特開2015-113048(P2015-113048A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-113048(P2015-113048A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】運搬車両
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/22 20060101AFI20150526BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20150526BHJP
【FI】
   B60P3/22 Z
   F17C13/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-257486(P2013-257486)
(22)【出願日】2013年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸太
(72)【発明者】
【氏名】柳本 泰伸
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AB05
3E172BA01
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD03
3E172EA03
3E172EA20
3E172EA30
3E172EB03
3E172EB10
(57)【要約】
【課題】液化ガスの充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリを小型化できる運搬車両を提供すること。
【解決手段】計測したバルクローリの周囲の騒音が、規定騒音レベル以上であれば、エンジンを駆動しても、エンジン音は騒音になり難い。よって、この場合は、エンジンを駆動し、そのエンジンの動力によって発電する発電機を、液送ポンプの動力源とする。一方、計測したバルクローリの周囲の騒音が、規定騒音レベルより小さい場合には、液送ポンプの動力源を商用電源とバッテリとの何れに設定する。これにより、エンジンを駆動する必要がなく、充填作業における騒音を抑制できる。また、液送ポンプの動力源を発電機と商用電源とで兼用するので、バッテリを小型化できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、液化ガスを貯留するタンクと、そのタンクに貯留される液化ガスを外部に送出する送出手段とを備え、前記タンクに貯留されている液化ガスを運搬する運搬車両において、
前記エンジンの動力を利用して電力を発電する発電機と、
電力を供給可能なバッテリと、
前記送出手段の動力源を、前記発電機と、前記バッテリとの何れかに設定する設定手段とを備えていることを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
前記動力源を設定するための指標を検出する指標検出手段を備え、
前記設定手段は、前記指標検出手段によって検出される指標に応じて、前記動力源を設定することを特徴とする請求項1に記載の運搬車両。
【請求項3】
前記送出手段は、前記発電機と、前記バッテリの他に商用電源を動力源とし、
前記設定手段は、前記動力源を、前記商用電源と、前記発電機と、前記バッテリとの何れかに設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬車両。
【請求項4】
前記指標検出手段は、周囲の騒音を検出する騒音検出手段であり、
前記設定手段は、
前記騒音検出手段によって検出された周囲の騒音が所定レベル以上の騒音かを判断する騒音判断手段を備え、
その騒音判断手段により周囲の騒音が所定レベル以上と判断された場合に前記動力源を前記発電機に設定し、周囲の騒音が所定レベルより小さいと判断された場合に前記動力源を前記バッテリに設定することを特徴とする請求項2または3に記載の運搬車両。
【請求項5】
前記指標検出手段は、現在位置を検出する位置検出手段であり、
前記設定手段は、
前記位置検出手段によって検出された現在位置が所定エリア内かを判断するエリア判断手段を備え、
そのエリア判断手段により現在位置が所定エリア外と判断された場合に前記動力源を前記発電機に設定し、現在位置が所定エリア内であると判断された場合に前記動力源を前記バッテリに設定することを特徴とする請求項2または3に記載の運搬車両。
【請求項6】
前記指標検出手段は、周囲の騒音を検出する騒音検出手段であり、
前記設定手段は、
前記騒音検出手段によって検出された周囲の騒音が所定レベル以上の騒音かを判断する騒音判断手段を備え、
