(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-115324(P2015-115324A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】担体上の貴金属の共形薄膜
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20150526BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20150526BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20150526BHJP
B01J 23/652 20060101ALI20150526BHJP
H01M 8/10 20060101ALN20150526BHJP
【FI】
H01M4/86 B
H01M4/86 M
H01M4/96 M
H01M4/92
B01J23/652 M
H01M8/10
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-252229(P2014-252229)
(22)【出願日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】61/915,731
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/527,121
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511095986
【氏名又は名称】ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】アヌソーン・コンカナンド
(72)【発明者】
【氏名】ラタンディープ・エス・カクレジャ
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル・ダブリュー・クランシー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・キャバノー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・エム・ジョージ
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H026
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA08B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB11A
4G169BB15A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75B
4G169CC32
4G169DA05
4G169EB15Y
4G169EB18X
5H018AA06
5H018AS01
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE05
5H018EE10
5H018HH01
5H018HH03
5H018HH05
5H026AA06
(57)【要約】
【課題】燃料電池触媒層を形成するための被覆された基板を提供すること。
【解決手段】この基板は、複数の粒子基板と、基板粒子を覆って配設された接着層と、接着層を覆って配設された貴金属層とを含む。接着層は、タングステン金属層を含む。特徴的には、被覆された基板は、カソードおよび/またはアノード触媒層に使用される触媒粒子を提供するなどの燃料電池用途において使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板粒子と、
各々の基板粒子を覆って配設された接着層と、
前記接着層を覆って配設された貴金属層とを備え、前記接着層が、タングステン金属、タングステン合金、酸化タングステン、窒化タングステン、および炭化タングステンからなる群から選択される成分を含む、被覆された基板。
【請求項2】
前記基板粒子が、約20nmから1ミクロンの平均空間寸法を有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項3】
前記複数の基板粒子が、炭素粉末、炭素ナノロッド、非導電性粒子、炭素ナノチューブ、およびそれらの組合せを含む、請求項2に記載の被覆された基板。
【請求項4】
前記基板粒子が、10:1から25:1の長さ対幅の縦横比を有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項5】
前記基板粒子が、13:1から20:1の長さ対幅の縦横比を有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項6】
前記基板粒子が、約15:1の長さ対幅の縦横比を有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項7】
前記貴金属が、白金、金、パラジウム、イリジウム、およびそれらの合金、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項8】
前記接着層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項9】
前記貴金属層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項10】
前記基板と前記接着層の間に配置された中間層をさらに含む、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項11】
前記中間層が、約0.5から10ナノメートルの厚さを有する、請求項10に記載の被覆された基板。
【請求項12】
前記中間層が、金属酸化物層である、請求項10に記載の被覆された基板。
【請求項13】
前記中間層が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、炭化チタン、窒化チタン、チタン酸窒化物、およびそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項10に記載の被覆された基板。
【請求項14】
約20nmから1ミクロンの平均空間寸法と、10を上回る平均の長さ対幅の縦横比とを有する複数の基板粒子と、
前記基板粒子を覆って配設された接着層と、
前記接着層を覆って配設された貴金属層とを備え、前記接着層が、タングステン金属、タングステン合金、酸化タングステン、窒化タングステン、および炭化タングステンからなる群から選択される成分を含む、被覆された基板。
【請求項15】
前記複数の基板粒子が、炭素粉末、炭素ナノロッド、非導電性粒子、炭素ナノチューブ、およびそれらの組合せを含む、請求項14に記載の被覆された基板。
【請求項16】
前記長さ対幅の縦横比が、10:1から25:1である、請求項14に記載の被覆された基板。
【請求項17】
