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特開2015-112000積層鉄心の製造方法及び打ち抜き金型装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-112000(P2015-112000A)
(43)【公開日】2015年6月18日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法及び打ち抜き金型装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20150522BHJP
   H02K 15/16 20060101ALI20150522BHJP
【FI】
   H02K15/02 E
   H02K15/02 F
   H02K15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-204095(P2014-204095)
(22)【出願日】2014年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-231259(P2013-231259)
(32)【優先日】2013年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 高広
(72)【発明者】
【氏名】谷石 弘之介
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS13
5H615SS53
(57)【要約】
【課題】偏心荷重を低減又は消失させ、メンテナンス頻度及び交換部品点数の低減が可能な積層鉄心の製造方法及び打ち抜き金型装置を提供する。
【解決手段】加工ステーションS1〜S4を有する打ち抜き金型装置10に被加工材11を順送りしながら、加工ステーションS〜S4の刃物12〜15を同時に作動させて、被加工材11に打ち抜き加工を行った後、外形打ち抜き加工を行って鉄心片16を形成し、鉄心片16を打ち抜き金型装置10の内又は外で積層して積層鉄心を形成する積層鉄心の製造方法において、加工ステーションS1〜S4の刃物12〜15の作動に同期して、被加工材11のスクラップ形成領域に捨て孔17を補助刃物18により打ち抜き形成し、打ち抜き金型装置10の送り方向の荷重バランスをとる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工ステーションを有する打ち抜き金型装置に帯状の被加工材を長手方向に順送りしながら、前記各加工ステーションの刃物を同時に作動させて、順送りされる前記被加工材に所定の打ち抜き加工を行った後、最後に外形打ち抜き加工を行って鉄心片を形成し、該鉄心片を前記打ち抜き金型装置内又は前記打ち抜き金型装置外で積層して積層鉄心を形成する積層鉄心の製造方法において、
複数の前記加工ステーションの前記刃物の作動に同期して、前記被加工材のスクラップ形成領域に捨て孔を補助刃物により打ち抜き形成し、前記打ち抜き金型装置の送り方向の荷重バランスをとることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記捨て孔を複数個形成する際に、該捨て孔を隙間を設けて形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記捨て孔を複数の工程に分けて形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法において、前記捨て孔を、前記被加工材の幅方向を2等分する中心線を対称軸とした線対称となる位置に形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の積層鉄心の製造方法において、前記捨て孔を、前記スクラップ形成領域の幅方向外側領域に形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、前記打ち抜き金型装置の中心位置を基準として、下流側の打ち抜き荷重の総和が上流側の打ち抜き荷重の総和より小さい場合、前記捨て孔を、前記外形打ち抜き加工の直前に形成することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
長手方向に順送りされる帯状の被加工材に、複数の加工ステーョンに配置された刃物を同時に作動させて、所定の打ち抜き加工を順次行った後、外形打ち抜き加工を行って積層鉄心を形成する鉄心片を製造する打ち抜き金型装置において、
