特開2015-112565(P2015-112565A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-112565(P2015-112565A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】積層塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20150526BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20150526BHJP
   C09D 123/28 20060101ALI20150526BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20150526BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20150526BHJP
   C09D 161/28 20060101ALI20150526BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150526BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20150526BHJP
【FI】
   B05D1/36 B
   B05D5/06 101A
   C09D123/28
   C09D167/00
   C09D133/00
   C09D161/28
   C09D7/12
   C09D5/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-257768(P2013-257768)
(22)【出願日】2013年12月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】木口 忠広
(72)【発明者】
【氏名】山口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】崎坂 和史
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AE06
4D075BB24Z
4D075BB26Z
4D075CA13
4D075CA32
4D075CA38
4D075CB05
4D075DA06
4D075DB31
4D075DB36
4D075DB37
4D075DB43
4D075DB48
4D075DC13
4D075EA14
4D075EA19
4D075EA21
4D075EA43
4D075EB12
4D075EB22
4D075EB32
4D075EB35
4D075EB37
4D075EB43
4D075EB52
4D075EB53
4D075EB55
4D075EC08
4D075EC23
4D075EC37
4D075EC47
4J038CB052
4J038CB062
4J038CB171
4J038CG001
4J038DA161
4J038DD001
4J038DG262
4J038GA03
4J038HA026
4J038HA066
4J038HA166
4J038HA266
4J038HA526
4J038HA536
4J038JB16
4J038JB25
4J038KA08
4J038KA10
4J038KA12
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA04
4J038NA12
4J038PA06
4J038PA07
4J038PB07
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】低温焼付条件においてもプラスチック基材の表面に、基材との付着性、耐ガソホール性、耐候性、耐湿性及び光輝性に優れた積層塗膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】(1)プラスチック基材の表面に、所定の塩素化ポリオレフィン樹脂を所定の含有量で含む下塗り塗料を塗装して下塗り層を形成する工程、(2)前記下塗り層の上に、所定の水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の水酸基含有樹脂と、メラミン樹脂と、光輝性顔料とを含む中塗り塗料を、ウエットオンウエットで塗装して中塗り層を形成する工程、(3)所定の前記中塗り層の上に、水酸基含有アクリル樹脂及びイソシアネート化合物を含む上塗り塗料を、ウエットオンウエットで塗装して上塗り層を形成する工程、及び(4)前記形成した下塗り層、中塗り層及び上塗り層を同時に加熱乾燥して硬化させる工程を含む積層塗膜の形成方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)プラスチック基材の表面に、塩素化ポリオレフィン樹脂を含む下塗り塗料を塗装して下塗り層を形成する工程、
(2)前記下塗り層の上に、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の水酸基含有樹脂と、メラミン樹脂と、光輝性顔料とを含む中塗り塗料を、ウエットオンウエットで塗装して中塗り層を形成する工程、
(3)前記中塗り層の上に、水酸基含有アクリル樹脂及びイソシアネート化合物を含む上塗り塗料を、ウエットオンウエットで塗装して上塗り層を形成する工程、及び
(4)前記形成した下塗り層、中塗り層及び上塗り層を同時に加熱乾燥して硬化させる工程
を含む積層塗膜の形成方法であって、
前記工程(1)の下塗り塗料に含まれる塩素化ポリオレフィン樹脂は、結晶融点が65〜80℃であると共に、当該下塗り塗料の固形分中に30質量%以上100質量%以下の範囲で含有され、
前記工程(2)の中塗り塗料に含まれる水酸基含有樹脂は、水酸基価が60〜200mgKOH/gであると共に、重量平均分子量が5000〜15000であり、
前記工程(3)の上塗り塗料に含まれる水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基価が90〜150mgKOH/gであると共に、重量平均分子量が5000〜15000であることを特徴とする積層塗膜の形成方法。
【請求項2】
前記工程(2)における中塗り塗料に含まれる水酸基含有樹脂とメラミン樹脂との配合比率が、質量比で90/10〜70/30であることを特徴とする請求項1記載の積層塗膜の形成方法。
【請求項3】
前記工程(2)の中塗り塗料には、更に、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はエチレン・アクリル酸共重合体のいずれか一方の共重合体を少なくとも含む共重合体ワックスディスパージョンが含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層塗膜の形成方法。