前記貴金属が、白金、金、パラジウム、イリジウム、およびそれらの合金、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の被覆された基板。
【請求項18】
前記接着層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有し、前記貴金属層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する、請求項14に記載の被覆された基板。
【請求項19】
前記基板と前記接着層の間に配置された金属酸化物中間層をさらに含む、請求項14に記載の被覆された基板。
【請求項20】
前記中間層が、約0.5から10ナノメートルの厚さを有する、請求項10に記載の被覆された基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、参照によってその開示全体が本明細書に組み込まれる、2013年12月13日出願の米国仮特許出願第61/915,731号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
[0002]少なくとも1つの態様では、本発明は、燃料電池用途に使用される触媒層に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]燃料電池は、多くの用途において電力源として使用される。特に、燃料電池は、自動車において内燃機関に置き代わるために使用することが提案される。一般的に使用される燃料電池設計は、固体重合体電解質(「SPE」)膜または陽子交換膜(「PEM」)を使用してアノードとカソードの間のイオン輸送をもたらす。
【0004】
[0004]陽子交換膜タイプの燃料電池では、水素が燃料としてアノードに供給され、酸素が酸化剤としてカソードに供給される。酸素は、その物質だけ(0
2)または空気(0
2とN
2の混合物)になることができる。PEM燃料電池は、通常、固体重合体膜が、1つの面上のアノード触媒と、反対側の面上のカソード触媒とを有する膜電極接合体(「MEA」)を有する。一般的なPEM燃料電池のアノードおよびカソード層は、織られた黒鉛、黒鉛化シートまたは炭素紙などの多孔性伝導材料から形成されて、燃料および酸化剤が、燃料供給電極および酸化剤供給電極それぞれに面する面の表面にわたって分散することを可能にする。各々の電極は、炭素粒子上に担持された細かく分割された触媒粒子(たとえば白金粒子)を有して、アノードにおける水素の酸化およびカソードにおける酸素の還元を促進する。陽子は、アノードからイオン伝導性重合体膜を通ってカソードに流れ、ここではこれらは、酸素と組み合わさって水を形成し、水は電池から排出される。MEAは、多孔性気体拡散層(「GDL」)の対間に挟まれ、この多孔性気体拡散層は、さらに、非多孔性の導電要素または導電板の対間に挟まれる。この板は、アノードおよびカソードのための電流コレクタとして機能し、その中に形成された、燃料電池の気体状の反応剤をそれぞれのアノードおよびカソードの触媒の表面にわたって分散するための適切な通路および開口部を含む。電気を効率的に生成するために、PEM燃料電池の重合体電解質膜は、薄く、化学的安定性、陽子透過性、非導電性、および気体不透過性でなければならない。一般的な用途では、燃料電池は、高レベルの電力を提供するために、積み重ねられて配置された多くの個々の燃料電池の配列で提供される。燃料電池に使用される触媒層は、ある程度良好に作用するが、改良された燃料電池触媒層に対する必要性が存在する。
【0005】
[0005]カーボンブラックおよび炭素ナノチューブは、その優れた導電性、良好な機械的および化学的安定性、ならびに低価格により好ましい担体である。触媒層は、通常、白金および/または白金合金を使用し、これらは、表面領域を強化することによって全体的動作を改良するために、非常に細かいナノ粒子にされる。しかし、炭素の不活性表面は、金属が取り付くことを非常に難しくする。炭素表面上の白金の核生成は、難易度が高く、その結果、大きい白金粒子サイズ、ならびに粒子の移動および凝集を生じさせることが証明されている。さらに、白金の高い表面エネルギーは、薄く円滑な表面を被覆することを非常に難しくする。走査電子顕微鏡法は、平滑な一様な層を形成せずに凝集するこれらの従来技術の被覆の傾向を示す。白金と炭素表面の間の不十分な相互作用は、核生成し、均一な薄膜を形成するのを難しくする。特に、不十分な核生成および層成長により、比較的大きい、最小層の厚さが、電気伝導を確実にするために必要とされる。
【0006】
[0006]市販されているナノ構造化された薄膜(NSTF)触媒は、Ptを自己集合したペリレン赤染料担体上でスパッタリングすることによって作製される。担体は、非導電性であるため、電子は、ptの被覆された連続層を通って輸送しなければならない。他方では、この触媒タイプは、担体の平滑なpt表面および優れた安定性により、従来の炭素担持されたptナノ粒子より耐久性がある。従来技術のスパッタされた薄膜の一部は、スパッタリングプロセスの見通し性質により、非均一であることが観察される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.101、111601(2012年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0007]したがって、燃料電池触媒材料を形成するための改良された材料に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0008]本発明は、少なくとも1つの実施形態において、燃料電池触媒層を形成するための被覆された基板を提供することによって従来技術の1つまたは複数の問題を解決する。被覆された基板は、複数の基板粒子を含む。接着層が各々の基板粒子を覆って配設され、貴金属層が接着層を覆って配設される。接着層は、タングステン金属層、タングステン合金層、W0
x層、W
xN層、またはW
xC層を含む。特徴的には、被覆された基板は、カソードおよび/またはアノード触媒層に使用される触媒粒子を提供するなどの燃料電池用途で使用される。有利には、本発明は、従来の分散された担持された触媒よりも高い動作性および耐久性を有する触媒を提供する。さらに、本方法は乾燥方法であるため、触媒処理価格は、低減され、化学/貴金属の廃棄が最小限に抑えられる。
【0010】
[0009]別の改良点では、燃料電池触媒層を形成するための被覆された基板が提供される。被覆された基板は、複数の基板粒子を含む。基板粒子は、約20nmから1ミクロンの平均的な空間寸法と、10を上回る長さ対幅の縦横比とを有する。被覆された基板はまた、各々の基板粒子を覆って配設された接着層と、接着層を覆って配設された貴金属層とを含む。接着層は、タングステン金属、タングステン合金、酸化タングステン、窒化タングステン、および炭化タングステンからなる群から選択された成分を含む。
【0011】
[0010]別の実施形態では、被覆された基板を形成するための方法が提供される。方法は、接着層を複数の基板粒子の各々の粒子上に堆積するステップを含む。貴金属層が、次いで、接着層上に堆積されて貴金属被覆された基板を形成する。貴金属被覆された基板は、次いで、燃料電池触媒層に組み込まれる。
