルム4/意匠印刷層61/背景印刷層62/内層5の順で積層されている。もっとも、積層順序は前記に限られず、内層5の表面5aが長尺筒状体3の最内面を構成することを条件として、適宜変更できる。例えば、外側から内側に向かって、意匠印刷層/熱収縮性フィルム/背景印刷層/内層の順で積層されていてもよく、あるいは、意匠印刷層/背景印刷層/熱収縮性フィルム/内層の順で積層されていてもよい(図示せず)。また、印刷層として、意匠印刷層61と背景印刷層62の双方が設けられていることが好ましいが、何れか一方のみでもよい。
【0018】
なお、ラベル基材2の一側端部2aの縁から所定幅の内面は、他側端部2bの外面にセンターシールするため、接着代21とされている。この接着代21は、一側端部2aの縁から所定幅で、長手方向に帯状に延びた領域である。
前記意匠印刷層61、背景印刷層62及び内層5は、前記接着代21を除いて、熱収縮性フィルム4の内面の全体に設けられている。
ただし、前記意匠印刷層61及び背景印刷層62は、接着代21を除く熱収縮性フィルム4の内面全体に設けられる場合に限られない。例えば、意匠印刷層及び背景印刷層が、接着代を除く熱収縮性フィルムの内面の一部分に設けられていてもよい(図示せず)。あるいは、意匠印刷層が、接着代を除く熱収縮性フィルムの内面の一部分に設けられ、且つ、背景印刷層が、その内面の一部分以外の部分に設けられていてもよいし、又は、意匠印刷層が、接着代を除く熱収縮性フィルムの内面の一部分に設けられ、且つ、背景印刷層が、前記意匠印刷層の内面の一部分に重なりつつ熱収縮性フィルムの内面の一部分以外の部分に設けられていてもよいし、又は、意匠印刷層が、接着代を除く熱収縮性フィルムの内面全体に設けられ、且つ、背景印刷層が、前記意匠印刷層の内面の一部分に設けられていてもよい(いずれも図示せず)。これらの場合、内層は、意匠印刷層と背景印刷層の境界を含む意匠印刷層及び背景印刷層の内面に積層される。
【0019】
一方、ラベル基材2において、内層5は、接着代21を除く熱収縮性フィルム4の内面全体に設けられていることが好ましい。かかるラベル基材2を用いることにより、長尺筒状体3の最内面の全体が内層5の表面5aで構成された筒状ラベル長尺体が得られる。かかる筒状ラベル長尺体は、ブロッキングし難く、また、これから得られた筒状ラベルは容器に対して空回りし難くなる。ただし、内層5が接着代21を除く熱収縮性フィルム4の内面全体に設けられていなければ前記効果を奏さないわけではないので、前記内層5は、接着代21を除く熱収縮性フィルム4の内面の面積を100%とした場合、その50%以上の範囲に設けられることが好ましく、80%〜100%の範囲に設けられることがより好ましく、90%〜100%の範囲に設けられることが特に好ましい。換言すると、前記内層5の表面5aが、長尺筒状体の最内面のうち50%以上の範囲を構成することが好ましく、80%〜100%の範囲を構成することがより好ましく、90%〜100の範囲を構成することが特に好ましい。
【0020】
(熱収縮性フィルム)
熱収縮性フィルムは、例えば、一方向(筒状ラベル長尺体とした際に、その周方向。以下同じ)に大きく熱収縮し得るフィルムが用いられる。なお、前記熱収縮性フィルムは、他方向(フィルムの面内において前記一方向と直交する方向)に若干熱収縮又は若干熱膨張してもよい。熱収縮性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、環状オレフィン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体などのポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物などからなる合成樹脂製フィルムを用いることができる。収縮応力が大きく且つ比較的腰が強いことから、熱収縮性フィルムとして、ポリエステル系樹脂を含むフィルムを用いることが好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を含むフィルムを用いることがより好ましい。また、前記熱収縮性フィルムは、熱収縮性及び自己伸縮性を有するものを用いてもよい。
【0021】