前記加工ステーションの前記刃物の作動に同期して、前記被加工材のスクラップ形成領域に捨て孔を打ち抜き形成する補助刃物を有し、送り方向の荷重バランスをとることを特徴とする打ち抜き金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心の製造方法及び打ち抜き金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に打ち抜き金型装置80は、図4に示すように、複数のガイドポスト81で連結された上型82と下型83を備え、この打ち抜き金型装置80には、帯状の被加工材84(例えば、電磁鋼板)を順次打ち抜き加工する複数の加工ステーションS1〜S6(加工ステーションの数は任意である)が設けられている。各加工ステーションS1〜S6はそれぞれ、下型83に固定されたダイ85と、上型82に固定され、ダイ85と対となるパンチ87とを有し、対となるダイ85とパンチ87で刃物を構成している。更に各加工ステーションS1〜S6はそれぞれ、上型82に吊り下げられ、打ち抜き時に被加工材84を押圧保持するストリッパ88を有する。なお、図4では、各加工ステーションS1〜S6に設けられたダイ85はダイホルダ86に保持されて下型83に固定され、各加工ステーションS1〜S6に設けられたストリッパ88は上型82に吊り下げられている。
打ち抜き金型装置80に順送りされる被加工材84は、各加工ステーションS1〜S5で順次打ち抜き加工され、最後の加工ステーションS6(ブランキングステーション)で外形打ち抜き加工され、この加工ステーションS6で打ち抜いた鉄心片をかしめ積層することにより、積層鉄心が製造される。
【0003】
このとき、従来の打ち抜き金型装置では、打ち抜き加工時に偏心荷重に伴う不具合、例えば、偏心荷重により下型に対して上型が僅かに傾斜し、対となるパンチとダイとの間に設定されたクリアランスが変化することによるパンチ及びダイの破損に伴う刃物の寿命低下等が発生するという問題がある。
そこで、予め各打ち抜き工程をそれぞれ実行する加工ステーションにおける打ち抜き荷重を算出し、打ち抜き荷重が打ち抜き金型装置の全長に亘って前方(被加工材の順送り方向の上流側)あるいは後方(順送り方向の下流側)に偏らないように、打ち抜きレイアウト(加工ステーションの分散配置状態)を定めている。更に、打ち抜き金型装置の全体にかかる打ち抜き荷重の中心位置(以下、荷重中心位置という)と打ち抜き金型装置全長の中心位置(以下、金型中心位置という)を一致させることが望ましいとされ、完全な一致は困難であっても、荷重中心位置と金型中心位置が可能な限り近づくように通常設計されている。
【0004】
ここで、家電用等の小型モータに使用する小径の積層鉄心の鉄心片を被加工材から打ち抜き金型装置を用いて打ち抜く場合、特に1台の打ち抜き金型装置で回転子と固定子をそれぞれ構成する積層鉄心の鉄心片を順次打ち抜く場合は、荷重中心位置と金型中心位置が比較的接近する打ち抜きレイアウトを構成し易い。しかしながら、回転子を構成する積層鉄心を形成する鉄心片のみ、あるいは固定子を構成する積層鉄心を形成する鉄心片のみを打ち抜き形成する打ち抜き金型装置等では、金型中心位置より被加工材の受入れ側にあって鉄心片形成の前段工程を実行する各加工ステーションの打ち抜き荷重の総和が、金型中心位置より被加工材の排出側にあって鉄心片形成の後段工程を実行する各加工ステーションの打ち抜き荷重の総和より大きくなるため、荷重中心位置と金型中心位置とのずれが大きくなって偏心荷重が発生しやすい荷重配分となる傾向にある。
そこで、打ち抜き金型装置に加わる偏心荷重対策として、例えば、特許文献1には、図5に示すように、加工の最終工程となる曲げ工程に用いる曲げパンチ88により発生する偏心荷重に対し、打ち抜き金型装置89の被加工材90の入側に傾き防止パンチ91を設け、曲げパンチ88と傾き防止パンチ91とを同期して作動させることにより、偏心荷重を相殺することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−162336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、曲げパンチ88と傾き防止パンチ91とを同期して作動させることで偏心荷重を相殺することが開示されているだけで、被加工材90に対し、どのように傾き防止パンチ91を作動させて偏心荷重を相殺するかに関して具体的な内容は開示されていない。
