特開2015-116058(P2015-116058A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015116058-サイリスタ式高圧自動電圧調整器 図000003
  • 特開2015116058-サイリスタ式高圧自動電圧調整器 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-116058(P2015-116058A)
(43)【公開日】2015年6月22日
(54)【発明の名称】サイリスタ式高圧自動電圧調整器
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20150526BHJP
   H01F 29/04 20060101ALI20150526BHJP
   G05F 1/14 20060101ALI20150526BHJP
【FI】
   H02J3/12
   H01F29/04 501Z
   G05F1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-256806(P2013-256806)
(22)【出願日】2013年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】苻川 謙治
(72)【発明者】
【氏名】梶田 寛
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊明
【テーマコード(参考)】
5G066
5H420
【Fターム(参考)】
5G066DA01
5H420BB12
5H420CC05
5H420DD03
5H420EA03
5H420EA27
5H420EA45
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF14
5H420FF22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】限流抵抗器の温度上昇を抑制しつつ、高速な連続タップ切換えを可能とするサイリスタ式高圧自動電圧調整器を提供する。
【解決手段】タップの最短切換間隔を廃止する。また、タップ切換時の限流抵抗器の温度上昇値が規定値より高くなった場合、サイリスタによるタップ切換えを停止するように制御する。さらに、サイリスタによるタップ切換え回数が直近の一定時間内に規定回数を超えた場合にタップ切換えを停止するように制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切換えて前記電圧調整変圧器のタップを切換えるサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、前記制御装置は、タップ切換時の循環電流を抑制する限流抵抗器の温度上昇値が規定値より高くなった場合に、サイリスタによるタップ切換えを停止するように構成したことを特徴とするサイリスタ式高圧自動電圧調整器。
【請求項2】
変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切換えて前記電圧調整変圧器のタップを切換えるサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、前記制御装置は、タップ切換時の循環電流を抑制する限流抵抗器の温度上昇値を当該限流抵抗器に流れる電流値から計算して求め、その値が規定値より高くなった場合に、サイリスタによるタップ切換えを停止するように構成したことを特徴とするサイリスタ式高圧自動電圧調整器。
【請求項3】
変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切換えて前記電圧調整変圧器のタップを切換えるサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、前記制御装置は、サイリスタによるタップ切換え回数が直近の一定時間内に規定回数を超えた場合に停止するように構成したことを特徴とするサイリスタ式高圧自動電圧調整器。
【請求項4】
前記制御装置は、素通し制御する場合はサイリスタによるタップ切換えを停止しないように構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のサイリスタ式高圧自動電圧調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線に取り付けられるサイリスタ式高圧自動電圧調整器に関し、限流抵抗器の温度上昇を抑制しつつ、高速な連続タップ切換えを可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの大量導入が進められている。また、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による電力供給不安から、国内の再生可能エネルギーへの転換の機運は更に高まってきた。
【0003】
一方で、再生可能エネルギーが配電系統に大量に連系されると、急激な電圧変動が発生する恐れがある。高圧配電系統では負荷時タップ切換変圧器や自動電圧調整器などで適正電圧範囲内に収まるように制御されてはいるが、高圧配電系統への再生可能エネルギーの連系や家庭用太陽光発電等の大量導入に伴う急激な電圧変動への対応は難しい。
【0004】
そこで、近年、急激な電圧変動への対応が可能であり、電圧調整を高速かつ多頻度に行えるサイリスタ式高圧自動電圧調整器が注目されている(下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】愛知電機技報No.33、平成25年3月23日発行、p.7〜12
【0006】