【請求項4】
前記工程(2)の中塗り塗料に含まれる光輝性顔料は、形状が鱗片状であるアルミフレーク顔料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層塗膜の形成方法。
【請求項5】
前記工程(2)の中塗り塗料における揮発性有機化合物(VOC)の排出量が、塗装時において570g/l未満であり、また、前記工程(3)の上塗り塗料における揮発性有機化合物(VOC)の排出量が、塗装時において520g/l未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層塗膜の形成方法。
【請求項6】
前記工程(4)における加熱乾燥の温度が、70〜90℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材の表面に、基材との付着性、耐ガソホール性、耐候性、耐湿性及び光輝性に優れた積層塗膜を形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の自動車部材については、金属光沢感や金属調意匠性を付与して高級感を与えるなどの目的で、メタリック塗装を施す場合がある。一般的なメタリック塗装方法としては、従来から、プライマー塗料(下塗り塗料)、ベースコート塗料、光輝材を含有するメタリック塗料、クリヤー塗料などを順次複層塗装し、この複層塗膜に同時に焼付を施す、いわゆる3コート1ベイク方式や4コート1ベイク方式による方法が知られており、塗膜を硬化させるための加熱工程が1回で済む点で好ましく一般的に採用されている。前記メタリック塗料としては、水性メタリック塗料を用いる方法と、溶剤型メタリック塗料を用いる方法とがあるが、水性塗料を用いる方法では塗装環境の温度や湿度を調整する必要があるため、前記溶剤型メタリック塗料を用いる方法に比べ、設備面やコスト面でも不利となる。
【0003】
一般に、プラスチック材料に用いられる塗料については、低温焼付で高性能の塗膜を形成することが求められ、更には、環境への負荷軽減のために、高固形分の塗料が使用される傾向にある。ここで、高固形分の塗料を調製する場合には、塗装時の塗料の粘度を適切に調整することが必要とされ、例えば、低粘度にしたい場合には塗料に含まれる樹脂の分子量を低くする方法が挙げられる。しかし、この方法を用いた場合には、低温焼付条件では硬化時間が長くなったり、十分な膜強度が得られないという問題が生じる。
【0004】
また、一般的に高固形分のメタリック塗料は、塗装時において光輝材の配向性が十分でないという問題もある。この問題を解決するため、例えば、特許文献1には、基材上に光輝材含有溶剤型第1ベースコート塗料(高固形分)、光輝材含有溶剤型第2ベースコート塗料(低固形分)、トップクリヤー塗料を塗装して、3コート1ベイクする方法が開示されているが、この方法では、光輝材含有溶剤型第1ベースコート塗料(高固形分)に固形分が50〜90質量%の割合でポリエステルポリカルボン酸を用いているものの、その数平均分子量は400〜3500であって比較的低分子量であることから、低温焼付時の成膜性が良好でなく、積層塗膜の耐湿性及び耐候性が十分に得られないことが懸念される。また、この特許文献1記載の方法では、上記の通り固形分の異なる2種類の光輝材含有塗料を用いる必要があり、塗装工程が煩雑となるため、好ましくないという別の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−240960号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況のもと、本発明者らは、高固形分の溶剤型メタリック塗料を用いる上で、塗装時の塗料の粘度を適切に調整しつつも、塗料中の光輝材の配向性を十分なものとし、また、低温焼付条件においても、従来の硬化時間で基材との付着性、耐ガソホール性、耐候性、耐湿性及び光輝性に優れた積層塗膜を形成できる方法について種々検討を行った結果、結晶融点を特定の範囲内とし、かつ含有量を所定の範囲内に設定した塩素化ポリオレフィン樹脂を含む下塗り塗料と、特定の水酸基価及び重量平均分子量を有する水酸基含有樹脂、メラミン樹脂及び光輝性顔料を含む中塗り塗料と、特定の水酸基価及び重量平均分子量を有する水酸基含有アクリル樹脂を含む上塗り塗料とを用いることにより、上記の点を全て満足できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
従って、本発明の目的は、低温焼付条件においても、硬化時間の短縮を図ることを可能としながらも、プラスチック基材の表面に、基材との付着性、耐ガソホール性、耐候性、耐湿性及び光輝性に優れた積層塗膜を形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)プラスチック基材の表面に、塩素化ポリオレフィン樹脂を含む下塗り塗料を塗装して下塗り層を形成する工程、
(2)前記下塗り層の上に、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の水酸基含有樹脂と、メラミン樹脂と、光輝性顔料とを含む中塗り塗料を、ウエットオンウエットで塗装して中塗り層を形成する工程、
(3)前記中塗り層の上に、水酸基含有アクリル樹脂およびイソシアネート化合物を含む上塗り塗料を、ウエットオンウエットで塗装して上塗り層を形成する工程、及び
(4)前記形成した下塗り層、中塗り層及び上塗り層を同時に加熱乾燥して硬化させる工程
を含む積層塗膜の形成方法であって、
前記工程(1)の下塗り塗料に含まれる塩素化ポリオレフィン樹脂は、結晶融点が65〜80℃であると共に、当該下塗り塗料の固形分中に30質量%以上100質量%以下の範囲で含有され、
前記工程(2)の中塗り塗料に含まれる水酸基含有樹脂は、水酸基価が60〜200mgKOH/gであると共に、重量平均分子量が5000〜15000であり、
前記工程(3)の上塗り塗料に含まれる水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基価が90〜150mgKOH/gであると共に、重量平均分子量が5000〜15000であることを特徴とする積層塗膜の形成方法である。
【0009】
本発明において、前記工程(2)の中塗り塗料に含まれる水酸基含有樹脂とメラミン樹脂との配合比率は、質量比で90/10〜70/30であることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、前記工程(2)の中塗り塗料には、更に、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はエチレン・アクリル酸共重合体のいずれか一方の共重合体を少なくとも含む共重合体ワックスディスパージョンが含まれることが好ましい。
【0011】
