(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-1125(P2015-1125A)
(43)【公開日】2015年1月5日
(54)【発明の名称】津波避難タワー併設型シェルター
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20141202BHJP
E04H 12/00 20060101ALI20141202BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04H12/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-127041(P2013-127041)
(22)【出願日】2013年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】513044496
【氏名又は名称】株式会社CNT
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 昭
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AB21
2E139AB22
(57)【要約】
【課題】より容易に避難できる津波避難施設をより低コストで提供する。
【解決手段】複数の支柱によって構築された津波避難タワーの設置箇所の直下又はその周辺に設置された避難用シェルターであって、(1)シェルターの室内を換気するための室内通気口が1又は2以上設けられ、(2)室内通気口に通じる換気手段を有し、(3)前記換気手段として、a)少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した中空状支柱を前記複数の支柱の少なくとも1つとして用いる方法及びb)記複数の支柱とは別途に、少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した通気管であって、津波避難タワーに支持されている通気管を用いる方法の少なくとも一方を採用する、ことを特徴とする津波避難タワー併設型シェルターに係る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱によって構築された津波避難タワーの設置箇所の直下又はその周辺に設置された避難用シェルターであって、
(1)シェルターの室内を換気するための室内通気口が1又は2以上設けられ、
(2)室内通気口に通じる換気手段を有し、
(3)前記換気手段として、
a)少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した中空状支柱を前記複数の支柱の少なくとも1つとして用いる方法及び
b)記複数の支柱とは別途に、少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した通気管であって、津波避難タワーに支持されている通気管を用いる方法
の少なくとも一方を採用する、
ことを特徴とする津波避難タワー併設型シェルター。
【請求項2】
前記通気管の一部又は全部が前記中空状支柱の内部空間に挿通されている、請求項1に記載の津波避難タワー併設型シェルター。
【請求項3】
室内通気口を2以上設置し、通気手段を2以上設置することによって、シェルターの室内の空気を循環させる、請求項1又は2に記載の津波避難タワー併設型シェルター。
【請求項4】
通気手段に雨除け手段が設置されている、請求項1〜3のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
【請求項5】
通気手段に空気清浄用フィルターが設置されている、請求項1〜4のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
【請求項6】
津波避難タワー又は通気管の高所に太陽電池が設置されており、前記太陽電池の電力により吸気及び排気の少なくとも一方を行う強制吸排気手段を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
【請求項7】
シェルターの一部又は全部が、津波避難タワーの設置箇所の直下又はその周辺の地下に埋設されている、請求項1〜6のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
【請求項8】
シェルターがFRP製である、請求項1〜7のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
【請求項9】
少なくとも1つの室内通気口及びそれに通じる換気手段を人員出口用通路とする、請求項1〜8のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波避難タワー併設型シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
