(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-113225(P2015-113225A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】補巻ロープ掛け替え方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/66 20060101AFI20150526BHJP
E21B 3/02 20060101ALI20150526BHJP
【FI】
B66C23/66 A
E21B3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-258825(P2013-258825)
(22)【出願日】2013年12月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】村手 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】奥村 高好
【テーマコード(参考)】
2D129
3F205
【Fターム(参考)】
2D129BB01
2D129DA12
2D129DC03
2D129DC05
2D129DC13
3F205AA07
3F205BA10
3F205CA01
3F205KA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アースドリルの補巻ロープを1本掛けから3本掛けに容易に掛け替えることができる補巻ロープ掛け替え方法を提供する。
【解決手段】ベースマシン11に設けられたブーム12の先端部に配置されたシーブ軸に、先端に補巻フック35を吊持する補巻ロープ34が巻掛けられる2つの第1補巻シーブ、第2補巻シーブを取り付けたアースドリルの補巻ロープ34を1本掛けから3本掛けに掛け替える方法であって、第2補巻シーブに巻掛けられ、両端をブーム12に固定したリービングロープ37を備え、ブーム12を前方に倒し、補巻フック35を地上に置き、リービングロープ37の固定を解除し、両端を地上付近に移動させ、前記リービングロープ37の一端を、補巻フック35のシーブに通して、ケーブルクリップを介して、補巻ロープ34の端部と連結し、リービングロープ37の他端を引張り、補巻ロープを1本掛けから3本掛けに掛け替える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに設けられたブームの先端部に配置されたシーブ軸に、先端に補巻フックを吊持する補巻ロープが巻掛けられる2つの第1補巻シーブ、第2補巻シーブを回転可能に取り付けたアースドリルの補巻フックを第1補巻シーブのみに巻掛ける1本掛けから第1、第2補巻シーブに巻掛ける多本掛けに掛け替える補巻ロープ掛け替え方法において、
補巻ロープが巻掛けられていない第2補巻シーブに巻掛けられ、両端を前記ブームに固定したリービングロープを備え、
前記ブームをベースマシン前方に倒し、前記補巻フックを地上に置き、
前記リービングロープのブームへの固定を解除し、前記リービングロープの両端を地上付近に移動させ、前記リービングロープの一端を、前記補巻フックのシーブに通してから、
前記リービングロープの一端を、ケーブルクリップを介して、前記補巻フックの尻手から外した前記補巻ロープの端部と連結し、
前記リービングロープの他端を引張り、前記補巻ロープを、前記補巻フックのシーブ及び第2補巻シーブに通した後、
前記ケーブルクリップを取り外し、前記補巻ロープの端部を前記補巻フックの尻手に連結することにより、
補巻ロープを1本掛けから多本掛けに掛け替えることを特徴とする補巻ロープ掛け替え方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースドリルの補巻ロープ掛け替え方法に関し、詳しくは、アースドリルの補巻フックを吊持する補巻ロープを1本掛けから多本掛けにする補巻ロープ掛け替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブームの先端に設けられたシーブ軸に、ケリーバを吊持するメインロープが巻掛けられる主巻シーブと、補巻フックを吊持する補巻ロープが巻掛けられる補巻シーブとを回転可能に取り付けたアースドリルが知られている(特許文献1参照)。補巻ロープは、補巻フックで作業時に使用する各種資材などを吊り上げるために用いられるが、比較的重いものを吊り上げる場合には、吊り上げ能力を上げるために1本掛けから3本掛けといった多本掛けに掛け替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−67989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラチスブームを使用したアースドリルにおいて、補巻ロープを1本掛けから3本掛けにする場合、ブーム12をベースマシン11の前方に倒しても、ケリーバ回転駆動装置21がブーム12の下面にあるので、ブーム先端部分を地上近くまで下すことができない。そこで、
