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特開2015-112981車両用ホイールのリム構造およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-112981(P2015-112981A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】車両用ホイールのリム構造およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60B 21/12 20060101AFI20150526BHJP
   B60B 21/02 20060101ALI20150526BHJP
【FI】
   B60B21/12 Z
   B60B21/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-255636(P2013-255636)
(22)【出願日】2013年12月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩司
(57)【要約】
【課題】 タイヤ内部空間の気柱共鳴エネルギーを吸収する複数の共鳴器を低コストで装備できる車両用ホイールのリム構造およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
車両用ホイールのリム構造は、リム10に設けられた複数の共鳴器32を備えている。リム10は、波状の断面形状をなす溝形成部30を全周にわたって有している。この溝形成部30は、軸方向に並んで配された複数の環状溝30xを有している。この溝形成部30には、環状溝30xを被覆する被覆部材31が設けられており、これら環状溝30xが互いに独立した複数の副気室として提供される。被覆部材31には、複数の副気室30xをタイヤの内部空間からなる主気室2に連通させる連通孔31aが形成されている。これら副気室30xおよび連通孔31aにより、複数の共鳴器32が構成される。複数の共鳴器32の連通孔31aは周方向に離間して配置されている.
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムと、このリムに設けられた複数の共鳴器とを備え、
各共鳴器が、副気室と、上記リムに装着すべきタイヤの内部空間からなる主気室に上記副気室を連通させる連通孔と、を有する車両用ホイールのリム構造において、
上記リムは、周方向に延びる複数の溝が軸方向に並んで配された溝形成部を有し、
上記リムの溝形成部には、被覆部材が上記複数の溝を被覆するようにして設けられ、
上記複数の溝は、上記被覆部材に被覆されることにより互いに独立した複数の上記副気室としてそれぞれ提供され、
上記被覆部材または上記リムの溝形成部には、上記複数の副気室を上記主気室にそれぞれ連通させる複数の上記連通孔が形成され、
上記複数の共鳴器の連通孔は周方向に離間して配置されていることを特徴とする車両用ホイールのリム構造。
【請求項2】
上記溝形成部の複数の溝が上記リムの径方向外方向に開放され、上記被覆部材が上記溝形成部の外周に設けられ、この被覆部材に上記連通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイールのリム構造。
【請求項3】
上記溝形成部の複数の溝が上記リムの径方向内方向に開放され、上記被覆部材が上記溝形成部の内周に設けられ、この溝形成部に上記連通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイールのリム構造。
【請求項4】
上記溝形成部が波状の断面形状を有して上記リムの全周にわたって環状に形成され、上記被覆部材も環状をなすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ホイールのリム構造。
【請求項5】
リムと、このリムに設けられた複数の共鳴器とを備え、各共鳴器が、副気室と、上記リムに装着すべきタイヤの内部空間からなる主気室に上記副気室を連通させる連通孔と、を有する車両用ホイールのリム構造の製造方法において、
円筒体を提供する第1の工程と、
上記円筒体を成形することにより、波状の断面形状を有する環状の溝形成部を成形する工程であって、この溝形成部が軸方向に配された複数の環状溝を有する第2の工程と、
上記溝形成部の外周または内周に、全周にわたって被覆部材を設け、この被覆部材で上記複数の環状溝を被覆することにより、上記複数の副気室を得る第3の工程と、
上記円筒体を成形してリムを得る第4の工程と、
上記被覆部材または上記溝形成部に、上記複数の副気室にそれぞれ対応する上記複数の連通孔を、互いに周方向に離間して形成する第5工程と、
を備えたことを特徴とする車両用ホイールのリム構造の製造方法。
【請求項6】
