(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-114306(P2015-114306A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】包材の保香性試験容器および包材の保香性試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/06 20060101AFI20150526BHJP
G01N 33/44 20060101ALI20150526BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20150526BHJP
【FI】
G01N30/06 Z
G01N33/44
G01N30/88 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-259070(P2013-259070)
(22)【出願日】2013年12月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100152249
【弁理士】
【氏名又は名称】川島 晃一
(72)【発明者】
【氏名】豊田 和昌
(57)【要約】 (修正有)
【課題】素材のヒートシール性に関係なく全てのフィルム状の包材における保香性の分析、評価を可能にした包材の保香性試験容器および包材の保香性試験方法。
【解決手段】気体注入・抜き取り部を備え下側に開口部を有する上部セルと、上側に開口部を有する有底の下部セルと、上部セルの開口部と下部セルの開口部とを接続・分離可能に且つ気密的に接続する接続部材とからなり、接続する上部セルの開口端面と下部セルの開口端面とで、上部セルの開口端面と下部セルの開口端面との間に配置する包材を挟持する包材挟持部を構成した保香性試験容器を使用し、下部セル内に香気成分を入れ、包材を包材挟持部で挟持し、接続部材で上部セルの開口部と下部セルの開口部とを気密的に接続し、加熱して設定した所定温度の恒温状態に維持し、恒温状態で上部セル内の空気を抜き取り分析して包材を透過して上部セルへ流れた香気成分の量を分析し、包材の保香性を評価する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の箇所に気体注入・抜き取り部を備え下側に開口部を有する上部セルと、上側に開口部を有する有底の下部セルと、前記上部セルの前記開口部と前記下部セルの前記開口部とを接続・分離可能に且つ気密的に接続する接続部材とからなり、接続する前記上部セルの開口端面と前記下部セルの開口端面とで、前記上部セルの前記開口端面と前記下部セルの前記開口端面との間に配置する包材を挟持する包材挟持部を構成したことを特徴とする包材の保香性試験容器。
【請求項2】
前記上部セルと前記下部セルはガラス製であることを特徴とする請求項1に記載の包材の保香性試験容器。
【請求項3】
前記上部セルの外径が30mm以下、または、長さが40mm以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の包材の保香性試験容器。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の包材の保香性試験容器を使用し、前記下部セル内に香気成分を入れ、前記上部セルの前記開口端面と前記下部セルの前記開口端面の間に包材を配置して包材挟持部で挟持し、前記接続部材で前記上部セルの前記開口部と前記下部セルの前記開口部とを気密的に接続し、加熱して設定した所定温度の恒温状態に維持し、恒温状態で前記上部セル内の空気を抜き取り分析して前記包材を透過して上部セルへ流れた香気成分の量を測定し、包材の保香性を評価することを特徴とする包材の保香性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包材における保香性の分析に使用される包材の保香性試験容器およびこの保香性試験容器を使用した包材の保香性試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の包材を選定する場合、食品の香気成分の保香性は非常に重要な要素となっており、従来から、各食品に適合する保香性を備えた包材を選定するために、包材の保香性を分析し評価する保香性試験が実施されている。
保香性試験として、食品を包材で包み、官能試験により分析し評価する方法が実施されていた。しかし、官能試験で分析する方法では、曖昧さが残り定量的な分析が難しいといった問題があった。
【0003】
