【解決手段】開口を有した真空外囲器と、真空外囲器に取り付けられ開口を気密に閉塞したX線透過アセンブリ20を備えるX線管において、X線透過アセンブリ20は、窓枠21とX線透過窓22とX線耐性樹脂フィルム23と封止部材25により構成される。X線透過窓22はベリリウム薄板で形成され、窓枠21に収められ窓枠21とともに真空外囲器の内部の気密状態を保持する。X線耐性樹脂フィルム23と窓枠21とX線透過窓22により形成された内部空間には、乾燥ガス29が充填される。
前記封止部材は、前記窓枠と前記X線耐性樹脂フィルムとの間に設けられたゴムシール材と、前記X線耐性樹脂フィルムを前記ゴムシール材を介して前記窓枠に押圧した状態に保持する押圧部材と、を有している請求項1に記載のX線管。
前記封止部材は、前記窓枠と前記枠部材との間に設けられたゴムシール材と、前記枠部材を前記ゴムシール材を介して前記窓枠に押圧した状態に保持する押圧部材と、を有している請求項3に記載のX線管。
前記封止部材は、前記窓枠と前記X線耐性樹脂フィルムとの間の隙間を気密に閉塞し前記空間の気密状態の保持を補強する補強部材をさらに有している請求項2、4及び9の何れか1項に記載のX線管。
開口を有した真空外囲器と、窓枠と、ベリリウム薄板で形成されX線を透過させるX線透過窓と、電子を放出する陰極と、X線を放出する陽極ターゲットと、X線耐性樹脂フィルムと、を用意し、
前記X線透過窓を前記窓枠に収め、
前記X線透過窓が収められた前記窓枠が前記開口に対向した状態で、前記窓枠を前記真空外囲器に取り付け前記開口を気密に閉塞し、
前記陰極及び陽極ターゲットを前記真空外囲器に収容し、
前記陰極及び陽極ターゲットが収容され前記X線透過窓が収められた前記窓枠が取り付けられた前記真空外囲器の内部を真空排気し、前記真空外囲器を気密に封止し、
乾燥ガス雰囲気中で前記X線耐性樹脂フィルムを前記真空外囲器の外部にて前記X線透過窓に隙間を置いて対向させ、前記窓枠と前記X線透過窓と前記X線耐性樹脂フィルムとの内部に乾燥ガスが充填された空間を形成し、
封止部材を用いて前記窓枠と前記X線耐性樹脂フィルムとの間の隙間を気密に閉塞し前記空間の気密状態を保持し、前記窓枠、X線透過窓、X線耐性樹脂フィルム、封止部材及び乾燥ガスを有したX線透過アセンブリを形成するX線管の製造方法。
開口を有した真空外囲器と、窓枠と、ベリリウム薄板で形成されX線を透過させるX線透過窓と、電子を放出する陰極と、X線を放出する陽極ターゲットと、枠部材と、X線耐性樹脂フィルムと、を用意し、
前記X線透過窓を前記窓枠に収め、
前記X線透過窓が収められた前記窓枠が前記開口に対向した状態で、前記窓枠を前記真空外囲器に取り付け前記開口を気密に閉塞し、
前記陰極及び陽極ターゲットを前記真空外囲器に収容し、
前記陰極及び陽極ターゲットが収容され前記X線透過窓が収められた前記窓枠が取り付けられた前記真空外囲器の内部を真空排気し、前記真空外囲器を気密に封止し、
前記X線耐性樹脂フィルムを前記枠部材に気密に取り付け、
乾燥ガス雰囲気中で前記枠部材が前記真空外囲器の外部にて前記開口に対向した状態で前記X線耐性樹脂フィルムを前記X線透過窓に隙間を置いて対向させ、前記窓枠と前記X線透過窓と前記X線耐性樹脂フィルムと前記枠部材の内部に乾燥ガスが充填された空間を形成し、
封止部材を用いて前記窓枠と前記枠部材との間の隙間を気密に閉塞し前記空間の気密状態を保持し、前記窓枠、X線透過窓、枠部材、X線耐性樹脂フィルム、封止部材及び乾燥ガスを有したX線透過アセンブリを形成するX線管の製造方法。
前記X線耐性樹脂フィルムは、ポリイミド樹脂及びポリエーテルエーテルケトン樹脂のうちの少なくとも1つを含む樹脂材料で形成されている請求項15に記載のX線管の製造方法。
前記封止部材は、前記窓枠と前記X線耐性樹脂フィルムとの間の隙間を気密に閉塞し前記空間の気密状態の保持を補強する補強部材をさらに有している請求項12、14及び19の何れか1項に記載のX線管の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した技術には下記のような問題がある。
(1)の技術は、乾燥及び焼成の工程に要する時間が長く、生産性が低いという問題がある。また、ポリイミド樹脂被膜の厚みには最適範囲が存在する。ポリイミド樹脂被膜は、その厚さが大きいほどBe窓を保護する効果が高いが、厚過ぎるとX線の透過量が減ってしまうためである。しかしながら、ポリイミド樹脂形成液の塗布工程で厚さにムラが発生するため、ポリイミド樹脂被膜の厚みを最適範囲にコントロールすることに限界があり、製造歩留りが低下して製造コストが高くなるという問題もある。ポリイミド樹脂形成液の塗布工程で厚さにムラが発生する現象は、Be窓が平坦でなく、真空となる内側に凹んだ形状となることなどが関係している。また、ポリイミド樹脂被膜の厚みを最適範囲にコントロールすることは煩雑であるという問題もある。さらに、この技術では、Be窓を保護する効果自体も不十分であるという問題もある。
