【解決手段】粘着テープDTの貼り付けられたリングフレームfの中央に半導体基板Wと同形状の封止シートを貼り付けた後に、減圧室30内のヒータ32の埋設された保持テーブル23に半導体基板Wを載置するとともに、当該保持テーブル23の周りに配備されたフレーム支持部25にリングフレームfを載置し、半導体基板Wと粘着テープDTを対向させる。この状態で減圧室30内を減圧して真空状態にした後に、保持テーブル23に埋設されたヒータ32および押圧部材31に埋設されたヒータ33によって封止シートを加熱しながら押圧部材31で当該封止シートを加圧して半導体基板Wに貼り付ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来方法では次のような問題が生じている。
【0005】
すなわち、近年、アプリケーションの急速な進歩に伴う高密度実装の要求により、半導体装置が小型化される傾向にある。したがって、ダイシング処理によって半導体ウエハを半導体素子に分断した後に、半導体素子を個々に樹脂で封止しているので、スループットが低下し、ひいては生産効率を低下させるといった不都合が生じている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、半導体基板に封止シートを効率よく、かつ、精度よく貼り付けることのできる封止シート貼付け方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者たちは、当該不都合を解決するために、実験やシミュレーションを繰り返して鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0008】
半導体基板の全面に樹脂組成物からなる封止層の形成された枚葉の封止シートを貼り付けて硬化させた後に、当該半導体装置に分断することを試みた。
【0009】
しかしながら、ダイシング処理によって分断されたチップに比べて大面積の半導体基板と同形状の封止シートを当該半導体基板に貼り付ける当該方法の場合、封止シート自体が厚みおよび剛性を有している。その結果、貼付け過程で封止シートと半導体基板との接着界面に気泡が巻き込まれやすく、封止層内にボイドが発生する。特に、封止シートを貼り付けた後に、加熱よって封止層の重合反応を促進させて本硬化させる場合、気泡が膨張して半導体装置が不良品になるといった問題が新たに発生した。
【0010】
また、減圧室内を真空状態にして封止シートを半導体基板に加熱しながら貼り付けたにも関わらず、接着界面に気泡が巻き込まれていた。
【0011】
当該原因を究明すべく実験を繰り返した結果、貼付け処理を連続的に繰り返した場合に頻繁に生じることが判明した。すなわち、保持テーブル上の半導体基板に樹脂シートを載置したまま減圧室の減圧を開始すると、室内が真空状態に達するまでに保持テーブルの余熱または輻射熱の影響で封止層が軟化して気泡を巻き込むことが分かった。
【0012】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0013】
すなわち、半導体装置を製造する過程で樹脂組成物からなる封止層の形成された封止シートを半導体基板に貼り付ける封止シート貼付け方法であって、
粘着テープの貼り付けられたリングフレームの中央に前記半導体基板と同形状の封止シートを貼り付ける第1貼付け過程と、
減圧室内のヒータの埋設された保持テーブルに前記半導体基板を載置するとともに、当該保持テーブルの周りに配備された支持部材に前記リングフレームを載置し、半導体基板と粘着テープを対向させる載置過程と、
前記減圧室内を減圧して真空状態する減圧過程と、
真空状態の前記減圧室内でヒータによって封止シートを加熱しながら加圧部材で加圧して半導体基板に貼り付ける第2貼付け過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
(作用・効果) 上記方法によれば、減圧室内が真空状態に達するまで、半導体基板と封止シートが対向している。すなわち、半導体基板と封止シートは、非接触状態が保たれている。したがって、真空状態に達するまでに封止層が保持テーブルの熱によって軟化するのを抑制させるとともに、半導体基板に封止シートが接触するのを回避させる。その結果、封止シートと半導体基板の接着界面からエアーが完全に排出されるので、当該接着界面に気泡が巻き込まれるのを回避することができ、ひいては半導体装置の不良率を低減させることができる。
【0015】
