特開2015-116057(P2015-116057A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015116057-サイリスタ式高圧自動電圧調整器 図000003
  • 特開2015116057-サイリスタ式高圧自動電圧調整器 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-116057(P2015-116057A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】サイリスタ式高圧自動電圧調整器
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20150526BHJP
【FI】
   H02J3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-256759(P2013-256759)
(22)【出願日】2013年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】苻川 謙治
(72)【発明者】
【氏名】梶田 寛
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊明
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA01
(57)【要約】
【課題】 サイリスタへのタップ位置切換信号線の本数を削減したサイリスタ式高圧自動電圧調整器を提供する。
【解決手段】 サイリスタのタップ位置切換信号をデジタル符号(バイナリコード)化することにより、サイリスタ制御・駆動部6と制御部7間の信号線の本数を削減した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切換えて前記電圧調整変圧器のタップを切換えるサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、前記制御装置は、自動電圧調整器本体側に位置するサイリスタ制御・駆動部と、自動電圧調整器に付属する制御部によって構成され、前記制御部は前記サイリスタ制御・駆動部に対して、タップの切換指令信号とデジタル符号化したタップ位置切換信号を出力し、前記サイリスタ制御・駆動部は、当該切換指令信号及びタップ位置切換信号をデコードして、切換対象のサイリスタに切換信号を出力するように構成したことを特徴とするサイリスタ式高圧自動電圧調整器。
【請求項2】
前記デジタル符号は、バイナリコードであることを特徴とする請求項1記載のサイリスタ式高圧自動電圧調整器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイリスタ式タップ切換器を備えた自動電圧調整器において、サイリスタへのタップ切換信号線の削減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの大量導入が進められている。また、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による電力供給不安から、国内の再生可能エネルギーへの転換の機運は更に高まってきた。
【0003】
一方で、再生可能エネルギーが配電系統に大量に連系されると、急激な電圧変動が発生する恐れがある。高圧配電系統では負荷時タップ切換変圧器や自動電圧調整器などで、適正電圧範囲内に収まるように制御されてはいるが、高圧配電系統への再生可能エネルギーの連系や家庭用太陽光発電等の大量導入に伴う急激な電圧変動への対応は難しい。
【0004】
そこで、近年、急激な電圧変動への対応を可能とし、電圧調整を高速かつ多頻度に行えるサイリスタ式の自動電圧調整器が注目されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−335119
【0006】
図2に上記特許文献1記載の自動電圧調整器(1相分)を示す。図2において、1は1次巻線1aと複数のタップT1〜T4を設けた2次巻線1bと3次巻線1cを有する電圧調整用の変圧器で、1次巻線1aはその一端が出力側端子L0に接続され、他端は図示しない他相の1次巻線1aの他端と共通接続されている。
【0007】
2は1次巻線2aと2次巻線2bを有する直列変圧器で、1次巻線2aは入力側端子Liと出力側端子Lo間に直列挿入されており、2次巻線2bは、無接点形のタップ切換器3を介して変圧器1の2次巻線1bのタップT1〜T4に接続されている。
【0008】
タップ切換器3は、変圧器1の2次巻線1bのタップT1〜T4に、一対のサイリスタを逆並列接続して形成したスイッチング素子Th1〜Th4の一端をそれぞれ接続し、他端を直列変圧器2の2次巻線2bの一端に共通接続してなるタップ切換部と、タップT1,T4とに一対のサイリスタを逆並列接続して形成したスイッチング素子Th5,Th6の一端をそれぞれ接続し、スイッチング素子Th5,Th6の他端を直列変圧器2の2次巻線2bの他端に共通接続してなる極性切換部と、直列変圧器2の2次巻線2bの両端に限流用抵抗R1を介して直列に挿入した一対のサイリスタを逆並列接続して形成したブリッジ用スイッチング素子Th7とから構成されている。
【0009】
そして、スイッチング素子Th1〜Th4のオンオフ制御によりタップT1〜T4を切換え、また、スイッチング素子Th5,Th6のオンオフ制御により直列変圧器2の2次巻線2bに印加する電圧の極性を切換え、さらに、スイッチング素子Th1〜Th4のオンオフ制御により2次巻線2bの両端をブリッジする。
【0010】
4は変圧器1の3次巻線1cに接続されて、積分動作形としてその動作電圧の不感帯を零又は極めて小さな範囲に設定した90リレーである。これは、出力電圧と調整目標電圧との電圧偏差を時間積分し、その積分値が判定値以上になったときタップ切換の指令を送出するものである。
【0011】
5は90リレー4に接続されて、タップ切換器3のスイッチング素子Th1〜Th4と極性切換用のスイッチング素子Th5,Th6及びブリッジ用のスイッチング素子Th7にゲート信号をそれぞれ送出するゲート制御回路である。
【0012】
このゲート制御回路5は、90リレー4の昇圧又は降圧指令により、現状のタップ位置からタップの昇圧又は降圧切換の制御信号を送出し、対応するスイッチング素子にゲート信号を送出することで、タップの切換動作を行うものである。
【0013】
以上のように構成した自動電圧調整器により配電線の線路電圧を調整する場合は、90リレー4が出力電圧と調整目標電圧との電圧偏差を時間積分し、この積分値が判定値以上になったら、タップ切換の昇圧指令又は降圧指令を送出する。