海底地震等に起因する津波に対する方策として、海岸付近により高い防潮堤を建設する一方で、さらなる安全を期するために効果的な避難方法が検討されている。近隣に高台、高層ビル・マンションがある地域では、それらの高い場所に避難することが可能であるが、そのような適当な高い場所が存在しない場合、津波避難タワーを設置する方法が提案されている。
【0003】
例えば、複数本の下部内側支柱の上側に上部支柱を配すとともに下部内側支柱の外周囲に下部外側支柱を配し、これらの支柱を梁で連結するとともに、前記上部内側支柱の上部に避難ステージを構築し、地盤から前記避難ステージに昇り降りするための登降手段を備えて全体として高伸タワー型とした津波避難装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また例えば、地盤上に複数本設置された金属製支柱同士を横枠で連結してなる構造体は、道路に交差する方向に跨って設けられ、その構造体に、予想津波高さ以上の位置において避難が予想される人員を収容し得る面積を有する床面と、その床面の周囲端部の安全柵とを設けるとともに、前記支柱、横枠及び床面は、それぞれ直下の車道上に道路建築限界に相当する空間を確保し得る位置に設けられ、前記地盤から床面に至る昇降設備を設けるとともに、前記床面3上に、避難時に活用するための避難用設備を設けた津波避難用タワーが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−14112
【特許文献2】特開2008−14131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来の津波避難装置又は津波避難用タワー(以下、これらを「津波避難タワー」を総称する。)は、近隣に高い場所がない場合は避難手段としてある程度は効果的であるものの、より安全性を高めようとすれば、津波避難タワーをより高層化する必要が生じる。例えば、近い将来に到来すると予測されている南海トラフ地震による津波は太平洋沿岸部で最大34mの高さの津波が予想されていることから、その高さよりも高い津波避難タワーを建設する必要が生じる。このような高い津波避難タワーの建設は、建設費用が高くなるだけでなく、相応の広さの建設用地が必要となって設置場所の制限を受けることにもなりかねない。しかも、例えば老人、乳幼児、身体の不自由な人たちにとって短時間で高い津波避難タワーに昇りきることは大きな負担となることから、実際問題として極端に高い津波避難タワーはほとんど役に立たないおそれがある。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、より容易に避難できる津波避難施設をより低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、津波避難タワーに特定の構造を有するシェルターを併設することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の津波避難タワー併設型シェルターに係る。
1. 複数の支柱によって構築された津波避難タワーの設置箇所の直下又はその周辺に設置された避難用シェルターであって、
(1)シェルターの室内を換気するための室内通気口が1又は2以上設けられ、
(2)室内通気口に通じる換気手段を有し、
(3)前記換気手段として、
a)少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した中空状支柱を前記複数の支柱の少なくとも1つとして用いる方法及び
b)前記複数の支柱とは別途に、少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した通気管であって、津波避難タワーに支持されている通気管を用いる方法
の少なくとも一方を採用する、
ことを特徴とする津波避難タワー併設型シェルター。
2. 前記通気管の一部又は全部が前記中空状支柱の内部空間に挿通されている、前記項1に記載の津波避難タワー併設型シェルター。
3. 室内通気口を2以上設置し、通気手段を2以上設置することによって、シェルターの室内の空気を循環させる、前記項1又は2に記載の津波避難タワー併設型シェルター。
4. 通気手段に雨除け手段が設置されている、前記項1〜3のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
5. 通気手段に空気清浄用フィルターが設置されている、前記項1〜4のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
6. 津波避難タワー又は通気管の高所に太陽電池が設置されており、前記太陽電池の電力により吸気及び排気の少なくとも一方を行う強制吸排気手段を有する、前記項1〜5のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
