【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成にあっては、弾性部材とコイルの端末導線を電気的に接続するため、コイルの端末導線を弾性部材にハンダ付けする必要がある。しかしながら、弾性部材として一般的に用いられる板バネは、構造が複雑で機械的強度に乏しいため、ハンダ付け時に損傷・破損するおそれがあった。また、ハンダ付けは作業性が悪いため、製造効率が悪化するとともに、歩留まりを低下させる原因にもなっていた。
【0006】
それゆえ、本発明の課題は、レンズ駆動時に配線の損傷等が生じず、また、製造工程におけるコイルの配線処理が容易なレンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるレンズ駆動装置は、
レンズを収容するための開口部を有する第1の支持体と、
前記第1の支持体の外側に配設された第2の支持体と、
を備えるレンズ駆動装置であって、
前記第1の支持体は、その外周に1つ以上の駆動磁石を支持し、
前記第2の支持体は、前記駆動磁石に対向する1つ以上のコイル配置枠と、配線溝とをそれぞれ有するとともに、前記コイル配置枠に配設されたコイルを支持し、
前記コイルの少なくとも一端が、前記配線溝に配線されることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、第1の特徴として、コイルは、稼働部である第1の支持体ではなく、固定部である第2の支持体に配設されるため、レンズ駆動の際に配線に振動や張力などが加わることがなく、配線の損傷等を防止することができる。
【0009】
第2の特徴として、第2の支持体がコイルを配設するためのコイル配置枠を有するため、コイルの組付精度を向上できる。よって、駆動磁石とコイルの対向精度が向上し、発生する電磁力を向上させることができる。また、コイルの組付精度を向上できることにより、駆動磁石−コイル間のギャップ(間隙)の設計マージンを低減することが可能となる。駆動磁石とコイルは近接するほどコイル通電時に大きな電磁力を得ることができるため、この点においても発生する電磁力を向上させることができる。そのため、稼働部である第1の支持体にコイルよりも重量の大きい駆動磁石が配設された上記の構成にあっても、第1の支持体に十分な駆動力を発生させることが可能となる。
【0010】
なお、本明細書において「対向精度」とは、互いに対向するように設計された2つの部品の相対的な位置決め精度を指すものとし、また「位置決め精度」とは、設計上の取付け位置に対する実際に取り付けられた位置の正確さをいうものとする。例えば、これらの部品が駆動磁石とコイルの場合には、対向精度の向上により、コイル通電時に発生する電磁力が向上するものとする。
【0011】
第3の特徴として、第2の支持体がコイル配置枠を有することにより、製造工程におけるコイルの組付けが容易となり、作業性ひいては製造効率を向上させることができる。また、コイルの少なくとも一部はコイル配置枠により保護されるため、コイルの損傷等を防止することができる。
【0012】
第4の特徴として、第2の支持体が導線の配線溝を有するため、コイル配置枠に配設されたコイルの導線を容易に配線でき、作業性ひいては製造効率を向上させることができる。また、配線された導線は配線溝により保護されるため、不意の衝撃が加わった場合などにおいても配線の損傷等を防止することができる。
【0013】
また、上記の構成にあっては、
前記第1の支持体は、前記駆動磁石を所定位置に配設するための磁石配置枠を有していてもよい。
【0014】
このような構成によれば、第1の支持体が磁石配置枠を有するため、駆動磁石の組付精度が向上する。よって、コイル配置枠を設ける場合と同様に、第1の支持体に十分な駆動力を発生させることができる。また、製造工程における駆動磁石の組付けが容易となり、作業性ひいては製造効率を向上させることができる。
【0015】
また、上記の構成にあっては、
前記第1の支持体は、互いに垂直な対向面の4面それぞれに駆動磁石を有し、
前記第2の支持体は、前記駆動磁石のそれぞれに対向するコイルを有していてもよい。
【0016】