また、本発明において、前記工程(2)の中塗り塗料に含まれる光輝性顔料は、形状が鱗片状であるアルミフレーク顔料であることが好ましい。
【0012】
また、本発明において、前記工程(2)の中塗り塗料における揮発性有機化合物(VOC)の排出量は、塗装時において570g/l未満であることが好ましく、また、前記工程(3)の上塗り塗料における揮発性有機化合物(VOC)の排出量が、塗装時において520g/l未満であることが好ましい。
【0013】
更に、本発明において、前記工程(4)の加熱乾燥の温度は、70〜90℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、低温焼付条件においても、硬化時間の短縮を図ることを可能としながらも、プラスチック基材の表面に、基材との付着性、耐ガソホール性、耐候性、耐湿性及び光輝性に優れた積層塗膜を形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの記載に限定されるものではなく、以下の例示以外についても、本発明の主旨を損なわない範囲で適宜変更し得る。
【0016】
本発明の積層塗膜の形成方法は、(1)プラスチック基材の表面に、所定の塩素化ポリオレフィン樹脂を所定の含有量で含む下塗り塗料を塗装して下塗り層を形成する工程、(2)前記下塗り層の上に、所定の水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アクリル樹脂から選ばれる1種類以上の水酸基含有樹脂と、メラミン樹脂と、光輝性顔料とを含む中塗り塗料を、ウエットオンウエットで塗装して中塗り層を形成する工程、(3)所定の水酸基含有アクリル樹脂及びイソシアネート化合物を含む上塗り塗料を、ウエットオンウエットで塗装して上塗り層を形成する工程、及び(4)前記形成した下塗り層、中塗り層及び上塗り層を同時に硬化させる工程を含むものである。従って、例えば、1層の下塗り層、1層の中塗り層、1層の上塗り層で形成される積層塗膜については、3コート1ベーク方式での塗装方法となる。
【0017】
<プラスチック基材>
本発明で使用されるプラスチック基材としては、特に限定されず、塗装体の用途に応じて、様々な形状の基材を選択することができる。上記プラスチック基材としては、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、及びABS樹脂等が挙げられるが、とりわけ、価格が安く、成形性、耐薬品性、耐熱性、及び耐水性に優れ、良好な電気特性を有するプラスチック基材であるポリプロピレンが用いられる。
【0018】
<下塗り層>
本発明の積層塗膜を構成する下塗り層については、結晶融点が65〜80℃である塩素化ポリオレフィン樹脂を含む下塗り塗料を塗装することにより形成される。結晶融点が65℃未満であると、低温(80℃)乾燥後の積層塗膜の耐ガソホール性が十分でなく、結晶融点が80℃を超えると、中塗り塗膜との層間付着性が悪くなる。結晶融点は、一般的には示差走査熱量計(DSC)によって、測定することができる。
【0019】
このような結晶融点が65〜80℃である塩素化ポリオレフィン樹脂については、溶剤への溶解性の点から、マレイン酸又はアクリル樹脂により変性されていることが好ましい。特に、マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂とアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を60/40〜80/20の比率(質量部/質量部)で配合することがより好ましく、この場合、低温乾燥して塗膜を形成した場合においても、耐ガソホール性、及び基材と中塗り層との付着性が非常に優れる傾向がある。
また、この塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は50000〜80000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が50000未満であると、低温焼付条件において成膜性が悪くなる傾向があり、また、80000を超えると、溶剤への溶解性が悪くなる傾向があるため好ましくない。例えば、ハードレンM28、ハードレンF-6(以上、東洋紡社製商品名)、スーパークロン223M(日本製紙社製商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
特に、結晶融点が65〜80℃である塩素化ポリオレフィン樹脂を下塗り塗料の固形分中に30質量%以上100質量%以下の範囲で含むことにより、低温乾燥して塗膜を形成した場合においても、耐ガソホール性、及び基材と中塗り層との付着性が非常に優れる。ここで、本発明において「固形分」とは、各塗料を硬化した後に固形分として残る樹脂成分、顔料及びその他の添加剤等の全てのことを指す。
【0021】
また、本発明に使用される下塗り塗料は、静電塗装に適用するために、導電性を付与することも可能である。導電性を付与する方法としては、例えば、導電性カーボンブラック粒子又は導電性酸化チタン粒子を配合する方法等が挙げられる。
【0022】
更に、上記下塗り塗料は、顔料を含んでいても良い。顔料としては、着色顔料、体質顔料等が挙げられる。着色顔料は、公知の材料が使用でき、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等の無機顔料や、フタロシアニン系顔料及びアゾ系顔料等の有機顔料が挙げられる。また、体質顔料も、公知の材料が使用でき、例えば、タルク、マイカ、硫酸バリウム、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0023】
また、本発明に使用される下塗り塗料には、必要に応じて、添加剤(表面調整剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、光安定化剤又は紫外線吸収剤等)を適宜配合することができる。これら添加剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0024】
なお、環境負荷を低減する観点から、本発明に使用される下塗り塗料に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の排出量は、塗装時において820g/l未満であることが好ましい。
【0025】
また、下塗り塗料を塗装する際には、下塗り層の乾燥後の膜厚が5〜15μmになるように塗装することが好ましい。
【0026】
下塗り塗料を塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法(例えば、ディッピング法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等)が挙げられる。これらの中でも、膜厚の制御が容易であるとの観点から、スプレーコート法及びロールコート法が好ましい。
