特開2015-113576(P2015-113576A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000003
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000004
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000005
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000006
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000007
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000008
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000009
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000010
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000011
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000012
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000013
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000014
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000015
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000016
  • 特開2015113576-橋桁架替車両及び橋桁架替方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-113576(P2015-113576A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】橋桁架替車両及び橋桁架替方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20150526BHJP
【FI】
   E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-254337(P2013-254337)
(22)【出願日】2013年12月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠信
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘文
(72)【発明者】
【氏名】小島 浩
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059CC15
2D059DD03
2D059DD06
2D059GG41
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】都市高速道路等のような上下空間に大きな制約がある橋梁に対して、使用する上下空間を抑えつつ、安全に且つ狭い作業ヤードで架け替えを行うことができる橋桁架替車両を提供すること。
【解決手段】橋桁架替車両1は、架け替え対象の既設桁M1の長手方向寸法より長く離間して配置された一対の車両部2A,2Bと、これら一対の車両部2A,2Bを連結する懸架部3を備える。懸架部3は、既設桁M1を吊り上げるクレーン装置60を備える。各車両部2A,2Bは、動力源14を搭載する車体10と、橋梁上を走行するための複数の走行装置20と、既設桁M1の長手方向寸法より長い仮橋桁4を長手方向に送り出す送り出しジャッキ30と、仮橋桁4の上を走行するクローラ40とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架け替え対象の既設桁の長手方向寸法より長く離間して配置された一対の車両部と、これら一対の車両部を連結する懸架部とを備える橋桁架替車両であって、
前記懸架部は、
前記既設桁を吊り上げるクレーン装置を備え、