ここで、説明を容易にするため、レンズ光軸をZ軸とし、被写体側を+Z方向、撮影者側を−Z方向とする。また、X軸及びY軸は、互いにかつZ軸に垂直であり、駆動磁石及びコイルはそれぞれX−Z平面又はY−Z平面に配設されるものとする。
【0017】
このような構成によれば、第1の支持体の4辺独立に駆動力を発生させることができる。よって、各辺のコイル通電電流を各々制御することによって、レンズをZ方向に駆動するだけではなく、X軸又はY軸回りの回転力を生じさせることができる。そのため、オートフォーカス機能だけではなく、手振れ補正機能も実現できる。
【0018】
また、上記の構成にあっては、
前記コイルは、コイル配設面の法線回りに巻回された横長状のコイルであり、
前記駆動磁石は、横長状の第1の磁石と、前記第1の磁石と略同形状であり、前記第1の磁石と逆方向に着磁された第2の磁石が、レンズ光軸方向に接合された連結磁石であってもよい。
【0019】
ここで、「横長状」とは、X−Z平面に配設されたコイルにおいては、X軸方向に長いコイルをいうものとし、Y−Z平面に配設されたコイルにおいては、Y軸方向に長いコイルをいうものとする。なお、「X軸方向に長い」とは、例えばX−Z平面に配設されたコイルにおいて、コイルがZ軸方向に比べてX軸方向に長い場合に限定されず、X軸方向に延在するコイル部から第1の支持体を駆動するのに十分な電磁力を発生することができる形状を広く含むものとする。
【0020】
また、「連結磁石」とは、2つ又はそれ以上の磁石が連結された磁石をいい、その連結方法は問わないものとする。上記の第1の磁石と第2の磁石との連結磁石は、同様の作用効果を奏するよう着磁されているものであれば、2より多い数の磁石が連結されているものであってもよい。
【0021】
このような構成によれば、第1の磁石とコイルの下部、第2の磁石とコイルの上部がそれぞれ対向することにより、第1の磁石及び第2の磁石の双方に、Z軸方向に同方向の駆動力を発生させることができる。よって、駆動磁石及びコイルから効果的に駆動力を得ることができ、装置を大型化させることなく、レンズ駆動力を向上させることができる。あるいは、駆動磁石及びコイルを小型化することができ、ひいては装置の小型化を実現できる。
【0022】
また、上記の構成にあっては、
前記コイルは、コイル配設面の法線回りに巻回された横長状のコイルであり、
前記駆動磁石は、凹型形状である第3の磁石と、前記第3の磁石と逆方向に着磁され、前記第3の磁石の凹部に嵌合する第4の磁石と、の連結磁石であり、
その横幅が前記コイルの横直線部と略同長、又は、それよりも短くてもよい。
【0023】
ここで、「横直線部」とは、X−Z平面に配設されたコイルにおいてはX軸方向の直線部を、Y−Z平面に配設されたコイルにおいてはY軸方向の直線部を指すものとし、例えば
図8に示すコイルでは、斜線を付した部分を指すものとする。
【0024】
なお、上記の第3の磁石と第4の磁石との連結磁石は、同様の作用効果を奏するよう着磁されているものであれば、2より多い数の駆動磁石が連結されているものであってもよい。
【0025】
また、「略同長」とは、長さが厳密に同じものだけに限られず、本発明の作用効果に鑑みて同じ長さと考え得る長さを含むものとする。
【0026】
このような構成によれば、第1の支持体の4辺独立に、Z方向に加えてX方向又はY方向にも駆動力を発生させることができる(詳細は後述する)。よって、Z方向のみに駆動力が発生する構成に比べて、X軸又はY軸回りに大きな回転力を得ることができ、手振れを効果的に抑制することができるとともに、Z方向への移動量を極力抑えつつ手振れを抑制することも可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明にかかるレンズ駆動装置によれば、レンズ駆動時の配線の損傷等を防止することができる。また、製造工程におけるコイル配線処理が容易であり、製造効率及び歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳述する。但し、これらの実施形態はいずれも例示であり、本発明についての限定的解釈を与えるものではない。なお、図面において、同一の又は対応する部分については同一の符号を付すものとする。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態にかかるレンズ駆動装置10の斜視図であり、