その騒音判断手段により周囲の騒音が所定レベル以上と判断された場合に前記動力源を前記発電機に設定し、周囲の騒音が所定レベルより小さいと判断された場合に前記動力源を前記バッテリと前記商用電源との何れかに設定することを特徴とする請求項3に記載の運搬車両。
【請求項7】
前記指標検出手段は、現在位置を検出する位置検出手段であり、
前記設定手段は、
前記位置検出手段によって検出された現在位置が所定エリア内かを判断するエリア判断手段を備え、
そのエリア判断手段により現在位置が所定エリア外と判断された場合に前記動力源を前記発電機に設定し、現在位置が所定エリア内であると判断された場合に前記動力源を前記バッテリと前記商用電源との何れかに設定することを特徴とする請求項3に記載の運搬車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車両に関し、特に、液化ガスの充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリを小型化できる運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LPガスなどの液化ガスを貯留可能なタンクを搭載した運搬車両が知られている。運搬車両は、ガス製造工場などの供給基地においてタンク内に液化ガスを積載し、その液化ガスを配送先まで運搬して配送先に設けられた貯槽タンクへ充填する。
【0003】
図6は、集合住宅や事業所などに設けられたバルク貯槽90にLPガスを充填するバルクローリ100の流体回路を示した回路図である。バルクローリ100は、タンク103内のLPガスを、配送先のバルク貯槽90の近傍まで運搬する。
【0004】
そして、作業者により、ホースリール箱104から充填ホース115が送り出され、先端のカップリング116がバルク貯槽90に連結された後、作業者の操作によって、エンジン105の動力取出装置105a(PTO)により動力が取り出され、その動力で液送ポンプ106が駆動する。そうすると、タンク103内のLPガスは、バルブ130、配管143、液送ポンプ106、流量計107、フレキシブルチューブ117、充填ホース115を介してバルク貯槽90へ充填される。
【0005】
しかし、上述したLPガスの充填方法では、液送ポンプ106の動力源がエンジン105となっているため、充填作業の間、エンジン105を駆動し続ける必要があり、エンジン音が騒音になるという問題があった。
【0006】
そこで、次の特許文献1には、排気ブレーキ装置の空気タンクを作動回路を介して液送ポンプに連結し、空気圧により液送ポンプを作動させ、タンク内の液化ガスを圧送する技術が記載されている。この技術によれば、充填作業の間、エンジンを駆動にしておく必要がないので、エンジン音が騒音にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−67175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、本願出願人は、充填作業における騒音問題を解消すべく、液送ポンプを駆動する専用のバッテリをバルクローリに搭載し、充填作業する場合には、その専用のバッテリを動力源として液送ポンプを駆動することにした。これにより、充填作業する場合に、エンジンを駆動する必要がなく、充填作業における騒音問題を解消できた。しかしながら、例えば、配送先が多数ある場合には、大容量の電力が必要となり、その分、バッテリが大型化するという問題点があった。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、液化ガスの充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリを小型化できる運搬車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
請求項1記載の運搬車両によれば、次の効果を奏する。タンクに貯留される液化ガスを外部に送出する送出手段の動力源を、設定手段によってバッテリに設定することで、充填作業においてエンジンを駆動する必要がない。そのため、充填作業における騒音を抑制できる。
【0011】
一方で、エンジン音が騒音となるのは、周囲の環境による。例えば、エンジン音よりも周囲の騒音が大きければ、エンジン音は騒音となり難い。また、周囲に人が存在しないような場合であれば、エンジン音は騒音となり難い。そのため、このような周囲の環境で充填作業を行う場合には、送出手段の動力源を、設定手段によってエンジンの動力を利用して発電する発電機に設定する。これにより、全ての充填作業の動力源をバッテリにする場合に比べ、バッテリに要求される電力量を削減でき、バッテリを小型化できる。従って、液化ガスの充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリを小型化できるという効果がある。
