(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-1141(P2015-1141A)
(43)【公開日】2015年1月5日
(54)【発明の名称】グラウト注入部を備えたシース
(51)【国際特許分類】
E04C 5/10 20060101AFI20141202BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20141202BHJP
【FI】
E04C5/10
E04G21/12 104D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-127740(P2013-127740)
(22)【出願日】2013年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】507194017
【氏名又は名称】株式会社高速道路総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221502
【氏名又は名称】東拓工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 公達
(72)【発明者】
【氏名】青木 圭一
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴士
(72)【発明者】
【氏名】菊森 康博
(72)【発明者】
【氏名】藤井 暁宏
(72)【発明者】
【氏名】飯田 尚孝
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA31
2E164DA03
2E164DA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】グラウトを注入するために周壁に設ける開口位置を、シースの外部環境、内部環境に応じて自由に選択できるグラウト注入部を備えたシースを提供する。
【解決手段】筒状の本体1と外管2を包含し、本体1は周壁11にグラウトの流入口12が設けられ、外管2は周壁21にグラウトの注入口22が開口し、外管2は本体1を囲繞して、本体1との間にグラウトの流通路3が現出し、流通路3に流入口12が開放し、かつ、外管2を本体1に対し周方向に回転することにより流入口12に対する注入口22の周方向の位置を任意に設定できるように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体(1)と外管(2)を包含し、
該本体(1)は周壁(11)にグラウト(G)の流入口(12)が設けられ、
該外管(2)は周壁(21)にグラウト(G)の注入口(22)が開口し、
該外管(2)は該本体(1)を囲繞して、該本体(1)との間にグラウト(G)の流通路(3)が現出し、該流通路(3)に該流入口(12)が開放し、かつ、該外管(2)を該本体(1)に対し周方向に回転することにより該流入口(12)に対する該注入口(22)の周方向の位置を任意に設定できるように構成されたことを特徴とするグラウト注入部を備えたシース。
【請求項2】
該注入口(22)と該流入口(12)とは、該本体(1)の横断面(S)上にあって直線的に並んでいない離隔的位置関係を保つように設定された請求項1に記載のグラウト注入部を備えたシース。
【請求項3】
該本体(1)は、リブ(13)が形成されたリブ部(14)と直筒部(15)とが含まれ、該流入口(12)は該直筒部(15)に設けられている請求項1〜2の何れかに記載のグラウト注入部を備えたシース。
【請求項4】
該流通路(3)は、該直筒部(15)の外周面(16)に形成した縮経部(17)によって現出している請求項3に記載のグラウト注入部を備えたシース。
【請求項5】
該本体(1)のリブ部(14)には、螺旋形状のリブ(13)が形成され、該螺旋形状のリブ(13)に螺合可能な本体延長管(1a)が該リブ部(14)の内側に螺合接続され、該本体(1)、該本体延長管(1a)、該外管(2)によりシースが構成される請求項3〜4の何れかに記載のグラウト注入部を備えたシース。
【請求項6】
該注入口(22)と該流入口(12)とは、該本体(1)の中心(C)を通る直線(L)上で背向している請求項1〜5の何れかに記載のグラウト注入部を備えたシース。
【請求項7】
該流入口(12)が該流通路(3)に複数形成される請求項1〜5の何れかに記載のグラウト注入部を備えたシース。
【請求項8】
