【実施例】
【0014】
(ピラーガーニッシュ)
図1は、自動車の車体におけるセンターピラー部の上部に、乗員室側から配設されるピラーガーニッシュ10の概略斜視図である。このピラーガーニッシュ10は、所要形状に形成された合成樹脂製の基材12と、該基材12の表側に配設された表皮14とを備えている。基材12は、所要の厚み(2〜3mm)で車体前後側の両側部が湾曲した板状部材であり、該基材12の中央下部に開口13が開設されている。この開口13には、センターピラー部の下部に配設されたシートベルト巻取り部から引き出されたシートベルト(図示せず)が、ピラーガーニッシュ10の裏側から表側へ挿通されるようになっている。表皮14は、基材12の表面12aに接合された被覆部14aと、開口13の開口縁裏側に巻き込まれて該基材12の裏面12bに接合された巻き込み部14bとを備えており、該開口13の開口縁は表皮14により被覆されている。これにより、ピラーガーニッシュ10の開口(以下「製品開口」という)10aは、基材12の開口縁を被覆する表皮14で画成されている(
図2参照)。なお、実施例では、開口13の開口形状を単純な矩形状の場合を例示したが、該開口13の形状、サイズおよび開設位置等は車体毎に異なる。
【0015】
(成形装置)
実施例のピラーガーニッシュ10は、
図3および
図4に示す成形装置22により成形される。この成形装置22には、賦形前のシート状の表皮14が、
図5に示す表皮供給装置24によって供給される。成形装置22は、内部にキャビティ23が画成され、該キャビティ23内に表皮14をセットしたもとで、基材12を成形すると共に該表皮14を賦形するよう構成されている。すなわち、成形装置22は、開口13を有する基材12をインジェクション成形する工程と、シート状の表皮14から被覆部14aおよび巻き込み部14bを賦形すると共に該表皮14を基材12に接合する工程とを同時に行い得るよう構成されている。
【0016】
成形装置22は、
図3(a)および
図3(b)に示すように、裏側成形型30および表側成形型32と、該裏側成形型30に配設された保持体35とを備えている。成形装置22は、裏側成形型30が基台34に据え付けられると共に、この裏側成形型30の上側に表側成形型32が配置され、図示しない開閉機構により、表側成形型32が該裏側成形型30に対して近接および離間するよう構成されている。裏側成形型30は、ピラーガーニッシュ10の裏側の形状を規定する裏面成形面31が形成され、該裏面成形面31が全体として上方へ突出したコア型となっている。一方、表側成形型32は、ピラーガーニッシュ10の表側の形状を規定する表面成形面33が形成され、該表面成形面33が全体として上方へ凹んだキャビ型となっている。そして、成形装置22は、裏側成形型30に対し表側成形型32を近接移動させて型閉めすることで、裏面成形面31、保持体35の後述する規定面36および表面成形面33により、内部にキャビティ23を画成するよう構成されている(
図3(b)参照)。
【0017】
(保持体)
裏側成形型30には、
図3(a)、
図3(b)および
図4に示すように、表皮14の一部を該裏側成形型30側に押さえ付ける保持体35が配設されている。保持体35は、裏側成形型30に対して近接・離間するように進退移動可能に構成され、実施例では表側成形型32の型開閉方向と同じ方向(上下方向)に移動するようになっている。保持体35は、基材12に開設する予定の開口13の大きさよりも広い範囲を囲う保持位置より内側に延在する表皮14の余長部分17を、裏側成形型30との間に押さえ付け可能に構成されている。ここで、前記保持位置は、基材12の成形後に該基材12の裏側となると共に、基材12に形成される開口13の開口端よりも該開口13の外側へ向けた方向に離れた位置に設定されている。そして、実施例では、保持体35による表皮14の保持位置が、開口13の形成予定位置を囲うように規定されて、該表皮14の巻き込み部14bの端縁を規定することになる。また、保持体35は、開口13の形成予定位置を含む範囲で表皮14の余長部分17を押さえ付け、該開口13の形成予定位置の外側を囲む保持位置よりも内側の領域に延在する表皮14の該余長部分17を覆うようになっている。また、保持体35によって表皮14の余長部分17を押さえ付けることで、キャビティ23における開口13を規定する閉塞端から離間させて裏側成形型30側から該表皮14をキャビティ23に臨ませるようにセットされる。すなわち、保持体35は、表皮14の保持位置で囲われる領域の内側に延在する該表皮14の余長部分17を、凹部40との間でキャビティ23に露出しないように保持して、保持位置で囲われる領域の外側に延在する表皮14の成形品構成部分を、該表皮14の端末を除いてキャビティ23に臨ませ得るように構成されている。
【0018】
保持体35は、