図9に示されるように、ブーム12の背面のピンを抜いて、図示しない別のクレーンでブームの上側部分を吊り上げつつ、ブーム先端部分を地上面に接地させることが行われている。
【0005】
このような状態となれば、補巻ロープの掛け替えも容易に作業することができるが、別にクレーンを手配しなければならない上に、ブームの分解や組立にも時間が多く必要となってしまう。また、作業現場が狭隘地のような場所の場合、そもそも別のクレーンを設置できない場合がある。
【0006】
そこで本発明は、別のクレーンを用意する必要もなく、ブームを分解することなく、アースドリルの補巻ロープを1本掛けから3本掛けに容易に掛け替えることができる補巻ロープ掛け替え方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の補巻ロープ掛け替え方法は、ベースマシンに設けられたブームの先端部に配置されたシーブ軸に、先端に補巻フックを吊持する補巻ロープが巻掛けられる2つの第1補巻シーブ、第2補巻シーブを回転可能に取り付けたアースドリルの補巻フックを第1補巻シーブのみに巻掛ける1本掛けから第1、第2補巻シーブに巻掛ける多本掛けに掛け替える補巻ロープ掛け替え方法において、補巻ロープが巻掛けられていない第2補巻シーブに巻掛けられ、両端を前記ブームに固定したリービングロープを備え、前記ブームをベースマシン前方に倒し、前記補巻フックを地上に置き、前記リービングロープのブームへの固定を解除し、前記リービングロープの両端を地上付近に移動させ、前記リービングロープの一端を、前記補巻フックのシーブに通してから、前記リービングロープの一端を、ケーブルクリップを介して、前記補巻フックの尻手から外した前記補巻ロープの端部と連結し、前記リービングロープの他端を引張り、前記補巻ロープを、前記補巻フックのシーブ及び第2補巻シーブに通した後、前記ケーブルクリップを取り外し、前記補巻ロープの端部を前記補巻フックの尻手に連結することにより、補巻ロープを1本掛けから多本掛けに掛け替えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の補巻ロープ掛け替え方法によれば、あらかじめ第2補巻シーブに固定されていたリーピングロープを補巻ロープと連結することで、1本掛けから3本掛けへの掛け替えを行えるので、別途クレーンを手配する必要もなく、ブームを分解する必要もなく、作業能率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を適用するアースドリルの一例を示す側面図である。
【
図3】同じくロープの掛け回し状態を示す説明図である。
【
図4】同じくブームを前方に倒したときのアースドリルの側面図である。
【
図5】本発明の補巻ロープ掛け替え方法の説明図であり、ブームを前方に倒した時のロープの状態を示す説明図である。
【
図6】本発明の補巻ロープ掛け替え方法の説明図であり、リーピングロープの一端を、ケーブルクリップを介して、補巻ロープの端部と連結した状態を示す説明図である。
【
図7】本発明の補巻ロープ掛け替え方法の説明図であり、補巻ロープを第2補巻シーブに通したときの状態を示す説明図である。
【
図8】本発明の補巻ロープ掛け替え方法の説明図であり、補巻ロープの端部を補巻フックの尻手に連結し3本掛けとしたときの状態であることを示す説明図である。
【
図9】従来のアースドリルの補巻ロープ掛け替え方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、
図1乃至
図3を用いて、本発明を適用するアースドリルの一例を説明する。アースドリル10は、自走式のベースマシン11に起伏可能に設けられたラチスブーム12の先端部に、該ラチスブーム12の長さ方向に直交するシーブ軸13が水平方向に設けられ、該シーブ軸13に回転可能に支持された主巻シーブ14に、主巻ウインチ15から主巻ガイドシーブ16を介して繰り出されたメインロープ17を巻掛け、このメインロープ17の先端にスイベルジョイント18を介してケリーバ19を回転可能に吊り下げ、主巻ウインチ15でケリーバ19を昇降させるように構成している。また、ラチスブーム12の下方に支持されたアーム20の先端には、前記ケリーバ19が昇降可能な状態で挿通されるケリーバ回転駆動装置21がシリンダ22によって支持された状態で設けられており、該ケリーバ回転駆動装置21でケリーバ19を回転させるように構成している。さらに、ケリーバ回転駆動装置21の下部にはケリーバ19と一体に回転はするが、昇降はしない回転テーブル23が設けられており、この回転テーブル23から下方に突出したケリーバ19の下端部に、ケリーバ19と一体に回転し、かつ昇降する拡底バケット24aや掘削バケット24bが装着される。