【0007】
(2)の技術は、Be窓に無機被膜を形成する工程に要する時間が長く、生産性が低いという問題(上記(1)の技術と同様の問題)がある。また、特殊で高価な専用設備が必要であるという問題がある。さらに、この技術でも、Be窓を保護する効果自体も不十分であるという問題もある。
【0008】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、製品寿命の長期化を図ることができ、優れた製品信頼性を得ることができるX線管及びX線管の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るX線管は、
開口を有した真空外囲器と、
前記真空外囲器に取り付けられ前記開口を気密に閉塞したX線透過アセンブリと、
前記真空外囲器に収容され電子を放出する陰極と、
前記真空外囲器に収容されX線を放出する陽極ターゲットと、を備え、
前記X線透過アセンブリは、
前記開口に対向し前記真空外囲器に気密に取り付けられた窓枠と、
前記窓枠に収められ前記窓枠とともに前記真空外囲器の内部の気密状態を保持しベリリウム薄板で形成されX線を透過させるX線透過窓と、
前記X線透過窓より外気側に位置し前記X線透過窓に隙間を置いて対向し前記窓枠と前記X線透過窓とともに内部に空間を形成するX線耐性樹脂フィルムと、
前記窓枠と前記X線耐性樹脂フィルムとの間の隙間を気密に閉塞し前記空間の気密状態を保持する封止部材と、
前記空間に充填された乾燥ガスと、
を有している。
【0010】
一実施形態に係るX線管は、
開口を有した真空外囲器と、
前記真空外囲器に取り付けられ前記開口を気密に閉塞したX線透過アセンブリと、
前記真空外囲器に収容され電子を放出する陰極と、
前記真空外囲器に収容されX線を放出する陽極ターゲットと、を備え、
前記X線透過アセンブリは、
前記開口に対向し前記真空外囲器に気密に取り付けられた窓枠と、
前記窓枠に収められ前記窓枠とともに前記真空外囲器の内部の気密状態を保持しベリリウム薄板で形成されX線を透過させるX線透過窓と、
前記X線透過窓より外気側に位置し前記X線透過窓に隙間を置いて対向したX線耐性樹脂フィルムと、
前記開口に対向し前記X線耐性樹脂フィルムが気密に取り付けられ前記窓枠と前記X線透過窓と前記X線耐性樹脂フィルムとともに内部に空間を形成する枠部材と、
前記窓枠と前記枠部材との間の隙間を気密に閉塞し前記空間の気密状態を保持する封止部材と、
前記空間に充填された乾燥ガスと、
を有している。
【0011】
また、一実施形態に係るX線管の製造方法は、
開口を有した真空外囲器と、窓枠と、ベリリウム薄板で形成されX線を透過させるX線透過窓と、電子を放出する陰極と、X線を放出する陽極ターゲットと、X線耐性樹脂フィルムと、を用意し、
前記X線透過窓を前記窓枠に収め、
前記X線透過窓が収められた前記窓枠が前記開口に対向した状態で、前記窓枠を前記真空外囲器に取り付け前記開口を気密に閉塞し、
前記陰極及び陽極ターゲットを前記真空外囲器に収容し、
前記陰極及び陽極ターゲットが収容され前記X線透過窓が収められた前記窓枠が取り付けられた前記真空外囲器の内部を真空排気し、前記真空外囲器を気密に封止し、
乾燥ガス雰囲気中で前記X線耐性樹脂フィルムを前記真空外囲器の外部にて前記X線透過窓に隙間を置いて対向させ、前記窓枠と前記X線透過窓と前記X線耐性樹脂フィルムとの内部に乾燥ガスが充填された空間を形成し、
封止部材を用いて前記窓枠と前記X線耐性樹脂フィルムとの間の隙間を気密に閉塞し前記空間の気密状態を保持し、前記窓枠、X線透過窓、X線耐性樹脂フィルム、封止部材及び乾燥ガスを有したX線透過アセンブリを形成する。
【0012】
また、一実施形態に係るX線管の製造方法は、
開口を有した真空外囲器と、窓枠と、ベリリウム薄板で形成されX線を透過させるX線透過窓と、電子を放出する陰極と、X線を放出する陽極ターゲットと、枠部材と、X線耐性樹脂フィルムと、を用意し、
前記X線透過窓を前記窓枠に収め、
前記X線透過窓が収められた前記窓枠が前記開口に対向した状態で、前記窓枠を前記真空外囲器に取り付け前記開口を気密に閉塞し、
前記陰極及び陽極ターゲットを前記真空外囲器に収容し、
前記陰極及び陽極ターゲットが収容され前記X線透過窓が収められた前記窓枠が取り付けられた前記真空外囲器の内部を真空排気し、前記真空外囲器を気密に封止し、
前記X線耐性樹脂フィルムを前記枠部材に気密に取り付け、
乾燥ガス雰囲気中で前記枠部材が前記真空外囲器の外部にて前記開口に対向した状態で前記X線耐性樹脂フィルムを前記X線透過窓に隙間を置いて対向させ、前記窓枠と前記X線透過窓と前記X線耐性樹脂フィルムと前記枠部材の内部に乾燥ガスが充填された空間を形成し、