このような問題を解決するものとして、包材内に特定の化学物質を含む試薬を充填し密封して、この包材をさらに密封容器に収容し、試薬を充填して密封した包材と密封容器との空間部をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析することにより、その分析値に基づいて包材の保香性を評価する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
この包材の保香性分析方法では、官能試験による分析に比べ遙かに定量的な分析ができるようになったが、試験に際しては、包材を袋状として試薬を充填しなければならず、面倒な作業を要し、また、試薬を充填した包材はヒートシールにより密封するので、保香性を分析する包材はヒートシール可能な素材に限定され、ヒートシール性の無い素材の包材にあっては保香性を分析することができないといった問題がある。
【0004】
このような問題を解決できるものとして、下層と上層とで構成される測定用セルを備えた香気成分透過量測定器を使用し、下層に香気成分を入れ、上層と下層の間に包材となるフィルムを挟み込み、上層の空気を抜き取り、空気中の香気成分の量をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析する香気成分透過量測定方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−124749号公報
【特許文献2】特開2011−94008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献2に記載されている香気成分透過量測定器を使用した香気成分透過量測定方法によれば、上層と下層の間に包材となるフィルムを挟み込み、上層の空気を抜き取り、空気中の香気成分の量をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析するので、ヒートシール性の無い素材の包材であっても保香性を分析することができ、前記特許文献1に開示された保香性分析方法の問題は解決できる。
しかし、前記特許文献2の記載では、香気成分透過量測定器に備えられている測定用セルとして下層と上層以外の説明はなく、また、図面(
図1)も概略図であって、香気成分透過量測定に使用できる測定用セルとして実施できるまでに開示されていない。
【0007】
本発明の目的は、素材のヒートシール性に関係なく全てのフィルム状の包材における保香性の分析、評価を可能にし、定量的な分析に優れ、さらに構成が簡単で取り扱いが容易であるとともに量産可能な包材の保香性試験容器およびこの保香性試験容器を使用した包材の保香性試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、包材の保香性試験容器であって、任意の箇所に気体注入・抜き取り部を備え下側に開口部を有する上部セルと、上側に開口部を有する有底の下部セルと、前記上部セルの前記開口部と前記下部セルの前記開口部とを接続・分離可能に且つ気密的に接続する接続部材とからなり、接続する前記上部セルの開口端面と前記下部セルの開口端面とで、前記上部セルの前記開口端面と前記下部セルの前記開口端面との間に配置する包材を挟持する包材挟持部を構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記上部セルと前記下部セルはガラス製であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の、前記上部セルの外径が30mm以下、または、長さが40mm以下であることを特徴とする
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記請求項1または2項に記載の包材の保香性試験容器を使用した包材の保香性試験方法であって、前記下部セル内に香気成分を入れ、前記上部セルの前記開口端面と前記下部セルの前記開口端面の間に包材を配置して包材挟持部で挟持し、前記接続部材で前記上部セルの前記開口部と前記下部セルの前記開口部とを気密的に接続し、加熱して設定した所定温度の恒温状態に維持し、恒温状態で前記上部セル内の気体を抜き取り分析して前記包材を透過して上部セルへ流れた香気成分の量を分析し、包材の保香性を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の包材の保香性試験容器によれば、前記上部セルの開口端面と前記下部セルの開口端面とで構成される包材挟持部で包材を挟持し、前記上部セルの前記開口部と前記下部セルの前記開口部とを接続部材で接続することにより、前記上部セルの前記開口部と前記下部セルの前記開口部とを前記包材挟持部で包材を挟持した状態で気密的に接続することができる。