【0011】
また、ベースマシン11の後部にはガントリ25が立設され、起伏ウインチ26からの起伏ロープ27が、ペンダントロープ28を介してラチスブーム12の先端上部に設けられたブラケット29に連結されている。
【0012】
さらに、前記シーブ軸13には、該シーブ軸13に第1補巻シーブ30、第2補巻シーブ31が回転可能に支持されている。1本掛けの場合には、補巻ウインチ32から補巻ガイドシーブ33を介して繰り出された補巻ロープ34が、第1補巻シーブ30に巻掛けられ、補巻ロープ34の先端と補巻フック35の尻手とが連結されている(
図1の状態)。また、3本掛けの場合には、第1補巻シーブに巻掛けられた補巻ロープ34が、さらに、前記補巻フック35のシーブ36及び第2補巻シーブに巻掛けられた状態となっている(
図3の状態)。通常は補巻ロープを1本掛けで使用することが多いが、比較的重量物を吊り上げる場合など吊り上げ能力が必要な場合には、補巻ロープを3本掛けに掛け替える。
【0013】
次に、
図4乃至
図8を用いて、1本掛けから3本掛けに掛け替える本発明の補巻ロープ掛け替え方法について説明する。
【0014】
まず、通常の1本掛けでの使用時に、
図5に示されるように、1本掛けの際には補巻ロープ34が巻掛けられていない第2補巻シーブ31に、あらかじめリービングロープ37を巻掛け、その両端をラチスブーム12に固定しておく。ここで、リービングロープ37は、取扱いがしやすいように補巻ロープ34よりも細いロープであり、一端側には、手などで掴むための輪38を設けている。なお、ラチスブーム12への固定は、任意の手段によってなされる。
【0015】
1本掛けから3本掛けに掛け替える際に、まず、
図4,5に示されるように、ケリーバ19を取り外し、ラチスブーム12をケリーバ回転駆動装置21が接地するまで前方に倒し、ロープの繰り出し量を調節して補巻フック35を地上に下す。ただし、ケリーバ回転駆動装置21があるため、ラチスブーム12の先端部を地上まで下すことはできない。
【0016】
この状態で、拡底バケット24aの足場39などを利用してラチスブーム12に固定されたリービングロープ37の両端を解除し、リービングロープ37の両端を地上付近まで下す。
【0017】
次に、
図6に示されるように、リービングロープ37の輪38のついていない下側の端部を、補巻フック35のシーブ36に通し、該端部を、ケーブルクリップ40を介して、補巻フック35の尻手から外した補巻ロープ34の端部と連結させる。
【0018】
この状態から、リービングロープ37の輪38を引っ張ると、補巻ロープ34が、ケーブルクリップ40に引っ張られ、補巻フック35のシーブ36及び第2補巻シーブ31に巻掛けられ、
図7に示す状態となる。最後に、
図8に示すように、ケーブルクリップ40を取り外し、補巻ロープ34の端部を補巻フック35の尻手に連結することで、3本掛けの状態となる。
【0019】
上述の方法であれば、他のクレーンを用意する必要もないし、ブームを分解する必要もないので、作業効率がよい。また、拡底バケット24aの足場39については、アースドリルの作業中には必ず現場にあるものであるから、掛け替え作業に追加する機材などもない。さらに、足場39を使って行う作業は、リービングロープ37の固定解除だけなので、高所での作業の安全性も高い。
【符号の説明】
【0020】
10…アースドリル、11…ベースマシン、12…ラチスブーム、13…シーブ軸、14…主巻シーブ、15…主巻ウインチ、16…主巻ガイドシーブ、17…メインロープ、18…スイベルジョイント、19…ケリーバ、20…アーム、21…ケリーバ回転駆動装置、22…シリンダ、23…回転テーブル、24a…拡底バケット、24b…掘削バケット、25…ガントリ、26…起伏ウインチ、27…起伏ロープ、28…ペンダントロープ、29…ブラケット、30…第1補巻シーブ、31…第2補巻シーブ、32…補巻ウインチ、33…補巻ガイドシーブ、34…補巻ロープ、35…補巻フック、36…シーブ、37…リービングロープ、38…輪、39…足場、40…ケーブルクリップ