封止部材を用いて前記窓枠と前記枠部材との間の隙間を気密に閉塞し前記空間の気密状態を保持し、前記窓枠、X線透過窓、枠部材、X線耐性樹脂フィルム、封止部材及び乾燥ガスを有したX線透過アセンブリを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
始めに、本発明の実施形態の基本構想について説明する。
【0015】
分析用のX線管は、様々な材料の元素分析や製品の組成分析などに使用される。たとえば、塩化物系物質、硫化物系物質、フッ化物系物質、酸類などの分析にも使用される。しかし、X線の照射に伴ってこれらの物質から腐食性のガスが放出され、空気中の水分と結合して塩酸、硫酸、フッ酸などの酸がBe窓やBe窓と真空外囲器とのろう接部(以下ろう接部)の外表面に生成されることがあり、これらの酸が上記不具合の主原因と推定している。
その他の原因としては、使用中にBe窓(Be(ベリリウム)で形成されX線を透過させる薄板)の外表面近傍の大気(O
2+N
2)がX線の照射により分解されNOガスやNO
2ガスやオゾンガスを発生し、これらのガスが空気中の水分と結合して、Be窓や、ろう接部の外表面に硝酸やオゾン水を生成することも不具合の発生の一因主であると推定している。
【0016】
これらの酸は、Be窓の表面やろう接部の外表面に腐食を生じさせ、時間の経過とともに腐食を進行させ、やがて真空部と大気とを貫通する腐食孔を形成し、X線管(真空外囲器)の真空状態を破壊してしまう。上記従来の技術にてBe窓を保護する効果を得ることができなかった理由は、Be窓外表面に密着して保護膜が形成されているため、Be窓外表面の保護膜を通して酸が徐々に浸透し、やがてBe窓表面に酸が到達してしまうためであろうと推定される。
【0017】
そこで、本発明の実施形態においては、この課題の原因を解明し、この課題を解決することにより、製品寿命の長期化を図ることができ、優れた製品信頼性を得ることができるX線管及びX線管の製造方法を得ることができるものである。次に、本発明の実施形態の課題解決のため、上記着想を具体化する手段の概要について説明する。
【0018】
本発明の実施形態では、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)又はPI(ポリイミド)のX線耐性樹脂フィルムをBe窓に隙間を置いて配置し、その端部を窓枠(フレーム部)の外面に、乾燥ガス雰囲気中で接着させる。ここで、窓枠は、X線透過量が比較的低く、Be窓のX線透過領域よりも外周部に位置している。これにより、X線耐性樹脂フィルムとBe窓との間に、乾燥ガスで満たされた空間を形成することができる。乾燥ガスは水分を含まないため通常の大気と異なり、硝酸やオゾン水などの腐食性の酸をBe窓の表面に生成することはない。また、X線耐性樹脂フィルムの外表面に生成された酸は乾燥ガスで満たされた空間によりBe窓やろう接部表面と隔絶されているため、従来のように酸が浸透、到達してBe窓やろう接部表面を腐食させる恐れはない。これにより、Be窓に生じる腐食を防止することができる。
【0019】
次に、上記基本構想を具体化する手段についてより詳細に説明する。
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るX線管及びX線管の製造方法について詳細に説明する。始めに、X線管の構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、X線管1は、回転陽極型のX線管である。X線管1は、陽極ターゲット10と、陰極18と、真空外囲器17と、X線透過アセンブリ20と、を備えている。
【0021】
陽極ターゲット10は真空外囲器17に収容されている。陽極ターゲット10は、ターゲット本体11と、ターゲット面11aとを備えている。ターゲット本体11は銅で形成されている。ターゲット面11aは、陰極18と対向した側のターゲット本体11の表面に形成されている。ターゲット面11aはタングステン合金で形成されている。ターゲット面11aには、電子が衝突されることによりX線を放出する焦点が形成される。
【0022】
陰極18は真空外囲器17に収容されている。陰極18は、陽極ターゲット10のターゲット面11aに間隔を置いて配置されている。陰極18は、陽極ターゲット10に照射する電子を放出する電子放出源(例えばフィラメント)を有している。
【0023】
真空外囲器17は、金属及びガラスで形成されている。真空外囲器17は、ガラスで形成されたガラス外囲器部17aを有している。ガラス外囲器部17aは、両端部が閉塞された円筒状に形成されている。ガラス外囲器部17aは開口17wを有している。この実施形態において、開口17wは円形である。開口17wは、ターゲット面11a付近に位置し、X線を出射させる。
