特開2015-112065(P2015-112065A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-112065(P2015-112065A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】すくい上げ装置
(51)【国際特許分類】
   A21C 9/08 20060101AFI20150526BHJP
【FI】
   A21C9/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-256636(P2013-256636)
(22)【出願日】2013年12月12日
(11)【特許番号】特許第5567201号(P5567201)
(45)【特許公報発行日】2014年8月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506111354
【氏名又は名称】大和サービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592209755
【氏名又は名称】金城機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】川添 晃
【テーマコード(参考)】
4B031
【Fターム(参考)】
4B031CA10
4B031CL02
4B031CL19
(57)【要約】
【課題】 移載ベルトを構成しているフィルムの摩耗を低減することができるすくい上げ装置を提供する。
【解決手段】所定箇所に設置されている移載対象物wの下側に薄板1,2を挿入するすくい上げ装置において、移載対象物wの下側に挿入される互いに上下に重ねられた二枚の薄板1,2を備え、各薄板1,2には移載対象物wの下側の挿入方向で前方側の先端部1a,2aを包み込んだ状態にフィルム材8,9が巻き掛けられ、上フィルム材8は、上薄板1が移載対象物wの下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、上薄板1の下側から先端部1aを通って上側に送られ、下フィルム材9は、下薄板2が移載対象物wの下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、下薄板2の上側から先端部2aを通って下側に送られる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定箇所に設置されている移載対象物の下側に薄板を挿入するすくい上げ装置において、
前記移載対象物の下側に挿入される互いに上下に重ねられた二枚の薄板を備え、
それらの各薄板には、前記移載対象物の下側の挿入方向で前方側の先端部を包み込んだ状態にフィルム材が巻き掛けられ、
前記薄板のうち上側の上薄板に巻き掛けられた上フィルム材は、前記上薄板が前記移載対象物の下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、前記上薄板の下側から前記先端部を通って上側に送られ、かつ前記薄板のうち下側の下薄板に巻き掛けられた下フィルム材は、前記下薄板が前記移載対象物の下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、前記下薄板の上側から前記先端部を通って下側に送られるように構成されている
ことを特徴とするすくい上げ装置。
【請求項2】
前記各薄板は所定の固定部に対して前後動可能に設けられており、
前記上フィルム材は、前記上薄板に巻き掛けられた状態でその両端部が前記固定部に固定されており、
前記下フィルム材は、前記下薄板に環状に巻き掛けられており、
前記上フィルム材と前記下フィルム材とが互いに対向している箇所の少なくとも一部が連結されていることを特徴とする請求項1に記載のすくい上げ装置。
【請求項3】
前記上薄板の先端部は前記下薄板の先端部よりも前記挿入方向で前記移載対象物側に配置されるとともに前記下薄板側に屈曲していることを特徴とする請求項1または2に記載のすくい上げ装置。
【請求項4】
前記移載対象物の上部に配置される押さえ板を備え、その押さえ板と前記移載対象物の上部とが接触している状態で前記移載対象物の下側に前記各薄板を抜き差しするように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のすくい上げ装置。
【請求項5】