上記第1、第2、第3、第4工程がこの順序で実行され、上記第3工程において、短円筒形状の上記被覆部材が上記溝形成部の外周に設けられることを特徴とする請求項5に記載の車両用ホイールのリム構造の製造方法。
【請求項7】
リムと、このリムに設けられた複数の共鳴器とを備え、各共鳴器が、副気室と、上記リムに装着すべきタイヤの内部空間からなる主気室に上記副気室を連通させる連通孔と、を有する車両用ホイールのリム構造の製造方法において、
同一断面形状を有する帯板を提供する工程であって、この帯板が、上記リムの最終形状または最終形状に近い断面形状を有するとともに、長手方向に延びる複数の溝を含む溝形成部を有する第1の工程と、
上記帯板を丸めて上記リムを得る第2の工程と、
上記リムの溝形成部の外周または内周を被覆部材により全周にわたって被覆する第3の工程と、
上記被覆部材または上記溝形成部に、上記複数の副気室にそれぞれ対応する上記複数の連通孔を、互いに周方向に離間して形成する第4の工程と、
を備えたことを特徴とする車両用ホイールのリム構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの内部空間で発生する気柱共鳴を低減できる車両用ホイールのリム構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行中にタイヤが路面から衝撃を受けると、タイヤの内部空間で気柱共鳴が発生し、ロードノイズの原因となる。そのため、この気柱共鳴エネルギーを減衰させロードノイズを低減する共鳴器(ヘルムホルツ共鳴器)を装備した車両用ホイールのリム構造が開発されている。
【0003】
上記共鳴器は、副気室と、この副気室をタイヤ内部空間からなる主気室に連通させる連通孔により構成されている。
上記共鳴器はリムの周方向に複数並べて配置されている。タイヤの衝撃入力箇所による減衰効果のばらつきを抑制するためである。
【0004】
上記リムの断面形状は全周にわたって等しいため、複数の独立した共鳴器を周方向に配置するためには工夫が必要である。
特許文献1に開示された車両用ホイールのリム構造では、リムと別体をなす複数の共鳴器が周方向に並んでリムに固定されている。しかし、このリム構造では共鳴器自体のコストが高く、共鳴器をリムに固定する作業も煩雑で、この点からもコストが嵩む。
【0005】
特許文献2に開示された車両用ホイールのリム構造では、リム外周の全周にわたり縦壁を形成し、この縦壁とビードシート部との間に環状の溝を形成し、この溝を周方向に離間して取り付けられた複数の隔壁で分割し、この分割された溝を被覆部材で覆うことにより、互いに独立した複数の副気室を形成している。
しかし、このリム構造では、周方向に間隔をおいて隔壁を取り付ける作業が煩雑であり、コストが嵩む。
【0006】
特許文献3に示す車両用ホイールのリム構造では、最初にリム用の型材が押し出し成形される。この押し出し成形の工程で、型材の幅方向に並んだ複数の空洞が作られる。この型材を丸めて両端を溶接することによりリムが得られる。その結果、上記複数の空洞は、上記リムの軸方向に並んだ複数の環状の副気室となる。さらにリムには複数の副気室に対応した連通孔が形成されるが、これら連通孔はタイヤの衝撃入力箇所による減衰効果のばらつきを抑制するために、周方向に等間隔をなして配置されている。
しかし、特許文献3のリム構造では、押し出し成形時に複数の空洞を作るため押し出し成形のコストが嵩む。また、型材を丸める工程で複数の空洞を有する複雑な断面形状が歪み、しかも両端を溶接する際に空洞を位置決めするのに困難が伴い、要求されるロードノイズ減衰効果を発揮できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−95163号公報
【特許文献2】特開2004−90669号公報
【特許文献3】特開2008−126806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、複数の共鳴器を備えた従来の車両用ホイールのリム構造は、ロードノイズ減衰効果を確実に発揮しつつ低コストで製造することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決したもので、
リムと、このリムに設けられた複数の共鳴器とを備え、
各共鳴器が、副気室と、上記リムに装着すべきタイヤの内部空間からなる主気室に上記副気室を連通させる連通孔と、を有する車両用ホイールのリム構造において、
上記リムは、周方向に延びる複数の溝が軸方向に並んで配された溝形成部を有し、
上記リムの溝形成部には、被覆部材が上記複数の溝を被覆するようにして設けられ、
上記複数の溝は、上記被覆部材に被覆されることにより互いに独立した複数の上記副気室としてそれぞれ提供され、
上記被覆部材または上記リムの溝形成部には、上記複数の副気室を上記主気室にそれぞれ連通させる複数の上記連通孔が形成され、