また、特許文献1では、偏心荷重の発生が曲げパンチ88の作動に起因することが明確であるが、例えば、大径の積層鉄心の鉄心片を打ち抜く打ち抜き金型装置のように、全加工ステーションの刃物が同期して作動する結果として打ち抜き金型装置に偏心荷重が発生する場合のように、偏心荷重の発生を一つの刃物の作動によるものと特定できないときは、偏心荷重を相殺するために傾き防止パンチを作動する時期、傾き防止パンチで発生させる荷重の大きさ及び発生場所をそれぞれ決定することは困難となる。
【0007】
更に、近年の電気自動車やハイブリッドカー等に使用される大径の積層鉄心の鉄心片を形成する打ち抜き金型装置では、1台の打ち抜き金型装置の全長が2mを超える場合があり、精密打ち抜き用の打ち抜き金型装置としてはこれまでになかった大きさのものが出現している。このように大型の精密打ち抜き用の打ち抜き金型装置の場合、荷重中心位置と金型中心位置を可能な限り近づける従来の設計基準では問題とならなかった荷重中心位置と金型中心位置との間の残留ずれに伴う残存偏心荷重の影響が顕著となり、刃物寿命の低下に加えて打ち抜き金型装置に付属するプレスのベースやラムまでも寿命が短くなってしまう。このため、打ち抜き金型装置のメンテナンス頻度の増加による生産性の低下、メンテナンスにおける交換部品の点数増加によるコストアップが問題となっている。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、偏心荷重を低減又は消失させることができ、メンテナンス頻度及び交換部品点数の低減が可能な積層鉄心の製造方法及び打ち抜き金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数の加工ステーションを有する打ち抜き金型装置に帯状の被加工材を長手方向に順送りしながら、前記各加工ステーションの刃物を同時に作動させて、順送りされる前記被加工材に所定の打ち抜き加工を行った後、最後に外形打ち抜き加工を行って鉄心片を形成し、該鉄心片を前記打ち抜き金型装置内又は前記打ち抜き金型装置外で積層して積層鉄心を形成する積層鉄心の製造方法において、
複数の前記加工ステーションの前記刃物の作動に同期して、前記被加工材のスクラップ形成領域に捨て孔を補助刃物により打ち抜き形成し、前記打ち抜き金型装置の送り方向の荷重バランスをとる。
これにより、打ち抜き金型装置にかかる総打ち抜き荷重の荷重中心位置が打ち抜き金型装置の中心位置に近接又は一致することになり、打ち抜き金型装置に生じる偏心荷重を低減又は消失させることができる。
【0010】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記捨て孔を複数個形成する際に、該捨て孔を隙間を設けて形成することが好ましい。
【0011】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記捨て孔を複数の工程に分けて形成することもできる。
【0012】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記捨て孔を、前記被加工材の幅方向を2等分する中心線を対称軸とした線対称となる位置に形成することが好ましい。
【0013】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記捨て孔を、前記スクラップ形成領域の幅方向外側領域に形成することが好ましい。
【0014】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記打ち抜き金型装置の中心位置を基準として、下流側の打ち抜き荷重の総和が上流側の打ち抜き荷重の総和より小さい場合、前記捨て孔を、前記外形打ち抜き加工の直前に形成することが好ましい。
【0015】
前記目的に沿う第2の発明に係る打ち抜き金型装置は、長手方向に順送りされる帯状の被加工材に、複数の加工ステーョンに配置された刃物を同時に作動させて、所定の打ち抜き加工を順次行った後、外形打ち抜き加工を行って積層鉄心を形成する鉄心片を製造する打ち抜き金型装置において、
前記加工ステーションの前記刃物の作動に同期して、前記被加工材のスクラップ形成領域に捨て孔を打ち抜き形成する補助刃物を有し、送り方向の荷重バランスをとる。
