(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-113445(P2015-113445A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】セル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/38 20060101AFI20150526BHJP
【FI】
C08J9/38CFF
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-258822(P2013-258822)
(22)【出願日】2013年12月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一
(72)【発明者】
【氏名】桐山 卓也
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA78
4F074CD01
4F074CD08
4F074DA13
4F074DA14
4F074DA43
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】セルサイズが大きく、かつセル形状の均一性が高い、セル膜除去ポリウレタンフォームシートを効率よく製造することができるようにする。
【解決手段】シート状のポリウレタンフォーム11と通気性を有し前記ポリウレタンフォーム11の気泡径より細かい目のシート状共巻きシート材21を重ねた状態で、筒状芯体31の外周に巻き取って爆破炉内に入れ、前記爆破炉内部に可燃ガスを注入し、前記可燃ガスに点火することによって筒状芯体31外周のシート状のポリウレタンフォーム11のセル膜を爆破除去し、その後に筒状芯体31からセル膜除ポリウレタンフォームシートを外して得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のポリウレタンフォームと、通気性を有し前記ポリウレタンフォームの気泡径より細かい目のシート状共巻きシート材を重ねた状態で筒状芯体に巻き取り、
前記巻き取ったシート状のポリウレタンフォームを爆破炉内に入れ、該爆破炉内部に可燃ガスを注入し、前記可燃ガスに点火することにより、前記筒状芯体外周の前記ポリウレタンフォームのセル膜を爆破除去することを特徴とするセル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法。
【請求項2】
前記シート状のポリウレタンフォームは、ポリエステル系ポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1記載のセル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法。
【請求項3】
前記シート状共巻きシート材は、ポリエーテル系ポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法。
【請求項4】
前記シート状共巻きシート材は、生地であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法。
【請求項5】
前記シート状のポリウレタンフォームは、スラブフォームを発泡方向に対して直交方向にスライス加工したものであることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のセル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法。
【請求項6】
前記筒状芯体に前記シート状のポリウレタンフォームと前記シート状共巻きシート材を巻き取った後、最外周面を網状体又は複数の孔が形成された金属製板状体で包囲することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のセル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法。
【請求項7】
前記筒状芯体は、外周面に複数の孔が形成され、該外周面が通気性を有することを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のセル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆発法を用いてセル膜除去ポリウレタンフォームシートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セル膜除ポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォームのセル膜を除去して三次元網状骨格構造としたものであり、フィルター材や、セラミックス多孔質体の製造時のスラリー付着材等として広い用途がある。
