【解決手段】遅延同期ループ回路は、コントロール電圧に応じて、入力クロックに位相同期し、入力クロックに対して、1周期に相当する時間だけ遅延された出力クロックを出力する電圧制御遅延ラインを備えるものであって、同じ大きさの各々の出力負荷を各々対応する出力クロックに接続するか、もしくは、各々の出力負荷を各々対応する出力クロックに接続しない負荷接続部と、ロックタイムに相当する時間以上の時間が経過した後に、コントロール電圧が、あらかじめ設定された基準電圧よりも大きい場合には、アクティブ状態の接続制御信号を出力する接続制御部とを備える。負荷接続部は、接続制御信号がアクティブ状態である場合に、各々の出力負荷を各々対応する出力クロックに接続する。
コントロール電圧に応じて、入力クロックに位相同期し、前記入力クロックに対して、1周期に相当する時間だけ遅延された出力クロックを出力する電圧制御遅延ラインを備える遅延同期ループ回路であって、
同じ大きさの各々の出力負荷を各々対応する出力クロックに接続するか、もしくは、前記各々の出力負荷を前記各々対応する出力クロックに接続しない負荷接続部と、
ロックタイムに相当する時間以上の時間が経過した後に、前記コントロール電圧が、あらかじめ設定された基準電圧よりも大きい場合には、アクティブ状態の接続制御信号を出力するように制御する接続制御部とを備え、
前記負荷接続部は、前記接続制御信号がアクティブ状態である場合に、前記各々の出力負荷を前記各々対応する出力クロックに接続するものであることを特徴とする遅延同期ループ回路。
前記接続制御部は、前記コントロール電圧が、前記あらかじめ設定された基準電圧よりも大きい場合に、前記アクティブ状態の接続制御信号が1回だけ出力されるように制御するものである請求項1に記載の遅延同期ループ回路。
前記基準電圧発生回路は、前記基準電圧として、(電源電圧−NMOSおよびPMOSの製造プロセスがファーストおよびファーストに振れたときのMOSの閾値電圧)を発生するものである請求項3に記載の遅延同期ループ回路。
前記基準電圧発生回路は、前記基準電圧として、製造プロセスがティピカルで、かつ、温度が常温の時のコントロール電圧に相当する電圧を発生するものである請求項3に記載の遅延同期ループ回路。
【背景技術】
【0002】
代表的なDLL回路として、非特許文献1に開示された構成のものがある。
図4は、非特許文献1に開示されたDLL回路の構成を表す一例のブロック図である。同図に示すDLL回路10は、位相比較器(PD)12と、チャージポンプ(CP)14と、ループフィルタ(LF)16と、電圧制御遅延ライン(VCDL)18とによって構成されている。
【0003】
DLL回路10では、位相比較器12により、入力クロックCLKINと、電圧制御遅延ライン18から出力されるフィードバッククロックFBCLKとの間の位相差が検出され、両者の位相差が一致するようにアップ信号(U)およびダウン信号(D)が出力される。
【0004】
その結果、フィードバッククロックFBCLKの位相が入力クロックCLKINの位相よりも早い場合、ダウン信号に応じて、チャージポンプ14により、ループフィルタ16を構成する容量素子がディスチャージされ、コントロール電圧VCONTが低下される。
一方、フィードバッククロックFBCLKの位相が入力クロックCLKINの位相よりも遅い場合、アップ信号に応じて、チャージポンプ16により、前述の容量素子がチャージアップされ、コントロール電圧VCONTが上昇される。
【0005】
続いて、電圧制御遅延ライン18により、入力クロックCLKINに対して、コントロール電圧VCONTに応じた遅延時間だけ遅延された出力クロックCLKOUTが出力される。出力クロックCLKOUTは、コントロール電圧VCONTが低下すると、遅延時間が短くなり、コントロール電圧VCONTが上昇すると、遅延時間が長くなる。そして、出力クロックCLKOUTがフィードバッククロックFBCLKとして、位相比較器12にフィードバックされる。
【0006】