【0024】
真空外囲器17は、金属で形成された金属外囲器部17bを有している。金属外囲器部17bは、ガラス外囲器部17aの外側に位置し、開口17wを取囲むように設けられている。金属外囲器部17bは、ガラス外囲器部17aに気密に接続されている。金属外囲器部17bには、X線透過アセンブリ20と結合するための鍔部が形成されている。この実施形態において、金属外囲器部17b(鍔部)は円形枠状に形成されている。
【0025】
X線透過アセンブリ20は、金属外囲器部17b(真空外囲器17)に取り付けられ開口17wを気密に閉塞している。これにより、真空外囲器17は、密閉され、陽極ターゲット10及び陰極18等を収容している。真空外囲器17の内部は真空状態に維持されている。
【0026】
図1、
図2及び
図3に示すように、X線透過アセンブリ20は、窓枠21と、X線透過窓22と、X線耐性樹脂フィルム23と、封止部材25と、乾燥ガス29と、を有している。
【0027】
窓枠21は、開口17wに対向している。窓枠21には、金属外囲器部17bと結合するための鍔部が形成されている。この実施形態において、窓枠21(鍔部)は円形枠状に形成されている。窓枠21は、金属外囲器部17b(真空外囲器17)に気密に取り付けられている。この実施形態において、窓枠21の鍔部と金属外囲器部17bの鍔部とが溶接されることにより、窓枠21は真空外囲器17に気密に取り付けられている。
【0028】
窓枠21は、X線を出射させるための貫通孔21hと、第1取付け面21s1と、第2取付け面21s2とを有している。この実施形態において、貫通孔21hは円形状であり、第1取付け面21s1及び第2取付け面21s2は円形枠状である。第1取付け面21s1及び第2取付け面21s2は平坦である。第1取付け面21s1は、貫通孔21hの外側に形成され、真空外囲器17の内側(真空側)に位置している。第2取付け面21s2は、貫通孔21hの外側に形成され、真空外囲器17の外側(外気側)に位置している。
【0029】
X線透過窓22は、X線を透過させるものである。X線透過窓22は、X線透過性を示し、かつ機械的強度の高い材料を利用して形成することができる。この実施形態において、X線透過窓22はBe板(ベリリウム薄板:ベリリウムを利用した薄板)で形成されている。
【0030】
X線透過窓22は、真空外囲器17の内側に位置している。X線透過窓22は平板状に形成されている。この実施形態において、X線透過窓22は円板状に形成されている。X線透過窓22は、第1取付け面21s1に対向し窓枠21に取付けられる取付け領域と、貫通孔21hに対向したX線透過領域と、を有している。
【0031】
X線透過窓22の取付け領域は、第1取付け面21s1に気密に取り付けられている。例えば、X線透過窓22は、図示しないろう材を利用して第1取付け面21s1にろう付けすることにより、窓枠21に取付けられている。これにより、X線透過窓22は、窓枠21に収められ、窓枠21とともに真空外囲器17の内部の気密状態を保持することができる。
【0032】
X線耐性樹脂フィルム23は、X線を透過させるものである。X線耐性樹脂フィルム23は、X線透過性及びX線耐性を示す材料を利用して形成することができる。X線耐性樹脂フィルム23は、一般の工業用プラスチックよりX線耐性に優れている材料で形成されている方が望ましい。例えば、X線耐性樹脂フィルム23は、PI(ポリイミド)樹脂及びPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂のうちの少なくとも1つを含む樹脂材料で形成されていた方が望ましい。
【0033】
PEEK樹脂で形成されたX線耐性樹脂フィルム23としては、例えば、ビクトレックス社のアプティブを使用することができる。PI樹脂で形成されたX線耐性樹脂フィルム23としては、例えば、東レ・デュポン社のカプトンや、宇部興産株式会社のユーピレックスを使用することができる。この実施形態において、X線耐性樹脂フィルム23は、PI樹脂で形成されている。
【0034】
X線耐性樹脂フィルム23は、X線透過窓22より真空外囲器17の外側(外気側)に位置し、X線透過窓22に隙間を置いて対向している。X線耐性樹脂フィルム23は平板状に形成されている。この実施形態において、X線耐性樹脂フィルム23は円板状に形成されている。X線耐性樹脂フィルム23は、第2取付け面21s2に対向し窓枠21に取付けられる取付け領域と、貫通孔21hに対向したX線透過領域と、を有している。X線耐性樹脂フィルム23は、窓枠21とX線透過窓22とともに内部に空間を形成する。
【0035】