なお、上記方法において、載置過程で進退可能な支持部材によってリングフレームを載置保持し、
第2貼付け過程で加圧部材の昇降によって封止シートに付与される荷重に応じて前記支持部材を昇降させることが好ましい。
【0016】
この方法によれば、加圧部材の昇降に支持部材が追従するので、封止シートに略均一な荷重を付与することができる。
【0017】
また、上記方法において、加圧部材にヒータを備え、
第2貼付け過程は、保持テーブルと加圧部材によって封止シートを加熱させてもよい。
【0018】
この方法によれば、加熱部材と保持テーブルとによって挟み込まれた封止シートに熱を効率よく伝達させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の封止シート貼付け方法によれば、リングフレームに接着保持された封止シートを半導体基板に精度よく貼り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。表面に複数個の半導体素子が形成された半導体基板に、樹脂組成物からなる封止層の形成された封止シートを貼り付ける場合を例に取って説明する。
【0022】
<封止シート>
封止シートTは、例えば、
図1に示すように、半導体基板W(以下、単に「基板W」という)と同形状のもが利用される。また、当該封止シートTは、封止層Mの両面に保護用の第1剥離ライナS1および第2剥離ライナS2が添設されている。第1剥離ライナS1および第2剥離ライナS2は、同形状または矩形で、かつ、基板Wと同サイズ以上のもが利用される。
【0023】
封止層Mは、封止材料からシート形状に形成されている。封止材料としては、例えば、熱硬化性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、などの熱硬化性樹脂が挙げられる。また、封止材料として、上記した熱硬化性樹脂と、添加剤を適宜の割合で含有する熱硬化性樹脂組成物を挙げることもできる。
【0024】
添加剤としては、例えば、充填剤、蛍光体などが挙げられる。充填剤としては、例えば、シリカ、チタニア、タルク、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機微粒子、例えば、シリコーン粒子、などの有機微粒子などが挙げられる。蛍光体は、波長変換機能を有しており、例えば、青色光を黄色光に変換することのできる黄色蛍光体、青色光を赤色光に変化することのできる赤色蛍光体などを挙げることができる。黄色蛍光体としては、例えば、Y
3Al
5O
12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)などのガーネット型蛍光体が挙げられる。赤色蛍光体としては、例えば、CaAlSiN
3:Eu、CaSiN
2:Euなどの窒化物蛍光体などが挙げられる。
【0025】
封止層Mは、半導体素子を封止する前において、半固形状に調整されており、具体的には、封止材料が熱硬化性樹脂を含有する場合には、例えば、完全硬化(Cステージ化)する前、つまり、半硬化(Bステージ)状態で調整されている。
【0026】
封止層Mの寸法は、半導体素子および基板の寸法に応じて適宜に設定されている。具体的には、封止シートが長尺のシートとして用意される場合における封止層Mの左右方向における長さ、つまり、幅は、例えば、100mm以上、好ましくは、200mm以上であり、例えば、1500mm以下、好ましくは、700mm以下である。また、封止層Mの厚みは、半導体素子に寸法に対応して適宜に設定され、例えば、30μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、3000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
【0027】
第1剥離ライナS1および第2剥離ライナS2は、例えば、ポリエチレンシート、ポリエステルシート(PETなど)、ポリスチレンシート、ポリカーボネートシート、ポリイミドシートなどのポリマーシート、例えば、セラミックシート、例えば、金属箔などが挙げられる。剥離ライナにおいて、封止層Mと接触する接触面には、フッ素処理などの離型処理を施すこともできる。第1剥離ライナおよび第2剥離ライナの寸法は、剥離条件に応じて適宜に設定され、厚みが、例えば、15μm以上、好ましくは、25μm以上であり、また、例えば、125μm以下、好ましくは、75μm以下である。
【0028】
<封止シート貼付け方法>
粘着テープを介してリングフレームの中央に封止シートを貼り付けた後に、当該封止シートを基板に貼り付ける一巡の動作を
