特開2015-111803(P2015-111803A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015111803-通信モジュール 図000003
  • 特開2015111803-通信モジュール 図000004
  • 特開2015111803-通信モジュール 図000005
  • 特開2015111803-通信モジュール 図000006
  • 特開2015111803-通信モジュール 図000007
  • 特開2015111803-通信モジュール 図000008
  • 特開2015111803-通信モジュール 図000009
  • 特開2015111803-通信モジュール 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-111803(P2015-111803A)
(43)【公開日】2015年6月18日
(54)【発明の名称】通信モジュール
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/38 20150101AFI20150522BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20150522BHJP
【FI】
   H04B1/38
   H05K3/28 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-54606(P2014-54606)
(22)【出願日】2014年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-225216(P2013-225216)
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.WCDMA
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐治 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】市川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
【テーマコード(参考)】
5E314
5K011
【Fターム(参考)】
5E314AA24
5E314AA32
5E314AA42
5E314BB02
5E314CC01
5E314FF05
5E314FF21
5E314GG17
5E314GG21
5E314GG26
5K011AA15
5K011DA21
5K011DA29
5K011JA01
5K011KA04
5K011KA18
(57)【要約】
【課題】高機能且つ小型化な携帯電話用の通信モジュールを提供する。
【解決手段】通信モジュール100’は、携帯電話通信に係る第1高周波処理部610と、衛星測位システムに係る受信信号を処理する第2高周波処理部622と、ベースバンド処理部及びアプリケーション処理部を有するシステム部630と、電源回路部640とが実装された回路基板800と、回路基板800に実装された電子部品を被覆する封止部材900と、封止部材900の表面に形成された導電性のシールド層901と、前記第1高周波処理部の実装領域と前記第2高周波処理部の実装領域とを区画するように封止部材900に形成したシールド壁902とを備えた。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)携帯電話通信に係る高周波信号を処理する第1高周波処理部、(b)衛星測位システムに係る受信信号を処理する第2高周波処理部、(c)携帯電話通信に係るベースバンド信号を処理するベースバンド処理部及び携帯電話の各種アプリケーション動作を処理するアプリケーション処理部を有するシステム部、(d)電源回路部が実装された回路基板と、
回路基板の一方の主面の全面に亘って形成され該主面に実装された電子部品を被覆する封止部材と、
封止部材の表面に形成された導電性のシールド層と、
前記第1高周波処理部の実装領域と前記第2高周波処理部の実装領域とを区画するように封止部材の主面から回路基板の一方の主面側に向かって形成された溝部を充填し且つ前記シールド層と導通した第1シールド壁とを備えた
ことを特徴とする通信モジュール。
【請求項2】
前記システム部及び電源回路部の何れか一方又は双方の実装領域と前記第1高周波処理部及び第2高周波処理部の実装領域とを区画するように封止部材の主面から回路基板の一方の主面側に向かって形成された溝部を充填し且つ前記シールド層と導通した第2シールド壁を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の通信モジュール。
【請求項3】
前記電源回路部は第1高周波処理部用の第1電源回路部とシステム部用の第2電源回路部とを含み、
第1電源回路部の実装領域と第2電源回路部の実装領域とを区画するように封止部材の主面から回路基板の一方の主面側に向かって形成された溝部を充填し且つ前記シールド層と導通した第3シールド壁とを備えた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の通信モジュール。
【請求項4】
前記回路基板に実装され非携帯電話通信に係る高周波信号を処理する第3高周波処理部と、
前記システム部及び電源回路部の何れか一方又は双方の実装領域と前記第3高周波処理部の実装領域とを区画するように封止部材の主面から回路基板の一方の主面側に向かって形成された溝部を充填し且つ前記シールド層と導通した第4シールド壁とを備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の通信モジュール。
【請求項5】
前記第1高周波処理部の実装領域と第3高周波処理部の実装領域との間にシステム部の実装領域が配置されている
ことを特徴とする請求項4記載の通信モジュール。
【請求項6】
前記第1高周波処理部の実装領域と第2高周波処理部の実装領域は第1シールド壁を介して隣接している
ことを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の通信モジュール
【請求項7】
前記ベースバンド処理部の主要処理部と前記アプリケーション処理部の主要処理部は1つのIC(Integrated Circuit)に集積されている
ことを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の通信モジュール。
【請求項8】
前記回路基板は、導体層と絶縁体層とを積層してなるとともに、他の導体層より厚みが大きく且つグランドとして機能する導体層であるコア層を備え、