【0012】
尚、請求項1記載のバッテリは、例えば、鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素充電池・リチウム・イオン電池などの蓄電池(二次電池)が好ましいが、蓄電池(二次電池)に限らず、送出手段に電力を供給可能であれば、一次電池、燃料電池であっても良い。
【0013】
請求項2記載の運搬車両によれば、請求項1記載の運搬車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。送出手段の動力源を、発電機と、バッテリとの何れにするかは、指標検出手段によって検出される指標に応じて設定される。そのため、例えば、作業者の感覚的な判断に応じて、動力源を何れに設定するよりも、確実に、充填作業における騒音を抑制できるという効果がある。
【0014】
請求項3記載の運搬車両によれば、請求項1又は2に記載の運搬車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。商用電源から電力を送出手段に供給する場合にも、充填作業においてエンジンを駆動する必要がない。そのため、充填作業における騒音を抑制できる。また、例えば、残りのバッテリでは充填作業を完了できない場合に、商用電源を動力源に設定することで、充填作業を完了させることができる。更に、商用電源を動力源にできることを考慮すれば、バッテリに要求される電力を一層削減でき、バッテリを一層小型化できるという効果がある。
【0015】
請求項4記載の運搬車両によれば、請求項2または3に記載の運搬車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。騒音判断手段により周囲の騒音が所定レベル以上と判断された場合、動力源は発電機に設定される。一方、周囲の騒音が所定レベルより小さいと判断された場合、動力源はバッテリに設定される。例えば、所定レベルをエンジン音と同等のレベルに設定する。この場合、騒音検出手段によって検出された周囲の騒音が所定レベル(エンジン音のレベル)以上と判断されれば、周囲の騒音より小さいエンジン音は騒音となり難い。よって、この場合、送出手段の動力源を発電機に設定し、エンジンを駆動しながら充填作業を行っても、エンジン音は騒音となり難い。一方、周囲の騒音が所定レベル(エンジン音のレベル)より小さいと判断されれば、エンジン音は騒音となる。よって、この場合は、送出手段の動力源をバッテリに設定することで、エンジンを駆動する必要がなく、エンジン音が騒音になるのを抑制できる。このように、周囲の騒音レベルに応じて、送出手段の動力源を設定することで、充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリを小型化できるという効果がある。
【0016】
請求項5記載の運搬車両によれば、請求項2又は3に記載の運搬車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。エリア判断手段により現在位置が所定エリア外と判断された場合には、動力源が発電機に設定される。一方、現在位置が所定エリア内であると判断された場合には、動力源がバッテリと商用電源との何れかに設定される。例えば、所定エリアを住宅街とする。この場合、現在位置が所定エリア(住宅街)の範囲外と判断されれば、周囲に人が存在している可能性が低く、エンジン音は騒音となり難い。よって、この場合は、送出手段の動力源を発電機に設定し、エンジンを起動しながら充填作業をしても、エンジン音は騒音になり難い。一方、現在位置が所定エリア(住宅街)の範囲内と判断されれば、周囲に人が存在している可能性が高く、エンジン音は騒音となる。よって、この場合は、送出手段の動力源をバッテリに設定することで、エンジンを起動する必要がなく、エンジン音が騒音になるのを抑制できる。このように、現在位置が所定エリアの範囲外か、範囲内かに応じて、送出手段の動力源を設定することで、充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリを小型化できるという効果がある。
【0017】