この包材の包材の保香性試験容器を用いた保香性試験では、前記下部セル内に香気成分を入れ、包材挟持部で包材を挟持させ、この状態で前記上部セルの前記開口部と前記下部セルの前記開口部とを接続部材で接続し、前記下部セルを一定温度に加熱することにより香気成分を揮発させ、前記上部セル内の気体を抜き取り分析して前記包材を透過して上部セルへ流れた香気成分の量を測定し、包材の保香性を分析することができるので、素材のヒートシール性に関係なく全てのフィルム状の包材における保香性の分析、評価が可能となり、そして、前記上部セルの前記開口部と前記下部セルの前記開口部とが前記包材挟持部で包材を挟持した状態で気密的に接続されているので定量的な分析に優れ、また、包材の透過面積に対する前記上部セルの容積を小さくすることにより、前記上部セル内における包材を透過した香気成分の濃度を高めることができ、これにより、バリア性の高い素材からなる包材であっても、短時間で香気成分の分析、評価を行うことができる。
さらに構成が簡単なので取り扱いが容易であり、また量産に適している。
【0013】
請求項2に記載の包材の保香性試験容器によれば、請求項1に記載の、前記上部セルと前記下部セルはガラス製であるので、疎水性である香気成分の前記上部セルや前記下部セルへの吸着が少なく、包材における保香性の定量的な分析と、再現性に一層優れたものとなる。
【0014】
請求項3に記載の包材の保香性試験容器によれば、請求項1または2のいずれか1項に記載の、前記上部セルの外径が30mm以下、または、長さが40mm以下であるので、前記特許文献2に比べ透過面積に対するセル容量が小さいため、前記上部セル内における包材を透過した香気成分の濃度を高めることができ、これにより、バリア性の高い素材からなる包材であっても、一層短時間で香気成分の分析、評価を行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の包材の保香性試験方法によれば、前記請求項1または2に記載の包材の保香性試験容器を使用し、前記下部セル内に香気成分を入れ、前記上部セルの前記開口端面と前記下部セルの前記開口端面の間に包材を配置して包材挟持部で挟持し、前記接続部材で前記上部セルの前記開口部と前記下部セルの前記開口部とを気密的に接続し、加熱して設定した所定温度の恒温状態に維持し、恒温状態で前記上部セル内の気体を抜き取り分析して前記包材を透過して上部セルへ流れた香気成分の量を測定し、包材の保香性を分析するので、素材のヒートシール性に関係なく全てのフィルム状の包材における保香性の評価を行うことができ、また、操作が簡単なので、包材の保香性試験を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る包材の保香性試験容器の実施の形態の一例を示す分解断面図である。
【
図2】
図1の上部セルの開口部と下部セルの開口部との間に包材を配置し接続部材で接続した状態を示す断面図である。
【
図3】上部セルの開口部と下部セルの開口部とを接続部材で接続する構成の他例を示す分解断面図である。
【
図4】
図3の上部セルの開口部と下部セルの開口部との間に包材を配置し接続部材で接続した状態を示す断面図である。
【
図5】上部セルの開口部と下部セルの開口部とを接続部材で接続する構成の他例を示す分解断面図である。
【
図6】
図5の上部セルの開口部と下部セルの開口部との間に包材を配置し接続部材で接続した状態を示す断面図である。
【
図7】
図1の上部セルの気体注入・抜き取り部の構成の他例と、上部セルの開口部と下部セルの開口部とを接続部材で接続する構成の他例を示す分解断面図である。
【
図8】
図7の上部セルの気体注入・抜き取り部にセプタムを配置した状態と、上部セルの開口部と下部セルの開口部との間に包材を配置し接続部材で接続した状態を示す断面図である。
【
図9】
図1に示す包材の保香性試験容器を使用して包材を通過した香気成分の量を分析し、包材の保香性を評価する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る包材の保香性試験容器の実施の形態の一例を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本例の包材の保香性試験容器を示す分解断面図、
図2は
図1の上部セルの開口部と下部セルの開口部との間に包材を配置し接続部材で接続した状態を示す断面図、
図3は上部セルの開口部と下部セルの開口部とを接続部材で接続する構成の他例を示す分解断面図、
図4は
図3の上部セルの開口部と下部セルの開口部との間に包材を配置し接続部材で接続した状態を示す断面図、
図5は上部セルの開口部と下部セルの開口部とを接続部材で接続する構成の他例を示す分解断面図、
図6は
図5の上部セルの開口部と下部セルの開口部との間に包材を配置し接続部材で接続した状態を示す断面図、