7. シェルターの一部又は全部が、津波避難タワーの設置箇所の直下又はその周辺の地下に埋設されている、前記項1〜6のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
8. シェルターがFRP製である、前記項1〜7のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
9. 少なくとも1つの室内通気口及びそれに通じる換気手段を人員出口用通路とする、前記項1〜8のいずれかに記載の津波避難タワー併設型シェルター。
【発明の効果】
【0010】
本発明の津波避難タワー併設型シェルターは、換気手段として津波避難タワーの一部を利用することによって、より安全で効果的な換気システムを比較的底コストで提供することができる。すなわち、特に津波避難タワーの支柱の強度・高さを有効利用することによって、シェルターの室内の換気(吸気・排気)を効率的に行うことができる。また、換気手段として津波避難タワーの一部を利用できるので、既設の津波避難タワーに併設するかたちでシェルターを埋設すれば、本発明の津波避難タワー併設型シェルターを提供することが可能となる。このため、津波避難タワーとシェルターとを同時に設置する必要はなく、予算等に応じて順に設置することもできる。
【0011】
また、本発明では、少なくとも1つの室内通気口及びそれに通じる換気手段を人員出口用通路とする場合には、当該通路を避難者の脱出・救出に利用することができる。すなわち、津波が去った後において浸水状態が続いている場合であっても、シェルターの室内からいち早く脱出・救出することができる。
【0012】
このような特徴をもつ本発明の津波避難タワー併設型シェルターでは、津波時において、津波避難タワーに避難できるとともに、津波避難タワーに短時間で昇れない者はシェルターに避難すれば良いので、より安全な避難施設として意義あるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の津波避難タワー併設型シェルターの一例を示す図である。
【
図2】本発明の津波避難タワー併設型シェルターの一例を示す図である。
【
図3】本発明の津波避難タワー併設型シェルターの一例を示す図である。
【
図4】本発明の津波避難タワー併設型シェルターの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の津波避難タワー併設型シェルターは、複数の支柱によって構築された津波避難タワーの設置箇所の直下又はその周辺に設置された避難用シェルターであって、
(1)シェルターの室内を換気するための室内通気口が1又は2以上設けられ、
(2)室内通気口に通じる換気手段を有し、
(3)前記換気手段として、
a)少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した中空状支柱を前記複数の支柱の少なくとも1つとして用いる方法及び
b)記複数の支柱とは別途に、少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した通気管であって、津波避難タワーに支持されている通気管を用いる方法
の少なくとも一方を採用する、
ことを特徴とする。以下、本発明の津波避難タワー併設型シェルターの実施の形態について、図面を示しながら説明する。
【0015】
図1には、本発明の津波避難タワー併設型シェルター10の概要を示す。まず、津波避難タワー併設型シェルター10は、基本的には津波避難タワー11及びシェルター21(
図1では地下シェルター)により構成される。
【0016】
津波避難タワー11自体の構成・構造は特に限定されず、公知又は市販のものを使用することもできる。従って、既設の津波避難タワーをそのまま利用することもできる。
図1に示す津波避難タワー11では、一部が所定の深さまで地中に杭打ちされた支柱13a、13bを含む4本の支柱を用い、2階床14a、3階床14bがそれぞれ支柱に固定され、各階への昇降用階段15a、15bが設置されている。
図1の津波避難タワー11は開放型であり、特に窓及び壁は設けられていないが、例えば密閉型、半開放型等であっても良い。
【0017】
シェルター21は、避難者が避難するための避難所として機能するものであるが、その他の目的(例えば休憩、会合、雨除け等)で使用することも可能である。シェルター21は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)製の密閉室の一部又は全部を地中に埋設することによって好適に設置することができる。
図1では、シェルター21は、FRP(繊維強化プラスチック)製の密閉室のほぼ全部が地中に設置されているが、例えば
図4に示すような半地下となっていても良い。また、FRP製シェルターのほかにも、地中を掘削して形成された窪地の壁面をコンクリート等を打設して構築された地下シェルター、地上にコンクリート等で構築された地上シェルター等も採用することができる。本発明では、工事が比較的容易であり、またプラスチックのフレキシブル性により地震等の揺れにも強く、耐水性ないしは水密性(外部からの水の侵入を阻止する性能)も高いことから、FRP製シェルターを採用することが特に望ましい。FRP製シェルターは、例えば内部空間を有する大型容器をFRPにより一体的に成形することによって提供することができ、公知又は市販のものを使用することもできる。
