【実施例1】
【0025】
第1の実施例は、細胞及び培地が流れる第1流路と、細胞及び培地が流れる複数の第2流路と、第1流路と、複数の第2流路を接続する第1分岐部と、複数の第2流路に配置される送液機構と、複数の流路を流れる細胞及び培地の量を制御するため、送液機構を制御する制御部とを有する細胞培養装置の実施例である。以下の第1の実施例の説明においては、送液機構としてチューブポンプ、流路としてチューブを用いた場合の自動培養装置の実施例として説明する。すなわち、本実施例においては、送液機構は、同一回転軸で同期して駆動される、複数のローダーを備えるチューブポンプを含み、流路である複数のチューブ各々は、複数のローダー各々に設置される。
【0026】
図1は実施例1の自動培養装置の送液機構であるチューブポンプ30の分岐部32の位置と、流路であるチューブ41配線の関係を示した全体概略構成を示す図である。
図2は実施例1の自動培養装置の構成において、チューブポンプ30の分岐部32の位置を入力37側と出力38側で入れ替えた状態を示す全体概略構成図である。
図3は実施例1の自動培養装置の構成において、チューブポンプ30の分岐部32を入力37側と出力38側の両方に有した状態を示す全体概略図である。
【0027】
<チューブポンプと分岐部の構成>
図1、
図2、
図3を用いて、本実施例のチューブポンプ30、流路であるチューブ41、及び分岐部32を備えた全体構成について説明する。同図に明らかなように、モーター33と制御系機構を備えたチューブポンプ30本体、本体30内のモーター33と接続する回転軸34、ローダー35、更に液体等を分岐する分岐部32からなる。なお、同じチューブ41でも、ローダー35にセットする部分をチューブ36と称する。以下、それぞれの基本構成について説明する。
【0028】
図1に示されるように、チューブポンプ30はモーター33で回転軸34を回してローダー35と回転軸34間にあるチューブ36をしごいて、脈流を生じることでチューブ36内部の液体等を送るものである。ローダー35からはチューブ36が脱着することができ、チューブ36内部に機構部が存在しないため、チューブ36内部の無菌性を保持したまま、送液が可能になる。しかし、送液対象が細胞懸濁液の場合、チューブ36をしごいた際に、細胞へのダメージを最小化することが重要である。
【0029】
チューブポンプ30は通常1本のチューブ36を用いて送液する。複数のチューブ36を送液する場合には、複数のチューブポンプ30同士のモーター33や制御系機構を同期させることもある。そして、チューブ36で送液可能な量を増加させるには、チューブポンプ30のモーター33の回転数を上げるか、チューブ36の内径を大きくすることで対応可能になる。
【0030】
しかしながら、チューブポンプ30はしごくことで脈流を発生させて送液する機構であるため、その回転数を上げるほど、脈流の影響による送液効率は低下することに加え、チューブ36内部で生じる乱流で細胞ダメージが増加する。また、チューブ36の内径を大きくした場合、それに伴いチューブ36肉厚も増加し、チューブ36の径がより大きくなる。それに伴い、チューブ36をしごくための力も増加し、しごき時の圧力上昇による細胞へのダメージが増加する。
【0031】
そこで、本実施例においては、細胞へのダメージを最小化するために、チューブ36内径を大きくせず、回転数も上げずに送液量を増加させる方法として、
図1の構成を採用する。すなわち、チューブポンプ30の回転軸34に複数のローダー35を設置し、複数のローダー35に複数のチューブ36を設置して、入力37側にチューブ41の分岐部32を設けた。チューブポンプ30の回転軸34の回転数分、全てのローダー35に設置した複数のチューブ36は等量の液体を送る。そのため、ローダー35のチューブ36の本数分、送液量が倍化する。分岐部32が入力37側にある場合には出力38側は複数のローダー35のチューブ36の本数分となる。ここで、ローダー35に設置したチューブ36断面積が1の場合、2本分岐部32の断面積を2とし、入力37のチューブ36の断面積を4とすると、4本のチューブ36内全ての流速が同一となり、細胞へのダメージがより最小化する。
【0032】
図2は、
図1の回転軸34の回転方向42を逆にした場合、もしくは入力37と出力38を入れ替えた場合の構成を示す図である。
図1に示すように入力37が1に対して、出力38が複数の構成だけでなく、
図2に示すように入力37が複数、出力38が1といった構成とすることにより、例えば、薬剤の等量混合のケースでも使用可能となる。
【0033】
図1、