図7は
図1の上部セルの気体注入・抜き取り部の構成の他例と、上部セルの開口部と下部セルの開口部とを接続部材で接続する構成の他例を示す分解断面図、
図8は
図7の上部セルの気体注入・抜き取り部にセプタムを配置した状態と、上部セルの開口部と下部セルの開口部との間に包材を配置し接続部材で接続した状態を示す断面図である
【0018】
本例の包材の保香性試験容器1(以下、単に保香性試験容器1という。)は、気体注入・抜き取り部2を備え下側に開口部3を有する上部セル4と、上側に開口部5を有する有底の下部セル6と、上部セル4の下側の開口部3と下部セル6の上側の開口部5とを接続・分離可能に且つ気密的に接続する接続部材7とからなり、接続する上部セル4における下側の開口部3の開口端面8と下部セル6における上側の開口部5の開口端面9とで、上部セル4の開口端面8と下部セル6の開口端面9の間に配置する、後述するフィルム状の包材10を挟持する包材挟持部11を構成している。
【0019】
上部セル4に備えられている気体注入・抜き取り部2は、本例では、上部セル4の上部に設けられ、外周に雄ねじ部12を有する筒状の開口部13と、天面14に穴部15を有し、内周に開口部13の外周に螺合する雌ねじ部16を有する蓋体17と、開口部13の開口端と蓋体17の天面14との間に配置され、開口部13の外周に蓋体17を螺合することにより、開口部13の開口端と蓋体17の天面14との間で挟持され、蓋体17の天面14に有する穴部15から露出するセプタム18とで構成されている。
また、上部セル4の下側に有する開口部3は筒状に形成され、外周には雄ねじ部19を有し、雄ねじ部19の基部側にはシールリング20が装着されている。
また、下部セル6の上側に有する開口部5は、上部セル4の下側に有する開口部3と同径の筒状に形成され、外周には雄ねじ部21を有し、雄ねじ部21の基部側にはシールリング22が装着されている。
【0020】
上部セル4の下側の開口部3と下部セル6の上側の開口部5とを接続・分離可能に且つ気密的に接続する接続部材7は、筒体23の内周に、上部セル4の開口部3の外周に有する雄ねじ部19と下部セル6の開口部5の外周に有する雄ねじ部21とに螺合する雌ねじ部24を有し、上下の開口端縁内周には、それぞれ螺合時に、上部セル4の開口部3における雄ねじ部19の基部側に装着されているシールリング20に、また、下部セル6の開口部5における雄ねじ部21の基部側に装着されているシールリング22に気密的に圧接する圧接面25,26を有する構成となっている。そして、筒体23の一方の開口側から上部セル4の開口部3の雄ねじ部19を螺合し、他方の開口側から下部セル6の開口部5の雄ねじ部21を螺合し、筒体23の中程で、上部セル4の開口部3の開口端面8と下部セル6の開口部5の開口端面9を突き合わせ位置まで螺合したとき、筒体23の一方の圧接面25が上部セル4の開口部3における雄ねじ部19の基部側に装着されているシールリング20に圧接し、また、他方の圧接面26が下部セル6の開口部5における雄ねじ部21の基部側に装着されているシールリング22に気密的に圧接するようになっている。
【0021】
なお、接続部材7による上部セル4の開口部3と下部セル6の開口部5とを接続する構成にあっては、上部セル4の開口部3と下部セル6の開口部5とを接続・分離可能に且つ気密的に接続することができるものであれば、上記した構成に限られるものではない。
【0022】
例えば、
図3、
図4に示すように、上部セル4の筒状に形成した開口部3の基部側の外周に雄ねじ部27を設け、下部セル6の筒状に形成した開口部5の基部側の外周にはシールリング28を設け、そして、接続部材7を構成する筒体29の一端側に、上部セル4の開口部3の外周に設けた雄ねじ部27と螺合する雌ねじ部30を設けるとともに、筒体29の他端側には、上部セル4の開口部3の外周に設けた雄ねじ部27に雌ねじ部30を螺合したとき、下部セル6の開口部5の基部側の外周に設けたシールリング28に下部セル6の開口部5の基部側から圧接する内向き鍔部31を形成し、筒体29の内周には、雌ねじ部30と内向き鍔部31との間に位置して、上部セル4の開口部3の先端部3aの外周と下部セル6の開口部5の先端部5aの外周に気密的に圧接する合成樹脂リング32を嵌合させた構成としてもよい。合成樹脂リング32はフッ素樹脂であることが好ましい。
【0023】
また、
図5、
図6に示すように、上部セル4の下側に有する開口部3及び下部セル6の上側に有する開口部5を筒状に形成し、そして、接続部材7を合成樹脂製筒体32とし、合成樹脂製筒体33の一方の開口部から上部セル4の開口部3を、他方の開口部から下部セル6の開口部5を圧入して合成樹脂製筒体33の復元力により気密的に接続するように構成してもよい。合成樹脂製筒体33はフッ素樹脂であることが好ましい。