図4に示すように、裏側成形型30の後述する保持受面41,42との間に表皮14の余長部分17を挟む保持面37,38と、この保持面37,38に連なり、保持面37,38で表皮14を押さえ付けた際に裏側成形型30の外方に臨む規定面36とを有し、保持面37,38の外縁が前述した保持位置を規定している。実施例の保持体35は、略直方体形状に形成されたブロック状部材であり、保持面37,38は、該保持体35の移動方向と交差するように延在する裏壁がなす第1保持面37と、この裏壁の外周縁に連なり、該保持体35の移動方向に沿って延在する外周壁がなす第2保持面38とによって構成される。実施例では、第1保持面37と第2保持面38の外縁が揃っており、キャビティ23における成形面の一部をなす規定面36に連なる第1保持面37の外縁が保持位置である。そして、保持体35は、第2保持面38に直交(第1保持面37に平行)するように延在する表壁がなす規定面36が、表側成形型32に臨むようになっている。また、保持体35は、表皮14の保持位置を規定する保持面の外縁で外形寸法が最も大きくなるように設定されており、実施例の保持体35では第2保持面38の上縁が保持位置になるよう構成されている。ここで、保持体35は、第2保持面38の上縁がなす平面形状が基材12の開口13の形状に応じて設定され、実施例では矩形状をなす開口13の開口形状に応じて、該平面形状が開口13より一回り大きい矩形状になるように第2保持面38となる外周壁が延在している。すなわち、保持体35は、外周壁の上縁に連なる表壁で構成される規定面36が、開口13より一回り大きい矩形状になっている。また、保持体35の裏壁の中央には、下方へ突出した支持部39が形成され、該支持部39が、裏側成形型30に設けられた後述する第1ガイド部43(
図3、
図4参照)に沿って摺動するよう構成されている。
【0019】
(保持受面)
裏側成形型30は、保持体35の保持面37,38との間に表皮14の余長部分17を挟む保持受面41,42を備えている。保持受面41,42は、保持体35の保持面37,38に合わせて、該保持面37,38に対向するように構成されている。実施例の保持受面41,42は、裏側成形型30における裏面成形面31から凹ませて、裏面成形面31側に開口するように形成された凹部40に設けられている。この凹部40は、保持体35を収容可能な矩形状に形成されており、保持受面41,42は、保持体35の移動方向(実施例では上下方向)と交差する方向に延在する底壁がなす第1保持受面41と、この底壁の外周縁に連なり、該保持体35の移動方向に沿って延在する内周壁がなす第2保持受面42とによって構成される。このように実施例では、保持体35における向きが異なる2つの第1保持面37および第2保持面38に対応して、向きが異なる2つの第1保持受面41および第2保持受面42が、裏側成形型30に設けられている。
【0020】
裏側成形型30には、
図3に示すように、保持体35をスライド移動させるスライド機構が設けられている。このスライド機構は、凹部40の底壁の中央に開口するよう形成された第1ガイド部43の下方に配設された第1アクチュエータ44を備えている。第1ガイド部43は、表側成形型32の型開閉方向に沿って延在しており(実施例では上下方向)、該第1ガイド部43に沿って支持部39が移動することで、保持体35が上下方向に移動可能となっている。第1アクチュエータ44の本体から上方へ延出した第1ロッド44aは、その先端が支持部39の底部に連結されている。従って、保持体35は、第1アクチュエータ44の作動により、凹部40に嵌り込んで該凹部40とで表皮14を挟んで押さえ付ける押付位置(
図3(b)、
図9参照)と、凹部40から裏側成形型30の外方へ突き出て該凹部40への表皮14の挿脱を許容する挿脱位置(
図3(a)、
図7および
図8参照)との間で、上下方向に移動可能に構成されている。そして、実施例では、保持体35が押付位置にある場合に、該保持体35の規定面36が裏面成形面31と面一となり、第1保持面37が第1保持受面41に対向すると共に、第2保持面38が第2保持受面42に対向する(
図3(b)、
図9参照)。そして、第1保持面37と第1保持受面41とにより、余長部分17の第1押さえ部17aを挟持して押さえ付けると共に、第2保持面38と第2保持受面42とにより、余長部分17における第1押さえ部17aの外側を囲む第2押さえ部17bを挟持して押さえ付ける。一方、保持体35は、挿脱位置において凹部40から上方へ完全に離脱して、該保持体35の底壁が裏面成形面31より外方に位置する(
図3(a)、
図4参照)。
【0021】
(脱型手段)
裏側成形型30には、
図3(a)および
図3(b)に示すように、ピラーガーニッシュ10を押し上げて裏側成形型30から脱型させる脱型手段が配設されている。この脱型手段は、所定数(実施例では2本)の突き出しピン50,50を備えている。各突き出しピン50,50は、成形装置22において基材12を成形すると共に表皮14を賦形して得られたピラーガーニッシュ10を、裏側成形型30から押し出して脱型させる。また、各突き出しピン50,50は、後述するピラーガーニッシュ10の製造工程において、基材12をなす樹脂材料Pの注入前に、裏側成形型30にセットした表皮14を裏面成形面33から離間させて弛ませる際にも作動するようになっている。
【0022】
