(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-113077(P2015-113077A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】タイヤ・ホイール組立体
(51)【国際特許分類】
B60B 19/00 20060101AFI20150526BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20150526BHJP
B60C 7/00 20060101ALI20150526BHJP
B60B 9/00 20060101ALN20150526BHJP
【FI】
B60B19/00 K
B60K7/00
B60C7/00 A
B60B9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-258382(P2013-258382)
(22)【出願日】2013年12月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】小池 明大
【テーマコード(参考)】
3D235
【Fターム(参考)】
3D235BB25
3D235BB45
3D235CC42
3D235FF34
3D235FF35
3D235GA03
3D235GA13
3D235GA64
3D235GB23
3D235GB34
3D235HH04
3D235HH07
(57)【要約】
【課題】冷却効果に優れたタイヤ・ホイール組立体を提供する。
【解決手段】ホイール14とトレッド部16を含むタイヤ18との組立体であって、内側筒部20と、その外周を取り囲む外側筒部22と、両筒部をつなぐ連結部24と、を備えるタイヤ・ホイール組立体10において、内側筒部20に貫通穴40を設け、連結部24を、内側筒部20と外側筒部22との間隙を周方向に沿って塞ぐ膜状支持壁36で構成し、ホイール14の内側から貫通穴40を通って内側筒部20の外側に流入した空気Kを外側に排出するための排気穴42を、膜状支持壁36に設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールとトレッド部を含むタイヤとの組立体であって、
円筒形状の内側筒部と、前記内側筒部の外周を取り囲む円筒形状の外側筒部と、前記内側筒部と前記外側筒部をつなぐ連結部と、を備え、
前記内側筒部が、貫通穴を備え、
前記連結部が、前記内側筒部の外周の空間を周方向に沿って塞ぐ膜状支持壁を含み、前記ホイールの内側から前記貫通穴を通って前記内側筒部の外側に流入した空気を前記内側筒部の幅方向外方に排出するための排気穴が、前記膜状支持壁に設けられた
ことを特徴とするタイヤ・ホイール組立体。
【請求項2】
前記タイヤが非空気入りタイヤである請求項1記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項3】
前記連結部が、前記内側筒部の幅方向両端部に設けられた一対の前記膜状支持壁を含み、前記貫通穴が前記一対の膜状支持壁の間に設けられ、前記一対の膜状支持壁のうち少なくとも一方に前記排気穴が設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項4】
前記貫通穴が前記一対の膜状支持壁の間において車内側に寄せて設けられ、前記一対の膜状支持壁のうち車外側の膜状支持壁に前記排気穴が設けられたことを特徴とする請求項3記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項5】
前記一対の膜状支持壁が、それぞれ幅方向外側に膨らんだ湾曲状をなすとともに、補強梁により互いに連結されたことを特徴とする請求項3又は4記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項6】
前記膜状支持壁の外側面に、タイヤ回転方向前方側から前記排気穴を覆うフードが設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項7】
前記内側筒部が、前記ホイールのリムと、前記リムに外嵌する取付筒部とからなり、
前記タイヤが、前記取付筒部と、前記外側筒部と、前記連結部と、前記外側筒部の外周面に設けられたゴム弾性体からなる前記トレッド部とを含む非空気入りタイヤであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項8】