該外管(2)と該本体(1)はポリエチレン製である請求項1〜7の何れかに記載のグラウト注入部を備えたシース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレストレスコンクリート(PC)を作製する際にPC鋼材が挿入された状態でグラウトが注入されるシースに関し、さらに詳細にはシース端とは別の中間位置にグラウト注入部を備えたシースに関する。なお、以下の説明では、「シース」という用語は、緊張体(PC鋼材)が挿入される筒体をいい、1本の筒体からなるシースだけでなく、シースどうしを接続するジョイントシース(管継手ともいう)も含まれるものとして用いている。
【背景技術】
【0002】
プレストレスコンクリートを作製するには、プレストレスを与えるPC鋼材が挿入されたシースの管内に、グラウトを注入する作業が必要となる。これまでのグラウト注入方法ではシースの一端(桁端)に設けた注入口からグラウトを注入する方法がとられることが多かった。ところでグラウト注入ではシース内に空気層が残らないようにグラウトを充填することが重要である。そのため様々な観点から注入方法が検討され、グラウトに高粘性の材料を用いたり(特許文献1)、グラウト注入口の位置をシース端部以外の位置に設けたりする工夫がなされている。
【0003】
グラウト注入口の位置については、例えば、グラウトをシースの中間位置にある下方屈曲部の下面側からシース内に充填する注入方法が本件出願人の一人が関係した特開2011−21463号公報(特許文献2)に開示されている。すなわち、同文献の
図1を参照しつつ説明すると、シース(2)は緊張部(4)側から下降させて下方屈曲部(6)を経て上昇させ、上方屈曲部(7)を経て再び下降させて定着部(5)に至る。この下方屈曲部(6)の下面にグラウト注入ホース(8)を連結している。そしてシース(2)内にその下部からグラウトを充填するために注入ホース(8)をシース(2)の下部に開口させて送り込むようにしている。このグラウト注入方法では、シース内の残留気泡を減らしたり除去したりする観点からは「シースの低い位置からグラウトを注入し、シースの高い位置から排出することがグラウト注入の原則である」との考えから、わざわざシースの下方屈曲部の下面側からグラウトを昇流的に注入するようにしている。
【0004】
また、別のグラウト注入時の気泡残留の防止方法として、シースの低い位置よりも高い位置に気泡が溜まりやすいことから、気泡溜まりが発生しやすいシースの上方屈曲部あたりの上面に再注入口を設けて、気泡が発生したときに再注入することが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−47802号公報
【特許文献2】特開2011−21463号公報
【特許文献3】特開2004−211528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、グラウト注入方法は、これまでのシース端部(桁端部)から注入する方法だけでなく、シースの中間位置にある下方屈曲部の下面側や上方屈曲部の上面側に注入口(再注入口)を設けて注入する方法も採用されている。
ところでシースの中間位置に注入口を設けるグラウト注入方法では、シースの周壁の一部にグラウト流入口となる開口(孔)が形成され、その開口に向けて外部のグラウト注入ホースが連結されることになるが、以下に示す課題が生じることになった。
【0007】
第一に、プレストレスコンクリートを作製する際には、予め鉄筋が縦横に組み立てられてあり、その鉄筋の間の所定位置にシースが配設されることになる(例えば特許文献1の
図4参照)。したがって、シースの中間位置にグラウト流入口を設けた場合には、鉄筋の配設位置とグラウト流入口の位置とが重なってしまうことがあり、グラウト注入ホースをグラウト流入口となる開口に接続できるようにするために開口を設ける位置を変更したり、あるいは、シースの配設位置を変更する必要が生じた。
【0008】
第二に、シース内に挿入されたPC鋼材とシースの周壁との位置関係によっては、PC鋼材が周壁に接近したり接触したりすることがあった。すなわち、シース内のPC鋼材は上方屈曲部ではシース底部側に偏り、下方屈曲部ではシース天井面側に偏って位置することになり、シースの屈曲部近傍ではシース中央に位置していない(特許文献2の
図2参照)。
そのため、PC鋼材が周壁に接近あるいは接触している位置に、グラウト流入口となる開口が形成されると、シース内へのグラウトの円滑な注入が困難になる。
【0009】
このように、プレストレスコンクリートのシースの外部環境(鉄筋の配置等)、シース内の内部環境(PC鋼材の偏り、上下高さ)に応じて、シース周壁に形成するグラウト流入口の位置を、適切な位置に調整する必要が生じていた。
【0010】
そこで本発明は、シースの中間位置からグラウト注入を行うためのグラウト注入部を備えたシースにおいて、グラウトを注入するために周壁に設ける開口位置を、シースの外部環境、内部環境に応じて自由に選択できるグラウト注入部を備えたシースを提供することを目的とする。
