(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-111979(P2015-111979A)
(43)【公開日】2015年6月18日
(54)【発明の名称】圧電振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02N 2/00 20060101AFI20150522BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20150522BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20150522BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20150522BHJP
G04G 99/00 20100101ALI20150522BHJP
G04B 25/04 20060101ALI20150522BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20150522BHJP
【FI】
H02N2/00 B
H04R1/00 310G
H04R17/00
H04R1/02 102Z
G04G1/00 312
G04B25/04
H01L41/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-253352(P2013-253352)
(22)【出願日】2013年12月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(74)【代理人】
【識別番号】100186819
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】有沢 清
(72)【発明者】
【氏名】横江 哲司
【テーマコード(参考)】
2F002
5D004
5D017
【Fターム(参考)】
2F002AA02
2F002AC03
2F002EH06
5D004CD09
5D004DD01
5D017AA11
(57)【要約】
【課題】限られた設置スペース内で振動可能に錘を振動板に付けることができる圧電振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】一端が固定された振動板5と、振動5板に設けられた圧電振動素子7と、振動板5の他端に設けられた錘9とを備えている。錘9が振動板5に対して振動板5が延びる方向と直交する方向の一方側に位置する第1の錘部分9Aと振動板5に対して一方側とは逆の他方側に位置する第2の錘部分9Bとを含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が固定された振動板と、
前記振動板に設けられて前記振動板の前記一端が節になるように前記振動板を振動させる圧電振動素子と、
前記振動板の他端に設けられた錘とを備えてなる圧電振動アクチュエータであって、
前記一端から前記他端に向かう方向を第1の方向と定義し、前記第1の方向と直交し且つ前記圧電振動素子が配置された前記振動板の面と直交する方向を第2の方向と定義し、前記第1及び第2の方向と直交する方向を第3の方向と定義したときに、前記錘は前記振動板に対して前記第3の方向の一方側に位置する第1の錘部分、該一方側とは逆の他方側に位置する第2の錘部分と、前記振動板と前記第2の方向で対向する第3の錘部分とを備えており、
前記第1の錘部分乃至第3の錘部分が一体に形成されている圧電振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1及び第2の錘部分は、重量が等しいかまたは略等しい請求項1に記載の圧電振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記錘は、前記第3の部分と前記振動板との間に、前記振動板の振動を阻害しない寸法を有する間隙が形成されるように形状が定められている請求項1に記載の圧電振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記錘は、前記振動板よりも比重が大きい金属により形成されている請求項1,2または3に記載の圧電振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記振動板と前記錘は一体に形成されている請求項1に記載の圧電振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記錘の重心が、前記振動板の中心よりも前記他端側に位置するように、前記錘の形状が定められている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電振動アクチュエータ。
【請求項7】
厚み方向の寸法が、10mm以下の電子機器のケース内に配置されて振動をケースに伝達する圧電振動アクチュエータであって、
前記ケースは、底壁部と、該底壁部から起立する周壁部と、前記底壁部と対向する対向壁部とからなり、
一端が前記ケースの前記周壁部または前記底壁部に固定され前記底壁部及び前記対向壁部との間に間隔をあけて配置された振動板と、
前記振動板に設けられた圧電振動素子と、
前記振動板の他端に設けられた錘とを備えてなる圧電振動アクチュエータであって、