以後同様にして、入力クロックCLKINと、遅延時間が変更されたフィードバッククロックFBCLKとの間の位相差が検出され、これに応じて、コントロール電圧VCONTが変化して、フィードバッククロックFBCLKの遅延時間が変更されることが繰り返し行われることにより、入力クロックCLKINとフィードバッククロックFBCLKとの間の位相がロックされる。その結果、電圧制御遅延ライン18からは、入力クロックCLKINに対して位相同期し、入力クロックに対して、1周期に相当する時間だけ遅延された出力クロックCLKOUTが出力される。
【0007】
続いて、電圧制御遅延ライン18について説明する。
【0008】
図5は、
図4に示す電圧制御遅延ラインの構成を表す一例の回路図である。同図に示す電圧制御遅延ライン18は、直列に接続された複数段の遅延セル(差動インバータ)22と、遅延セル22のレプリカ回路24と、アンプ26とによって構成されている。
【0009】
初段の遅延セル22は、負荷抵抗となる4つのPMOS(P型MOSトランジスタ)28,30,32,34と、入力クロックCLKIN_Pおよび反転入力クロックCLKIN_N(以下、まとめて入力クロックCLKINともいう)の入力用の2つのNMOS(N型MOSトランジスタ)36,38と、テール電流源となるNMOS40とによって構成されている。
【0010】
2つのPMOS28,30は、電源VDDと、内部ノードAとの間に並列に接続され、同様に、2つのPMOS32,34は、電源VDDと、内部ノードBとの間に並列に接続されている。PMOS28のゲートは、PMOS28のドレインに接続され、PMOS34のゲートは、PMOS34のドレインに接続されている。また、PMOS30,32のゲートには、コントロール電圧VCONTが入力されている。
NMOS36は、内部ノードAと、内部ノードCとの間に接続され、そのゲートには、入力クロックCLKIN_Pが入力されている。同様に、NMOS38は、内部ノードBと、内部ノードCとの間に接続され、そのゲートには、反転入力クロックCLKIN_Nが入力されている。
NMOS40は、内部ノードCと、グランドGNDとの間に接続され、そのゲートには、アンプ26の出力信号が入力されている。
そして、内部ノードAから、出力クロックCLKOUT_P_1が出力され、内部ノードBから、反転出力クロックCLKOUT_N_1が出力されている。
【0011】
2段目の遅延セル22は、初段の遅延セル22の入力クロックCLKIN_Pおよび反転入力クロックCLKIN_Nの代わりに、初段の遅延セル22の出力クロックCLKOUT_P_1および反転出力クロックCLKOUT_N_1(以下、まとめて出力クロックCLKOUTともいう)が入力され、出力クロックCLKOUT_P_1および反転出力クロックCLKOUT_N_1の代わりに、出力クロックCLKOUT_P_2および反転出力クロックCLKOUT_N_2が出力される点を除いて、初段(前段)の遅延セル22と同じ構成のものである。3段目以降の遅延セル22も同様である。
【0012】
レプリカ回路24は、負荷抵抗の2つのPMOS28,30に相当する2つのPMOS42,44と、入力クロックCLKIN_Pの入力用のNMOS36に相当するNMOS46と、テール電流源のNMOS40に相当するNMOS48とによって構成されている。
【0013】
2つのPMOS42,44は、電源VDDと、内部ノードAに相当する内部ノードA’との間に並列に接続されている。PMOS42のゲートは、PMOS42のドレインに接続され、PMOS44のゲートには、コントロール電圧VCONTが入力されている。
NMOS46は、内部ノードA’と、内部ノードCに相当する内部ノードC’との間に接続され、そのゲートは、電源VDDに接続されている。
NMOS48は、内部ノードC’と、グランドGNDとの間に接続され、そのゲートには、アンプ26の出力信号が入力されている。
【0014】
アンプ26の入力端子+には、コントロール電圧VCONTが入力され、入力端子−には、内部ノードA’の信号が入力されている。
【0015】
電圧制御遅延ライン18において、アンプ26からは、コントロール電圧VCONTと、内部ノードA’の信号の電圧とが等しくなるように、NMOS48に流れる電流量を制御する出力信号が出力される。
【0016】
レプリカ回路24の2つのPMOS42,44は、コントロール電圧VCONTに応じて負荷抵抗(オン抵抗)が変化する。