熱収縮性フィルムは、1層のフィルム(単層フィルム)から構成されていてもよいし、2以上の層が積層されたフィルム(積層フィルム)から構成されていてもよい。熱収縮性フィルムが積層フィルムである場合、その積層フィルムの各層は任意に選択できる。前記積層フィルムとしては、熱収縮性を有する2種以上のフィルム層が積層された積層フィルム、熱収縮性を有するフィルム層に透明なガスバリア層が積層された積層フィルムなどを用いることができる。熱収縮性フィルムが積層フィルムである場合、各フィルム層の材質は、実質的に同じでもよいし、異なっていてもよい。単層フィルムは、ポリエステル系樹脂(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)を含むフィルムが好ましく、積層フィルムは、少なくとも1つの層がポリエステル系樹脂(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)を含んでいることが好ましい。
熱収縮性フィルムの厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm〜120μmであり、好ましくは10μm〜60μmである。
【0022】
熱収縮性フィルムの収縮応力は、3MPa以上が好ましく、7MPa以上がより好ましい。前記収縮応力の上限は、特に限定されないが、例えば、20MPa以下であり、好ましくは15MPa以下である。このような収縮応力の熱収縮性フィルムを用いることにより、筒状ラベルを熱収縮装着した際に、筒状ラベルが容器に強く密着し、内層の滑り難さと相乗して、容器に対して空回りし難い筒状ラベルを得ることができる。
前記熱収縮性フィルムの収縮応力は、そのフィルムを一方向に80mm、他方向に15mmに切り取り、このフィルム片の一方向の両端部を応力測定器のチャックに保持し(チャック間距離50mm)、これを90℃の温水中に10秒間浸漬した際に生じる一方向に於ける収縮応力の最大値をいう。
【0023】
前記熱収縮性フィルムの一方向における熱収縮率は、好ましくは30%〜90%である。前記熱収縮性フィルムは、他方向に若干熱収縮又は熱膨張するフィルムを用いてもよい。そのようなフィルムの他方向における熱収縮率は、好ましくは−3〜15%である。
ただし、前記熱収縮率は、加熱前のフィルムの長さ(元の長さ)と、フィルムを90℃の温水中に10秒間浸漬した後のフィルムの長さ(浸漬後の長さ)の割合であり、下記式に代入して求められる。
前記熱収縮率(%)=[{(一方向又は他方向の元の長さ)−(一方向又は他方向の浸漬後の長さ)}/(一方向又は他方向の元の長さ)]×100。
また、前記熱収縮性フィルムは、非透明でもよいが、印刷層を内面側に設ける本実施形態にあっては透明性に優れたものが用いられる。透明(無色透明又は有色透明)な熱収縮性フィルムの透明性の指標は、全光線透過率70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。ただし、全光線透過率は、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠した測定法によって測定される。
【0024】
(意匠印刷層及び背景印刷層)
意匠印刷層は、所望のデザインを筒状ラベルに付与するための層であって、商品名などのデザインを一色又は多色にて表示した印刷層である。背景印刷層は、前記デザインを際立たせる印刷層である。意匠印刷層及び背景印刷層は、従来公知のインキを用いて、公知の印刷法にて形成できる。背景印刷層は、通常、白色、銀色、黒色などの任意の一色のインキで構成される。前記背景印刷層が白色の場合には、顔料として酸化チタンを用いることが好ましい。背景印刷層が酸化チタンを含む場合、その配合量は特に限定されないが、背景印刷層全体に対して30質量%〜80質量%が好ましい。背景印刷層を構成するインキのバインダー樹脂としては、従来公知の印刷インキに用いられている樹脂成分を用いることができ、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。
意匠印刷層及び背景印刷層の厚みは特に限定されないが、それぞれ独立して、例えば、0.1μm〜5μmであり、好ましくは、0.2μm〜3μmである。
【0025】
(内層)
前記内層は、バインダー樹脂と、滑剤と、を含み、前記バインダー樹脂と滑剤が相溶している。前記相溶している状態は、内層の表面の任意の箇所を3000倍に拡大して観察して、(a)バインダー樹脂と滑剤とが完全に混じり合っている状態、又は、(b)バインダー樹脂と滑剤とが、ぼんやりとした海島状に分離しているように見えるが、それらの界面が確認できず、海島の境界において両者が混じり合っている状態をいう。