【0014】
これを受信したゲート制御回路5は、例えば、スイッチング素子Th3とTh5がオンしている状態で1タップ昇圧指令を受けた場合、タップ切換器3のスイッチング素子Th1〜Th6のゲート信号を全て停止してスイッチング素子Th1〜Th6をオフさせると共に、スイッチング素子Th7にゲート信号を送出してこれをオンさせ、直列変圧器2の2次巻線2bをブリッジする。
【0015】
次いで、現状のタップ位置(例えば、スイッチング素子Th3)より1タップ切換に対応するスイッチング素子(例えば、Th5とTh4)にゲート信号を送出してこれをオンさせると共に、スイッチング素子Th7のゲート信号を停止してこれをオフさせ、1タップ昇圧切換動作を終了する。
【0016】
このタップ切換動作により、切換接続されたタップの電圧が直列変圧器2の2次巻線2bに印加され、1次巻線2aに誘起した電圧が線路電圧に加えられて、線路電圧が目標電圧に調整される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図2に示す従来のサイリスタ式の自動電圧調整器は、ゲート制御回路5から各スイッチング素子Th1〜Th7にゲート信号を送出してこれをオンオフさせるので、ゲート制御回路5から各サイリスタTh1〜Th7への信号線の本数は、サイリスタTh1〜Th7の数(図2では7本)と同数必要となる。
【0018】
このように、多数(サイリスタの個数と同数)の信号線が必要となると、信号線の締付不良等、不具合が発生する可能性が高くなる。また、これ以上の信号線の増加が物理的に難しくなるので、機器の拡張性を阻害する要因ともなっており、信号線の本数は可能な限り削減することが望ましい。そこで、本発明は、タップ切換用のスイッチング素子への信号線の本数を極力削減し、機器の信頼性向上と拡張性の担保を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1記載の発明は、変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切換えて前記電圧調整変圧器のタップを切換えるサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、前記制御装置は、自動電圧調整器本体側に位置するサイリスタ制御・駆動部と、自動電圧調整器に付属する制御部によって構成され、前記制御部は前記サイリスタ制御・駆動部に対して、タップの切換指令信号とデジタル符号化した切換タップ位置信号を出力し、前記サイリスタ制御・駆動部は、当該切換指令信号及び切換タップ位置信号をデコードして、切換対象のサイリスタに切換信号を出力するように構成したことを特徴とする。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、デジタル符号は、バイナリコードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、オンオフ制御するスイッチング素子(サイリスタ)の特定をデジタル符号化することにより、スイッチング素子の数と同数の信号線は必要なくなり、信号線の本数を削減することができる。この結果、信号線の締付不良等が発生する可能性を低減することができ、機器の信頼性を向上させることができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、バイナリコードによりサイリスタのオンオフ制御を行うので、信号線の本数を削減することができ、結果、将来的な信号線の本数増加を可能とし、拡張性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の自動電圧調整器の要部を示すブロック図である。
図2】従来の自動電圧調整器を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図1を用いて説明する。図1は本発明の自動電圧調整器を構成するタップ切換用のスイッチング素子(サイリスタTh1〜Th7,ThB)と、これにオンオフ信号を送出する制御部間の関係を示したブロック図である。
【0025】
図1に示すように本発明の自動電圧調整器は、当該機器本体側に取り付けられるサイリスタTh1〜Th7,ThBと、サイリスタ制御・駆動部6及び当該機器本体に付属する制御部7(図2のゲート制御回路5に相当)を備えて構成されている。
【0026】
本発明の目的としては、機器本体側に取り付けられるサイリスタ制御・駆動部6と、機器本体に付属する制御部7間の信号線の本数を削減することにあるので、その対策として、制御部7からサイリスタ制御・駆動部6へ送出する信号を、タップ切換指令パルスとタップ位置信号とし、タップ位置信号をデジタル符号化した。具体的には、タップ位置信号をバイナリコード化し、このデジタル信号によりオンオフするサイリスタを特定することとした。
【0027】
これにより、制御部7と本体側に取り付けられるサイリスタ制御・駆動部6間の信号線は、サイリスタTh1〜Th7,ThBの個数(図1では8個)と同数必要なくなり、機器本体と付属する制御部7間の信号線の本数を削減することが可能となる。
【0028】
信号線の本数が少なくなることにより、機器本体側及びこれに付属する制御部7間おいて、両部位を電気的に接続する信号線の締付作業等、種々の不具合が発生する可能性を確実に低減することができ、また、将来に向けて信号線の増設余地を残すことが可能となるので、拡張性の担保として実に有効である。
【0029】
なお、制御部7からタップ切換指令パルスを受信したサイリスタ制御・駆動部6は、同時に受信したデジタル符号化したタップ位置信号をデコードして、同じく本体側に位置するサイリスタTh1〜Th7,ThBにオンオフ指令を出力し、サイリスタTh1〜Th7,ThBを駆動させる。これにより、配電線の線路電圧は目標電圧に調整される。
【0030】
以上説明したように、本発明の自動電圧調整器によれば、制御部7とサイリスタ制御・駆動部6間の信号線の本数を従来の自動電圧調整器と比較して削減することができるので、機器の信頼性向上と拡張性を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、配電系統の電圧変動に対応する機器に利用される可能性が高い。
【符号の説明】
【0032】
1 電圧調整用変圧器
1a 1次巻線
1b 2次巻線
1c 3次巻線
2 直列変圧器
2a 1次巻線
2b 2次巻線
3 タップ切換器
4 電圧調整継電器(90リレー)
5 ゲート制御回路
6 サイリスタ制御・駆動部
7 制御部
図1
図2