図2の構成では共に、チューブ41につまり等の不具合が生じた場合に、ローダー35に設置した部分のチューブ36の送液量が等量でなくなる。そこで、チューブ41内に液面センサや、或いは圧力センサを設けて、ローダー35周辺、もしくは必要なチューブ41部位での送液の安定性を計測することもできる。
【0034】
なお、本願明細書においては、
図1の構成において、分岐部32を第1分岐部と称し、第1分岐部32の入力37側、及び出力38側に接続される流路41をそれぞれ第1流路、複数の第2流路と称する。一方、
図2の構成においては、第1分岐部32の入力37側、及び出力38側に接続される流路41をそれぞれ複数の第2流路、第1流路と称する。
【0035】
図3に入力37側と出力38側にそれぞれ分岐部32を設けた本実施例の構成を示している。もし、ローダー35へ設置するチューブ36が1本のみの4個のチューブポンプ30を使って、入力37側と出力38側にそれぞれ分岐部32を設けた構成を実現した場合、4個のチューブポンプ30を同期して制御しなければならず、4個のチューブポンプ30の制御系装置、通信装置、同期に関わるソフトウェアが必要になる。
【0036】
一方、
図3に示す本実施例の構成では、それぞれチューブ36が設置可能な4個のローダー35を1個の回転軸34に設置するだけで同期し、精度高い送液が可能になる。そのため、省スペース化と、効率的な送液量の増加を可能にする。
【0037】
なお、本明細書においては、
図3の構成において、入力37側の第1分岐部32の入力37側、及び出力38側に接続される流路41をそれぞれ第1流路、第2流路と称することは、
図1と同様であるが、更に、出力38側の分岐部32を第2分岐部と称し、その出力38側の流路41を第3流路と称する。
【0038】
<培養容器への送液に関する一連の動作>
図4A、及び
図4Bは、本実施例におけるチューブポンプ30の出力38側に一つの培養容器39を配置した概略図である。また、
図5はチューブポンプ30の出力38側に複数の培養容器39を配置した概略図である。なお、
図4C−
図4Eは実施例2を説明するための図であり、後で詳述する。
【0039】
図4A、
図4B、及び
図5を用いて、本実施例の自動培養装置における培養容器39への送液方法の一例について説明する。これら図では出力38側に培養容器39が配置しているが、
図2のようにチューブポンプ30の回転方向42を逆転させて、入力37と出力38を変えてもよい。例えば、培地交換等で使用済みの培地を培養容器39から排出する場合に、利用することができる。
図4A、
図4Bにおいては、培養容器39が1つの場合を示している。
図4Aでは培養容器39に、複数の注入口43がある場合を示し、
図4Bでは培養容器39に一つの注入口43がある場合を示している。
図4Aの構成では、複数のチューブ41が培養容器39に接続しているため、チューブ41が煩雑になってしまうが、例えば、培養容器39内部が複数の部屋に分かれている場合等では、送液の効率化を図ることが可能になる。一方、
図4Bの構成では、出力38のチューブ41が1本のため、例えば大量の培地が必要となる大容量の培養容器39の場合等では、送液の効率化が可能になる。
【0040】
図5においては、出力38側に培養容器39が複数の場合を例示している。同図に示す通り、チューブポンプ30の同一の回転軸34でしごいているため、複数の培養容器39それぞれに対し、等量の液体を送ることができる。そのため、細胞播種、培地交換を一つのチューブポンプ30で複数の培養容器39に対し、正確な送液が可能になるため、スペースや処理時間の最小化と処理の効率化、それに伴う細胞へのダメージの最小化が可能になる。
【0041】
<分岐部の構成>
図6A、及び
図6Bは、本実施例における分岐部の一例を示した概略構成図である。
図6A、及び
図6Bを用いて、分岐部32の構成方法の一例について説明する。
図6Aに示すように、分岐部32として、例えば3方分岐部44を利用する場合など、複数のローダー35に接続するチューブ36が2
x本(但し、x>0)以外では、分岐部32に偏りを生じることがある。その結果、ローダー35に至るまでに分岐部32が、1つのチューブ41と分岐部32の他の2つのチューブ41とでは、分岐部32における抵抗の違いから送液量に差が生じることがある。
【0042】
本実施例の構成において、その送液量の差分を補正するためには、複数のローダー35の一部に、ギアなどを設けて回転数を調整すると好適である。また、ローダー35の回転数を変えずに、一部のチューブ36内径および外径を、他のチューブ36内径および外径と変える方法を採用することも可能である。更には、
