【実施例】
【0016】
(1) 本実施例の洗浄装置10の構成
本実施例の洗浄装置10は、
図1に示すように、洗浄部11、第1濯ぎ部12A、第2濯ぎ部12B、真空蒸気乾燥部13、及び蒸留器14を有する。
【0017】
洗浄部11は、洗浄液を貯留する洗浄槽111、洗浄槽111内の洗浄液に超音波振動を発生させる超音波振動発生装置112、洗浄槽111を出て該洗浄槽111に戻る洗浄液循環流路113、洗浄液循環流路113中に設けられた送液ポンプ114及びフィルタ115、フィルタ115の下流側から分岐して洗浄槽111に戻る水除去処理流路116、並びに水除去処理流路116中に設けられた水除去装置117を有する。水除去装置117の詳細は後述する。
【0018】
第1濯ぎ部12Aは、濯ぎ液を貯留する第1濯ぎ槽121A、第1濯ぎ槽121A内の濯ぎ液に超音波振動を発生させる超音波振動発生装置122A、第1濯ぎ槽121Aを出て該第1濯ぎ槽121Aに戻る濯ぎ液循環流路123A、濯ぎ液循環流路123A中に設けられた送液ポンプ124A及びフィルタ125A、フィルタ125Aの下流側から分岐して第1濯ぎ槽121Aに戻る水除去処理流路126A、並びに水除去処理流路126A中に設けられた水除去装置127Aを有する。第2濯ぎ部12Bは、第1濯ぎ部12Aと同様に、第2濯ぎ槽121B、超音波振動発生装置122B、濯ぎ液循環流路123B、送液ポンプ124B、フィルタ125B、水除去処理流路126B、及び水除去装置127Bを有する。また、後述の第1濯ぎ液供給管141及び第2濯ぎ液供給管135が第2濯ぎ槽121Bにのみ接続される(第1濯ぎ槽121Aには接続されない)。第1濯ぎ槽121Aと第2濯ぎ槽121Bは濯ぎ液移送管128で接続されている。濯ぎ液移送管128は、第2濯ぎ槽121Bとの接続部の方が、第1濯ぎ槽121Aとの接続部よりも高い位置に設けられている。
【0019】
真空蒸気乾燥部13は、真空蒸気乾燥槽131、一方の端が真空蒸気乾燥槽131の底部に接続された送液管132、送液管132の他方の端に接続された貯留槽133、送液ポンプ134、貯留槽133内の液体を第2濯ぎ槽121Bに供給する第2濯ぎ液供給管135を有する。真空蒸気乾燥槽131には、後述の蒸気供給管142が接続されている。
【0020】
蒸留器14は、第1濯ぎ部12A及び第2濯ぎ部12Bにおいて使用された濯ぎ液を蒸留する装置である。蒸留器14には、第1濯ぎ槽121Aから一時貯留槽144を経て蒸留器14に濯ぎ液を回収する濯ぎ液回収管143と、蒸留器14で蒸留された濯ぎ液を第2濯ぎ槽121Bに供給する第1濯ぎ液供給管141と、蒸留の過程で生成された濯ぎ液の蒸気を真空蒸気乾燥部13に供給する蒸気供給管142が接続されている。
【0021】
第1濯ぎ槽121A、第2濯ぎ槽121B及び真空蒸気乾燥槽131はいずれも、気体回収管145を介して真空ポンプ146の気体吸引口に接続されており、真空ポンプ146の気体排出口は一時貯留槽144に接続されている。これら気体回収管145及び真空ポンプ146は、第1濯ぎ槽121A及び第2濯ぎ槽121Bにおいて濯ぎ液が気化した気体、及び真空蒸気乾燥部13に供給された蒸気を一時貯留槽144に回収し、再利用すると共に炭化水素の気体が外部環境に漏出することを防止するために設けられている。
【0022】
次に、
