【解決手段】吸引機51と板材Wの加工領域Nとを接続する第1配管52を有し、第1配管52を介して加工領域Nで生じる加工屑を吸引する板材加工装置1であって、吸引機51による吸引を第1配管52と、第1配管52と異なる第2配管54とに切り替える切替装置53を備え、第2配管54は、板材Wの搬送経路及びその周辺領域Sまで吸引部54aを接続可能に形成される。
前記切替装置は、前記加工領域に対してメンテナンスを行う際に作業者が立ち入るメンテナンス領域に配置される請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の板材加工装置。
前記制御装置は、前記加工モードにおいて前記切替装置により前記第2配管に切り替えられた際、板材の加工停止またはアラームを発するように指示する請求項6記載の板材加工装置。
前記制御装置は、前記メンテナンスモードが設定された際に前記吸引機の駆動を停止させ、前記切替装置により前記第2配管に切り替えられたときに前記吸引機を駆動させる請求項6または請求項7記載の板材加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面においては、実施形態を説明するため、一部または全部を模式的に記載するとともに、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現した部分を含んでいる。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面のうち板材Wをパンチ位置Pに送る方向をY方向とし、Y方向と直交する方向をX方向と表記し、XY平面に垂直な方向をZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0015】
板材加工装置の実施形態について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示すように、板材加工装置1は、タッピング装置付きタレットパンチプレスであって、板材加工装置本体10と、板材搬送装置40と、加工屑吸引装置50と、制御装置80と、を備える。板材加工装置本体10は、上フレーム11の回転軸12に回転可能に支持される上タレット13と、下フレーム14の回転軸15に回転可能に支持される下タレット16と、を有している。回転軸12と回転軸15とはZ方向に同軸に配置されている。従って、上タレット13と下タレット16とはZ方向に所定の間隔を空けた状態で対向して配置される。
【0016】
上タレット13は、回転軸12を中心とした周回方向に、不図示のパンチホルダを介して複数のパンチ17が取り付けられる。パンチホルダは、上タレット13に対して取り外し可能となっている。下タレット16は、上タレット13と同様に、回転軸15を中心とした周回方向に、複数のダイ34が取り付けられる。
図3(a)は、下タレット16の一例を示している。
図3(a)に示すように、下タレット16は、複数の貫通孔31が形成された円板状のベース30と、ベース30に対して旋回可能に形成される基部32と、基部32上にダイホルダ33を介して取り付けられる複数のダイ34と、を有している。基部32に取り付けられるダイ34の数は任意である。ダイホルダ33は、例えば基部30に対してボルト等によって取り付けられており、取り外し可能となっている。また、1つのダイホルダ33に複数のダイ34が保持されてもよい。
【0017】
基部32は、ベース30に対して外側に開くことが可能に形成される。ダイ34の交換時等において基部32を外側に開き、作業者の交換作業の効率化を図っている。基部32を閉じた際、下タレット16は、回転軸を中心とした周回方向に、複数のダイ34が配置された状態となる。なお、ベース30の貫通孔31は、ダイ34の下方となる位置に、各ダイ34の大きさに合わせて形成される。貫通孔31は、パンチ加工により生じたスラグ(加工屑)を下方に排出するために用いられる。
【0018】
下タレット16上面の中央部分35には、例えば樹脂製のブラシ36が形成される。ブラシ36は、中央部分35において、例えば一定間隔で多数形成され、先端部の高さがダイ34の高さに対応するように同一の高さに設定される。このブラシ36は、板材Wを搬送する時の抵抗を低減するとともに、板材Wの表面に傷が付くことを抑制する。なお、ブラシ36に代えて、複数のフリーボール(全方向に転動可能)が使用されてもよい。