図2はかかるレンズ駆動装置10の分解斜視図である。なお、分解斜視図は、レンズ駆動装置の各部品の位置関係を主に説明するものであり、個々の部品の大きさ・形状は必ずしも正確ではない。他の分解斜視図についても同様とする。
【0031】
図1及び
図2に示すように、レンズ駆動装置10は、略四方形状の第1の支持体20と、第1の支持体20の外側に配設され、同じく略四方形状の第2の支持体40を備える。
【0032】
第1の支持体20は、その中心軸に、レンズを収容するための開口部21を有する。また、その外周面のそれぞれに、駆動磁石23(23A〜23D)を支持するとともに、その上下に配設された弾性部材(図示せず)により、主に−Z方向に付勢される。
【0033】
第2の支持体40は、各側面にコイル配置枠41を有する。コイル43(43A〜43D)はコイル配置枠41に配設されるため、コイル43の組付精度が向上する。よって、コイル43と磁石23の対向精度が向上し、発生する電磁力を向上させることができる。
【0034】
また、一般的なレンズ駆動装置では、製造工程における組付誤差等を考慮し、駆動磁石23とコイル43との接触を防止すべく、これらの部品間のギャップには設計マージンが設定されている。この点、本実施形態にかかるレンズ駆動装置10によれば、コイル43の組付精度を向上できることにより、設計マージンを低減することが可能となる。駆動磁石23とコイル43は近接するほどコイル43を通電した時の電磁力が大きくなるため、この点においても発生する電磁力を向上させることができる。
【0035】
駆動磁石23は一般的にコイル43よりも重量が大きいため、稼働部である第1の支持体20に駆動磁石23を装着すると、第1の支持体20の駆動性の悪化が懸念される。しかしながら、本実施形態にかかるレンズ駆動装置10によれば、コイル43の組付精度の向上及びそれに伴う設計マージンの低減により、十分な駆動力を実現できる。
【0036】
さらに、第2の支持体40がコイル配置枠41を有することにより、製造工程におけるコイル43の組付けが容易となり、作業性ひいては製造効率を向上させることができる。また、コイル43の少なくとも一部はコイル配置枠41により保護されるため、コイル43の損傷等を防止することができる。
【0037】
コイル配置枠41に配設されたコイル43の端末導線は、第2の支持体40が有する配線溝42に配線される。よって、製造工程におけるコイル43の端末導線の配線処理が容易となり、作業性ひいては製造効率を向上させることができる。また、コイル43の端末導線は配線溝42により保護されるため、不意の衝撃が加わった場合などにおいても導線の損傷等を防止することができる。
【0038】
なお、第1の支持体20の外周に、駆動磁石23を配設するための磁石配置枠22を設けてもよい。この場合、駆動磁石23の組付精度を向上させることができ、コイル配置枠41を設ける場合と同様に、第1の支持体20の駆動性を向上させることができる。また、製造工程における駆動磁石23の組付けが容易となり、作業性ひいては製造効率を向上させることができる。
【0039】
レンズ駆動装置10は、第2の支持体40を覆うようにカバー50を備える。カバー50により、コイル43をはじめとするレンズ駆動装置10の各部品が保護される。
【0040】
第1の支持体20は、互いに垂直な対向面の4面それぞれに駆動磁石23A〜23Dを有し、前記第2の支持体40は、駆動磁石23A〜23Dのそれぞれに対向するコイル43A〜43Dを有する。よって、第1の支持体20の4辺独立に駆動力を発生させることが可能となり、各コイル43A〜43Dの通電電流を各々制御することによって、第1の支持体20をZ方向に駆動するだけではなく、X軸又はY軸回りの回転力を生じさせることができる。そのため、レンズを焦点方向に移動させるオートフォーカス機能だけではなく、手振れ補正機能も実現できる。
【0041】