前記第1高周波処理部・第2高周波処理部・システム部・電源回路部のうちの少なくとも何れか1つを構成する1つ以上の電子部品は前記回路基板のコア層に形成された貫通孔又は凹部内に配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至7何れか1項記載の通信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話で用いられる通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、所謂スマートフォンと呼ばれる多機能携帯電話に代表されるように携帯電話の多機能化及び小型化が図られている。このような携帯電話としては、高周波信号の送受信に必要な各種フロントエンド部品を回路基板に集約実装した高周波回路モジュールを、マザーボードに搭載したものが知られている(例えば特許文献1参照)。ここでフロントエンド部品とは、高周波信号を処理する高周波ICとアンテナとの間の経路上に配置される高周波信号処理用の受動部品や能動部品を意味する。特許文献1に記載の高周波回路モジュールでは、回路基板上に電力増幅用IC、送信フィルタ、受信フィルタ等のフロントエンド部品が搭載されている。また回路基板内には整合回路などを構成するキャパシタなどの受動部品が埋設されている。特許文献1に記載の高周波回路モジュールは、セルラー方式800MHz帯及びPCS(Personal Communication Services)方式1.9GHz帯の周波数帯域を持った2つの送受信系と、GPS(Global Positioning System)による測位機能を利用するためGPSの受信バンド1.5GHz帯を持った1つの受信系とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−277939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の携帯電話は、高周波回路モジュールや電源モジュールや位置情報モジュールなどの各種モジュール、ベースバンド信号処理用のIC、アプリケーション処理用のIC、メモリなどをマザーボードに実装することによって構成されていた。ここで高周波回路モジュールなどの各種モジュールは単体で最適化されているため、機種毎に設計が異なるマザーボード上では、各モジュールの組合せに応じて改めて調整を行う必要があった。また、実装工程が多くなるという問題もあった。さらに、マザーボード及び各モジュールの基板の配線を介して各モジュール間の接続を行うため、信号の引き回しが多く、信号品質の劣化が発生していた。さらに、各モジュールがそれぞれ個別にシールドを備えている場合には、全体の小型化が困難であった。
【0005】
一方、上記従来の携帯電話における課題を踏まえて、フロントエンド部品、高周波IC、電源回路、ベースバンド信号の処理回路、メモリなど携帯電話のほぼ全ての機能を1つの回路基板に集約したいという要望がある。しかし、特許文献1に記載の高周波回路モジュールに、ベースバンド処理回路やメモリや電源回路を実装するとともに全体サイズを小型化しようとすると、(a)各機能部が接近しているので各機能部間でノイズが混入して特性劣化が生じやすい、(b)各機能部が接近しているので放熱効率が低下する、(c)小型化した場合であっても従前の高周波回路モジュールと比較すれば回路基板サイズが大きいため実装時などで反りが生じやすい、という問題があった。
【0006】
なお、前記(a)の課題について、この種の製品では電源回路として高周波回路用の電源回路とその他の回路用の電源回路とを備えており、特に小型化のため各電源回路はスイッチングレギュレータ方式を採用している。このため、他の回路用の電源回路で生じたスイッチングノイズが高周波回路用の電源回路と電磁結合し、その結果、スイッチングノイズが高周波回路に伝搬して高周波特性の劣化を招く場合がある。または、電源回路で生じたスイッチングノイズが直接高周波回路に電磁結合することにより高周波特性の劣化を招く場合もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高機能且つ小型であり実装性にも優れた携帯電話用の通信モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明に係る通信モジュールは、(a)携帯電話通信に係る高周波信号を処理する第1高周波処理部、(b)衛星測位システムに係る受信信号を処理する第2高周波処理部、(c)携帯電話通信に係るベースバンド信号を処理するベースバンド処理部及び携帯電話の各種アプリケーション動作を処理するアプリケーション処理部を有するシステム部、(d)電源回路部が実装された回路基板と、回路基板の一方の主面の全面に亘って形成され該主面に実装された電子部品を被覆する封止部材と、封止部材の表面に形成された導電性のシールド層と、前記第1高周波処理部の実装領域と前記第2高周波処理部の実装領域とを区画するように封止部材の主面から回路基板の一方の主面側に向かって形成された溝部を充填し且つ前記シールド層と導通した第1シールド壁とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、携帯電話の構成に必要な主要機能部の多くが1つのモジュールに集約されているので高機能且つ小型化が図られる。また本発明に係る通信モジュールは、主要機能を組み込んで最適化されているため、機種ごとの設計の相違による影響を最小限にとどめ、モジュール実装先のマザーボード上での再調整の負担を軽減できる。さらに本発明では、主要機能を一括で実装できるため、実装工数が短縮できる。さらに本発明では、主要機能間の接続がモジュールの回路基板を介してのみ行われるため、信号の引き回しが少なく、信号品質の劣化を軽減することができる。さらに本発明では、シールド壁構造を採用しているので、小型化が容易になる。特に、本発明では、携帯電話通信に係る高周波信号の衛星測位システムに係る受信信号への干渉を防止することができる。
【0010】
また、本発明では、部品実装面である回路基板の一方の主面に形成された封止部材に、第1高周波処理部の実装領域と前記第2高周波処理部の実装領域とを区画するように溝部が形成されており、且つ、該溝部には第1シールド壁が充填されている。これにより第1高周波処理部から第2高周波処理部へのノイズの侵入を防止できるので高周波特性に優れたものとなる。また本発明では、回路基板の一方の主面に全面に亘って電子部品を被覆する封止材料が形成されているので、該封止部材によって高い放熱効率が得られる。さらに本発明では、適切な封止部材を選択することにより回路基板の反りを抑えることができる。以上のように本発明に係る通信モジュールは、携帯電話の構成に必要な主要機能部の多くが集約されているにもかかわらず、高周波回路の特性劣化を防止でき、放熱効率が高く、反りが生じにくいものとなる。
【0011】