封止部材25は、窓枠21とX線耐性樹脂フィルム23との間の隙間を気密に閉塞し、上記空間の気密状態を保持する。この実施形態において、封止部材25は、接着剤を利用した接着接合部26を有している。このため、接着接合部26が上記空間の気密状態を保持することができる。上記接着剤としては、例えばエポキシ接着剤を利用することができる。
【0036】
乾燥ガス29は、上記空間(窓枠21、X線透過窓22及びX線耐性樹脂フィルム23の内部に形成された空間)に充填されている。乾燥ガス29は、水分を含まないガスである。乾燥ガス29は、窒素、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノンのうちの少なくとも1つを含む不活性ガスであると望ましい。
上記のように、X線管1が構成されている。
【0037】
次に、上記X線管1の製造方法について説明する。
図1乃至
図3に示すように、X線管1の製造が開始されると、まず、開口17wが形成されたガラス外囲器部17aと、金属外囲器部17bとを有した真空外囲器17を用意する。また、X線耐性樹脂フィルム23が取付けられる前のX線透過アセンブリ20(以下X線透過アセンブリ20´)を用意する。次いで、X線透過アセンブリ20´を真空外囲器17に取り付け、開口17wを気密に閉塞する。この実施形態において、溶接によりX線透過アセンブリ20´を真空外囲器17に取り付ける。
【0038】
続いて、陰極18及び陽極ターゲット10を真空外囲器に収容する。その後、陰極18及び陽極ターゲット10が収容されX線透過アセンブリ20´が取り付けられた真空外囲器17の排気口17eを介して真空外囲器17の内部を真空引きする。これにより、真空外囲器17の内部を真空排気することができる。そして、上記真空引き中に、排気口17eを気密に封止する。上記のことから、X線管1を完成することができる。
【0039】
X線耐性樹脂フィルム23をX線透過アセンブリ20´に取付ける際、まず、上記の真空排気が終了したX線管1を用意する。
【0040】
次いで、乾燥ガス雰囲気中でX線耐性樹脂フィルム23をX線透過窓22に隙間を置いて対向させ、窓枠21とX線透過窓22とX線耐性樹脂フィルム23との内部に乾燥ガス29が充填された空間を形成する。
【0041】
また、封止部材25を用いて窓枠21とX線耐性樹脂フィルム23との間の隙間を気密に閉塞し、上記空間の気密状態を保持する。この実施形態において、封止部材25は接着接合部26を有している。このため、第2取付け面21s2上に接着剤を塗布した後、乾燥ガス雰囲気中でX線耐性樹脂フィルム23を第2取付け面21s2に接着剤を用いて接着させる。例えば、乾燥ガスでガス置換したグローブボックス内で、X線耐性樹脂フィルム23を窓枠21に取り付けることができる。
【0042】
これにより、窓枠21とX線耐性樹脂フィルム23との間の隙間を気密に閉塞することができ、上記空間を形成することができる。そして、X線透過アセンブリ20が形成される(完成する)。
【0043】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線管1及びX線管1の製造方法によれば、X線管1は、開口17wを有した真空外囲器17と、X線透過アセンブリ20と、陰極18と、陽極ターゲット10と、を備えている。X線透過アセンブリ20は、真空外囲器17に取り付けられ開口17wを気密に閉塞している。
【0044】
X線透過アセンブリ20は、窓枠21と、X線透過窓22と、X線耐性樹脂フィルム23と、封止部材25と、乾燥ガス29と、を有している。X線耐性樹脂フィルム23は、X線透過窓22より外気側に位置し、X線透過窓22に隙間を置いて対向し、窓枠21とX線透過窓22とともに内部に空間を形成している。封止部材25は、窓枠21とX線耐性樹脂フィルム23との間の隙間を気密に閉塞し、上記空間の気密状態を保持している。乾燥ガス29は、上記空間に充填されている。
【0045】
X線透過窓22の外表面が外気に晒されることはない。また、乾燥ガス29は水分を含まないため、X線透過窓22の表面に硝酸などの腐食性の酸が生成されることはない。言い換えると、X線の照射によりX線耐性樹脂フィルム23の外表面には硝酸などの腐食性の酸が生成されるが、X線透過窓22はX線耐性樹脂フィルム23と乾燥ガス29(例えば、不活性ガス)が充填された空間とにより隔てられるため、酸による影響がほとんど生じることはない。これにより、X線透過窓22に生じる腐食を抑制(防止)することができる。真空外囲器17の真空気密状態が破壊されてしまうという不具合の発生を抑制(防止)することができる。
【0046】
X線耐性樹脂フィルム23は、膜の完全性が高く、膜厚のバラツキが少ないため、X線透過窓22を保護する効果を十分に得ることができる。なお、X線耐性樹脂フィルム23が塗布工程、乾燥工程及び焼成工程を経て得られる被膜である場合、X線透過窓22を保護する効果を十分に得ることができないものである。何故なら、乾燥ガス29が充填された空間を形成することができないためである。また、X線耐性樹脂フィルム23が薄く形成された場合やX線耐性樹脂フィルム23に孔が形成されている場合はX線透過窓22が酸で侵されるためである。