前記各車両部は、
動力源を搭載する車体と、
橋梁上を走行するための複数の走行装置と、
前記既設桁の長手方向寸法より長い仮橋桁を長手方向に送り出す送り出し装置と、
前記仮橋桁の上を走行する直線移動装置と、
を備えることを特徴とする橋桁架替車両。
【請求項2】
請求項1に記載された橋桁架替車両において、
前記各走行装置は、複数の車輪を支持するアクスルと、前記アクスルを旋回可能に前記車体に取付けるアーム部材とを有し、前記車体に対して独立して操舵可能であることを特徴とする橋桁架替車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された橋桁架替車両を走行させてその各車両部を前記既設桁の長手方向寸法より長く離間している状態で配置する車両配置工程と、
前記クレーン装置によって前記既設桁を吊り上げる既設桁吊り上げ工程と、
前記送り出し装置によって前記既設桁が吊り上げられた架替空間に仮橋桁を送り出して架け渡す送り出し工程と、
前記直線移動装置によって前記架け渡された仮橋桁の上を直線移動して前記架替空間を渡る直線移動工程と、
前記走行装置によって橋梁に隣接する作業ヤードまで走行し、前記クレーン装置によって前記既設桁を作業ヤードで吊り降ろす既設桁吊り降ろし工程と、
前記クレーン装置によって作業ヤードで新設桁を吊り上げる新設桁吊り上げ工程と、
前記走行装置によって前記仮橋桁の一端部まで走行し、前記直線移動装置によって前記仮橋桁の上を直線移動して前記架替空間の上側に前記新設桁を配置する新設桁配置工程と、
前記送り出し装置によって前記仮橋桁を送り出して前記架替空間から撤去する仮橋桁撤去工程と、
前記クレーン装置によって前記新設桁を吊り降ろして前記架替空間に設置する新設桁設置工程とを備えることを特徴とする橋桁架替方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された橋桁架替車両を第1橋桁架替車両と第2橋桁架替車両として2台用意し、前記第1橋桁架替車両を走行させてその各車両部を前記既設桁の長手方向寸法より長く離間している状態で配置する車両配置工程と、
前記第1橋桁架替車両のクレーン装置によって前記既設桁を吊り上げる既設桁吊り上げ工程と、
前記第1橋桁架替車両の送り出し装置によって前記既設桁が吊り上げられた架替空間に仮橋桁を送り出して架け渡す送り出し工程と、
前記第1橋桁架替車両の直線移動装置によって前記架け渡された仮橋桁の上を直線移動して前記架替空間を渡る直線移動工程と、
前記第1橋桁架替車両の走行装置によって橋梁に隣接する第1作業ヤードまで走行し、そのクレーン装置によって前記既設桁を第1作業ヤードで吊り降ろす既設桁吊り降ろし工程と、
前記第2橋桁架替車両のクレーン装置によって橋梁に隣接する第2作業ヤードで新設桁を吊り上げる新設桁吊り上げ工程と、
前記第2橋桁架替車両の走行装置によって前記仮橋桁の一端部まで走行し、その直線移動装置によって前記仮橋桁の上を直線移動して前記架替空間の上側に前記新設桁を配置する新設桁配置工程と、
前記第2橋桁架替車両の送り出し装置によって前記仮橋桁を送り出して前記架替空間から撤去する仮橋桁撤去工程と、
前記第2橋桁架替車両のクレーン装置によって前記新設桁を吊り降ろして前記架替空間に設置する新設桁設置工程とを備えることを特徴とする橋桁架替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁に対して橋桁の老朽化した既設桁を撤去して新設桁を架設する(所謂「架け替え」をする)橋桁架替車両及び橋桁架替方法に関し、特に、都市高速道路等のような上下空間に大きな制約がある橋梁に対して、既設桁の架け替えを行うことができる橋桁架替車両及び橋桁架替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋や鉄道橋等の橋梁において、古くなった既設桁から新しい新設桁に架け替えることが行われている。従来、このような橋桁架替方法として、例えば、トラッククレーン及びベントを使用する方法(以下、「トラッククレーンベント工法」と呼ぶ)又は大型自走式キャリヤを使用する方法がある。
【0003】