【0019】
図3(b)は、他の例に係る下タレット16Aを示している。
図3(b)に示すように、このタレット16Aは、ダイホルダ33が例えばボルト等によってベース30に取り付けられている。ダイホルダ33は、ベース30から取り外し可能となっている。従って、ダイ34を交換する場合にはベース30からダイホルダ33を取り外すことにより行う。なお、他の構成は
図3(a)に示す下タレット16と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
図1及び
図2に戻り、上タレット13及び下タレット16は、回転軸12及び回転軸15のそれぞれに接続された不図示の駆動装置によって回転する。この駆動装置は、制御装置80によって制御される。上タレット13及び下タレット16は、同期して回転する。制御装置80は、上タレット13のいずれかのパンチ17をパンチ位置Pに配置させるとともに、このパンチ17に対応するように下タレット16のいずれかのダイ34をパンチ位置Pに配置させる。パンチ17及びダイ34の選択は、板材Wに加工する穴形状や板材Wの厚さ等の打ち抜き条件によって制御装置80により決定される。なお、パンチ17及びダイ34の選択は、制御装置80によらず、手動により行ってもよい。
【0021】
上フレーム11は、パンチ位置Pに配置されたパンチ17を昇降させるラム18と、ラム18を駆動するラム駆動部19と、を有している。ラム18は、不図示のZ方向ガイドによって昇降可能に形成される。ラム駆動部19を駆動してラム18を降下させることにより、パンチ17は、降下してダイ34の孔に入り込んだ後、上昇して元の状態に戻る。従って、パンチ位置Pに板材Wを配置することによりパンチ加工を行うことができる。ラム駆動部19の駆動は、制御装置80によって制御される。
【0022】
上フレーム11の上タレット13から外れた前端位置(−Y側の位置)には、タッピング工具20と、タッピング工具20を回転駆動する駆動部21とが設けられる。タッピング工具20は、タッピング位置Tに合わせて配置される。駆動部21を駆動することにより、タッピング工具20は回転しながら降下し、タッピング位置Tに配置された板材Wの開口部内周に対してタッピング加工を行う。例えば上記したパンチ17によってパンチ加工された板材Wに対してタッピング加工を行ってもよい。
【0023】
なお、駆動部21の駆動は、制御装置80によって制御される。また、制御装置80は、上記したパンチ加工とタッピング加工とのいずれ一方を選択して行うように制御してもよい。なお、駆動部21の駆動を制御装置80によらず、手動により行ってもよい。また、上記したタッピング工具20や駆動部21は設けられなくてもよい。また、タッピング加工に代えて、例えばドリルなど他の加工を行う加工ツールが配置されてもよい。
【0024】
板材搬送装置40は、固定テーブル41と、2台の可動テーブル42とを有している。固定テーブル41は、下フレーム14の−Y側に配置される。固定テーブル41の上面には、例えば樹脂製のブラシ43が多数形成される。ブラシ43は、固定テーブル41の上面において、例えば一定間隔で形成され、先端部の高さが下タレット16のダイ34の高さに対応するように同一の高さに設定される。このブラシ43は、下タレット16の中央部分35に形成されたブラシ36と同様のものが用いられ、板材Wを搬送する時の抵抗を低減するとともに、板材Wの表面に傷が付くことを抑制する。ブラシ43は、
図1に示すように、可動テーブル42(固定テーブル41)の上面に形成された孔部に固定されることにより形成される。なお、ブラシ43に代えて、複数のフリーボールが使用されてもよい。固定テーブル41の+X側及び−X側の側面には、下フレーム14の側面まで延びるガイド44がそれぞれ形成される。
【0025】
2台の可動テーブル42は、固定テーブル41の+X側及び−X側にそれぞれ配置される。これら2台の可動テーブル42は、X方向に配置されたキャリッジ45によって連結されている。可動テーブル42は、それぞれガイド44に沿ってY方向に移動可能であり、不図示の駆動装置を駆動することによりY方向に移動する。この駆動装置は、制御装置80によって制御される。可動テーブル42の上面の高さは、固定テーブル41の上面に合わせて設定される。また、可動テーブル42の上面には一定間隔でブラシ43が形成される。