ポリウレタンフォームのセル膜を除去する方法の一つとして爆発法がある(特許文献1)。爆発法によるセル膜除去は、ポリウレタンフォームを爆破炉に収容し、可燃ガスを爆破炉内に注入し、点火することによりポリウレタンフォームのセル膜を爆破除去する方法である。
【0003】
セル膜除ポリウレタンフォームの用途によっては、セルサイズが大きいもの(例えばセル数5〜20個/25mm、JIS K 6400−1)が求められる場合がある。セルサイズが大きいセル膜除去ポリウレタンフォームを得るには、セル膜を除去するポリウレタンフォームとしてセルサイズが大きいものを使用する必要がある。
ポリウレタンフォームには、ポリオールとしてポリエーテル系ポリオールを使用したポリエーテル系ポリウレタンフォームと、ポリオールとしてポリエステル系ポリオールを使用したポリエステル系ポリウレタンフォームがあるが、ポリエステル系ポリウレタンフォームの方がセルサイズの大きいものを安定して得られる。
【0004】
また、シート状のセル膜除去ウレタンフォームを製造する方法として、スラブ発泡により得られたブロック状のポリウレタンフォームを用いて爆発法でセル膜を除去し、セル膜除去後のブロック状ポリウレタンフォームに対して外周側から所定厚みでピーリング加工することによってシート状にする方法がある。なお、スラブ発泡は、コンベアベルト上にポリウレタン発泡原料を吐出して連続的に発泡させる方法である。
【0005】
しかし、ポリウレタンフォームのセル形状は、発泡方向に沿って縦長となり、かつブロック状のポリウレタンフォームは厚み方向が発泡方向である。そのため、セル膜除去後のブロック状ポリウレタンフォームに対してピーリング加工を施してセル膜除去ポリウレタンフォームのシートを得る場合、得られるシートは、ブロック状ポリウレタンフォームの厚み方向(発泡方向)と直交する部分から得られた部位ではセル形状が略円形となるのに対し、厚み方向(発泡方向)と平行な部分から得られた部位ではセル形状が楕円形となり、両部位間では円形から扁平率が徐々に変化した楕円形のセル形状となる。したがって、一枚のシートにおいてセル形状が部分的に異なり、セル形状が一定な品質の良好なセル膜除去ポリウレタンフォームを得ることができない。特にポリウレタンフォームのセルサイズが大きい場合、セル形状の不均一が顕著なものになる。
【0006】
また、セル形状を均一な円形にするため、セル膜除去後のブロック状ポリウレタンフォームに対して、厚み方向(発泡方向)と直交する方向にスライス加工してシートにすることが考えられるが、その場合、爆発処理時にブロック状ポリウレタンフォームを収容する爆破炉の大きさに制限があるため、セル膜除去後のブロック状ポリウレタンフォームから、スライス加工で大きなシートを得ることが困難であり、製造効率が悪い問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−205137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、セル膜除去ポリウレタンフォームシートを効率よく製造でき、また、セルサイズが大きいセル膜除去ポリウレタンフォームシートを効率よく製造でき、さらには、セル形状の均一性が高いセル膜除去ポリウレタンフォームシートを効率よく製造できる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、シート状のポリウレタンフォームと、通気性を有し前記ポリウレタンフォームの気泡径より細かい目のシート状共巻きシート材を重ねた状態で筒状芯体に巻き取り、前記巻き取ったシート状のポリウレタンフォームを爆破炉内に入れ、該爆破炉内部に可燃ガスを注入し、前記可燃ガスに点火することにより、前記筒状芯体外周の前記ポリウレタンフォームのセル膜を爆破除去することを特徴とするセル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法に係る。