図2のフローチャートおよび
図3から
図14に基づいて説明する。
【0029】
先ず、搬送機構1の吸着リング2が、ストッカ18に積層収納されているリングフレームfを上から吸着保持した後に封止シート供給部へと移動する(ステップS1A)。
図3に示すように、搬送機構1は、中央の吸着プレート3の底面がリングフレームfより低い位置なるように下降させ、積層されている封止シートTを吸着保持する(ステップS2A)。その後、搬送機構1は、吸着プレート3を上昇させて封止シートTの底面とリングフレームfの底面を同じ高さにし、封止シートTとリングフレームfを保持したまま第1貼付け工程へと移動する。
【0030】
第1貼付け工程では、
図4および
図5に示すように、テープ供給部4の原反ロールから繰り出される粘着テープDT(ダイシングテープ)が、剥離ローラ5、ガイドローラおよび剥離ユニット6を介して適度のテンションが付与された状態でテープ回収部7まで巻きかけられている。当該粘着テープDTは、剥離ローラ5によって表面のセパレータSが剥離された状態で貼付け位置に供給される。剥離ローラ8で剥離されたセパレータSは、セパレータ回収部9によって巻き取り回収される。貼付け位置に達した搬送機構1は、所定の高さまで下降し、リングフレームfと封止シートTを粘着テープDTに近接対向させる。
【0031】
粘着テープDTの下方に配備されている貼付けユニット10が、
図6に示すように、粘着テープDTの送り方向に沿って水平移動する。このとき、貼付けユニット10に備わった粘着テープDTよりも幅よりも長い貼付けローラ11が、所定の高さまで上昇しているので、当該貼付けローラ11によって粘着テープDTが押圧され、リングフレームfと封止シートTとにわたって貼り付けられてゆく(ステップS3A)。
【0032】
貼付けユニット10が、終端位置に達すると、粘着テープDTの下方に配備された切断ユニット12が、
図7に示すように、所定高さまで上昇する。切断ユニット12は、アーム13の先端にホルダを介して刃先を上向きにしたカッタ14を備えている。切断ユニット12は、カッタ14の先端を粘着テープDTに突き刺した状態で、リングフレームfの形状に沿って旋回しながら粘着テープDTを切断する。このとき、他のアーム15に装着されたローラ16が、カッタ14の後方から追従する。つまり、ローラ16は、切断された粘着テープDTの浮き上がり部位を押圧してリングフレームfに貼り付ける。
【0033】
粘着テープDTの切断が完了すると、切断ユニット12は、下方の待機位置へと移動する。同時に、剥離ユニット6が粘着テープDTにニップを解除し、当該剥離ユニット6および貼付けユニット10が、
図8に示すように、貼り付け開始位置側へと水平移動する。このとき、リングフレームfの形状に切り抜かれた粘着テープDTが、剥離ローラ17によって当該リングフレームfから剥離されるとともに、テープ回収部4に巻き取り回収されてゆく。その後、剥離ユニット6は、初期位置へと戻る。このとき、剥離ユニット6の移動に伴ってテープ供給部4から所定長さの粘着テープDTが繰り出される。
【0034】
粘着テープDTを介してリングフレームに保持された封止シートTは、搬送機構1によって第2貼付け工程へと搬送される。この搬送過程で、リングフレームfは、他の搬送機構19の吸着プレートに受け渡され、
図9に示すように、上下反転させられる。
【0035】
搬送機構19によって搬送される過程で、剥離ユニットの剥離ローラ24によって剥離テープTsが、第1剥離ライナS1の端部に貼り付けられた後、搬送機構19を水平移動させることにより、剥離ローラ24が転動しながら剥離テープTsを第1剥離ライナS1に貼り付けるとともに、当該剥離テープTsを巻き上げることにより当該第1剥離ライナS1を封止層Mから剥離してゆく(ステップS4A)。
【0036】
他方、昇降可能なカセット台に載置されたカセットCに所定間隔をおいて多段に収納されている基板Wが、ベルヌーイチャック20によって表面を非接触で懸垂保持される。ベルヌーイチャック20は、
図10に示すように、カセットCから取り出した基板Wをアライナ21の保持面中央から突出する吸着パッド22に受け渡す(ステップS1B)。アライナ21は、基板Wに形成されたノッチなどに基づいて位置合わせをする(ステップS2B)。その後、基板Wは、再度ベルヌーイチャック20によってアライナ21から保持テーブル23に搬送および載置される(ステップS3B)。
【0037】