なお、前記内層中のバインダー樹脂と滑剤は、ラベル基材を熱収縮させた後にも相溶している。
【0026】
前記内層の表面を長尺筒状体の最内面とする筒状ラベル長尺体及び筒状ラベルが、ブロッキング防止及び容器装着性、並びに、空回り防止に優れている理由は、明確ではないが、本発明者らは次のように推察する。
一般に、バインダー樹脂を含む層は、それ同士を重ね合わせると摩擦抵抗が大きいため、バインダー樹脂は、ブロッキングを生じやすい材料である。他方、容器に対して滑り難いので、筒状ラベル長尺体の最内面にバインダー樹脂を含む層を設けると、筒状ラベルの空回り防止には効果的である。一方、通常、滑剤を含む層は、滑り性に優れているため、筒状ラベル長尺体の最内面に滑剤を含む層を設けると、筒状ラベルのブロッキング防止には効果的である。他方、滑りやすいため、筒状ラベル長尺体の最内面に滑剤を含む層を設けると、筒状ラベルの空回りし易くなる。滑剤の滑り性は、滑剤が層中に粒状に存在し、その滑剤の粒が層の表面から突出し、バインダー樹脂が容器に接触し難くなることによってもたらされる。このようにバインダー樹脂と滑剤は、トレードオフの関係にあり、滑剤を入れると、空回りを十分に防止できず、滑剤をいれないと、ブロッキングを十分に防止できず且つ容器への装着不良を生じる。
本発明のように、滑剤とバインダー樹脂が相溶していると、滑剤の粒が内層の表面から実質的に突出せず、滑剤に基づく適度な滑り作用を有しつつ、バインダー樹脂が容器に接触し得る状態でバインダー樹脂に基づく滑り抑制作用を有すると推察される。このため、本発明の筒状ラベル長尺体及び筒状ラベルは、ブロッキング防止効果に優れ、容器に対して良好に装着でき、さらに、装着後には空回りし難くなる。また、滑剤とバインダー樹脂が相溶することにより、内層から滑剤が脱落し難くなり、内層から微細な粉塵を生じることを防止できる。
【0027】
前記バインダー樹脂は、特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、及びこれらの混合樹脂などが挙げられる。好ましくは、バインダー樹脂は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、又は、アクリル系樹脂とセルロース系樹脂との混合樹脂が用いられる。
【0028】
前記アクリル系樹脂を構成する単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和化合物又はその無水物;2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;などが挙げられる。前記「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0029】
必要に応じて、前記アクリル系樹脂の単量体成分として、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;エチレン、プロピレンなどのオレフィン類やジエン類などの重合性不飽和化合物を併用することもできる。
【0030】
前記アクリル系樹脂は、単独又は単量体組成の異なる2種以上の樹脂を組み合わせて用いることができる。
前記アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜120000であることが好ましい。
【0031】
前記ウレタン系樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる樹脂であって、積層面に対して密着力(接着力)を示すものであれば特に限定されず、公知のポリウレタン樹脂を使用できる。
ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族及び脂環族の公知のジイソシアネート類の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。また、必要に応じて、3官能以上のポリイソシアネート類やポリイソシアネートアダクト体を前記ジイソシアネートと混合してもよい。