トラッククレーンベント工法は、最も一般的な工法であり、例えば下記特許文献1のように多くの文献に記載されている。トラッククレーンベント工法では、図14に示すように、先ず橋梁KSの下方にベントB1を組み立てて、トラッククレーンTCによって既設桁J1を吊り上げて撤去する。次に、トラック等で運ばれてきた新設桁P1をトラッククレーンTCで吊り上げて、新設桁P1を架替空間KKに架設する。そして、新設桁P1を隣接する橋桁I1,I2と結合した後に、ベントB1を解体するようになっている。
【0004】
大型自走式キャリヤOCを使用する方法は、本出願人が提案している方法であり、例えば図15に示すように、橋梁KTの下方に大型自走式キャリヤOCとユニットジャッキUJとが配置される。具体的には、ユニットジャッキUJで既設桁J2を支えながら大きな既設桁J2を一括して大型自走式キャリヤOCで搬送する。撤去された大きな既設桁J2は作業ヤードで解体される。また、作業ヤードでは大きな新設桁P2を組立てる。そして、ユニットジャッキUJで新設桁P2を支えながら大きな新設桁P2を一括して大型自走式キャリヤOCで搬送し、ユニットジャッキUJを下降させて新設桁P2を架替空間KKに架設するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−190266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、橋梁のうち都市高速道路等においては、道路が立体的に設けられていて、上下空間に大きな制約がある。このため、上述した従来の架替方法では、以下の問題点がある。先ず、トラッククレーンベント工法では、橋梁KSの下方にトラッククレーンTCを配置して、既設桁J1及び新設桁P1の吊り上げと吊り降ろしを行うため、橋梁KSの上下に広い空間が必要である。更に、ベントB1の組立及び解体が行われるため、安全面での配慮も必要である。加えて、橋梁KSの下方が供用道路である場合には、トラッククレーンTCの配置によって、交通規制の影響が大きい。従って、都市高速道路等に対してトラッククレーンベント工法では、安全に且つ使用する上下空間を抑えて架け替えを行うことが困難である。
【0007】
一方、大型自走式キャリヤを使用する方法では、大きな既設桁J2を作業ヤードで解体すると共に、大きな新設桁P2を作業ヤードで組立てるため、非常に広い作業ヤードを確保しなければならない。更に、橋梁KTの下方に大型自走式キャリヤOCを進入させる空間が必要になるため、架け替えを行うことができる橋梁が制限される。加えて、橋梁KTの下方が供用道路である場合には、大型自走式キャリヤOCの配置によって、交通規制の影響が大きい。従って、都市高速道路等に対して大型自走式キャリヤを使用する方法では、狭い作業ヤードで且つ使用する上下空間を抑えて架け替えを行うことが困難である。
【0008】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、都市高速道路等のような上下空間に大きな制約がある橋梁に対して、使用する上下空間を抑えつつ、安全に且つ狭い作業ヤードで架け替えを行うことができる橋桁架替車両及び橋桁架替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る橋桁架替車両は、架け替え対象の既設桁の長手方向寸法より長く離間して配置された一対の車両部と、これら一対の車両部を連結する懸架部とを備える橋桁架替車両であって、前記懸架部は、前記既設桁を吊り上げるクレーン装置を備え、前記各車両部は、動力源を搭載する車体と、橋梁上を走行するための複数の走行装置と、前記既設桁の長手方向寸法より長い仮橋桁を長手方向に送り出す送り出し装置と、前記仮橋桁の上を走行する直線移動装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る橋桁架替方法は、上記した橋桁架替車両を走行させてその各車両部を既設桁の長手方向寸法より長く離間している状態で配置する車両配置工程と、前記クレーン装置によって前記既設桁を吊り上げる既設桁吊り上げ工程と、前記送り出し装置によって前記既設桁が吊り上げられた架替空間に仮橋桁を送り出して架け渡す送り出し工程と、前記直線移動装置によって前記架け渡された仮橋桁の上を直線移動して前記架替空間を渡る直線移動工程と、前記走行装置によって橋梁に隣接する作業ヤードまで走行し、前記クレーン装置によって前記既設桁を作業ヤードで吊り降ろす既設桁吊り降ろし工程と、前記クレーン装置によって作業ヤードで新設桁を吊り上げる新設桁吊り上げ工程と、前記走行装置によって前記仮橋桁の一端部まで走行し、前記直線移動装置によって前記仮橋桁の上を直線移動して前記架替空間の上側に前記新設桁を配置する新設桁配置工程と、前記送り出し装置によって前記仮橋桁を送り出して前記架替空間から撤去する仮橋桁撤去工程と、前記クレーン装置によって前記新設桁を吊り降ろして前記架替空間に設置する新設桁設置工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る橋桁架替車両及び橋桁架替方法によれば、既設桁を撤去する際、先ず、各車両部を既設桁の長手方向寸法より長く離間している状態で配置する。