【0027】
<中塗り層>
本発明の積層塗膜を構成する中塗り層については、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の水酸基含有樹脂と、メラミン樹脂と、光輝性顔料とを含む中塗り塗料によって形成される。
【0028】
前記水酸基含有樹脂としては、形成される塗膜の耐久性の観点から、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有アクリル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂を含むことが好ましい。
【0029】
前記水酸基含有樹脂については、水酸基価が60〜200mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは、60〜150mgKOH/gである。水酸基価が60mgKOH/g未満であると、塗膜の層間付着性、耐ガソホール性が不十分となり、一方で、200mgKOH/gを超えると塗膜の耐水性、耐湿性が低下するため好ましくない。
【0030】
また、前記水酸基含有樹脂の重量平均分子量については、5000〜15000であることが好ましい。重量平均分子量をこの範囲に設定することにより、塗装性が良好な高固形分の中塗り塗料を調製することができる。水酸基含有樹脂の重量平均分子量が5000未満であると、塗膜の層間付着性、耐ガソホール性が不十分となる。一方、15000を超えると、中塗り塗料を塗装した際の光輝性顔料の配向が不良となり、良好な光輝性が得られない。また、塗装性が良好な高固形分の中塗り塗料を調製しにくいといった問題も生じる。
【0031】
前記水酸基含有ポリエステル樹脂としては、例えば、デスモフェン650、デスモフェン651、デスモフェン670、デスモフェン680(以上、住化バイエル社製商品名)、Setal1606(Nuplex社製商品名)などが挙げられる。
【0032】
前記水酸基含有アクリル樹脂については、例えば、アクリディックA859D(DIC社製商品名)、Setalux1202、Setalux1903、Setalux1909、デスモフェンA665、デスモフェンHS1170(以上、Nuplex社製商品名)、HypomerFX2970、HypomerFX3270(以上、Elementis社製商品名)、Joncryl507、Joncryl901、Joncryl506(以上、BASF社製商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
前記メラミン樹脂については、90℃以下の低温でも硬化するものであれば、特に制限なく使用することができる。中でも、ブチル化メラミン樹脂を使用することが好ましい。
【0034】
このようなメラミン樹脂としては、例えば、メラン2000、メランM284A(以上、日立化成社製商品名)、ユーバン20SE-60、ユーバン22R、ユーバン225(以上、三井化学社製商品名)、ス−パーベッカミンL117、ス−パーベッカミンL127(以上、DIC社製商品名)などが挙げられる。
【0035】
前記水酸基含有樹脂と前記メラミン樹脂との配合比率については、質量比で、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂=90/10〜70/30に調整することが好ましい。この比率が90/10を超えると(すなわち、水酸基含有樹脂の比率が更に高くなると)、塗膜の耐水性、耐湿性が悪くなる傾向がある傾向があり、一方で、70/30未満であると(すなわち、水酸基含有樹脂の比率が更に低くなると)、上塗り塗膜との層間付着性が悪くなる傾向がある。
【0036】
前記光輝性顔料については、アルミフレーク顔料、干渉マイカ顔料、着色マイカ顔料、アルミナフレーク顔料などの公知のものが制限なく使用できるが、形状が鱗片状であるアルミフレーク顔料を用いることが、光輝感、金属調に優れた意匠性を提供できることから好ましい。また、耐薬品性の観点から、前記光輝性顔料の表面がアクリル系樹脂のような有機成分、またはコロイダルシリカなどの無機成分で表面処理されたものがより好ましい。
また、この光輝性顔料については、複数種類の光輝性顔料を組み合わせて用いることもできる。この場合は、少なくとも形状が鱗片状であるアルミフレーク顔料を含んでいることが、光輝感、金属調に優れた意匠性を提供できることから好ましい。
【0037】
前記光輝性顔料の配合量については、前記中塗り塗料の固形分中に、8〜12質量%含むことが好ましい。8質量%より少ない場合には、塗膜の光輝性が低下し、また、下地隠蔽性が低くなり外観不良を招く恐れがあり、一方で、12質量%を超えると、上塗り塗膜の付着性が悪くなる傾向があるため好ましくない。
【0038】
また、前記中塗り塗料については、塗装時における光輝性顔料の配向性、及び中塗り塗料の貯蔵安定性(光輝性顔料の沈降防止効果)を高めるため、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はエチレン・アクリル酸共重合体のいずれか一方の共重合体を少なくとも含む共重合体ワックスディスパージョンを添加することが好ましい。
【0039】
前記ワックスディスパージョンは、前記中塗り塗料に含まれる樹脂成分に対して、0.8〜1.6質量%含まれることが好ましい。0.8質量%より少ない場合には、塗膜中の光輝性顔料の配向不良が起きやすく、一方で、1.6質量%を超えると、光輝性顔料とワックスディスパージョンとが塗料内で凝集する傾向があるため好ましくない。
【0040】
更に、前記中塗り塗料は、光輝性顔料以外の顔料を含んでいても良い。光輝性顔料以外の顔料としては、着色顔料、体質顔料及びメタリック顔料等が挙げられ、塗膜の着色やツヤ、塗装作業性、塗膜の強度、物性等に応じて適宜選択して使用できる。着色顔料は、公知の材料が使用でき、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等の無機顔料や、フタロシアニン系顔料及びアゾ系顔料等の有機顔料が挙げられる。また、体質顔料も、公知の材料が使用でき、例えば、タルク、マイカ、硫酸バリウム、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0041】
また、前記中塗り塗料には、必要に応じて、添加剤(表面調整剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等)を適宜配合することができる。これら添加剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0042】