これにより、総打ち抜き荷重の荷重中心位置が打ち抜き金型装置の中心位置に近接又は一致することになり、打ち抜き金型装置に生じる偏心荷重を低減又は消失させることができる。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法及び第2の発明に係る打ち抜き金型装置においては、被加工材に各加工ステーションで打ち抜き加工が行われる加工領域と、被加工材に設定されるスクラップ形成領域とは、重なり合うことはない。このため、加工ステーションの打ち抜き加工時に刃物にそれぞれ負荷される打ち抜き荷重を全て重ね合わせた鉄心片形成総荷重の荷重中心位置と、捨て孔の打ち抜き加工時に補助刃物に負荷される打ち抜き荷重を全て重ね合わせた捨て孔形成総荷重の荷重中心位置は一致しない。ここで、打ち抜き金型装置内の加工ステーションは、予め設定された位置に設けるので、加工ステーションの打ち抜き加工時に刃物にそれぞれ加えられる打ち抜き荷重の荷重中心位置は打ち抜き金型装置内で固定されており、鉄心片形成総荷重の荷重中心位置も打ち抜き金型装置内で固定される。一方、捨て孔の形成個数と形成位置は、スクラップ形成領域内であれば任意に決めることができるので、打ち抜き金型装置に配置する補助刃物の個数と場所も任意に決めることができ、捨て孔形成総荷重の荷重中心位置を打ち抜き金型装置内の所望の位置に設定することができる。
【0017】
そして、加工ステーションの刃物の作動に同期して、補助刃物を作動させると、打ち抜き金型装置には鉄心片形成総荷重と捨て孔形成総荷重が重なり合った総打ち抜き荷重が負荷されることになり、総打ち抜き荷重の荷重中心位置は、捨て孔形成総荷重の荷重中心位置の移動に伴って移動する。そこで、捨て孔形成総荷重の荷重中心位置を調整することにより、即ち、スクラップ形成領域内に形成する捨て孔の個数と位置をそれぞれ調整することにより、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を、打ち抜き金型装置の中心位置に近接又は一致させることができる。これにより、打ち抜き金型装置に生じる偏心荷重の更なる低減又は消失が可能になり、打ち抜き金型装置の傾斜を抑制又は防止することができる。
その結果、対となるパンチとダイとの間に設定されたクリアランスの変化を抑制又は防止することができ、パンチ及びダイの破損に伴う刃物の寿命低下と、打ち抜き金型装置に付属する、例えば、プレスのベースやラム等の機器の寿命低下を同時に抑制又は防止することができる。これにより、打ち抜き金型装置のメンテナンス負担の軽減に伴うコストダウン及び生産性の向上を図ることができる。
【0018】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、捨て孔を複数個形成する際に、捨て孔を隙間を設けて形成する場合、捨て孔を形成するパンチの外周長さの総和が大きくなって、捨て孔形成総荷重を大きくすることができるので、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を容易に移動させることが可能になる。
【0019】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、小から大の捨て孔を複数の工程に分けて形成することによって、狭いスクラップ形成領域をより有効に利用して、総打ち抜き荷重を増加し、荷重中心位置の移動を制御できる。
【0020】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、捨て孔を、被加工材の幅方向を2等分する中心線を対称軸とした線対称となる位置に形成する場合、総打ち抜き荷重の荷重バランスを中心線に対して容易に維持することができ、打ち抜き時の被加工材のねじれを防止することができる。
【0021】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、捨て孔を、スクラップ形成領域の幅方向外側領域に形成する場合、同一の打ち抜き荷重でスクラップ形成領域の幅方向中心側に捨て孔を形成するときと比較して、捨て孔形成総荷重による総打ち抜き荷重の荷重中心位置の移動を効率的に行うことができる。
【0022】
第1の発明に係る積層鉄心の製造方法において、打ち抜き金型装置の中心位置を基準として、下流側の打ち抜き荷重の総和が上流側の打ち抜き荷重の総和より小さい際に、捨て孔を、外形打ち抜き加工の直前に形成する場合、捨て孔形成総荷重の荷重中心位置を、打ち抜き金型装置の中心位置より下流側に設けることができ、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を、容易に打ち抜き金型装置の中心位置に近接又は一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態に係る打ち抜き金型装置の説明図である。
図2】同打ち抜き金型装置を用いて被加工材から鉄心片が形成される過程を示す説明図である。
図3】本発明の他の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明である。