レプリカ回路24では、アンプ26の出力信号に応じて、NMOS48のオン状態が制御され、電源VDDから、負荷抵抗の2つのPMOS42,44、オン状態のNMOS46、および、オン状態が制御されるNMOS48を介してグランドGNDへ流れる電流量が変化し、内部ノードA’の信号の電圧が、コントロール電圧VCONTに相当する電圧となるように制御される。
【0017】
遅延セル22は、レプリカ回路24と同じ構成であり、NMOS40のゲートには、レプリカ回路24のNMOS48のゲートに入力されるアンプ26の出力信号が入力されている。そのため、遅延セル22はレプリカ回路24と同じように動作し、2つのNMOS36,38のうちのオン状態のNMOSのドレイン側の内部ノードの信号がコントロール電圧VCONTとなるように制御される。
【0018】
初段の遅延セル22では、入力クロックCLKIN_PがL(ローレベル)からH(ハイレベル)、つまり、反転入力クロックCLKIN_NがHからLに変化すると、NMOS36がオフ状態からオン状態、NMOS38がオン状態からオフ状態となり、出力クロックCLKOUT_P_1がHからL、反転出力クロックCLKOUT_N_1がLからHに変化する。
一方、入力クロックCLKIN_PがHからL、つまり、反転入力クロックCLKIN_NがLからHに変化する場合は、上記の逆の動作となる。
この時、出力クロックCLKOUT_P_1および反転出力クロックCLKOUT_N_1は、入力クロックCLKIN_Pおよび反転入力クロックCLKIN_Nに対して、コントロール電圧VCONTに応じて変化したPMOS28,30,32,34の負荷抵抗、および、出力クロックCLKOUT_P_1および反転出力クロックCLKOUT_N_1の出力負荷に対応する遅延時間tだけ遅延される。
【0019】
2段目以降の遅延セル22も同様に動作する。従って、2段目の遅延セル22から出力される出力クロックCLKOUTは、初段の遅延セル22の出力クロックCLKOUTに対して遅延時間tだけ遅延される。つまり、出力クロックCLKOUT_P_2および反転出力クロックCLKOUT_N_2は、入力クロックCLKINに対して遅延時間2tだけ遅延される。3段目以降の遅延セル22から出力される出力クロックCLKOUTも同様である。
その結果、電圧制御遅延ライン18からは、入力クロックCLKINに対して、遅延時間t×遅延セル22の段数に相当する時間、つまり、1周期に相当する時間だけ遅延された出力クロックCLKOUTが出力される。
【0020】
例えば、最終段の遅延セル22から出力される出力クロックCLKOUTがフィードバッククロックFBCLKとして、位相比較器12にフィードバックされる。
その結果、コントロール電圧VCONTが上昇すると、PMOS28,30,32,34の負荷抵抗が大きくなるため、遅延時間tは長くなり、逆に、コントロール電圧VCONTが低下すると、PMOS28,30,32,34の負荷抵抗が小さくなるため、遅延時間tは短くなる。
【0021】
従来のDLL回路10では、PVT(P:製造プロセス、V:電源電圧、T:温度)条件や、入力クロックCLKINの周波数等によって、入力クロックCLKINに対する出力クロックCLKOUTの遅延時間、つまり、コントロール電圧VCONTが大きく変化するという問題がある。
【0022】
図6は、
図5に示す電圧制御遅延ラインが遅延セル14段構成の場合の、遅延セル1段当たりの、コントロール電圧と出力クロックの遅延時間との関係を表す一例のグラフである。このグラフの横軸は、コントロール電圧VCONT、縦軸は、出力クロックCLKOUTの遅延時間を表す。
【0023】
同図のグラフにおいて、例えば、ss_−40の条件の曲線は、製造プロセスが「ss」で、温度が「−40℃」の条件における曲線であることを表す。他の曲線も同様である。プロセス条件の「ss」は、NMOS(N型MOSトランジスタ)およびPMOS(P型MOSトランジスタ)の製造プロセスがスローおよびスローであることを表す。また、プロセス条件の「ff」は、NMOSおよびPMOSの製造プロセスがファーストおよびファーストであることを表す。他のプロセス条件も同様である。
【0024】