図11に示すように、保持テーブル23の周りを囲燒する環状のフレーム支持部25が配備されている。フレーム支持部25は、弾性体であるバネ26によって昇降可能な複数本の支持ピン27によって上向きに弾性付勢されている。したがって、フレーム支持部25にリングフレームfを載置したとき、封止シートTの底面が、保持テーブル23に載置された基板Wの表面の高さよりも高くなるよう設定されている。フレーム支持部25の高さは、使用する封止シートTの厚さおよび基板Wの厚さに応じて適宜に設定される。なお、フレーム支持部25は、本発明の支持部材に相当する。
【0038】
したがって、
図12に示すように、保持テーブル23に基板Wが載置保持された後に、搬送機構19によって、リングフレームfがフレーム支持部25に載置される(ステップS5)。
【0039】
保持テーブル23とフレーム支持部25を収納している下ハウジング30Aに向けて上方で待機していた上ハウジング30Bが所定高さまで下降する。上下ハウジング30A、30Bの上端と下端とが突き合わされて減圧室30が形成される(ステップS6)。その後、減圧室30の内部が真空に達するまで減圧してゆく(ステップS7)。
【0040】
チャンバ2の内部が真空状態に達すると、
図13に示すように、上ハウジング30B内でシリンダ29によって昇降可能な押圧部材31を下降させて封止シートTに当接させる。このとき、上ハウジング30B内で押圧部材31および保持テーブル23に備わったヒータ32、33を作動させて封止シートTを加熱する(ステップS8)。加熱により封止シートTが軟化を開始するのに伴って、
図14に示すように、さらに押圧部材31を所定高さまで下降させて封止シートTを押圧し、封止シートTを基板Wの表面に貼り付ける(ステップS9)。
【0041】
加熱および加圧処理が所定時間に達すると、ヒータ32、33の作動を停止させる。また、押圧部材31を上昇させて封止シートTの加圧を解除する(ステップS10)。さらに、減圧室30の内部の気圧を徐々に上げて大気状態に戻す。
【0042】
その後、減圧室30の内部が大気状態に達した時点で、上ハウジング30Bを上昇させた後に、基板Wが封止シートTに貼り付けられて成るマウントフレームをロボットアームなどの搬送機構によって保持して次の工程に搬送またはカセットに収納する(ステップS11)。以上で一連の動作が終了する。その後、所定の処理枚数に達するまで、この一連の処理が繰り返される(ステップS12)。なお、ステップS3Aが、本発明の第1貼付け過程に、ステップS6−ステップS8が本発明の第2貼付け過程に相当する。
【0043】
上述の封止シート貼付け方法によれば、減圧室30が真空状態に達するまで、封止シートTと基板Wが、互いに離間した状態を保っているので、保持テーブル23の熱の伝達が遮断されるとともに、保持テーブル23からの輻射熱の影響で封止層Mが軟化するのを抑制される。したがって、封止シートTを貼り付けるまでに封止シートTと基板Wの接着界面に気泡が巻き込まれるのを回避することができる。したがって、封止シートTを貼り付けた後に、封止シートTを完全に硬化させる本硬化処理を行っても、封止層Mにボイドが発生して製品不良を招くことがない。
【0044】
なお、本発明は以下のような形態で実施することもできる。
【0045】
(1)上記各実施例において、保持テーブル23と押圧部材31のいずれか一方にヒータを備えた構成であってもよい。
【0046】
(2)上記実施例では、円形の基板Wを例にとって説明したが、基板形状は、正方形、長方形または多角形であってもよい。
【0047】
(3)上記実施例において、フレーム支持部25の支持ピン27をシリンダなどのアクチュエータを利用し、押圧部材31の昇降に同期させて昇降させてもよい。
【0048】
(4)上記実施例において、基板Wを搬送する搬送機構は、先端が馬蹄形で吸着機能を有するロボットアームを利用してもよい。ロボットアームを利用する場合、基板Wの裏面をロボットアームで吸着保持して搬送すればよい。また、保持テーブル23は、アライナ21と同様に、保持面の中央から出退する吸着バッドを備え、当該吸着バッドがフレーム支持部25よりも高い位置で基板Wを受け取るように構成すればよい。
【0049】
(5)上記実施例において、封止シートTから第1剥離ライナS1を剥離した状態で粘着テープDTに貼り付けてもよい。
【0050】
(6)上記実施例において、第1貼付け工程において、テープ供給部4およびテープ回収部9などの各構成を上下反転させ、リングフレームfと封止シートTの裏面側から粘着テープDTを貼り付けるよう構成してもよい。