前記中塗り塗料については、環境負荷を低減する観点及び塗膜性能の観点から、高固形分の溶剤系塗料であることが好ましく、また、当該中塗り塗料に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の排出量が、塗装時において570g/l未満であることが好ましい。尚、揮発性有機化合物(VOC)の排出量を570g/l未満にするためには、塗料の不揮発分を43質量%以上に調整することが好ましい。
【0043】
また、中塗り塗料を塗装する際には、中塗り層の乾燥後の膜厚が10〜30μmになるように塗装することが好ましい。
【0044】
中塗り塗料を塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法(例えば、ディッピング法、静電塗装法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等)が挙げられる。これらの中でも、光輝性顔料による金属調意匠性の発現に有利であり、且つ、膜厚の制御が容易であるとの観点から、スプレーコート法が好ましい。
【0045】
また、本発明において、下塗り層の上に前記中塗り塗料を塗装する際には、下塗り層が硬化していないウエットな状態で連続して塗装する、いわゆるウエットオンウエット塗装で行うようにする。ウエットオンウエットで塗装することにより、乾燥工程の短縮が可能で、CO2の排出量を節減することができるので、環境負荷を低減する観点で好ましい。
【0046】
<上塗り塗料>
本発明の積層塗膜を構成する上塗り層は、水酸基含有アクリル樹脂及びイソシアネート化合物を含む上塗り塗料により形成される。この上塗り塗料は、2液型塗料であり、前記水酸基含有アクリル樹脂を含む主剤と前記イソシアネート化合物を含む硬化剤とから調製される。
【0047】
上塗り塗料における水酸基含有アクリル樹脂については、水酸基価が90〜150mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価を上記の範囲内とすることにより、上塗り塗料を塗装しても、中塗り層における光輝性顔料の配向性が損なわれにくく、かつ低温でも十分な耐湿性、耐候性のある塗膜を得られるので好ましい。
【0048】
また、上塗り塗料における水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量については、5000〜15000であることが好ましい。重量平均分子量をこの範囲に設定することにより、塗装性が良好な高固形分の上塗り塗料を調製することができる。水酸基含有樹脂の重量平均分子量が5000未満であると、塗膜の付着性、耐ガソホール性が不十分となる。一方、15000を超えると上塗り塗料の粘度が高くなるため、上塗り塗料を塗装した際に、先に塗装した中塗り塗膜の表面を荒らしてしまい、中塗り塗膜における光輝性顔料の配向が不良になるため好ましくない。
【0049】
前記水酸基含有アクリル樹脂については、例えば、アクリディックWCJ723、アクリディックHU908(以上、DIC社製商品名)、ダイヤナールLR2634、ダイヤナールLR2603、ダイヤナールLR2603(以上、三菱化学社製商品名)、ヒタロイドD1004B(日立化成)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
前記イソシアネート化合物としては、公知のものが制限なく使用でき、例えば、パソナートHI10(BASF),スミジュールN3300(住化バイエル),デユラネートTKA100(旭化成)、タケネートD170(三井化学)などが挙げられる。
【0051】
また、前記上塗り塗料には、必要に応じて、添加剤(表面調整剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等)を適宜配合することができる。これら添加剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0052】
前記上塗り塗料については、環境負荷を低減する観点及び塗膜性能の観点から、高固形分の溶剤型塗料であることが好ましく、また、当該上塗り塗料に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の排出量が、塗装時において520g/l未満であることが好ましい。尚、揮発性有機化合物(VOC)の排出量を520g/l未満にするためには、塗料の不揮発分を46質量%以上に調整することが好ましい。
【0053】
また、上塗り塗料を塗装する際には、上塗り層の乾燥後の膜厚が25〜35μmになるように塗装することが好ましい。
【0054】
上塗り塗料を塗布する方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法(例えば、ディッピング法、静電塗装法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等)が挙げられる。これらの中でも、膜厚の制御が容易であるとの観点から、スプレーコート法及びロールコート法が好ましい。
【0055】
また、本発明において、中塗り層の上に前記上塗り塗料を塗装する際には、中塗り層が硬化していないウエットな状態で連続して塗装する、いわゆるウエットオンウエット塗装で行うようにする。ウエットオンウエットで塗装することにより、乾燥工程の短縮が可能で、CO2の排出量を節減することができるので、環境負荷を低減する観点で好ましい。
【0056】
<塗装方法>
本発明の塗膜形成方法においては、以上のようにして形成された積層塗膜(下塗り層、中塗り層、上塗り層)に対して同時に焼付け(加熱乾燥)を行う。焼付条件については、70〜90℃で30〜60分乾燥することが好ましい。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下では、特に断りが無い限り、「質量部」を単に「部」と、「質量%」を単に「%」と記載することがあるものとする。
【0058】
1.下塗り塗料の調製
下記の表1に示すように、原料を混合、練合機にて練合ベースを作成し、得られた練合ベースに各原料を混合し、公知の手法により分散させ、下塗り塗料1〜3(下塗1〜3)を調製した。
【0059】
<塩素化ポリオレフィン樹脂>
ハードレンM28〔マレイン酸変性、結晶融点(Tm)=75℃、固形分 25質量%、東洋紡社製商品名〕
ハードレンF-2(マレイン酸変性、Tm=72℃、固形分 20質量%、東洋紡社製商品名)
スーパークロン223M(アクリル変性、Tm=75℃、固形分 35質量%、日本製紙ケミカル社製商品名)
ハードレン15LLP(Tm=56℃、固形分 20質量%、東洋紡社製商品名)
【0060】
<顔料>
ケッチェンブラックEC300J(導電性カーボンブラック、ライオン社製商品名)
【0061】
<湿潤分散剤>
BYK-220S(ポリカルボン酸ポリエステル系湿潤分散剤、ビッグケミージャパン社製商品名)
【0062】
<表面調整剤>
BYK344(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ビッグケミージャパン社製商品名)