前記ホイールは内側にモータが組み込まれるものであり、前記内側筒部は前記モータの外周を取り囲むものであり、前記モータを冷却するための空気流路となる流路部が、前記内側筒部と前記モータの外周面との間に当該外周面を取り巻くように設けられ、前記貫通穴が前記流路部に開口して設けられ、前記排気穴が前記流路部から前記貫通穴を通って前記内側筒部の外側に流入した空気を前記内側筒部の幅方向外方に排出するものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項9】
前記内側筒部が、前記ホイールのリムと、前記リムに外嵌する取付筒部とからなり、前記リムが間隙をおいて前記モータの外周面を取り囲むことで、前記流路部が設けられたことを特徴とする請求項8記載のタイヤ・ホイール組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ・ホイール組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の動力源であるモータ(電動機)は、車両に1つのモータを積むオンボード方式と、四輪の各輪にモータを組み込むインホイールモータ方式がある。インホイールモータ方式は、直接車輪にトルクを伝えるため応答性が高く、また車両制御の発展性が高いというメリットがある。その一方で、モータの発する熱がホイールの内部にこもりやすいというデメリットがある。
【0003】
インホイールモータ方式に用いられるタイヤ・ホイール組立体として、特許文献1には、インホイールモータの内側に空気を通して、モータ内部の発熱部を冷却することが開示されている。しかしながら、この場合、空気を流通させるために送風機を用いる必要がある。また、発熱部で加熱された空気はホイール内に排出されるため、インホイールモータの冷却効率は必ずしも高いとは言えない。
【0004】
特許文献2及び3には、スポークとして金属ばね部材を備えた非空気入りタイヤを用いてタイヤ・ホイール組立体を構成することにより、インホイールモータの発する熱を金属ばね部材で放熱することが開示されている。しかしながら、かかる放熱のみでは、インホイールモータの冷却効率が高いとは言えない。
【0005】
一方、特許文献4には、ブレーキ熱によって加熱されるホイールを冷却するために、非空気入りタイヤとホイールの組立体において、ホイールのリムに貫通穴を設けるとともに、非空気入りタイヤの内周輪に貫通穴を設けて、ホイール冷却効果を高めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−015576号公報
【特許文献2】特開2012−187892号公報
【特許文献3】特開2012−187893号公報
【特許文献4】特開2008−049943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにタイヤ・ホイール組立体においては、ホイールの内側に組み込まれるモータの発する熱やブレーキ熱がホイール内部にこもらないように冷却効果を高めることが求められる。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、冷却効果に優れたタイヤ・ホイール組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体は、ホイールとトレッド部を含むタイヤとの組立体であって、円筒形状の内側筒部と、前記内側筒部の外周を取り囲む円筒形状の外側筒部と、前記内側筒部と前記外側筒部をつなぐ連結部と、を備え、前記内側筒部が貫通穴を備え、前記連結部が、前記内側筒部の外周の空間を周方向に沿って塞ぐ膜状支持壁を含み、前記ホイールの内側から前記貫通穴を通って前記内側筒部の外側に流入した空気を前記内側筒部の幅方向外方に排出するための排気穴が、前記膜状支持壁に設けられたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホイールの内側で加熱された空気が、回転による遠心力により、内側筒部の貫通穴を通って、内側筒部と外側筒部の間に流入し、更に膜状支持壁に設けられた排気穴から幅方向外方に排出される。このようにホイールの内側から径方向外方への空気の流路を確保することができるので、タイヤ回転時における冷却効果を高めることができる。また、内側筒部と外側筒部を連結する連結部を、周方向に延びる膜状支持壁で構成したので、径方向剛性の増加を抑えつつ、周方向剛性を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体の側面図。
【
図3】第2実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体の断面図。
【
図4】第3実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体の半断面図。
【