次に、クレーン装置によって既設桁を吊り上げる。続いて、送り出し装置によって既設桁が吊り上げられた架替空間に仮橋桁を送り出して架け渡す。そして、直線移動装置によって架け渡された仮橋桁の上を直線移動して架替空間を渡る。その後、走行装置によって作業ヤードまで走行し、クレーン装置によって既設桁を作業ヤードで吊り降ろす。こうして、橋桁架替車両は橋梁上を自走するだけであり、作業ヤード以外で橋梁の上下空間を使用せずに既設桁を撤去することができる。
【0012】
そして、新設桁を架設する際、先ず、クレーン装置によって作業ヤードで新設桁を吊り上げる。次に、走行装置によって仮橋桁の一端部まで走行し、直線移動装置によって仮橋桁の上を直線移動して架替空間の上側に新設桁を配置する。続いて、送り出し装置によって仮橋桁を送り出して架替空間から撤去する。その後、クレーン装置によって新設桁を吊り降ろして架替空間に設置する。こうして、橋桁架替車両は橋梁上を自走するだけであり、作業ヤード以外で橋梁の上下空間を使用せずに新設桁を設置することができる。
【0013】
以上により、橋梁の下方にトラッククレーンや大型自走式キャリヤを配置する必要がなくて、橋桁架替車両が橋梁上を自走することで架け替えを行うことができる。従って、交通規制の範囲が狭く、従来の橋梁の下方で行っていた交通規制の影響を減らすことができる。また、橋梁の下方でベントの組立及び解体を行う必要がなくて、安全である。更に、大型自走式キャリヤを使用する方法のように、既設桁の解体及び新設桁の組立を行うための広い作業ヤードが必要なくて、比較的狭い作業ヤードで良い。この結果、使用する上下空間を抑えつつ、安全に且つ狭い作業ヤードで架け替えを行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る橋桁架替方法は、上記した橋桁架替車両を第1橋桁架替車両と第2橋桁架替車両として2台用意し、前記第1橋桁架替車両を走行させてその各車両部を既設桁の長手方向寸法より長く離間している状態で配置する車両配置工程と、前記第1橋桁架替車両のクレーン装置によって前記既設桁を吊り上げる既設桁吊り上げ工程と、前記第1橋桁架替車両の送り出し装置によって前記既設桁が吊り上げられた架替空間に仮橋桁を送り出して架け渡す送り出し工程と、前記第1橋桁架替車両の直線移動装置によって前記架け渡された仮橋桁の上を直線移動して前記架替空間を渡る直線移動工程と、前記第1橋桁架替車両の走行装置によって橋梁に隣接する第1作業ヤードまで走行し、そのクレーン装置によって前記既設桁を第1作業ヤードで吊り降ろす既設桁吊り降ろし工程と、前記第2橋桁架替車両のクレーン装置によって橋梁に隣接する第2作業ヤードで新設桁を吊り上げる新設桁吊り上げ工程と、前記第2橋桁架替車両の走行装置によって前記仮橋桁の一端部まで走行し、その直線移動装置によって前記仮橋桁の上を直線移動して前記架替空間の上側に前記新設桁を配置する新設桁配置工程と、前記第2橋桁架替車両の送り出し装置によって前記仮橋桁を送り出して前記架替空間から撤去する仮橋桁撤去工程と、前記第2橋桁架替車両のクレーン装置によって前記新設桁を吊り降ろして前記架替空間に設置する新設桁設置工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
上記した本発明に係る橋桁架替方法によれば、使用する上下空間を抑えつつ、安全に且つ狭い作業ヤードで架け替えを行うことができるという作用効果に加えて、2台の橋桁架替車両と2つの作業ヤードを利用することで、既設桁の撤去と新設桁の架設とをほとんど同時に行うことができる。従って、施工期間を短縮することができる。
【0016】
また、本発明に係る橋桁架替車両において、各走行装置は、複数の車輪を支持するアクスルと、前記アクスルを旋回可能に前記車体に取付けるアーム部材とを有し、前記車体に対して独立して操舵可能であると良い。