図4】従来例に係る積層鉄心の製造方法を適用した打ち抜き金型装置の説明図である。
図5】従来例に係る偏心荷重の発生を防止した打ち抜き金型装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る打ち抜き金型装置10は、例えば、固定子積層鉄心を製造する打ち抜き金型装置であって、長手方向に順送りされる帯状の被加工材11(電磁鋼板)に、複数の加工ステーョンS1〜S4に配置された刃物12〜15により所定の打ち抜き加工を順次行った後、外形打ち抜き加工を行って形成した鉄心片16(図2参照)をかしめ積層して積層鉄心を形成する装置であって、加工ステーションS1〜S4の刃物12〜15の作動に同期して、外形打ち抜き加工の直前に被加工材11のスクラップ形成領域に捨て孔17(図2参照)を打ち抜き形成する補助刃物18を有している。以下、詳細に説明する。
【0025】
打ち抜き金型装置10は、下型19と、下型19の上方に配置され、複数のガイドポスト20を介して昇降可能に連結している上型21を有している。そして、被加工材11は上型21と下型19との隙間を長手方向に沿って、加工ステーションS1〜S4の配置に合わせて順送りされる。加工ステーションS1〜S4の刃物12〜15は、それぞれパンチ22〜25と、パンチ22〜25と対となるダイ26〜29から構成され、パンチ22〜25は上型21に固定され、ダイ26〜29は下型19の上部に設けられたダイホルダ30で保持されている。更に、打ち抜き金型装置10は、図示しない吊り下げ手段を介して上型21に吊り下げられたストリッパ31を有している。
【0026】
図2に示すように、加工ステーションS1では、予め両側部に所定ピッチでパイロット孔32が形成された被加工材11の幅方向(長手方向に直交する方向)を2等分する中心線P上に中心位置を合わせて配置されているパンチ22により、ロータを構成する回転子積層鉄心を形成する鉄心片(図示せず)の外形打ち抜きが行われる。加工ステーションS2では、ロータを打ち抜いた後の抜き孔33の外周側にパンチ23を用いて、鉄心片16のヨーク片部34の内形と複数の磁極片部35を形成するためのスロット36を複数打ち抜き形成する。加工ステーションS3では、ヨーク片部34をかしめ接合する複数のかしめ部37を、パンチ24を用いてヨーク片部34の形成領域に加工する。加工ステーションS4では、パンチ25を用いて複数のかしめ部37の外側部を外形打ち抜き加工して鉄心片16を形成し、ダイ29の下方に打ち抜いた鉄心片16を複数枚かしめ積層して積層鉄心を形成する。
【0027】
捨て孔17を形成するパンチ38と、パンチ38と対となるダイ39を備えた補助刃物18は、被加工材11にかしめ部37を形成する刃物14と、鉄心片16の外形打ち抜きを行う刃物15の間に配置されている(即ち、パンチ38は、パンチ24とパンチ25の中間位置に配置されるように上型21に固定され、ダイ39は、ダイ28とダイ29の中間位置に配置されるようにダイホルダ30に保持されている)。ここで、パンチ38とダイ39は、例えば、抜き孔33の中心を通過し、被加工材11の中心線Pと直交する直線を中心線Qとして、抜き孔33の外側にあるスクラップ形成領域を中心線P及び中心線Qで4分割した場合に、各分割部分に形成される捨て孔17の位置は、中心線P及び中心線Qからできるだけ離れると共に、中心線P及び中心線Qに対してそれぞれ線対称となり、中心線Pと中心線Qの交点(抜き孔33の中心)に対して点対称となるように、位置決めされている。
【0028】
このような構成とすることにより、上型21をガイドポスト20にガイドされた状態で下型19に向けて下降させることにより、ストリッパ31で被加工材11をダイ26〜29、39に当接させて押圧保持しながら、パンチ22〜25、38を同期して作動させることができる。これにより、被加工材11に対して加工ステーションS1〜S4で所定の打ち抜き加工、外形打ち抜き加工を行うと共に、補助刃物18により捨て孔17をスクラップ形成領域の幅方向外側領域に打ち抜き形成することができ、打ち抜き金型装置10の送り方向の荷重バランスをとることができる。
【0029】
続いて、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。
被加工材11に各加工ステーションS1〜S4で打ち抜き加工が行われる加工領域と、被加工材11に設定されるスクラップ形成領域とは、重なり合うことはないので、加工ステーションS1〜S4の打ち抜き加工時に刃物12〜15にそれぞれ負荷される打ち抜き荷重を全て重ね合わせた鉄心片形成総荷重の荷重中心位置と、捨て孔17の打ち抜き加工時に補助刃物18に負荷される打ち抜き荷重を全て重ね合わせた捨て孔形成総荷重の荷重中心位置は一致しない。