請求項6記載の運搬車両によれば、請求項3に記載の運搬車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。騒音判断手段により周囲の騒音が所定レベル以上と判断された場合、動力源は発電機に設定される。一方、周囲の騒音が所定レベルより小さいと判断された場合、動力源はバッテリと商用電源との何れかに設定される。例えば、所定レベルをエンジン音と同等のレベルに設定する。この場合、騒音検出手段によって検出された周囲の騒音が所定レベル(エンジン音のレベル)以上と判断されれば、周囲の騒音より小さいエンジン音は騒音となり難い。よって、この場合、送出手段の動力源を発電機に設定し、エンジンを駆動しながら充填作業を行っても、エンジン音は騒音となり難い。一方、周囲の騒音が所定レベル(エンジン音のレベル)より小さいと判断されれば、エンジン音は騒音となる。よって、この場合は、送出手段の動力源をバッテリと商用電源との何れかに設定することで、エンジンを駆動する必要がなく、エンジン音が騒音になるのを抑制できる。このように、周囲の騒音レベルに応じて、送出手段の動力源を設定することで、充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリを小型化できるという効果がある。
【0018】
請求項7記載の運搬車両によれば、請求項3に記載の運搬車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。エリア判断手段により現在位置が所定エリア外と判断された場合には、動力源が発電機に設定される。一方、現在位置が所定エリア内であると判断された場合には、動力源がバッテリと商用電源との何れかに設定される。例えば、所定エリアを住宅街とする。この場合、現在位置が所定エリア(住宅街)の範囲外と判断されれば、周囲に人が存在している可能性が低く、エンジン音は騒音となり難い。よって、この場合は、送出手段の動力源を発電機に設定し、エンジンを起動しながら充填作業をしても、エンジン音は騒音になり難い。一方、現在位置が所定エリア(住宅街)の範囲内と判断されれば、周囲に人が存在している可能性が高く、エンジン音は騒音となる。よって、この場合は、送出手段の動力源をバッテリと商用電源との何れかに設定することで、エンジンを起動する必要がなく、エンジン音が騒音になるのを抑制できる。このように、現在位置が所定エリアの範囲外か、範囲内かに応じて、送出手段の動力源を設定することで、充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリを小型化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】バルクローリと、バルク貯槽とを示す模式図である。
図2】バルクローリの電気的構成を示すブロック図である。
図3】LPガス充填作業処理を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態のバルクローリの電気的構成を示すブロック図である。
図5】第2実施形態のLPガス充填作業処理を示すフローチャートである。
図6】従来のバルクローリの流体回路を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態であるバルクローリ200と、液化ガスの配送先であるバルク貯槽50とを示す模式図である。バルクローリ200は、特に、液化ガスの充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリを小型化できるものである。
【0021】
バルクローリ200は、運転席を形成するキャブ202と、キャブ202の後方にLPガスを積載するタンク203と、キャブ202とタンク203との間に、電源BOX204と、ホースリールBOX205とがシャーシ201に支持されている。その他、シャーシ201には、発電機206、エンジン207、バッテリ208、液送ポンプ209が支持されている。また、エンジン207の近傍には、バルクローリ200の周囲の騒音を検出する騒音計7が設置されている。
【0022】
電源BOX204は、電源回路を収容するものである。電源BOX204には、発電機206で発電した電力を液送ポンプ209(液送ポンプ用モータ、以下同様)に供給する回路、バッテリ208に充電されている電力を液送ポンプ209に供給する回路、図示しない商用電源から供給される電力を液送ポンプ209に供給する回路などが収容されている。
【0023】
ホースリールBOX205は、充填ホース210を格納するものであり、充填ホース210は、図示しないホースリールに巻回されて格納されている。充填ホース210は、作業者により引き出され、その先端に取着されているカップリングがバルク貯槽50に連結される。この状態で液送ポンプ209を駆動することでタンク203内のLPガスをバルク貯槽50に充填できる。
【0024】
発電機206は、液送ポンプ209の動力源の一つであって、エンジン207のPTO軸から取り出される動力を利用して発電する。発電機206で発電した電力は、液送ポンプ209に供給される。バッテリ208は、液送ポンプ209の動力源の一つである蓄電池であり、例えば、鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素充電池・リチウム・イオン電池などを適用できる。バッテリ208に充電された電力は、液送ポンプ209に供給される。