【0026】
板材搬送装置40は、キャリッジ45に沿ってX方向に移動可能なクロススライド46と、クロススライド46に形成された一対のワークホルダ47、とを備えている。クロススライド46は、不図示の駆動装置によりキャリッジ45に沿ってX方向に移動する。この駆動装置は、制御装置80によって制御される。ワークホルダ47は、クロススライド46の+Y側において、X方向に間隔を空けた2か所に取り付けられる。2つのワークホルダ47の間隔は変更可能としてもよい。ワークホルダ47のそれぞれは、板材Wを保持する。また、ワークホルダ47の個数や配置は任意である。
【0027】
ワークホルダ47に保持された板材Wは、可動テーブル42または固定テーブル41に載置された状態となる。この状態で、キャリッジ45及び可動テーブル42をY方向に移動させるとともに、クロススライド46をX方向に移動させることにより、板材WをX方向及びY方向に搬送し、板材Wの加工対象位置をパンチ位置Pやタッピング位置Tに位置合わせすることができる。板材Wは、可動テーブル42等のブラシ43上を滑りながら搬送される。なお、板材Wの搬送及びパンチ位置P等への位置合わせは、キャリッジ45のY方向への移動量と、クロススライド46のX方向の移動量とが、例えばエンコーダ等により検出されて制御装置80により制御される。
【0028】
加工屑吸引装置50は、
図1及び
図2に示すように、吸引機51と、吸引機51に接続された第1配管52と、第1配管52の途中に設置された切替装置53と、切替装置53に接続された第2配管54と、を備えている。吸引機V51、例えば、ポンプ等の既存の負圧発生器が使用され、制御装置80によって制御される。第1配管52は、吸引機51と切替装置53とを接続し、さらに切替装置53から延びてパンチ位置Pの下方まで延びるパンチ用配管52Aと、タッピング位置Tの下方まで延びるタッピング用配管52Bとを有している。第1配管52は、例えば金属製または樹脂製の配管が用いられる。なお、後述するが、パンチ用配管52Aとタッピング用配管52Bとは選択的に切り替えられてもよい。
【0029】
図4は、加工屑吸引装置50によって加工屑を吸引する吸引ラインの一例を示す模式図である。
図4に示すように、吸引機51から延びる第1配管52は、主切替装置55に接続される。主切替装置55は、パンチ用配管52Aとタッピング用配管52Bとが接続され、いずれか一方を選択する。主切替装置55の選択は、制御装置80によって制御されてもよく、また手動で行われてもよい。また、制御装置80は、板材Wに対するパンチ加工またはタッピング加工に対応して、主切替装置55を切り替えてもよい。主切替装置55から延びたタッピング用配管52Bは、加工領域N(タッピング位置Tの下方)まで形成される。
【0030】
一方、主切替装置55から延びたパンチ用配管52Aは、切替装置53に接続され、切替装置53から加工領域N(パンチ位置Pの下方)まで形成される。また、切替装置53には、第2配管54が接続される。切替装置53によるパンチ用配管52Aと第2配管54との切り替えは、制御装置80によって制御されてもよく、また手動で行われてもよい。第2配管54は、吸引部(先端部)54aを板材Wの搬送経路及びその周辺領域Sに接続可能となっている。第2配管54は、全部または一部にフレキシブル配管が用いられてもよい。フレキシブル配管が用いられることにより、吸引部54aを容易に持ち運ぶことができ、作業者の取扱性が向上する。
【0031】
板材Wの搬送経路及びその周辺領域Sは、板材Wが搬送される経路の他に、上タレット13と下タレット16との間や、下タレット16の+Y側の領域も含まれる。また周辺領域Sは、板材Wの搬送経路の上方や下方も含まれ、上タレット13の内部や上方、下タレット16の内部や下方、可動テーブル42の裏面、ガイド44なども含まれる。従って、第2配管54の吸引部54aは、
図1や
図2に示すように、可動テーブル42上や下タレット16上にまで移動させることができる。また、
図3(a)に示すように、基部32を外側に開くことにより生じたベース30上や、
図3(b)に示すように、ダイホルダ33を取り外して生じたベース30上などにも吸引部54aを移動させることができる。
【0032】