また、同図のグラフにおいて、Spec_160Mを表す左右方向の線は、遅延セル14段構成の電圧制御遅延ライン18において、周波数が160MHzの時の入力クロックCLKINの1周期に相当する遅延時間が形成される場合に、遅延セル一段当たりに必要な遅延時間を表す。つまり、Spec_160Mを表す左右方向の線と、各々の条件の曲線とが交わる点は、各曲線の条件で、入力クロックCLKINの周波数が160MHzの場合に、出力クロックCLKOUTが、入力クロックCLKINに対して、1周期分に相当する時間だけ遅延される時のコントロール電圧VCONTを表す。Spec_14.2Mの場合も同様である。
同図のグラフにおいて、Spec_14.2Mの直線とSpec_160Mの直線との間に挟まれた領域における各曲線のX座標の値が、コントロール電圧VCONTがとり得る範囲の値である。同図のグラフの場合、コントロール電圧VCONTは、約0.4V≦コントロール電圧VCONT≦約1.08Vの範囲の値をとり得る。
【0025】
このように、PVT条件や、入力クロックの周波数を変化させた場合のコントロール電圧VCONTの振れ幅が大きいと、遅延セル22のDC動作点を確保することが難しくなる。
例えば、
図6のグラフの中では最もコントロール電圧VCONTが大きくなるff_125の条件で、コントロール電圧VCONTは最大の1.08Vとなるが、電源電圧は1.2Vであるから、このコントロール電圧VCONTでは、遅延セル22を構成する負荷抵抗のPMOS28,30,32,34がサブスレッショルド領域で動作する。この場合、製造バラツキや電源ノイズによって、PMOS28,30,32,34を流れる電流量が指数関数的に大きく変動し、ジッタの悪化や、電圧制御遅延ライン18を構成する各遅延セル22の遅延時間がばらつくため、各遅延セル22の出力を取り出して、多相クロックとして活用する場合に大きな問題となる。このため、正確な遅延時間の出力クロックCLKOUTを得ることができなくなる。
【0026】
これに対し、ff_125の条件で、コントロール電圧VCONTが1.08Vまで上昇するのを避けるために、例えば、各遅延セルの出力に負荷容量を接続することが考えられる。
しかし、遅延セル22の出力に負荷容量を接続すると、例えば、
図6のグラフの中では最もコントロール電圧VCONTが小さくなるss_−40の条件の場合に、コントロール電圧VCONTが低下し過ぎるため、飽和領域で動作させなければならない遅延セル22のテール電流源であるNMOS40が線形領域に陥る。
【0027】
図7(A)および(B)は、それぞれ、遅延セルの出力に負荷容量を接続した場合の、コントロール電圧と遅延セル一段の遅延時間との関係を表す一例のグラフである。
同図(A)のグラフは、電圧制御遅延ライン18が遅延セル22の14段構成の場合において、遅延セル22一段あたりについて、ff_125の条件、1.2Vの電源電圧、14.2MHz〜160MHzの範囲の周波数の入力クロックCLKINで、かつ、遅延セル22の出力に接続する負荷容量の値を変更して動作させた場合の、コントロール電圧VCONTと出力クロックCLKOUTの遅延時間との関係を表す。
【0028】
同図(A)のグラフに示すように、ff_125の条件の場合、遅延セル22の出力に接続する負荷容量の値を大きくするに従って、コントロール電圧VCONTが大きく低下されることが分かる。
一方、同図(B)は、DLL回路10を、ss_−40の条件、1.2Vの電源電圧、14.2MHz〜160MHzの範囲の周波数の入力クロックで、かつ、遅延セル22の出力に接続する負荷容量の値を変更して動作させた場合の、コントロール電圧VCONTと出力クロックCLKOUTの遅延時間との関係を表す。
同図(B)のグラフに示すように、ss_−40の条件の場合、遅延セル22の出力に接続する負荷容量の値を大きくするに従って、コントロール電圧VCONTが低下し過ぎて、テール電流源を構成するNMOS48、及びNMOS40のDC動作点が飽和領域から外れてしまう。
【0029】
このように、遅延セル22の出力に単純に負荷容量を接続しただけでは、入力クロックCLKINの全周波数条件、全PVT条件で、遅延セル22のDC動作点を適切に設定することはできない。
【0030】
また、本発明に関連性のある先行技術文献として、特許文献1がある。
【0031】