電気的に制御されて前記各薄板を前記移載対象物に向けて前後動させる電動アクチュエータが設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のすくい上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移載対象物を移載するための装置に関し、特に、所定箇所に設置された移載対象物の下側に薄板を挿入して移載対象物をすくい上げる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置の一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された移載装置は、所定の移載面上に設置されている移載物の下側に、支持板材を挿入してすくい上げるように構成されている。その支持板材には、移載物側の先端部およびこれとは反対側の後端部で折り返すように移載ベルトが巻き掛けられている。そして、上記の支持板材を移載物の下側に挿入することに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、支持板材の下側から先端部を経由して上側に移載ベルトを送り込むように構成されている。そのため、この特許文献1に記載された移載装置によれば、移載物の下側に移載ベルトを挿入する場合に、これらの間で相対速度差が生じない。つまり移載物と移載ベルトとの間で摩擦が生じにくいため、移載物を傷つけることなくすくい上げることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4406775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構成では、移載物の下側に移載ベルトを送り込む場合に、移載ベルトと移載面との間で相対速度差が生じる。そのため、移載ベルトが移載面に擦れて摩耗し、その耐久性が低下する不都合がある。また、移載ベルトを構成しているフィルムの交換頻度が増大することになるため、実用性に欠ける点があった。
【0005】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、フィルムの摩耗を低減することができるすくい上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、所定箇所に設置されている移載対象物の下側に薄板を挿入するすくい上げ装置において、前記移載対象物の下側に挿入される互いに上下に重ねられた二枚の薄板を備え、それらの各薄板には、前記移載対象物の下側の挿入方向で前方側の先端部を包み込んだ状態にフィルム材が巻き掛けられ、前記薄板のうち上側の上薄板に巻き掛けられた上フィルム材は、前記上薄板が前記移載対象物の下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、前記上薄板の下側から前記先端部を通って上側に送られ、かつ前記薄板のうち下側の下薄板に巻き掛けられた下フィルム材は、前記下薄板が前記移載対象物の下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、前記下薄板の上側から前記先端部を通って下側に送られるように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記各薄板は所定の固定部に対して前後動可能に設けられており、前記上フィルム材は、前記上薄板に巻き掛けられた状態でその両端部が前記固定部に固定されており、前記下フィルム材は、前記下薄板に環状に巻き掛けられており、前記上フィルム材と前記下フィルム材とが互いに対向している箇所の少なくとも一部が連結されていることを特徴とするすくい上げ装置である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記上薄板の先端部は前記下薄板の先端部よりも前記挿入方向で前記移載対象物側に配置されるとともに前記下薄板側に屈曲していることを特徴とするすくい上げ装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記移載対象物の上部に配置される押さえ板を備え、その押さえ板と前記移載対象物の上部とが接触している状態で前記移載対象物の下側に前記各薄板を抜き差しするように構成されていることを特徴とするすくい上げ装置である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、電気的に制御されて前記各薄板を前記移載対象物に向けて前後動させる電動アクチュエータが設けられていることを特徴とするすくい上げ装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、移載対象部の下側に二枚の薄板を挿入する場合には、上薄板に巻き掛けられた上フィルムはその下側から移載対象物の下側の挿入方向で前方側の先端部を経由して上側に送られる。