図6Bに示すように、分岐部32にタンク、アキュムレーターなどの液だめ45を用いた多方分岐構造により、ローダー35に接続するチューブ36それぞれへ等量の送液量を供給する構成も可能である。
【0043】
<自動培養装置におけるポンプ位置>
図7は本実施例の自動培養装置内部の培養要素の配置例を示す概略図である。すなわち、
図7に、細胞及び培地を保持可能な培養容器部と、培地を保持可能な培地保管部と、細胞及び培地を給排する給排部と、給排部を制御する図示を省略した制御部とを備え、給排部は、先に説明した細胞及び培地が流れる第1流路と、細胞及び培地が流れる複数の第2流路と、第1流路と、複数の第2流路を接続する第1分岐部と、複数の第2流路に配置される送液機構を有し、複数の第2流路を流れる細胞及び培地の量を制御するため、送液機構を制御する細胞培養装置の全体構成を示している。
【0044】
図7を用いて、継代、培養、細胞濃縮を実現する、本実施例の自動培養装置の培養要素機器の配置の一構成例について説明する。上述した送液機構であるチューブポンプ30、分岐部32、電磁弁等からなる、給排部として機能するポンプ部31を中心とし、給排部であるポンプ部31に、培養容器部を構成する一次培養容器部20と二次培養容器部21、細胞濃縮部16、培地保管部14がそれぞれ接続されている。ポンプ部31は、含まれる送液機構により、細胞及び培地を培養容器部に給排する給排部として機能する。それぞれの間の接続はチューブ41等からなる実線で示す流路40による。一次培養容器部20と二次培養容器部21の内部は37℃、5%二酸化炭素濃度、湿度100%に近い状態を保持する。なお、培地保管部14の内部は例えば4℃とする。
【0045】
図7の構成では、自動培養装置の装置本体11内部に一次培養容器部20、二次培養容器部21、給排部であるポンプ部31があり、装置本体11の外部に細胞濃縮部16、培地保管部14がある。図示を省略するが培地保管部14の流路40が細胞濃縮部16の一部を通る構成も可能である。例えば、自動培養装置本体11内部は温度37℃、細胞濃縮部16および自動培養装置本体11外部は室温である20℃前後を想定する。以上の培養要素の配置構成で、多量の細胞培養に必要な、細胞播種、培養、継代、細胞濃縮の工程を実現できる。
【0046】
一次培養容器部20内の培養容器への細胞播種では、培地保管部14の細胞懸濁液を、ポンプ部31を介して一次培養容器部20へ送液して培養する。一次培養容器部20の培養容器は、通常1個の場合が多いため、
図4Bに示した配置構成で送液時間を短縮可能で、浮遊状態での細胞ダメージを最小化することができる。継代作業のため、一次培養容器部20の一次培養容器で培養した細胞は懸濁液状態にして、ポンプ部31で送液して、二次培養容器部21の二次培養容器へ送液する。細胞剥離液などで細胞の剥離や、培地などで、細胞濃縮以外の細胞濃度変更ができる。
【0047】
二次培養容器部21の培養容器は1個で大型培養面積を有する場合は、
図4Bに示した実施例の構成で送液時間を短縮可能である。また、培養容器が複数個で大型培養面積を有する場合は、
図5に示した実施例の構成で送液時間を短縮可能である。いずれの場合でも、浮遊状態での細胞ダメージを最小化することができる。
【0048】
培地交換の場合でも上述した本実施例の送液機構であるチューブポンプ30の構成を利用する。すなわち、培養時の培地交換では一次培養容器部20、二次培養容器部21から出た廃液は、給排部として機能するポンプ部31を介して培地保管部14へ移動する。そして、培地保管部14から培地などを、ポンプ部31を介して一次培養容器部20、二次培養容器部21へ送液する。二次培養容器部21の二次培養容器で培養した細胞は懸濁液状態にして、ポンプ部31で、細胞濃縮部16へ送液する。細胞剥離液などで細胞の剥離や、培地などで、細胞濃縮以外の細胞濃度変更ができる。細胞濃縮部16で細胞濃縮による細胞濃度調整がなされるが、遠心分離を利用しても良い。
【0049】
送液は、対象となる機器構成にあわせて
図4A、および
図4B、
図5の構成とすることができる。細胞濃縮部16内での細胞接着を防止し、細胞ダメージを最小にするため、室温付近での細胞濃縮がなされる。細胞濃縮終了後は細胞濃縮部16の培地バッグ等に細胞懸濁液を保管する。細胞濃縮部16から送液もしくは搬送して、培地保管部14で細胞懸濁液を保管してもよい。
【0050】