特許文献1には、DLL回路を構成する可変遅延セルから出力される、システムクロックを遅延させた補償クロックの遅延量をモニタするためのディレイモニタ回路のプリドライバ部において、遅延量を変えるための複数のキャパシタ、および、キャパシタと補償クロックとを接続するための複数のスイッチを設け、制御信号でスイッチのオンオフを随時制御して、キャパシタを接続ないし非接続として遅延量を変える構成が記載されている。
しかし、特許文献1の構成では、複数のキャパシタの接続を切り替えるために、DLL回路の外部から入力される複雑な制御信号を必要とするという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の遅延同期ループ回路を詳細に説明する。
【0044】
図1は、本発明のDLL回路の構成を表す一実施形態のブロック図である。同図に示す本実施形態のDLL回路50は、
図4に示す従来のDLL回路10において、さらに、負荷接続部52と、接続制御部54とを備えるものである。
つまり、DLL回路50は、位相比較器(PD)12と、チャージポンプ(CP)14と、ループフィルタ(LF)16と、電圧制御遅延ライン(VCDL)18と、負荷接続部52と、接続制御部54とを備えている。
本実施形態のDLL回路50では、従来のDLL回路10と同じ構成要素に同じ符号を付けて、その繰り返しの説明を省略する。
【0045】
負荷接続部52は、後述する接続制御信号に応じて、同じ大きさの各々の出力負荷を各々対応する出力クロックCLKOUTに接続するか、もしくは、各々の出力負荷を各々対応する出力クロックCLKOUTに接続しないものである。
負荷接続部52は、接続制御信号がアクティブ状態である場合に、各々の出力負荷を各々対応する出力クロックCLKOUTに接続する。
【0046】
接続制御部54は、DLL回路50のロックタイムに相当する時間以上の時間が経過した後に、コントロール電圧VCONTが、あらかじめ設定された基準電圧VREFよりも大きい場合には、アクティブ状態の接続制御信号を出力するように制御するものである。
本実施形態の接続制御部54は、コントロール電圧VCONTが、あらかじめ設定された基準電圧VREFよりも大きい場合に、アクティブ状態の接続制御信号が1回だけ出力されるように制御する。
【0047】
ここで、出力負荷を出力クロックCLKOUTに接続する目的は、負荷抵抗のPMOS28,30,32,34がサブスレッショルド領域に陥るのを防ぐように、あるいは、サブスレッショルド領域で動作するとしても、可能な限りゲート−ソース間の電圧Vgsを大きくすることができるようにすることである。
図6に示す例の場合、ff以外の製造プロセスでは、コントロール電圧VCONTはあまり上昇しないので、ff時の製造プロセスのコントロール電圧VCONTに注目しておけば十分である。
【0048】
そこで、基準電圧VREF=(電源電圧−製造プロセスがffに振れたときのPMOSの閾値電圧Vth)に設定することが考えられる。
この場合、例えば、電源電圧が1.2V、製造プロセスがffの時のPMOS28,30,32,34の閾値電圧Vthが0.3Vであるとすると、基準電圧VREF=1.2V−0.3V=0.9Vとなる。
あるいは、基準電圧VREFを、標準条件、つまり、製造プロセスがティピカルで、かつ、温度が常温の時のコントロール電圧VCONTに相当する電圧に設定することが考えられる。
【0049】
なお、コントロール電圧VCONTのとり得る最小値が低下されない限り、コントロール電圧VCONTがとり得る範囲内で、基準電圧VREFをどこに設定してもよい。
【0050】
次に、
図2は、
図1に示す電圧制御遅延ライン、負荷接続部および接続制御部の構成を表す一例の回路図である。
同図に示すように、本実施形態の負荷接続部52は、各々の出力負荷として、同じ容量値の各々の負荷容量56と、各々の負荷容量56と各々対応する出力クロックCLKOUTとの間に接続され、接続制御信号Tgate_Nおよび反転接続制御信号Tgate_Pがアクティブ状態であるHおよびLの場合にオンして、各々の負荷容量56を各々対応する出力クロックCLKOUTに接続する各々のスイッチ58とを備えている。
負荷容量56の容量値は、レイアウト面積や、コントロール電圧VCONTをどの程度低下させたいのか等に応じて決定することができる。
【0051】
