【解決手段】解凍する対象物Xを収納する収納室10と、前記収納室内の温度を対象物の融点よりも低い温度に制御する温度制御装置11と、対象物の配置位置に電場を発生させる電極13と、対象物Xに応じて定められる条件で、電極13に電圧を印加する電極制御装置14とを備える。
絶縁体で形成され、前記収納室内において、前記対象物及び前記電極を前記収納室の床面より高く位置するように支持する支持部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の解凍装置。
絶縁体で形成されるとともに、前記支持部の下側に配置され、前記電極がオンの場合に前記対象物から発生する液体を貯水し、前記電極がオフの場合に貯水する液体を排水することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の解凍装置。
絶縁体であるとともに、前記収納室内の水蒸気を吸収可能な起毛素材で形成される水分吸収材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の解凍装置。
前記収納室内の気体を取り込むファンと、気体に含まれるオゾンを分解する炭素あるいは白金等の触媒を有するオゾン分解装置をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の解凍装置。
前記収納室から排出される液体が流入され、液体に含まれるオゾンを分解する炭素あるいは触媒及び還元性薬液を有する排水処理槽をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の解凍装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態に係る解凍装置及び品質維持装置について説明する。実施形態に係る解凍装置は、冷凍食品等の冷凍された対象物を解凍したり、低温に冷却された対象物の保存温度を上昇させる装置である。また、実施形態に係る品質維持装置は、冷却により対象物の品質を維持する装置である。以下の各実施形態では、同一の構成については同一の符号を用いて説明を省略する。
【0013】
ここでは、対象物は、魚や肉等の食品であるとして説明するが、対象物は食品に限られない。例えば、実施形態に係る解凍装置が解凍又は保存温度を上昇する対象物の一例としては、食品の他、人や家畜の人工受精胚、分化細胞、バイオリアクタ用微生物、超伝導体利用機器が挙げられる。また、品質維持装置が冷却する対象物の一例としては、魚、肉、青果等の食品の他、生花、種子等及び医療における移植用摘出臓器や血液保存が挙げられる。
【0014】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態に係る解凍装置1Aは、解凍する対象物Xを収納する収納室10と、収納室10内の温度を所定の温度に制御する温度制御装置11と、対象物Xを収納室10の床面より高く位置するように支持する支持部12と、支持部12に支持されるとともに対象物Xの配置位置に電場を発生させる電極13と、電極13を制御する電極制御装置14とを備えている。
図1は、解凍装置1Aの側面の概略図である。
【0015】
この解凍装置1Aは、収納室10内の温度を所定の温度に設定し、電極13に電圧が印加されると発生する電場により、対象物Xを解凍することができる。この時、対象物Xを電極13の上に電極に接触させて配置してもよい。その他、対象物Xを絶縁物で形成された支持部材(図示せず)上に配置することで、電極13に対しフローティング状態で配置してもよい。
【0016】
具体的には、対象物Xが置かれた収納室10において、解凍品Xに電場を印加し、解凍品の表面に生じた数100V/cm以上の電場により荷電粒子を発生させ、そして対象物Xの内部で電場が発生すると、この電場によりジュール熱が生じる。また、対象物Xの電場が発生した部分では、比誘電率による誘電損が生じる。したがって、解凍装置1Aでは、このように、収納室10内の雰囲気との熱交換、荷電粒子による熱交換、ジュール熱及び誘電損の組み合わせによって対象物Xが解凍される。したがって、一般的な周囲の温度のみを利用し、周囲から内部に伝熱により温度を上げながら解凍する方法やジュール熱のみにより解凍する方法と比較して、短時間に、均一かつ効率的に、収納室10内の所定の温度に解凍することができる。
【0017】
また、荷電粒子による熱交換、ジュール熱及び誘電損によって対象物Xの温度が収納室10内の所定の温度以上に上がると、収納室10内の温度は対象物Xの温度を収納室10内の所定の温度に引き下げることにより目的とする解凍温度を得ることが出来る。
【0018】
なお、交流印加電極13を使用する場合には、単相あるいは多相交流電圧源のひとつの端子に接続する。
【0019】
収納室10は、解凍の際に、内部に対象物Xが収納される。この収納室10は、対象物Xを搬入又は搬出する際には開かれ、対象物Xを解凍する際には閉じられる扉(図示せず)を有し、解凍時には密閉されることが好ましい。
【0020】
収納室10のサイズは限定されず、目的に応じて設定される。例えば、工場や市場等で利用される場合、収納室10は、段ボール箱等の収納容器に収納される、あるいは氷結させたブロック状の複数の対象物Xを、コンテナーや台車等を利用して搬入し、台車に載置した状態で解凍することのできる程度に大型に形成されていてもよい。また、家庭や飲食店等で利用される場合、収納室10は、対象物Xのみを入れることのできる小型に形成されていてもよい。
【0021】