ここで、第2の支持体40に装着されるコイル43は、コイル配設面の法線回りに巻回された横長状のコイルであり、第1の支持体20に装着される駆動磁石23は、横長状の磁石24(24A〜24D。以下、「第1の磁石」とする。)と、第1の磁石24と略同形状であり、第1の磁石24と逆方向に着磁された磁石25(25A〜25D。以下、「第2の磁石」とする。)が、レンズ光軸方向に接合された連結磁石であることが好ましい。なお、以下の説明において、レンズ駆動装置10の各辺には、それぞれ同じ駆動磁石23及びコイル43が配設されているものとする。
【0042】
図3は、第1の実施形態における駆動磁石23及びコイル43の形状、並びにこれらの位置関係を説明する図あり、(a)駆動磁石23を正面から見た図、(b)コイル43を正面から見た図、(c)駆動磁石23及びコイル43を上面から見た図である。なお、
図3(a)及び(b)に示す駆動磁石23及びコイル43は、X−Z平面に配設されているものとし、図の奥行き方向をY方向とする。
【0043】
この場合、第1の磁石24の高さh
m1と第2の磁石25の高さh
m2が同じであり、駆動磁石23の高さh
m3(h
m1+h
m2)がコイル43の高さh
c1と同じであってもよい。また、駆動磁石23の幅w
m1がコイル43の横直線部の幅w
c1と同じであってもよい。このようにすることで、コイル43の下側の横直線部(図中の右上がり斜線部)が第1の磁石24と対向し、コイル43の上側の横直線部(図中の右下がり斜線部)が第2の磁石25と対向する。
【0044】
よって、同図に示す方向にコイル43に通電した場合、コイル43の下側の横直線部には+X方向に電流が流れるため、第1の磁石24には+Z方向の駆動力が生じる。また、コイル43の上側の横直線部には−X方向に電流が流れるため、第2の磁石25にも同じく+Z方向の駆動力が生じる。よって、駆動磁石及びコイルから効果的に+Z方向への駆動力を発生させることができ、駆動性の向上や装置の小型化を実現できる。
【0045】
次に、本実施形態における第1の支持体20の制御方法について説明する。
【0046】
第1の支持体20をZ方向に移動させる場合は、それぞれ平行な平面上に配設されたコイル43Aと43C、又は、コイル43Bと43Dに同じ大きさの電流を通電することにより、X軸又はY軸回りの回転力を生じさせることなく、Z方向にのみ駆動力を発生させることができる。あるいは、4つのコイル43A〜43Dのすべてに同じ大きさの電流を通電してもよい。この場合、第1の支持体20の4辺すべてに駆動力が発生するため、2辺に通電する場合よりも、ブレを抑えた安定性の高いレンズ駆動を実現できる。
【0047】
このようにコイル43A〜43Dの通電電流を制御することで、第1の支持体20に不要な回転力が生じることなく、第1の支持体20をZ方向に変位させることができ、レンズを円滑にオンフォーカス位置まで駆動することができる。
【0048】
また、本実施形態にかかるレンズ駆動装置10は、手振れ補正機能も実現できる。例えばコイル43Aの1辺だけに通電した場合、駆動磁石23AにZ方向の駆動力が発生する。その他の駆動磁石23B〜23Dには駆動力が発生しないため、第1の支持体20にはZ方向への駆動力に加えて、X軸回りの回転力が発生し、この回転力を用いて手振れを抑制することができる。
【0049】
さらに、例えばコイル43Aに通電するとともに、コイル43Aよりも大きい(又は小さい)電流をコイル43Cに通電することにより、第1の支持体20をZ方向に駆動させつつ、X軸回りの回転力を得ることができ、オートフォーカス機能と同時に手振れ補正機能を実現できる。
【0050】
以上説明したように、第1の実施形態にかかるレンズ駆動装置10によれば、レンズ駆動時の配線の損傷等を防止することができる。また、製造工程におけるコイル43の配線処理が容易であり、製造効率及び歩留まりの向上を図ることができる。さらに、第1の支持体20の4辺独立に駆動力を発生させることが可能であり、各辺のコイル43A〜43Dの通電電流を制御することにより、オートフォーカス機能及び手振れ補正機能を実現できる。