【0063】
<沈降防止剤>
ミクロフラットJ26(ポリエチレンワックス、興洋化学社製商品名)
【0064】
【表1】
【0065】
2.中塗り塗料の調製
(2−1 水酸基含有ポリエステル樹脂の調製)
以下の<合成例1〜8>の手順に従い、水酸基含有ポリエステル樹脂を調製した。尚、水酸基価、加熱残分及び重量平均分子量を下記の方法で測定した。
<水酸基価>
樹脂固形分1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を定量した。
<加熱残分>
加熱残分は、約3グラムの樹脂溶液、前駆体溶液又は塗料をアルミカップに精秤し、これを105℃オーブンで60分間乾燥させ、次いで、残留物の質量を精秤し、元の質量に対する残留物の質量の割合を加熱残分(質量%)として求めた。
<重量平均分子量>
重量平均分子量の測定は、TSKgelカラム(東ソー(株)社製)を用い、RIを装備したGPC(東ソー(株)社製;HLC−8220GPC)により求めた。GPCの条件として、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行った。なお、TSK標準ポリスチレン(東ソー(株)社製)を標準物質として用いた。
【0066】
<合成例1>
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管等の備わった反応容器に、トリメチロールプロパン2.8部、ネオペンチルグリコール23.2部、無水フタル酸13.1部、イソフタル酸12.8部、アジピン酸9.5部、及びキシレン2部を入れ、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、240℃で反応混合物の樹脂酸価が18.1mgKOH/gになるまで反応を行った後、冷却した。次に、得られた反応混合物中にキシレン35部を入れ、混合して加熱残分59.6%、水酸基価66.1mgKOH/g、及び重量平均分子量9,800のポリエステル樹脂の樹脂溶液PE−1を得た。
組成を表2に示す。
【0067】
<合成例2>
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管等の備わった反応容器に、トリメチロールプロパン2.8部、ネオペンチルグリコール26.9部、無水フタル酸10.6部、イソフタル酸11.8部、アジピン酸9.3部、及びキシレン2部を入れ、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、240℃で反応混合物の樹脂酸価が9.9mgKOH/gになるまで反応を行った後、冷却した。次に、得られた反応混合物中にキシレン35部を入れ、混合して加熱残分60.5%、水酸基価178.7mgKOH/g、及び重量平均分子量10,500のポリエステル樹脂の樹脂溶液PE−2を得た。
組成を表2に示す。
【0068】
<合成例3>
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管等の備わった反応容器に、トリメチロールプロパン2.8部、ネオペンチルグリコール24.5部、無水フタル酸11.8部、イソフタル酸12.8部、アジピン酸9.5部、及びキシレン2部を入れ、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、240℃で反応混合物の樹脂酸価が12.5mgKOH/gになるまで反応を行った後、冷却した。次に、得られた反応混合物中にキシレン35部を入れ、混合して加熱残分59.7%、水酸基価103.8mgKOH/g、及び重量平均分子量5,900のポリエステル樹脂の樹脂溶液PE−3を得た。
組成を表2に示す。
【0069】
<合成例4>
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管等の備わった反応容器に、トリメチロールプロパン2.8部、ネオペンチルグリコール23.5部、無水フタル酸12.9部、イソフタル酸12.8部、アジピン酸9.5部、及びキシレン2部を入れ、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、240℃で反応混合物の樹脂酸価が9.4mgKOH/gになるまで反応を行った後、冷却した。次に、得られた反応混合物中にキシレン35部を入れ、混合して加熱残分59.9%、水酸基価66.1mgKOH/g、及び重量平均分子量13,100のポリエステル樹脂の樹脂溶液PE−4を得た。
組成を表2に示す。
【0070】
<合成例5>
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管等の備わった反応容器に、トリメチロールプロパン2.5部、ネオペンチルグリコール23.2部、無水フタル酸13.4部、イソフタル酸12.8部、アジピン酸9.5部、及びキシレン2部を入れ、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、240℃で反応混合物の樹脂酸価が21.3mgKOH/gになるまで反応を行った後、冷却した。次に、得られた反応混合物中にキシレン35部を入れ、混合して加熱残分60.1%、水酸基価58.1mgKOH/g、及び重量平均分子量10,300のポリエステル樹脂の樹脂溶液PE−5を得た。
組成を表2に示す。
【0071】
<合成例6>
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管等の備わった反応容器に、トリメチロールプロパン2.8部、ネオペンチルグリコール28.3部、無水フタル酸10.6部、イソフタル酸10.8部、アジピン酸8.9部、及びキシレン2部を入れ、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、240℃で反応混合物の樹脂酸価が8.3mgKOH/gになるまで反応を行った後、冷却した。次に、得られた反応混合物中にキシレン35部を入れ、混合して加熱残分59.7%、水酸基価220.6mgKOH/g、及び重量平均分子量9,600のポリエステル樹脂の樹脂溶液PE−6を得た。
組成を表2に示す。
【0072】
<合成例7>
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管等の備わった反応容器に、トリメチロールプロパン2.8部、ネオペンチルグリコール24.5部、無水フタル酸11.8部、イソフタル酸12.8部、アジピン酸9.5部、及びキシレン2部を入れ、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、240℃で反応混合物の樹脂酸価が16.3mgKOH/gになるまで反応を行った後、冷却した。次に、得られた反応混合物中にキシレン35部を入れ、混合して加熱残分59.9%、水酸基価107.5mgKOH/g、及び重量平均分子量4,100のポリエステル樹脂の樹脂溶液PE−7を得た。