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール(1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等)、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの低分子量グリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール−ポリカプロラクトン共重合体等のポリエーテルジオール;プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類とアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸などの2塩基酸類とから得られるポリエステルジオール;ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ラクトンブロック共重合ポリオールなどのラクトンジオールなどの公知のジオール類を使用できる。また、必要に応じて、前記ジオール類と3官能以上のポリオール化合物とを混合してもよい。
ウレタン系樹脂の重量平均分子量は、一般には5000〜100000程度、好ましくは10000〜70000程度である。
【0032】
前記セルロース系樹脂としては、ニトロセルロース(硝化綿)樹脂、セルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等のエステル化されたセルロース樹脂などが挙げられる。
ニトロセルロース樹脂としては、窒素分10〜14%が好ましく、より好ましくは10.0〜12.5%である。ニトロセルロースの平均重合度は、30〜100の範囲が好ましく、より好ましくは45〜95である。エステル化セルロース樹脂としては、樹脂中のヒドロキシル基の中で0.5〜80%がエステル化されていることが好ましく、より好ましくは2〜70%である。エステル化セルロース樹脂の重量平均分子量は、12000〜75000の範囲が好ましく、より好ましくは12000〜65000である。セルロース系樹脂は、アクリル系樹脂と混合することで、内層の硬度を向上させる。
【0033】
前記滑剤は、バインダー樹脂と相溶するものであれば特に限定されないが、前記バインダー樹脂との相溶性に優れていることから、アミド系滑剤、アミン系滑剤及びエステル系滑剤から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
前記アミド系滑剤としては、例えば、脂肪酸アンモニウム塩の脱水又は油脂の加アンモニア分解により合成されるモノアミド;脂肪酸アミドとホルムアルデヒドとの縮合反応、モノカルボン酸とジアミンとの加熱縮合反応又は二塩基酸とモノアミンとの加熱縮合反応によって合成されるジアミド(ビスアミド);二塩基酸とジアミンの重縮合、ジアミン誘導体と二塩基酸の重縮合、ジアミンと二塩基酸誘導体若しくはダイマー酸の重縮合、或いはラクタムの開環重合によって得られるポリアミド;などが挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルセバシン酸アミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0034】
前記アミン系滑剤としては、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、テトラデシルアミン、オイレルアミンなどの飽和又は不飽和第1級アルキルアミン;ジオイレルアミンなどの飽和又は不飽和第2級アルキルアミン;ドデシルジメチルアミンなどの飽和又は不飽和第3級アルキルアミンなどが挙げられる。
【0035】
前記エステル系滑剤としては、炭素数8〜30の脂肪酸と1〜5価のアルコールとのエステルなどが挙げられる。前記エステル系滑剤の具体例としては、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル、ソルビタントリステアレート、グリセリントリパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレートなどが挙げられる。
【0036】
前記内層において、前記滑剤の配合量は特に限定されないが、滑剤は、バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部〜100質量部含まれていることが好ましく、2質量部〜65質量部がより好ましく、3質量部〜35質量部が特に好ましく、4質量〜25質量部が最も好ましい。