前述した各突き出しピン50,50は、裏側成形型30に設けられたスライド機構により、該裏側成形型30にスライド移動可能に配設され、実施例では表側成形型32の型開閉方向および保持体35の移動方向と同じ方向(上下方向)に移動するようになっている。このスライド機構は、裏側成形型30を貫通するよう成形されて裏面成形面31に開口する第2ガイド部53と、裏側成形型30の裏側に配設されたエジェクタ板55と、基台34に配設され、エジェクタ板55に連結される第2アクチュエータ54とを備えている。各突き出しピン50,50は、第2ガイド部53にスライド移動可能に配設されると共に、エジェクタ板55に下端部が連結されている。第2アクチュエータ54は、エジェクタ板55を挟んで複数(実施例では2基)が、第2ロッド54aを下向きとした倒立状態で基台34に固定され、該第2ロッド54aの先端がエジェクタ板55の端部に連結されている。従って、各突き出しピン50,50は、第2アクチュエータ54,54の作動により、裏面成形面31から裏側成形型30内に没入して、先端51が該裏面成形面31と面一となる待機位置(
図3(b)、
図7参照)と、裏側成形型30から突き出した突出位置(
図3(a)、
図15(b)参照)との間を、上下方向に移動可能となっている。また、各突き出しピン50,50は、表皮14を弛ませる際に、突出位置での突き出し高さより低い突き出し高さとなる中間突出位置(
図10参照)に停止可能となっている。ここで、各突き出しピン50,50の待機位置から突出位置までの移動距離は、保持体35の押付位置から挿脱位置までの移動距離よりも大きくなっている。なお、中間突出位置は、表皮14に付与する弛み量に応じて設定される。また、突き出しピン50の配設数や配設位置は、ピラーガーニッシュ10の大きさや形状に基づいて適宜に設定される。
【0023】
(注入部)
裏側成形型30には、
図3および
図12に示すように、裏面成形面31の所要位置に開口した注入ノズル(ゲート)56が配設されている。基台34には、図示省略した樹脂材料供給部に接続されたホットランナーブロック57が設けられ、注入ノズル56は、該ホットランナーブロック57に接続されている。注入ノズル56は、裏側成形型30と表側成形型32とを型閉めして画成されたキャビティ23内において、キャビティ23に収容された表皮14と裏側成形型30の裏面成形面31との間に、ホットランナーブロック57を経由して溶融した樹脂材料Pを射出するよう構成されている。
【0024】
(表側成形型)
表側成形型32の表面成形面33には、
図3(a)および
図11に示すように、ピラーガーニッシュ10の製品開口10aを形成する予定位置に、開口規定突部58が突設されている。開口規定突部58は、製品開口10aを形成するものである。開口規定突部58における裏側成形型30に臨む当接面59は、保持体35の規定面36が基材12に形成される開口13より広く形成されていることで、規定面36より狭くなっている(
図11参照)。そして、実施例の成形装置22は、型閉めした際に、押付位置にある保持体35の規定面36の中央寄りに開口規定突部58が当接するようになっており、開口規定突部58の周囲には、規定面36の外縁部が該開口規定突部58の全周に亘ってキャビティ23へ露出するようになっている。
【0025】
従って、実施例の成形装置22は、裏側成形型30と表側成形型32とを型閉めすると保持体35と開口規定突部58とが当接することで、保持体35の規定面36の外縁部にかかるようにキャビティ23が画成される(
図11、
図12参照)。すなわち、キャビティ23には、成形装置22の型閉め状態で、保持体35の規定面36の一部および表面成形面33による閉塞端が設けられる。なお、
図11では、開口規定突部58によりキャビティ23が左右に分離しているように見えるが、該開口規定突部58の奥側および手前側においてキャビティ23が連通している。
【0026】
(表皮の挿通部について)
表皮14には、
図4に示すように、基材12を成形する前工程において、前述した保持体35を挿通可能な挿通部16が予め設けられる。挿通部16は、
図4および
図7に示すように、裏側成形型32に配設された保持体35を該挿通部16に挿通させることで、裏側成形型30に対する表皮14のセットを可能とすると共に、裏側成形型30の裏面成形面31に対して該表皮14が適切な位置にセットすることを可能とする。
【0027】
挿通部16は、前述した表皮14の余長部分17に、保持体35の保持面37,38における最大外形部分の外周以上の挿通開口を形成して、表皮14に保持体35を挿通可能とするものである。具体的に、実施例の挿通部16は、表皮14の余長部分17に開口した表皮開口である。ここで、挿通部16は、保持体35の底壁に設けられた支持部39の外形形状に合わせた矩形状をなしており、余長部分17が変形せずに該支持部39が挿入可能な大きさとなっている。ここで、実施例の保持体35は、第1保持面37の外縁と規定面36の外縁とが揃っていて、第2保持面38をなす外周壁が最大外形となっているので、挿通部16は、周囲の余長部分17が拡開するように変形すると保持体35が挿通可能な矩形状の挿通開口が形成される。
【0028】
(表皮供給装置)
表皮供給装置24は、
図5に示すように、表皮ストッカ65に積み重ねられたシート状の表皮14の1枚を把持して成形装置22へ搬送する。表皮供給装置24は、表皮ストッカ65と型開きした成形装置22の裏側成形型30の上方との間を移動可能なフレーム66に、表皮14の端末部分を把持可能な複数(