以上詳述した本実施例の細胞懸濁液の移動を中心として一連の工程をまとめると、培地保管部14→ポンプ部31→一次培養容器部20→ポンプ部31→二次培養容器部21→ポンプ部31→細胞濃縮部16、或いは→培地保管部14となる。本実施例の構成によれば、培養要素間の移動時にポンプ部31を介するため、ポンプ部31の細胞にダメージを少なくして送液量を増加させることで、各培養要素間の流路40のチューブ41の長さが最小となり、細胞にダメージを与える送液時間の短縮、チューブ41内培地残液量の最小化、流路40設置の容易性の向上が可能となる。ポンプ部31のチューブポンプ30も1台で全ての処理を可能として、関連機器構成の簡略と省スペース化、制御方法の簡潔化できる。チューブポンプ30を中心とした培養要素の配置で、配置の自由度が増し、細胞処理内容に応じた配置が可能になり、汎用性を有することができる。
【0051】
<自動培養装置の制御システム構成>
図8は本実施例の自動培養装置を動作させるための制御システムの一例を示すブロック図である。
【0052】
図8は、自動培養装置10における内部機器を制御するための制御システムの一構成を示す。自動培養装置10の制御システムは、データや指示を入力するためのキーボード、マウス等の入力部81と、自動培養装置10内の制御対象機器の各動作を制御する制御部82と、制御の状況をユーザに示す表示部80と、制御部82が各動作を制御するためのプログラムやパラメータ等を格納するROM85と、一時的にデータや処理結果を格納するRAM86と、キャッシュ等の動作を行うためのメモリ85と、ヒータ、ファン、二酸化炭素供給、水供給等の処理をおこない、それらのセンサによる細胞培養室13内の環境保持装置87と、細胞濃縮部16の環境を制御する細胞濃縮部環境制御88、培地保管部14の環境を制御する培地保管部環境制御89を備えている。なお、制御部82は、コンピュータの中央処理部(Central Processing Unit:CPU)等で実現可能であることは言うまでもない。
【0053】
ユーザが入力部81や通信部84から処理するべき培養工程を指示すると、制御部82は、ROM85に格納された培養準備プログラムに従って、初期値出し等に関係する一次培養容器部20や二次培養容器部21の駆動機構91やチューブポンプ30や電磁弁等を備える、給排部として機能するポンプ部31などの制御対象機器90の制御をおこない、流路40の設置を、表示部80を用いてユーザ等に通知し、ユーザはその設置を検知することができる。
【0054】
そして、制御部82は、ROM85に格納された自動培養プログラムに従って、一次培養容器部20の揺動機構制御や、二次培養容器部21の揺動機構制御等の駆動機構91の制御、並びに送液機構であるチューブポンプ30や電磁弁等を含む給排部、すなわちポンプ部31の制御を行い、流路を流れる細胞及び培地の量等を制御し、細胞培養処理を実施する。随時、表示部80と通信部84でその処理状況をユーザに示すことができる。細胞培養処理が終了したら、表示部80と通信部84等を用いて終了をユーザに示し、制御部82は、ROM85に格納された終了プログラムに従い、終了処理をおこなう。
【0055】
以上説明した実施例1により、送液機構であるチューブポンプの前方、後方、両方に分岐部を設けることで、ポンプ1つ辺りの送液量を増加させることができる。その結果、無菌性を保持しながら、細胞へのダメージを最小にしつつ送液量を最大化し、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【実施例2】
【0056】
実施例2として、送液と吸引を同時に可能とする送液機構であるチューブポンプを利用する自動培養装置の実施例を説明する。なお、実施例2の説明においては、実施例1の自動培養装置の構成と相違する部分についてのみ説明し、共通する部分、例えば
図7、
図8等を用いて説明した全体動作等の説明は省略する。
【0057】
図4C、及び
図4Dは、本実施例のチューブポンプ30の回転軸34の上下、すなわち回転軸34の両側にチューブ41を配置した概略構成図である。また、
図4Eはチューブポンプ30の回転軸34の上下、すなわち回転軸34の両側にチューブ41をセットした流路40の配置の一例を示した概略構成図である。
【0058】
本実施例の構成にあっては、複数の第2流路は複数のチューブで構成され、送液機構は、同一回転軸で同期して駆動される複数のローダーを備えるチューブポンプを含み、この複数のローダーは、回転軸を挟んでその両側に設置される一対のローダーで構成され、一対のローダーの一方に、培地保管部から培養容器に培地を送液するチューブを設置し、他方に、培養容器から培地保管部に培地を送液するチューブを設置することにより、以下に説明する細胞培養装置の同時送液を実現する。