上記複数の共鳴器の連通孔は周方向に離間して配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、リムの軸方向に並んだ溝をリムと別体をなす被覆部材で被覆することによって互いに独立した副気室を形成するので、低コストでの製造が可能となり、しかも共鳴器を高精度で作れるので所望の気柱共鳴減衰効果を確実に得ることができる。
【0011】
一態様では、上記溝形成部の複数の溝が上記リムの径方向外方向に開放され、上記被覆部材が上記溝形成部の外周に設けられ、この被覆部材に上記連通孔が形成されている。
他の態様では、上記溝形成部の複数の溝が上記リムの径方向内方向に開放され、上記被覆部材が上記溝形成部の内周に設けられ、この溝形成部に上記連通孔が形成されている。
【0012】
好ましくは、上記溝形成部が波状の断面形状を有して上記リムの全周にわたって環状に形成され、上記被覆部材も環状をなす。
これによれば、波状の断面形状を有する溝形成部をロール成形や圧延等の手段を用いて、より低コストでリム構造を製造することができる。
【0013】
さらに本発明は、リムと、このリムに設けられた複数の共鳴器とを備え、各共鳴器が、副気室と、上記リムに装着すべきタイヤの内部空間からなる主気室に上記副気室を連通させる連通孔と、を有する車両用ホイールのリム構造の製造方法において、
円筒体を提供する第1の工程と、
上記円筒体を成形することにより、波状の断面形状を有する環状の溝形成部を成形する工程であって、この溝形成部が軸方向に配された複数の環状溝を有する第2の工程と、
上記溝形成部の外周または内周に、全周にわたって被覆部材を設け、この被覆部材で上記複数の環状溝を被覆することにより、上記複数の副気室を得る第3の工程と、
上記円筒体を成形してリムを得る第4の工程と、
上記被覆部材または上記溝形成部に、上記複数の副気室にそれぞれ対応する上記複数の連通孔を、互いに周方向に離間して形成する第5工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
上記方法によれば、円筒体をロール成形等で成形して溝形成部を得、この溝形成部をリムとは別体をなす被覆部材で被覆することにより、リム構造の製造コストを低減することができるとともに、共鳴器を高精度で製造できるため所望の気柱共鳴減衰効果を確実に得ることができる。
【0015】
好ましくは、上記第1、第2、第3、第4工程がこの順序で実行され、上記第3工程において、短円筒形状の上記被覆部材が上記溝形成部の外周に設けられる。
これによれば、短円筒状の被覆部材を用いるので、より一層製造コストを低減できる。
【0016】
本発明の別の製造方法では、
同一断面形状を有する帯板を提供する工程であって、この帯板が、上記リムの最終形状または最終形状に近い断面形状を有するとともに、長手方向に延びる複数の溝を含む溝形成部を有する第1の工程と、
上記帯板を丸めて上記リムを得る第2の工程と、
上記リムの溝形成部の外周または内周を被覆部材により全周にわたって被覆する第3の工程と、
上記被覆部材または上記溝形成部に、上記複数の副気室にそれぞれ対応する上記複数の連通孔を、互いに周方向に離間して形成する第4の工程と、
を備えたことを特徴とする。
この方法でも、共鳴器を高精度で作れるので所望の気柱共鳴減衰効果を確実に得ることができるとともに、リム構造の製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、所望の気柱共鳴減衰効果を有する車両用ホイールのリム構造を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態をなす車両用ホイールのリム構造の製造方法における、第1、第2の工程を示す要部縦断面図である。
図2図1の工程に続いて実行される第3の工程を示す要部縦断面図である。
図3図2の工程に続いて実行される第4、第5の工程を示すとともに完成品としての車両用ホイールのリム構造を示す要部縦断面図である。
図4図3中IV−IV線に沿うリム構造の断面図である。
図5】本発明の第2実施形態をなすリム構造の要部縦断面図である。
図6】本発明の第3実施形態をなすリム構造の要部縦断面図である。
図7】本発明の第4実施形態をなすリム構造の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態に係わる2ピースタイプのスチール製車両用ホイールのリム構造およびその製造方法について、図1図4を参照しながら説明する。
まず、完成品である車両用ホイール1について図3を参照しながら説明する。この車両用ホイール1は、周知の車両用ホイールと同様に、筒形状のリム10と、このリム10の内周面に溶接等で周縁部が固定されたディスク20とを備えている。
【0020】
上記リム10は、タイヤ(図示しない)のビード部を載せるための互いに離間した一対のビードシート部11と、これらビードシート部11に隣接しタイヤのビード部を保持する一対のフランジ部12と、上記一対のビードシート部11間に配置されビードシート部11より径の小さなウエル部13とを有している。