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記シート状のポリウレタンフォームは、ポリエステル系ポリウレタンフォームであることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記シート状共巻きシート材は、ポリエーテル系ポリウレタンフォームであることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1又は2において、前記シート状共巻きシート材は、生地であることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記シート状のポリウレタンフォームは、スラブフォームを発泡方向に対して直交方向にスライス加工したものであることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1から5の何れか一項において、前記筒状芯体に前記シート状のポリウレタンフォームと前記シート状共巻きシート材を巻き取った後、最外周面を網状体又は複数の孔が形成された金属製板状体で包囲することを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1から6の何れか一項において、前記筒状芯体は、外周面に複数の孔が形成され、該外周面が通気性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、シート状のポリウレタンフォームを、シート状共巻きシート材に重ねることなく巻き付けて爆破除膜を行うと、爆破の衝撃波によって、シート状のポリウレタンフォーム同士の重なり箇所でウレタンの骨格部分(除膜によって残った部分)がお互いに食い込んで剥がすことが困難になるが、通気性を有し除膜をするシート状のポリウレタンフォームの気泡径より細かい目のシート状共巻きシート材を、除膜するシート状ポリウレタンフォームに重ねて巻き付けているため、除膜するシート状ポリウレタンフォーム間に細かい目のシート状共巻きシート材が挟み込まれることになって、除膜するシート状ポリウレタンフォームにおける骨格同士の食い込みを低減することができ、セル膜除去ポリウレタンフォームシートを剥がしやすくなる。
【0017】
また、筒状芯体に巻き付けたシート状のポリウレタンフォームは、セル膜が除去された際にウレタンの骨格部分(セル骨格とも称される)のみとなって剛性が低下し、変形しやすくなるが、請求項1の発明では、除膜をするシート状のポリウレタンフォームの気泡径より細かい目のシート状共巻きシート材が除膜をするシート状のポリウレタンフォームに重なって存在するため、除膜後のポリウレタンフォームシートがシート状共巻きシート材で支持され、変形が抑えられ、セル膜除去ポリウレタンフォームシートを良好に製造することができる。
【0018】
さらに、請求項1の発明では、ポリウレタンフォームをブロック状にして爆破処理を行う場合と比べ、シート状のポリウレタンフォームを筒状芯体に巻き付けて爆破処理を行うため、場所を取らず、長いシート状のポリウレタンフォームに対してセル膜の除去(除膜)を行うことができ、製造効率がよい。
【0019】
請求項2の発明では、ポリエステル系ポリウレタンフォームは、セルサイズの大きなセルを形成できるため、除膜するシート状のポリウレタンフォームをポリエステル系ポリウレタンフォームとすることで、荒い目のセル膜除去ポリウレタンフォームシートを製造することができる。
【0020】
請求項3の発明では、ポリエーテル系ポリウレタンフォームは、爆破の熱による溶融性が低いため、シート状共巻きシート材をポリエーテル系ポリウレタンフォームとすることによって、爆破処理時にシート状共巻きシート材がシート状のポリウレタンフォームにくっつきにくく、爆破処理後にセル膜除去ポリウレタンフォームシートをシート状共巻きシート材から剥がしやすくなり、作業が容易である。
さらに、除膜するシート状のポリウレタンフォームがポリエステル系ポリウレタンフォームであって、シート状共巻きシート材も同じポリエステル系ポリウレタンフォームの場合には、お互いが溶着しやすいため、シート状共巻きシート材にポリエーテル系ポリウレタンフォームを使用することで、爆破処理後にセル膜除去ポリウレタンフォームシートをシート状共巻きシート材から剥がしやすくなり、製造作業が容易になる。
【0021】
請求項4の発明では、シート状共巻きシート材を生地とすることで、シート状共巻きシート材にポリウレタンフォームを使用する場合よりも安価にセル膜除去ポリウレタンフォームシートを製造することができる。
【0022】
請求項5の発明では、除膜をするシート状のポリウレタンフォームは、スラブフォームを発泡方向に対して直交方向にスライス加工したものであるため、セル形状が略円形になり、かつセル形状の均一性が高くなる。その結果、セル形状が略円形でセル形状の均一性が高いセル膜除去ポリウレタンフォームシートを製造することができる。ここでいうスラブフォームとは、常温常圧下、ミキシングヘッド内で一括混合されたポリウレタン発泡原液が、ベルトコンベア上に吐出されることで連続生産される長尺の軟質ポリウレタン発泡体をいう。