組成を表2に示す。
【0073】
<合成例8>
攪拌機、温度計、還流冷却器、脱水装置及び窒素ガス導入管等の備わった反応容器に、トリメチロールプロパン2.8部、ネオペンチルグリコール24.5部、無水フタル酸11.8部、イソフタル酸12.8部、アジピン酸9.5部、及びキシレン2部を入れ、窒素雰囲気下で加熱攪拌し、240℃で反応混合物の樹脂酸価が7.0mgKOH/gになるまで反応を行った後、冷却した。次に、得られた反応混合物中にキシレン35部を入れ、混合して加熱残分60.6%、水酸基価98.6mgKOH/g、及び重量平均分子量16,800のポリエステル樹脂の樹脂溶液PE−8を得た。
組成を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
(2−2 水酸基含有アクリル樹脂の調製)
以下の<合成例9〜16>の手順に従い、水酸基含有アクリル樹脂を調製した。尚、水酸基価、加熱残分及び重量平均分子量を前述の方法で測定した。
<合成例9>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表3に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分59.8%のアクリル樹脂溶液AC−1を得た。AC−1に含まれるアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は10,300、水酸基価は72.5mgKOH/gであった。
組成を表3に示す。
【0076】
<合成例10>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表3に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分59.8%のアクリル樹脂溶液AC−2を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は10,100、水酸基価は174mgKOH/gであった。
組成を表3に示す。
【0077】
<合成例11>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表3に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分60.8%のアクリル樹脂溶液AC−3を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は7,200、水酸基価は107.5mgKOH/gであった。
組成を表3に示す。
【0078】
<合成例12>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表3に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分59.7%のアクリル樹脂溶液AC−4を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は12,500、水酸基価は127.4mgKOH/gであった。
組成を表3に示す。
【0079】
<合成例13>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表3に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分60.3%のアクリル樹脂溶液AC−5を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は6,800、水酸基価は46.6mgKOH/gであった。
組成を表3に示す。
【0080】
<合成例14>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表3に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分60.4%のアクリル樹脂溶液AC−6を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は9,800、水酸基価は217.5mgKOH/gであった。
組成を表3に示す。
【0081】
<合成例15>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表3に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分60.4%のアクリル樹脂溶液AC−7を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は4,500、水酸基価は70.7mgKOH/gであった。
組成を表3に示す。
【0082】
<合成例16>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表3に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分59.6%のアクリル樹脂溶液AC−8を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は17,700、水酸基価は102.5mgKOH/gであった。
組成を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
(2−3 中塗り塗料の調製)
下記の表4及び表5に示すように、各原料を混合し、公知の手法により分散させ、中塗り塗料1〜20を調製した。
水酸基含有樹脂以外の原料を以下に示す。
【0085】
<メラミン樹脂>
メランM284(イソブチルアルコール変性メラミン樹脂、日立化成工業社製商品名)
【0086】
<光輝性顔料>
TC2060(アルミペースト、固形分75%、東洋アルミニウム社製商品名)
【0087】
<共重合体ワックスディスパージョン>
CERATIX 8463(エチレン・酢酸ビニル共重合体及びエチレン・アクリル酸共重合体含有ワックスディスパージョン、ビッグケミージャパン社製商品名)
CERAFAK 103 (エチレン・アクリル酸共重合体ワックスディスパージョン、ビッグケミージャパン社製商品名)
CERATIX 8461 (エチレン・酢酸ビニル共重合体ワックスディスパージョン、ビッグケミージャパン社製商品名)
【0088】
<紫外線吸収剤>
TINUVIN384-2(BASF社製商品名)
【0089】
<光安定剤>
TINUVIN292(BASF社製商品名)
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
3.上塗り塗料の調製
(3−1 水酸基含有アクリル樹脂の調製)
アクリル樹脂溶液AC−3、AC−4、AC−7、AC−8については、上述したとおりの方法で調製した。尚、水酸基価、加熱残分及び重量平均分子量を上述の方法で測定した。