図2に上記非特許文献1記載のサイリスタ式高圧自動電圧調整器を示す。本自動電圧調整器は変圧器の結線をV−星形結線として構成しており、電圧調整変圧器ETrの低圧回路側と、線路に直列に挿入した直列変圧器STrの低圧回路側をサイリスタ式タップ切換器で結合した間接切換方式として、サイリスタ式タップ切換器は制御装置からのタップ切換信号によって所定のサイリスタ素子が投入/開放される。
【0007】
サイリスタ式タップ切換器は、タップ切換用サイリスタTh1〜Th6及び限流ヒューズF1,F2と、ブリッジ用サイリスタThb、及び、ブリッジ用サイリスタThbと限流抵抗器R間に取り付けられた変流器CTと、スナバ回路やサージ吸収器及びゲート駆動装置からなるGUユニットによって構成されている。
【0008】
制御装置は、電圧調整制御及び装置の外部・内部故障に対し保護制御を行う制御部と、該制御部からのタップ切換指令信号からサイリスタの組み合わせを選択するGA部及び電源部からなる制御・GAユニットと、本自動電圧調整器の運転開始,停止時及び外部・内部故障保護動作時に前記制御部からの指令により電磁接触器MC1,MC2の開閉を行うMCユニットによって構成されている。
【0009】
このように構成した自動電圧調整器は、制御装置の制御部で取り込んだ電圧、電流要素をアナログ処理した後、A/D変換し、CPUによってデジタル演算処理を行うことにより、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するよう、投入/開放するサイリスタの組み合わせを選択している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図2に示す自動電圧調整器は、上記の如くタップ切換器にサイリスタを採用しているので、タップ切換回数に制限はない。然るに、タップ切換頻度が高い時、タップ切換時の循環電流によって限流抵抗器Rが過度に温度上昇してしまう問題がある。
【0011】
そこで、タップ切換頻度が高い時でも限流抵抗器Rの温度上昇を低減するために、サイリスタによる最短タップ切換間隔(例えば5秒)を設定し、限流抵抗器Rが過度に温度上昇することを防止している。
【0012】
その反面として、大きな電圧変動に対して連続してタップ切換を行うことができなくなる問題が生じるが、この問題を解決するために、タップ切換えに飛越タップ切換機能を付加している。
【0013】
しかしながら、タップに最短切換間隔を設定したことにより、瞬時電圧低下の発生時等に、基準電圧への電圧調整動作が行われない新たな問題が発生していた(図3参照)。
【0014】
図3は従来のサイリスタ式高圧自動電圧調整器による電圧調整結果を示すグラフである。図3(a)は自動電圧調整器の一次電圧を示しており、同図(b)は自動電圧調整器の二次電圧を示している。
【0015】
図3(c)は図3(b)に示す二次電圧の瞬時低下時(破線間)の拡大図であり、同図(d)は二次電圧の瞬時低下時のタップ変化の様子を示している。図3(b)に示す瞬時電圧低下の発生に対して、従来の自動電圧調整器が図3(d)に示すように、サイリスタTh1〜Th6によるタップ切換えが行われていないことがわかる。
【0016】
そこで、本発明は上記欠点を解消するために、タップ切換頻度が高い時でも限流抵抗器Rの温度上昇を適切に抑制しつつ、瞬時停電時においても基準電圧への電圧調整を確実に行うことのできるサイリスタ式高圧自動電圧調整器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の発明は、変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切換えて前記電圧調整変圧器のタップを切換えるサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、前記制御装置は、タップ切換時の循環電流を抑制する限流抵抗器の温度上昇値が規定値より高くなった場合に、サイリスタによるタップ切換えを停止するように構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切換えて前記電圧調整変圧器のタップを切換えるサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、前記制御装置は、タップ切換時の循環電流を抑制する限流抵抗器の温度上昇値を前記限流抵抗器に流れる電流値から計算して求め、その値が規定値より高くなった場合に、サイリスタによるタップ切換えを停止するように構成したことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、変圧器、サイリスタ式タップ切換器、制御装置の各部で構成され、電圧調整変圧器の低圧回路側と、線路に対し直列に挿入した直列変圧器の低圧回路側を、前記サイリスタ式タップ切換器で結合し、配電線の電圧を予め設定してある基準電圧に調整するようサイリスタを切換えて前記電圧調整変圧器のタップを切換えるサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、前記制御装置は、サイリスタによるタップ切換え回数が直近の一定時間内に規定回数を超えた場合に停止するように構成したことを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のサイリスタ式高圧自動電圧調整器において、制御装置が素通し制御する場合、サイリスタによるタップ切換えを停止しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、限流抵抗器の温度上昇値が規定値を上回った場合、制御装置によってサイリスタによるタップ切換えを停止するように構成したので、限流抵抗器が過度に温度上昇することを確実に防止できる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、限流抵抗器の温度上昇値を前記限流抵抗器に流れる電流値から計算して求め、その値が規定値より高くなった場合に、サイリスタによるタップ切換えを停止するように構成したので、限流抵抗器の温度検出に別途のデバイスを用意する必要はない。