本発明の好適な態様の一例としては、前記システム部及び電源回路部の何れか一方又は双方の実装領域と前記第1高周波処理部及び第2高周波処理部の実装領域とを区画するように封止部材の主面から回路基板の一方の主面側に向かって形成された溝部を充填し且つ前記シールド層と導通した第2シールド壁を備えたことを特徴とするものが挙げられる。
【0012】
本発明によれば、システム部及び電源部から第1高周波処理部へのノイズの侵入を防止できるので高周波特性に優れたものとなる。
また本発明では、回路基板がグランドとして機能するコア層を備えており、該コア層に形成された貫通孔又は凹部に電子部品が配置されているので、高密度化が図られるとともに埋設された電子部品は高いシールド性を有するものとなる。また本発明では、回路基板がコア層を備えているので各機能部で発生した熱がコア層に伝導し、さらに該コア層において面方向に拡散する。これにより高い放熱効率が得られる。また本発明では、回路基板の一方の主面に全面に亘って電子部品を被覆する封止材料が形成されているので、該封止部材によっても高い放熱効率が得られる。さらに本発明では、回路基板がコア層を備えているので回路基板は反りが生じにくく、さらに適切な封止部材を選択することにより回路基板の反りを抑えることができる。以上のように本発明に係る通信モジュールは、携帯電話の構成に必要な主要機能部の多くが集約されているにもかかわらず、高周波回路の特性劣化を防止でき、放熱効率が高く、反りが生じにくいものとなる。
【0013】
本発明の好適な態様の一例としては、前記電源回路部は第1高周波処理部用の第1電源回路部とシステム部用の第2電源回路部とを含み、第1電源回路部の実装領域と第2電源回路部の実装領域とを区画するように封止部材の主面から回路基板の一方の主面側に向かって形成された溝部を充填し且つ前記シールド層と導通した第3シールド壁とを備えたことを特徴とするが挙げられる。
【0014】
本発明によれば、第2電源回路部で生じたノイズが第1電源回路部を介して第1高周波処理部に伝搬することを防止できるので、高周波回路の特性劣化をさらに効果的に防止できる。
【0015】
また本発明の好適な態様の一例としては、前記回路基板に実装され非携帯電話通信に係る高周波信号を処理する第3高周波処理部と、前記システム部及び電源回路部の何れか一方又は双方の実装領域と前記第3高周波処理部の実装領域とを区画するように封止部材の主面から回路基板の一方の主面側に向かって形成された溝部を充填し且つ前記シールド層と導通した第4シールド壁とを備えたことを特徴とするものが挙げられる。
【0016】
本発明によれば、システム部及び電源回路部から第3高周波処理部へのノイズの侵入を防止できるので高周波特性に優れたものとなる。
【0017】
また本発明の好適な態様の一例としては、前記第1高周波処理部の実装領域と第3高周波処理部の実装領域との間にシステム部の実装領域が配置されていることを特徴とするものが挙げられる。
【0018】
一般的に携帯電話通信で用いられるアンテナと、例えばWiFi(登録商標)通信やBluetooth(登録商標)通信など非携帯電話通信で用いられるアンテナとは、両者間の干渉を防止するために携帯電話の筐体内においてできるだけ距離をおいて実装される。本発明では、携帯電話通信に係る第1高周波処理部の実装領域と非携帯電話通信に係る第3高周波処理部の実装領域との間にシステム部の実装領域が介在するので、必然的に、第1高周波処理部の実装領域と第3高周波処理部の実装領域との距離が大きくなる。これにより、前述したようなアンテナ実装を容易に実現できるのとともに、各アンテナと高周波回路部との配線長を短くできるので高周波特性にも優れたものとなる。
【0019】
また本発明の好適な態様の一例としては、前記回路基板は、導体層と絶縁体層とを積層してなるとともに、他の導体層より厚みが大きく且つグランドとして機能する導体層であるコア層を備え、前記第1高周波処理部・第2高周波処理部・システム部・電源回路部のうちの少なくとも何れか1つを構成する1つ以上の電子部品は前記回路基板のコア層に形成された貫通孔又は凹部内に配置されていることを特徴とするものが挙げられる。
【0020】
本発明によれば、回路基板がグランドとして機能するコア層を備えており、該コア層に形成された貫通孔又は凹部に電子部品が配置されているので、高密度化が図られるとともに埋設された電子部品は高いシールド性を有するものとなる。また本発明では、回路基板がコア層を備えているので各機能部で発生した熱がコア層に伝導し、さらに該コア層において面方向に拡散する。これにより高い放熱効率が得られる。また本発明では、回路基板がコア層を備えているので回路基板は反りが生じにくく、さらに適切な封止部材を選択することにより回路基板の反りを抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明に係る通信モジュールは、携帯電話の構成に必要な主要機能部の多くが集約されているにもかかわらず、高周波回路の特性劣化を防止でき、放熱効率が高く、反りが生じにくく、小型化が容易で実装性も良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係る通信モジュールの概略回路図
図2】第1の実施形態に係る通信モジュールの各機能ブロックの配置を説明する平面図
図3】封止部材を取り除いた状態において第1の実施形態に係る通信モジュールを部品搭載面側からみた平面図
図4】第1の実施形態に係る通信モジュールの断面図
図5】第2の実施形態に係る通信モジュールの概略回路図
図6】第2の実施形態に係る通信モジュールの各機能ブロックの配置を説明する平面図
図7】封止部材を取り除いた状態において第2の実施形態に係る通信モジュールを部品搭載面側からみた平面図
図8】変形例に係る通信モジュールの断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る通信モジュールについて図面を参照して説明する。図1は通信モジュールの概略ブロック図である。なお本実施の形態では、説明の簡単のため、主として本発明の要旨に係る構成について説明する。
【0024】
本実施の形態に係る通信モジュール100は、いわゆるスマートフォンと呼ばれる多機能携帯電話の主要機能を1つのモジュールとして集約したものである。具体的には、通信モジュール100は、広域の無線通信網である携帯電話網の通信通話機能、近距離の無線通信であるWiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)の機能、衛星測位システムの1つであるGPS機能等を備えている。なお本実施の形態に係る本通信モジュール100は、説明の簡単のため、2つの周波数帯域のW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)及びLTE(Long Term Evolution)並びに2つの周波数帯域のGSM(Global System for Mobile communications)に対応するものとする。