図5では2基だけが表示されている)の表皮把持部67を備えている。表皮ストッカ65と成形装置22との間には、案内部材45を一時的に載置する載置台70が設けられている。また、表皮供給装置24は、案内部材45の挿入端46を把持可能な案内部材把持部68を備える。この案内部材把持部68は、フレーム66に対して昇降移動可能に構成されており、フレーム66の昇降移動に同期して該フレーム66に対して逆に昇降移動することで、フレーム66が昇降移動しても案内部材45を同じ高さに保持し得るよう構成されている。
【0029】
また、表皮供給装置24は、各表皮把持部67,67で把持した表皮14に当接する表皮支持部69を、複数(
図5では、2つだけが図面に図示されている)備えている。この表皮支持部69は、表皮14に形成された挿通部16の近傍部分において、該表皮14に対して挿通部案内部材45や保持体35の挿入方向と反対側(実施例では上方)から当接するように設けられている。すなわち、各表皮支持部69は、表皮14に当接することで、案内部材45を挿通部16に挿入して表皮14を該案内部材45にセットする際や、保持体35を挿入開口を通して保持体35と裏側成形型30との間にセットする際に、表皮14が挿入方向と反対側(実施例では上方)に変位するのを規制するようになっている。表皮支持部69は、挿通部16の開口形状や開口サイズに基づいて保持位置や配設数が変更される。また、表皮支持部69は、挿通部16の周囲全周に亘り適宜間隔毎に離間配置して、挿通部16の外縁を結んだラインに平行なライン上を支持するよう配置するのがよい。なお、実施例では、矩形状をなす挿通部16の外縁における4つの各辺の近傍に、複数の表皮支持部69を配置することで、挿通部16の周囲全体を均等に支持するようになっている。
【0030】
(案内部材)
保持体35の規定面36には、
図6〜
図8に示すように、表皮14をキャビティ23にセットする際に、該表皮14に予め設けられた挿通部16に該保持体35に通すための案内部材45が、着脱可能にセットされるよう構成されている。案内部材45は、その外周に設けられた案内面48が、表皮14の挿入端46側から保持体35への受け渡し端47側に向かうにつれて外方へ拡開するよう構成されている。ここで、実施例では、案内部材45の受け渡し端47を、保持体35の規定面36と同一の輪郭形状としている。すなわち、実施例の保持体35の規定面36が矩形状であるので、案内部材45の受け渡し端47は矩形状となっており、当該案内部材45は略四角錐状をなしている。このような案内部材45は、挿入端46側から表皮14の挿通部16に挿入され、挿通部16をなす表皮部分に案内面48が接触して変形することで該挿通部16を拡開して、保持体35の通過が可能な挿通開口を画成するようになっている。すなわち、案内部材45は、挿通部16が受け渡し端47に位置するまで該挿通部16に挿入することで、該挿通部16を保持体35の規定面36の外縁輪郭形状と同じ開口形状をなす挿通開口に拡開し、保持体35を該挿通部16に通すことを可能とする。なお、案内部材45は、表皮供給装置24に設けられた案内部材把持部68で挿入端46が把持され、保持体35の規定面36に対して着脱されると共に、載置台70に載置される。
【0031】
(製造方法)
次に、前述のように構成された成形装置22および供給装置24を使用したピラーガーニッシュ10の製造方法につき、
図6〜
図16を引用して説明する。
【0032】
(案内部材に対する表皮のセット)
先ず、実施例では、表皮供給装置24の各表皮把持部67,67により、表皮ストッカ65から1枚の表皮14を把持して取り出し、載置台70に載置されている案内部材45に、当該表皮14をセットする。すなわち、表皮ストッカ65から1枚の表皮14を把持して取り出した後、載置台70の規定位置に載置されている案内部材45の上方に表皮14を移動させ、表皮14に設けられた挿通部16が案内部材45の直上に位置するよう該表皮14を位置決めする(
図6に2点鎖線で示す)。次いで、表皮供給装置24を下方へ移動させ、表皮14に設けられた挿通部16に案内部材45を挿入端46側から挿入させて、案内部材45に対して表皮14をセットする。ここで、表皮14を停止させる高さ位置は、余長部分17が案内部材45の案内面48と適宜接触する位置とされる。この際に、各表皮支持部69が、表皮14における挿通部16の周囲を上方から支持しているので、該表皮14が上方へ変位することが規制される。そして、表皮供給装置24に配設された案内部材把持部68で、案内部材45の挿入端46を把持する。
【0033】
(保持体に対する案内部材のセット)
案内部材45に対する表皮14のセットが完了したら、表皮供給装置24を、型開きした成形装置22における裏側成形型30の上方へ移動させ、案内部材45が該裏側成形型30に配設された保持体35の直上となる位置で停止させる。そして、
図7に示すように、裏側成形型30に配設された保持体35を挿脱位置に移動させたもとで、表皮供給装置24を下方へ移動させて、該保持体35の規定面36に、表皮14がセットされた案内部材45をセットする。
【0034】
(裏側成形型に対する表皮のセット)
保持体35の規定面36に対する案内部材45のセットが完了したら、