タイヤが装着された状態で、タイヤの内部空間は密閉された主気室2となる。
【0021】
上記ウエル部13は、径の異なる2つの円筒部を有している。径の小さな円筒部(車両用ホイール1を車両に装着した状態で車両から遠い方の円筒部)の内周面には、上記ディスク20の周縁部が溶接されている。
【0022】
上記ウエル部13における径の大きな円筒部(車両用ホイール1を車両に装着した状態で車両に近い方の円筒部)は、溝形成部30として提供される。
上記溝形成部30は、全周にわたって等しい波状の横断面形状を有しており、径方向内方向に突出する同一形状の複数(例えば4つ)の第1波部30aが、軸方向に等間隔をおいて配されている。別の見方で表現すると、径方向外方向に突出する同一形状の複数(例えば3つ)の第2波部30bが軸方向に等間隔をおいて配されている。
上記第1波部30aは、径方向外方向に開放された環状溝30x(周方向に延びる溝)を有している。
【0023】
上記溝形成部30の外周には、短円筒形状(環状)の被覆部材31が設けられている。この被覆部材31は、金属例えばリム10と同じスチールからなり、その両側縁が溝形成部30に溶接等により固定されている。
上記被覆部材31は、上記複数の環状溝30xを覆うとともに、上記第2波部30bに接することにより、複数の環状溝30xを互いに隔離している。これにより、これら環状溝30xは、それぞれ独立した副気室として提供される。
【0024】
上記被覆部材31には、各環状溝30x(副気室)に対応する連通孔31aが形成されており、各環状溝30x(副気室)は連通孔31aを介してタイヤの内部空間2(主気室)に連なっている。
上記複数の連通孔31aは互いに周方向に離れている。本実施形態では図4に示すように、4つの連通孔31aが周方向に等間隔離れた位置P1〜P4に形成されている。
【0025】
複数の副気室30xと対応する連通孔31aにより、リム10の軸方向に並んだ複数の共鳴器32(ヘルムホルツ共鳴器)が構成される。これら共鳴器32の共鳴周波数は、副気室30xの体積、連通孔31aの断面積および長さ等により決定されるが、この共鳴周波数が主気室2での気柱共鳴の減衰させたい周波数帯にほぼ対応するように、設計されている。
【0026】
上記車両用ホイール1のリム構造では、4つ(複数)の共鳴器32が、車両走行中にタイヤが路面から衝撃を受けた時に生じる主気室2の気柱共鳴のエネルギーを減衰させ、ロードノイズを低減することができる。4つの共鳴器32の連通孔31aは周方向に等間隔離間しているので、タイヤの衝撃入力箇所による減衰効果のばらつきを抑制することができる。
【0027】
上記構成の車両用ホイール1のリム構造では、複数の共鳴器32が軸方向に並んで配置され、従来のように周方向に並んで配置される構成ではないので、構成を簡略化できるとともに製造コストを抑えることができる。また、リム13に形成された環状溝30xを被覆部材31で覆うことにより、簡単に互いに独立した複数の副気室を得られるので、この点からも製造コストを抑えることができる。
なお、上記リム10は、断面形状が波状をなす溝形成部30により径方向の荷重に対する強度が高められる。
【0028】
次に、上記車両用ホイール1のリム構造の製造方法について説明する。
図1に示すように、第1の工程で、スチール製の帯板を丸め、その両端を溶接して円筒体10’を作る。第2の工程で、この円筒体10’をロール成形することによりその軸方向の所定箇所に、波状の断面形状を有する溝形成部30を全周にわたって成形する。本実施形態では、第1波部30aが円筒体10’から径方向内方向に突出するように成形する。
【0029】
次に、図2に示す第3の工程を実行する。すなわち、短円筒形状の被覆部材31を上記円筒体10’と同軸に位置合わせて軸方向に移動させることにより、被覆部材31を円筒体10’の溝形成部30の外周に被せる。この被覆部材31の内径は円筒体10’の外径と等しく、被覆部材31の内周面が溝形成部30の第2波部30bに接する。
【0030】
図2の状態で、被覆部材31の両側縁を溝形成部30に溶接する。この溶接に加えてまたはこの溶接の代わりに、被覆部材31を第2波部30bに溶接してもよい。
これにより、複数の環状溝30xが互いに独立した副気室となる。
【0031】
次に図3に示す第4工程を実行する。この第4工程では、円筒体10’をロール成形することにより、リム10を最終形状またはそれに近い形状に成形する。
さらに、リム10にディスク20を溶接する。
【0032】
最後に、第5工程を実行する。この第5工程では、被覆部材31に複数の連通孔31aを形成することにより、複数の共鳴器32を完成させる。
なお、上記第5工程の実行時期は最後でなくてもよく、例えば上記第3工程に先立って被覆部材31に連通孔31aを形成してもよいし、上記第3工程と第4工程の間に実行してもよい。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について図面を参照しながら説明する。これら実施形態において、先行する実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