【0012】
[0011]本発明の例示的な実施形態は、詳細な説明および添付の図からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】[0012]複数の貴金属被覆された基板粒子を含む燃料電池の断面図である。
【
図2】[0013]
図2Aは、被覆された基板粒子の一部分の概略断面図である。 [0014]
図2Bは、被覆された基板粒子の一部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0015]次に、本発明者に現在知られている本発明を実施する最良の形態を構成する、本発明の現在好ましい組成物、実施形態および方法に対して詳細に参照がなされる。図は必ずしも原寸に比例しない。しかし、開示された実施形態は、さまざまなかつ代替の形態で具現化され得る本発明の単なる例示であることを理解されたい。したがって、本明細書において開示された特有の詳細は、限定として解釈されるものではなく、本発明のあらゆる態様のための代表的な基礎および/または当業者に本発明をさまざまに使用することを教示するための代表的な基礎として解釈されるものである。
【0015】
[0016]例の場合を除き、または別途明示的に示される場合、反応および/または使用の材料または状態の量を示す本明細書におけるすべての数量は、本発明の最も広い範囲を説明する上で単語「約」によって変更されるように理解されるものである。記載された数値限界内での実施が、通常好ましい。また、その逆が明示的に記載されない限り、「の一部」および割合の値は、重量によるものであり、用語「重合体」は、「オリゴマー」、「共重合体」、「三元重合体」などを含み、本発明に関連する所与の目的に適するまたは好ましいものとしての材料の群または等級の説明は、その群または等級の部材の任意の2つまたはそれ以上の混合物が、同等に適切である、または好ましいことを含意し、任意の重合体に与えられる分子量は、数平均分子量を指し、化学的用語の構成物質の説明は、説明において明記された任意の組合せへの付加時における構成物質を指し、必ずしも、混合された後の混合物の構成物質中の化学相互作用を除外せず、頭字語または他の略語の第1の定義は、本明細書における同じ略語のすべてのその後の使用に適用し、また、最初に定義された略語の通常の文法的変形に準用し、その逆が明示的に記載されない限り、特性の測定は、同じ特性に対して先にまたはその後に参照される同じ技術によって決定される。
【0016】
[0017]また、本発明は、特有の構成要素および/または状態は当然ながら変動し得るため、以下で説明される特有の実施形態および方法に限定されないことも理解されよう。さらに、本明細書において使用される専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明する目的のみに使用され、いかなる方法においても限定することは意図されない。
【0017】
[0018]また、本明細書および付属の特許請求の範囲に使用されるとき、単数形「1つ」、「1つ」、および「その」は、その内容が別途明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。たとえば、単数での構成要素の参照は、複数の構成要素を含むことが意図される。
【0018】
[0019]本出願を通して、公表文献が参照される場合、これらの全体的な公表文献の開示は、本発明が関係する現況技術についてより完全に説明するために、参照によって本出願に組み込まれる。
【0019】
[0020]一実施形態では、接頭語「ナノ」は、説明された粒子が、約1ナノメートルから約100ナノメートルの少なくとも1つの空間寸法を有することを意味する。一変形形態では、接頭語「ナノ」は、説明された粒子が、約10ナノメートルから約80ナノメートルの少なくとも1つの空間寸法を有することを意味する。別の変形形態では、接頭語「ナノ」は、説明された粒子が、約20ナノメートルから約50ナノメートルの少なくとも1つの空間寸法を有することを意味する。
【0020】
[0021]
図1を参照すれば、複数の貴金属被覆された基板粒子を含む燃料電池が、提供される。燃料電池10は、アノード触媒層14と、カソード触媒層16と、イオン伝導膜(すなわち陽子交換膜)20とを含む膜電極接合体12を含む。アノード触媒層14、カソード触媒層16の1つまたは両方は、以下に記載されるように調製された複数の貴金属被覆された基板粒子を含む。陽子(すなわちイオン)伝導膜20は、アノード触媒層14とカソード触媒層16の間に配置され、このときアノード触媒層14は、陽子伝導膜20の第1の側を覆って配設され、カソード触媒層16は、陽子伝導膜20の第1の側を覆って配設される。燃料電池10はまた、多孔性気体拡散層22および24も含む。気体拡散層22は、アノード触媒層14を覆って配設され、一方で気体拡散層24は、カソード触媒層16を覆って配設される。さらに別の変形形態では、燃料電池10は、気体拡散層22を覆って配設されたアノード流動場板26と、気体拡散層24を覆って配設されたカソード流動場板28とを含む。作動中、水素は、燃料および酸素が酸化剤としてカソード触媒層16に供給されるときにアノード触媒層14に供給され、それによって、その中で電気化学プロセスの結果電力を生成する。
【0021】
[0022]
図2Aおよび2Bを参照すれば、
図1に記載されたように使用される被覆された基板粒子の一部分の概略図が提供される。
図2Aは、単一の接着層を用いて被覆された基板粒子の一部分の概略図を与える。被覆された基板粒子30は、基板粒子32を含み、任意選択で、中間層34で上方被覆される。中間層34は、被覆中、基板を保護するために基板粒子32を覆って配設される。一変形形態では、中間層34は、酸化物層または他の低価格安定層である。有用な酸化物層の例は、それだけに限定されないが、酸化アルミニウム(たとえばA1
20
3)、酸化ケイ素(たとえばSiO
2)、酸化チタン(たとえばTi0
2)、酸化ジルコニウム(たとえばZrO
2)、WO
x、TiC、Ti
yN、TiO
2ーzN
zなど(式中、xは2.5から3であり、yは0.7から1.1であり、zは0から0.5である)を含む。
【0022】
[0023]接着層36は、基板粒子32を覆って、または中間層34が存在する場合は中間層34を覆って配設される。接着層36は、タングステン合金層、酸化タングステン層(たとえばWO
x(式中、xは1.5から3.0である))、窒化タングステン層(たとえばW
0N(式中、oは0.5から2である))、および/または炭化タングステン層(たとえばW
pC(式中、pは1から2である))を含む。別の改良点では、接着層36は、たとえば36’/36”/36’の異種層に形成されよく、この場合36’はW金属層であり、36”は「格子遮断層」である。格子遮断層36”は、環境の変化に遭遇したときに成長し得る拡張された厚さによって接着層36に対する機械的応力を低減する。格子遮断層36”は、たとえばA1