図2を用いて、水除去装置117、127A及び127Bの構成を説明する。これら3つの水除去装置は同じ構成を有するため、以下では水除去装置117を例として説明する。水除去装置117は、蒸発槽21、蒸発槽21内の上部に設けられた冷却体22、蒸発槽21の最上部に接続された排出管23、排出管23中に設けられた蒸発槽減圧ポンプ24、及び蒸発槽減圧ポンプ24の気体排出口に接続された2次冷却部25を有する。蒸発槽21の側面には水除去処理流路116の上流部1161が接続され、蒸発槽21の底面には水除去処理流路116の下流部1162が接続されている。蒸発槽21内には液面の高さを測定するボールタップ211が設けられており、液面が所定の高さに達した際に、水除去処理流路116の上流部1161に設けられたバルブが閉鎖されるよう、該バルブと連動している。冷却体22は、本実施例では蒸発槽21の内面に沿って巻回するコイル状の管を用い、該管には、冷却水を供給する冷却水源(図示せず)が接続されている。2次冷却部25は、減圧ポンプ24から排出された気体を通過させる気体流路と、該気体流路の周囲に設けられた冷却水流路(気体流路及び冷却水流路は図示せず)と、気体流路内で液化した液体を水除去処理流路116の下流部1162に送液する水除去処理流路接続管251を有する。2次冷却部25には、気体流路内で液化しなかった気体を大気中に排出する気体排出管26が接続されている。
【0023】
(2) 本実施例の洗浄装置10の動作(本発明の洗浄方法の実施例)
次に、洗浄装置10の動作を説明する。
(2-1) ワークWの洗浄
洗浄槽111に洗浄液を貯留した状態で洗浄液内にワークWを浸漬し、超音波振動発生装置112により、洗浄液を介してワークWに超音波振動を付与することにより、ワークWを洗浄する。洗浄液には、本実施例では炭化水素、水及び界面活性剤が混合されたもの(商品名:NSクリーン100M、JX日鉱日石エネルギー株式会社製)を用いる。このように洗浄液が水を含有しているため、ワークWの表面に付着していた水溶性の付着物を除去しやすい。超音波振動の付与を一定時間行った後、ワークWを洗浄槽111から取り出す。
【0024】
洗浄液は常時、送液ポンプ114により洗浄液循環流路113を循環するよう送液され、洗浄液循環流路113内のフィルタ115により濾過される。また、洗浄液循環流路113を循環する洗浄液の一部は、洗浄液循環流路113から分岐する水除去処理流路116を通して水除去装置117に導入され、水除去装置117において洗浄液中の水の一部が除去された後、水除去処理流路116を通して洗浄槽111に返送される。なお、洗浄液自体が本来、水を含有するものであるため、例えば水除去装置117への洗浄水の供給量を調整したり、水除去装置117を間欠的に動作させることなどにより、必要以上に水を洗浄液から除去しないようにする。水除去装置117の動作の詳細は後述する。
【0025】
(2-2) ワークWの濯ぎ
まず、第1濯ぎ部12Aの第1濯ぎ槽121Aに濯ぎ液を貯留した状態で、濯ぎ液内に、洗浄後のワークを浸漬する。そして、超音波振動発生装置122Aにより、濯ぎ液を介してワークWに超音波振動を付与することにより、ワークWの表面に付着していた洗浄液を除去する(1回目の濯ぎ)。一定時間経過後、第1濯ぎ槽121AからワークWを取り出し、第2濯ぎ部12Bの第2濯ぎ槽121Bに濯ぎ液を貯留したうえで、該濯ぎ液内にワークWを浸漬する。そして、超音波振動発生装置122Bにより、濯ぎ液を介してワークWに超音波振動を付与する。こうして、ワークWに対して2回目の濯ぎがなされる。
【0026】
濯ぎ液には、本実施例では炭化水素溶剤を用いる。この炭化水素溶剤は、洗浄液が含有する炭化水素溶剤と同じ物質(第1非極性物質)から成る。なお、洗浄液に含有されない非極性物質から成る濯ぎ液を用いてもよい。濯ぎ液は、蒸留器14で蒸留されて不純物を含まないものが第1濯ぎ液供給管141から第2濯ぎ槽121Bに供給され、第2濯ぎ槽121Bで使用されたものが濯ぎ液移送管128を通して第1濯ぎ槽121Aに供給される。これにより、2回目の濯ぎでは、よりきれいな濯ぎ液を使用して仕上げの濯ぎを行うことができる。1回目の濯ぎでは、2回目の濯ぎで(他のワークに対して)使用された濯ぎ液を用いることとなるが、既に1回目の濯ぎが済んだ後に行う2回目の濯ぎでは不純物はごく少量しか発生しないため、仕上げの前段階である1回目の濯ぎにおいてこの濯ぎ液を使用することは問題にはならない。