【0025】
液送ポンプ209は、タンク203内に充填されているLPガスをバルク貯槽50に送り出すものである。液送ポンプ209は、発電機206、バッテリ208、図示しない商用電源(図2参照)のうち、いずれかを動力源として駆動する。
【0026】
騒音計7は、バルクローリ200の周囲の騒音を計測するものである。騒音計7で計測された騒音レベルは、予め規定されている規定騒音レベル(本実施形態では、エンジン207を駆動させた場合のレベル)以上かが比較される。その結果、騒音計7で計測された騒音レベルが、規定騒音レベル以上であれば、発電機206が液送ポンプ209の動力源として設定され、規定騒音レベルより小さければ、バッテリ208、又は、図示しない商用電源(図2参照)が、液送ポンプ209の動力源として設定される。
【0027】
図2は、バルクローリ200の電気的構成を示すブロック図である。バルクローリ200には、CPU2、ROM3、フラッシュメモリ4、スタートスイッチ6、騒音計7、モータドライバ8、スイッチ回路9が搭載されている。CPU2、ROM3、フラッシュメモリ4は、バスライン5を介して互いに接続されている。また、バスライン5、スタートスイッチ6、騒音計7、モータドライバ8、スイッチ回路9は、入出力ポート13を介して互いに接続されている。
【0028】
CPU2は、ROM3やフラッシュメモリ4に記憶されている固定値やプログラムに従って、入出力ポート13と接続された各部を制御する演算装置である。ROM3は、バルクローリ200で実行される制御プログラム等を格納した書換不能な不揮発性のメモリであり、図3のフローチャートに示すLPガス充填処理を実行するLPガス充填プログラム3aが格納されている。フラッシュメモリ4は、書換可能な不揮発性のメモリであり、規定騒音レベル4a(エンジン207を駆動させた場合のレベル)が記憶されている。
【0029】
スタートスイッチ6は、図3のフローチャートに示すLPガス充填処理の実行を入力する押しボタンであり、作業者によってスタートスイッチ6が押されると、LPガスの充填処理が開始される。モータドライバ8は、液送ポンプ用モータ10を介して液送ポンプ209と接続されており、液送ポンプ209を駆動させる液送ポンプ用モータ10に制御信号を出力する。例えば、モータドライバ8から液送ポンプ用モータ10には、運転開始、停止信号、大、中、小の3段階に分けられた出力信号等が出力される。出力信号を大、中、小の3段階に分けて出力することで、液送ポンプ用モータ10の回転数を高速、中速、低速に制御でき、ひいては、液送ポンプ209によってタンク203(図1参照)内のLPガスをバルク貯槽50(図1参照)に充填する充填速度を高速、中速、低速の3段階で制御できる。また、モータドライバ8からCPU2には、運転開始、停止の返信信号、各種エラー信号等が出力される。
【0030】
スイッチ回路9は、液送ポンプ209の動力源を設定する回路であり、入力側には、コンバータ11、発電機206を介してエンジン207と、バッテリ208と、充電器12とが接続されている。一方、出力側には、液送ポンプ用モータ10が接続されている。コンバータ11は、スイッチ回路9に接続されると共に、バッテリ用スイッチ12aを介してバッテリ208にも接続されている。そのため、CPU2からの信号によってバッテリ用スイッチ12aのON/OFFを切り替えることで、コンバータ11で直流に変換した電力を、バッテリ208に供給せずに、スイッチ回路9を介して液送ポンプ用モータ10に供給できるとと共に、かかる電力を、液送ポンプ用モータ10に供給せずに、バッテリ208に供給(充電)することもできる。
【0031】
このスイッチ回路9によれば、例えば、発電機206を動力源とする信号がCPU2からスイッチ回路9に出力されると、発電機206、コンバータ11からスイッチ回路9を介して液送ポンプ用モータ10に電力を供給する回路が連結される。即ち、発電機206を動力源とする場合には、エンジン207のPTO軸から動力が取り出され、発電機206によって電力が発電され、その発電した電力がコンバータ11によって直流に変換され、スイッチ回路9を介して液送ポンプ用モータ10に供給される。この場合、バッテリ208、商用電源211からスイッチ回路9を介して液送ポンプ用モータ10に電力を供給する回路は遮断されている。
【0032】