また、収納室10の内部、具体的には、内側側面、天井および床は、不要な放電が生じないように、絶縁体で形成されることが好ましい。さらに、収納室10の内側側面は、水蒸気が付いた場合に流れ落ちやすい素材であることが好ましい。
【0022】
温度制御装置11は、収納室10内の温度を制御する。例えば、収納室10内の温度が高い場合、電場によって生じる荷電粒子による熱交換、ジュール熱及び誘電損で対象物Xが解凍されることに加え、対象物Xの周囲の温度によって対象物の周囲から内部に温度を上げて解凍が促進される。しかしながら、周囲の温度が高く周囲から内部への解凍が急速に進むと、解凍ムラや細胞の破壊等により対象物Xの品質が劣化する。また、電子レンジで解凍した場合も同様である。したがって、対象物Xが周囲の温度によって対象物Xの許容温度以上に解凍されないように収納室10内の温度を制御する。例えば、収納室10の温度を−5℃〜0℃に制御する。この収納室10の温度は、例えば、対象物Xの加工がしやすい温度を基準に定められる。具体的には、対象物Xがマグロやシャケ等のように切り身の状態で販売等される場合、カットしやすい温度に解凍されるように収納室10の温度が制御される。
【0023】
また、対象物Xの種別、サイズ、目標の解凍時間ごとに、解凍の際の最適な温度が異なることがある。このような場合、温度制御装置11は、解凍する対象物Xの種別や希望の解凍時間に応じた温度になるように制御してもよい。ここで、温度制御装置11の制御により収納室10内の温度を調節することで、対象物Xの表面温度を調整することができる。
【0024】
収納室10内の温度を計測するため、解凍装置1Aは、温度センサ(図示せず)を備えている。例えば、温度制御装置11は、センサで計測される温度を利用して、収納室10内の温度を制御することができる。
【0025】
電極制御装置14は、電極13に電圧を印加し、流れる電流値は対象物Xの融解に必要な電流値として、電極13が電場を発生するように制御する。このとき、対象物Xによって最適な電圧、周波数が異なるため、電極制御装置14は、対象物Xの条件に応じた電圧、周波数によって電極13を制御する。例えば、電圧は、シャケの場合、雰囲気の放電電場が数kV/mであることが好ましく、マグロの場合、シャケよりも高い電場であることが好ましい。通常の小規模解凍では、導電性物質において電流が流れる導電路が生じない電圧の範囲で利用することが好ましい。
【0026】
また、電極制御装置14は、電極制御装置14に見合った火花放電が発生しない電圧以下で電極13を印加する。また、電極制御装置14は、対象物Xが解凍されると電極13への電圧の印加を停止する。例えば、電極制御装置14は、赤外線センサによって対象物Xの表面が解凍されたことを検出したとき、電極13への電圧の印加を停止する。その他、電極維持装置14は、対象物Xが解凍されると、電極13の印加電圧を変更し、対象物Xの鮮度の維持に必要な電圧の印加に切り替えることができる。具体的には、電極制御装置14は、解凍の際に印加していた電圧よりも低い電圧の印加に切り替えることで、解凍から鮮度の維持に切り替えることができる。
【0027】
電極13は、電極13のみを有し、接地電極のない空中放電の方式を利用して電場を形成する。
図1に示すように、電極13は、対象物Xの一部と接している。また、対象物Xは、電極13とは接しているが、解凍装置1Aの他の部分とは接しないように配置される。
【0028】
ここで、電極制御装置14によって電極13に印加される電圧は、主には交流電圧であり、直流でも可能である。直流の場合、電極間に絶縁物である空気が存在し、電極から放電する時、電子やイオンの流れは一方向であり、荷電粒子の熱交換が低くなるので、低電圧でも放電しやすい交流の方が望ましい。
【0029】
電極13が電場を発生する際、放電によりオゾンが発生する。具体的には、放電により、空気中の酸素が活性化しオゾンに化学変化する。このようにして発生したオゾンは、収納室10内を脱臭及び殺菌することができる。また、オゾンによる殺菌により、対象物Xの菌の増殖や腐敗も抑制される。
【0030】
電極13は、対象物Xが配置される側に誘電体(図示せず)を有していてもよい。これにより、対象物Xに含まれる塩分や発生するオゾンから電極を保護できる。
【0031】
電極13は、板状電極の他に、
図2に示すように、格子状等の電極を利用してもよい。
図2は、電極13の上面図である。
図2(a)に示す電極13は、複数本の電極線131を同一方向に並列して形成された電極の一例である。また、
図2(b)に示す電極13は、電極線が交差するように格子状に配置して形成された電極の一例である。また、電極13は、
図2(b)に示す格子以外の網状であっても良い。
【0032】
また、
図2(c)に示すように、平面状に複数の金属で形成される凸部132を有する電極13を使用しても良い。このように凸部132を有する電極13は、凸部132の先端で荷電粒子を多く発生することができるため、解凍を促進することができる。また、金属の凸部132を有する電極13を使用する場合、電極13の表面を平面にするために凸部132の先端のみが表面に現れるように電極の平面部133から凸部132の先端まで、絶縁物134で覆ってもよい。なお凸部132の形状は、角を有した角柱あるいは円柱であっても良い。
【0033】
その他、
図2(c)に示す荷電粒子を多く発生する金属の凸部132を有する電極13を、荷電粒子発生器とし、凸部132を備えない通常の電極13とともに収納室10内に設置することも可能である。また、収納室10の外において
図2(c)に示す荷電粒子を発生する形状の荷電粒子発生器を備えるとともに、収納室10内では凸部132を備えない通常の電極13を有し、収納室10に荷電粒子発生器で発生した荷電粒子を導入する荷電粒子導入口を設け、荷電粒子を対象物Xに浴びせる構成であっても良い。