【0051】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態にかかるレンズ駆動装置11の分解斜視図である。第2の実施形態にかかるレンズ駆動装置11は、駆動磁石26(26A〜26D)及びコイル44(44A〜44D)の形状が第1の実施形態とは異なる。
【0052】
第2の実施形態において、第2の支持体40に装着されるコイル44は、コイル配設面の法線回りに巻回された横長状のコイルであり、第1の支持体20に装着される駆動磁石26は、凹型形状の磁石27(27A〜27D。以下、「第3の磁石」とする。)と、第3の磁石27と逆方向に着磁され、第3の磁石27の凹部に嵌合する磁石28(28A〜28D。以下、「第4の磁石」とする。)との連結磁石であって、その横幅がコイルの横直線部と略同長、又は、それよりも短い駆動磁石である。なお、以下の説明において、レンズ駆動装置11の各辺には、それぞれ同じ駆動磁石26及びコイル44が配設されるものとする。
【0053】
図5は、第2の実施形態における駆動磁石26及びコイル44の形状、並びにこれらの位置関係を説明する図あり、(a)駆動磁石26を正面から見た図、(b)コイル44を正面から見た図、(c)駆動磁石26及びコイル44を上面から見た図である。なお、
図5(a)及び(b)に示す駆動磁石26及びコイル44は、X−Z平面に配設されているものとし、図の奥行き方向をY方向とする。
【0054】
駆動磁石26において、第3の磁石27の中央部の高さh
m4と、第4の磁石28の高さh
m5が同じであってもよい。また、第3の磁石27の中央部の高さh
m4と第4の磁石28の高さh
m5の和は、コイル44の高さh
c4と同じであってもよい。このようにすることで、コイル44に通電した場合、駆動磁石26のA
m部とコイル44のA
c部、及び、駆動磁石26のB
m部とコイル44のB
c部のそれぞれからZ方向に同方向の電磁力が発生させることができ、効果的にZ方向の駆動力を得ることができる。
【0055】
また、コイル44の横直線部の幅w
c4は、駆動磁石26の幅w
m4と同じであることが好ましい。この場合、コイル44は駆動磁石26よりも両端でそれぞれw
c5分だけ長くなる。つまり、駆動磁石26のC
m部(C
m1部及びC
m2部)とコイル44のC
c部(C
c1部及びC
c2部)とは、Y軸に対し平行であるとともに、X軸に対しオフセットした位置関係になる。
【0056】
図6は、この位置関係において発生する駆動力を説明する図であり、(a)は駆動磁石26及びコイル44を正面から見た図、(b)は駆動磁石26及びコイル44を上面から見た図である。なお、
図6(b)では、コイル44のうちC
c1部及びC
c2部のみを記載している。
図6(b)に示すように、駆動磁石26のC
m1部から発生する磁束は、コイル44のC
c1部において−X方向を向く。かかる磁束がコイル44のC
c1部に流れる+Z方向の電流に作用し、フレミングの左手の法則に従い電磁力が発生する。この場合、コイル44は固定部である第2の支持体40に配設されているため、稼働部である第1の支持体20に配設されている駆動磁石26のC
m1部に+Y方向の駆動力F1が生じる。また同様に、駆動磁石26のC
m2部にも+Y方向の駆動力F2が生じ、よって、第1の支持体20には+Y方向の駆動力が生じることになる。
【0057】
なお、
図5に示す本実施形態の駆動磁石26及びコイル44において、駆動磁石26のC
m1部及びC
m2部は、それぞれコイル44のC
c1部及びC
c2部と対応して、Y軸方向の駆動力を発生する部分であるため、この部分の駆動磁石26の高さh
m6は、第3の磁石27のh
m4と第4の磁石28のh
m5の和と同じである必要はなく、それより大きくても小さくても上述の作用効果を奏する。ただし、駆動磁石26のC
m1部及びC
m2部は、それぞれコイル44のC
c1部及びC
c2部に流れるZ軸方向の電流と作用するため、
図5に示すように、h
m6をh
m4とh
m5の和よりも若干小さい値に設定しても駆動性に影響を与えず、かつ、駆動磁石26の軽量化による駆動性の向上が期待できるため、好適である。
【0058】