【0037】
内層には、必要に応じて、増粘剤、消泡剤、着色剤、防かび剤などのその他の添加剤が含まれていてもよい。もっとも、内層には、粒状添加剤を実質的に含まない又は含んでいても微量であることが好ましい。前記粒状添加剤を実質的に含まない又は微量に含む場合とは、粒状添加剤が、内層全体中、5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。なお、前記粒状添加剤は、内層の中に粒状になって存在する添加剤をいい、内層を構成する前(原料段階)において、粒状であってもよいし、非粒状(例えば、液状)であってもよい。粒状添加剤が内層に含まれていると、それが内層の表面から突出するおそれがあり、内層の表面の摩擦抵抗を小さくすることがある。
【0038】
前記内層は、積層面(
図2の場合には、背景印刷層の内面)に、内層形成材料を塗布し、これを硬化させることによって形成できる。塗布方法は、特に限定されず、従来公知の印刷法、コート法などを用いることができる。
内層形成材料は、前記バインダー樹脂及び滑剤が溶媒に溶解された溶液からなる。必要に応じて、添加剤が、前記溶液中の溶媒に溶解又は分散されていてもよい。内層形成材料の調製は、バインダー樹脂と滑剤を同時に溶媒に溶解させる方法でもよいが、相溶状態が良好な内層を形成できることから、バインダー樹脂が溶媒に溶解された第1溶液と滑剤が溶媒に溶解された第2溶液とを混合する方法が好ましい。
前記溶媒は、バインダー樹脂及び滑剤を溶解できるものであれば特に限定されず、従来公知の有機溶剤を用いることができる。溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルなどのエステル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;これらの混合溶剤などが挙げられる。
【0039】
(熱収縮性筒状ラベル長尺体及び熱収縮性筒状ラベルの使用法及び効果)
本発明の熱収縮性筒状ラベル長尺体は、例えば、次のようにして使用される。
具体的には、
図5に示すように、筒状ラベル長尺体10のロール品Aを、ラベラー9に装填する。ラベラー9によって、扁平状の筒状ラベル長尺体10がロール品から引き出され、送りローラを備える搬送装置(図示せず)によって、筒状ラベル長尺体10がラベラー9のライン上に送られる。次に、筒状ラベル長尺体10の折り返し処理が行われる。すなわち、扁平状の筒状ラベル長尺体10を一旦開口して、新たな折り線にて筒状ラベル長尺体10を扁平状に折り畳む。折り返し処理は、扁平状の筒状ラベル長尺体10を、公知のテトラガイド(図示せず)の外側に通した後、ピンチローラ(図示せず)に通すことにより行われる。ただし、前記折り返し処理を行わなくてもよい。
その後、筒状ラベル長尺体10は、ラベラー9のライン上に具備されたインナーガイド92の外側に通される。前記インナーガイド92にて一旦開口された筒状ラベル長尺体10は、ラインの下流側へと送られる。インナーガイド92の下方において、筒状ラベル長尺体1をカッター94を用いて切断線に従って切断することにより、所定長さの扁平状の筒状ラベル1が得られる。
【0040】
得られた扁平状の筒状ラベル1は、搬送装置95にてマンドレル96に送られ、マンドレル96の外側に通されて開口される。さらに、搬送装置95にてマンドレル96に沿って筒状ラベル11が送られ、白抜き矢印方向から順に送られてくる容器Bに被せられる。 容器Bに被せた筒状ラベル1を加熱することにより、筒状ラベル1が熱収縮して容器Bに装着される。このようにして、
図6に示すようなラベル付き容器11が得られる。
本発明の筒状ラベル長尺体10は、最内面に内層が設けられているので、ブロッキングし難い。かかる筒状ラベル長尺体10から得られる筒状ラベル1は、扁平状態から容易に開口でき、さらに、容器Bに対する滑り性も高いので、容器Bに良好に装着できる。
【0041】
容器Bは、特に限定されない。容器Bは、例えば、円筒状外面を有する胴部B1と、注出口に取り付けられた封緘用のネジキャップB2と、を有する。ネジキャップB2は、中心軸周りに回転させることにより、胴部B1の上方に形成された注出口から取り外し又は取り付けることができる。容器Bの材質も特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂、ガラス、金属などが挙げられる。