前記一端から前記他端に向かう方向を第1の方向と定義し、前記第1の方向と直交し且つ前記圧電振動素子が配置された前記振動板の面と直交する方向を第2の方向と定義し、前記第1及び第2の方向と直交する方向を第3の方向と定義したときに、前記錘は前記振動板に対して前記第3の方向の一方側に位置する第1の錘部分と、前記振動板に対して前記一方側とは逆の他方側に位置する第2の錘部分と、前記振動板と前記第2の方向で対向する第3の錘部分とを備えており、
前記第1の錘部分乃至第3の錘部分が一体に形成されている圧電振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記第1の錘部分及び前記第2の錘部分の前記ケースの前記周壁部と対向する外縁部は、前記周壁部に沿う形状を有している請求項7に記載の圧電振動アクチュエータ。
【請求項9】
前記電子機器が、使用者の体に装着される時計または携帯端末である請求項7または8に記載の圧電振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板に圧電振動素子を備えてなる圧電振動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平5−288868号公報(特許文献1)には、腕時計の内部に配置される圧電振動アクチュエータの一例が示されている。従来の圧電振動アクチュエータでは、一端がケースの周壁部または底壁部に固定され底壁部との間に間隔をあけて配置された細長い振動板と、振動板に設けられた圧電振動素子とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−288868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の圧電振動アクチュエータでは、振動板自身の重量だけで振動を発生しているため、振動を強くすることに限界がある。そこで振動板に錘を付けて、振動板の重量を増すことにより、振動を強くすることが考えられた。しかしながら限られた設置スペース内で振動可能に錘を振動板に付けることは容易ではなかった。
【0005】
本発明の目的は、限られた設置スペース内で振動可能に錘を振動板に付けることができる圧電振動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一端が固定された振動板と、振動板に設けられて振動板の一端が節になるように振動板を振動させる圧電振動素子と、振動板の他端に設けられた錘とを備えてなる圧電振動アクチュエータを改良の対象とする。本出願では、振動板の一端から他端に向かう方向を第1の方向と定義し、第1の方向と直交し且つ圧電振動素子が配置された振動板の面と直交する方向を第2の方向と定義し、第1及び第2の方向と直交する方向を第3の方向と定義する。本発明では、錘が振動板に対して第3の方向の一方側に位置する第1の錘部分と、振動板に対して前記一方側とは逆の他方側に位置する第2の錘部分と、振動板と第2の方向で対向する第3の錘部分とを備えている。そして第1の錘部分乃至第3の錘部分が一体に形成されている。このような構成を採用すると、錘の重量を重くすることができ、振動板は振動板の一端を節とする1次または2次の共振振動をした上で、錘の重量が重くなる分、強い振動を発生することができる。
【0007】
錘は、第3の部分と振動板との間に、振動板の振動を阻害しない寸法を有する間隙が形成されるように形状が定められているのが好ましい。このようにすれば、錘の重さを増大させて、必要な振動を得ることができる。
【0008】
なお、この場合、第1及び第2の錘部分は、重量が等しいかまたは略等しいことが好ましい。なお略等しいとは、製造誤差によって生じる重量の相違を含むものである。このようにすると振動板の両側に存在する重量が平衡するため、第1乃至第3の錘部分を一つの錘とみなせる振動態様で振動を発生することができる。
【0009】
また錘(第1乃至第3の錘部分)は、振動板よりも比重が大きい金属により形成されているのが好ましい。このようにすると錘の重量を大きくして、振動をより大きなものとすることができる。
【0010】
振動板と錘とは別体に構成されていてもよいが、振動板と錘とが一体に形成されていれば、製造が容易でしかも、部品点数を減少させることができて、圧電振動アクチュエータを安価に製造できるようになる。
【0011】
錘の重心は、振動板の中心よりも前記他端側に位置するように、錘の形状が定められているのが好ましい。このようにすると振動板の動きと錘の動きを確実に同期させることができて、安定した振動を得ることができる。
【0012】
本発明の圧電振動アクチュエータは、厚み方向の寸法が、10mm以下の電子機器のケース内に配置されて振動をケースに伝達するように使用することができる。このケースが、底壁部と、該底壁部から起立する周壁部と、底壁部と対向する対向壁部とからなる場合、振動板の一端は、ケースの周壁部または底壁部に固定され、振動板は底壁部及び対向壁部との間に間隔をあけて配置されるのが好ましい。
【0013】
この場合、第1の錘部分及び第2の錘部分のケースの周壁部と対向する外縁部は、周壁部に沿う形状を有しているのが好ましい。第1の錘部分及び第2の錘部分のケースの形状をこのようにすると、ケースの内部空間の有効利用を図ることができる。
【0014】
なお圧電振動アクチュエータが搭載される電子機器が、使用者の体に装着される時計または携帯端末である場合には、時計及び携帯端末の薄型を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の圧電振動アクチュエータを電子腕時計のような電子機器のケース本体から離した状態の分解斜視図である。
【