この場合には、各車輪を独立して操舵できるため、旋回だけでなく斜行や横行のような複雑な走行を行うことができる。このため、橋梁に隣接する非常に狭い作業ヤードであっても確実に移動することができる。つまり、設置する作業ヤードを狭くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の橋桁架替車両及び橋桁架替方法によれば、都市高速道路等のような上下空間に大きな制約がある橋梁に対して、使用する上下空間を抑えつつ、安全に且つ狭い作業ヤードで架け替えを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の橋桁架替車両を模式的に示した斜視図である。
図2図1の車両部を示した側面図である。
図3図2のX−X線に沿った断面図である。
図4】第1橋桁架替車両が第1作業ヤードで待機し、第2橋桁架替車両が第2作業ヤードで待機している状態を示した図である。
図5】第1橋桁架替車両のクレーン装置が既設桁を吊り上げている状態を示した図である。
図6】第1橋桁架替車両の送り出しジャッキが仮橋桁を送り出した状態を示した図である。
図7】第1橋桁架替車両のクローラが仮橋桁の上を直線移動した状態を示した図である。
図8】第1橋桁架替車両が第1作業ヤードまで走行した状態を示した図である。
図9】第1橋桁架替車両のクレーン装置が第1作業ヤードで既設桁を吊り降ろした状態を示した図である。
図10】第2橋桁架替車両のクレーン装置が第2作業ヤードで新設桁を吊り上げた状態を示した図である。
図11】第2橋桁架替車両のクローラが仮橋桁の上を直線移動して、架替空間の上側に新設桁を配置した状態を示した図である。
図12】第2橋桁架替車両の送り出しジャッキが仮橋桁を送り出した状態を示した図である。
図13】第2橋桁架替車両のクレーン装置が新設桁を吊り降ろして架替空間に設置した後の状態を示した図である。
図14】従来の橋桁架替方法としてトラッククレーンベント工法を説明するための模式的な図である。
図15】従来の橋桁架替方法として大型自走式キャリヤを使用する方法を説明するための模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る橋桁架替車両及び橋桁架替方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の橋桁架替車両1を模式的に示した斜視図である。橋桁架替車両1は、老朽化した既設桁を撤去して新設桁を架設する(所謂「架け替え」を行う)特殊車両であり、図1に示すように、長手方向の両端にユニット化された一対の車両部2A,2Bを備え、各車両部2A,2Bの上側を連結する懸架部3を備えている。車両部2Aの構成と車両部2Bの構成は同様であるため、以下では車両部2Aの構成を代表して説明する。
【0020】
図2は、図1の車両部2Aを示した側面図である。また、図3は、図2のX−X線に沿った断面図である。図2及び図3に示すように、車両部2Aは、車体10と、走行装置20と、送り出しジャッキ30と、クローラ40とを備えている。また、懸架部3は、屋根枠50と、クレーン装置60とを備えている。
【0021】
車体10は、主に、台枠11と受台12と運転席13と動力源14とを有して構成されている。台枠11の下側に、走行装置20が設けられていて、台枠11の上側に、動力源14が搭載されている。受台12は、懸架部3を支持するものであり、台枠11の上側で動力源14を囲んでいる。運転席13には、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵ハンドルの他、作業員が各装置を操作するためのレバー及びボタン等が設けられている。動力源14は、走行装置20を駆動させるモータの発電機、送り出しジャッキ30及びクレーン装置60を駆動させるための油圧ユニット、クローラ40と走行装置20とクレーン装置60を駆動させるためのディーゼルエンジン等である。なお、動力源14の構成は、上記したものに限定されるものではなく適宜変更可能である。
【0022】
走行装置20は、複数の車輪21と、一対の車輪21を回転可能に支持するアクスル22と、このアクスル22を覆うアクスルケース22aと、アクスルケース22aに連結されているアーム部材23と、アーム部材23の上端部に連結されている回転プレート24とを有している。こうして、アーム部材23は、アクスル22を旋回可能に車体10に取付けている。この走行装置20では、双輪である車輪21が車幅方向の両端に設けられていて、車両長手方向に4つ並んでいる。各アクスル22は、図示しない走行用モータに接続されていて、走行用モータの回転によって、車輪21と共に回転する。つまり、走行用モータが回転すると、車輪21及びアクスル22が回転して、橋桁架替車両1が橋梁上を走行できる。