また、バッテリ208を動力源とする信号がCPU2からスイッチ回路9に出力されると、バッテリ208からスイッチ回路9を介して液送ポンプ用モータ10に電力を供給する回路が連結され、バッテリ208から液送ポンプ用モータ10に電力が供給される。尚、この場合には、発電機206、商用電源211から液送ポンプ用モータ10に電力を供給する回路は遮断されている。
【0033】
更に、商用電源211を動力源とする信号がCPU2からスイッチ回路9に出力されると、商用電源211、充電器12からスイッチ回路9を介して液送ポンプ用モータ10に電力を供給する回路が連結され、商用電源211から液送ポンプ用モータ10に電力が供給される。尚、この場合には、発電機206、バッテリ208から液送ポンプ用モータ10に電力を供給する回路は遮断されている。
【0034】
このように、CPU2からスイッチ回路9に、液送ポンプ209の動力源を指定する信号を送ることで、液送ポンプ209の動力源を設定することができる。
【0035】
図3は、LPガス充填処理を示すフローチャートである。このLPガス充填処理は、タンク203内のLPガスをバルク貯槽50(図1参照)に充填する処理であり、作業者によりスタートスイッチ6が押されると、LPガス充填プログラム3aに従って、CPU2によって実行される。尚、この状態で、エンジン207は停止状態、又は、アイドリング状態になっているものとする。
【0036】
LPガス充填処理では、まず、騒音計7からバルクローリ200の周囲の騒音レベルを取得する(S1)。そして、その取得した騒音レベルが、予め、フラッシュメモリ4に記憶されている規定騒音レベル以上かを判断する(S2)。その結果、取得した騒音レベルが規定騒音レベル以上であると判断した場合には(S2:Yes)、発電機206を動力源とする信号をスイッチ回路9に出力し(S3)、エンジン207の始動を要求する(S4)。
【0037】
そして、エンジン207が始動すると、エンジン207のPTO軸から取り出される動力を使って発電機206が電力を発電し、その発電した電力が液送ポンプ用モータ10に供給され、液送ポンプ209が始動する。これにより、タンク203に充填されているLPガスがバルク貯槽50に充填され、本処理を終了する。
【0038】
このように、図3に示すS1で取得した騒音レベル(バルクローリの周囲の騒音)は、規定騒音レベル(エンジンを駆動した場合のレベル)以上なので、この環境であれば、エンジン207を駆動したとしても、エンジン音は騒音になり難い。よって、この場合は、エンジン207を駆動し、そのエンジン207の動力によって発電する発電機206を、液送ポンプ209の動力源とすることで、バッテリ208の電力を消費せずに、液送ポンプ209を駆動できる。
【0039】
即ち、バッテリ208だけで、液送ポンプ209を駆動しようとすれば、大容量の電力が必要となり、バッテリ208が大型化する。しかし、バルクローリ200の周囲の騒音レベルが規定騒音レベル以上の場合には、発電機206を動力源とすることで、バッテリ208を小型化することができる。また、バッテリ208を小型化できるので、例えば、バッテリ208の設置位置の自由度が上げることができたり、タンク203の積載容量を大きくできるという効果がある。
【0040】
一方、S2の処理において、取得した騒音レベルが規定騒音レベルより小さいと判断した場合には(S2:No)、商用電源211に接続されているかが検出され(S5)、商用電源211に接続されていれば(S5:Yes)、商用電源211を動力源とする信号をスイッチ回路9に出力する(S6)。この場合には、商用電源211から電力が充電器12、スイッチ回路9を介して液送ポンプ用モータ10に供給され、液送ポンプ209が始動する。これにより、タンク203に充填されているLPガスがバルク貯槽50に充填され、本処理を終了する。
【0041】
このように、商用電源211が接続されている場合には、液送ポンプ209の動力源を商用電源211に設定することで、液送ポンプ209を駆動するのにエンジン207を駆動せずに、液送ポンプ209を駆動できる。よって、エンジン音が騒音とならず、充填作業における騒音を抑制できる。また、発電機206と、商用電源211とを液送ポンプ209の動力源として併用しているので、バッテリ208の消費電力も抑制でき、バッテリ208を小型化できる。
【0042】
一方、S5の処理において、商用電源211に接続されていないと判断すれば(S5:No)、バッテリ残量を取得し(S7)、その取得したバッテリ残量が所定量以上かを判断する(S8)。その結果、バッテリ残量が所定量以上であれば(S8:Yes)、バッテリ208を動力源とする信号をスイッチ回路9に出力する(S9)。この場合には、バッテリ208から電力がスイッチ回路9を介して液送ポンプ用モータ10に供給され、液送ポンプ209が始動する。これにより、タンク203に充填されているLPガスがバルク貯槽50に充填され、本処理を終了する。
