【解決手段】金属管用、好ましくは金属管の接水部分用エポキシ樹脂塗料組成物であって、シランカップリング剤およびグリコールエーテル系溶剤を必須成分として含むことを特徴とし、好ましくはシランカップリング剤の含有量が1〜5重量%であり、グリコールエーテル系溶剤の含有量が1〜20重量%である塗料組成物、ならびに該金属管用エポキシ樹脂塗料組成物を塗布してなる金属管。
【背景技術】
【0002】
一般に、水道管、貯水管など飲料水の移送、貯蔵などには、鋳鉄管や鋼管などの金属管が用いられている。近年、水に対する関心が高まるなか、より安全で良質な水道水が求められている。このため、水道事業体では衛生面において高度浄水のみならず、良質な水をそのまま送り届けるため、よりレベルの高い水道管路システムの構築が進められている。
【0003】
このような背景から、水道管路に使用されるダクタイル鋳鉄管についても、内面塗装を防食性および衛生性に優れたエポキシ樹脂粉体塗装とした管の採用が増加傾向にあるが、優れた材料を用いても施工時に適切な処置を施さなければ、水質に悪影響が発生する。たとえば、管の長さを調整するために工事現場で切管を行い、補修塗装を行う場合には、乾燥時間を十分に確保することが難しい。このため、従来の管内面塗装用の塗料では、乾燥が不十分となり、防食性能や臭気の面から問題となることがあり、管路全体の防食性および衛生性を損なう恐れがある。
【0004】
その解決策としては、切管端面をゴムカバーで被覆する防食ゴムが実用化されているが、この場合、適合管種や適合サイズが制約されるという問題がある(特許文献1)。
【0005】
また、水道用鋳鉄管については、日本水道協会規格JWWA K 139に「通水後の水質、特に臭気を考慮して、工場出荷までに十分乾燥しなければならない」と明記され、水中濃度の基準値としてトルエン0.2mg/L以下、キシレン0.4mg/L以下との具体的な数値が掲げられている。この臭気対策という観点から、溶剤系塗料では、トルエンやキシレンなどの有機溶剤に加え、炭素数9〜10のアルキルシクロヘキサンとからなる溶剤を用い、それらの組合せにより溶剤の揮発の促進を意図した塗料が検討されているが、キシレンフリーの組成は達成されておらず、実用化には至っていない(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属管用塗料に求められる諸機能を損なうことなく、溶剤臭を抑えたうえで、さらに乾燥時間を短縮できる環境負荷が小さい金属管用塗料組成物およびそれを塗布してなる金属管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討した結果、金属管の防食処理として、金属管用エポキシ樹脂塗料組成物において、シランカップリング剤およびグリコールエーテル系溶剤を必須成分として含有させることにより、キシレンフリーの組成で乾燥時間を大幅に短縮でき、かつ薄い膜厚であっても防食処理塗装としての機能を十分に発揮できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、金属管用エポキシ樹脂塗料組成物であって、シランカップリング剤およびグリコールエーテル系溶剤を必須成分として含有することを特徴とする塗料組成物に関する。
【0010】
本発明の塗料組成物は、金属管の接水部分用であることが好ましい。
【0011】
本発明の塗料組成物において、シランカップリング剤の含有量は、1〜5重量%であることが好ましい。
【0012】
本発明の塗料組成物において、グリコールエーテル系溶剤の含有量は、1〜20重量%であることが好ましい。
【0013】
本発明の塗料組成物において、適用する金属管が上水道管であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、金属管用エポキシ樹脂塗料組成物であって、シランカップリング剤およびグリコールエーテル系溶剤を必須成分として含有することを特徴とする塗料組成物を塗布した金属管に関する。
【0015】
本発明の金属管において、塗布領域が接水部分であることが好ましい。
【0016】
本発明の金属管は、鋳鉄管であり、かつ塗布領域が管の切管端面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗料組成物によれば、密着性、耐腐食性、隠蔽性、耐水性、長期耐久性などの金属管用塗料に求められる諸機能を損なうことなく薄膜化でき、塗料中に臭気の強い揮発性有機溶剤、たとえばキシレンを使用することなく、塗膜の乾燥時間を大幅に短縮することができる。これにより、塗装作業効率が向上し、設置現場における切管端面補修などの補修用途のみならず、様々な用途に利用できる。また、塗り重ねについても、各種標準塗装の上塗として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の塗料組成物は、金属管用エポキシ樹脂塗料組成物であって、シランカップリング剤およびグリコールエーテル系溶剤を必須成分とすることを特徴とする。
【0019】
<金属管および塗布領域>
本発明の塗料組成物が塗布される金属管は、金属製のものであれば特に限定されないが、たとえば鋳鉄管、鋼管、銅管などの金属管が挙げられる。金属管には、その表面にエポキシ系、ラテックス系または亜鉛溶射などの下地処理が施されていても良い。本発明の金属管の用途としては、上下水道用、貯水用など特に限定されるものではないが、本発明の塗料組成物の水洗によるさらなる効果を考慮すると、上水道用、貯水用などの飲料水用の鋳鉄管であることが特に好ましい。
【0020】