ここで、本実施形態が奏する効果を明らかにするため、コイルの端部のオフセットがない構成、すなわち、駆動磁石とコイルの幅が同じである場合に発生する駆動力について、
図7を用いて説明する。
図7に示すように、+Z方向に電流が流れるコイル45のC
c1部には、駆動磁石29のC
m1部により−Y方向の磁界が存在するため、稼働部である第1の支持体20に配設された駆動磁石29のC
m1部には、−X方向への駆動力F3が発生する。同様に、駆動磁石29のC
m2部には+X方向への駆動力F4が発生する。よって、これらの力は互いに相殺され、第1の支持体20にはX方向又はY方向への駆動力は発生しない。
【0059】
次に、本実施形態における第1の支持体20の制御方法について説明する。
【0060】
第1の支持体20をZ方向に移動させる場合は、第1の実施形態にかかるレンズ駆動装置10と同様、それぞれ平行な平面上に配設されたコイル44Aと44C、又は、コイル44Bと44Dに同じ大きさの電流を流すことにより、X方向又はY方向への駆動力は相殺され、Z方向にのみ駆動力を発生させることができる。あるいは、4つのコイル44A〜44Dすべてに同じ大きさの電流を通電してもよい。この場合、第1の支持体20の4辺すべてに駆動力が発生するため、2辺に通電する場合よりも、ブレを抑えた安定性の高いレンズ駆動を実現できる。
【0061】
また、手振れを抑制する場合の電流制御方法も、第1の実施形態にかかるレンズ駆動装置10と同様である。ただし、第2の実施形態にかかるレンズ駆動装置11においては、第1の支持体20の各辺に、Z方向に加えて、X方向又はY方向への駆動力を発生させることができ、手振れを効果的に抑制することが可能となる。
【0062】
以上説明したように、第2の実施形態にかかるレンズ駆動装置11では、第1の実施形態と同様、レンズ駆動時の配線の損傷等を防止することができる。また、製造工程におけるコイル44の配線処理が容易であり、製造効率及び歩留まりの向上を図ることができる。さらに、第1の支持体20の4辺独立に、Z方向の駆動力に加えて、X方向又はY方向への駆動力を発生させることができ、コイル44への通電電流に対して効果的に手振れを抑制できるとともに、Z方向への移動を極力押さえつつ手振れを抑制することも可能となる。
【0063】
図11は、駆動磁石−コイル間のギャップが第1の支持体の駆動性に与える影響をシミュレーションした結果を示す図である。第1の支持体の外周を取り巻くように巻回された1つのコイルと、第2の支持体に配設された4つの駆動磁石と、を備える各辺8.5mmの正方形状のレンズ駆動装置においてシミュレーションを行った。なお、コイルの巻回数は62である。
【0064】
この場合において、第1の支持体に装着されたコイルと、第2の支持体に装着された駆動磁石とのギャップが、0.1mmと0.2mmのそれぞれの場合における、コイル通電電流に対する第1の支持体のZ方向への移動量を求めた。なお、第1の支持体のZ方向への最大移動量は0.27mmとした。
【0065】
図11からわかるように、駆動磁石−コイル間のギャップが0.1mmである場合の方が0.2mmである場合よりも、コイル通電電流に対するZ方向への移動量が大きくなり、また、Z方向への移動量に対するコイル通電電流が小さくてすむことがわかる。
【0066】
以上のシミュレーション結果より、駆動磁石−コイル間のギャップを小さくすることで、第1の支持体の駆動性を向上できることを確認できた。
【0067】
上述の第1の実施形態及び第2の実施形態においては、レンズ駆動装置は駆動磁石とコイルをそれぞれ4つずつ備える構成であったが、本発明にかかる技術的思想を適用できるレンズ駆動装置はこれらに限定されるものではない。
【0068】
例えば、
図9に示す、駆動磁石30を1つ、コイル46を1つ備える、他の方式で用いられる構成のレンズ駆動装置12や、
図10に示す、駆動磁石31を4つ、コイル47を1つ備える、従来の一般的なレンズ駆動装置13はもちろんのこと、駆動磁石やコイルの数・形状に限定されることなく、様々なレンズ駆動装置に幅広く適用が可能である。なお、
図9及び
図10の構成にあっては、第1の支持体はZ方向への移動に限られる。