【0027】
第1濯ぎ部12A及び第2濯ぎ部12Bのいずれにおいても、濯ぎ液は洗浄液と同様に、常時、送液ポンプ124A(B)により濯ぎ液循環流路123A(B)を循環するよう送液され、濯ぎ液循環流路123A(B)内のフィルタ125A(B)により濾過される。また、濯ぎ液循環流路123A(B)を循環する濯ぎ液の一部は、水除去処理流路126A(B)を通して水除去装置127A(B)に導入され、濯ぎ液中の水が除去された後、水除去処理流路126A(B)を通して第1(2)濯ぎ槽121A(B)に返送される。なお、濯ぎ液に関しては、混入した水はできるだけ多く(理想的には全量)除去するよう、水除去装置127A(B)を制限なく動作させる。
【0028】
(2-3) ワークWの真空蒸気乾燥
濯ぎ後のワークWを真空蒸気乾燥槽131内に収容する。次に、蒸気供給管142から、濯ぎ液と同じ炭化水素溶剤を気化させた蒸気、すなわち濯ぎ液と同じ非極性物質から成る蒸気を真空蒸気乾燥槽131内に供給する。これにより、ワークWの表面において、蒸気の一部が冷却されることにより液化する。液化した炭化水素溶剤は、ワークWの表面に付着していた濯ぎ液の残渣を取り込みつつ、更に蒸気が冷却されることによって次第に滴が成長し、該表面から落下する。これにより、濯ぎ液の残渣がワークの表面から除去される。時間の経過に伴ってワークWが蒸気で加熱されてゆくと、ワークWの温度が上昇し、蒸気が液化しなくなる。そこで、真空ポンプ146により真空蒸気乾燥槽131内を減圧する。これにより、ワークWの表面に残存していた液体が突沸し、該表面から蒸発する。蒸発した炭化水素溶剤の気体は、気体回収管145を介して、一時貯留槽144内に貯留された濯ぎ液に導入される。その後、真空蒸気乾燥槽131内の真空をリークバルブで破り、真空蒸気乾燥槽131からワークWを取り出すことにより、ワークWの一連の洗浄処理が完了する。
【0029】
なお、真空蒸気乾燥槽131内においてワークWの表面から落下した液体は、該真空蒸気乾燥槽131の底に貯留され、真空蒸気乾燥の工程終了後に貯留槽133に回収される。この液体は、濯ぎの際にワークWの表面に付着した濯ぎ液の残渣と、真空蒸気乾燥工程で用いた蒸気が液化したものが混合したものである。それら濯ぎ液の残渣と蒸気がいずれも同じ非極性物質から成るため、回収された液体の成分は濯ぎ液及び前記蒸気と同じである。そのため、貯留槽133中の液体は、本実施例では第2濯ぎ液供給管135を介して第2濯ぎ槽121Bに送液され、濯ぎ液の一部として利用される。また、回収された液体を蒸気の発生源として利用してもよい。
【0030】
(2-4) 蒸留器14及びそれに関連する構成要素の動作
第1濯ぎ槽121A及び第2濯ぎ槽121Bで使用された濯ぎ液は、徐々に第1濯ぎ槽121Aから濯ぎ液回収管143に溢出し、一時貯留槽144を経て蒸留器14に回収される。また、真空蒸気乾燥槽131内を減圧することにより該槽内から排出される気体も、一時貯留槽144に導入され、そこで液化したものが蒸留器14に回収される。さらに、また、第1濯ぎ槽121A及び第2濯ぎ槽121Bには、濯ぎ液が蒸発した気体がこれらの濯ぎ槽内に存在することから、これらの濯ぎ槽からワークWを取り出す前に、槽内の気体を真空ポンプ146で排出することが望ましい。これにより排出された気体は、真空蒸気乾燥槽131内の気体と同様に、一時貯留槽144に導入され、そこで液化したものが蒸留器14に回収される。
【0031】
こうして回収された液体は、蒸留器14により蒸留され、新たな濯ぎ液となる炭化水素溶剤と、回収された使用済みの濯ぎ液に由来する混入物に分離される。そして、新たな濯ぎ液は、上述のように、第1濯ぎ液供給管141を通して第2濯ぎ槽121Bに供給される。また、この蒸留の過程で生成される炭化水素溶剤の蒸気の一部は、液化されることなく、真空蒸気乾燥で使用される蒸気として、蒸気供給管142を介して真空蒸気乾燥槽131に供給される。