具体的には、鋳鉄管は、上下水道管などに広く用いられ、様々な環境下で使用されるが、管の長さを調整するために、設置現場で切管という処理が施される。切管した切断面には鉄部が露出し、また管内面および管外面の塗装も影響を受けるため、露出した鉄部の切管端面およびその周囲数ミリメートル〜数センチメートル、たとえば約1mm〜約5mmに補修塗装が必要となる。乾燥性に優れ、臭気対策を施した本発明のエポキシ樹脂塗料組成物は、その際の切断面である切管端面に特に好ましくは用いることができる。
【0021】
本発明において切管端面と記載した場合、もちろん切断面を意味するものであるが、切断面の周囲数ミリメートル〜数センチメートルの管外面および管内面をも包含した領域を意味してもよい。
【0022】
また、本発明の塗料組成物は、切管端面のみならず、その他の鉄面が露出した箇所に用いられる補修用としても同様に使用することができ、さらには管同士の継手部の塗装にも用いることができる。
【0023】
鋳鉄管は、上下水道管などに広く用いられ、様々な埋設環境で使用されることが多く、特に管外面の耐久性、耐食性の向上が求められている。そのため、管外面の防食層として、たとえば日本ダクタイル鉄管協会規格JDPA Z 2010「ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗装」に規定されている亜鉛系プライマーを用いることが多い。また、亜鉛系プライマーの上塗り塗料として、たとえば日本水道協会規格JWWA K 139「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料」に規定されている塗料を用いることが多い。本発明の塗料組成物は、この上塗り塗料としても使用することができる。
【0024】
一方、鋳鉄管の内面は、長期の通水に対して高い腐食性や耐久性を維持するために、エポキシ樹脂粉体塗装やモルタルライニングが施されている場合が多い。
【0025】
本発明の塗料用組成物は、各種塗料との塗り重ねが良好なことから、管外面や管内面に上述のような塗装がなされた鋳鉄管の切管端面や鉄部が露出した箇所の補修用として好適に用いることができる。
【0026】
本発明の塗料組成物の金属管における塗布領域としては、特に限定されるものではなく、金属管の管内面および管外面のいずれの塗装にも用いることができるが、上述した通り、本発明の塗料組成物の水洗による効果が得られるという点においては、金属管の接水部分用、つまり上水道用、貯水用などの飲料水用の鋳鉄管の接水部分用として使用されることが好ましい。
【0027】
本明細書において、「金属管の接水部分」とは、使用に際して水に接する部分を意味し、具体的には、水道管や貯水管の管内面のみならず、金属管を連結する場合には、その連結部の水に接する部分をも包含する。つまり、前述したような切管端面や継手部も接水部分に包含され、管外内面と同様の防食処理を必要とし、かつ使用に際しては水と接することとなる。したがって、本発明の塗料組成物の特に好ましい塗布領域としては、たとえば水道管に使用される鋳鉄管の切管端面や継手部が挙げられる。また、切管端面を含む領域が、本発明の塗料組成物の速乾性を十分に発揮できる意味から最も好ましい。
【0028】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、本技術分野において公知の各種ポリエポキシ化合物が使用できるが、ビスフェノール類とエピクロロヒドリンとの反応により得られるビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの反応生成物からなるエポキシ樹脂やエピクロロヒドリンとビスフェノールFとの反応生成物からなるエポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂に脂肪酸を反応させて得られるものや、アルカノールアミンなどのアミン類を反応させて得られるアミン変性エポキシ樹脂、ポリイソシアネート化合物と反応させて得られるウレタン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、乾燥性、付着性、耐食性、などの点から、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとのビスフェノールA型エポキシ樹脂およびその変性エポキシ樹脂が好ましく、アミン変性樹脂がより好ましい。
【0029】
また、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、10000〜70000の範囲が好ましく使用できる。重量平均分子量が10000に満たない場合、密着性、乾燥性、塗膜物性などに問題があり、重量平均分子量が70000より大きい場合、溶解性、塗料化、スプレー塗装作業性などに問題がある。
【0030】
<シランカップリング剤>
本発明に用いるシランカップリング剤は、金属管との密着性を向上させるために用いられ、その具体例には、特に限定されるものではないが、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系アルコキシシラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ系アルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリル系アルコキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系アルコキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系アルコキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系アルコキシシランなどが挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂との相互作用の点から、アミノ系アルコキシシランやエポキシ系アルコキシシランが好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが最も好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0031】