【0023】
各アーム部材23は、各車輪21と車体10との間で上下方向に延びていて、回転プレート24の回転に伴って、車輪21を操舵させることができる。なお、各アーム部材23は、図2及び図3では模式的に1部材で示されているが、スイングアームとサスペンションブラケットとで構成されている。各回転プレート24は、車体10に対してベアリングを介して回転可能に取付けられている。また、各回転プレート24は、図示しない操舵用モータにそれぞれ接続されていて、各操舵用モータの回転によって、垂直方向の軸周りに回転することができる。こうして、各操舵用モータが回転すると、回転プレート24及びアーム部材23が垂直方向の軸周りに回転して、各車輪21が操舵される。つまり、操舵用モータは対応する車輪のみ操舵可能になっていて、各車輪21はそれぞれ独立して操舵可能になっている。これにより、橋桁架替車両1は、旋回だけでなく斜行や横行のような複雑な走行を行うことができる。
【0024】
送り出しジャッキ30は、仮橋桁4(図4参照)を車両長手方向に送り出すものである。ここで、仮橋桁4は、後述するように、架替空間KKに一時的に架け渡される桁部材であり(図6図11参照)、既設桁M1の長手方向寸法より長く、既設桁M1の幅方向寸法より短いものである。この仮橋桁4は、図3に示すように、断面がコ字状のチャンネル部4aと、平板状である底板部4bとを有している。なお、仮橋桁4の形状は適宜変更可能であり、断面がH形状又はハット形状である桁部材であっても良い。
【0025】
送り出しジャッキ30は、台枠11の車両長手方向の両端の下側にそれぞれ取付けられていて、車幅方向の中央部に配置されている。各送り出しジャッキ30は、油圧シリンダ等を有する周知の構成であり、仮橋桁4を把持しつつ車両長手方向に少しずつ送り出すことができる。これら各送り出しジャッキ30が、本発明の「送り出し装置」に相当するが、「送り出し装置」の構成は適宜変更可能であり、例えばローラが回転しながら仮橋桁4を送り出す回転ローラ機構であっても良い。
【0026】
クローラ40は、図2及び図3に示すように、仮橋桁4のチャンネル部4aの上面を直線移動するものである。このクローラ40は、台枠11の車両長手方向の中央部の下側に取付けられていて、車幅方向の中央部に配置されている。クローラ40は、ベルト状のシューと駆動輪と転動輪等を有する周知の構成であり、ディーゼルエンジンの駆動によって駆動輪が回転することで、少しずつ前進又は後進することができる。このクローラ40が、本発明の「直線移動装置」に相当するが、「直線移動装置」の構成は適宜変更可能であり、例えば仮橋桁4のチャンネル部4aを把持しながらスライドする機構であっても良い。
【0027】
屋根枠50は、図1に示すように、車両長手方向に延びていて、屋根枠50の一端部が一方の車両部2Aの受台12に支持され、屋根枠50の他端部が他方の車両部2Bの受台12に支持されている。これにより、一方の車両部2Aと他方の車両部2Bとは、後述する既設桁M1の長手方向寸法より長く離間している(図5参照)。そして、屋根枠50の長手方向の中央部には、二つのクレーン装置60が搭載されている。
【0028】
各クレーン装置60は、既設桁を吊り上げる又は吊り降ろすものであり、屋根枠50で支持されたクレーン本体61と、このクレーン本体61の車幅方向の両端に設けられた各ウインチ62と、各ウインチ62に巻回されている各ワイヤ63と、これらワイヤ63の先端に取付けられている各フック64とを有している。合計4個のフック64は、既設桁に設けられる吊り金具(図示省略)を吊り下げる。
【0029】
これらクレーン装置60では、各ウインチ62を正回転させると、各ワイヤ63がウインチ62に巻き取られて、各フック64に吊り下げた既設桁を吊り上げることができる。一方、各ウインチ62を逆回転させると、各ワイヤ63がウインチ62に巻き出されて、各フック64に吊り下げた既設桁を吊り降ろすことができる。なお、クレーン装置60は、上記した構成に限定されるものではなく、適宜変更可能であり、例えば伸縮ブームを有する構成であっても良い。
【0030】