【0030】
また、打ち抜き金型装置10内の加工ステーションS1〜S4は、予め設定された位置に設けているので、加工ステーションS1〜S4の打ち抜き加工時に刃物12〜15にそれぞれ加えられる打ち抜き荷重の荷重中心位置は打ち抜き金型装置10内の刃物12〜15の位置(中心位置)にそれぞれ固定され、その結果、鉄心片形成総荷重の荷重中心位置は打ち抜き金型装置10内の特定位置に固定される。一方、捨て孔17の形成個数と形成位置は、スクラップ形成領域内であれば任意に決めることができるので、打ち抜き金型装置10に配置する補助刃物18の個数と場所も任意に決めることができ、捨て孔形成総荷重の荷重中心位置は、打ち抜き金型装置10内の補助刃物18の配置により一義的に決めることができる。
【0031】
ここで、加工ステーションS1〜S4の刃物12〜15の作動に同期して、補助刃物18を作動させると、打ち抜き金型装置10には鉄心片形成総荷重と捨て孔形成総荷重が重なり合った総打ち抜き荷重が負荷されることになり、総打ち抜き荷重の荷重中心位置は、捨て孔形成総荷重の荷重中心位置により決まる。そこで、捨て孔形成総荷重の荷重中心位置を調整することにより、即ち、スクラップ形成領域内に形成する捨て孔17の個数と位置により決まる補助刃物18の打ち抜き金型装置10における位置を調整することにより、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を、打ち抜き金型装置10の中心位置に近接又は一致させることができる。これにより、打ち抜き金型装置10に生じる偏心荷重の更なる低減又は消失が可能になり、打ち抜き金型装置10の傾斜を抑制又は防止することができる。その結果、パンチ22〜25とダイ26〜29との間に設定されたクリアランスの変化を抑制又は防止することができ、パンチ22〜25及びダイ26〜29の破損に伴う刃物12〜15の寿命低下と、打ち抜き金型装置10に付属する、例えば、プレスのベースやラム等の機器の寿命低下を同時に抑制又は防止することができる。これにより、打ち抜き金型装置10のメンテナンス負担の軽減に伴うコストダウン及び生産性の向上を図ることができる。
【0032】
捨て孔17の形状(周形状)は、円形、楕円形、星型等任意の形状とすることができる。ここで、打ち抜き荷重は、パンチ38の外周長(捨て孔17の内周長に一致)と被加工材11の厚さ(せん断抵抗)の積に比例するので、例えば、捨て孔17に外接する円の直径が同一の場合、星形のように周長の長い形状の捨て孔17ほど打ち抜き荷重が大きくなり、捨て孔形成総荷重が大きくなる。このため、形成する捨て孔17の個数を減少させることができる。また、捨て孔17を複数個形成する際は、捨て孔17を隙間を設けて形成する。これにより、捨て孔17を形成するパンチ38の外周長さの総和が大きくなって、捨て孔形成総荷重を大きくすることができ、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を容易に移動させることが可能になる。
【0033】
固定子積層鉄心を形成する鉄心片は、一般に、中心線Pを対称軸とする線対称の形状であるので、刃物12〜15にそれぞれ加えられる打ち抜き荷重の荷重中心位置は中心線P上に存在し、鉄心片形成総荷重の荷重中心位置も中心線P上に存在する。このため、捨て孔17を、中心線Pを対称軸とした線対称となる位置(例えば、図2に示すように、中心線Pから等距離L、L、Lの位置)に形成することで、打ち抜き時に被加工材11にねじれが発生するのを防止する。ここで、図2に示すように、捨て孔17をスクラップ形成領域の幅方向外側領域に形成する場合、同一の打ち抜き荷重でスクラップ形成領域の幅方向中心側に捨て孔を形成する場合と比較して、中心線P上に存在する捨て孔形成総荷重の荷重中心位置における捨て孔形成総荷重の作用が大きくなる。このため、総打ち抜き荷重の荷重中心位置の移動を効率的に行うことができる。そして、捨て孔17を同一形状とする条件を更に加えることにより、加工ステーションS1〜S4の打ち抜き加工と補助刃物18による捨て孔17の打ち抜き加工を同期して実行した際に、中心線Pに対して被加工材11の幅方向両側における総打ち抜き荷重のバランスを確実に維持することができ、捨て孔17を形成しても被加工材11のねじれを防止することができる。
【0034】