また、本発明は、外部から接続されるグラウト注入ホースとの接続が容易に行えるようにするとともに、シース内の残留気泡が発生しにくいようにグラウトを注入することができるグラウト注入部を備えたシースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(請求項1)本発明に係るグラウト注入部を備えたシースは、筒状の本体と外管を包含している。該本体は周壁にグラウトの流入口が設けられる。該外管は周壁に注入口が開口している。そして、該外管は該本体を囲繞している。この囲繞により、該本体と該外管との間にグラウトの流通路が現出し、該流通路に該流入口が開放し、かつ、該外管を回転することにより該流入口に対する該注入口の周方向の位置を任意に設定できるように構成されている。
【0012】
本発明によれば、筒状の本体の周壁に、本体へグラウトを流入させるための流入口が設けてあり、この流入口とは独立に、外管の周壁に外部のグラウト注入ホースを接続するための注入口が開口するようにして流通路で連通するようにしてある。したがって、本体の内部環境(内部状態)に応じて注入口の周方向の位置を設定し、シースの外部環境(外部状態)に応じて流入口の周方向の位置を、注入口の位置とは独立に設定した上で本体と外管とを固着することができる。
このように注入口と流入口とを所望の位置関係に設定しておくことで、注入口からグラウトを注入することにより、流通路を経て流入口からグラウトを本体内に送り込むことができる。
【0013】
(請求項2)該注入口と該流入口とは、該本体の横断面上にあって直線的に並んでいない離隔的位置関係を保つように設定されてもよい。
例えば、流入口の位置を本体内に気泡が発生しにくい下方位置に設定するとともに、注入口の位置を、(鉄筋から離れた)グラウト注入ホースとの接続が容易な上方位置や側方位置に設定することができる。
【0014】
(請求項3)該本体は、リブが形成されたリブ部と直筒部とが含まれ、該流入口は該直筒部に設けられてもよい。
こうすると、該本体はそのリブ部で周壁の面に内外から大きな圧力が加わっても十分に耐えて変形することがなく、該流入口は該直筒部に設けられるので、形成が容易で、変形により塞がれる恐れもない。
【0015】
(請求項4)該流通路は、該直筒部の外周面に形成した縮経部によって現出していてもよい。
こうすると、該直筒部を縮経させるだけで流通路を形成できるので、該流通路の形成に特別の形成材は不要で、該外管を該本体の周壁に密接に囲繞することにより流通路を液密の閉通路にできる。
【0016】
(請求項5)該本体のリブ部には、螺旋形状のリブが形成され、該螺旋形状のリブに螺合可能な本体延長管が該リブ部の内側に螺合接続され、該本体、該本体延長管、該外管によりシースが構成されるようにしてもよい。
こうすると、本体および外管を一定長さの短尺にし、本体延長管を長尺にすることができる。そして、本体延長管の長さを変更するだけで任意の長さのシースを簡単に構成することができる。換言すれば本体、外管をジョイントシース(管継手)とし、本体延長管をジョイントシースに接続するシース管とすることができる。
【0017】
(請求項6)該注入口と該流入口とは、該本体の中心を通る直線上で背向しているようにしてもよい。
こうすると、該外管の該注入口と該本体の該流入口が同一の直線上で背向するので、流通路は対称性のよいグラウトの流れとなり、グラウトの流れを乱すことなく、かつ該注入口と流入口間の距離を最大にでき、良好な充填が実現できる。なお、ここでいう「背向している」の意味は、該注入口と流入口が互いに背を向けた状態で向き合っている、ということである。
【0018】
(請求項7)流入口が該流通路に複数形成されるようにしてもよい。
こうすると、シースの本体の内部環境(内部状態)によっては、本体の周囲の複数箇所から同時に流入させることによって、気泡の発生を抑えることができるやすくなる。
【0019】
(請求項8)該外管と該本体はポリエチレン製であってもよい。
こうすると、ポリエチレンは耐食性が大で、強度もあるので、長期の使用に応えられる。なお、本体延長管についても同じ理由でポリエチレン製であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るグラウト注入部を備えたシースによれば、筒状の本体の周壁に、本体へグラウトを流入させるための流入口が設けてあり、この流入口とは独立に、外管の周壁に外部のグラウト注入ホースを接続するための注入口が開口するようにして流通路で連通するようにしてある。したがって、本体の内部環境(内部状態)に応じて注入口の周方向の位置を設定し、シースの外部環境(外部状態)に応じて流入口の周方向の位置を、注入口の位置とは独立に設定した上で本体と外管とを固着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るグラウト注入部を備えたシースの具体例の縦断面図である。