図1の地下シェルターは、ハッチ部23が設けられており、そこから人や物の搬入・搬出を行うことができる。必要に応じて、ハッチ部23からシェルター21の室内に入るための階段、スライダー、はしご、スロープ(いずれも図示せず)等を適宜設けることもできる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0018】
図1では、シェルター21の室内を換気するための室内通気口22a、22bの合計2が設けられている。室内通気口の設置数、設置場所、大きさ等は、例えばシェルターの設置場所、地下シェルターの収容人員数、津波避難タワーの支柱の配置場所等に応じて適宜決定することができる。本発明では、吸気・排気を効果的に行うことによりシェルター室内の空気を効率的に循環させるために、室内通気口は2つ設置されることが望ましい。
【0019】
本発明の津波避難タワー併設型シェルターでは、室内通気口に通じる換気手段を有している。その換気手段としては、2つの方法があり、いずれか一方あるいは両者を採用することができる。より具体的には、a)少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した中空状支柱を前記複数の支柱の少なくとも1つとして用いる方法及びb)前記複数の支柱とは別途に、少なくとも室内通気口から高所まで内部空間が連通した通気管であって、津波避難タワーに支持されている通気管を用いる方法の少なくとも1つの手段を採用することができる。すなわち、本発明では、津波避難タワーという構造物の一部を利用することによって、効果的な換気システムを実現することができる。
【0020】
図1では、換気手段として、前記a)の方法を採用した例を示している。
図1の津波避難タワーでは4本の支柱が用いられているが、そのうちの支柱13a、13bとしては室内通気口(地中)から高所(支柱頂上の開口部)まで内部空間が連通した中空状支柱を用いる。この内部空間を介して吸気・排気を行うことができる。中空状支柱は公知又は市販のものを採用することができ、特に限定されない。本発明では、例えば圧力配管用炭素鋼管(いわゆるスケジュール管(STPG管))等を中空状支柱として好適に用いることができる。
【0021】
中空状支柱13a、13bは、一端(頂上部)が大気中に開放されている一方、他端はそれぞれ室内通気口22a、22bに連結されているので、シェルター21(その地上)が水没したとしても、シェルター21の室内の空気を効果的に入れ換えすることができる。特に、
図1のように、複数の通気口に対応してそれぞれ独立した換気手段である中空状支柱13a、13bが採用されているので、一方が吸気用として機能し、他方が排気用として機能することから、より効果的な換気を実現することができる。
【0022】
別の換気手段として、
図2には前記b)の方法を採用した例を示す。
図2では、前記複数の支柱とは別途に、室内通気口(地中)から高所まで内部空間が連通した通気管16を用いている。通気管16は、津波避難タワー(建築構造体)に支持されている。例えば、津波避難タワーの支柱、床等のいずれの部位・部材で通気管を支持しても良い。
図2においては、通気管16は、津波避難タワー11に設置されている2階床14a、3階床14b等に固定されている。通気管16も、一端(頂上部)が開放されている一方、他端はそれぞれ室内通気口22cに連結・固定されているので、シェルター21が水没したとしても、シェルター21の室内の空気を効果的に入れ換えすることができる。
【0023】
図2のような構成に関し、本発明では、少なくとも1つの室内通気口及びそれに通じる換気手段を人員出口用通路とすることもできる。これにより、津波が引いた後、なお浸水状態がしばらく続いたとしても、シェルター内の避難者の脱出又は救出に前記通路を利用することができる。例えば、
図2では、地下シェルター室内と直線状につながっている室内通気口22c及び通気管16を人員出口用通路として好適に利用することができる。この場合、人員出口用通路の内径は大人が通れるサイズとすれば良く、例えば70〜150cm程度の範囲内とすれば良い。このような大径とすることにより、採光の役割を果たすこともできるので、避難者が受ける圧迫感を緩和することもできる。また、シェルターの室内にいる避難者を救出する場合は例えば上方の開放部からロープ等で引き上げれば良いが、避難者が自力で脱出できるように人員出口用通路内にはしご等を設置しても良い。
【0024】
その他の換気手段として、さらに、前記a)及びb)を併用した構成も採用することができる。例えば、