20
3、Al、WO
x層などの金属層36’以外の任意の層になることができる。一改良点では、接着層36は、約0.5から約10ナノメートルの厚さを有する。別の改良点では、接着層36は、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する。さらに別の改良点では、接着層36は、約1から約4ナノメートルの厚さを有する。一改良点では、中間層34は、接着層36と接触する。一変形形態では、中間層34は、酸化金属層である。たとえば、中間層34は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、炭化チタン、窒化チタン、チタン酸窒化物、およびそれらの組合せを含む。
【0023】
[0024]通常、中間層34は、約0.5から10ナノメートルの厚さを有する。貴金属層40が、接着層36を覆って配設される。貴金属層40は、白金、金、パラジウム、イリジウム、およびそれらの合金、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される貴金属を含む。一改良点では、貴金属層40は、約0.5から約10ナノメートルの厚さを有する。別の改良点では、貴金属層40は、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する。さらに別の改良点では、貴金属層40は、約0.5から約3ナノメートルの厚さを有する。上記で記載された層の各々が、当業者に知られているいくつかの技術によって堆積され得ることを理解されたい。そのような堆積技術は、それだけに限定されないが、スパッタリング、化学気相堆積、原子層堆積、蒸発、化学分解などを含む。
【0024】
[0025]通常、被覆された基板は、複数の基板粒子を含む。基板粒子30は、いかなる方法においても本発明を限定することなく任意の数の形状を有することができる。そのような形状の例は、それだけに限定されないが、ナノロッド、ナノチューブ、ナノラフト、非導電性粒子、球状粒子などを含む。ナノロッド、ナノラフト、およびナノチューブは、約10ナノメートルから約100ナノメートルの少なくとも1つの空間寸法を有することによってそれぞれ特徴付けられる。一改良点では、基板粒子30は、10:1から25:1の長さ対幅の縦横比を有する粒子を含む。別の改良点では、基板粒子30は、13:1から20:1の長さ対幅の縦横比を有する粒子を含む。さらに別の改良点では、基板粒子30は、約15:1の長さ対幅の縦横比を有する粒子を含む。
【0025】
[0026]別の実施形態では、触媒層を形成するためのインク組成物が提供される。通常、インク組成物は、イオン伝導膜または気体拡散層上に被覆され、乾燥させそれによって上記で記載されたアノードおよび/またはカソード触媒層を形成する。インク組成物は、溶媒系と、溶媒系内に分散されたイオン伝導重合体と、溶媒系内に分散された担持された触媒とを含む。担持された触媒は、上記で記載されたような複数の被覆された基板粒子を含む。被覆された基板粒子の量は、通常、インク組成物の全重量の0.1から20重量パーセントの間である。別の改良点では、被覆された基板粒子の量は、通常、インク組成物の全重量の0.1から10重量パーセントの間である。さらに別の改良点では、被覆された基板粒子の量は、通常、インク組成物の全重量の0.5から5重量パーセントの間である。一般的な溶媒系は、それだけに限定されないが、水、C
1−4アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなど)を含む。通常、溶媒は、インク組成物の全重量の約30から99重量パーセントの量で存在する。別の改良点では、溶媒系は、インク組成物の全重量の約40から98.9重量パーセントの量で存在する。一改良点では、イオン伝導重合体は、通常、−SO
2X、−PO
3H
2、−COXおよびその組合せ(式中Xは−OH、ハロゲン、またはエステルである)などの陽子基を含む。適切なイオン伝導重合体の例は、それだけに限定されないが、ペルフルオロスルホン酸重合体(PFSA)、炭化水素ベースのイオノマー、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン重合体、パーフルオロシクロブタン重合体およびそれらの組合せを含む。一変形形態では、イオン伝導層は、インク組成物の全重量の1から20重量パーセントの量で存在する。陽子基の少なくとも一部分が、オニウム化合物の形成によって中和されることを理解されたい。市販のNAFION(登録商標)重合体は、イオン伝導重合体の特に有用な例である。
【0026】
[0027]以下の例は、本発明のさまざまな実施形態を示す。当業者は、本発明の趣旨および特許請求の範囲に入る数多くの変形形態を認識するであろう。
【0027】
[0028]3M NSTF(商標)(ナノ構造化された薄膜)担体が、基板として使用される。NSTF担体は、有機化合物(たとえばペリレン赤染料)の自己集合体から作製された高配向のラフト形状の基板である。約15のその高い長さ対幅の縦横比は、いかなる金属で被覆されることも非常に難しくする。これは、白金などの高表面エネルギー金属であればさらにより難しい。走査電子顕微鏡法は、NSTF担体を従来のスパッタリング方法を用いて白金で被覆するのに関連付けられた問題を示す。スパッタリングの見通し特性により、白金のほとんどは、上部に堆積されたが、少しだけ底部に堆積された。これは、異種触媒用途に対する白金の無駄な使用である。
【0028】
[0029]タングステン(W)を接着層として用いて白金の均一な薄膜を基板の幅広い範囲に被覆する能力を実証するために、タングステンの14サイクルがNSTF試料上に堆積され、A1
2O
3の1サイクル、次いで原子層堆積(ALD)を用いたWの14サイクルが堆積される。A1
2O
3層は、W格子の連続性を破り、故にW接着層の化学的および機械的特性を高めるために堆積される。この例では、水およびSi
2H
6が、反応剤として使用されてA1
2O
3およびWをそれぞれ堆積する。これは、約3nm厚さのW/A1
2O
3/W接着層を与える。中間層34は、必要とされないが使用されてよい。白金が、次いで、水素プラズマ(120℃、100ワットで、Me CpPtMe
3前駆体からの白金ALDの150サイクル)を用いて結果として生じた層上に堆積される。これは、約3nm厚さの均一な白金薄膜を与える。本発明者の以前の作業結果では、1.5nmの連続的な均一な薄膜が、W接着層上に実証された(Appl.Phys.Lett.101、111601(2012年))。走査電子顕微鏡法は、白金およびW薄膜のコーティングが、従来の方法とは対照的にNSTFの長さにわたって非常に均一であることを示す。同様に、調製された白金/W−ALD/NSTF試料の要素対照の電子エネルギー損失分光法マッピングは、良好な均一性を確認する。
【0029】
[0030]白金の均一の薄膜は、最初にNO
2をsp
2炭素表面上に吸収させることを可能にすることによって炭素担体上に被覆され、次いで、A1
2O
3が均一に被覆され得る。透過電子顕微鏡法が、A1