なお、X線耐性樹脂フィルム23の膜厚のバラツキが多い場合は、X線の透過量のバラツキも多くなる恐れがある。
【0047】
また、上記のように、X線耐性樹脂フィルム23は、被膜ではなく、特殊で高価な設備の使用が不要である。このため、X線耐性樹脂フィルム23が被膜である場合に比べて安価にX線管1を製造することができる。また、X線耐性樹脂フィルム23を取付けるための製造工程は、従来(被膜の場合)に比べ、短く、熟練を要せず、より安定して実施することができる。
【0048】
X線耐性樹脂フィルム23は、一般の工業用プラスチックよりX線耐性に優れている材料で形成されている方が望ましい。X線が照射されることで生じるX線耐性樹脂フィルム23の劣化を抑制することができるためである。このため、X線耐性樹脂フィルム23は、PI樹脂及びPEEK樹脂のうちの少なくとも1つを含む樹脂材料で形成されていた方が望ましい。
【0049】
乾燥ガス29は、窒素、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノンのうちの少なくとも1つを含む不活性ガスが最適である。不活性ガスは、X線の照射で腐食性ガスを生成し難いためである。
【0050】
上記のことから、製品寿命の長期化を図ることができ、優れた製品信頼性を得ることができるX線管1及びX線管1の製造方法を得ることができる。
【0051】
次に、第2の実施形態に係るX線管及びX線管の製造方法について詳細に説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。また、X線管の製造方法は、上述した第1の実施形態と同一であり、その詳細な説明を省略する。
【0052】
図4及び
図5に示すように、X線耐性樹脂フィルム23は桶状に形成されている。X線耐性樹脂フィルム23は、板状の樹脂フィルムを加温成形して立体形状とすることにより形成されている。そして、桶状のX線耐性樹脂フィルム23の底部側が、X線透過窓22に隙間を置いて対向している。このため、窓枠21には、乾燥ガス29が充填された空間を形成するように第2取付け面21s2が形成(位置決め)されている。
【0053】
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線管1及びX線管1の製造方法によれば、X線管1は、開口17wを有した真空外囲器17と、X線透過アセンブリ20と、陰極18と、陽極ターゲット10と、を備えている。X線耐性樹脂フィルム23は、立体形状を有していてもよく、この場合も上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
上記のことから、製品寿命の長期化を図ることができ、優れた製品信頼性を得ることができるX線管1及びX線管1の製造方法を得ることができる。
【0055】
次に、第3の実施形態に係るX線管及びX線管の製造方法について詳細に説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第2の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
図6及び
図7に示すように、封止部材25は、接着接合部26に替えて、ゴムシール材27と、押圧部材28と、を有している。ゴムシール材27は、窓枠21の第2取付け面21s2とX線耐性樹脂フィルム23との間に設けられている。ゴムシール材27は、例えば腐食性ガスを発生し難いゴム、例えば過酸化物架橋したエチレンプロピレンゴム、放射線架橋したフッ素ゴム、フェニルメチルシリコーンゴムなどを使用したOリングで形成されている。押圧部材28は、X線耐性樹脂フィルム23をゴムシール材27を介して第2取付け面21s2(窓枠21)に押圧した状態に保持する。
【0057】
この実施形態において、押圧部材28は、側面に雄ねじの加工がなされているリングナットである。押圧部材28に対応する窓枠21の内周面には、雌ねじの加工がなされている。押圧部材28は、窓枠21の内周面に締め付けられ、X線耐性樹脂フィルム23を押圧している。
【0058】
ここで、X線透過アセンブリ20はスペーサ30をさらに備えている。スペーサ30は、X線耐性樹脂フィルム23の取付け領域と押圧部材28との間に介在されている。
【0059】
これにより、ゴムシール材27は、第2取付け面21s2とX線耐性樹脂フィルム23(押圧部材28)とにより加圧される。第2取付け面21s2とゴムシール材27とが密着され、ゴムシール材27とX線耐性樹脂フィルム23とが密着されるため、窓枠21、X線透過窓22、X線耐性樹脂フィルム23及びゴムシール材27で囲まれた空間の気密状態を保持することができる。