さらに、容器Bの胴部下方には、
図6に示すように、複数の凹み部B3が形成されている。この凹み部B3は、容器Bの周方向に所定間隔を開けて形成されている。一般に、このような凹み部B3が形成された容器Bは、ペダロイド型容器と呼ばれており、炭酸飲料などの昇圧性収納物を封入するのに好適な耐圧容器形状として広く用いられている。昇圧性収納物は、大気圧よりも高い状態で容器内の封入される収納物である。
【0042】
図6に示すように、1つの実施形態では、熱収縮性筒状ラベル1は、その下縁が凹み部B3にかからないように、容器Bの胴部B1に装着されている。従って、筒状ラベル1の最内面の全体が、容器Bの胴部外面に隙間無く密着している。筒状ラベル1の最内面全体が内層の表面で構成されている場合、筒状ラベル1は、内層の表面のみを介在させた状態で胴部外面と接触している。
もっとも、熱収縮性筒状ラベル1は、
図7に示すように、凹み部B3を覆うように容器Bに装着されていてもよい。
なお、本発明の熱収縮性筒状ラベル1が装着される容器は、昇圧性収納物を封入するものに限られず、ミネラルウォーターなどの常圧収納物を封入するものでもよい。
最内面に内層が設けられた筒状ラベル1を用いたラベル付き容器11は、筒状ラベル1が容器Bに対して空回りし難い。このため、比較的力の弱い者でも、ラベル付き容器11のキャップを比較的簡単に開栓できる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
[使用材料]
・熱収縮性フィルム:厚み40μmの2種3層フィルム(表層及び裏層がポリエステル系樹脂で、中間層がポリスチレン系樹脂)。グンゼ(株)製、商品名「HST」。収縮応力7.6MPa。
・背景印刷層形成用インキ:白色インキ。サカタインクス(株)製、商品名「エトナ」。
・バインダー樹脂:アクリル系樹脂。ただし、前記アクリル系樹脂が溶剤(イソプロプルアルコール、酢酸エチル及び酢酸プロピルの混合溶剤)に溶解された透明メジウムインキ(サカタインクス(株)製、商品名「エトナ調色用メジウム」)を使用した。前記透明メジウムインキのアクリル系樹脂の固形分濃度は、20質量%である。
・滑剤:アミド系滑剤。ただし、前記アミド系滑剤が混合溶剤(トルエンとテトラヒドロフラン)に溶解された滑剤溶液(サカタインクス(株)製、商品名「PS985 C−20 ブロッキング防止剤」)を使用した。前記アミド系滑剤の固形分濃度は、25質量%である。
【0045】
[実施例1]
前記透明メジウムインキを100質量部及び前記滑剤溶液を3質量部混合し、内層形成材料を調製した。この内層形成材料におけるアクリル系樹脂とアミド系滑剤の質量比は、アクリル系樹脂:アミド系滑剤=20:0.75(≒100:3.75)である。
前記熱収縮性フィルムの一方面の全体に(ただし、接着代を除く)、前記背景印刷層形成用インキを、グラビア印刷法にて塗布した。インキを硬化させることにより、厚み2μmの背景印刷層を形成した。
次に、その背景印刷層のフィルム積層面とは反対側の面に、前記内層形成材料を、グラビア印刷法(60線)にて塗布した。内層形成材料中の溶剤を揮発させることにより、厚み0.5μmの内層を形成した。このようにして、熱収縮性フィルム/背景印刷層/内層からなるラベル基材を作製した。
【0046】
[実施例2]
透明メジウムインキを100質量部及び滑剤溶液を5質量部混合して、内層形成材料を調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のラベル基材を作製した。実施例2で使用した内層形成材料におけるアクリル系樹脂とアミド系滑剤の質量比は、20:1.25(≒100:6.25)である。
【0047】
[実施例3]
透明メジウムインキを100質量部及び滑剤溶液を7質量部混合して、内層形成材料を調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のラベル基材を作製した。実施例3で使用した内層形成材料におけるアクリル系樹脂とアミド系滑剤の質量比は、20:1.75(≒100:8.75)である。
【0048】
[実施例4]
透明メジウムインキを100質量部及び滑剤溶液を10質量部混合して、内層形成材料を調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のラベル基材を作製した。実施例4で使用した内層形成材料におけるアクリル系樹脂とアミド系滑剤の質量比は、20:2.5(≒100:12.5)である。