【0024】
また、
図7、
図8に示すように、上部セル4の筒状に形成した開口部3の基部側の外周に雄ねじ部36を設け、雄ねじ部36の基部側にシールリング38を装着し、また、下部セル6の上側に有する開口部5は、上部セル4の下側に有する開口部3と同径の筒状に形成され、開口部5の基部側の外周に雄ねじ部37を設け、雄ねじ部37の基部側にシールリング39を装着し、そして、接続部材7を構成する筒体40の一端側内周には、上部セル4の開口部3の外周に設けた雄ねじ部36と螺合する雌ねじ部42を設けるとともに、筒体40の他端側内周には下部セル6の開口部5の外周に設けた雄ねじ部37と螺合する雌ねじ部43を設け、さらに、筒体40の内周には、雌ねじ部42と雌ねじ部43との間に位置して上部セル4の開口部3の先端部3aの外周と下部セル6の開口部5の先端部5aの外周に気密的に圧接する合成樹脂リング41を嵌合させ、さらに、筒体40の両開口端部には、上部セル4の開口部3の外周に設けた雄ねじ部36に雌ねじ部42を螺合し、下部セル6の開口部5の外周に設けた雄ねじ部37に雌ねじ部43を螺合して締め付けたとき、上部セル4の開口部3の基部側の外周に設けた雄ねじ部36の基部側に装着したシールリング38と、下部セル6の開口部5の基部側の外周に設けた雄ねじ部37の基部側に装着したシールリング39に、上部セル4の開口部3の基部側および下部セル6の開口部5の基部側から圧接する内向き鍔部44,45を形成した構成としてもよい。合成樹脂リング41はフッ素樹脂であることが好ましい。
【0025】
また、上部セル4に備えられている気体注入・抜き取り部2は、本例では、上部セル4の上部に設けられ、外周に雄ねじ部12を有する筒状の開口部13と、内周に雌ねじ部16を有する蓋体17との間にセプタム18を配置し、上部セル4の開口部13に蓋体17を螺合する構成となっているが、開口部13と蓋体17との間でセプタム18を挟持することができるものであれば、上記した構成に限られるものではない。
例えば、
図7に示すように、上部セル4の筒状に形成した開口部3の開口端に外向き鍔部34を形成し、蓋体17を金属製とし、そして開口部3の外周に嵌合可能なキャップ状に形成して、開口部13の開口端と蓋体17の天面14との間に配置するようにして、開口部13の外周に蓋体17を嵌合し、蓋体17の開口端部をカシメ部35として開口部3の開口端に外向き鍔部34を外側から包むようにカシメることにより、開口部13と蓋体17との間でセプタム18を挟持する構成としてもよい。
【0026】
また、上部セル4及び下部セル6の素材にあっては、特に限定されないが、ガラス製であることが好ましい。本例ではガラス製の上部セル4及び下部セル6となっている。また、蓋体17や筒体23の素材にあっては、特に限定されないが、本例では金属製となっている。上部セル4の大きさは、外径が30mm以下、または、長さが40mm以下であり、特に、外径が23mm以下であることが好ましい。
【0027】
次に、上記のように構成される本例の保香性試験容器1を使用した包材の保香性試験方法について
図9を参照して説明する。
【0028】
まず、上部セル4と下部セル6を分離し、下部セル6内に香気成分46を入れ、下部セル6の開口部5を接続部材7となる筒体23に、筒体23の他方の開口側から、筒体23の他方の圧接面26が下部セル6の開口部5における雄ねじ部21の基部側に装着されているシールリング22に気密的に圧接するまで螺合し、この状態で、筒体23内に試料となるフィルム状の包材10を入れて下部セル6の開口部5の開口端面9に当接させる。
【0029】
つぎに、下部セル6の開口部5を螺合した接続部材7となる筒体23に、筒体23の一方の開口側から上部セル4の開口部3を螺合し、上部セル4の開口部3の開口端面8を下部セル6の開口部5の開口端面9に当接している包材10に圧接させ締め付けるようにして、開口端面8と開口端面9とで構成される包材挟持部11で包材10を挟持する。このとき、筒体23の他方の圧接面26が上部セル4の開口部3における雄ねじ部19の基部側に装着されているシールリング20に気密的に圧接した状態となる。
【0030】
このようにして、下部セル6内に香気成分46を入れ、上部セル4の開口端面8と下部セル6の開口端面9との間に包材10を配置したら、保香性試験容器1を加熱して設定した所定温度の恒温状態(40℃)に所定時間維持し、恒温状態で上部セル4内の気体をマイクロシリンジ47で抜き取り、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)分析し、下部セル6から包材10を透過して上部セル4へ流れた香気成分の量を測定し、包材10の保香性を評価する。
【0031】