その他、押圧部材28は、締まり嵌めにより窓枠21に取り付けられ、X線耐性樹脂フィルム23を押圧した状態に保持してもよい。
【0060】
なお、ゴムシール材27を利用する場合、第2取付け面21s2は平坦でなくともよい。例えば、第2取付け面21s2には、ゴムシール材27を配置するための枠状の溝部が形成されていてもよい。
【0061】
また、封止部材25がゴムシール材27及び押圧部材28を有している場合、封止部材25は、図示しない補強部材をさらに有していてもよい。補強部材は、窓枠21とX線耐性樹脂フィルム23との間の隙間を気密に閉塞し、上記空間の気密状態の保持を補強するものである。補強部材としては、接着剤、シール剤又は塗装膜等を利用することができる。例えば、第2取付け面21s2、窓枠21の内周面及びゴムシール材27の隙間にシール剤を塗布し、第2取付け面21s2、窓枠21の内周面、ゴムシール材27及びX線耐性樹脂フィルム23で囲まれた空間にシール剤からなる補強部材を形成することができる。
【0062】
次に、上記X線管1の製造方法について説明する。X線管1の製造方法は、大まかに上記第1の実施形態と同様である。このため、ここでは、X線透過窓22の製造方法(組立て方法)について説明する。
【0063】
X線透過アセンブリ20を製造する際、まず、X線透過アセンブリ20が取付けられ、排気工程を終了したX線管1を用意する。
次いで、乾燥ガス雰囲気中で、第2取付け面21s2上にゴムシール材27を配置した後、X線耐性樹脂フィルム23をX線透過窓22に隙間を置いて対向させ、窓枠21とX線透過窓22とX線耐性樹脂フィルム23とゴムシール材27との内部に乾燥ガス29が充填された空間を形成する。
【0064】
また、封止部材25を用いて窓枠21とX線耐性樹脂フィルム23との間の隙間を気密に閉塞し、上記空間の気密状態を保持する。この実施形態において、封止部材25はゴムシール材27及び押圧部材28を有している。このため、押圧部材28を窓枠21の内周面に締め付けることにより、X線耐性樹脂フィルム23を窓枠21に取り付けることができる。
【0065】
これにより、窓枠21とX線耐性樹脂フィルム23との間の隙間を気密に閉塞することができ、上記空間を形成することができる。そして、X線透過アセンブリ20の製造が終了する。
【0066】
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線管1及びX線管1の製造方法によれば、X線管1は、開口17wを有した真空外囲器17と、X線透過アセンブリ20と、陰極18と、陽極ターゲット10と、を備えている。封止部材25はゴムシール材27及び押圧部材28を有していてもよく、この場合も上述した第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
上記のことから、製品寿命の長期化を図ることができ、優れた製品信頼性を得ることができるX線管1及びX線管1の製造方法を得ることができる。
【0068】
次に、第4の実施形態に係るX線管及びX線管の製造方法について詳細に説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第3の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。また、X線管の製造方法は、上述した第3の実施形態と概ね同一であり、その詳細な説明を省略する。
【0069】
図8及び
図9に示すように、X線透過アセンブリ20は、枠部材24をさらに有していてもよい。枠部材24は、開口17wに対向し、X線耐性樹脂フィルム23が気密に取り付けられ、窓枠21とX線透過窓22とX線耐性樹脂フィルム23とともに内部に空間を形成する。枠部材24は、X線耐性樹脂フィルム23より剛性に優れた材料で形成されている。枠部材24は、例えば金属で形成されている。X線透過アセンブリ20を形成する際、予めX線耐性樹脂フィルム23を枠部材24に取り付けて一体に形成しておくことにより、X線耐性樹脂フィルム23を容易に扱うことができる。
【0070】
封止部材25(ゴムシール材27及び押圧部材28)は、窓枠21と枠部材24との間の隙間を気密に閉塞し、上記空間の気密状態を保持する。
この実施形態において、X線耐性樹脂フィルム23は円板状に形成されている。
また、本実施形態においても、封止部材25は上記補強部材をさらに有し、上記空間の気密状態の保持を補強してもよい。X線透過アセンブリ20はスペーサ30をさらに備えていてもよい。
【0071】