【0032】
(2-5) 水除去装置の動作
水除去装置117、127A及び127Bの動作を、洗浄部11で用いられる水除去装置117を例に説明する。
洗浄液循環流路113を循環する洗浄液の一部は、洗浄液循環流路113から分岐する水除去処理流路116を通して蒸発槽21に導入される。蒸発槽21内に所定量まで洗浄液が貯留されると、そのことをボールタップ211が検知し、水除去処理流路116中のバルブが閉鎖される。次に、蒸発槽減圧ポンプ24により、蒸発槽21内の気体が排出管23を通って蒸発槽21外に向けて吸引される。その際、排出管23に設けられたバルブの開度を調整することにより、蒸発槽21内は、当該開度に対応した圧力まで減圧され、当該圧力で均衡する。その際、本実施例で使用する炭化水素溶剤はいずれの圧力においても水よりも沸点が低いことから、圧力を調整することにより、炭化水素溶剤は沸騰せず、水のみを沸騰させることができる。こうして、洗浄液からは、水が沸騰により気化すると共に、炭化水素溶剤もわずかに気化する。
【0033】
生成された気体は、管内に冷却水が流されている冷却体22により冷却される。ここで、冷却水の流量を調整することにより、水蒸気は液化させることなく、炭化水素の気体のみを液化させることができる。液化した炭化水素は蒸発槽21内の洗浄液に滴下し、水蒸気は蒸発槽21外に排出される。蒸発槽21外に排出された水蒸気はさらに、2次冷却部25において冷却される。これにより、水蒸気内にわずかに炭化水素が混入していた場合に、当該炭化水素が分離される。そして、2次冷却部25を通過した水蒸気は、気体排出管26から大気に放出される。
【0034】
ここまでの操作を所定時間行うことにより、蒸発槽21内の洗浄液から水が除去される。その後、蒸発槽21内の洗浄液は、水除去処理流路116を通して洗浄槽111に返送される。また、2次冷却部25において液化して水蒸気から分離された炭化水素は、水除去処理流路接続管251及び水除去処理流路116を通して洗浄槽111に返送される。ここで、上記所定時間を短くすることにより、洗浄液内に必要量の水が残った状態とすることができる。あるいは、水除去装置117では洗浄液内の水を完全に除去するようにし、水除去装置117に供給される使用後の洗浄液の量を調整することにより、洗浄槽111内の洗浄液における水の量を制御してもよい。
【0035】
第1濯ぎ部12A及び第2濯ぎ部12Bにおける水除去装置127A及び127Bは、濯ぎ液内の水を完全に除去すればよいため必要量の水を残す操作が不要である点を除いて、上記水除去装置117と同様に動作する。
【0036】
本発明は上記実施例には限定されない。
上記実施例では濯ぎ液と真空蒸気乾燥工程で用いる蒸気には同じ炭化水素(非極性物質)から成るものを用いたが、これら濯ぎ液及び蒸気の発生源の液体に互いに異なる非極性物質から成るものを用いてもよい。例えば、濯ぎ液と蒸気には炭素数が互いに異なる炭化水素を用いることができる。また、濯ぎ液及び蒸気の一方にはパラフィン系炭化水素を用い、他方にはナフテン系炭化水素や芳香族系炭化水素を用いることもできる。
【0037】
上記実施例では、濯ぎ部は、上記実施例では2つとしたが、濯ぎをより徹底するために3つ以上としてもよいし、洗浄液が比較的容易に除去できるものである場合には1つのみとしてもよい。
【0038】
上記実施例では、水除去装置における冷却体22には冷却水を流す管を蒸発槽21の内面に沿って巻回したものを用いたが、冷却水を流す管を蒸発槽21の外壁に接するように設け、この外壁を冷却体として用いてもよい。また、上記実施例では2次冷却部25を用いたが、これを省略してもよい。