【
図3】
図1のシースの斜面図で、線A―Aで切断して示す。
【
図4】
図3と同様のシースの斜面図で、
図3の横断面Sの左手前側を省いて示す。
【
図5】
図1のシースにおいて注入口の位置を回転させた変形例を示す。
【
図6】本発明に係るグラウト注入部を備えたシースを床版に適用してグラウトを充填する態様を示す概念図で、Eは排気口である。
【
図8】従来のシースによるグラウト充填で起きる空気を閉じ込める作用の説明図である。
【
図9】従来のシースによるグラウト充填で起きるPC鋼材に沿ったグラウトの先流れの状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1〜
図4を参照しつつ説明する。本発明に係るグラウト注入部を備えたシースは、筒状の本体1と外管2を包含している。これらは長期の使用に応えられるように耐食性が大きく強度もある樹脂材料を使用することが好ましい。具体的には例えばポリエチレン製のシースとすることが好ましい。
【0023】
本体1は軸線Xの方向に沿って延びる筒体からなり、周壁11に螺旋形状のリブ13が形成されたリブ部14と、リブ13が形成されていない直筒部15とを備えている。直筒部15の外周面16の一部には、径を小さくすることにより環状の溝が形成された縮径部17が形成されている。そして流入口12が、この直筒部15の縮径部17の周壁11に設けられている。
【0024】
外管2は縮径部17の上を含む直筒部15の外側を囲繞する筒体からなる。流通路3は、縮径部17と、その上を覆う外管2とにより現出している。外管2の周壁21にはグラウトの注入口22が開口してあり、外部のグラウト注入ホース(不図示)が注入口22に接続されグラウトGが供給されることにより、グラウトGが流通路3を経て流入口12から本体1の内側空間に送り込まれるようにしてある。
【0025】
本体1と外管2とは、縮径部17を挟んだ左右両側において平坦な面どうしで面接するようにしてある。したがって、この平坦面どうしを接着剤で固着して封止することにより、注入口22と流入口12だけが開口する流通路3を形成することができる。
予め、外管2の注入口22の位置を、本体1の縮径部17に沿って回転させ、注入口22と流入口12とが所望の位置関係になるように自由に調整してから固着することにより、シースを配置する場所のシース内側環境、外側環境に応じて注入口22と流入口12の位置を設定することができる。
【0026】
図5は、
図1のシースが取りうる注入口22と流入口12との位置関係のバリエーション例を示した概念図である。具体的には、
図5(a)は注入口22が鉛直上方で流入口12が鉛直下方になるように配置したもの(背向関係)、
図5(b)は注入口22が右斜め上方で流入口12が鉛直下方になるように配置したもの、
図5(c)は注入口22が左斜め上方で流入口12が左斜め下方に配置したもの、
図5(d)は注入口22が鉛直上方で流入口12が右斜め上方に配置したもの、
図5(e)は注入口22が右水平方向で流入口12が左水平方向に配置したもの(背向関係)である。これらの配置は注入口22と流入口12とが直線的に並んでいない離隔的位置関係に設定した状態の例である。
【0027】
ここでプレストレスコンクリート(PC)を作製する際のシースの使用状態について説明する。シースの本体1内に挿通した緊張材P(
図2)に緊張力を導入して補強される対象は、
図6に示すコンクリート製の床版Kのように、通常は水平、ないしは水平に近い状態で使用されるものである。そのため、緊張材Pを通す本体1も、その軸線Xが水平状態か、多少の昇降がある波型状態で使用される。緊張材Pの防食等のため本体1に充填されるグラウトGは、本体1内に万遍なく充填されるのが望ましい。
【0028】
このとき、
図8、
図9に示す従来例のように、本体1の上方に設けた注入口22からグラウトGを充填すると、緊張材PにPC鋼材を採用した場合、この鋼材の上部を流れて流下していくことから、本体1内の空気が抜けきらず、グラウトGの充填不良が起こる懸念がある。また、注入口22から鋼材の腐食物質が侵入した場合、鋼材までの浸透距離が短く、鋼材腐食が起こりやすい懸念もある。
【0029】
そこで、
図5のバリエーションのうち、
図5(a)で示した「注入口22が鉛直上方であって流入口12が鉛直下方」になる配置(背向関係)にすれば、外部のグラウト注入ホースを上方から真っ直ぐ下降するようにして簡単に注入口22に接続することができる。しかも、注入口22と流入口12とは本体1の中心Cを通る直線L上で背向する配置にしてあるので(