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線管1及びX線管1の製造方法によれば、X線管1は、開口17wを有した真空外囲器17と、X線透過アセンブリ20と、陰極18と、陽極ターゲット10と、を備えている。封止部材25はゴムシール材27及び押圧部材28を有していてもよく、この場合も上述した第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、X線透過アセンブリ20を形成する際、予めX線耐性樹脂フィルム23を枠部材24に取り付けて一体に形成しておくことにより、X線耐性樹脂フィルム23を容易に扱うことができる。これにより、X線透過アセンブリ20を一層容易に形成することができる。
【0073】
上記のことから、製品寿命の長期化を図ることができ、優れた製品信頼性を得ることができるX線管1及びX線管1の製造方法を得ることができる。
【0074】
次に、第5の実施形態に係るX線管及びX線管の製造方法について詳細に説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第4の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。また、X線管の製造方法は、上述した第4の実施形態と同一である。
【0075】
図10及び
図11に示すように、枠部材24には段差部が形成されている。これにより、枠部材24の一端面は、X線耐性樹脂フィルム23の表面を越えて押圧部材28側に突出して形成されている。これにより、X線耐性樹脂フィルム23に接触(X線耐性樹脂フィルム23を押圧)すること無しに押圧部材28の機能を発揮することができる。
【0076】
また、本実施形態においても、封止部材25は上記補強部材をさらに有し、上記空間の気密状態の保持を補強してもよい。
【0077】
上記のように構成された第5の実施形態に係るX線管1及びX線管1の製造方法によれば、X線管1は、開口17wを有した真空外囲器17と、X線透過アセンブリ20と、陰極18と、陽極ターゲット10と、を備えている。このため、上述した第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、枠部材24に段差部を形成することにより、押圧部材28をX線耐性樹脂フィルム23に接触すること無しに押圧部材28の機能を発揮することができる。
【0078】
上記のことから、製品寿命の長期化を図ることができ、優れた製品信頼性を得ることができるX線管1及びX線管1の製造方法を得ることができる。
【0079】
つぎに比較例のX線管について説明する。
図12に示すように、比較例のX線管1のX線透過アセンブリ20は、上記乾燥ガス29が充填された空間を有していない。X線耐性樹脂フィルム23は、被膜であり、X線透過窓22を窓枠21に収めた状態で、X線透過窓22上にPI樹脂を塗布した後焼成することにより形成されている。
【0080】
上記のように構成された比較例のX線管1のX線透過アセンブリ20によれば、X線耐性樹脂フィルム23の外表面に生成された酸はX線耐性樹脂フィルム23中を徐々に拡散浸透して、やがてX線耐性樹脂フィルム23の反対表面に密着しているX線透過窓22の腐食を招いてしまう。
【0081】
但し、上記酸の拡散浸透には時間がかかるため、被膜(X線耐性樹脂フィルム23)形成しない場合に比べて不具合発生に至るまでの時間が延長される効果を得ることはできる。しかしながら、比較例の構成では、上記のようにX線透過窓22の腐食を招いてしまうため、上述した実施形態の効果に比べて不十分である。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0083】
例えば、乾燥ガス29は、不活性ガスに限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、乾燥ガス29として乾燥エアを使用することが可能である。
【0084】
封止部材25は、X線耐性樹脂フィルム23の融着を利用した融着接合部を有していてもよい。例えば、熱可塑性樹脂であるPEEK樹脂で形成されたX線耐性樹脂フィルム23を用いる場合、X線耐性樹脂フィルム23の取付け領域にレーザービームを照射して第2取付け面21s2(窓枠21)に融着することも可能である。
【0085】
また、封止部材25が融着接合部を有している場合、封止部材25は、上記補強部材をさらに有していてもよい。上述したように、補強部材としては、接着剤、シール剤又は塗装膜等を利用することができる。
【0086】
X線管1は、固定陽極型のX線管に限定されるものではなく、回転陽極型のX線管でもよく、この場合も上述した効果を得ることができる。回転陽極型のX線管を使用する場合、磁界を発生させるステータコイル(回転駆動機構)等と組み合わせて用いられる。