【0034】
電極13の大きさは、対象物Xが収納される段ボールや収納箱、及び氷結したブロック状の容器あるいは形状に規格寸法あるいはそれに準じる寸法が規定される場合は、対象物Xを収納した容器等の電極13に接する部分の寸法と同じ寸法かあるいは同じ程度の寸法にすることが望ましい。
【0035】
例えば、板状電極の場合、解凍の際に対象物Xや収納室10内の空気中の水蒸気から発生した水分が電極上に蓄積され、電極の劣化を促進することがある。これに対し、板状電極ではなく、
図2に例示したような電極を使用することで、解凍の際に対象物Xから発生した水分が収納室10の床に水滴として落下可能となる。したがって、電極13上に蓄積される水分による電極13の劣化や水分を伝わって生じる可能性のある電気の流れを軽減することができる。
【0036】
このように、電極13が格子状等である場合、支持部12は、板状の形状よりも、水滴が溜まりにくい形状であることが好ましい。例えば、
図3に示すように、一般的な建築の床組で利用される、土台部材121と、この土台部材121に大引きや根太のような板状部材122,123等を渡した構成とし、この上に電極13を配置することが考えられる。また、支持部12は、収納室10中の電極13から他の部分への不要な導電路の形成を防止するため、絶縁体で形成される。
【0037】
なお、解凍の際に床に落下した水分は、解凍終了後に収納室10の扉が開かれた際に蒸発させて内部から排出させてもよいし、洗浄が必要な場合は洗浄後、床に設けられる排出口(図示せず)を介して下水に排出してもよい。
【0038】
電極13は、解凍する対象物Xの重量等に耐えうる強度を有している必要がある。例えば、解凍する対象物Xが、収納容器に収納されるとともに台車に搭載された状態で電極13上に配置されるような場合、対象物Xとともに、収納容器、台車、及び対象物を運び入れる人員等の重量も含めた重量に耐えうる強度を有している必要がある。
【0039】
また、支持部12は、電極13とともに、電極13に上に搭載される重量に耐えうる強度が要求される。
【0040】
第1実施形態に係る解凍装置1Aによれば、解凍の際に電場を利用することにより、冷凍した対象物Xの内部を一様に解凍することができる。例えば、対象物Xが、小魚やエビ等を内部に含む氷のブロックである場合、氷とともに内部の小魚やエビも解凍することができる。したがって、解凍装置1Aを利用することで、従来の表面温度の変化を利用して外側から内側へ解凍する場合と比較して、解凍ムラを起こさず一様に解凍することができる。また、解凍装置1Aを利用することで、解凍時間を大幅に短縮することができる。
【0041】
さらに、従来は、解凍に当たり対象物Xを自然解凍するか、対象物Xがおかれる環境の温度の調整や流水中におくこと等で対象物Xの表面の温度を変化させて内部まで伝熱により解凍していた。解凍装置1Aは、このような場合と比較して、解凍の際に解凍時間や消費エネルギーそして流水利用に対しては排水の削減等により環境負荷を大幅に低減することができる。また、電子レンジ(マイクロ波)を使用した解凍では、氷があると誘電率の相違から解凍ムラが生じる。これに対し、解凍装置1Aは、従来の解凍法に対し、解凍時間も短く出来、水を使用しないため水に対象物Xが浸かることによる品質の劣化を防止することができるとともに、解凍ムラも防止することができる。
【0042】
さらに、対象物Xが内部に小魚やエビ等を含む氷のブロックの場合、その中の小魚やエビ等を取り出す場合、解凍装置1Aを使用し、小魚や海老等を解凍することで氷ブロック中に空間が生じて氷ブロックが脆くなる。したがって、例えば、氷を割り小魚やエビ等を従来と比較して容易かつ短時間で取り出すことができる。
【0043】
加えて、対象物Xが食品である場合、解凍装置1Aによって電場を利用することにより、解凍による細胞の破壊を防止することが可能となり、食品のうまみであるドリップ(細胞内の液体)の細胞外への放出を防止することができる。これにより、食品の解凍による味の劣化を防止することができる。すなわち、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。
【0044】
また、電極制御装置14が電極13を制御する際の電圧や周波数を調節することにより、異なる種類の対象物Xに対しても、それぞれ最適な条件で解凍することができる。
【0045】
加えて、収納室10の内部や支持部12を絶縁体で形成することにより、電極から収納室10の壁への導電路の発生を防止し、また電極13の下方への導電路の発生を減少させて対象物X側により多く電気が流れるようにし、エネルギーの無駄使いを防止することができる。
【0046】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る解凍装置は、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、電極13を複数有し、支持部12がこれら複数の電極13を支持可能に形成される点で異なる。例えば、
図4に示すように、支持部12には複数の電極13を有している。
図4は、支持部12に支持される電極13の上面図である。なお、交流印加電極を使用する場合、単相の端子のひとつをそれぞれ個別に複数の電極に接続、あるいは多相交流電圧源をひとつの端子をひとつの電極に接続し、他の端子をそれ以外の電極に接続することが出来る。その他の点については、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同一であるため、