2O3が炭素ナノチューブ上に被覆されたことを確認する。引き続いて、接着層および白金層が、この層上に、上記で説明されたものと同様のやり方で均一に堆積され得る。炭素ナノチューブがここでは実証されたが、任意の炭素基板が使用されてよい。
【0030】
[0031]例示的な実施形態が上記で説明されたが、これらの実施形態は、本発明のすべての可能な形態を説明することは意図されない。そうではなく、本明細書において使用される単語は、限定ではなく説明の単語であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更がなされ得ることが理解される。加えて、さまざまに実施する実施形態の特徴が、本発明の別の実施形態を形成するために組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0031】
10 燃料電池
12 膜電極接合体
14 アノード触媒層
16 カソード触媒層
20 イオン伝導膜
22、24 多孔性気体拡散層
26 アノード流動場板
28 カソード流動場板
30 被覆された基板粒子
32 基板粒子
34 中間層
36 接着層
36’ W金属層
36” 格子遮断層
40 貴金属層
【手続補正書】
【提出日】2015年2月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、参照によってその開示全体が本明細書に組み込まれる、2013年12月13日出願の米国仮特許出願第61/915,731号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
[0002]少なくとも1つの態様では、本発明は、燃料電池用途に使用される触媒層に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]燃料電池は、多くの用途において電力源として使用される。特に、燃料電池は、自動車において内燃機関に置き代わるために使用することが提案される。一般的に使用される燃料電池設計は、固体重合体電解質(「SPE」)膜または陽子交換膜(「PEM」)を使用してアノードとカソードの間のイオン輸送をもたらす。
【0004】
[0004]陽子交換膜タイプの燃料電池では、水素が燃料としてアノードに供給され、酸素が酸化剤としてカソードに供給される。酸素は、その物質だけ(0
2)または空気(0
2とN
2の混合物)になることができる。PEM燃料電池は、通常、固体重合体膜が、1つの面上のアノード触媒と、反対側の面上のカソード触媒とを有する膜電極接合体(「MEA」)を有する。一般的なPEM燃料電池のアノードおよびカソード層は、織られた黒鉛、黒鉛化シートまたは炭素紙などの多孔性伝導材料から形成されて、燃料および酸化剤が、燃料供給電極および酸化剤供給電極それぞれに面する面の表面にわたって分散することを可能にする。各々の電極は、炭素粒子上に担持された細かく分割された触媒粒子(たとえば白金粒子)を有して、アノードにおける水素の酸化およびカソードにおける酸素の還元を促進する。陽子は、アノードからイオン伝導性重合体膜を通ってカソードに流れ、ここではこれらは、酸素と組み合わさって水を形成し、水は電池から排出される。MEAは、多孔性気体拡散層(「GDL」)の対間に挟まれ、この多孔性気体拡散層は、さらに、非多孔性の導電要素または導電板の対間に挟まれる。この板は、アノードおよびカソードのための電流コレクタとして機能し、その中に形成された、燃料電池の気体状の反応剤をそれぞれのアノードおよびカソードの触媒の表面にわたって分散するための適切な通路および開口部を含む。電気を効率的に生成するために、PEM燃料電池の重合体電解質膜は、薄く、化学的安定性、陽子透過性、非導電性、および気体不透過性でなければならない。一般的な用途では、燃料電池は、高レベルの電力を提供するために、積み重ねられて配置された多くの個々の燃料電池の配列で提供される。燃料電池に使用される触媒層は、ある程度良好に作用するが、改良された燃料電池触媒層に対する必要性が存在する。
【0005】
[0005]カーボンブラックおよび炭素ナノチューブは、その優れた導電性、良好な機械的および化学的安定性、ならびに低価格により好ましい担体である。触媒層は、通常、白金および/または白金合金を使用し、これらは、表面領域を強化することによって全体的動作を改良するために、非常に細かいナノ粒子にされる。しかし、炭素の不活性表面は、金属が取り付くことを非常に難しくする。炭素表面上の白金の核生成は、難易度が高く、その結果、大きい白金粒子サイズ、ならびに粒子の移動および凝集を生じさせることが証明されている。さらに、白金の高い表面エネルギーは、薄く円滑な表面を被覆することを非常に難しくする。走査電子顕微鏡法は、平滑な一様な層を形成せずに凝集するこれらの従来技術の被覆の傾向を示す。白金と炭素表面の間の不十分な相互作用は、核生成し、均一な薄膜を形成するのを難しくする。特に、不十分な核生成および層成長により、比較的大きい、最小層の厚さが、電気伝導を確実にするために必要とされる。
【0006】
[0006]市販されているナノ構造化された薄膜(NSTF)触媒は、Ptを自己集合したペリレン赤染料担体上でスパッタリングすることによって作製される。担体は、非導電性であるため、電子は、ptの被覆された連続層を通って輸送しなければならない。他方では、この触媒タイプは、担体の平滑なpt表面および優れた安定性により、従来の炭素担持されたptナノ粒子より耐久性がある。従来技術のスパッタされた薄膜の一部は、スパッタリングプロセスの見通し性質により、非均一であることが観察される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.101、111601(2012年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0007]したがって、燃料電池触媒材料を形成するための改良された材料に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0008]本発明は、少なくとも1つの実施形態において、燃料電池触媒層を形成するための被覆された基板を提供することによって従来技術の1つまたは複数の問題を解決する。被覆された基板は、複数の基板粒子を含む。接着層が各々の基板粒子を覆って配設され、貴金属層が接着層を覆って配設される。接着層は、タングステン金属層、タングステン合金層、W0
x層、W
xN層、またはW
xC層を含む。特徴的には、被覆された基板は、カソードおよび/またはアノード触媒層に使用される触媒粒子を提供するなどの燃料電池用途で使用される。有利には、本発明は、従来の分散された担持された触媒よりも高い動作性および耐久性を有する触媒を提供する。さらに、本方法は乾燥方法であるため、触媒処理価格は、低減され、化学/貴金属の廃棄が最小限に抑えられる。
【0010】