初段の遅延セル22に対応する負荷接続部52は、負荷容量56として、2つの容量素子60,62と、スイッチ58として、2つのトランスファゲート64,66とを備えている。
トランスファゲート64および容量素子60は、出力クロックCLKOUT_P_1とグランドGNDとの間に直列に接続されている。同様に、トランスファゲート66および容量素子62は、反転出力クロックCLKOUT_N_1とグランドGNDとの間に直列に接続されている。
トランスファゲート64,66を構成するPMOSおよびNMOSのゲートには、それぞれ、接続制御信号Tgate_Nおよび反転接続制御信号Tgate_Pが入力されている。
2段目以降の遅延セル22に対応する負荷接続部52も同様である。
【0052】
続いて、本実施形態の接続制御部54は、基準電圧発生回路68と、比較回路70と、カウンタ72と、比較結果保持回路74と、インバータ76とを備えている。
【0053】
基準電圧発生回路68は、あらかじめ設定された所定の基準電圧VREFを発生するものである。本実施形態の基準電圧発生回路68は、電源VDDとグランドGNDとの間の電圧を、電源VDDとグランドGNDとの間に直列に接続された複数の抵抗素子で抵抗分割して基準電圧VREFを発生する。
【0054】
比較回路70は、コントロール電圧VCONTと基準電圧VREFとを比較した比較結果を出力するものである。
【0055】
カウンタ72は、入力クロックCLKINを分周した分周クロックDIVCLKに同期して、ロックタイムに相当する時間以上の時間をカウントした後に保持信号Count_outを出力するものである。
ロックタイムは、例えば、シミュレーション等により算出することができるため、分周クロックDIVCLKおよびロックタイムに応じて、ロックタイムに相当する時間以上の時間をカウントするカウンタ72を構成することができる。
なお、分周クロックDIVCLKの代わりに、入力クロックCLKINを使用してもよいが、分周クロックDIVCLKを使用することにより、カウンタ72の回路規模を削減することができる。
【0056】
比較結果保持回路74は、保持信号Count_outに同期して、比較結果を保持して接続制御信号Tgate_Nとして出力するものである。
インバータ76は、接続制御信号Tgate_Nを反転した反転接続制御信号Tgate_Pを出力するものである。
【0057】
以下、DLL回路50の動作を説明する。
【0058】
図示を省略しているが、接続制御部54では、例えば、パワーオンリセット等により、カウンタ72および比較結果保持回路74がリセットされる。
これにより、保持信号Count_outはL、接続制御信号Tgate_NはL、つまり、反転接続制御信号Tgate_PはHに初期化される。また、負荷接続部52の全てのトランスファゲート64,66(スイッチ58)はオフ状態となる。
【0059】
リセットの解除後、カウンタ72により、分周クロックDIVCLKに同期して、ロックタイムに相当する時間以上の時間がカウントされた後、LからHに1回だけ変化する保持信号Count_outが出力される。
一方、比較回路70により、DLL回路50がロックされた後のコントロール電圧VCONTと基準電圧VREFとが比較され、その比較結果が出力される。本実施形態の比較回路70は、コントロール電圧VCONTが基準電圧VREFよりも大きい場合に、比較結果としてHを出力する。
【0060】
続いて、比較結果保持回路74により、保持信号Count_outの立ち上がりに同期して、比較結果が保持され、接続制御信号Tgate_Nとして出力される。また、インバータ76により、接続制御信号Tgate_Nが反転され、反転接続制御信号Tgate_Pとして出力される。
【0061】
コントロール電圧VCONTが基準電圧VREFよりも大きい場合、接続制御信号Tgate_NがH、反転接続制御信号Tgate_PがLになり、負荷接続部52では、全てのトランスファゲート64,66がオン状態となる。これにより、各々の容量素子60が各々対応する出力クロックCLKOUT_Pに接続され、各々の容量素子62が各々対応する反転出力クロックCLKOUT_Nに接続される。