図1Aを参照して説明する。
【0047】
図4(a)では、大きさが同一の電極13を2つ有する一例である。この場合、各電極13は、独立しているため、電極制御装置14は、各電極13を別々に制御可能である。例えば、電極制御装置14は、エリアA1の電極13にのみ電圧を印加して電場を発生し、エリアA2の電極13には電圧を印加せずに電場を発生しないように制御することができる。また、エリアA1の電極13とエリアA2の電極13を別々の電源から印加し、また夫々の電極13に個別の電極制御装置14で制御することが出来る。
【0048】
また、各電極13の制御に利用する電圧、周波数等を異なる値にすることができる。したがって、エリアごとに異なる種別の対象物Xを載置し、複数種別の対象物Xを同時にそれぞれ最適な条件で解凍することができる。具体的には、異なる条件(電圧、周波数、解凍時間等)が規定されるマグロとシャケの解凍を同時に行うことが可能である。例えば、シャケの解凍が先に終了し、シャケが配置される電極13のみ電圧の印加を停止した場合、マグロの解凍が終了するまで収納室10内に保管する。これにより、シャケについては解凍後に冷蔵保存の状態におかれることとなる。このとき、収納室10内では、放電によってオゾンが発生しているため、通常の冷蔵保存では得ることの出来ない消臭及び殺菌効果を得ることができる。あるいは、シャケの解凍が先に終了した場合は、印加をやめ、シャケを取り出したのち、マグロの解凍を再度続けることが出来る。また、シャケだけでも分量が多い場合も、各電極13に分散して載置し、解凍することができる。
【0049】
電極13の数は、限定されず、例えば、
図4(b)に示すように、大きさが同一である電極13を4つ有しても同様である。また、
図4(c)に示すように、大きさが異なる電極13を複数有しても同様である。例えば、電極13のサイズを、対象物Xのサイズや、対象物Xの収納容器、対象物Xが搭載される台車等のサイズに合わせることもできる。
【0050】
なお、複数の電極13を有する場合、電極間での導電路又は外乱等が発生するおそれがある。したがって、電極間には導電路が生じないように絶縁物を設置したり、十分な距離をとって配置することが好ましい。
【0051】
第2実施形態に係る解凍装置1Aによれば、電極13を複数有し、各電極13の電圧を調整することで、同時に複数の種類の対象物Xに対応することができる。
【0052】
また、第2実施形態に係る解凍装置1Aによれば、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同様に、解凍ムラを起こさず一様に解凍するとともに、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。また、解凍時間を大幅に短縮することができる。さらに、解凍に水を使用せず、またその他の従来の解凍方法に比較して、解凍の際に消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0053】
[第3実施形態]
図5に示すように、第3実施形態に係る解凍装置1Bは、
図1を用いて上術した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、収納室10の床面で支持部12の下に水槽15を備える点で異なる。
【0054】
対象物Xを解凍する際、対象物Xから少量の水分が発生し、落下することがある。また、対象物Xの中には、大量の氷を含むものがある。例えば、対象物Xが冷凍された食品とこれを冷却する大量の氷である場合、対象物Xに含まれる氷は、温度制御装置11によって温度が制御されるとともに、電極13によって電場が発生すると、溶けて大量の水となり、落下する。水槽15は、このように解凍の際に発生した水分を貯水する。
【0055】
ここで、水槽15に貯水された水を、排出口(図示せず)を介して下水に排出する際、水を伝って導電路が生じないようにする必要がある。例えば、電極13に電圧を印加中に水分が水槽15から連続して下水に流れる場合には、解凍装置1Bから下水への電気の流れが生じるおそれがある。したがって、例えば、
図6に示すような処理により、解凍装置1Bから下水へ導電路が生じないように排水する。
【0056】
図6(a)は、対象物Xから発生する水分が、水槽15で十分に貯水可能な少量である場合の処理を説明するフローチャートである。まず、対象物Xが解凍装置1Bに搬入された後、電極制御装置14は、電極13の電圧を印加する(ST01)。その後、対象物の解凍が終了するまで、排出口は閉状態であり、落下した水分は、水槽に蓄積される。
【0057】
解凍が終了すると(ST02でYES)、電極制御装置14は、電極13への電圧の印加を停止する(ST03)。この後は、導電路が生じないため、排出口が開かれ、水槽15の水が下水に排水される(ST04)。
【0058】
一方、
図6(b)は、対象物Xが大量に氷を含む場合等、解凍時に発生する水分が大量であり、水槽15に貯水不可能である場合の処理を説明したフローチャートである。まず、対象物Xが解凍装置1Bに搬入され、電極制御装置14は、電極13へ電圧を印加する(ST11)。
【0059】
その後、水位計(図示せず)により水槽15の水位が閾値以上になったとき(ST12)、電極制御装置14は、電極13への電圧の印加を停止する(ST13)。これにより、導電路が生じないため、排出口が開かれ、水槽15の水が下水に排水される(ST14)。
【0060】
排水が終了後、対象物Xの解凍が終了していない場合(ST15でNO)、解凍が終了するまでステップST11〜ST15の処理を繰り返す。