下薄板に巻き掛けられた下フィルムはその上側から移載対象物の下側の挿入方向で前方側の先端部を経由して下側に送られる。また、移載対象部の下側から二枚の薄板を引き抜く場合には、上薄板に巻き掛けられた上フィルムはその上側から先端部を経由して下側に送られる。下薄板に巻き掛けられた下フィルムはその下側から先端部を経由して上側に送られる。そのため、上述したいずれの場合であっても、移載対象物と上フィルムとの間、および、移載対象物が設置されている所定箇所と下フィルムとの間で相対速度差が生じない。つまり、それらの間で摩擦が生じにくい。そのため、移載対象物の姿勢を崩さずに移載対象物の下側に各薄板を抜き差しすることができ、またこれにより、所定箇所から他の所定箇所に、移載対象物の姿勢を崩さずに移載することができる。また特に、所定箇所に対して下フィルムが擦れて摩耗することを防止もしくは抑制することができるため、各フィルムの使用期間を可及的に長くしてその交換頻度を低減することができる。その結果、装置全体としてのメンテナンス性を向上させることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係るすくい上げ装置の一例を示す図であって、(a)は上薄板の上視図であり、(b)は下薄板の上視図であり、(c)はこの発明に係るすくい上げ装置の側面図である。
図2】各薄板の先端部の拡大図である。
図3】移載対象物の下側への各薄板の挿入動作を説明するための図であって、(a)は移載対象物の下側に各薄板を挿入した状態を示す図であり、(b)は移載対象物の下側から各薄板を引き抜いた状態を示す図である。
図4】この発明に係るすくい上げ装置の動作の一例を示す図であって、(a)は押さえ板を移載対象物の上部に配置した状態を示す図であり、(b)は押さえ板によって移載対象物の上部を押さえた状態を示す図であり、(c)は移載対象物の下側に各薄板を挿入した状態を示す図であり、(d)は移載対象物を移載している状態を示す図であり、(e)は移載対象物を他の移載対象物上に重ね合わせた状態を示す図であり、(f)は移載対象物と他の移載対象物との間から各薄板を引き抜いた状態を示す図であり、(g)は移載対象物を他の移載対象物上に積層した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明をより具体的に説明する。図1は、この発明に係るすくい上げ装置の一例を示す図であって、(a)は上薄板の上視図であり、(b)は下薄板の上視図であり、(c)はこの発明に係るすくい上げ装置の側面図である。上薄板1は、図1の(a)に示すように、長方形に形成されており、その長さ方向のほぼ中央における両側に、上薄板1よりも短い下薄板2を取り付けるための上フランジ部3が設けられている。この上フランジ部3には、2つのネジ孔4が形成されている。上薄板1および下薄板2は、それらを上下に重ね合わせかつネジ孔4と、後述する下薄板2のネジ孔とを一致させた状態で各ネジ孔をボルト5や袋ナット6などの固定部材によって締結することにより一体化されるようになっている。上薄板1における図1の(a)での左側には、2つの長孔7が形成されている。各長孔7は、例えば、上薄板1に巻き掛けた上フィルム8を、下薄板2に巻き掛けた下フィルム9に押し付けて貼り合わせる場合に使用される。そのため、各長孔7に対応するように、上フィルム8と下フィルム9との接着部位aが配置される。各フィルム8,9は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)によって形成されている。
【0014】
上フィルム8は、図1の(c)に示すように、上薄板1の一端部1a、および、これとは反対側の他端部1bを包みこむように巻き掛けられている。その上フィルム8の両端部8a,8bが上薄板1の上側で所定のケーシングに一体のフレーム部10に固定されている。フレーム10は例えば図示しないロボットアームに取り付けられており、そのロボットアームによってすくい上げ装置ごと移動されるように構成されている。以下の説明では、上記の一端部1aが移載対象物w側に配置されているものとして説明する。また上記の一端部1aを先端部1aと称し、他端部1bを後端部1bと称する。