容量素子60,62が出力クロックCLKOUTに接続されると、出力クロックCLKOUTの遅延時間が変化する。遅延時間が変化した出力クロックCLKOUTは、フィードバッククロックFBCLKとして、位相比較器12にフィードバックされて、コントロール電圧VCONTが低くなる方向に変更される。そして、変更されたコントロール電圧VCONTに応じて、出力クロックCLKOUTの遅延時間が再び変更される。
【0062】
一方、コントロール電圧VCONTが基準電圧VREF以下の場合、接続制御信号Tgate_NがL、つまり、反転接続制御信号Tgate_PがHとなり、負荷接続部52では、全てのトランスファゲート64,66がオフ状態となる。これにより、各々の容量素子60は各々対応する出力クロックCLKOUT_Pに接続されず、各々の容量素子62は各々対応する反転出力クロックCLKOUT_Nに接続されない。
【0063】
例えば、電源電圧が1.2Vの場合、基準電圧VREFを0.9Vに設定すると、
図6に示す中で最もコントロール電圧VCONTが大きくなるff_125の条件で、コントロール電圧VCONTが最大の約1.08Vとなる曲線の場合に、コントロール電圧VCONTが基準電圧VREFよりも大きくなり、比較結果はHとなる。その結果、
図3(A)に示すように、接続制御信号Tgate_NがH、反転接続制御信号Tgate_PがLとなり、各々の負荷容量56が各々対応する出力クロックCLKOUTに接続される。
なお、
図3には、対比が容易となるように、負荷容量56が出力クロックCLKOUTに接続された場合と、接続されていない場合のコントロール電圧VCONTの変化が示されている。
これにより、コントロール電圧VCONTがあらかじめ設定された基準電圧VREFよりも大きくなる条件で製造されたDLL回路において、コントロール電圧VCONTが低下され、負荷抵抗のPMOS28,30,32,34がサブスレッショルド領域に陥るのを防ぐように、またはサブスレッショルド領域で動作するとしても、可能な限りゲート−ソース間の電圧Vgsを大きくすることができる。
【0064】
今回、本発明者が実施したシミュレーションでは、負荷容量56が出力クロックCLKOUTに接続された後も、負荷抵抗のPMOS28,30,32,34は、サブスレッショルド領域で動作していたが、ゲート−ソース間の電圧Vgsは80mV大きくなる方向に改善されていた。サブスレッショルド領域では、MOSの電流値は(Vgs−Vth)の指数関数で変化するため、ゲート−ソース間の電圧Vgsが80mV改善されただけでも、閾値電圧Vthのばらつきや、電源ノイズに大幅に強くなる。
【0065】
一方で、例えば、最もコントロール電圧VCONTが小さくなるss_−40の条件で、コントロール電圧VCONTが最小の約0.4Vとなる曲線の場合、コントロール電圧VCONTが基準電圧VREFよりも小さくなり、比較結果はLとなる。その結果、
図3(B)に示すように、接続制御信号Tgate_NがL、反転接続制御信号Tgate_PがHのまま変化せず、各々の負荷容量56は各々対応する出力クロックCLKOUTに接続されない。
これにより、コントロール電圧VCONTが基準電圧VREFよりも小さくなる条件で製造されたDLL回路において、コントロール電圧VCONTが不必要に低下されることはない。
【0066】
このように、負荷容量56の出力クロックCLKOUTへの接続/非接続を切り替えることにより、コントロール電圧VCONTがとり得る値の範囲を狭めることができるため、電圧制御遅延ライン18のDC動作点マージンの確保が容易となり、入力クロックの周波数レンジを拡大することができる。
【0067】
また、本実施形態の場合、保持信号Count_outは、リセットの解除後、LからHに1回だけ変化するか、変化しないため、容量素子の接続状態(接続ないし非接続)は固定される。
このように、リセットの解除後、保持信号Count_outが、LからHに1回だけしか変化しないように制限することにより、容量素子の接続状態が、DLL回路50の通常動作中に不本意に切り替わることを防ぐことができる。
【0068】
なお、DLL回路50、電圧制御遅延ライン18、負荷接続部52および接続制御部54の具体的な構成は何ら限定されず、同様の機能を果たす各種構成のものを利用することができる。
【0069】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。