【0061】
第3実施形態に係る解凍装置1Bは、収納室10の床部に絶縁体で作成した水槽15を設置することにより、電極13へ電圧を印加している間は水槽15に解凍で発生する水を貯め、電極13への電圧の印加を停止した後、水槽15から排水する。これにより、電極13へ電圧を印加している間、排水を伝わって下水に導電路が生じるのを防止することができる。
【0062】
なお、解凍装置1Bも
図4を用いて上述したように、電極制御装置14によって独立して制御される複数の電極13を有していてもよい。
【0063】
第3実施形態に係る解凍装置1Bによれば、解凍装置1Bから排水される水を伝わって下水に導電路が生じるのを防止し、解凍装置の周辺における電食等を防止することができる。
【0064】
また、第3実施形態に係る解凍装置1Bによれば、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同様に、解凍ムラを起こさず一様に解凍するとともに、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。また、解凍時間を大幅に短縮することができる。さらに、解凍に水を使用せず、また、その他の従来の解凍方法に比較して、解凍の際に消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0065】
さらに、
図1に示すような水槽15を備えない解凍装置1Aであっても、
図6を用いて上述したように、電極13へ電圧を印加している間は水槽15に解凍で発生する水を貯め、電極13への電圧の印加を停止した後に水槽15から排水することで、同様の効果を得ることができる。
【0066】
[第4実施形態]
図7に示すように、第4実施形態に係る解凍装置1Cは、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、安全を確保するため収納室10の接地系に接続した接地電極16を備える点で異なる。接地電極16は収納室10の内壁と電極13及び対象物Xの間に設けられる。ここで、収納室10の内壁とは、収納室10の内側側面と天井である。
【0067】
第1実施形態に係る解凍装置1Aの場合、接地電極を有しない空中放電とする構成である。したがって、電極13での印加電圧が高くなったとき、収納室10の内壁へ導電路が生じることにより、収納室10の内壁が損傷するおそれがあった。これに対し、第4実施形態に係る解凍装置1Cでは、接地電極16を設けることにより、収納室10の内壁への放電による内壁の損傷を防止することができる。
【0068】
接地電極16が電極13及び対象物Xを覆うような形状であるとき、対象物Xと対象物Xを覆う接地電極16との距離は、ある一か所に導電路が生じないように均等あるいは略均等であることが好ましい。また接地電極16は、収納室10の天井部分側だけであっても良い。なお接地電極16は対象物Xの搬入及び搬出の際に対象物Xが通ることのできる出入口を有する必要がある。また、接地電極16の形態は、限定されず、導電性網、金属線、金属板、樹脂網等いずれであっても良い。
【0069】
ここで、接地電極16の天井は、電極13部分からの高さが可変に形成されていてもよい。接地電極16の高さを可変にすることで、対象物Xの高さに応じて天井の高さを調整し、電極の下方向よりも、対象物Xから接地電極16への放電を容易にする。
【0070】
なお、対象物Xが、電極13及び接地電極16の両方と接触した状態になった場合、対象物Xの適切な解凍が阻害されることがある。したがって、対象物Xが、接地電極16と接触することがないように対象物Xを配置する必要がある。また、天井が可変であるとき、接地電極16の天井に天井及び対象物Xの接触を防止するストッパを設けてもよい。
【0071】
接地電極16は、対象物Xが配置される側に誘電体(図示せず)を有していてもよい。これにより、対象物Xから発生する塩分を含んだ水や発生するオゾン等から電極16を保護することができる。
【0072】
なお、解凍装置1Cも
図4を用いて上述したように、電極制御装置14によって独立して制御される複数の電極13を有していてもよい。また、解凍装置1Cは水槽15を有していてもよい。
【0073】
第4実施形態に係る解凍装置1Cによれば、接地電極16を有し、収納室10の側面や天井への放電を防止することで、収納室10の内壁への導電路の形成による内壁の損傷を防止することができる。
【0074】
また、第4実施形態に係る解凍装置1Cによれば、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同様に、解凍ムラを起こさず一様に解凍するとともに、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。また、解凍時間を大幅に短縮することができる。さらに、解凍に水を使用せず、また、その他の従来の解凍方法に比較して、解凍の際に消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0075】
[第5実施形態]
図8(a)に示すように、第5実施形態に係る解凍装置1Dは、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、収納室10の内壁と電極13及び対象物Xの間に設けられる水分吸収材17を備える点で異なる。ここで、収納室10の内壁とは、収納室10の内側側面と天井である。
【0076】