第2配管54の一部には、吸引物を捕捉するための捕捉部56が配置される。同じく、パンチ用配管52Aには、加工領域Nにおいて生じたスラグ(加工屑)を捕捉するためのスラグ捕捉部57が配置される。タッピング用配管52Bには、加工領域Nにおいて生じた切屑(加工屑)を捕捉するための切屑捕捉部58が配置される。スラグ捕捉部57や切屑捕捉部58は、各種フィルター等の任意の構成が採用される。
【0033】
切替装置53は、
図1及び
図2に示すように、板材加工装置本体10のメンテナンス領域Mに配置される。メンテナンス領域Mは、作業者等が上タレット13や下タレット16をメンテナンスする際に立ち入る領域である。切替装置53がメンテナンス領域Mに配置されるため、メンテナンス中の作業者は、容易に切替装置53を操作することができる。ただし、切替装置53は、メンテナンス領域M外に配置されてもよい。また、切替装置53は、例えば下フレーム14の側面等に取り付けられてもよい。
【0034】
図5は、切替装置53の一例を示す斜視図である。
図5に示すように、切替装置53は、仕切壁60aで仕切られた2つの内部空間を有する上側ケース60と、上側ケース60の下方に配置された下側ケース61と、上側ケース60と下側ケース61との間に配置されてスライド可能な切替板62と、を有している。上側ケース60は、仕切壁60aで仕切られた2つの空間のそれぞれと連通するように、パンチ用配管(第1配管)52Aと第2配管54とが取り付けられる。下側ケース61は、内部空間内の一部に、引出可能な捕捉用ケース63が形成される。また、下側ケース61は、点線で示すようにパンチ用配管52Aの下流側を介して吸引機51に接続される。
【0035】
図6は、
図5のA−A線に沿った断面図を示している。
図6に示すように、捕捉ケース63は、第2配管54に連通する上側ケース60内と連通可能に形成される。また、捕捉ケース63の側面には複数の孔部63aが形成される。この捕捉ケース63は、
図4に示す捕捉部56を構成する。複数の孔部63aが形成されることに代えて、フィルター等が形成されてもよい。
【0036】
切替板62は、開口部62aを備えている。切替板62をスライドさせることにより、開口部62aは、仕切壁60aに対してパンチ用配管52A側と第2配管54側とのいずれか一方に配置される。切替板62は、手動でスライドさせてもよく、また、駆動装置64により行ってもよい。駆動装置64は、制御装置80によって制御されてもよく、また、手動で操作されてもよい。
【0037】
図6(a)は、開口部62aがパンチ用配管(第1配管)52Aを選択した状態を示している。この状態で吸引機51を駆動することにより、
図6(a)の矢印で示すように、パンチ用配管52Aから上側ケース60に入り、開口部62aを介して下側ケース61に入った後にパンチ用配管52Aの下流側に入るといった順序で吸引される。一方、
図6(b)は、開口部62aが第2配管54を選択した状態を示している。この状態で吸引機51を駆動することにより、
図6(b)の矢印で示すように、第2配管54から上側ケース60に入り、開口部62aを介して先ず捕捉ケース63に入った後、孔部63aを介して下側ケース61に入った後にパンチ用配管52Aの下流側に入るといった順序で吸引される。
【0038】
図4に戻り、主切替装置55でパンチ用配管52Aが選択され、かつ切替装置53によりパンチ用配管52Aが選択される場合は、パンチ位置Pに対応した加工領域Nから、プレス加工によって生じたスラグの吸引を行う。吸引したスラグは、スラグ捕捉部57により捕捉されて適宜排出される。また、主切替装置55でタッピング用配管52Bが選択される場合は、タッピング位置Tに対応した加工領域Nから、タッピング加工により生じた切屑の吸引を行う。吸引した切屑は、切屑捕捉部58により捕捉されて適宜排出される。なお、スラグ捕捉部57や切屑捕捉部58は、切替装置53や主切替装置55の上流側に配置される。これにより、スラグや切屑が切替装置53等に進入するのを防止できる。
【0039】
また、主切替装置55でパンチ用配管52Aが選択され、かつ切替装置53により第2配管54が選択される場合は、第2配管54により、板材Wの搬送経路及びその周辺領域Sから加工屑やその他の異物を吸引することができる。第2配管54に吸引された加工屑等は、捕捉部56によって捕捉される。すなわち、
図6(b)に示すように、吸引された加工屑等は、上側ケース60及び開口部62aを介して捕捉ケース63に入り込み、孔部63aから吸気が抜けることにより捕捉ケース63内に捕捉される。捕捉ケース63が下側ケース61から引き出されることにより、加工屑等は回収される。なお、第2配管54で吸引した加工屑等は、