[0009]別の改良点では、燃料電池触媒層を形成するための被覆された基板が提供される。被覆された基板は、複数の基板粒子を含む。基板粒子は、約20nmから1ミクロンの平均的な空間寸法と、10を上回る長さ対幅の縦横比とを有する。被覆された基板はまた、各々の基板粒子を覆って配設された接着層と、接着層を覆って配設された貴金属層とを含む。接着層は、タングステン金属、タングステン合金、酸化タングステン、窒化タングステン、および炭化タングステンからなる群から選択された成分を含む。
【0011】
[0010]別の実施形態では、被覆された基板を形成するための方法が提供される。方法は、接着層を複数の基板粒子の各々の粒子上に堆積するステップを含む。貴金属層が、次いで、接着層上に堆積されて貴金属被覆された基板を形成する。貴金属被覆された基板は、次いで、燃料電池触媒層に組み込まれる。
【0012】
[0011]本発明の例示的な実施形態は、詳細な説明および添付の図からより完全に理解されるであろう。
【0013】
本発明の第1の態様は、複数の基板粒子と、各々の基板粒子を覆って配設された接着層と、前記接着層を覆って配設された貴金属層とを備え、前記接着層が、タングステン金属、タングステン合金、酸化タングステン、窒化タングステン、および炭化タングステンからなる群から選択される成分を含む、被覆された基板である。
【0014】
第2の態様は、前記基板粒子が、約20nmから1ミクロンの平均空間寸法を有する。
【0015】
第3の態様は、前記複数の基板粒子が、炭素粉末、炭素ナノロッド、非導電性粒子、炭素ナノチューブ、およびそれらの組合せを含む。
第4の態様は、前記基板粒子が、10:1から25:1の長さ対幅の縦横比を有する。
【0016】
第5の態様は、前記基板粒子が、13:1から20:1の長さ対幅の縦横比を有する。
【0017】
第6の態様は、前記基板粒子が、約15:1の長さ対幅の縦横比を有する。
【0018】
第7の態様は、前記貴金属が、白金、金、パラジウム、イリジウム、およびそれらの合金、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0019】
第8の態様は、前記接着層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する。
【0020】
第9の態様は、前記貴金属層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する。
【0021】
第10の態様は、前記基板と前記接着層の間に配置された中間層をさらに含む。
【0022】
第11の態様は、前記中間層が、約0.5から10ナノメートルの厚さを有する。
第12の態様は、前記中間層が、金属酸化物層である。
第13の態様は、前記中間層が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、炭化チタン、窒化チタン、チタン酸窒化物、およびそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む。
第14の態様は、約20nmから1ミクロンの平均空間寸法と、10を上回る平均の長さ対幅の縦横比とを有する複数の基板粒子と、前記基板粒子を覆って配設された接着層と、前記接着層を覆って配設された貴金属層とを備え、前記接着層が、タングステン金属、タングステン合金、酸化タングステン、窒化タングステン、および炭化タングステンからなる群から選択される成分を含む。
第15の態様は、前記複数の基板粒子が、炭素粉末、炭素ナノロッド、非導電性粒子、炭素ナノチューブ、およびそれらの組合せを含む。
第16の態様は、前記長さ対幅の縦横比が、10:1から25:1である。
第17の態様は、前記貴金属が、白金、金、パラジウム、イリジウム、およびそれらの合金、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される。
第18の態様は、前記接着層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有し、前記貴金属層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する。
第19の態様は、前記基板と前記接着層の間に配置された金属酸化物中間層をさらに含む。
第20の態様は、前記中間層が、約0.5から10ナノメートルの厚さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】[0012]複数の貴金属被覆された基板粒子を含む燃料電池の断面図である。
【
図2】[0013]
図2Aは、被覆された基板粒子の一部分の概略断面図である。 [0014]
図2Bは、被覆された基板粒子の一部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0015]次に、本発明者に現在知られている本発明を実施する最良の形態を構成する、本発明の現在好ましい組成物、実施形態および方法に対して詳細に参照がなされる。図は必ずしも原寸に比例しない。しかし、開示された実施形態は、さまざまなかつ代替の形態で具現化され得る本発明の単なる例示であることを理解されたい。したがって、本明細書において開示された特有の詳細は、限定として解釈されるものではなく、本発明のあらゆる態様のための代表的な基礎および/または当業者に本発明をさまざまに使用することを教示するための代表的な基礎として解釈されるものである。
【0025】
[0016]例の場合を除き、または別途明示的に示される場合、反応および/または使用の材料または状態の量を示す本明細書におけるすべての数量は、本発明の最も広い範囲を説明する上で単語「約」によって変更されるように理解されるものである。記載された数値限界内での実施が、通常好ましい。また、その逆が明示的に記載されない限り、「の一部」および割合の値は、重量によるものであり、用語「重合体」は、「オリゴマー」、「共重合体」、「三元重合体」などを含み、本発明に関連する所与の目的に適するまたは好ましいものとしての材料の群または等級の説明は、その群または等級の部材の任意の2つまたはそれ以上の混合物が、同等に適切である、または好ましいことを含意し、任意の重合体に与えられる分子量は、数平均分子量を指し、化学的用語の構成物質の説明は、説明において明記された任意の組合せへの付加時における構成物質を指し、必ずしも、混合された後の混合物の構成物質中の化学相互作用を除外せず、頭字語または他の略語の第1の定義は、本明細書における同じ略語のすべてのその後の使用に適用し、また、最初に定義された略語の通常の文法的変形に準用し、その逆が明示的に記載されない限り、特性の測定は、同じ特性に対して先にまたはその後に参照される同じ技術によって決定される。
【0026】
[0017]また、本発明は、特有の構成要素および/または状態は当然ながら変動し得るため、以下で説明される特有の実施形態および方法に限定されないことも理解されよう。さらに、本明細書において使用される専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明する目的のみに使用され、いかなる方法においても限定することは意図されない。
【0027】