水分吸収材17は、例えば、起毛素材で形成され、収納室10内の水蒸気を吸収することができる。収納室10内の水蒸気には、対象物Xから発生した塩分を含むことがある。また、水蒸気には、放電によりオゾンが発生することがある。水分吸収材17が塩分を含む水蒸気を吸収することで、塩分による収納室10の内壁や電極13等の損傷を防止するとともに、内壁への導電路の形成を防止することができる。また、水分吸収材17がオゾンを含む水蒸気を吸収することで、オゾンによる収納室10の内壁や電極13及び接地電極16等の損傷を防止することができる。なお、水分吸収材17は、電極13及び対象物Xを全て覆う形態である必要はなく、収納室10内の水分を吸収することができる構成であればよい。
【0077】
水分吸収材17は、吸収した水分の重さに耐えうる強度に形成される必要がある。また、水分吸収材17で水分を吸収することで、収納室10内の湿度が低下した際、水分吸収材17の水分が収納室10内に供給される。これにより、対象物Xが必要以上に乾燥することを防止することができる。
【0078】
また、水分吸収材17は、炭素を含んでいてもよい。炭素は、オゾンを分解する機能を有している。したがって、水分吸収材17が炭素を含む構成とすることで、水分吸収材17が、水蒸気が含むオゾンを分解し、オゾンによる収納室10の内壁や電極13等の損傷を防止あるいは軽減することができる。このとき、水分吸収材17自体に炭素を含んでいるのではなく、シート状の水分吸収材17とシート状の炭素とが二層になる構成であってもよい。
【0079】
なお、炭素は、例えば木炭の着火温度は250℃〜300℃であり、火花放電が生じその程度の温度になると発煙が発生するおそれがある。したがって、水分吸収材17の炭素の含有量は、発煙・発火の防止のため必要最小限にするとともに、250℃以上の高温にならないように制御することが好ましい。また、解凍装置1Dは、発煙した場合に発煙を検知する検知手段(図示せず)を有していてもよい。この検知手段による検知に応じて、印加電圧を下げたり、印加を中止する等の対応をとることができる。
【0080】
また、水分吸収材17の天井も、電極13部分からの高さが可変に形成されていてもよい。水分吸収材17の高さを可変にすることで、対象物Xの高さに応じて天井の高さを調整し、接地電極16の位置の調節を容易にし、同時に水蒸気の及ぶ範囲を限定できる。また、この場合も、水分吸収材17と対象物Xとの接触を防止するストッパを設けることが好ましい。
【0081】
なお、
図8(b)に示すように、接地電極16と水分吸収材17の両方を備えていてもよい。接地電極16と水分吸収材17の両方を有する場合、
図8(b)に示すように、水分吸収材17の外側を接地電極16が覆う構成であってもよいし、逆に、接地電極16が塩分やオゾンに対し防護処理がされている場合、接地電極16の外側を水分吸収材17が覆う構成であってもよい。あるいは、接地電極16が水分吸収材17の中間に位置する構成であっても良い。
【0082】
接地電極16と水分吸収材17の両方を有する場合にも天井部分が可変に形成されていてもよい。またことのとき、接地電極16と水分吸収材17の両方が収納室10の内側の天井部分と一体形成の場合、接地電極16と水分吸収剤17の天井部分の高さが可変である必要はなく、収納室10の内側の天井部分の高さが可変であってもよい。
【0083】
なお、解凍装置1Dも
図4を用いて上述したように、電極制御装置14によって独立して制御される複数の電極13を有していてもよい。また、解凍装置1Dは、水槽15を有していてもよい。
【0084】
第5実施形態に係る解凍装置1Dによれば、水分吸収材17を有し、収納室10内の水分を吸収することで、収納室10の劣化を防止することができる。
【0085】
また、第5実施形態に係る解凍装置1Dによれば、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同様に、解凍ムラを起こさず一様に解凍するとともに、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。また、解凍時間を大幅に短縮することができる。さらに、解凍に水を使用せず、また、その他の従来の解凍方法に比較して、解凍の際に消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0086】
[第6実施形態]
図9に示すように、第6実施形態に係る解凍装置1Eは、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、収納室10の内壁が絶縁材18で覆われる点で異なる。例えば、絶縁材18は、絶縁体のシートや板等である。
【0087】
絶縁材18で収納室10の内壁を覆うことで、電極から収納室10の内壁への導電路を生じにくくし、放電による収納室10の内壁の損傷を起きにくくすることができる。
【0088】
その他、収納室10の内壁が塩分で損傷を受ける材質であって、解凍時に塩分を含む水蒸気が発生する場合、絶縁材18を耐塩水性材料にすることで、塩分による内壁の損傷を防止することができる。また、収納室10の内壁が酸化する材質である場合、絶縁材18を耐酸化材料にすることで、オゾンによる内壁の損傷を防止することができる。さらに、絶縁材18を遮熱材料にすることで、外部熱の浸入を防止することができる。
【0089】
ここで、絶縁材18自体が耐水性、耐酸化性及び遮熱性を合わせ持つ必要はなく、いずれかの性質のみを有していても良いし、絶縁材18と他の性質を持つ材料を重ね合わせて使用してもよい。例えば、樹脂素材の一種である発泡スチロール等の中には、これらの性質の2以上を併せ持つ。
【0090】