図5】第4実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体の半断面図。
【
図6】第4実施形態における膜状支持壁の要部拡大斜視図。
【
図7】同膜状支持壁の変更例を示す要部拡大斜視図。
【
図8】第5実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
図1及び
図2は、第1実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体10を示したものである。本実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体10は、インホイールモータ方式の電気自動車に用いられるものであり、内側にモータ(インホイールモータ)12が組み込まれるホイール14と、踏面部としてのトレッド部16を含むタイヤ18とを備えてなる。
【0014】
タイヤ・ホイール組立体10は、モータ12の外周を取り囲む円筒形状の内側筒部20と、該内側筒部20の外周を取り囲む円筒形状の外側筒部22と、これら内側筒部20と外側筒部22をつなぐ連結部24とを備える。この例では、内側筒部20は、ホイール14のリム26と、該リム26に外嵌するタイヤ18の取付筒部28とからなる、内外二層構造をなしている。
【0015】
詳細には、ホイール14は、金属等からなる剛体であって、円筒形状のリム26と、リム26の軸方向一端部に設けられたディスク30とを備え、該ディスク30にモータ12が固定されている。モータ12としては、ロータがステータの外側に配置されるアウターロータ型でもよく、ロータがステータの内側に配置されるインナーロータ型でもよい。いずれにしても、ロータ側が動力伝達部32を介してディスク30に連結され、ステータ側がサスペンションリンク34を介して車体側に固定されており、ロータの回転によりタイヤ・ホイール組立体10が回転するように構成されている。
【0016】
タイヤ16は、非空気入りタイヤであり、取付筒部28と、外側筒部22と、連結部24と、トレッド部16とを備えてなる。取付筒部28と外側筒部22と連結部24は、金属や樹脂等により形成されている。取付筒部28は、リム26の外周面に外嵌して取り付けられる円筒形状をなす。外側筒部22は、取付筒部28の周りを同軸にかつ間隙をおいて取り囲む。トレッド部16は、外側筒部22の外周面に設けられたゴム弾性体からなる。トレッド部16としては、従来の空気入りタイヤのトレッドゴムと同様のものを用いることができ、図示しないが、通常は、表面に従来の空気入りタイヤと同様のトレッドパターンが設けられる。なお、トレッド部16にはベルトなどの補強層を埋設してもよく、また埋設しなくてもよい。
【0017】
連結部24は、内側筒部20の外周の空間、この例では内側筒部20と外側筒部22との間隙を、周方向に沿って塞ぐ膜状支持壁36からなる。すなわち、膜状支持壁36は、外側筒部22を内側筒部20に対して支持する壁であって、内側筒部20と外側筒部22との間を塞ぐ膜状をなし、タイヤ周方向に延びて形成されている。この例では、膜状支持壁36は、
図1に示すように、内側筒部20と外側筒部22との間隙を全周にわたって塞ぐように、タイヤ全周にわたって設けられている。そのため、膜状支持壁36は、リング板状をなし、その内周縁が内側筒部20に、外周縁が外側筒部22にそれぞれ固定されている。
【0018】
図2に示すように、連結部24は、内側筒部20の幅方向両端部に設けられた一対の膜状支持壁36,36からなる。すなわち、上記膜状支持壁36は、内側筒部20と外側筒部22の端部同士を連結するものであり、幅方向両端部に左右一対で設けられている。また、これら一対の膜状支持壁36,36は、それぞれ幅方向外側に膨らんだ湾曲状に形成されている。すなわち、断面円弧状をなす膜状支持壁36は、円弧の凸部が幅方向外側を向くように設けられている。
【0019】
上記構成において、本実施形態では、モータ12を冷却するために次の構成が採用されている。
【0020】
まず、内側筒部20とモータ12の外周面12Aとの間には、モータ12を冷却するための空気流路となる第1流路部38が、モータ12の外周面12Aを取り巻くように設けられている。第1流路部38は、ホイール14のリム26が間隙をおいてモータ12の外周面12Aを取り囲むことにより、モータ12の全周にわたって設けられている。
【0021】
また、内側筒部20には、第1流路部38に開口する貫通穴40が設けられている。貫通穴40は、内側筒部20の周壁に設けられて、その内周側と外周側を連通させる穴である。詳細には、ホイール14のリム26とタイヤ18の取付筒部28にそれぞれ貫通穴40A,40Bが設けられており、リム26と貫通穴40Aと取付筒部28の貫通穴40Bが少なくとも一部において重なることにより連通するように設けられている。