<合成例17>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表6に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分60.1%のアクリル樹脂溶液AC−9を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は12,100、水酸基価は101.9mgKOH/gであった。
組成を表6に示す。
【0093】
<合成例18>
攪拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記の表6に示すモノマー等の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、加熱残分59.8%のアクリル樹脂溶液AC−10を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は10,100、水酸基価は174mgKOH/gであった。
組成を表6に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
(3−2 上塗り塗料の調製)
下記の表7に示すように、各原料を混合し、公知の手法により分散させ、上塗り塗料1〜6(上塗1〜6)を調製した。
レオロジー調整剤、表面調整剤、ポリイソシアネートの原料を以下に示す。
【0096】
<レオロジー調整剤>
グランドール100S(アクリル−スチレン共重合体、DIC社製商品名)
【0097】
<表面調整剤>
BYK320(ビッグケミージャパン社製商品名)
【0098】
<ポリイソシアネート>
スミジュールN3300〔イソシアヌレート(NV100%,NCO%=21.6%)、住化バイエルウレタン社製商品名〕
【0099】
【表7】
【0100】
4.積層塗膜の形成
<実施例1〜20及び比較例1〜12>
まず、ポリプロピレン基材をイソプロパノールで洗浄したのちに乾燥し、次いで、この基材上に、表8〜11に記載の組み合わせに従って順次スプレー塗装した後、3コート1ベーク方式(乾燥条件は80℃×30分間を保持)により塗装して、実施例1〜20及び比較例1〜12に係る積層塗膜を形成した。
なお、下塗り層、中塗り層、上塗り層の乾燥後の膜厚は、それぞれ、10μm、15μm、30μmになるように塗装条件を調整した。
用いた塗料等を表8〜11に示す。
【0101】
5.積層塗膜の評価
<評価項目>
(i)塗料のVOC量
実施例1〜20及び比較例1〜12における下塗り塗料(下塗)、中塗り塗料(中塗)及び上塗り塗料(上塗)のそれぞれについて、下記の式(1)に示すように、不揮発分測定から得られる塗料中の揮発分(単位:質量%)に塗料の密度(単位:g/cm3)を掛け合わせることにより、塗装時のVOC量を算出した。
塗料のVOC量(g/l)=([揮発分]/100) × [塗料密度 (g/cm3)]×1000 ・・・式(1)
ただし、[揮発分]=100−[不揮発分](単位:質量%)である。
尚、不揮発分は、以下の方法で求めた。
すなわち、1.0gの下塗り塗料(下塗)、中塗り塗料(中塗)又は上塗り塗料(上塗)をアルミカップに精秤し、これを110℃オーブンで3時間乾燥させた。乾燥後、残留物の質量を精秤し、元の質量に対する残留物の質量の割合を不揮発分として求めた。
尚、上記不揮発分は塗料組成物に占める固形分を意味する。
用いた塗料等を表8〜11に示す。
【0102】
(ii)付着性(基材との付着性、層間付着性)
JIS K5600 5.6に準じ、作成した実施例1〜20及び比較例1〜12で得られた積層塗膜上に、カッターで切り込みをいれて、2mm角の碁盤目を100マス目作り、その上に粘着テープを貼り付けた後、強制的に剥離する試験を行い、下記の基準で評価した。
結果を表8〜11に示す。
○:試験後に塗膜の剥離が全く認められない。
△:試験後に塗膜層間部分より塗膜の剥離が認められる。
×:試験後に基材部分から塗膜の剥離が認められる。
【0103】
(iii)耐ガソホール性
実施例1〜20及び比較例1〜12で得られた積層塗膜の各試験片について、端面をカットした後、JIS K8101に規定されるエタノール10vol%と、レギュラーガソリン90vol%とを混合して調製した試験液中に20℃で密閉した状態で規定の時間浸漬し、その後、取り出し、直ちに液の状態および塗膜の膨れ、剥がれ、シワなどの発生、変色、光沢変化、著しい塗膜軟化などを観察した。
さらに、上記観察後の各試験片を20℃で24時間放置した後、試験部分にカッターで切り込みを入れて2mm角の碁盤目を25マス作り、その上に粘着テープを貼り付けた後、強制的に剥離する試験を行い、付着性を調べた。
結果を表8〜11に示す。
○:30分浸漬後の塗膜に膨れや剥がれなどの異常がなく、付着性にも異常がない。
△:30分浸漬後、僅かに塗膜の異常が見られるが、付着性には異常がない。
×:30分以内に塗膜の膨れや剥がれなどの異常が発生した。
【0104】
(iv)光輝性(目視)
実施例1〜20及び比較例1〜12で得られた積層塗膜を目視にて観察し、下記の基準に基づいて、塗膜表面の光輝性を評価した。
結果を表8〜11に示す。
◎:塗膜表面に光沢があり、光輝性顔料の配置にむらがなく、金属調の光輝感がある。
○:塗膜表面に光沢があり、光輝性顔料の配置にむらがないが、金属調の光輝感がやや劣る。
△:塗膜表面に光沢があるが、光輝性顔料の配置にむらがあり、金属調の光輝感がない。
×:塗膜表面に光沢がなく、光輝性顔料が均一でない。
【0105】
(v)耐湿性
実施例1〜20及び比較例1〜12で得られた積層塗膜について、JIS K5600-7-2.5に準じた試験方法で240時間試験後、上記(ii)の付着性試験を実施し、塗膜の外観と付着性について下記の基準で評価した。
結果を表8〜11に示す。
○:塗膜外観に異常はなく、付着性試験にも異常がない。
△:塗膜外観において僅かな光沢の減少が見られるが、付着性試験には異常がない。
×:塗膜外観にフクレ、ワレなどの著しい異常が見られるか、又は付着性試験において剥離が認められる。
【0106】
(vi)耐候性
実施例1〜20及び比較例1〜12で得られた積層塗膜について、サンシャインウェザオメーターにより1500時間の耐候性試験を行い、その耐候性を下記の基準に基づいて評価した。
結果を表8〜11に示す。
○:塗膜外観に変化はなく、光沢保持率が95%以上であり、かつ付着性試験にも異常がない。
△:塗膜外観において軽微な変化があり、光沢保持率が80〜95%未満であり、かつ付着性試験には異常がない。
×:塗膜外観の変化が著しく、光沢保持率が80%未満であるか、又は付着性試験で剥離が認められる。
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
【表10】
【0110】
【表11】