【0025】
図1に示すように、通信モジュール100は、携帯電話網用の送受信回路を備えている。具体的には、通信モジュール100は、フロントエンド部品として、高周波スイッチ101と、第1及び第2デュプレクサ110,120と、高周波電力増幅器131,132と、第1バンドパスフィルタ140を備えている。また通信モジュール100は、RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)190を備えている。該RFIC190は、後述するように、携帯電話通信に係る高周波信号の処理だけでなく、GPS受信信号の処理も行う。RFIC190は、携帯電話通信に係る高周波信号の受信回路及び送信回路を備えるとともに高周波信号の変復調処理などを行う。
【0026】
また通信モジュール100は、GPS用のフロントエンド部品として、ダイプレクサ310、第2バンドパスフィルタ320、低雑音増幅器330、第3バンドパスフィルタ340を備えている。さらにWiFi用のフロントエンド部品として、第4バンドパスフィルタ350を備えている。なお、図1からも明らかなように、前記ダイプレクサ310はWiFi及びBluetooth用のフロントエンド部品でもある。また、通信モジュール100は、WiFi通信用のRFIC390を備えている。
【0027】
また通信モジュール100は、各通信に係るデジタル信号の処理機能(所謂ベースバンド機能)や、その他各種携帯電話のアプリケーション機能(例えばカメラの制御や撮像データの処理など)を担う中央演算装置であるベースバンドIC400と、メモリ410とを備えている。
【0028】
なお通信モジュール100は、上述の回路部品の他、後述する電源回路、デジタル処理の基準となるクロック回路等を備えているが、図1では説明を省略する。また、通信モジュール100は、他の高周波信号処理の主要部品としてダイバーシティ受信回路や2系統同時通信用の送受信回路を構成するためのフロントエンド部品やRFICを備えていてもよい。
【0029】
高周波スイッチ101は、2つの内蔵スイッチ102及び103と、2つの高周波電力増幅器105及び106を1つのパッケージに集約したものである。内蔵スイッチ102は、第1又は第2デュプレクサ110,120、第1バンドパスフィルタ140、高周波電力増幅器105,106と1つの外部アンテナ11との接続を切り替える。内蔵スイッチ103は、2つの高周波電力増幅器105,106とRFIC190との接続を切り替える。高周波電力増幅器105は、GSMの周波数区分のうち1GHz以上の送信信号を増幅する。高周波電力増幅器106は、GSMの周波数区分のうち1GHz未満の送信信号を増幅する。内蔵スイッチ103は、RFIC190のGSM用の送信ポートに接続している。該送信ポートは、GSMの900MHz帯及び1900MHz帯で共通となっている。
【0030】
各デュプレクサ110,120は、それぞれ送信フィルタ112,122と受信フィルタ114,124とを備えている。送信フィルタ112,122及び受信フィルタ114,124としては、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタやバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)フィルタなどの弾性波フィルタなど種々のものを用いることができる。本実施の形態では、各フィルタとしてSAWフィルタを用いた。また本実施の形態では、各デュプレクサ110,120は、それぞれ送信フィルタ112,122と受信フィルタ114,124とを1つのパッケージに収容したものを用いた。
【0031】
各送信フィルタ112,122は高周波電力増幅器131,132を介してRFIC190のW−CDMA及びLTE用の送信ポートに接続している。各受信フィルタ114,124はRFIC190の受信ポートに接続している。なお本実施の形態では、受信フィルタ114はW−CDMA及びLTE用の受信ポートに接続しており、受信フィルタ124はW−CDMA及びLTE並びにGSM用の受信ポートに接続している。本実施の形態では、高周波電力増幅器131,132は、パワーアンプIC139として1つのパッケージに集積されている。また、第1バンドパスフィルタ140はRFIC190のGSM用の受信ポートに接続している。第1バンドパスフィルタ140としては、SAWフィルタやBAWフィルタなどの弾性波フィルタなど種々のものを用いることができる。本実施の形態では、当該フィルタとしてSAWフィルタを用いた。
【0032】
前述のように本実施の形態に係る通信モジュール100は、2つのW−CDMA及びLTE並びに2つのGSMに対応しており、デュプレクサ110,120及びバンドパスフィルタ140は各周波数帯域の高周波信号のみが通過するようフィルタリングする。
【0033】
具体的には、第1デュプレクサ110は、2100MHz帯のW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)又はLTE(Long Term Evolution)に対応している。したがって、第1送信フィルタ112は1920〜1980MHzのバンドパスフィルタであり、第1受信フィルタ114は2110〜2170MHzのバンドパスフィルタである。一方、第2デュプレクサ120は、900MHz帯のW−CDMA又はLTE並びにGSMに対応している。したがって、第2送信フィルタ122は880〜915MHzのバンドパスフィルタであり、第2受信フィルタ124は925〜960MHzのバンドパスフィルタである。
【0034】
また、第1バンドパスフィルタ140は、1900MHz帯のGSMにおいて受信信号を濾過するためのフィルタであり、1930〜1990MHz帯のバンドパスフィルタである。
【0035】
前記ダイプレクサ310は、アンテナ20で送受信する高周波信号を、GPS受信信号とWiFi通信に係る高周波信号とに分波するための素子であり、GPS受信信号のみを通過させるバンドパスフィルタ312とWiFi通信に係る高周波信号のみを通過させるバンドパスフィルタ311とを備えている。本実施の形態では、ダイプレクサ310は、各バンドパスフィルタ311,312を1つのパッケージに収容したものを用いた。なお、ダイプレクサ310は、GPS受信信号を通過させるとともにWiFi通信に係る高周波信号を通過させないローパスフィルタと、WiFi通信に係る高周波信号を通過させるとともにGPS受信信号を通過させないハイパスフィルタとにより構成するようにしてもよい。
【0036】