本発明の塗料組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上、最も好ましくは2.5重量%以上であり、5.0重量%以下が好ましく、4.5重量%以下がより好ましく、3.0重量%以下が最も好ましい。シランカップリング剤の含有量が1重量%より少ないと、密着性の向上効果が得られない傾向があり、5.0重量%より多いと、塗料貯蔵安定性に問題があり、貯蔵中にゲル化する場合がある。また原料としては高価であり、塗料単価が高くなる。
【0032】
<グリコールエーテル系溶剤>
本発明に用いるグリコールエーテル系溶剤は、特に限定されるものではないが、たとえば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのプロピレングリコールモノエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノエーテル;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコールモノエーテルなどが挙げられる。これらのなかでも、エポキシ樹脂溶解性、蒸発速度(乾燥性、塗装作業性)の点からプロピレングリコールモノエーテル、特にPGMMEが好ましい。これらの溶剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0033】
本発明の塗料組成物におけるグリコールエーテル系溶剤の含有量は、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは2.0重量%以上であり、20.0重量%以下が好ましく、10.0重量%以下がより好ましい。グリコールエーテル系溶剤の含有量が、1.0重量%より少ないとその効果が発揮され難い傾向があり、20.0重量%より多いと塗膜の耐久性、乾燥性に好ましくない影響を与える傾向がある。
【0034】
<その他の溶剤>
本発明の塗料組成物には、その他の水溶性溶剤(a)も含有させることができる。このような溶剤としては、特に限定されるものではないが、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、Sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどの低級アルコール;メチルエチルケトン;プロピレングリコール;モノエチレングリコールなどの水に良く溶解する溶剤、たとえば水への溶解度が25℃で水1Lに対しておおよそ100g以上であり、好ましくは混和レベルで水に溶解する溶剤が挙げられる。また、その溶剤自体の臭気が弱いものがより好ましい。これらの溶剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0035】
さらに、本発明においては、キシレンなどの水不溶性で低揮発性の溶剤は、臭気対策の観点から含めないことが好ましい。
【0036】
溶剤にはグリコールエーテル系溶剤や水溶性溶剤(a)以外に金属管用塗料の分野において通常使用されるその他の溶剤を含有してもよく、たとえば、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;1−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール;エチル−3−エトキシプロピオネート(EEP:商品名、イーストマン・コダック社製)などのエーテルなどを挙げることができる。これらは、作業性、塗料安定性、溶解性、蒸発速度、安全性、法規制などを考慮して、単独でまたは2種以上を混合して適宜使用される。
【0037】
<その他の成分>
本発明の塗料組成物は、上記成分のほかに必要に応じて水質に影響を与えない範囲の公知の顔料、添加剤、硬化剤などを添加することができる。
【0038】
本発明の塗料組成物は、塗装作業性を確保するために、塗装時のチクソ係数を2.0〜5.0に調整することが望ましい。塗装時粘度のチクソ係数が2.0未満の場合は浸漬塗装においてタレのため必要膜厚が塗装できなくなり、また5.0を超えるとスプレー塗装時に流動性(レベリング性)が低下するため塗装後の仕上がり外観が低下する。チクソ係数の調整は、主として粘性調整剤や、顔料の種類および添加量によってなされるが、一般的には塗膜性能を確保するため、顔料の種類および添加量が決定された後、チクソ性が不足している分だけ粘性調整剤を添加する方法がとられる。
【0039】
また、本発明の塗料組成物は、塗装作業性を確保するために、塗装時の塗料不揮発分を25〜55重量%に調整することが好ましい。塗料不揮発分とは、塗料を一定条件下で加熱したときに塗料成分の一部が揮発または蒸発した後に残ったもの(塗膜)の重さを、塗料の元の重さに対する百分率で表したものを意味し、樹脂中の固形分や顔料などである。塗装時不揮発分が25重量%未満では浸漬塗装において厚膜塗装が困難になり、55重量%を超えると粘度が高くなりすぎるため、スプレー塗装作業性、ローラー塗装作業性などが低下し、好ましくない。