図6(b)に示すように、切替装置53内で捕捉することに限定されず、例えば、
図4に示すように、切替装置53の上流側に別途捕捉部56が形成されてもよい。
【0040】
また、
図4は吸引ラインの一例を示すものであり、これに限定されない。例えば、吸引機51から延びる第1配管52を切替装置53に接続し、切替装置53で第1配管52と第2配管54とを切り替え可能にするとともに、切替装置53から延びる第1配管52に主切替装置55を接続してパンチ用配管52Aとタッピング用配管52Bとに切り替え可能にしたものでもよい。また、切替装置53は、第1配管52の途中に配置されることに限定されず、吸引機51に付属して配置されてもよい。
【0041】
図7は、第2配管54の先端部である吸引部54aに取り付けられた吸引部70、72の例を示している。吸引部70は、
図7(a)に示すように、先端がノズル状に形成され、第2配管54の先端部に取り付けられる。この吸引部70は、第2配管54に対して取り外し可能となっている。吸引部70は、第2配管54より開口が狭い吸引口71を有している。この吸引部70は、狭い空間に対する吸引時に用いられ、例えば
図3に示す下タレット16、16Aにおいて基部32を開いた時や、ダイホルダ33を取り外した時の隙間等の吸引時に用いられる。
【0042】
また、吸引部72は、
図7(b)に示すように、先端を一方向に拡げて形成され、同じく第2配管54の先端部に取り付けられる。この吸引部72は、上記した吸引部70と同様に、第2配管54に対して取り外し可能となっている。吸引部72は、第2配管54より一方向に拡げられた吸引口73を有している。この吸引部72は、広い面に対する吸引時に用いられ、例えば
図1に示す固定テーブル41や可動テーブル42の上面に対する吸引時に用いられる。
【0043】
なお、吸引部としては
図7に限定されず、例えば吸引部の先端にブラシが形成されたものなどが用いられてもよい。また、吸引部70、72等は、吸引する加工屑の大きさや形状に合わせて選択されてもよい。また、これら吸引部70、72等は、例えば、複数まとめられてメンテナンス領域M内の切替装置53等の近傍に配置され、作業者が使用に応じて適宜取り付けるようにしてもよい。
【0044】
図1及び
図2に戻り、制御装置80は、板材加工装置1を統括制御する。制御装置80は、コントロールパネル81を備えるとともにアラーム82に接続されている。コントロールパネル81は、
図2に示すように、上フレーム11の側面においてメンテナンス領域Mから作業者が操作可能な位置に配置される。なお、制御装置80は、板材加工装置1に搭載されることに限定されず、無線または有線により板材加工装置1に接続されて他の場所に設置されてもよい。コントロールパネル81は、例えば、吸引機51の駆動、主切替装置55の切り替え、切替装置53の切替板62をスライドさせる駆動装置64の操作を指示する機能を備えてもよい。アラーム82は、例えば、音声による案内、ブザー音等の警報、照明の点灯または点滅、装置一部の振動など、作業者に注意を喚起させる機能を有している。
【0045】
図8は、制御装置80の動作を説明するフローチャートである。
図8に示すように、先ず、制御装置80は、加工モードが設定されたか判断する(ステップS1)。加工モードの設定は、例えば、作業者がコントロールパネル81を操作して行う。また、加工モードのうち、パンチ加工またはタッピング加工のいずれを行うかも作業者がコントロールパネル81等で設定してもよい。加工モードが設定された場合(ステップS1:YES)、板材搬送装置40により板材Wが搬送され、パンチ位置Pまたはタッピング位置Tに位置決めされた後にパンチ加工またはタッピング加工が行われる。このとき、制御装置80は、パンチ加工またはタッピング加工に合わせて加工屑吸引装置50を駆動し、加工領域Nからスラグまたは切屑等の加工屑を吸引させる。
【0046】