第2バンドパスフィルタ320及び第3バンドパスフィルタ340は、それぞれGPS受信信号のみを通過させるフィルタである。各バンドパスフィルタ320,340としては、SAWフィルタやBAWフィルタなどの弾性波フィルタなど種々のものを用いることができる。本実施の形態では、各フィルタとしてSAWフィルタを用いた。第3バンドパスフィルタ340は、前記RFIC190の受信ポートに接続している。本実施の形態において、GPS用のフロントエンド部品が前述したような構成となっている理由は、GPS受信信号が微弱であること及び後述するようにアンテナ20と接続するための端子とRFIC190との距離が大きく離れていることから、低損失の第2バンドバスフィルタ320に合わせて低雑音増幅器330を導入し、これらをアンテナ20用の端子に近いところに配置することで受信感度を確保している。ここで第2バンドパスフィルタ320は低損失であることを優先しているため十分な帯域外抑圧度を確保することが困難である。そこで本実施の形態では、帯域外抑圧度の高い第3バンドバスフィルタ340を追加しているものである。
【0037】
第4バンドパスフィルタ350は、WiFiおよびBluetoothに係る高周波信号のみを通過させるフィルタである。第4バンドパスフィルタ350はRFIC390の入出力ポートに接続している。
【0038】
本実施の形態に係る通信モジュール100は、回路基板800の一方の主面に各種部品を表面実装するとともに、幾つかの部品を回路基板800に埋設し、回路基板800の部品実装面を樹脂などの封止部材で封止したものである。回路基板800の他方の主面には端子電極及びグランド電極が形成されている。通信モジュール100は、回路基板800の他方の主面を実装先の親回路基板に対向させ、前記端子電極及びグランド電極を親回路基板に半田付け等の手段で接続して使用される。以下、図2及び図3を参照して通信モジュール100の構造について説明する。図2は通信モジュールの各機能ブロックの配置を説明する平面図、図3は封止部材を取り除いた状態において通信モジュールを部品搭載面側からみた平面図である。
【0039】
通信モジュール100は、図2及び図3に示すように、横長矩形の回路基板800の左下側に形成され携帯電話用の高周波回路が実装される第1高周波処理部610と、回路基板800の右上部に形成され非携帯電話用の高周波回路が実装される第2高周波処理部620と、回路基板800の中央部から上部及び右部に向かって形成されベースバンド処理機能及びアプリケーション処理機能が実装されるシステム部630と、回路基板800の左上部に形成され各部に電源を供給する電源回路部640とに、機能的に区画されている。
【0040】
第1高周波処理部610は、システム部630及び電源回路部640に隣接している。また、第1高周波処理部610には、図3に示すように、前述した高周波スイッチ101、デュプレクサ110,120、パワーアンプIC139、第1バンドパスフィルタ140、RFIC190が実装されている。また、第1高周波処理部610には、非携帯電話用の高周波回路部品の1つである第3バンドパスフィルタ340が実装されている。ここで、高周波スイッチ101、第1デュプレクサ110、パワーアンプIC139、RFIC190は回路基板800上に表面実装されている。一方、第2デュプレクサ120及び第3バンドパスフィルタ340は回路基板800内に埋設されている。また第1高周波処理部610における回路基板800の底面には、アンテナ11と接続するための端子(図示省略)が形成されている。なお、前述したように、ダイバーシティ受信回路や2系統同時通信用の送受信回路を構成するためのフロントエンド部品やRFICを設ける場合には、当該送受信回路を第1高周波処理部610に設けてもよい。
【0041】
第2高周波処理部620は、図2に示すように、システム部630にのみ隣接している。換言すれば、第2高周波処理部620は、第1高周波処理部610及び電源回路部640には隣接していない。第2高周波処理部620には、図3に示すように、前述したダイプレクサ310、第2バンドパスフィルタ320、低雑音増幅器330、第4バンドパスフィルタ350、RFIC390が表面実装されている。また第2高周波処理部620における回路基板800の底面には、アンテナ20と接続するための端子(図示省略)が形成されている。
【0042】
システム部630は、図2に示すように、第1高周波処理部610、第2高周波処理部620、電源回路部640と隣接している。ここでシステム部630は、第1高周波処理部610と第2高周波処理部620との間に介在している点に留意されたい。またシステム部630には、図3に示すように、前述したベースバンドIC400とメモリ410が表面実装されている。ここでベースバンドIC400は、ベースバンド機能とアプリケーション機能が集積されている点に留意されたい。
【0043】
電源回路部640は、図2に示すように、システム部630及び第2高周波処理部620への電源供給を行う第1電源回路部641と、第1高周波処理部610への電源供給を行う第2電源回路部642とに、機能的に区画されている。第1電源回路部641は、システム部630及び第2電源回路部642に隣接しており、第1高周波処理部610及び第2高周波処理部620とは隣接していない。一方、第2電源回路部642は、システム部630、第1電源回路部641及び第1高周波処理部610と隣接しており、第2高周波処理部620とは隣接していない。第1電源回路部641には、図3に示すように、従来周知の主電源用の電源管理IC510、システムクロック発振子511、スイッチング処理用のインダクタ(図示省略)などの各種電子部品が実装されている。また、第2電源回路部642には、従来周知のDC/DCコンバータIC520及びDC/DCコンバータIC520のスイッチング処理用のインダクタ(図示省略)などの各種電子部品が実装されている。
【0044】
本実施の形態に係る通信モジュール100は、図2で示したように、機能的に各部が区画されているが、さらに電気的及び物理的にも区画されている。本実施の形態では、第1高周波処理部610が形成された第1領域710、第2高周波処理部620が形成された第2領域720、電源回路部640の第1電源回路部641及びシステム部630が形成された第3領域730、電源回路部640の第2電源回路部642が形成された第4領域740に区画されている。各領域710〜740は、後述するように、回路基板800上に表面実装された各種部品を樹脂などの封止部材で封止したのちに、各領域が区画形成されるように回路基板800の表面まで封止部材に溝を形成し、封止部材表面全体を導電性材料で被覆してシールド層を形成するとともに前記溝にも導電性材料を充填してシールド壁902を形成することにより区画されている。なおシールド壁902の形成位置に対応する回路基板800の表面には基準電位(グランド電位)に設定されたグランド電極を形成しておき、前記シールド壁902と導通接続させる。
【0045】