【0040】
本発明の金属管用塗料組成物に使用される顔料は、塗料に充分な着色性を付与するためのものであり、含有量は特に限定されないが、塗料組成物中に10〜40重量%含まれることが好ましく、15〜35重量%含まれることがより好ましい。
【0041】
顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック(たとえば、商品名 MA100、三菱化学(株)製など)、シアニンブルー、シアニングリーンなどの着色顔料;炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム(たとえば、土屋カオリン工業(株)製、平均粒径0.5μmなど)、クレーなどの体質顔料;燐酸亜鉛、燐酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどの防錆顔料などが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、必要により2種以上を混合して使用しても良い。
【0042】
その他の添加剤としては、シリコーンや有機高分子からなる消泡剤;シリコーンや有機高分子からなる表面調整剤;アマイドワックス、有機ベントナイトなどからなる粘性調整剤(タレ止め剤);シリカ、アルミナなどからなる艶消し剤;ポリカルボン酸塩などからなる分散剤;ベンゾフェノンなどからなる紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、フェノール系などの酸化防止剤;ワックスなど、公知の添加剤を挙げることができる。これらは必要により単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
本発明の塗料組成物は、一液型樹脂組成物とすることが、速乾性および作業性の向上の点から好ましい。
【0044】
<一液型エポキシ樹脂塗料>
本発明の塗料組成物を一液型のエポキシ樹脂塗料とする場合、日本ダクタイル鉄管協会規格JDPA Z 2010「ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗装」平成21年2月12日改正に規定されている4.1.1エポキシ樹脂塗料に準ずるものとして、上述のエポキシ樹脂、シランカップリング剤、グリコールエーテル系溶剤や上述のその他の成分に加えて、本発明の効果を害しない範囲で、つぎの樹脂、改質剤、添加剤などの成分を加えることもできる。
【0045】
そのような樹脂としては、スチレン、酢酸ビニルまたはブタジエンを含むアクリレートもしくはメタクリレート共重合物、キシレン樹脂、トルエン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、クマロンインデン樹脂、カルボキシル化アクリル変性SBR樹脂などが挙げられる。
【0046】
改質剤としては、スチレン、酢酸ビニルまたはブタジエンを含むアクリレートもしくはメタクリレート共重合物、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、カルボキシル化アクリル変性SBR樹脂などが挙げられる。
【0047】
添加剤としては、アクリル系共重合物、アクリル酸とマレイン酸コポリマーとのナトリウム塩、アクリル重合物、オルガノシラン、ジメチルポリシロキサン、アマイドワックス、キサンタンガム、変性セルロース化合物、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシエチルセルロース、ステアリン酸アルミニウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ミネラルオイル、ワセリン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ブロモニトロアルコール化合物、フタル酸ジシクロヘキシル、メチルエチルケトオキシム、アンモニア水、N,N’−ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミンなどが挙げられる。
【0048】
<塗料組成物の製造方法>
本発明の金属管用塗料組成物の製造には塗料製造に慣用されている設備を使用する。製造方法は特に限定されないが、たとえば市販のエポキシ樹脂またはエポキシ樹脂ワニスに顔料、添加剤(顔料分散剤、粘性調整剤等)、溶剤などを添加した後、ロールミル、SGミル、ディスパーなどで分散処理することによって所望の塗料組成物が得られる。
【0049】
本発明の金属管用塗料組成物を金属管に塗布する方法は特に限定されないが、刷毛塗装、ローラー塗装、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、浸漬塗装、シャワーコート塗装などの方法で塗布される。
【0050】
塗布した塗膜の厚さは、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm〜50μmである。50μmより薄いと、耐久性、防食性が十分でない可能性があり、150μmより厚いと乾燥性と低臭気性が十分でない可能性がある。
【0051】