【0015】
上薄板1の中央に、受け部11が取り付けられており、この受け部11と、アクチュエータ12のロッド13とが連結されている。アクチュエータ12は電気的に制御されて直線的な動作を行うように構成されたものであり、図1の(c)に示すように、フレーム部10に固定されている。また、アクチュエータ12は図示しない制御装置を有しており、ロッド13の移動量を変更できるように構成されている。そのアクチュエータ12は従来知られている電動シリンダであってよい。
【0016】
下薄板2は、図1の(c)に示すように、上薄板1よりも短く形成されている。また下薄板2には、図1の(b)に示すように、上フランジ部3に重なり合う下フランジ部14が形成されている。その下フランジ部14にネジ孔15が形成されている。そして上述したように、各フランジ部3,14におけるネジ孔4,15を一致させた状態で各ネジ孔4,15をボルト5やナット6などの固定部材によって締結することにより各薄板1,2が一体化される。このように各薄板1,2を一体化させた場合、図1の(c)に示すように、上薄板1の先端部1aが下薄板2における移載対象物w側の一端部2aよりも僅かに移載対象物w側に配置されるようになっている。
【0017】
下フィルム9は、下薄板2の一端部2a、および、これとは反対側の他端部2bを包み込むように巻き掛けられており、かつ、その両端部が下薄板2の上側で片面テープ16や接着材などによって連結されている。そのため、下フィルム9は下薄板2に環状に巻き掛けられている。以下の説明では、上記の一端部2aを先端部2aと称し、他端部2bを後端部2bと称する。そして、上述した長孔7の下側に配置されている上フィルム8と、下フィルム9の連結部分とが両面テープ17や接着材などによって接着されている。この接着部分が上述した接着部位aである。
【0018】
また、この発明に係るすくい上げ装置は、図1の(c)に示すように、押さえ装置18を備え、その押さえ装置18は、押さえ板19を有している。その押さえ板19は、テーブル上に配置されあるいは上薄板1上に載せられた移載対象物wの上部に接触し、その移載対象物wをテーブルや上薄板1に押さえつけるためのものである。また移載対象物wを押さえつけることによりその姿勢を維持するためのものである。例えば、テーブル上に配置されている移載対象物wをすくい上げる場合、移載対象物wの上部と押さえ板19とを接触させている状態で移載対象物wの下側に各薄板1,2を抜き差しする。その場合、移載対象物wは押さえ板19とテーブルtaとに挟まれた状態となっているので、移載対象物wの姿勢が維持される。上記の押さえ板19は、ロッド20の一端部に取り付けられ、そのロッド20を介してシリンダ21に摺動自在に取り付けられている。そのロッド20の他端部には、抜け止め部22が取り付けられている。すなわち、押さえ板19は、自重によって図1の(c)での下方に移動することによりシリンダ21から離隔し、また外力によって図1の(c)での上方に移動することによりシリンダ21に接近するように構成されている。シリンダ21にはネジ孔23が形成されており、そのネジ孔23に噛み合うネジ24によってフレーム10のフランジ部25に固定されている。
【0019】
図2は、上述したように一体化させた各薄板1,2の先端部1a,2aの拡大図である。上薄板1の先端部1aが、下薄板2の先端部2aよりも予め定めた長さだけ移載対象物w側に突出して配置されている。また、その突出している先端部1aは、他の部分1cに対して予め定めた角度だけ下薄板2側に屈曲している。図2に示す例では、先端部1aと先端部2aとの間隔d1は10mmに設定されている。また、その先端部1aの曲げ角度θ1は7°に設定されている。これは、上記のように一体化させた各薄板1,2の先端部の厚さを薄くしてその挿入動作をスムーズに行うためである。上記のように各薄板1,2を構成することにより、先端部の厚さをほぼ薄板1枚分の厚さにすることが可能になる。また、図2に示す例では、テーブルtaと下薄板2とのなす角度すなわち各薄板1,2の挿入角度θ2が、5°に設定されている。上記の挿入角度θ2は、5°前後であってよいが、5°以下に設定することがより好ましい。これは、先端部1aとテーブルtaとの接触を抑制してテーブルtaに上フィルム9が擦れることによる上フィルム9の耐久性の低下を抑制するためである。