[0018]また、本明細書および付属の特許請求の範囲に使用されるとき、単数形「1つ」、「1つ」、および「その」は、その内容が別途明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。たとえば、単数での構成要素の参照は、複数の構成要素を含むことが意図される。
【0028】
[0019]本出願を通して、公表文献が参照される場合、これらの全体的な公表文献の開示は、本発明が関係する現況技術についてより完全に説明するために、参照によって本出願に組み込まれる。
【0029】
[0020]一実施形態では、接頭語「ナノ」は、説明された粒子が、約1ナノメートルから約100ナノメートルの少なくとも1つの空間寸法を有することを意味する。一変形形態では、接頭語「ナノ」は、説明された粒子が、約10ナノメートルから約80ナノメートルの少なくとも1つの空間寸法を有することを意味する。別の変形形態では、接頭語「ナノ」は、説明された粒子が、約20ナノメートルから約50ナノメートルの少なくとも1つの空間寸法を有することを意味する。
【0030】
[0021]
図1を参照すれば、複数の貴金属被覆された基板粒子を含む燃料電池が、提供される。燃料電池10は、アノード触媒層14と、カソード触媒層16と、イオン伝導膜(すなわち陽子交換膜)20とを含む膜電極接合体12を含む。アノード触媒層14、カソード触媒層16の1つまたは両方は、以下に記載されるように調製された複数の貴金属被覆された基板粒子を含む。陽子(すなわちイオン)伝導膜20は、アノード触媒層14とカソード触媒層16の間に配置され、このときアノード触媒層14は、陽子伝導膜20の第1の側を覆って配設され、カソード触媒層16は、陽子伝導膜20の第1の側を覆って配設される。燃料電池10はまた、多孔性気体拡散層22および24も含む。気体拡散層22は、アノード触媒層14を覆って配設され、一方で気体拡散層24は、カソード触媒層16を覆って配設される。さらに別の変形形態では、燃料電池10は、気体拡散層22を覆って配設されたアノード流動場板26と、気体拡散層24を覆って配設されたカソード流動場板28とを含む。作動中、水素は、燃料および酸素が酸化剤としてカソード触媒層16に供給されるときにアノード触媒層14に供給され、それによって、その中で電気化学プロセスの結果電力を生成する。
【0031】
[0022]
図2Aおよび2Bを参照すれば、
図1に記載されたように使用される被覆された基板粒子の一部分の概略図が提供される。
図2Aは、単一の接着層を用いて被覆された基板粒子の一部分の概略図を与える。被覆された基板粒子30は、基板粒子32を含み、任意選択で、中間層34で上方被覆される。中間層34は、被覆中、基板を保護するために基板粒子32を覆って配設される。一変形形態では、中間層34は、酸化物層または他の低価格安定層である。有用な酸化物層の例は、それだけに限定されないが、酸化アルミニウム(たとえばA1
20
3)、酸化ケイ素(たとえばSiO
2)、酸化チタン(たとえばTi0
2)、酸化ジルコニウム(たとえばZrO
2)、WO
x、TiC、Ti
yN、TiO
2ーzN
zなど(式中、xは2.5から3であり、yは0.7から1.1であり、zは0から0.5である)を含む。
【0032】
[0023]接着層36は、基板粒子32を覆って、または中間層34が存在する場合は中間層34を覆って配設される。接着層36は、タングステン合金層、酸化タングステン層(たとえばWO
x(式中、xは1.5から3.0である))、窒化タングステン層(たとえばW
0N(式中、oは0.5から2である))、および/または炭化タングステン層(たとえばW
pC(式中、pは1から2である))を含む。別の改良点では、接着層36は、たとえば36’/36”/36’の異種層に形成されよく、この場合36’はW金属層であり、36”は「格子遮断層」である。格子遮断層36”は、環境の変化に遭遇したときに成長し得る拡張された厚さによって接着層36に対する機械的応力を低減する。格子遮断層36”は、たとえばA1
20
3、Al、WO
x層などの金属層36’以外の任意の層になることができる。一改良点では、接着層36は、約0.5から約10ナノメートルの厚さを有する。別の改良点では、接着層36は、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する。さらに別の改良点では、接着層36は、約1から約4ナノメートルの厚さを有する。一改良点では、中間層34は、接着層36と接触する。一変形形態では、中間層34は、酸化金属層である。たとえば、中間層34は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、炭化チタン、窒化チタン、チタン酸窒化物、およびそれらの組合せを含む。
【0033】
[0024]通常、中間層34は、約0.5から10ナノメートルの厚さを有する。貴金属層40が、接着層36を覆って配設される。貴金属層40は、白金、金、パラジウム、イリジウム、およびそれらの合金、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される貴金属を含む。一改良点では、貴金属層40は、約0.5から約10ナノメートルの厚さを有する。別の改良点では、貴金属層40は、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する。さらに別の改良点では、貴金属層40は、約0.5から約3ナノメートルの厚さを有する。上記で記載された層の各々が、当業者に知られているいくつかの技術によって堆積され得ることを理解されたい。そのような堆積技術は、それだけに限定されないが、スパッタリング、化学気相堆積、原子層堆積、蒸発、化学分解などを含む。
【0034】
[0025]通常、被覆された基板は、複数の基板粒子を含む。基板粒子30は、いかなる方法においても本発明を限定することなく任意の数の形状を有することができる。そのような形状の例は、それだけに限定されないが、ナノロッド、ナノチューブ、ナノラフト、非導電性粒子、球状粒子などを含む。ナノロッド、ナノラフト、およびナノチューブは、約10ナノメートルから約100ナノメートルの少なくとも1つの空間寸法を有することによってそれぞれ特徴付けられる。一改良点では、基板粒子30は、10:1から25:1の長さ対幅の縦横比を有する粒子を含む。別の改良点では、基板粒子30は、13:1から20:1の長さ対幅の縦横比を有する粒子を含む。さらに別の改良点では、基板粒子30は、約15:1の長さ対幅の縦横比を有する粒子を含む。
【0035】
[0026]別の実施形態では、触媒層を形成するためのインク組成物が提供される。通常、インク組成物は、イオン伝導膜または気体拡散層上に被覆され、乾燥させそれによって上記で記載されたアノードおよび/またはカソード触媒層を形成する。インク組成物は、溶媒系と、溶媒系内に分散されたイオン伝導重合体と、溶媒系内に分散された担持された触媒とを含む。担持された触媒は、上記で記載されたような複数の被覆された基板粒子を含む。被覆された基板粒子の量は、通常、インク組成物の全重量の0.1から20重量パーセントの間である。別の改良点では、被覆された基板粒子の量は、通常、インク組成物の全重量の0.1から10重量パーセントの間である。さらに別の改良点では、被覆された基板粒子の量は、通常、インク組成物の全重量の0.5から5重量パーセントの間である。一般的な溶媒系は、それだけに限定されないが、水、C