ここでシールド壁902は封止部材よりも熱伝導性が良好である。そこで、放熱性の観点から、シールド壁902は発熱性が大きい電子部品に近いほど好適である。換言すれば、シールド壁902と発熱性が大きい電子部品との間の封止部材の厚みが小さいほど好適である。このような観点から、発熱量が最も大きい電子部品とシールド壁902との距離が、他の主要な発熱性の電子部品とシールド壁902との距離よりも小さいと好ましい。ここで電子部品とシールド壁902との距離とは、シールド壁902と電子部品とが対向する面の間の距離を意味する。または電子部品の中心点或いは最高発熱点とシールド壁902の壁面との距離を意味する。本実施の形態では、ベースバンドIC400の発熱量が最も大きい。そこで、シールド壁902とベースバンドIC400との距離が、他の主要な発熱性の電子部品である電源管理IC510やRFIC190等とシールド壁902との距離よりも小さくなるよう実装している。
【0046】
また、発熱量が最も大きい電子部品と、該電子部品に対向するシールド壁902との間における他の電子部品の実装数は少ないことが好ましく、他の電子部品が実装されていないと更に好ましい。これにより、発熱量が最も大きい電子部品とシールド壁902との間の封止部材の厚みを小さくすることができるので、放熱性が良好となる。
【0047】
さらに、発熱量が最も大きい電子部品は、他の主要な発熱性の電子部品よりも、回路基板800からの高さが大きいことが好ましい。換言すれば、発熱量が最も大きい電子部品上側における封止部材の厚みは、他の主要な発熱性の電子部品上側における封止部材の厚みよりも小さいことが好ましい。本実施の形態では、ベースバンドIC400は、他の主要な発熱性の電子部品である電源管理IC510やRFIC190等よりも回路基板800からの高さが大きい。
【0048】
さらに、局所的な温度上昇を防止するために、発熱量が大きい複数の電子部品が互いに隣接しないよう所定以上の距離をおいて実装することが好ましい。換言すれば、発熱量が大きい複数の電子部品の間に、発熱量の小さい電子部品を実装することが好ましい。或いは、発熱量が大きい複数の電子部品の間にシールド壁902が配置されるように実装することが好ましい。ここで発熱量が大きい電子部品とは、本実施の形態では、ベースバンドIC400、RFIC190、RFIC390、電源管理IC510、パワーアンプIC139などが挙げられる。本実施の形態に係る通信モジュール100は、以上のような構成により高い放熱性を有しているので高密度化が可能となり、これにより小型化を図ることができる。
【0049】
次に図4を参照して回路基板の構造について説明する。図4は通信モジュールの断面図である。回路基板800は、絶縁体層と導体層とを積層してなる多層基板である。回路基板800は、図4に示すように、導電性が良好で且つ比較的厚い金属製の導体層であるコア層810と、該コア層810の一方の主面(上面)に形成された複数の絶縁体層821及び導体層822と、コア層810の他方の主面(下面)に形成された複数の絶縁体層831及び導体層832とを備えている。絶縁体層821,831及び導体層822,832はコア層810の両主面にビルドアップ工法にて形成されたものである。ここでコア層810と回路基板800の一方の主面(上面)との間に位置する導体層822のうち2つの層、及び、コア層810と回路基板800の他方の主面(下面)との間に位置する導体層832のうち1つの層は、基準電位(グランド)が与えられるグランド導体層825,826,835になっている。グランド導体層825,835は、コア層810に最も近い導体層822,832であり、それぞれビア導体841を介してコア層810に接続している。したがってコア層810もグランド導体として機能する。また、2つのグランド導体層825,826の間には導体層822が介在しており、該導体層822に形成された配線をストリップラインとして機能させることができる。回路基板800の一方の主面(上面)には部品実装用の導電性のランド801や配線802が形成されている。また、回路基板800の他方の主面(下面)には、マザーボードに接続するための端子電極805及びグランド電極806が形成されている。ランド801には、RFIC190やベースバンドIC400などの表面実装部品891が半田付けされている。
【0050】
コア層810には部品収容用の貫通孔811が形成されている。該貫通孔811には、SAWフィルタ、キャパシタ、インダクタなどの受動部品又はパワーアンプICなどの能動部品などの内蔵電子部品892が配置される。本実施の形態では、第2デュプレクサ120、第3バンドパスフィルタ340が貫通孔811内に配置される。したがって、コア層810は、内蔵電子部品892の高さよりも厚みが大きいことが好ましい。本実施の形態では、金属板、より詳しくは銅製又は銅合金製の金属板によりコア層810を形成している。貫通孔811内であって収容部品との隙間には樹脂などの絶縁体が充填されている。
【0051】
回路基板800の上面すなわち部品実装面には、表面実装部品891を封止する封止部材900が形成されている。該封止部材900の材料としては、シリカやアルミナが添加されたエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられる。封止部材900の表面には導電性のシールド層901が形成されている。また封止部材900には、前述した各領域710〜740を区画するためのシールド壁902がシールド層901と一体となって形成されている。該シールド壁902の下端は回路基板800上面のグランド電極と接続している。
【0052】
以上詳述したように、本実施の形態に係る通信モジュール100によれば、携帯電話の構成に必要な主要機能部の多くが1つの通信モジュールに集約されているので高機能且つ小型化が図られる。ここで本実施の形態では、部品実装面である回路基板800の一方の主面に形成された封止部材900に、第1高周波処理部610とシステム部630及び電源回路部640とを区画するようにシールド壁902が形成されている。これによりシステム部630及び電源回路部640から第1高周波処理部610へのノイズの侵入を防止できるので高周波特性に優れたものとなる。また同様に、本実施の形態では、第2高周波処理部620とシステム部630とを区画するようにシールド壁902が形成されているので、更に高周波特性に優れたものとなる。さらに同様に、本実施の形態では、第1電源回路部641と第2電源回路部642とを区画するようにシールド壁902が形成されているので、更に高周波特性に優れたものとなる。
【0053】
また本実施の形態では、回路基板800がグランドとして機能するコア層810を備えており、該コア層810に形成された貫通孔811に電子部品が配置されているので、高密度化が図られるとともに埋設された電子部品は高いシールド性を有するものとなる。また本実施の形態では、回路基板800がコア層810を備えているので各機能部で発生した熱がコア層810に伝導し、さらに該コア層810において面方向に拡散する。これにより高い放熱効率が得られる。また本実施の形態では、回路基板800の一方の主面に全面に亘って電子部品を被覆する封止材料900が形成されているので、該封止部材900によっても高い放熱効率が得られる。