【0049】
[実施例5]
透明メジウムインキを100質量部及び滑剤溶液を25質量部混合して、内層形成材料を調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のラベル基材を作製した。実施例5で使用した内層形成材料におけるアクリル系樹脂とアミド系滑剤の質量比は、20:6.25(≒100:31.25)である。
【0050】
[実施例6]
透明メジウムインキを100質量部及び滑剤溶液を50質量部混合して、内層形成材料を調製したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6のラベル基材を作製した。実施例6で使用した内層形成材料におけるアクリル系樹脂とアミド系滑剤の質量比は、20:12.5(≒100:62.5)である。
【0051】
[比較例]
透明メジウムインキのみを内層形成材料として使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例のラベル基材を作製した。
【0052】
[表面観察]
実施例2のラベル基材の内層の表面を電子顕微鏡で3000倍に拡大して観察した。その顕微鏡写真を
図8に示す。さらに、そのラベル基材を加熱して10%収縮させた後、その内容の表面を同様にして観察した。その写真を
図9に示す。なお、前記10%収縮は、ラベル基材の熱収縮方向における長さが、加熱前の長さを100とした場合に、90となったことを意味する。
図8及び
図9から明らかなように、熱収縮前及び熱収縮後のいずれにおいても、内層中におけるバインダー樹脂と滑剤とは相溶していることが判る。
【0053】
[摩擦試験]
実施例1乃至6及び比較例の各ラベル基材の、内層の表面の静摩擦係数及び動摩擦係数を、JIS K 7125に準拠して測定した。具体的な測定条件は、下記の通りであるる。測定は、相手材料が乾燥した状態(dry状態)と、相手材料が水滴で濡れている状態(wet状態)の双方で行った。wet状態は、相手材料の表面の中央部に、0.1mlの水道水を滴下し、その相手材料の表面に試験片を載せた状態とした。それらの結果を表1に示す。ただし、結果は、3回測定の平均値とした。
試験片:内層が設けられたラベル基材を、幅80mm×長さ100mmに裁断。試験片の長さ方向は、熱収縮性フィルムの熱収縮方向とした。
相手材料:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製の「A1101未処理面」)を、幅100mm×長さ300mmに裁断。このPETフィルムは、PET容器とラベル基材の摩擦を想定したものである。
温度及び湿度:23℃±2℃、50±5%RH。
滑り片(重り):200±2gの平面視63mm角の重り。
試験機:(株)島津製作所製の「AGS−50S」。
【0054】
【表1】
【0055】
[装着試験]
実施例1乃至6及び比較例の各ラベル基材を、内層を内側にして筒状にし、接着代を溶剤を用いて接着することにより、扁平状の熱収縮性筒状ラベル長尺体を作製した。この筒状ラベル長尺体の最内面の全体は、内層の表面から構成されている。
扁平状の熱収縮性筒状ラベル長尺体のそれぞれをロール品とし、これをラベラー((株)フジアスッテク製、商品名「LSA−900」)に装着し、300bpmで装着試験を行った。前記300bpmでの装着試験は、熱収縮性筒状ラベルを1分当たり300枚の速度で、ペタロイド型のPETボトル容器((株)吉野工業所製)に装着する試験である。この装着試験において、筒状ラベルをPET容器に装着する際、筒状ラベルは、容器胴部に対応する箇所において約10%収縮する。
【0056】
その結果、実施例1乃至6の熱収縮性筒状ラベル長尺体は、熱収縮性筒状ラベルを約1万枚装着したうちで、装着不良が零であった。比較例の熱収縮性筒状ラベル長尺体は、ブロッキングして開口せず、前記装着試験を行うことができなかった。
【0057】
[空回り試験]
前記装着試験を行うことによって、実施例1乃至6では、約1万本のラベル付き容器を得た。その中から任意に10本を抽出し、その筒状ラベルの外面を片手で握り、キャップの開栓を行った。
その結果、全てのラベル付き容器で、筒状ラベルの空回りがなく、容易にキャップを開栓できた。