ところで、従来の製造方法においては、上記スラブフォームを裁断して塊状、ブロック状にしたものを、除膜処理した後、上記塊状物に、芯材を挿入し、上記塊状物を円筒形状に切出し、上記円筒形状物の側面に刃を当て、上記芯材を回転させながら、削ぐようにスライスすることで上記シート材を成形していた。このとき、上記芯材は、スラブフォームの発泡方向、天地上下方向に対して水平に位置するように、上記塊状物を串刺ししていた。したがって、上記芯材に対して、その天地上下位置にある気泡径は円形に近いが、その左右水平位置にある気泡径は、スラブフォームの発泡方向になり長円となっていた。このような構造の円筒形塊状物の側面を削ぐようにスライスすると、得られたシートの気泡は、一定間隔をおいて円形と長円が配置されることになっていた。
【0023】
請求項6の発明では、筒状芯体にシート状のポリウレタンフォームとシート状共巻きシート材を巻き取った後、最外周面を網状体又は複数の孔が形成された金属製板状体で包囲するため、外層側のシート状ポリウレタンフォームを爆破の衝撃波による影響から保護することができ、セル膜除去ポリウレタンフォームシートに破れや破損を生じるのを防ぐことができる。
【0024】
請求項7の発明では、筒状芯体は、外周面に複数の孔が形成され、該外周面が通気性を有するため、爆破時の点火を筒状芯体内で行うことができ、筒状芯体に巻き付けられてロール状になったシート状のポリウレタンフォームの中心位置で爆破を開始することができ、除膜のバラツキを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】セル膜爆破除去工程の概略を示す断面図である。
【
図4】スライス加工により得られるシート状のポリウレタンフォームを示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明におけるセル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法について実施形態を以下に説明する。セル膜除去ポリウレタンフォームシートの製造方法は、巻き取り工程と、セル膜爆破除去工程と、取り外し工程とよりなる。
巻き取り工程では、
図1の(1−A)に示すように、予め、シート状のポリウレタンフォーム11とシート状共巻きシート材21を用意する。
【0027】
前記シート状のポリウレタンフォーム11は、連続気泡構造を有する軟質ポリウレタンフォームからなり、ポリオールとしてポリエステル系ポリオールを使用したポリエステル系ポリウレタンフォームがより好ましい。
前記ポリウレタンフォームのセルサイズ(セル数/25mm、JIS K 6400−1準拠、で代用することができる)は特に限定されず、例えばセル数5個/25mm〜20個/25mm(JIS K 6400−1)を挙げることができる。特に、セルサイズの大きいもの(セル数の値が小さいもの)、例えばセル数5個/25mm〜16個/25mm(JIS K 6400−1)が好適である。
また、前記シート状のポリウレタンフォーム11は、
図4の(4−A)及び(4−B)に示すように、スラブ発泡させたブロック状のポリウレタンフォーム10を、発泡方向(スラブの厚み方向)Eに対して直交方向Fにスライス加工(スキ加工とも称される)を施して得たものが好ましい。
【0028】
一方、前記シート状共巻きシート材21は、前記シート状のポリウレタンフォーム11の気泡径より細かい目のものが使用され、材質は特に限定されないが、ポリエーテル系ポリウレタンフォーム、あるいは生地が好ましい。
前記シート状共巻きシート材21に使用するポリエーテルポリウレタンフォームは、連続気泡構造を有する軟質ポリウレタンフォームであり、セルサイズが、前記シート状のポリウレタンフォーム11のセルサイズよりも小(目が細かい)のものであればよく、特に限定されない。例えば、前記シート状のポリウレタンフォーム11に使用するポリエステル系ポリウレタンフォームのセルサイズが、セル数5個/25mm〜16個/25mm(JIS K 6400−1)の場合、前記シート状共巻きシート材21に使用するポリエーテルポリウレタンフォームのセルサイズとして、セル数25個/25mm〜100個/25mm(JIS K 6400−1)を挙げることができる。