図8に示すように、表皮供給装置24を更に裏側成形型30に近づくように移動させる。このとき、案内部材45の案内面48が、挿入端46側から受け渡し端47に向かうにつれて保持体35の外縁に向けて拡開していることで、表皮14の下方移動に伴って挿通部16の周囲の弾性変形が徐々に大きくなり、挿通部16が拡開するようになる。そして、表皮14が案内部材45の受け渡し端47の位置まで下方移動すると、挿通部16が保持体35の規定面36の外縁輪郭形状と同じ矩形状の挿通開口となる。これにより、表皮14を更に裏側成形型30に近づくよう移動させることで、保持体35の第2保持面38が挿通部16を通り抜けて、表皮14が該保持体35の第2保持面38よりも裏側成形型30側へ移動するようになる。なお、各表皮支持部69が、表皮14における挿通部16の周囲を上方から支持しているので、案内部材45および保持体35の第2保持面38が挿通部16を通り抜ける際に該表皮14が上方へ変位することが規制される。そして、保持体35の第2保持面38が挿通部16を完全に通り抜けると、弾性変形していた挿通部16の周囲が元の形状に復帰する。なお、保持体35に案内部材45がセットされた状態で表皮供給装置24を下方へ移動させる際には、前述したように、案内部材把持部68をフレーム66に対して上方へ移動させ、挿脱位置に停止している保持体35上に該案内部材45が保持されるようにする。
【0035】
(保持体による表皮の保持)
保持体35の第2保持面38が挿通部16を通り抜け、表皮14が該保持体35の第1保持面37と裏側成形型30との間に位置したら、
図9に示すように、第1アクチュエータ44を作動させて、挿脱位置にあった保持体35を押付位置に向けて移動させる。この際に、余長部分17の第1押さえ部17aに保持体35の底壁である第1保持面37が当接することで、該保持体35の移動に伴って表皮14の余長部分17が凹部40内へ押し込まれる。なお、保持体35を押付位置に向けて移動させる際は、表皮供給装置24の表皮把持部67による表皮14の把持を、表皮14の余長部分17が凹部40内へ押し込まれるのが規制されない適宜タイミングで解除する。また、保持体35を押付位置に向けて移動させる際は、案内部材把持部68による案内部材45の把持は継続し、押付位置へ移動開始した保持体35は該案内部材45から分離する。
【0036】
従って、保持体35を凹部40に嵌めて押付位置とすると、余長部分17の第1押さえ部17aが、保持体35の第1保持面37および凹部40の第1保持受面41により、保持体35の移動方向(上下方向)において押さえ付けられる。また、余長部分17の第2押さえ部17bが、保持体35の第2保持面38および凹部40の第2保持受面42により、保持体35の移動方向と交差する方向で押さえ付けられる。すなわち、余長部分17は、向きが異なる2つの部位で挟まれて押さえ付けられるようになり、実施例では略直角に交差する2方向において押さえ付けられる。そして、余長部分17の外縁部(
図4で1点鎖線で表示)が、保持体35による表皮14の保持位置に整合する。これにより、保持体35が基材12の開口13より広く形成されているので、表皮14は、該開口13の大きさより広い範囲を囲う保持位置で、裏側成形型30側に保持体35によって押さえ付けられている。また、表皮14は、キャビティ23における開口13を規定する開口規定突部58の周囲に位置する閉塞端から離間した位置で、裏側成形型30側に保持体35によって押さえ付けられることになる(
図11参照)。一方、表皮14における保持体35で押さえ付けられた余長部分17以外の部分は、裏側成形型30の裏面成形面31上に載置される。
【0037】
(表皮の弛み付与)
保持体35を押付位置に移動させ、基材12に形成される開口13の大きさより広い範囲を囲う保持位置で表皮14を押さえ付けた後に、
図10に示すように、第2アクチュエータ54を作動させて、各突き出しピン50,50を中間突出位置まで移動させ、裏側成形型30の裏面成形面31から突き出させる。これにより、裏側成形型30の裏面成形面31に載置されている表皮14を、各突き出しピン50,50が押した部分を中心として、該裏面成形面31から押し上げて適宜弛ませた状態とする。すなわち、表皮14は、端末側が裏面成形面31の周囲側へ引き込まれて、該裏面成形面31から浮き上がった状態となる。
【0038】
(成形型の型閉め)
次に、
図11に示すように、突き出しピン50,50により表皮14を弛ませた状態で、裏側成形型30に対して表側成形型32を近接移動させ、成形装置22を型閉めする。これにより、基材12の開口13より広く形成された保持体35の規定面36の中央寄りに、表側成形型32の開口規定突部58の当接面59が当接し、押付位置にある該保持体35の規定面36の外縁部にかかるようにキャビティ23を画成する。ここで、実施例では、キャビティ23における開口13を規定する閉塞端と表皮14の保持位置とが、該開口13の全周に亘って等間隔になっている。また、表皮14の端末が裏側成形型30および表側成形型32により挟まれ、該表皮14は、弛んだ状態でキャビティ23内にセットされる。なお、各突き出しピン50,50は、成形装置22の型閉めに際して、表側成形型32の表面成形面33に干渉しない適宜タイミングで待機位置へ移動させる。これにより表皮14は、余長部分17および端末がキャビティ23に露出しないように保持され、これ以外の成形品構成部分が、変形代を有するよう弛んだ状態でキャビティ23に収容される。
【0039】
(樹脂材料の注入)