【0022】
貫通穴40は、内側筒部20の幅方向中央部に設けられており、この例では幅方向中央部に限定して設けられている。従って、貫通穴40は、上記一対の膜状支持壁36,36の間(即ち、一対の膜状支持壁によって挟まれた領域内)に設けられている。貫通穴40の形状は特に限定しないが、この例では内側筒部20の幅方向に延びる長穴状に形成されている。貫通穴40は、周方向に間隔をおいて複数設けられており、この例では周方向において等間隔に配置されている。
【0023】
そして、膜状支持壁36には、第1流路部38から貫通穴40を通って内側筒部20の外側に流入した空気Kを内側筒部20の幅方向外方に排出するための排気穴42が設けられている。排気穴42は、一対の膜状支持壁36,36によって閉塞された内側筒部20と外側筒部22との間の空間を、外部に連通させるための開口部である。そのため、排気穴42を設けることにより、内側筒部20と外側筒部22との間には、モータ12で加熱された空気Kを組立体10の幅方向外方に排出するための空気流路となる第2流路部44が設けられている。第2流路部44は、タイヤ18を非空気入りタイヤとしたことにより、タイヤ18内において貫通穴40と排気穴42との間で形成されている。そのため、ホイール14の内側のモータ12が配設された位置から、その外周を取り囲む内側筒部20を経て、タイヤ18内を通り幅方向外側に繋がる空気流路が形成されている。
【0024】
図1に示すように、排気穴42は、周方向に間隔をおいて複数設けられており、この例では周方向において等間隔に配置されている。排気穴42は、この例では、貫通穴40が設けられた周方向位置と少なくとも一致する位置に設けられており、排気効果を高めている。また、隣接する貫通穴40の間の中間位置にも排気穴42が設けられている。なお、排気穴42は必ずしも貫通穴40と周方向において一致させて設ける必要はない。
【0025】
また、排気穴42は、
図2に示すように、膜状支持壁36の径方向における中央部に設けられている。この例では、上記のように膜状支持壁36が外側に膨らんだ湾曲状に形成されており、その頂部(即ち、最も外側に膨らんだ位置)に排気穴42が設けられ、排気効果を高めている。また、排気穴42は、一対の膜状支持壁36,36の双方に設けられている。
【0026】
以上よりなる本実施形態のタイヤ・ホイール組立体10であると、
図2に示すように、インホイールモータ12の外周面12Aを取り巻く第1流路部38において、該モータ12により加熱された空気Kは、回転による遠心力により、内側筒部20の貫通穴40を通って、内側筒部20と外側筒部22の間の第2流路部44に導かれ、更に、膜状支持壁36に設けられた排気穴42から幅方向外方に排出される。このようにモータ12の周りから放射方向に空冷のための流路を設けたことにより、
図2に示すように、モータ12に対してその側方から外気が流れ込み、モータ12で加熱された空気Kが遠心力で放射方向に流れるよう制御することができる。そのため、タイヤ回転時にモータ12を冷却するための空気流量を上げることができ、インホイールモータ12の冷却効果を高めることができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、タイヤ18を非空気入りタイヤとしたことにより、インホイールモータ12を空冷するための空気流路の確保が容易であるだけでなく、タイヤ18の剛性バランスの制御が容易である。特に、内側筒部20と外側筒部22を連結する連結部24を周方向に延びる膜状支持壁36で構成したので、タイヤ径方向の剛性増加を抑えつつ、タイヤ周方向の剛性を効果的に高めることができ、従って、乗り心地性能の悪化を抑えながら、トルクの応答性を高めることができる。
【0028】
また、金属や樹脂などの剛性材料からなる膜状支持壁36が断面湾曲状に形成され、タイヤ径方向に撓み変形しやすいので、タイヤ周方向の剛性を維持しつつ、タイヤ径方向の剛性を効果的に下げることができる。また、該膜状支持壁36に排気穴42が設けられていることからも、タイヤ径方向の剛性低下に寄与することができる。
【0029】
本実施形態によれば、また、貫通穴40を内側筒部20の幅方向中央部に設けたことにより、貫通穴40を通ってタイヤ18内の第2流路部44に流入した空気Kを、幅方向両側の膜状支持壁36,36の排気穴42から効率良く排出することができる。しかも、貫通穴40が内側筒部20の幅方向に延びる長穴状であるため、その効果を高めることができる。
【0030】