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、サイリスタによるタップ切換え回数が直近の一定時間内に規定回数を超えた場合に停止するように構成したので、制御装置は計数機能を備えていればよく、制御装置の機能構成を簡略化することができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、限流抵抗器の温度上昇値が規定値を超えた場合でも、制御装置が素通し制御する場合は、サイリスタによるタップ切換えを停止しないように構成したので、異常保護機能が限流抵抗器の温度上昇によるタップ切換え停止によって阻害されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のサイリスタ式高圧自動電圧調整器による電圧調整結果を示すグラフである。
図2】サイリスタ式高圧自動電圧調整器を示す回路図である。
図3】従来のサイリスタ式高圧自動電圧調整器による電圧調整結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明に係るサイリスタ式高圧自動電圧調整器の回路構成は、前述した従来のサイリスタ式高圧自動電圧調整器の回路構成と同一であるので、本発明の実施形態についても、図2に示す回路図を用いて説明する。
【0027】
本発明のサイリスタ式高圧自動電圧調整器の特徴は、図2に示す制御装置に限流抵抗器Rの温度上昇を防止する機能を備えて構成したことにある。第一の実施例として、限流抵抗器Rに流れる電流値を制御装置によって検出し、この電流値から限流抵抗器Rの温度上昇値を計算により求め、その値が規定値を超えた場合は、サイリスタTh1〜Th6によるタップ切換えを停止する方法がある。
【0028】
これにより、限流抵抗器Rが過度に加熱される問題を確実に解消できるとともに、従来のサイリスタ式高圧自動電圧調整器と異なり、サイリスタTh1〜Th6に最短タップ切換間隔が設定されていないので、高圧配電線の瞬時電圧低下時においても、基準電圧への電圧調整を確実に実行することが可能になる。また、限流抵抗器Rの温度上昇は制御装置の計算機能により検出することができるので、限流抵抗器Rの温度上昇を検知する別途のデバイスを用意する必要はない。
【0029】
限流抵抗器Rの温度上昇を防止する機能の第二の実施例として、直近の一定時間(例えば60秒間)のタップ切換回数が規定回数(例えば12回)を超えた場合に、サイリスタTh1〜Th6によるタップ切換えを停止する方法がある。
【0030】
この場合も第一実施例同様、限流抵抗器Rの温度上昇を確実に防止できるとともに、瞬時電圧低下時においても、基準電圧への電圧調整を確実に実行することが可能になる。また、限流抵抗器Rの温度上昇は制御装置の計数機能を利用すれば良いので、第一実施例同様、電圧調整器の構成に特段の変更は必要ない。
【0031】
また、本発明のサイリスタ式高圧自動電圧調整器は、制御装置が素通し制御する際に、仮に限流抵抗器Rの温度上昇値が規定値を超えたとしても、サイリスタTh1〜Th6によるタップ切換えを停止しないよう制御する。
【0032】
制御装置の素通し制御とは、配電線事故時や装置内部故障時に装置自身を保護し、また、配電線に影響を与えないよう保護する機能である。具体的には、配電線短絡による過電流を制御部で検出した場合や、過負荷電流を制御部で検出した場合、或いは、配電線電圧を監視し過電圧や不足電圧を制御部で検出した場合、又は、サイリスタが誤点弧した場合に生じる直列変圧器の低圧回路側の開放事故や電圧調整変圧器の低圧回路側の短絡事故が発生した場合や、各ユニットが個々に監視を行った結果、異常検出をした場合が例示できる。
【0033】
つまり、限流抵抗器Rが過度に温度上昇した場合であっても、タップ切換えを停止しないよう制御することにより、制御装置の素通し制御を阻害することなく、上述した保護機能の実行を確実に担保することが可能となる。
【0034】
図1は本発明のサイリスタ式高圧自動電圧調整器による電圧調整結果を示すグラフである。図1(a)は本自動電圧調整器の一次電圧を示しており、同図(b)は本自動電圧調整器の二次電圧を示している。
【0035】
図1(c)は図1(b)に示す二次電圧の瞬時低下時(破線間)の拡大図であり、同図(d)は二次電圧の瞬時低下時におけるタップ変化の様子を示している。図1(b)に示す瞬時電圧低下の発生時に、本発明の自動電圧調整器が図1(d)に示すように、サイリスタTh1〜Th6によるタップ切換えを確実に実施し、瞬時電圧低下を抑制できていることが確認できる。
【0036】
以上のように、本発明のサイリスタ式高圧自動電圧調整器によれば、タップ切換えをサイリスタによって実現することにより、機械式のタップ切換えと異なり、タップ切換回数の制限をなくし、限流抵抗器Rの過度な温度上昇を抑制する目的で採用していた最短タップ切換間隔を廃止したことにより、瞬時電圧変動時においても基準電圧への電圧調整を確実に実行することが可能となる。
【0037】
さらに、限流抵抗器Rが過度に温度上昇した場合は、制御装置によってタップ切換えを停止する構成であるので、限流抵抗器Rの保護が図れるとともに、限流抵抗器Rの過度な温度上昇が生じた場合でも、保護動作等を目的とした制御装置の素通し制御が阻害されることのないよう配慮されている点も非常に優位である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、配電系統の電圧変動に対応する機器に利用される可能性が高い。
【符号の説明】
【0039】
STr 直列変圧器
ETr 電圧調整変圧器
VT,CT 変成器
Th1〜Th6 タップ切換用サイリスタ
Thb ブリッジ用サイリスタ
F1,F2 限流ヒューズ
R 限流抵抗器
MC1,MC2 電磁接触器
図1
図2
図3