本発明の塗料組成物が塗布された金属管は、塗料中のトルエンなどの高揮発性溶剤がまず先に揮発する。また塗膜中に水溶性溶剤が残留しても、管内を洗管する際に溶出される。その際、残留しているトルエンなどの揮発性溶剤を伴い排出される。したがって、水道管や貯水管などに使用しても、塗膜に接触した水から溶剤臭はほとんど感知されず、もちろん水質に悪影響を及ぼさないという効果を有する。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
以下の実施例において製造する塗料組成物は、日本ダクタイル鉄管協会規格JDPA Z 2010「ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗装」平成21年2月12日改正に規定されている4.1.1エポキシ樹脂塗料に準ずるものである。
【0054】
実施例および比較例において使用した成分の詳細をつぎに示す。
・エポキシ樹脂ワニス:固形分40重量%=アミン変性エポキシ樹脂(重量平均分子量約30000)、溶剤分60重量%=MEK(メチルエチルケトン):TL(トルエン):IPA(イソプロピルアルコール):PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)の重量比=18:24:12:6の混合物
・顔料:酸化チタン/カーボンブラック/炭酸カルシウム(体質顔料)/リン酸亜鉛系防錆顔料(組成物中の重量%は、それぞれ10.0/微量/18.2/4.3)
・シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業株式会社製)
・PGMME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0055】
実施例1〜7および比較例1〜3
表1の組成にしたがって成分を混合し、更に通常の顔料分散用機器を使用して約30μm以下に分散して各塗料組成物を調製した。
【0056】
得られた各塗料組成物について、以下の試験を行ない、塗料組成物としての性能および得られる塗膜の性能を評価した。
【0057】
(1)耐中性塩水噴霧性
塗膜の長期耐久性を確認すべく、JIS K 5600−7−1(塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第1節:耐中性塩水噴霧性)に準じて試験を行った。
【0058】
実施例1〜7および比較例1〜3において製造した各塗料を、みがき鋼板(150×100mm)に刷毛塗りで50μm塗装した。そして、カッターナイフでクロスカットを施し、塩化ナトリウム水溶液(5%)を噴霧して、外観を観察した。白錆、赤錆およびフクレ等の外観の異常が見られない場合を異常なしとし、1つでもそれらの異常が見られた場合を異常ありとし、異常なしの時間で評価した。なお、クロスカットの両側それぞれ2mm以内は観察の対象としなかった。
【0059】
結果を表1に示す。
◎:300時間異常なし
○:200時間異常なし
○△:170時間異常なし
△:120時間異常なし
×:120時間異常あり
【0060】
(2)乾燥性
JIS K 5600−1−1(塗料一般試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件および方法))に準じて試験を行なった。実施例1〜7および比較例1〜3において製造した各塗料を、みがき鋼板(200×100mm)の片面に吹き付け塗りで50μm塗装した。そして試験片の塗面を上向きにして、板を水平にして恒温恒湿室(温度23℃、湿度50%)に置き、乾燥状態を評価した。10分以内に硬化乾燥したものを○、10分以内に硬化乾燥しなかったものを×とした。結果を表1に示す。
【0061】
(3)作業性
JIS K 5600−1−1による刷毛塗りに支障がないこと(5〜40℃)を確認した。みがき軟鋼板(500×200×1mm)の片面に刷毛塗りで、塗り付け量が一回塗りで乾燥膜厚50μmとなるように塗り、作業性を評価した。
結果を表1に示す。
○:刷毛さばきに支障なし、△:やや刷毛さばきが悪い、×:刷毛さばきが悪い
【0062】
(4)臭気試験(浸出試験)
実施例1〜7および比較例1〜3において製造した各塗料を、両面すりガラスのガラス板(200×70×2mm)に刷毛塗りで50μm塗装した。そして、JWWA Z 108水道用資機材−浸出試験方法に準拠し、塗装されたガラス板を7日間乾燥させたものをそれぞれ供試水1Lに16時間浸漬し、供試水中の臭気を評価した。なお、接水面積を15cm
2/Lとした。結果を表1に示す。
【0063】
臭気の評価基準は、つぎのとおりである。
○:無臭
△:弱臭
×:臭う
【0064】
【表1】
【0065】
表1より、実施例1〜7では、比較例1および2に比べ、いずれも耐中性塩水噴霧性が優れており、長期耐久性が良好であることが確認された。実施例1〜7では、比較例1および3に比べ、いずれも作業性および浸出性が良好であり、臭気が低減されていることが確認された。
【0066】
これらの結果から、エポキシ樹脂塗料において、シランカップリング剤およびグリコールエーテル系溶剤を併用した場合に、作業性、乾燥性、耐食性の良好な低臭気塗料組成物が得られることがわかる。
【0067】
実施例8
実施例3の組成のエポキシ樹脂塗料を、管外面塗装としてジンクリッチプライマーおよび合成樹脂塗料を施し、管内面塗装としてエポキシ樹脂粉体塗装を施したダクタイル鋳鉄管(外径68mm、内径56mm)の切管端面(断面および管外面側2mm、管内面側2mm)に、刷毛塗装により50μm塗布した。
【0068】
得られた鋳鉄管については、その塗装面の外観は特段問題なく、通水可能時間も塗装後30分でTOCおよび臭気において水道水質基準(TOCが3mg/L以下、臭気なし)を満足し、さらに管外面塗装や管内面塗装との塗り重ね性にも問題はなく良好であった。