【0043】
このように、バッテリ残量が所定量以上あれば(S8:Yes)、液送ポンプ209の動力源をバッテリ208に設定することで、液送ポンプ209を駆動するのにエンジン207を駆動せずに、液送ポンプ209を駆動できる。よって、エンジン音が騒音とならず、充填作業における騒音を抑制できる。また、発電機206と、商用電源211とを液送ポンプ209の動力源として併用しているので、バッテリ208の消費電力も抑制できるため、バッテリ208を小型化できる。尚、バッテリ残量が所定量よりも少ないと判断されれば(S8:No)、例えば、バッテリ残量が不足している旨を報知して(S10)、本処理を終了する。
【0044】
次に、図4図5を参照して第2実施形態のバルクローリ300について説明する。上述した第1実施形態のバルクローリ200は、騒音計7で計測した騒音が、規定騒音レベル(エンジン207を駆動した場合のレベル)以上であれば、発電機206を液送ポンプ209の動力源、規定騒音レベルより小さければ、バッテリ208と商用電源211との何れかを液送ポンプ209の動力源に設定するものである。
【0045】
これに対し、第2実施形態のバルクローリ300は、バルクローリ300の現在位置をGlobal Positioning System(以下、「GPS」)で検索し、バルクローリ300の現在位置が住宅街の範囲外であれば、発電機206を液送ポンプ209の動力源、住宅街の範囲内であれば、バッテリ208と、商用電源211との何れかを動力源に設定するものである。
【0046】
図4は、第2実施形態のバルクローリ300の電気的構成を示すブロック図である。尚、第1実施形態のバルクローリ200と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
バルクローリ300には、騒音計7に代えて、GPS14が搭載されている。GPS14は、人工衛星を利用してバルクローリ300の現在位置を割り出すシステムである。また、フラッシュメモリ4には、規定騒音レベル4aに代えて、地図データ4bが記憶されている。地図データ4bには、住宅街と、それ以外の範囲とを区画するデータが含まれている。尚、本実施形態で言う住宅街とは、都市計画法の用途地域で「住居系」、または、「商業系」に含まれる範囲を指し、「工業系」を含むその他の範囲を、それ以外の範囲としている。但し、住宅街を、どの範囲に設定するかは、これに限定されず、任意に設定可能に構成されている。
【0048】
図5は、第2実施形態のバルクローリで実行されるLPガス充填処理を示すフローチャートである。尚、図3に示す液化ガス充填処理と共通する処理については、共通のステップ番号を付し、その説明は省略する。
【0049】
LPガス充填処理では、GPS14からバルクローリ300の現在位置を取得する(S101)。そして、その取得した現在位置が、地図データ4bに含まれている「住宅街」の範囲外かを判断する(S201)。その結果、現在位置が住宅街の範囲外であると判断した場合には(S201:Yes)、図3で説明したのと同様に、発電機206を動力源とする信号をスイッチ回路9に出力し(S3)、エンジン207の始動を要求する(S4)。
【0050】
このように、図5に示すS101で取得したバルクローリ300の現在位置が住宅街の範囲外であれば、エンジン207を駆動したとしても、バルクローリ300の周囲に人が存在している可能が低く、エンジン音は騒音になり難い。よって、この場合は、エンジン207を駆動し、そのエンジン207の動力によって発電する発電機206を、液送ポンプ209の動力源とすることで、バッテリ208の電力を消費せずに、液送ポンプ209を駆動できる。
【0051】
即ち、バッテリ208だけで、液送ポンプ209を駆動しようとすれば、大容量の電力が必要となり、バッテリ208が大型化する。しかし、バルクローリ300が住宅街の範囲外に位置しているような場合には、発電機206を液送ポンプ209動力源とすることで、バッテリ208を小型化することができる。
【0052】
一方で、S201の判断において、現在位置が住宅街の範囲内であると判断した場合には(S201:Yes)、図3で説明したのと同様に、S5以降の処理を実行する。かかる場合には、第1実施形態と同様に、液送ポンプ209の動力源が商用電源211とバッテリ208との何れかに設定されるので、液送ポンプ209を駆動するのにエンジン207を駆動せずに、液送ポンプ209を駆動できる。よって、エンジン音が騒音とならず、充填作業における騒音を抑制できる。また、発電機206と、商用電源211とを液送ポンプ209の動力源として兼用しているので、バッテリ208の消費電力も抑制でき、バッテリ208を小型化できる。