また、前記シート状共巻きシート材21に使用する生地としては、通気性を有し、前記シート状のポリウレタンフォーム11のセルサイズよりも目が細かいものであれば、特に限定されない。好ましくは、耐熱温度が高く、共巻きすることから腰のないドレープ性に優れた生地がよい。具体的には、レーヨン生地(分解開始温度:310℃)、ジャージ綿(分解開始温度:340℃)等が挙げられる。また、目付け量は、50〜100kg/m
2、より好ましくは60〜90kg/m
2がよい。この範囲の目付け量であると、適度な強度と目開きにより、均一なセル形状の除膜されたポリウレタンフォームが得られる。
前記シート状のポリウレタンフォーム11と前記シート状共巻きシート材21の厚みについては、特に限定されないが、後述する筒状芯体への巻き取り性を考慮して0.5〜25mm程度が好ましい。
【0029】
次に
図1の(1−B)〜(1−C)に示すように、前記シート状のポリウレタンフォーム11とシート状共巻きシート材21を重ねた状態にして、筒状芯体31に巻き取ってロール体41を形成する。
前記筒状芯体31は、外周面に複数の孔が形成されて外周面が通気性を有するものが好ましい。前記外周面に複数の孔が形成されて外周面が通気性を有する筒状芯体31としては、網状体あるいはパンチングメタル等を筒状(パイプ状)にした金属製のものが用いられる。前記網目及び孔のサイズと間隔は特に限定されない。前記筒状芯体31の具体例として、厚み1〜3mm程度、孔径2〜4mm程度、孔のセンターピッチ4〜8mm程度のパンチングメタルを直径20〜40mm程度の筒状にしたものを挙げる。
【0030】
その後、
図1の(1−D)のように、前記ロール体41の外周面を巻き取り状態保持部材45で包囲する。前記巻き取り状態保持部材45は、金属製の網状体又は複数の孔が形成された金属製板状体を、前記ロール体41の外周面を包囲する筒状にしたものであり、前記巻き取り状態保持部材45の内面がロール体41の外周面に当接し、前記シート状のポリウレタンフォーム11とシート状共巻きシート材21の巻き取り状態を保持する。前記巻き取り状態保持部材45として使用する網状体の網目及び金属製板状体の孔のサイズと間隔は特に限定されるものではない。前記巻き取り状態保持部材45の具体例として、厚み1〜3mm程度、孔径3〜8mm程度、孔のセンターピッチ4〜12mm程度のパンチングメタルを筒状にし、端部46,46を重ね合わせてクリップやネジ等の締結部材で結合し、開かないようにするものを示す。
【0031】
セル膜爆破除去工程では、
図2に示すように、前記巻き取り状態保持部材45で包囲されたロール体41を爆破炉51に収容する。また、前記爆破炉51内には、前記ロール体41の保持手段を設けてもよい。前記ロール体41を前記爆破炉51に収容した後、前記爆破炉51に、可燃ガスとして、例えば酸素ガス53と水素ガス55を所定の比率で注入して充満させる。前記可燃ガスを爆破炉51に充満させることにより、前記可燃ガスが前記シート状のポリウレタンフォーム11に浸透する。前記シート状共巻きシート材21も通気性を有するため、前記シート状のポリウレタンフォーム11に可燃ガスが浸透しやすくなると共に、該シート状共巻きシート材21にも可燃ガスが浸透する。その後、前記可燃ガスに点火する。前記可燃ガスとしては、アセチレンやメタンに酸素ガスを混合して使用することもできる。また、可燃ガスは、混合比率(体積比率)が、酸素ガス:アセチレンの場合は5:3〜5:4、酸素ガス:メタンの場合は4:3〜1:1、酸素ガス:水素の場合は1:3〜1:4が好ましい。また、前記可燃ガスの点火は、前記爆破炉51の側面等に点火プラグを設置したり、前記筒状芯体31内に点火プラグを挿入したりして、前記点火プラグにより点火する。特に、前記筒状芯体31内に点火プラグを挿入して前記筒状芯体31内より点火し、爆破を行うようにすれば、除膜のバラツキをさらに低減することができる。
【0032】
前記可燃ガスの点火によって、該可燃ガスが燃焼・爆発し、それによって前記ロール体41の前記筒状芯体31に巻き取られている前記シート状のポリウレタンフォーム11のセル膜を除去する。同時に前記シート状共巻きシート材21がポリエーテル系ポリウレタンフォームの場合には、前記シート状共巻きシート材21のポリエーテル系ポリウレタンフォームについてもセル膜が除去される。その際、前記筒状芯体31が外周面に複数の孔が形成されたものであり、かつ前記巻き取り状態保持部材45が網状体又は複数の孔が形成された金属製板状体であり、さらに前記シート状共巻きシート材21が通気性を有しているため、前記可燃ガスの燃焼及び爆発による熱及び爆風が、前記シート状ポリウレタンフォームシート11及び前記シート状共巻きシート材21に効率的に加わり、セル膜除去を容易に行うことができる。
【0033】