1−4アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなど)を含む。通常、溶媒は、インク組成物の全重量の約30から99重量パーセントの量で存在する。別の改良点では、溶媒系は、インク組成物の全重量の約40から98.9重量パーセントの量で存在する。一改良点では、イオン伝導重合体は、通常、−SO
2X、−PO
3H
2、−COXおよびその組合せ(式中Xは−OH、ハロゲン、またはエステルである)などの陽子基を含む。適切なイオン伝導重合体の例は、それだけに限定されないが、ペルフルオロスルホン酸重合体(PFSA)、炭化水素ベースのイオノマー、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン重合体、パーフルオロシクロブタン重合体およびそれらの組合せを含む。一変形形態では、イオン伝導層は、インク組成物の全重量の1から20重量パーセントの量で存在する。陽子基の少なくとも一部分が、オニウム化合物の形成によって中和されることを理解されたい。市販のNAFION(登録商標)重合体は、イオン伝導重合体の特に有用な例である。
【0036】
[0027]以下の例は、本発明のさまざまな実施形態を示す。当業者は、本発明の趣旨および特許請求の範囲に入る数多くの変形形態を認識するであろう。
【0037】
[0028]3M NSTF(商標)(ナノ構造化された薄膜)担体が、基板として使用される。NSTF担体は、有機化合物(たとえばペリレン赤染料)の自己集合体から作製された高配向のラフト形状の基板である。約15のその高い長さ対幅の縦横比は、いかなる金属で被覆されることも非常に難しくする。これは、白金などの高表面エネルギー金属であればさらにより難しい。走査電子顕微鏡法は、NSTF担体を従来のスパッタリング方法を用いて白金で被覆するのに関連付けられた問題を示す。スパッタリングの見通し特性により、白金のほとんどは、上部に堆積されたが、少しだけ底部に堆積された。これは、異種触媒用途に対する白金の無駄な使用である。
【0038】
[0029]タングステン(W)を接着層として用いて白金の均一な薄膜を基板の幅広い範囲に被覆する能力を実証するために、タングステンの14サイクルがNSTF試料上に堆積され、A1
2O
3の1サイクル、次いで原子層堆積(ALD)を用いたWの14サイクルが堆積される。A1
2O
3層は、W格子の連続性を破り、故にW接着層の化学的および機械的特性を高めるために堆積される。この例では、水およびSi
2H
6が、反応剤として使用されてA1
2O
3およびWをそれぞれ堆積する。これは、約3nm厚さのW/A1
2O
3/W接着層を与える。中間層34は、必要とされないが使用されてよい。白金が、次いで、水素プラズマ(120℃、100ワットで、Me CpPtMe
3前駆体からの白金ALDの150サイクル)を用いて結果として生じた層上に堆積される。これは、約3nm厚さの均一な白金薄膜を与える。本発明者の以前の作業結果では、1.5nmの連続的な均一な薄膜が、W接着層上に実証された(Appl.Phys.Lett.101、111601(2012年))。走査電子顕微鏡法は、白金およびW薄膜のコーティングが、従来の方法とは対照的にNSTFの長さにわたって非常に均一であることを示す。同様に、調製された白金/W−ALD/NSTF試料の要素対照の電子エネルギー損失分光法マッピングは、良好な均一性を確認する。
【0039】
[0030]白金の均一の薄膜は、最初にNO
2をsp
2炭素表面上に吸収させることを可能にすることによって炭素担体上に被覆され、次いで、A1
2O
3が均一に被覆され得る。透過電子顕微鏡法が、A1
2O3が炭素ナノチューブ上に被覆されたことを確認する。引き続いて、接着層および白金層が、この層上に、上記で説明されたものと同様のやり方で均一に堆積され得る。炭素ナノチューブがここでは実証されたが、任意の炭素基板が使用されてよい。
【0040】
[0031]例示的な実施形態が上記で説明されたが、これらの実施形態は、本発明のすべての可能な形態を説明することは意図されない。そうではなく、本明細書において使用される単語は、限定ではなく説明の単語であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更がなされ得ることが理解される。加えて、さまざまに実施する実施形態の特徴が、本発明の別の実施形態を形成するために組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0041】
10 燃料電池
12 膜電極接合体
14 アノード触媒層
16 カソード触媒層
20 イオン伝導膜
22、24 多孔性気体拡散層
26 アノード流動場板
28 カソード流動場板
30 被覆された基板粒子
32 基板粒子
34 中間層
36 接着層
36’ W金属層
36” 格子遮断層
40 貴金属層
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板粒子と、
各々の基板粒子を覆って配設された接着層と、
前記接着層を覆って配設された貴金属層とを備え、前記接着層が、タングステン金属、タングステン合金、酸化タングステン、窒化タングステン、および炭化タングステンからなる群から選択される成分を含む、被覆された基板。
【請求項2】
前記基板粒子が、約20nmから1ミクロンの平均空間寸法を有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項3】
前記複数の基板粒子が、炭素粉末、炭素ナノロッド、非導電性粒子、炭素ナノチューブ、およびそれらの組合せを含む、請求項2に記載の被覆された基板。
【請求項4】
前記基板粒子が、10:1から25:1の長さ対幅の縦横比を有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項5】
前記基板粒子が、13:1から20:1の長さ対幅の縦横比を有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項6】
前記基板粒子が、約15:1の長さ対幅の縦横比を有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項7】
前記貴金属が、白金、金、パラジウム、イリジウム、およびそれらの合金、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項8】
前記接着層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項9】
前記貴金属層が、約0.5から約5ナノメートルの厚さを有する、請求項1に記載の被覆された基板。
【請求項10】
前記基板と前記接着層の間に配置された中間層をさらに含む、請求項1に記載の被覆された基板。
【外国語明細書】