【0059】
<チューブポンプの同時送液方法>
図4C、
図4D、および
図4Eを用いて、送液59と吸引60を同時に可能とする送液機構のベリタスポンプの構成の一例について説明する。なお、
図4C、
図4Dはチューブポンプ30のローダー部分の断面図を示している。この断面図は、実施例1に示した複数のローダー35に対応する断面を示す。本実施例においても、複数のローダーが一つの回転軸を共通にして設置され、その中心に円柱状の回転軸34がある。
図4C、
図4Dの断面図の上下に示すように、複数のローダーは一対となる上部ローダー50と下部ローダー51で構成される。
【0060】
図4Cに示すように、チューブ設置前は、回転軸34の上下、すなわち回転軸34の両側にチューブ41を入れることが可能な構成を有している。レバー52を
図4Cに示す状態から
図4Dに示す状態に動かすことで、図示を省略した機構により上部ローダー50と下部ローダー51が回転軸34に向かって動き、上部ローダー50と下部ローダー51それぞれと、回転軸34の表面に形成された突起状のチューブ押し53の間のチューブ41に対応するチューブ59、60を押し付ける。また、チューブ止め54がチューブ41自身の位置を固定する。
【0061】
図4Dのように、回転軸34が回転方向42に回転すると、上部ローダー50側のチューブ59は送液方向55に送液が可能になる。逆に、下部ローダー51側のチューブ60は吸引方向56へ送液が可能になる。レバー52を元の状態に戻せば、
図4Cの状態となり、注入側チューブ59及び吸引側チューブ60はそれぞれ上部ローダー50、下部ローダー51から外すことができる。実施例1で使用したチューブポンプ30は上部ローダー50のみで下部ローダー51は存在しない。なお、本実施例の構成のチューブポンプでも、
図4C、
図4Dに示す上部ローダー50のみにチューブ41、すなわちチューブ59を設置することで、実施例1のチューブポンプ30と同等の使用が可能になることは言うまでもない。
【0062】
図4Eに、
図4Bに示した出力側の一つの培養容器39へ一つのチューブを接続した構成に、
図4C及び
図4Dで説明したチューブポンプ機構を適応した一例を示した。同図において、複数のローダーを備えたチューブポンプの回転軸が回転方向42に回転すると、注入側チューブ59および吸引側チューブ60において、それぞれ送液方向55と吸引方向56に送液される。送液された体積が注入口43から培養容器39に入ると、同じ体積を吸引口61より送液される。これにより、本実施例において、培養容器39内部の圧力の変化を最小化することが可能である。また、送液と吸引を同時に可能とすることで、スペースの最小化や流路の設置の容易化を可能にする。吸引側チューブ60では、入力57及び出力58の位置が送液の入力37及び出力38の逆となっている。
【0063】
以上詳述した本発明によれば、装置全体の省スペース化が可能になり、流路のポンプへの設置容易性が向上し、装置全体の小型化を図る細胞培養装置を提供することが可能となる。さらに、無菌性を保持しながら、細胞へのダメージを最小にしつつ送液量を最大化することが可能となる。
【0064】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されものではない。例えば、実施例2の説明において、一つの回転軸を共通とする複数のローダー各々が実施例2の構成を備えるチューブポンプの構成を説明したが、それ自身が複数のローダーとして機能する、一対の上部ローダー及び下部ローダーを備えるチューブポンプを利用することにより、送液と吸引を同時に可能とする送液機構を有する細胞培養装置を実現することができ、装置全体の省スペース化、流路のポンプへの設置容易性の向上を図ることができる。
【0065】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。例えば、実施例の説明においては、チューブポンプなどの送液機構、及びチューブ等の流路は、細胞及び培地などの液体を送液して流す場合を説明したが、液体の代わりに二酸化炭素や酸素などの気体を流す場合であっても、上述した各実施例は適用可能であり、その場合、送液機構は制御部の制御により、気体の量をコントロールする。
【0066】
更に、上述した各構成、機能、制御部等は、それらの一部又は全部を実現するCPUのプログラムを利用する例を説明したが、それらの一部又は全部を例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良いことは言うまでもない。