また、挿入角度θ2を5°以下に設定した状態で、曲げ角度θ1と挿入角度θ2とを合算した角度を12°以下とすることが好ましい。例えば、曲げ角度θ1を8°に設定した場合には、挿入角度θ2を4°に設定することが好ましい。挿入角度θ2が5°よりも大きくなったり、合算角度が12°よりも大きくなったりすると、移載対象物wの下側に薄板1,2を挿入する場合に、移載対象物wにおける各薄板1,2側の側面に、上薄板1における上側面を押しつけるようになってしまう可能性がある。つまり移載対象物wの下側に薄板1,2を挿入しにくくなってしまう。また、先端部1aとテーブルtaとが接触してテーブルtaと上フィルム9とが擦れる可能性がある。さらに上薄板1上に移載対象物wを載せる場合に、移載対象物wの傾きが大きくなってしまい、移載対象物wの姿勢が崩れる可能性がある。
【0020】
図1および図2に示す例では、上薄板1は、幅110mm、長さ295mm、厚さt1が1.5mmのステンレス板や合成樹脂板によって形成され、上フランジ部3の厚さが0.5mmに設定されている。下薄板2は幅110mm、長さ195mm、厚さt2が1.5mmのステンレス板や合成樹脂板によって形成され、下フランジ部14の厚さが1.5mmに設定されている。また、各フランジ部3,14におけるネジ孔4,15の間隔は70mmに設定されている。さらに、ボルト5や袋ナット6によって一体化させた各薄板1,2の全体としての厚さt3は3.5mm、各薄板1,2の間隔d2は0.5mmに設定されている。
【0021】
図3は、移載対象物wの下側への薄板1,2の挿入動作を説明するための図であって、(a)は移載対象物wの下側に各薄板1,2を挿入した状態を示す図であり、(b)は移載対象物wの下側から各薄板1,2を引き抜いた状態を示す図である。先ず、移載対象物wの下側に各薄板1,2を挿入する場合について説明すると、すくい上げ装置ごとテーブルtaや作業台などの所定箇所に設置されている移載対象物wに接近させる。その場合、各薄板1,2を水平に保った状態ですくい上げ装置を移動させることが好ましい。次いで、上記テーブルtaと移載対象物wとの間に向けて各薄板1,2を同時に前進させる。そして移載対象物wの下側に各先端部1a,2aを僅かに挿入する。その場合、上述したように、挿入角度を5°以下にすることが好ましい。また、この発明に係るすくい上げ装置では、上薄板1の先端部1aが下薄板2の先端部2aよりも移載対象物w側に突出するように構成されているため、先ず、上薄板1の先端部1aが移載対象物wの下側に挿入される。ついで、下薄板2の先端部2aがテーブルtaと上薄板1との間に挿入される。その結果、テーブルtaと移載対象物wとの隙間が小さい場合であっても、各薄板1,2の挿入動作をスムーズに行うことができる。なお、各薄板1,2の挿入速度および引き抜き速度は0.1から0.25m/sに設定されている。
【0022】
さらに移載対象物wの下側に各薄板1,2を挿入する場合に、その挿入長さに応じた長さ分、上フィルム8が上薄板1の下側から先端部1aを経由して上側に送られる。つまり、移載対象物wと上フィルム8との間に相対速度差が生じないように、移載対象物wの下側に上フィルム8が順次送り込まれる。また、この上フィルム8の送り動作に同期して、下フィルム9が下薄板2の上側から先端部2aを経由して下側に送られる。そのため、テーブルtaと下フィルム9との間にも相対速度差が生じない。その結果、見かけ上、上フィルム8は移載対象物wに対して動いておらず、下フィルム9もテーブルtaに対して動かない。一方、各フィルム8,9の接続部位aは、薄板1,2との間を移載対象物w側に移動する。各フィルム8,9は各薄板1,2の挿入速度に対して約2倍の速度で送り出されるようになっている。
【0023】
そして移載対象物wの下面のほぼ全体に亘って上フィルム8を送り込んだ状態で、上述した挿入動作を停止する。この状態では、上フィルム8を介して上薄板1上に移載対象物wが配置されている。図3の(a)は、この状態を示している。その後、すくい上げ装置ごとを持ち上げると、移載対象物wがテーブルtaからすくい上げられる。
【0024】