図2)、外管2の注入口22に注入されたグラウトGは、直に本体1に流入せずに流通路3を左右対称に廻り、本体1の下側から昇流的に本体1に流れ込み、グラウトGの充填が万遍なく行われる。このような昇流的な流れによるグラウトGの流入により、グラウトGは流入口12からせり上がるようにして流入するので、本体1の空気を押し出してその下位から順次内部に充填され、空気が残留して充填不良を生じることがなく、緊張材の防錆を確実になせる。また、外管2の注入口22と本体1の流入口12が離れているので、鋼材の腐食物質が侵入しても、鋼材の腐食を防止できる。
【0030】
また、本発明のシースを使用する際に、予め、
図5(a)の背向関係で使用することが予定されている場合もある。そのような用途では、より簡単に注入口22と流入口12とが確実に背向関係となるようにするために、直筒部15と外管2との一方に凸部、他方に凹部を設けて、これらを位置合わせすることによって簡単に背向関係を保てるようにしてもよい。凸部と凹部とを一定の角度で複数形成しておけば、一定角度ごとに位置合わせすることもできる。
【0031】
そして、注入口22の直上に鉄筋が存在する場合には、
図5(b)のように注入口22を斜め上方に配置することにより、鉄筋を少し回避して接続することができる。
また、本体1内の緊張材Pが本体底部に接近する場合は
図5(c)のように流入口12を斜め下方に配置すればよい。
その他、シースの外側環境、内側環境によって、注入口22、流入口12の位置関係を任意の配置に設定するようにすればよい。
【0032】
なお、
図5(f)のように注入口22と流入口12とが直線的に並ぶ配置として用いることはバリエーションの一つとして可能であるが、注入口22と流入口12とを離隔的位置関係にして注入するものではなく、本発明での好ましいグラウト注入方法ではない。
【0033】
(変形例)
これまで
図1を用いて説明したシースの本体1は、リブ部14と直筒部15とからなる1本の筒体により構成されるものとしていた。この場合、シース全体の軸線X方向の長さはリブ部14の長さを変えることによって変更できるが、使用場所ごとに全体長さの異なるシースを形成しておくことが必要になる。
そこで、使用場所に応じてシースの長さを現場で簡単に設定・変更できるようにするため、本発明をジョイントシースに適用することとし、当該ジョイントシースと、これに螺合可能な本体延長管とを用意しておくことで適宜の長さのシースを現場で構成することが可能になる。
【0034】
すなわち、
図7に示すように、本体1と外管2とからなるシースを、ジョイントシースの態様で使用する。ジョイントシースは左右一対の本体延長管1a(シース管)どうしを接続し管長さを延長するようにして用いるものである。なお、本書ではPC鋼材を挿入する筒体をシースとしており、その意味でジョイントシースもシースの一態様である。
【0035】
ジョイントシースの場合、本体1の左右のリブ部14の長さは使用場所によって変更されることなく一定にしてあり、少なくとも螺旋形状のリブ13が2周以上(図では片側3.5周)形成してある。
【0036】
そして、これとは別に、リブ部14の螺旋形状のリブ13に対し、本体1の内側に挿入することにより当該ジョイントシースに螺合可能な本体延長管1aが用意されている。
そしてこの本体延長管1aを必要な長さに切りだして、ジョイントシースのリブ13に螺合接続することにより、本体延長管1aによって本体1の軸方向の長さが延長されたシースが形成されるようになる。
【0037】
ジョイントシースでは、本体1に対し左右から接続される本体延長管1aが、深く接続されすぎないようにストッパを設けてあるが、縮径部17がストッパとしての役割をしているので、左右の本体延長管1aは、それぞれ縮径部17より深くは螺合することができなくなっている。
【0038】
また、上記例では、流入口12を一つ形成していたが、複数形成するようにしてもよい。シース径やPC鋼材の本数等によっては複数箇所から流入する方が好ましい場合がある。
【0039】
また上記例では流入口12に対する注入口22の位置を周方向に回転することによって位置をずらして離隔的位置関係に保つようにしたが、これに加えて注入口22を軸方向にスライドできるようにすることで離隔的位置関係を保つようにしてもよい。すなわち、
図1における縮径部17の幅を広くして、流通路3を幅広にすることで注入口22と流入口12とが軸方向に位置ずれした状態で離隔的位置関係を保つことができるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 本体
2 外管
3 流通路
11 周壁
12 流入口
13 リブ
14 リブ部
15 直筒部
16 外周面
17 縮経部
21 周壁
22 注入口
G グラウト
S 横断面
C 中心
L 直線
K 床版
P 緊張材
X 軸線