表皮14のセットおよび成形装置22の型閉めが完了したら、
図12に示すように、注入ノズル56を介して、基材12をなす樹脂材料Pを、表皮14のキャビティ23に収容された部分(成形品構成部分)と裏側成形型30の裏面成形面31との間に注入する。このとき、
図13(a)〜
図13(c)に示すように、注入ノズル56から注入された樹脂材料Pが、表皮14を押しながらキャビティ23内へ広がっていく。このとき、
図13(b)に示すように、弛んだ状態の表皮14は、樹脂材料Pに押されることで、保持体35による表皮14の保持位置からキャビティ23の前述した閉塞端に向けて膨らむように変形する。そして、表皮14は、
図13(c)に示すように、該閉塞端を画成する保持体35の規定面36および表側成形型32の表面成形面33に押し付けられる。換言すると、樹脂材料Pにより、保持体35による表皮14の保持位置で囲われる領域の内側に向けて該表皮14を変形させて、保持体35の規定面36および表側成形型32の表面成形面33に該表皮14を押し付ける。
【0040】
そして、キャビティ23内へ所定量の樹脂材料Pの注入が完了し、所定の硬化時間が経過して樹脂材料Pが硬化することで、基材12の成形が完了する。また、基材12の成形に伴って表皮14が賦形され、基材12の表側に表皮14を配置すると共に、該基材12の開口13の開口縁裏側にかけて該表皮14を配置する。すなわち、表皮14は、基材12をなす樹脂材料Pを注入することで、基材12の表面12aに接合された被覆部14aおよび該基材12に形成される開口13の開口縁裏側へ巻き込んだ巻き込み部14bが賦形される。なお、保持体35による表皮14の保持位置が、巻き込み部14bの端縁となる(
図14参照)。そして、基材12の成形完了後に、
図14に示すように、表側成形型32を裏側成形型30から離間させて、成形装置22を型開きする。
【0041】
次いで、
図15(a)に示すように、第2アクチュエータ54を作動させて、各突き出しピン50,50を裏面成形面31から突き出させ、得られたピラーガーニッシュ10を、裏側成形型30から脱型させる。また、実施例では、第2アクチュエータ54の作動と連動して第1アクチュエータ44を作動させて、保持体35を押付位置から挿脱位置へ移動させる。このとき、保持体35の押付位置から挿脱位置までの移動距離よりも、各突き出しピン50,50の待機位置から突出位置までの移動距離が長いので、保持体35が挿脱位置に停止した後も各突き出しピン50,50が上方へ移動する。従って、保持体35が挿脱位置に停止した状態でピラーガーニッシュ10が突出位置まで移動することで、挿通部16が保持体35により拡開して該保持体35の通過が許容され、表皮14を該保持体35から分離させる(
図15(b))。
【0042】
(余剰部の分離)
成形装置22から脱型したピラーガーニッシュ10は、
図16に示すように、表皮14における基材12に接合されていない部分が、製品として不要な余剰部である。従って、ピラーガーニッシュ10を成形装置22から脱型した後に、カッタやはさみ等の切断器具で巻き込み部14bの端縁部に沿って表皮14を切断して、余剰部となる余長部分17を取り除く。また、ピラーガーニッシュ10の外縁部に沿って表皮14を切断して、余剰部を取り除くことで、ピラーガーニッシュ10の製造工程が完了する。
【0043】
従って、実施例の成形装置22を使用した成形品の製造方法によれば、表皮14を、基材12に開設される開口13より広い範囲を囲う保持位置で保持体35と裏側成形型30の凹部40とで押さえ付けたもとで、キャビティ23に収容された該表皮14の成形品構成部分と裏側成形型30の裏面成形面31との間に基材12をなす樹脂材料Pを注入する。これにより、キャビティ23内に注入した樹脂材料Pに押された表皮14の成形品構成部分を、保持体35による表皮14の保持位置で囲われる領域の内側に変形させ得るので、この状態で基材12を成形することで、基材12の表側から該基材12の開口13を介して開口縁裏側へ巻き込んだ状態に表皮14を賦形することができる。従って、基材12の成形時に、表皮14を基材12の表側に配置するだけでなく、該表皮14を該基材12の表側から開口13の開口縁裏側へ巻き込むように賦形し得るので、基材12の成形後に、表皮14を、開口13を介して該基材12の裏側へ巻き込んで接合する作業が不要となり、ピラーガーニッシュ10を効率よく製造することができる。
【0044】
そして、実施例の製造方法では、キャビティ23の閉塞端を画成する保持体35の規定面36および表側成形型32の表面成形面33に表皮14が押し付けられた状態で基材12を成形するようになり、ピラーガーニッシュ10の製品開口10aを綺麗に成形することができる。また、表皮14を介して基材12の開口13の形状が規定されるので、該開口13も綺麗に成形することができる。そして、表皮14の賦形が手作業によらないので、得られた各ピラーガーニッシュ10における表皮14の形状が一定となり、ピラーガーニッシュ10の品質の安定化も図ることができる。
【0045】