包材10の香気成分透過度は、下記の式に基づいて求められる。
香気成分透過度=香気成分透過量(g)/(透過面積(m
2)・時間(day))
【0032】
以上のように、本発明に係る保香性試験容器1によれば、上部セル4の開口端面8と下部セル6の開口端面9とで構成される包材挟持部11で包材10を挟持し、上部セル4の開口部3と下部セル6の開口部5とを接続部材7で接続することにより、上部セル4の開口部3と下部セル6の開口部5とを包材挟持部11で包材10を挟持した状態で気密的に接続することができる。
【0033】
包材10の保香性試験では、下部セル6内に香気成分46を入れ、包材挟持部11で包材10を挟持させ、この状態で上部セル4の開口部3と下部セル6の開口部5とを接続部材7で接続し、一定温度に加熱することにより香気成分34を揮発させ、上部セル4内の気体をマイクロシリンジ47で抜き取り、GC/MS分析して包材10を透過して上部セル4へ流れた香気成分の量を測定し、包材10の保香性を評価することができるので、素材のヒートシール性に関係なく全てのフィルム状の包材10における保香性の分析、評価が可能となる。
【0034】
そして、上部セル4の開口部3と下部セル6の開口部5とが包材挟持部11により包材10を挟持した状態で気密的に接続されているので定量的な分析に優れたものとなる。
また、包材10の透過面積に対する上部セル4の容積を小さくすることにより、上部セル4内における包材10を透過した香気成分の濃度を高めることができ、これによりバリア性の高い素材からなる包材10であっても、短時間で香気成分の分析、評価が行える。
特に、上部セル4の外径が30mm以下、または、長さが40mm以下の容積の小さなものは、前記特許文献2に比べ透過面積に対するセル容積が小さいため、上部セル4内における包材10を透過した香気成分の濃度が高くなり、分析感度を高めることができ、これにより、バリア性の高い素材からなる包材10であっても、一層短時間で香気成分の分析、評価を行うことができる。
【0035】
また、本例では、上部セル4と下部セル6はガラス製であり、また、蓋体17や接続部材7となる筒体23は金属製なので、疎水性である香気成分の上部セル4や下部セル6、また、蓋体17や接続部材7となる筒体23への吸着が少なく、包材10における保香性の定量的な分析と、再現性に一層優れたものとなる。
【0036】
また、本発明に係る包材の保香性試験方法によれば、前記した保香性試験容器1を使用し、下部セル6内に香気成分46を入れ、上部セル4の開口端面8と下部セル6の開口端面9の間に包材10を配置して包材挟持部11で挟持し、接続部材7で上部セル4の下側開口部3と下部セル6の開口部5とを気密的に接続し、加熱して設定した所定温度の恒温状態に維持し、恒温状態で上部セル4内の気体を抜き取り分析して包材10を透過して上部セル4へ流れた香気成分の量を測定し、包材10の保香性を評価するので、素材のヒートシール性に関係なく全てのフィルム状の包材10における保香性の分析、評価を行うことができ、また、操作が簡単なので、包材10の保香性試験を容易に行うことができる。
【0037】
[実施例]
図9の下部セル6内に20μLのリモネンと20μLの水を入れ、上部セル4の開口部3の開口端面8と下部セル6の開口部5の開口端面9との間に包材10(ポリエチレン/紙/アルミニウム/ポリエチレン)を配置し、保香性試験容器1を40℃に加熱して、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間維持し、恒温状態で上部セル4内の気体をマイクロリジン47で抜き取り、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)分析し、下部セル6から包材10を透過して上部セル4へ流れた香気成分の量を前記の式により計算し、包材10の保香性を評価した。
評価結果を表1に示す
【表1】
【符号の説明】
【0038】
1 保香性試験容器
2 気体注入・抜き取り部
3 開口部
3a 開口部の先端部
4 上部セル
5 開口部
5a 開口部の先端部
6 下部セル
7 接続部材
8、9 開口端面
10 包材
11 包材挟持部
12 雄ねじ部
13 開口部
14 天面
15 穴部
16 雌ねじ部
17 蓋体
18 セプタム
19 雄ねじ部
20 シールリング
21 雄ねじ部
22 シールリング
23 筒体
24 雌ねじ部
25、26 圧接面
27 雄ねじ部
28 シールリング
29 筒体
30 雌ねじ部
31 内向き鍔部
32 合成樹脂リング
33 合成樹脂製筒体
34 外向き鍔部
35 カシメ部
36,37 雄ねじ部
38,39 シールリング
40 筒体
41 合成樹脂リング
42,43 雌ねじ部
44,45 内向き鍔部
46 香気成分
47 マイクロシリンジ