次いで、すくい上げた移載対象物wを他の所定箇所に移載する場合について説明する。図3の(b)には、すくい上げた移載対象物w1を、外形がほぼ同じ大きさの移載対象物w2上に設置する例を示してある。上薄板1上に移載対象物w1が配置されているため、各薄板1,2を水平に保った状態ですくい上げ装置を移動させる。また移載対象物w1を移載対象物w2上に配置する。そしてすくい上げ装置を下降させることにより移載対象物w1を、移載対象物w2上にそれらの外形が揃うように重ね合わせる。その後、アクチュエータ12を制御して各薄板1,2を図3の(b)での右方向に平行移動させる。その場合、各フィルム8,9は上述した送り動作とは反対の順序で送り出される。すなわち、各薄板1,2の移動量に応じた長さ分、上フィルム8が上薄板1の上側から先端部1aを経由して下側に送られ、下フィルム9が下薄板2の下側から先端部2aを経由して上側に送られる。そのため、移載対象物wの下側から各薄板1,2を引き抜く場合に、移載対象物w1,w2がそれらの薄板1,2によって引き摺られて移動することを防止もしくは抑制することができる。その場合、各フィルム8,9の接続部位aは、図3の(b)での右方向に移動する。
【0025】
実施例
図4は、この発明に係るすくい上げ装置の動作の一例を示す図である。先ず、図4の(a)に示すように、ロボットアームによってすくい上げ装置ごと移動させられ、その押さえ板19が移載対象物w1の上側に配置される。この状態では、押さえ板19は自重によって下方に移動しており、シリンダ21から最も離隔している。次いで、図4の(b)での下方にすくい上げ装置が移動させられる。すくい上げ装置が下降していくと、押さえ板19は移載対象物w1の上部に接触し、押さえ板19の下降が停止する。すくい上げ装置が更に下降していくとそれに伴ってロッド20がシリンダ21の内部を摺動する。その結果、押さえ板19はシリンダ21に接近する。そして、下薄板2がテーブルtaに接触すると、すくい上げ装置の下降が停止される。この状態では、押さえ板19と各薄板1,2との間隔が、移載対象物w1の厚さに相当する長さになっている。また、移載対象物w1は押さえ板19の重さに応じた荷重によってテーブルtaに押し付けられている。そのため移載対象物wは押さえ板19によってその姿勢が維持されている。つまり、押さえ板19によって移載対象物wの傾斜が防止もしくは抑制されている。
【0026】
次いで、図4の(c)に示すように、移載対象物wの下側に各薄板1,2を挿入する。各薄板1,2の挿入動作に伴う各フィルム8,9の送り動作は、図3の(a)で説明した通りである。その結果、移載対象物wは押さえ板19と上薄板1との間に配置され、あるいは、これらの間に挟み付けられた状態となる。この状態では、移載対象物wは押さえ板19と各薄板1,2とによってその姿勢が維持されている。次いで、図4の(d)に示すように、すくい上げ装置ごと移動させ、移載対象物w1の外形と他の移載対象物w2の外形とを揃える。その場合、各薄板1,2を平行に保つことが好ましい。その後、すくい上げ装置を図4の(e)での下方に移動させ、下薄板2が他の移載対象物w2に接触した時点でその下降を停止させる。次いで、図4の(f)に示すように、移載対象物w1,w2の間から各薄板1,2を引き抜く。その引き抜き動作は、図3の(b)で説明した通りである。その引き抜き動作が完了すると、移載対象物w2上に移載対象物w1が直接積層される。またこれらの移載対象物w1,w2は押さえ板19の重さに応じた荷重によってテーブルtaに押し付けられている。その後、すくい上げ装置は図4の(g)に示すように移動させられる。積層された各移載対象物w1,w2は図示しない袋詰めや検査などの次工程に供給される。
【0027】
したがって、この発明に係るすくい上げ装置によれば、所定箇所に設置されている移載対象物wをすくい上げる場合に、所定箇所および移載対象物wに対して相対速度差を生じることなく、それらの間に薄板1,2を挿入することができる。特に、所定箇所に対して下フィルム9が擦れて摩耗することを防止もしくは抑制することができる。つまり各フィルム8,9の耐久性の低下を抑制することができる。これによりその使用期間を可及的に長くすることができる。また、各フィルム8,9の交換頻度を低減して装置全体としての部材コストを低減したり、メンテナンス性を向上させたりすることができる。さらに、薄板1,2によって移載対象物wが押されたり、また引き摺られたりすることを防止もしくは抑制することができるので、移載動作をスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
1…上薄板、 1a…上薄板の先端部、 2…下薄板、 2a…下薄板の先端部、 8…上フィルム、 9…下フィルム、 w,w1,w2…移載対象物。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2014年5月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定箇所に設置されている移載対象物の下側に薄板を挿入するすくい上げ装置において、