【0053】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0054】
上述した第1実施形態では、騒音計7で計測した騒音レベルが規定騒音レベル以上か否かに応じて、第2実施形態では、GPS14で検出された現在位置が「住宅街」か否かに応じて、液送ポンプ209の動力源を、発電機206に設定するかを判断する場合について説明した。しかし、液送ポンプ209の動力源を、発電機206に設定するかを判断する指標としては、これらに限られない。
【0055】
例えば、指標は現在時刻であっても良い。この場合、例えば、Real Time Clock(以下、「RTC」)を搭載し、スタートスイッチ6が押された場合、RTCから現在時刻を取得する。取得した時刻が午前9時〜午後6時の間であれば、バルクローリの周囲は騒々しい時間帯であるとし、液送ポンプ209の動力源として発電機209を設定し、取得した時刻が、かかる時間帯以外であれば、液送ポンプ209の動力源をバッテリ208、又は、商用電源211に設定するように構成すれば良い。かかる場合でも、第1、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
また、かかる指標は、配送先であるバルク貯槽に付設されている無線タグから送信される情報でも良い。この場合、無線タグには、配送先であるバルク貯槽毎に、液送ポンプ209の動力源を発電機206、バッテリ208、商用電源211の何れに設定するかを記憶する。一方、バルクローリには、無線タグに記憶されている情報を読み取る読取装置を搭載する。そして、配送先であるバルク貯槽毎に、無線タグに記憶されている情報を読み込み、その読み込んだ情報に従って、液送ポンプ209の動力源を設定するように構成すれば良い。かかる場合、無線タグに、バルク貯槽毎の周囲の状況に応じた情報を記憶しておけば、第1,第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
また、無線タグに記憶する情報と、バルク貯槽の設置場所とを関連付けてバルクローリのフラッシュメモリ4に記憶しておき、GPS14によってバルクローリの現在位置から、これから充填するバルク貯槽を特定し、その特定したバルク貯槽と関連付けて記憶されている情報を読み出し、その読み出した情報に従って、液送ポンプ209の動力源を設定するように構成しても良い。かかる場合にも、バルク貯槽毎の周囲の状況に応じた情報を記憶しておけば、第1,第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0058】
また、かかる指標を、複数組み合わせて構成しても良い。例えば、第2実施形態では、バルクローリの現在位置が住宅街の範囲内であれば、液送ポンプ209の動力源をバッテリ208、商用電源211に設定する場合について説明した。しかし、バルクローリの現在位置が住宅街の範囲内であっても、現在時刻が午前9時〜午後6時の時間帯であれば、液送ポンプ209の動力源を発電機206に設定するように構成しても良い。
【0059】
また、上述した第1、第2実施形態では、液送ポンプ209の動力源を、バッテリ208と、商用電源211との何れか一方に設定する場合、図3図5のフローチャートに示すS5の処理において、商用電源211が接続されているかを判断する場合について説明した。しかし、かかる場合、商用電源211よりもバッテリ208を優先的に液送ポンプ209の動力源と設定するように構成しても良い。即ち、かかる場合には、まず、図3図5のフローチャートに示すS5の処理に代えて、S7、S8の処理を先行させる。そして、バッテリ208の残量が所定量以上であれば、バッテリ208を動力源に設定し、バッテリ208の残量が所定量よりも少ない場合に、商用電源211に接続する旨を報知するように構成しても良い。
【0060】
また、上述した第1、第2実施形態では、液送ポンプ209の動力源として、発電機206、バッテリ208、商用電源211の何れかを設定する場合について説明したが、液送ポンプ209の動力源としては、少なくとも、発電機206と、バッテリ208との一方を設定可能に構成されていれば良い。かかる場合でも、LPガスの充填作業における騒音を抑制しつつ、充填作業に使用するバッテリ208を小型化できる。
【符号の説明】
【0061】
7 騒音計(騒音検出手段の一例)
9 スイッチ回路(設定手段の一例)
10 液送ポンプ用モータ(送出手段の一例)
14 GPS(位置検出手段の一例)
200 バルクローリ(運搬車両の一例)
203 タンク
206 発電機
208 バッテリ
207 エンジン
209 液送ポンプ(送出手段の一例)
211 商用電源
S2 騒音判断手段の一例
S201 エリア判断手段の一例
図1
図2
図3
図4
図5
図6