なお、絶縁材18は、電極13に印加される電圧や解凍する対象物Xの種別に応じて材質や性質を変えることが好ましい。
【0091】
解凍装置1Eも
図4を用いて上述したように、電極制御装置14によって独立して制御される複数の電極13を有していてもよい。また、解凍装置1Eは、水槽15、接地電極16又は水分吸収材17を有していてもよい。
【0092】
第6実施形態に係る解凍装置1Eによれば、絶縁材18を有し、収納室10の側面や天井への導電路の発生を防止することで、収納室10の劣化を防止することができる。また、絶縁材18が、耐水性又は耐酸化性を有することで、収納室10の劣化を防止することができる。さらに、絶縁材18が遮熱性を有することで、収納室10の装置外からの熱を遮断することができる。
【0093】
また、第6実施形態に係る解凍装置1Eによれば、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同様に、解凍ムラを起こさず一様に解凍するとともに、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。また、解凍時間を大幅に短縮することができる。さらに、解凍に水を使用せず、また、その他の従来の解凍方法に比較して、解凍の際に消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0094】
[第7実施形態]
図10に示すように、第7実施形態に係る解凍装置1Fは、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、オゾン分解装置19を備えている点で異なる。オゾン分解装置19は、例えば、
図11に示すように、ファン191によって収納室10から取り入れる気体中のオゾンを触媒192によって分解後、収納室10に循環させる。例えば、オゾン分解装置19は、オゾン分解用の炭素あるいは触媒192として、炭素や白金等を含んでいる。触媒192に炭素を利用する場合、オゾンは、二酸化炭素になる。また、白金等触媒を利用する場合は、酸素になる。
【0095】
解凍装置1Fで対象物Xを解凍する際にオゾンが発生した場合、このオゾンは、収納室10内で消臭や殺菌に利用されるが、過剰にオゾンが発生した場合、利用者に有害なこともある。したがって、解凍終了後、オゾン分解装置19によって、収納室10内のオゾンを分解後に扉を開けて対象物Xを搬出することが好ましい。なお、オゾン分解装置19によるオゾンの分解は、解凍と並行して行ってもよいし、解凍の終了後に行ってもよい。なお、オゾンセンサーを収納室10の下部に設け、オゾンセンサーで計測される値が有害となりうる所定の値の場合には収納庫10の扉を開けないようにすることが好ましい。
【0096】
オゾンは、空気より重く、収納室10の下方に蓄積する。したがって、オゾン分解装置19は、収納室10内の下部に蓄積されるオゾンを吸入するように形成されることが好ましい。
【0097】
なお、
図10に示す例では、オゾン分解装置19は、収納室10の外部に設置される例であるが、収納室10内に設置してもよい。
図10に示すようにオゾン分解装置19が収納室10の外部に設置される場合、収納室10内部の温度と外部の温度差により装置外に結露が生じないように考慮する必要がある。
【0098】
解凍装置1Fも
図4を用いて上述したように、電極制御装置14によって独立して制御される複数の電極13を有していてもよい。また、解凍装置1Fは、水槽15、接地電極16、水分吸収材17又は絶縁材18を有していてもよい。
【0099】
第7実施形態に係る解凍装置1Fによれば、オゾン分解装置19を有し、収納室10内の不要なオゾンを分解することができる。
【0100】
また、第7実施形態に係る解凍装置1Fによれば、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同様に、解凍ムラを起こさず一様に解凍するとともに、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。また、解凍時間を大幅に短縮することができる。さらに、解凍に水を使用せず、また、その他の従来の解凍方法に比較して、解凍の際に消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0101】
[第8実施形態]
図12に示すように、第8実施形態に係る解凍装置1Gは、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、排水処理槽20を備えている点で異なる。排水処理槽20は、内部に収納室10から排出される水に含まれるオゾンを分解する炭素あるいは触媒及び還元性薬液を有している。
【0102】
上述したように、オゾンは、消臭や殺菌に利用されるが、収納室10から排出される水に含まれるオゾンは有害なこともある。したがって、解凍装置1Gでは、排水処理槽20によって水に含まれるオゾンを分解後に下水に排水する。還元性薬品を使用する場合には、オゾンの分解のみならず流出した蛋白の溶解及び雑菌繁殖の抑制として働くことができる。
【0103】
ここで、収納室10から排水するタイミングを、
図6を用いて上述した場合と同様のタイミングにすることで、水の流れが非連続となり、解凍装置1Gから下水に導電路が生じるのを防止することができる。
【0104】
なお、解凍装置1Gも
図4を用いて上述したように、電極制御装置14によって独立して制御される複数の電極13を有していてもよい。また、解凍装置1Gは、水槽15、接地電極16、水分吸収材17、絶縁材18又はオゾン分解装置19を有していてもよい。