【0054】
さらに本実施の形態では、回路基板800がコア層810を備えているので回路基板800は反りが生じにくく、さらに適切な封止部材900を選択することにより回路基板の反りを抑えることができる。
【0055】
また本実施の形態に係る通信モジュールでは、携帯電話の構成に必要な主要機能部の多くが1つの通信モジュールに集約されているので、該通信モジュールの実装先であるマザーボード上には他のモジュールや電子部品を配置する必要がなくなる、或いは、極めて少ない他のモジュールや電子部品のみをマザーボードに実装するだけでよい。このため、製品の実装効率が向上するだけでなく、マザーボードとしてフレキシブル印刷配線板を採用することが容易となる。そして、フレキシブル印刷配線板の採用により製品の小型化・薄型化を図ることができる。ここで、マザーボードとしてフレキシブル印刷配線板を用いた場合、マザーボードの一部を延伸させ、その端部を例えばディスプレイ装置など他の外部部品と接続するように構成することができる。これにより、マザーボードには接続用のコネクタが不要となるので製品の小型化・薄型化を図ることができる。
【0056】
以上のように本実施の形態に係る通信モジュール100は、携帯電話の構成に必要な主要機能部の多くが集約されているにもかかわらず、高周波回路の特性劣化を防止でき、放熱効率が高く、反りが生じにくく、小型化が容易で実装性も良好なものとなる。
【0057】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る通信モジュールについて図面を参照して説明する。図5は通信モジュールの概略ブロック図である。なお本実施の形態では、説明の簡単のため、主として本発明の要旨に係る構成について説明する。また本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の要素については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
本実施の形態に係る通信モジュール100’が第1の実施の形態に係る通信モジュール100と異なる点の1つは、図5に示すように、GPS用のアンテナ21とWiFi通信用のアンテナ22とをそれぞれ個別に備えることにより、上記ダイプレクサ310を省略した点にある。その他の回路構成については第1の実施の形態と同様なので説明は省略する。
【0059】
また本実施の形態に係る通信モジュール100’が第1の実施の形態に係る通信モジュール100と異なる点の1つは、各電子部品の回路基板800への実装構造にある。以下、図6及び図7を参照して実装構造について説明する。図6は通信モジュールの各機能ブロックの配置を説明する平面図、図7は封止部材を取り除いた状態において通信モジュールを部品搭載面側からみた平面図である。
【0060】
通信モジュール100’は、図6及び図7に示すように、横長矩形の回路基板800の左下側に形成され携帯電話用の高周波回路が実装される第1高周波処理部610と、第1高周波処理部610の右側に隣接し非携帯電話用の高周波回路のうち特にGPS用の高周波回路が実装される第2高周波処理部622と、回路基板800の右上部に形成され非携帯電話用の高周波回路のうち特にWiFi通信用の高周波回路が実装される第3高周波処理部623と、回路基板800の中央部から上部及び右部に向かって形成されベースバンド処理機能及びアプリケーション処理機能が実装されるシステム部630と、回路基板800の左上部に形成され各部に電源を供給する電源回路部640とに、機能的に区画されている。
【0061】
第1高周波処理部610は、第2高周波処理部622及びシステム部630並びに電源回路部640に隣接している。また、第1高周波処理部610には、図7に示すように、前述した高周波スイッチ101、デュプレクサ110,120、パワーアンプIC139、第1バンドパスフィルタ140、RFIC190が実装されている。ここで、高周波スイッチ101、第1デュプレクサ110、パワーアンプIC139、RFIC190は回路基板800上に表面実装されている。一方、第2デュプレクサ120は回路基板800内に埋設されている。また第1高周波処理部610における回路基板800の底面には、アンテナ11と接続するための端子(図示省略)が形成されている。なお、ダイバーシティ受信回路や2系統同時通信用の送受信回路を構成するためのフロントエンド部品やRFICを設ける場合には、当該送受信回路を第1高周波処理部610に設けてもよい。
【0062】
第2高周波処理部622は、図6に示すように、第1高周波処理部610及びシステム部630に隣接している。第2高周波処理部622には、図7に示すように、前述した第2バンドパスフィルタ320、低雑音増幅器330、第3バンドパスフィルタ340がそれぞれ回路基板800上に表面実装されている。また第2高周波処理部622における回路基板800の底面には、アンテナ21と接続するための端子(図示省略)が形成されている。
【0063】
第3高周波処理部623は、図6に示すように、システム部630にのみ隣接している。換言すれば、第3高周波処理部623は、第1高周波処理部610及び第2高周波処理部622並びに電源回路部640には隣接していない。第3高周波処理部623には、図7に示すように、前述した第4バンドパスフィルタ350及びRFIC390が表面実装されている。また第3高周波処理部623における回路基板800の底面には、アンテナ22と接続するための端子(図示省略)が形成されている。
【0064】
システム部630は、図6に示すように、第1高周波処理部610、第2高周波処理部622、第3高周波処理部623、電源回路部640と隣接している。ここでシステム部630は、第1高周波処理部610と第3高周波処理部623との間に介在している点に留意されたい。またシステム部630には、図7に示すように、前述したベースバンドIC400とメモリ410が表面実装されている。ここでベースバンドIC400は、ベースバンド機能とアプリケーション機能が集積されている点に留意されたい。
【0065】
電源回路部640は、図6に示すように、システム部630、第2高周波処理部622及び第3高周波処理部623への電源供給を行う第1電源回路部641と、第1高周波処理部610への電源供給を行う第2電源回路部642とに、機能的に区画されている。第1電源回路部641は、システム部630及び第2電源回路部642に隣接しており、第1高周波処理部610及び第2高周波処理部622並びに第3高周波処理部623とは隣接していない。一方、第2電源回路部642は、システム部630、第1電源回路部641及び第1高周波処理部610と隣接しており、第2高周波処理部622及び第3高周波処理部623とは隣接していない。第1電源回路部641には、図7に示すように、従来周知の主電源用の電源管理IC510、システムクロック発振子511、スイッチング処理用のインダクタ(図示省略)などの各種電子部品が実装されている。また、第2電源回路部642には、従来周知のDC/DCコンバータIC520及びDC/DCコンバータIC520のスイッチング処理用のインダクタ(図示省略)などの各種電子部品が実装されている。