図3は、第2実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体10Aを示したものである。この例では、一対の膜状支持壁36,36のうちの一方のみに排気穴42が設けられている。このように排気穴42は、一対の膜状支持壁36,36の少なくとも一方に設ければ、必ずしも両方に設けなくてもよい。
【0031】
一方の膜状支持壁36のみに排気穴42を設ける場合、タイヤハウス内での熱のこもりを抑制して冷却効果を高めるためには、車内側よりも車外側に排気することが好ましい。そのため、本実施形態では、車外側の膜状支持壁36Aに排気穴42を設けている。なお、本実施形態におけるタイヤ18は、ホイール14に対する幅方向での組み付け方向が規定されているタイヤである。
【0032】
また、本実施形態では、内側筒部20と外側筒部22との間での空気の滞留を低減するために、内側筒部20に設けられた貫通穴40が、一対の膜状支持壁36A,36Bの間において車内側に寄せて配置されている。すなわち、貫通穴40は、車内側の膜状支持壁36Bの近傍に設けられている。
【0033】
本実施形態によれば、インホイールモータ12の外周面12Aを取り巻く第1流路部38において、該モータ12により加熱された空気Kは、回転による遠心力により、内側筒部20の貫通穴40を通って、内側筒部20と外側筒部22の間の第2流路部44に導かれ、更に、車外側の膜状支持壁36Aに設けられた排気穴42から車外側に排出される。この例では、貫通穴40を車内側に寄せて設け、排気穴42を車外側の膜状支持壁36Aに設けたので、第2流路部44での空気Kの流れを一方向にすることができ、空気Kの滞留を抑えて、冷却効果を高めることができる。第2実施形態について、その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0034】
図4は、第3実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体10Bを示したものである。この例では、左右一対の膜状支持壁36,36を、補強梁46により互いに連結した点で第1実施形態とは異なる。すなわち、一対の膜状支持壁36,36の間には、タイヤ幅方向に延びる補強梁46が設けられている。
【0035】
補強梁46は、一対の膜状支持壁36,36間の距離を規制する弾性部材であり、金属や樹脂で形成することができ、板バネ形状やスプリング形状としてもよい。図示するように、補強梁46は、一対の膜状支持壁36,36の外側に膨らんだ湾曲形状の頂部同士を連結するように設けられており、タイヤ周方向における複数箇所に設けられている。
【0036】
本実施形態によれば、補強梁46を設けたことにより次の作用効果が奏される。すなわち、上記のように連結部24を膜状支持壁36で構成した場合、一般的な柱状のスポークで構成した場合に比べて強度ないし剛性が低下する。補強梁46を設ければ、このような強度ないし剛性の低下を効果的に補うことができる。第3実施形態について、その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0037】
図5は、第4実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体10Cを示したものである。この例では、膜状支持壁36に設けた排気穴42にフード48を設けた点で第1実施形態とは異なる。すなわち、
図5及び
図6に示すように、膜状支持壁36の外側面には、タイヤ回転方向Rの前方側から排気穴42を覆うフード48が設けられている。なお、本実施形態におけるタイヤ18は、タイヤ回転方向Rが規定されたタイヤである。
【0038】
フード48は、膜状支持壁36に設けられた排気穴42を外側から覆うものであり、タイヤ回転方向Rの前方側から覆うことにより、回転方向Rの後方側に向けて開口している。このようなフード48は、
図6に示す例のように、膜状支持壁36に対して別部材のフードを接着固定するようにしてもよく、あるいはまた、
図7に示す例のように、絞り加工や射出成形などにより排気穴42と一体に設けてもよい。
【0039】
本実施形態によれば、フード48を設けたことにより、タイヤ回転時に膜状支持壁36の内側の空気Kをより効果的に排気することができる。詳細には、タイヤ回転時に膜状支持壁36の外側面には、
図6,7に示すように、タイヤ回転方向Rの後方に向かって外気Gが流れるので、排気穴42を前方側から覆うフード48の内側は負圧になる。そのため、排気穴42よりも内側の空気Kが外側にひっぱられて、排気穴42からの排気を促進することができる。第4実施形態について、その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0040】