前記移載対象物の下側に挿入される互いに上下に重ねられた二枚の薄板を備え、
それらの各薄板には、前記移載対象物の下側の挿入方向で前方側の先端部を包み込んだ状態にフィルム材が巻き掛けられ、
前記薄板のうち上側の上薄板に巻き掛けられた上フィルム材は、前記上薄板が前記移載対象物の下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、前記上薄板の下側から前記先端部を通って上側に送られ、かつ前記薄板のうち下側の下薄板に巻き掛けられた下フィルム材は、前記下薄板が前記移載対象物の下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、前記下薄板の上側から前記先端部を通って下側に送られるように構成されており、
前記各薄板は所定の固定部に対して前後動可能に設けられており、
前記上フィルム材は、前記上薄板に巻き掛けられた状態でその両端部が前記固定部に固定されており、
前記下フィルム材は、前記下薄板に環状に巻き掛けられており、
前記上フィルム材と前記下フィルム材とが互いに対向している箇所の少なくとも一部が連結されてい
ことを特徴とするすくい上げ装置。
【請求項2】
前記上薄板の先端部は前記下薄板の先端部よりも前記挿入方向で前記移載対象物側に配置されるとともに前記下薄板側に屈曲していることを特徴とする請求項1に記載のすくい上げ装置。
【請求項3】
前記移載対象物の上部に配置される押さえ板を備え、その押さえ板と前記移載対象物の上部とが接触している状態で前記移載対象物の下側に前記各薄板を抜き差しするように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のすくい上げ装置。
【請求項4】
電気的に制御されて前記各薄板を前記移載対象物に向けて前後動させる電動アクチュエータが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のすくい上げ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、所定箇所に設置されている移載対象物の下側に薄板を挿入するすくい上げ装置において、前記移載対象物の下側に挿入される互いに上下に重ねられた二枚の薄板を備え、それらの各薄板には、前記移載対象物の下側の挿入方向で前方側の先端部を包み込んだ状態にフィルム材が巻き掛けられ、前記薄板のうち上側の上薄板に巻き掛けられた上フィルム材は、前記上薄板が前記移載対象物の下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、前記上薄板の下側から前記先端部を通って上側に送られ、かつ前記薄板のうち下側の下薄板に巻き掛けられた下フィルム材は、前記下薄板が前記移載対象物の下側に挿入されることに伴ってその挿入長さに応じた長さ分、前記下薄板の上側から前記先端部を通って下側に送られるように構成されており、前記各薄板は所定の固定部に対して前後動可能に設けられており、前記上フィルム材は、前記上薄板に巻き掛けられた状態でその両端部が前記固定部に固定されており、前記下フィルム材は、前記下薄板に環状に巻き掛けられており、前記上フィルム材と前記下フィルム材とが互いに対向している箇所の少なくとも一部が連結されていることを特徴とするものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記上薄板の先端部は前記下薄板の先端部よりも前記挿入方向で前記移載対象物側に配置されるとともに前記下薄板側に屈曲していることを特徴とするすくい上げ装置である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記移載対象物の上部に配置される押さえ板を備え、その押さえ板と前記移載対象物の上部とが接触している状態で前記移載対象物の下側に前記各薄板を抜き差しするように構成されていることを特徴とするすくい上げ装置である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、電気的に制御されて前記各薄板を前記移載対象物に向けて前後動させる電動アクチュエータが設けられていることを特徴とするすくい上げ装置である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4