また、実施例の製造方法では、裏側成形型30に設けた凹部40に保持体35を嵌めて保持位置とすることで、第1保持面37および第1保持受面41により、第1押さえ部17aを保持体35の移動方向で挟んで押さえ付けると共に、第2保持面38および第2保持受面42により、第2押さえ部17bを保持体35の移動方向と交差する方向で挟んで押さえ付けることができる。従って、余長部分17の第1押さえ部17aおよび第2押さえ部17bを、異なる2方向で押さえ付けることで、表皮14を裏側成形型30に対して確実に保持することができる。従って、突き出しピン50により表皮14を弛ませる際や、キャビティ23に注入した樹脂材料Pにより基材12を成形する際に、表皮14がずれることが防止されるので、該表皮14を適切な形状に賦形することができる。
【0046】
また、実施例の製造方法では、挿入端46側から保持体35との受け渡し端47に向かうにつれて拡開する案内部材45を、保持体35にセットして、挿通部16に保持体35を通す前に案内部材45を挿入することで、該挿通部16を、保持体35が挿通可能な挿通開口となるようにした。従って、保持体35を、挿通部16に通し易くすることができ、表皮14を裏側成形型30にセットする際に、表皮14が保持体35に引っ掛かって変形したり裂けることを防止し得る。また、案内部材45により保持体35を挿通部16に通し易いので、表皮14をキャビティ23にセットする時間が短縮されて、更なる製造コストの低減が図られる。
【0047】
また、実施例の製造方法では、得られたピラーガーニッシュ10を裏側成形型30から脱型させる突き出しピン50,50を、基材12をなす樹脂材料Pの注入前に突き出して、表皮14を該裏側成形型30から離間させて弛ませることで、該樹脂材料Pの注入時に変形する変形代を該表皮14に作るようにした。これにより、樹脂材料Pの注入時には、キャビティ23に収容された表皮14が開口13を規定する閉塞端側へ膨らみ易くなり、保持体35の規定面36および表側成形型32の表面成形面33に該表皮14を押し付け易くし得る。従って、表皮14を無理なく賦形させることができるので、該表皮14の変形不良が生じ難くなり、得られたピラーガーニッシュ10の基材12や表皮14に形状不良が発生することを防止し得る。また、表皮14を弛ませることで、表皮14が伸び難い材料から形成されていても、該表皮14を適切に賦形することができる。
【0048】
また、表皮14には、
図17に示すように、該表皮14の保持位置に沿う脆弱部19を、表皮14に予め設けるようにしてもよい。この脆弱部19は、表皮14に、保持位置に沿ってV状溝を設けることで薄肉にしたものである。これにより、成形装置22によりピラーガーニッシュ10を成形した後に、余長部分17等の余剰部を適宜引っ張ることで脆弱部19が容易に切断され、カッタやはさみ等の切断器具を使用せずに該余剰部を分離することが可能である。また、余長部分17を引っ張ることで脆弱部19が切断され易いので、基材12に接合された表皮14の巻き込み部14bが該基材12から剥がれることも防止し得る。なお、脆弱部19は、薄肉とした部位に限らず、表皮14の保持位置に沿って切込みを形成したり、表皮14の保持位置に沿って多数の小孔を所要間隔でミシン目状に形成したもの等であってもよい。
【0049】
(変更例)
本発明は、前述した実施例の構成に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)保持体35により表皮14を押さえ付ける際に、例えば表皮把持部67や成形型に設けたクリップ等により表皮14の端末部分を保持して、該表皮14にテンションをかけるようにしてもよい。これにより、表皮14に皺が生じ難くすることができる。
(2)脱型手段50によって表皮14の変形代を形成するタイミングは、樹脂材料Pを注入する前であれば、保持体35で表皮14の余長部分17を押さえる前であっても後でもよく、型閉めする前であっても後であってもよい。また、脱型手段50によって表皮14の変形代を形成する際に、表皮14の余長部分17および端末部分の両方を保持していても、表皮14の余長部分17および端末部分の何れか一方を保持していても、表皮14の余長部分17および端末部分の両方を保持していなくてもよい。なお、脱型手段50で支持した表皮14を表側成形型32と挟んだ状態で、型閉めに連動して脱型手段50を退避させてもよい。
(3)型閉め前に当該表皮14を弛ませて変形代を作る工程を省略してもよい。
(4)保持体35は、裏側成形型30から独立した構成であってもよい。例えば、
図18に示すように、裏側成形型30の裏面成形面31に対向するよう表皮14をセットし(
図18(a))、保持体35を裏側成形型30の凹部40に嵌めて、該保持体35と凹部40とにより、表皮14の余長部分を押さえ付ける(
図18(b))。次いで、実施例と同様に、型閉めした後に、表皮14と裏側成形型30の裏面成形面31との間に樹脂材料Pを注入して、基材12を成形すると共に表皮14を賦形する。そして、基材12の成形完了後に、突き出しピン50,50でピラーガーニッシュ10を突き出すことで、基材12と表皮14との間にある保持体35が凹部40から離脱し(
図18(c))、後工程において表皮14の巻き込み部14bに連なった余長部分17を切断することで、該余長部分17と保持体35とをピラーガーニッシュ10から同時に分離させ得る。このように、保持体を越えて表皮をセットする必要がないので、表皮14に、保持体35を通すための挿通部16を形成する必要がない。なお、この場合に、保持体35を表側成形型32に着脱可能に装着し、表側成形型32に装着した保持体35によって型閉め時に表皮14の余長部分17を押さえ付け、型開き時に保持体35を表側成形型32から外してもよい。