図2】(A)乃至(D)は、第1の実施の形態の圧電振動アクチュエータの平面図、正面図、底面図及び右側面図である。
【
図3】ケース本体内に圧電振動アクチュエータの取付状態を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の圧電振動アクチュエータの実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態の圧電振動アクチュエータ1を電子腕時計のような電子機器のケース本体3から離した状態の分解斜視図を示している。また
図2(A)乃至(D)は、実施の形態の圧電振動アクチュエータ1の平面図、正面図、底面図及び右側面図を示している。そして
図3は、ケース本体3内に圧電振動アクチュエータ1の取付状態を示している。本実施の形態の圧電振動アクチュエータ1は、厚み方向の寸法が、10mm以下の電子機器のケース本体3内に配置されて振動をケース本体3に伝達するように使用する。圧電振動アクチュエータ1は、一端が固定された振動板5と、振動板5に設けられた圧電振動素子7と、振動板5の他端に設けられた錘9とを備えている。このケース本体3を含むケースは、底壁部31と、該底壁部31から起立する周壁部33と、底壁部31と対向する対向壁部(図示せず)とからなる。振動板5は可撓性のある金属板により形成されており、例えばリードフレーム等に用いられる鉄ニッケル合金からなる金属板を用いることができる。振動板5は、圧電振動素子7が接着剤を介して接合される本体5Aと、本体5Aと直交する方向に延びて錘9が固定される錘固定部5Bとから構成される。本体5Aの一端が、ケース本体3に固定される。錘固定部5Bは、円弧形状を有している。錘9は、錘固定部5Bに接着剤を用いて接合されている。
【0017】
圧電振動素子7は、圧電素子としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた4層構造のバイモルフ型圧電振動素子である。なお振動板5が、圧電振動素子7の一方の入力電極を外部に引き出す接続線を構成している。また圧電振動素子7の他方の入力電極は、図示しないフレキシブル基板等を利用して外部に引き出される。圧電振動素子7は、振動板5の本体5Aの一端(錘固定部5Bとは反対側の端部)を節にして、振動板5を1次または2次の共振振動させるように構成されている。なお本願明細書では、振動板5の一端から他端に向かう方向を第1の方向Xと定義し、第1の方向Xと直交し且つ圧電振動素子7が配置された振動板5の面と直交する方向を第2の方向Yと定義し、第1及び第2の方向X及びYと直交する方向を第3の方向Zと定義する。
【0018】
また錘9は、タングステン、真鍮等の密度の高い金属により形成されている。すなわち錘9(第1乃至第3の錘部分)は、振動板5よりも比重が大きい金属により形成されている。このようにすると錘の重量を大きくして、振動をより大きなものとすることができる錘9は、振動板5に対して第3の方向Zの一方側に位置する第1の錘部分9Aと振動板5に対して前記一方側とは逆の他方側に位置する第2の錘部分9Bと、第1の錘部分9Aと第2の錘部分9Cとを連結する第3の錘部分9Cとを一体に備えている。第1の錘部分9A、第2の錘部分9C及び第3の錘部分9Cの部分は、それぞれ振動板5の錘固定部5Bに接合される部分の厚みが、その他の部分の厚みよりも厚く形成されている。その結果、
図2(B)に示されるように、振動板5の本体5Aと錘9の第3の錘部分9Cとの間には、隙間gが形成されている。第1の錘部分9A及び第2の錘部分9Bのケース本体3の周壁部33と対向する外縁部は、周壁部33に沿う円弧形状を有している。第1の錘部分9A及び第2の錘部分9Bの形状をこのようにすると、ケースの内部空間の有効利用を図ることができる。
【0019】
振動板5の本体5Aの一端に設けられた孔5Cは取付ネジが通る孔である。振動板5は、この孔5Cを利用して、ケース本体3の周壁部及び底壁部から延びる被固定部35にネジ止めされる。振動板5の本体5Aの一端が被固定部35に固定された状態で、錘9と底壁部31との間に僅かな間隙が形成されており、また振動板5と図示しない対向壁部との間にも間隙が形成されている。本実施の形態では、面積の大きな第1及び第2の錘部分9A及び9Bが、振動板5の両側に位置するため、圧電振動アクチュエータ1を薄型化することが可能になっており、しかも錘9の重量を増大することを可能にしている。したがって圧電振動アクチュエータ1の設置スペースが、ケース本体3のように厚み寸法に比べて横方向の寸法が大きい形状を有している場合において、本実施の形態の圧電振動アクチュエータ1は大きな振動を振動板5の被固定部35を介してケース本体3に伝達することが可能になる。
【0020】
なお上記実施の形態では、振動板と錘とは別体に構成されているが、振動板と錘とを一体に形成してもよいのはもちろんである。このようにすると、製造が容易でしかも、部品点数を減少させることができて、圧電振動アクチュエータを安価に製造できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、圧電振動アクチュエータを薄型化することができ、しかも錘の重量を増大することが可能になる。したがって圧電振動アクチュエータの設置スペースが、厚み寸法に比べて横方向の寸法が大きい形状を有している場合において、本発明の圧電振動アクチュエータは大きな振動を振動板の被固定部に伝達することが可能になる。
【符号の説明】
【0022】
1 圧電振動アクチュエータ
3 ケース本体
5 振動板
7 圧電振動素子
9 錘