ところで、従来の橋桁架替方法では、発明が解決する課題で説明したように、使用する上下空間を抑えつつ、安全に且つ狭い作業ヤードで架け替えを行うことができないという問題点があった。そこで、本実施形態の橋桁架替方法では、上記した問題点を解決すべく、上述した橋桁架替車両1を用いて架け替えを行うようになっている。以下、本実施形態の橋桁架替方法について説明する。図4に示すように、架け替えを行う対象である橋梁KRでは、橋脚間の上側に橋桁H1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8,H9が架設されている。本実施形態では、橋桁H5を新しい橋桁に架け替える場合について説明する。以下では、「橋桁H5」を「既設桁M1」と呼ぶことにする。
【0031】
また、本実施形態の橋桁架替方法では、上述した橋桁架替車両1が2台用意されている。このため、これら橋桁架替車両1を「第1橋桁架替車両1A」と「第2橋桁架替車両1B」と呼ぶことにする。そして、この橋梁KRでは、橋桁H6と橋桁H8の橋幅方向に隣接して第1作業ヤードS1が設けられていて、橋桁H2と橋桁H4の橋幅方向に隣接して第2作業ヤードS2が設けられている。第1作業ヤードS1及び第2作業ヤードS2は、第1橋桁架替車両1A及び第2橋桁架替車両1Bがそれぞれ既設桁の吊り上げ又は吊り降ろしを行うための作業構台であり、交通規制の範囲を狭くするために、できるだけ狭く構成されている。
【0032】
先ず、図4に示すように、第1橋桁架替車両1Aが第1作業ヤードS1で待機し、第2橋桁架替車両1Bが第2作業ヤードS2で待機する。このとき、仮橋桁4が、既設桁M1の隣側である橋桁H4,H3,H2の上にトラック等によって運ばれている。次に、第1橋桁架替車両1Aは、走行装置20によって橋桁H6,H7,H8に向かって横行した後、図5に示すように、各車両部2A,2Bで既設桁M1を跨ぐまで橋梁KR上を走行する。つまり、各車両部2A,2Bを既設桁M1の長手方向寸法より長く離間している状態で配置して(車両配置工程)、各クレーン装置60によって既設桁M1を吊り上げる(既設桁吊り上げ工程)。
【0033】
次に、図6に示すように、車両部2Aの各送り出しジャッキ30によって、既設桁M1が吊り上げられた架替空間KKに仮橋桁4を送り出す。これにより、仮橋桁4は、吊り上げられた既設桁M1の下方で、橋桁H4と橋桁H6との間に架け渡される(送り出し工程)。続いて、図7に示すように、第1橋桁架替車両1Aは、車両部2Aのクローラ40によって、架け渡された仮橋桁4の上を直線移動して、架替空間KKを渡る(直線移動工程)。
【0034】
そして、第1橋桁架替車両1Aは、走行装置20によって第1作業ヤードS1の橋幅方向に隣接した位置まで走行し、図8に示すように、第1作業ヤードS1まで横行する。その後、図9に示すように、各クレーン装置60によって既設桁M1を第1作業ヤードS1で吊り降ろす(既設桁吊り降ろし工程)。こうして、第1橋桁架替車両1Aは橋梁KR上を自走するだけであり、第1作業ヤードS1以外で橋梁KRの上下空間を使用せずに既設桁M1を撤去することができる。
【0035】
また、図10に示すように、第1作業ヤードS1で既設桁M1を撤去している間に、第2橋桁架替車両1Bは、各クレーン装置60によって第2作業ヤードS2で新設桁N1を吊り上げる(新設桁吊り上げ工程)。次に、第2橋桁架替車両1Bは、走行装置20によって橋桁H2,H3,H4に向かって横行した後、仮橋桁4の一端部4c(図10の仮橋桁4の左端部)まで走行する。そして、図11に示すように、第2橋桁架替車両1Bは、車両部2Bのクローラ40によって、架け渡された仮橋桁4の上を直線移動して、架替空間KKの上側に新設桁N1を配置する(新設桁配置工程)。
【0036】
続いて、図12に示すように、車両部2Aの送り出しジャッキ30によって、仮橋桁4を第2作業ヤードS2の方へ送り出して、仮橋桁4を架替空間KKから撤去する(仮橋桁撤去工程)。これにより、各クレーン装置60によって新設桁N1を吊り降ろして、図13に示すように、新設桁N1を架替空間KKに設置し、架け替え作業が完了する。こうして、第2橋桁架替車両1Bは橋梁KR上を自走するだけであり、第2作業ヤードS2以外で橋梁KRの上下空間を使用せずに新設桁N1を設置することができる。
【0037】