取り外し工程では、前記ロール体41を前記爆破炉51から取り出し、前記ロール体41から巻き取り状態保持部材45を外し、その後、
図3の(3−A)及び(3−B)のように、前記筒状芯体31から、爆破処理後のシート状のセル膜除去ポリウレタンフォームシート11Aと爆破処理後のシート状共巻きシート材21Aを外し、所望のセル膜除去ポリウレタンフォームシート11Aを得る。その際、前記セル膜除去ポリウレタンフォームシート11Aがポリエステル系ポリウレタンフォームからなり、前記爆破処理後のシート状共巻きシート材21Aがポリエーテルポリウレタンフォームからなる場合には、互いに骨格同士の入り込みが少なく、また溶着もしていないため、容易に分離させることができる。
【実施例】
【0034】
・実施例1
次に示す部材を用いて前記巻き取り工程と、セル膜爆破除去工程と、取り外し工程を行い、セル膜除去ポリウレタンフォームシートを製造した。
前記シート状のポリウレタンフォーム11として、セル数10個/25mm(JIS K 6400−1)のポリエステル系ポリウレタンフォームのスラブフォームを発泡方向に対して直交方向にスライス加工して得られた、厚み4.5mm、長さ30m、幅1000mmのシート状のポリエステル系ポリウレタンフォームを用いた。
また、前記シート状共巻きシート材21として、セル数50個/25mm(JIS K 6400−1)のポリエーテル系ポリウレタンフォームのスラブフォームを同様にスライス加工して得られた、厚み4.5mm、長さ30m、幅1000mmのシート状のポリエーテル系ポリウレタンフォームシートを用いた。
【0035】
前記筒状芯体31としては、孔径3mm、センターピッチ5mm、60度の千鳥パターンで孔が形成された、厚み2mm、幅1100mmのステンレス製パンチングメタルから、直径50mm、幅1100mmの筒状に形成したものを用いた。
また、前記巻き取り状態保持部材45として、孔径6mm、センターピッチ9mm、60度の千鳥パターンで孔が形成された、厚み1.6mm、幅1230mm、長さ2160mmのステンレス製パンチングメタルから形成したものを用いた。
なお、前記可燃ガスは、酸素ガスと水素ガスを1.7:1の比率とした混合ガスを用い、点火プラグは前記爆破炉51の側面に設置した。
実施例1で製造されたセル膜除去ポリウレタンフォームシートは、表面のセル形状が円形をした均一なものであり、品質の良好なものであった。また、セル膜除去ポリウレタンフォームシートは、シート状共巻きシート材に骨格の食い込みが少なく、かつシート状共巻きシート材に溶着して無く、取り外しが容易であった。
【0036】
・実施例2
実施例1において、前記シート状共巻きシート材21に平織りレーヨン生地(レーヨン100%、目付量:67kg/m
2)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のセル膜除去ポリウレタンフォームシートを製造した。
・実施例3
実施例1において、前記シート状共巻きシート材21に平織りレーヨン生地(レーヨン100%、目付量:87kg/m
2)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3のセル膜除去ポリウレタンフォームシートを製造した。
実施例2及び実施例3で製造されたセル膜除去ポリウレタンフォームシートは、表面のセル形状が円形をした均一なものであり、品質の良好なものであった。
また、実施例2及び実施例3の何れにおいても、前記シート状共巻きシート材21に使用したレーヨン生地は、セル膜爆破除去工程を行った後も劣化が見られなかった。
さらに、実施例2と実施例3では、前記シート状共巻きシート材21の目付量の多い実施例3の方が、除膜用のシート状ポリウレタンフォーム11とシート状共巻きシート材21との接触面積が大きく、取り外し工程によって得られたセル膜除去ポリウレタンフォームシートに残る繊維くず(シート状共巻きシート材21に使用した生地の繊維くず)が多く観察された。
【0037】
このように、本発明は、セル膜除去ポリウレタンフォームシートを効率よく製造でき、また、セルサイズが大きいセル膜除去ポリウレタンフォームシートを効率よく製造でき、さらには、セル形状の均一性が高いセル膜除去ポリウレタンフォームシートを効率よく製造できる
【符号の説明】
【0038】
10 スラブ発泡させたブロック状のポリウレタンフォーム
11 シート状のポリウレタンフォーム
11A セル膜除去ポリウレタンフォームシート
21 シート状共巻きシート材
21A 爆破処理後のシート状共巻きシート材
31 筒状芯体
41 ロール体
45 巻き取り状態保持部材