更に、打ち抜き金型装置10の中心位置(金型中心位置)を基準として、下流側の加工ステーションにおける打ち抜き荷重の総和が、上流側の加工ステーションにおける打ち抜き荷重の総和より小さい場合、中心軸P上に存在する鉄心片形成総荷重の荷重中心位置は、金型中心位置より上流側に存在する。このため、図2に示すように、捨て孔17を、外形打ち抜き加工の直前に、即ち、スクラップ形成領域の金型中心位置から下流側のできるだけ離れた位置に形成すると、同一の打ち抜き荷重でスクラップ形成領域の金型中心位置から下流側のあまり離れていない位置に捨て孔を形成する場合と比較して、中心線P上の金型中心位置より下流側に存在する捨て孔形成総荷重の荷重中心位置における捨て孔形成総荷重の作用を大きくすることができ、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を容易に移動させることが可能になる。そして、捨て孔形成総荷重の荷重中心位置における捨て孔形成総荷重の作用が大きくなるので、例えば、捨て孔17の形状の単純化、捨て孔17の個数の低減、捨て孔17の打ち抜き荷重の低下を行っても、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を金型中心位置に近接又は一致させることができる。その結果、補助刃物18の製作コストの低減を図ることができる。
【0035】
図3を参照しながら、本発明の他の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。この積層鉄心の製造方法においては、同一の捨て孔を複数の打ち抜き工程を用いて製造している。即ち、捨て孔は複数の工程に分けて形成してもよく、例えば、スクラップ形成領域の幅方向外側領域に、最初に小径の捨て孔17aを打ち抜いておき、次の工程で先に打ち抜いた小径の捨て孔17aを含むようにして、大径の捨て孔17bを形成することもできる。このように、複数の工程に分けて同一箇所に径の異なる捨て孔を形成することにより、スクラップ形成領域の面積が小さく、捨て孔を複数形成できない場合も、捨て孔形成総荷重を大きくすることが可能となり、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を金型中心位置に近接又は一致させることができる。
【0036】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、本実施の形態では、鉄心片の外形抜きを行う加工ステーションの直前に存在する遊びステーションに補助刃物を追加したが、鉄心片の形成方法によって鉄心片の外形抜きを行う加工ステーションの直前に遊びステーションが存在しない場合がある。この場合は、打ち抜き金型装置の中心位置(金型中心位置)より下流側にあって、しかも、鉄心片の外形抜きを行う加工ステーションより前側にある加工ステーションの中から、任意に選択した1つの加工ステーション又は任意に選択した複数の加工ステーションにそれぞれ捨て孔を形成する補助刃物を追加する。
【0037】
また、打ち抜き金型装置の中心位置を基準として、下流側の加工ステーションにおける打ち抜き荷重の総和と上流側の加工ステーションにおける打ち抜き荷重の総和がバランスしていない場合、打ち抜き荷重の総和が小さい側に捨て孔を形成して、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を金型中心位置に近接又は一致させたが、総打ち抜き荷重の荷重中心位置を金型中心位置に更に近接又は容易に一致させるために、スクラップ形成領域において金型中心位置を基準として上流側及び下流側を含めた更に別の位置に、捨て孔を追加して形成することもできる。
【0038】
更に、本実施の形態では、鉄心片を打ち抜き金型装置内でかしめ積層して積層鉄心を形成したが、鉄心片を打ち抜いて打ち抜き金型装置内で接着積層して積層鉄心を形成してもよく、また、打ち抜き金型装置で形成した鉄心片を打ち抜き金型装置の外部に設けた積層装置に搬送した後に溶接して積層鉄心を形成してもよい。
以上の発明において、打ち抜き金型装置の荷重は各パンチ毎にロードセル等によって実測してもよいが、通常はパンチとダイの接する切断線の長さに荷重は比例すると仮定し、切断長より計算するのが簡便である。
【符号の説明】
【0039】
10:打ち抜き金型装置、11:被加工材、12〜15:刃物、16:鉄心片、17、17a、17b:捨て孔、18:補助刃物、19:下型、20:ガイドポスト、21:上型、22〜25:パンチ、26〜29:ダイ、30:ダイホルダ、31:ストリッパ、32:パイロット孔、33:抜き孔、34:ヨーク片部、35:磁極片部、36:スロット、37:かしめ部、38:パンチ、39:ダイ
図1
図2
図3
図4
図5