本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、橋梁KRの下方にトラッククレーンTC(図14参照)や大型自走式キャリヤOC(図15参照)を配置する必要がなくて、第1橋桁架替車両1A及び第2橋桁架替車両1Bが橋梁KR上を自走することで、架け替えを行うことができる。つまり、従来の架替方法と異なり、第1橋桁架替車両1A及び第2橋桁架替車両1Bが橋梁KR上を自走する空間を確保するだけで良く、橋梁KRの上下空間を大きく使用することがない。従って、交通規制の範囲が狭く、従来の橋梁KRの下方で行っていた交通規制を減らすことができる。また、橋梁KRの下方でベントの組立及び解体を行う必要がなくて、安全である。更に、大型自走式キャリヤを使用する方法のように、既設桁の解体及び新設桁の組立を行うための広い作業ヤードが必要なくて、比較的狭い第1作業ヤードS1及び第2作業ヤードS2で良い。
【0038】
以上により、走行する道路そのものを利用しているため、都市高速道路等のような上下空間に大きな制約がある橋梁であっても、使用する上下空間を抑えつつ、安全に且つ狭い作業ヤードで架け替えを行うことができる。こうして、本実施形態の橋桁架替方法は、架け替え需要に対して幅広く対応できる架替方法であり、特に橋梁の老朽化が深刻で既設桁の補修では対応できない場合に有効である。
【0039】
また、本実施形態によれば、2台の橋桁架替車両(第1橋桁架替車両1A及び第2橋桁架替車両1B)と2つの作業ヤード(第1作業ヤードS1及び第2作業ヤードS2)を利用することで、既設桁M1の撤去と新設桁N1の架設とをほとんど同時に行うことができる。従って、施工期間を短縮することができる。更に、第1橋桁架替車両1A及び第2橋桁架替車両1Bは、走行装置20によって斜行や横行のような複雑な走行を行うことができるため、第1作業ヤードS1及び第2作業ヤードS2のような狭い作業ヤードであっても確実に移動することができる。つまり、第1橋桁架替車両1A及び第2橋桁架替車両1Bは、約90度旋回するような走行(横行)ができるため、設置する作業ヤードを狭くすることができる。
【0040】
ここで、本実施形態の橋桁架替車両1は、輸送機器分野のキャリヤで用いる走行装置20と、橋梁分野で用いる送り出しジャッキ30と、建機分野で用いるクローラ40及びクレーン装置60とを組み合わせて、橋桁架替用の特殊車両として構成したものである。これら走行装置20と送り出しジャッキ30とクローラ40とクレーン装置60とは、本出願人が全て製造できるものであり、言い換えると、輸送機器分野と橋梁分野と建機分野の全てに精通している本出願人であるから、橋桁架替車両1として応用して構成できるものである。従って、本出願人以外では組み合わせとして考え難い極めて特殊な車両である。
【0041】
なお、本実施形態の橋桁架替車両1は、ユニット化された二つの車両部2A,2Bで合計8軸になっていて、1軸あたり約25tonの重量物の吊り上げ又は吊り降ろしができるため、約200tonの既設桁を吊り上げ又は吊り降ろすことができる。但し、架替対象である既設桁の重量が大きい場合には、橋桁架替車両の変形例として、ユニット化された車両部の数を3つ以上に増やせば良い。
【0042】
以上、本発明に係る橋桁架替車両及び橋桁架替方法の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態において、2台の橋桁架替車両と2つの作業ヤードを用いて架け替えを行ったが、1台の橋桁架替車両と1つの作業ヤードを用いて架け替えを行っても良い。この場合には、既設桁M1の撤去と新設桁N1とを分けて行うため、施工期間が長くなるが、1つの作業ヤードで済むため、交通規制の範囲を狭くすることができる。
また、本実施形態において、架替空間KKに1本の仮橋桁4を架け渡したが、架け渡す仮橋桁4は2本以上であっても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 橋桁架替車両
1A 第1橋桁架替車両
1B 第2橋桁架替車両
2A,2B 車両部
3 懸架部
4 仮橋桁
10 車体
14 動力源
20 走行装置
21 車輪
22 アクスル
23 アーム部材
24 回転プレート
30 送り出しジャッキ
40 クローラ
50 屋根枠
60 クレーン装置
KR 橋梁
H1〜H9 橋桁
M1 既設桁
N1 新設桁
S1 第1作業ヤード
S2 第2作業ヤード
KK 架替空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15