(5)保持体35による表皮14の保持位置を調節することで、基材12の裏側に巻き込む巻き込み部14bの長さを変化させることができる。なお、保持体35による表皮14の保持位置の一部を、基材12の開口端(キャビティ23の閉塞端)に合わせることで、開口縁の一部範囲において表皮14を開口13の端面だけに配置することができる。
(6)実施例では、保持体35の保持面を底壁および外周壁とすると共に、保持受面を凹部40の底壁および内周壁とすることで、押さえ付け方向が異なる2方向で表皮14の余長部分17を押さえ付けるよう構成したが、保持体35の底壁および凹部40の底壁のみ(保持体35の移動方向)で余長部分17を押さえ付けるようにしてもよいし、保持体35の外周壁および凹部40の内周壁のみ(保持体35の移動方向と交差する方向)で余長部分17を押さえ付けるようにしてもよい。
(7)案内部材は、保持体35に配設したものであってもよい。このような案内部材は、保持体35における表面成形面33に臨む部位に、支軸により回転可能に枢支された複数の案内片を備え、各案内片は、保持体から斜めに起立した案内位置および該保持体に倒伏した格納位置に姿勢変位するよう構成される。これにより、各案内片が案内位置にある案内部材に対して表皮14をセットすることで、該挿通部16を拡開させることができる。また、案内部材の各案内片は、型閉めする際に表側成形型32に押されることで案内位置から格納位置へ姿勢変位するようになり、型閉め完了時には保持体35の規定面36を構成するようになる。
(8)案内部材45は、受け渡し端47の大きさを、保持体35の規定面36の外形形状より大きくしてもよい。案内部材45の受け渡し端47の輪郭形状は、保持体35の規定面36の輪郭形状と相似形とならない形状としてもよい。
(9)表皮14の挿通部16は、表皮14に形成した開口と、該開口の開口縁から余長部分17へ延在するスリットとから構成して、該開口の周囲が複数に分離する態様であってもよい。このような挿通部16は、保持体35または案内部材45が接触した際に、開口の周囲(余長部分17の一部)が複数に分離して捲れるよう変形することで、保持体35および案内部材45の挿通が許容される挿通開口を画成することができる。また、挿通部16は、余長部分17に設けたスリットのみから構成して、該余長部分17が複数に分離する態様であってもよい。このような挿通部16は、保持体35または案内部材45が接触した際に、余長部分17の一部が複数に分離して捲れるよう変形することで、保持体35および案内部材45の挿通が許容される挿通開口を画成することができる。
(10)脱型手段は、裏側成形型30の裏面成形面31の所要位置に複数形成した吹き出し孔から、裏面成形面31の外方へ空気を吹き出す構成であってもよい。このような脱型手段は、各吹き出し孔から吹き出した空気の圧力を利用して、裏側成形型30にセットした表皮14を上方へ浮き上がらせて弛ませることが可能である。
(11)突き出しピン50により表皮14を弛ませる際に、表皮14を、成形装置22の型閉め時にキャビティ23の上面をなす表面成形面33の位置よりも高く突出するよう押し上げて弛ませた後に、該キャビティ23にセットするようにしてもよい。このように弛ませた表皮14は、成形装置22を型閉めする際に表面成形面33により上方から押されるので、樹脂材料Pの注入前において、保持体35と凹部40とによる表皮14の保持位置より閉塞端側へ膨らむように変形する。従って、表皮14と裏側成形型30との間に樹脂材料Pを注入した際には、該樹脂材料Pに押された表皮14を、閉塞端側へ変形させ易くすることができる。
(12)基材14の成形完了後に、得られたピラーガーニッシュ10を、保持体35で表皮14の余長部分17を保持した状態で、脱型手段50により裏側成形型30から脱型する方向へ付勢して、表皮14を、保持体35による表皮14の保持位置に沿って切断するようにしてもよい。このようにすれば、裏側成形型30からのピラーガーニッシュ10の脱型と、余剰部となる余長部分17の切断とを同時に行うことができ、製造効率を更に高めることができる。なお、この場合には、表皮14の保持体35による保持位置に沿って脆弱部18を設けておくことで、表皮14が保持位置に沿って切断され易くすることができる。
(13)成形装置22は、裏側成形型30と表側成形型32とが上下方向に型開きするものに限らず、裏面成形面31および表面成形面33が縦向きとなるよう配置されて横方向に型開きするものや、裏面成形面31および表面成形面33が傾斜して配置されて斜め方向に型開きするものであってもよい。また、成形装置22は、裏側成形型30および表側成形型32が上下逆の関係で配設されたものであってもよい。
(14)本願の製造方法により製造される成形品は、実施例で例示したピラーガーニッシュ10に限らず、基材12の表側に配置された表皮14が該基材12の開口13を介して該基材12の裏側へ巻き込まれた表皮付きの成形品の全てが対象とされる。例えば、グローブボックスのリッド、ドアパネルおよびインストルメントパネル等の車両内装部材や、家具等が対象とされる。