図5に示す第2実施形態では、溝形成部30の外周に固定された被覆部材31に加えて、溝形成部30の内周にも他の短円筒形状の被覆部材34が固定されている。この被覆部材34は溝形成部30の第1波部30aに接し、第2波部30bで囲われた環状溝30y(径方向内方向に開放された環状溝)を塞いでおり、これにより、環状溝30yも副気室として提供されている。
【0034】
上記副気室となる環状溝30yは、第2波部30bに形成された連通孔30zと被覆部材31に形成された連通孔31bを介して主気室2に連なっている。これにより、他の複数の共鳴器35が構成される。これら連通孔30z、31bも、周方向に等間隔離れて複数形成されている。
上記共鳴器32,35は、等しい周波数帯域の音を減衰させてもよいし、異なる周波数帯域の音を減衰させるようにしてもよい。
【0035】
図6は、図5に示す第2実施形態の被覆部材31が省かれ、副気室となる環状溝30yと連通孔30zにより構成された共鳴器35だけを備えている。
【0036】
図5に示す第2実施形態では、短円筒形状の被覆部材34を被覆部材31とほぼ同時期に円筒体10’に固定してもよいし、リム10の成形後に固定してもよい。
図6に示す第3実施形態では、短円筒形状の被覆部材34を第1実施形態と同様に円筒体10’の溝形成部30に固定してもよいし、リム10の成形後(第4工程の後)に溝形成部30に固定してもよい。後者の場合、溝形成部30の成形はリム10の成形と同時期に行うこともできる。
【0037】
図7に示す第4実施形態は、第1実施形態と基本的構成は同じであるが、第2波部30bの幅が第1波部30aの幅より狭い。さらに溝形成部の成形後に円筒体10’またはリム10に軸方向の圧縮荷重をかけて第2波部30bを潰してもよい。
【0038】
上記第1〜第4実施形態において、溝形成部30の成形において、上述したように第1波部30aを円筒体10’から径方向内方向に突出させるように成形してもよいし、第2波部30bを円筒体10’から径方向外方向に突出させるように成形してもよいし、これら波部30a,30bをそれぞれ円筒体10’から径方向内方向、径方向外方向に突出させるように成形してもよい。
【0039】
次に、上記第1〜第4実施形態のリム構造を製造する他の方法を説明する。
同一断面形状を有する帯板を圧延により成形する。この断面形状は、上記リムの最終形状または最終形状に近い断面形状を有し、長手方向に延びる複数の溝を含む溝形成部30も成形されている。この帯板を所定長さに切断して丸めてリム10を得る。
次に、上記リム10の溝形成部30の外周または内周に、被覆部材31及び又は34を全周にわたって固定する。
上記被覆工程に相前後して、上記被覆部材31及び/又は上記溝形成部30に、上記複数の副気室にそれぞれ対応する上記複数の連通孔31a,31b,30zを、互いに周方向に離間して形成する。
なお、この製造方法を採用する場合、所定長さの帯板を溝形成部30の外周に巻くか、一対の半円筒形状の部材を用いて、被覆部材31を構成する。
【0040】
本発明は、上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用することができる。
ロール成形による製造方法において、短円筒形状の被覆部材の代わりに帯状の被覆部材を用いる場合、被覆部材の装着(第3工程)はリム成形(第4工程)の後であってもよい。この場合、溝形成部はリム全体の成形の工程で実行することができる(第2工程と第4工程の同時実行)。
【0041】
上記実施形態では車両ホイールはスチール製であったが、アルミ合金製であってもよい。アルミ合金製の場合にはリムとディスクを一体鋳造することもできる。
上記実施形態では、波状にロール成形することにより溝形成部を得たが、切削、鋳造により得てもよい。
上記実施形態では溝形成部をウエル部の大径部に設けたが、主気室に連なる任意の場所(一対のハンプ部間)、例えばウエル部の小径部や、ウエル部とビードシート部を連ねる立ち上がり部に設けてもよい。
上記実施形態では、溝形成部の溝(副気室)はリム全周にわたって形成され環状をなしているが、所定角度範囲にわたって周方向に延びていてもよい。
被覆部材は、上述した短円筒形状、帯板の他に、アルミテープ、樹脂シート等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、気柱共鳴を減衰する機能を有する車両用ホイールのリム構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
2 主気室(タイヤの内部空間)
10 リム
30 溝形成部
30x、30y 副気室(環状溝)
30z 連通孔
31、34 被覆部材
31a、31b 連通孔
32,35 共鳴器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7