【0066】
本実施の形態に係る通信モジュール100’は、図6で示したように、機能的に各部が区画されているが、さらに電気的及び物理的にも区画されている。本実施の形態では、図7に示すように、第1高周波処理部610が形成された第1領域710、第2高周波処理部622が形成された第2領域722、第3高周波処理部623が形成された第3領域723、電源回路部640の第1電源回路部641及びシステム部630が形成された第4領域730、電源回路部640の第2電源回路部642が形成された第5領域740に区画されている。各領域710〜740は、後述するように、回路基板800上に表面実装された各種部品を樹脂などの封止部材で封止したのちに、各領域が区画形成されるように回路基板800の表面まで封止部材に溝を形成し、封止部材表面全体を導電性材料で被覆してシールド層を形成するとともに前記溝にも導電性材料を充填してシールド壁902を形成することにより区画されている。なおシールド壁902の形成位置に対応する回路基板800の表面には基準電位(グランド電位)に設定されたグランド電極を形成しておき、前記シールド壁902と導通接続させる。
【0067】
他の構成要素・設計思想等については第1の実施の形態と同様である。すなわち、例えばシールド壁902と電子部品の距離は相対的な高さ、シールド壁902に近い電子部品の発熱量の関係、各電子部品の配置についての設計思想、回路基板800の構造等については第1の実施の形態と同様である。
【0068】
本実施の形態に係る通信モジュール100’によれば、GPS通信用の高周波回路が実装されている第2高周波処理部622と、携帯電話通信用の高周波回路が実装されている第1高周波処理部610とがシールド壁902により区画されているので、携帯電話通信に係る信号がGPS信号に干渉することを防止することができる。一般的に、GPS通信用の信号は携帯電話通信用の信号と比較して微弱であることから、本実施の形態に係る通信モジュール100’はGPSの高精度化及び安定化に極めて有効である。他の、作用効果については第1の実施の形態と同様である。
【0069】
以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記各実施の形態では、コア層810の材質として銅又は銅合金を例示したが、他の金属又は合金や樹脂など材質は不問である。また上記各実施の形態では、回路基板800の上面には表面実装部品891を封止部材900により封止していたが、回路基板800の上面の全面又は一部を覆うように導電性のケースを装着するようにしてもよい。この場合、前記シールド壁902と対応するようにケース内にも導電性の仕切り壁を設けることが好ましい。
【0070】
また上記各実施の形態では、電気的及び物理的に領域を区画するために、封止部材900の表面のシールド層901から回路基板800上のグランド電極まで延びるシールド壁902を設けていたが、図8に示すように、封止部材900の表面のシールド層901から封止部材900の厚み方向の略中間部まで延びたシールド壁903としてもよい。該シールド壁903は電気的及び物理的なシールド特性はシールド壁902よりもやや劣るものの、該シールド壁903の下方に表面実装部品691を配置することができる。したがって、上記各実施の形態に係る通信モジュール100,100’に対してシールド壁902や部品配置等を変更することなく、さらにシールド壁903を適宜追加することにより実装密度を維持しつつ電気的特性を向上させることができる。例えば上記第1の実施の形態では電源回路部640の第1電源回路部641とシステム部630はシールド壁902により区画された同一の領域730内に実装されているが、電源回路部640の第1電源回路部641とシステム部630とを区画するようにシールド壁903を形成することが考えられる。
【0071】
また上記各実施の形態の回路は一例に過ぎず、他の回路構成であっても本発明を実施することができる。また、どの部品を埋設するかは、実装密度・シールド性・放熱性などを考慮して適宜選択すればよい。
【0072】
また上記各実施の形態における各機能部の配置は一例に過ぎず、他の配置構成であっても本発明を実施できる。例えば、上記第1の実施の形態では、第1高周波処理部610と第2高周波処理部620の間にシステム部630を配置していたが、第1高周波処理部610と第2高周波処理部620は隣接するようにしてもよい。この場合、必要に応じて、各処理部610及び620を電気的・物理的に区画するようにシールド壁902を形成してもよい。
【0073】
また上記各実施の形態では、第1及び第2デュプレクサ110,120はそれぞれ送信フィルタ112,122及び受信フィルタ114,124を1つのパッケージに収容したものを用いたが、それぞれ個別のフィルタを用いてもよい。
【0074】
また上記各実施の形態では、コア層810に貫通孔811を形成し、該貫通孔811に第2デュプレクサ120などの電子部品を配置するようにしたが、貫通孔811ではなく凹部をコア層810に形成し、該凹部に各電子部品を配置するようにしてもよい。
【0075】
また上記各実施の形態では、各通信に係るデジタル信号の処理機能であるベースバンド機能と、その他各種携帯電話のアプリケーション機能とを1つのベースバンドIC400に集積していたが、各機能を個別のICで実装するようにしてもよい。
【0076】
また、上記各実施の形態で説明した周波数帯域は一例に過ぎず、他の周波数帯域であっても本発明を実施できる。また、上記各実施の形態で説明したGPSは衛星測位システムの一例に過ぎず、例えばロシアのGLONASSや中国のCompassなど他の衛星測位システムであっても本発明を実施できる。また、上記各実施の形態では、分波器(アンテナ共用器)の例としてデュプレクサを挙げたが、トリプレクサなど3つ以上の通過周波数帯域を有する分波器であっても本発明を実施できる。
【符号の説明】
【0077】
11,20…アンテナ、110,120…デュプレクサ、112,122…送信フィルタ、114,124…受信フィルタ、131,132…高周波電力増幅器、139…パワーアンプIC、140,320,340,350…バンドパスフィルタ、190,390…RFIC、330…低雑音増幅器、400…ベースバンドIC、610…第1高周波処理部、620,622…第2高周波処理部、623…第3高周波処理部、630…システム部、640…電源回路部、800…回路基板、810…コア層、811…貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8