図8は、第5実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体10Dを示したものである。この例では、タイヤ18の内側筒部20(取付筒部28)と外側筒部22との間に、中間筒部50を設けた点で第1実施形態とは異なる。
【0041】
中間筒部50は、内側筒部20の外周を同軸に取り囲む円筒形状をなしており、内側筒部20と外側筒部22の径方向における中間位置に配設されている。このように中間筒部50を設けることにより、剛性を高めることができる。
【0042】
また、この例では、連結部24としての膜状支持壁36が、内側筒部20と中間筒部50との間だけでなく、中間筒部50と外側筒部22との間にも設けられている。すなわち、内側筒部20と中間筒部50との間隙を塞ぐ内側膜状支持壁36Xと、中間筒部50と外側筒部22との間隙を塞ぐ外側膜状支持壁36Yが設けられている。そして、内側膜状支持壁36Xに上記排気穴42が設けられるとともに、外側膜状支持壁36Yにも同様の排気穴54が設けられている。また、中間筒部50に貫通穴52が設けられて、中間筒部50の内周側と外周側が連通している。これにより、中間筒部50の内周側だけでなく、外周側にも排気のための空気流路となる第2流路部が設けられている。
【0043】
このように中間筒部50を設けた場合にも、その内外に膜状支持壁36X,36Yを設け、更に排気穴42,54を設けたことにより、モータ12により加熱された空気を、これら排気穴42,54から効果的に排気することができる。
【0044】
なお、
図8の例では、中間筒部46の内周側と外周側の双方に膜状支持壁36X,36Y及び排気穴42,54を設けて、中間筒部50の内周側と外周側の双方で排気を可能としたが、いずれか一方側のみに設けてもよい。その場合、例えば、他方側においては一般的な放射状のスポークにより連結部を構成してもよい。いずれか一方側のみに設ける場合、中間筒部50の内周側、即ち、内側筒部20と中間筒部50の間に設けることが好適である。第5実施形態について、その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0045】
なお、上記第3及び第4実施形態の構成は、第1、第2及び第5実施形態に対して、適宜に組み合わせて適用することができる。また、上記実施形態では、膜状支持壁36を幅方向外側に膨らんだ湾曲状に形成したが、湾曲状に形成する場合には限定されず、平板状に形成してもよい。また、上記実施形態では、連結部24を膜状支持壁36のみで形成したが、膜状支持壁36とともに、通常のスポークを設けて補強してもよい。そのようなスポークとしては、タイヤ周方向に間隔をおいて配設された放射状に延びる柱状ないし壁状の各種スポークが挙げられ、タイヤ幅方向に平行に延びるスポークでもよく、タイヤ幅方向に対して角度を持って傾斜して延びる(即ち、周方向成分を持たせた)スポークでもよく、タイヤ周方向に延びるスポークでもよく、更にはこれらを2種以上組み合わせて配置したものであってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、内側筒部20を内外二層構造として、ここにホイール14とタイヤ18の境界を設けたが、内側筒部は一層構造でもよい。その場合、タイヤとホイールは単一部材として一体に形成されてもよく、あるいはまた、外側筒部までをホイールとして、その外周にトレッド部を含むタイヤを取り付けるように構成してもよい。また、タイヤとしては、上記の非空気入りタイヤに限定されず、空気入りタイヤを用いることもできる。空気入りタイヤを用いる場合、例えば、外側筒部をホイールのリムとして、その外周に空気入りタイヤを装着するように構成すればよい。
【0047】
また、上記実施形態では、インホイールモータ方式のタイヤ・ホイール組立体について説明したが、モータを内蔵しないタイヤ・ホイール組立体に適用してもよい。その場合でも、一般にホイール内にはブレーキが組み込まれているので、ブレーキ熱により加熱された空気を排気することができ、冷却効果を高めることができる。このようにホイール内に組み込まれて熱源となるものとしてはモータやブレーキ等があり、本実施形態による冷却が効果的である。
【0048】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
10,10A,10B,10C,10D…タイヤ・ホイール組立体、12…モータ、
12A…外周面、14…ホイール、16…トレッド部、18…タイヤ、
20…内側筒部、22…外側筒部、26…リム、28…取付筒部、
36,36X,36Y…膜状支持壁、36A…車外側の膜状支持壁、38…第1流路部、
40…貫通穴、42,54…排気穴、46…補強梁、48…フード
K…空気、R…タイヤ回転方向