図3に示すように、通気管16を中空状支柱13bの内部空間に挿入し、通気管16の頂上部を中空状支柱13bの頂上部から突出させる一方、通気管16の他端をシェルター21の室内通気口22bに接続することによって、通気管16を介してシェルター21の室内の換気を行うことができる。このような構成を採用することによって、何らかの理由で中空状支柱内に水(海水)等が侵入したような場合であっても、換気手段をなお維持することができるという点で有効である。
【0025】
本発明では、いずれの換気手段において、平常時においても雨水の浸入を抑制ないしは防止するために、必要に応じて雨除け手段を講じておいても良い。例えば、換気手段(例えば中空状支柱13a、13bあるいは通気管16の高所の頂上の開口部又はその付近)に公知又は市販の雨除けカバーを設置したり、あるいは中空状支柱の頂上部の先端を水平又はそれより下方に屈曲させる方法を採用すれば良い。
【0026】
また、必要に応じて換気手段に太陽電池を設置し、前記太陽電池の電力により吸気及び排気の少なくとも一方を行う強制吸排気手段を採用することもできる。これにより、通常の電力(ライフライン)が断たれた場合でも、太陽エネルギーを活用して吸排気を効果的に行うことができる。もちろん、手動式送風装置を備えることもできる。また、簡易な発電機を設置することによって、電力供給(例えば照明用、換気用、通信用等)を行うことも可能である。
【0027】
さらに、必要に応じて換気手段に空気清浄用フィルターを設置することもできる。例えば、中空状支柱13a、13bあるいは通気管16の高所の頂上の開口部又はその付近に空気清浄用フィルターを取り付けることにより、大気中の粉塵等を除去したかたちで空気をシェルター21の室内に導入することができる。空気清浄用フィルター自体は、公知のもの又は市販品を使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0029】
実施例1
図4には、本発明の津波避難タワー併設型シェルターの設置例(一部は断面図)を示す。
図4の津波避難タワー併設型シェルターは、鋼管からなる支柱13a、13b、13c、13d(支柱13aは省略)の4本によって構築された3階建ての津波避難タワーの設置箇所の直下にFRP製シェルター21が設置されている。
図4に示すように、シェルター21は半地下となっており、地上より上の部分はコンクリートにより覆われている。シェルター21の大きさは、およそ長さ8〜10m×幅2.3〜2.9m×高さ2.3mの範囲で設計されている。各階には、落下防止柵付きの2階床14a、3階床14bが設置されており、それぞれ階段(図示せず)でつながっている。各階の広さは約5m×10mとなっており、2階床と3階床との高さの間隔は3〜4m程度となるように設計されており、最上階(3階床)は予想最大津波浸水深から見積もって7〜10m程度とする。なお、津波避難タワー併設型シェルターは、津波による抵抗を最小限に抑えるため、その津波避難タワーの各床を長方形とし、その長尺方向と津波の予想進行方向とがほぼ平行になるように配置されている。
【0030】
シェルター21は、ハッチ23が設けられており、そこから人や物の搬入・搬出が行われる。一方、地下シェルター上方の室内通気口(図示せず)及び通気管16cが人員出口用通路として設置されている。人員出口用通路は、断面が円形であり、その直径(内径)は約70〜90cmとなっており、その頂上部付近にはリフト用クレーンが設置されており、手動又は自動でロープ(又はワイヤー)によって避難者を各階まで引き上げることができるようになっている。
図4に示すように、地下シェルターの室内から人員出口用通路を介して実質的に一直線で出口(頂上の開口部)までつながっていれば、リフト用クレーン40での引き上げが容易となるので好ましい。
【0031】
また、地下シェルター21には、2つの室内通気口(そのうち1つは地下シェルター後方に設置)が設けられ、それぞれ通気管16a、16bに通じている。いずれの支柱も中空状支柱であるスケジュール管(鋼管、外径約900mm、内径約885mm、地上長さ約7〜9m)が使用されており、そのうち支柱13b、13dの内部空間に通気管16b、16dが挿入されており、高所(頂上)で通気管16b、16dの先端部が大気中に露出した状態となっている。
図4に示すように、通気管16b、16dの頂上の開口部には、傘状の雨除けカバー41がそれぞれ設置されている。前記の支柱は、公知の工法に従って岩盤域に達するように地中深さ10m以上まで杭打ちされている。
【0032】
このような施設を構築することによって、例えば津波のおそれがある地震が起きた際には、津波避難タワーと地下シェルターの双方に避難することができる。特に、地下シェルターは、津波避難タワーに昇ることに比べ、低労力かつ迅速に避難することができる。しかも、地下シェルターは、温度が比較的安定している。また、地下シェルターの上方には、津波避難タワーに避難した人がいるので、地下シェルターに避難した人の存在を他人に知らせたり、避難している人たちの救助を行うこともできる。このことから、津波避難タワーに併設された地下シェルターは、例えば老人、乳幼児等の弱者の安全を確保する上において有効な手段となり得る。