また、加工モードが設定される場合(ステップS1:YES)、切替装置53等によって第2配管54に切り替えられたか否かを判断する(ステップS2)。第2配管54に切り替えられていない場合(ステップS2:NO)は、再度ステップS2に戻り、第2配管54に切り替えられたか否かが繰り返し判断される。ステップS2において第2配管54に切り替えられた場合(ステップS2:YES)、制御装置80は、板材Wの加工停止またはアラーム82の駆動を指示する(ステップS3)。なお、板材Wの加工は停止せず、アラーム82の駆動のみを行ってもよい。このアラーム82によって、作業者は、スラグ等の吸引が行われていないことを容易に知ることができる。
【0047】
加工モードが設定されない場合(ステップS1:NO)、制御装置80は、メンテナンスモードが設定されたか否かを判断する(ステップS4)。メンテナンスモードが設定されない場合(ステップS4:NO)は、再度ステップS4に戻り、メンテナンスモードが設定されたか否かが繰り返し判断される。メンテナンスモードが設定された場合(ステップS4:YES)、制御装置80は、吸引機51の駆動を停止させる(ステップS5)。メンテナンスモードの設定は、例えば、作業者がコントロールパネル81を操作することにより行う。ただし、このステップS5は任意であり、制御装置80は、吸引機51の駆動を停止させなくてもよい。
【0048】
ステップS5に続いて、制御装置80は、切替装置53によって第2配管54に切り替えられたか否かを判断する(ステップS6)。第2配管54の切り替えは、例えば、作業者によるコントロールパネル81の操作や、手動による切替装置3の切替板62のスライド等により行う。制御装置80は、コントロールパネル81の操作情報や、センサ等による切替板62の位置情報に基づいて、第2配管54に切り替えられたか否かを判断する。なお、第2配管54に切り替えられていない場合(ステップS6:NO)は、再度ステップS6に戻り、第2配管54に切り替えられたか否かが繰り返し判断される。
【0049】
第2配管54に切り替えられた場合(ステップS6:YES)、制御装置80は、吸引機51の駆動を可能に設定する(ステップS7)。作業者は、例えばコントロールパネル81を操作して吸引機51の駆動を開始させる。ただし、このステップS7に代えて、制御装置80は、作業者の操作によらず、吸引機51の駆動を開始させてもよい。また、
図8では、ステップS4でメンテナンスモードが設定されたかを判断した後に、ステップS6で第2配管54に切り替えられたかを判断するが、これに代えて、ステップS4でメンテナンスモードが設定された場合、制御装置80は、切替装置53を操作して第2配管54に自動的に切り替えてもよい。
【0050】
第2配管54が選択された状態で吸引機51が駆動するので、第2配管54の吸引部54aから加工屑等を吸引可能となる。作業者は、吸引部54aを例えば可動テーブル42上や下タレット16に移動させることにより、加工屑やその他のゴミを吸引部54aから吸引して除去することができる。なお、吸引した加工屑等は、捕捉ケース63により捕捉され(
図6参照)、回収される。
【0051】
このように、本実施形態によれば、切替装置53によって第2配管54が吸引機51に接続されるため、吸引部54aを板材Wの搬送経路やその周辺領域Sに接続することにより、加工屑を第2配管54によって吸引し、容易に加工屑を除去することができる。また、加工領域Nを吸引する吸引機51が兼用されるため、装置コストの増加を抑制できる。
【0052】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。本実施形態では、切替装置53として
図5に示すものが使用されるが、これに限定されない。例えば、
図5に示す切替装置53に代えて、第1配管52と第2配管54とに流路を切り替え可能な各種機構が用いられてもよい。また、上記した実施形態では、1本の第2配管54が用いられるが、切替装置53から2本以上の第2配管54が接続されてもよい。この場合、切替装置53は、複数の第2配管54のうち一部または全部を選択する切替機能を備えてもよい。また、第2配管54の途中から分岐させて、複数の吸引部54aが形成されてもよい。
【0053】
また、上記した実施形態では、板材加工装置1として、タッピング装置付きタレットパンチプレスを示しているが、これに代えて、例えば、板材Wを熱切断加工するレーザ加工機やプラズマ加工機であってもよい。レーザ加工機等の場合、熱切断加工時に飛散した加工屑は、例えば加工領域Nに配置された第1配管52によって吸引されて除去されるとともに、加工領域Nを越えて飛散した加工屑は、第2配管54の吸引部54aにより吸引されて除去される。