【0105】
第8実施形態に係る解凍装置1Gによれば、排水処理槽20を有し、収納室10から排水される水分中のオゾンを分解することができる。
【0106】
また、第8実施形態に係る解凍装置1Gによれば、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同様に、解凍ムラを起こさず一様に解凍するとともに、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。また、解凍時間を大幅に短縮することができる。さらに、解凍に水を使用せず、また、その他の従来の解凍方法に比較して、解凍の際に消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0107】
[第9実施形態]
図13に示すように、第9実施形態に係る解凍装置1Hは、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、解凍中常時排水を排水槽に流すものであり、対象物Xと接地電極16との距離a1、a2、b、電極13と床との距離cについて条件が規定される点で異なる。ここで、対象物Xの側面と設置電極16との距離である距離a1と距離a2は、完全に同一である必要はないが、略同一であることが好ましい。また、
図13(a)では、紙面の左右の対象物Xと設置電極16との距離a1及びa2のみ示しているが、紙面の前後方向における対象物Xと設置電極16との距離についても同様である。したがって、対象物Xは、収納室10の中央に位置するように配置されることが好ましい。さらに、以下のaは、a≒a1であってa≒a2となる値である。
【0108】
解凍装置1Hでは、各距離を調節し、電極からの導電路が、排水を伝わって排水槽に、生じる等により、エネルギーの無駄使いや電食等を、防止することができる。具体的には、対象物Xの側面と接地電極16の側面との距離a、対象物Xの上部と接地電極16の天井との距離b、電極13と収納室10の床面との距離cについて、 a=b かつ b<c の関係であることが好ましい。なお、正確に距離aと距離bを同一とすることは困難であるため、略同一であればよい。
【0109】
また、電極13から支持部12及び接地電極16の間を通って導電路が形成される可能性がある場合、電極13の端部と収納室10の側面との距離dについて、a<d かつ b<dであることが好ましい。
【0110】
解凍装置1Hは、独立して制御される複数の電極13を有してもよい。
図13(b)に示すように、高さが異なる複数の対象物Xが収納室10に配置されているとき、各対象物Xの上面から設置電極16までの距離b1、b2は、電極13や対象物Xから、接地電極16、及び収納室10の側面や床面に導電路が生じないように調整することができる。
【0111】
なお、解凍装置1Hは、水槽15、接地電極16、水分吸収材17、絶縁材18又はオゾン分解装置19を、及び排水処理装置20を有していてもよい。
【0112】
第9実施形態に係る解凍装置1Hによれば、各距離を規定することで、不要な導電路の発生を防止し、対象物Xに通電し、収納室10の劣化を防ぎ、エネルギーの損失を低減することができる。
【0113】
また、第9実施形態に係る解凍装置1Hによれば、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同様に、解凍ムラを起こさず一様に解凍するとともに、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。また、解凍時間を大幅に短縮することができる。さらに、解凍に水を使用せず、また、その他の従来の解凍方法に比較して、解凍の際に消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0114】
[第10実施形態]
図14に示すように、第9実施形態に係る解凍装置1Iは、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、支持部12の形状が異なる。例えば、
図1に示す解凍装置1Aの場合、解凍の際に大量の水分が対象物Xから発生し、支持部12を伝って床に到達する場合、連続して伝わるおそれがある。これに対し、第9実施形態に係る解凍装置1Iでは、支持部12が庇部124を有しているため、連続的な落下を防止し、水滴となって非連続で落下しやすくすることができる。
【0115】
なお、解凍装置1Iも
図4を用いて上述したように、電極制御装置14によって独立して制御される複数の電極13を有していてもよい。また、解凍装置1Iは、水槽15、接地電極16、水分吸収材17、絶縁材18又はオゾン分解装置19を有していてもよい。
【0116】
第10実施形態に係る解凍装置1Iによれば、電極13及び支持部12を伝わる水流の形成を防止し、水流を伝わる導電路の発生を防止することができる。
【0117】
また、第10実施形態に係る解凍装置1Iによれば、第1実施形態に係る解凍装置1Aと同様に、解凍ムラを起こさず一様に解凍するとともに、解凍による対象物Xの品質の劣化を防止することができる。また、解凍時間を大幅に短縮することができる。さらに、解凍に水を使用せず、また、その他の従来の解凍方法に比較して、解凍の際に消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0118】
[第11実施形態]
図15に示すように第11実施形態に係る品質維持装置1Jは、品質を維持して保存する対象物Xを収納する収納室10と、収納室10内の温度を所定の温度に制御する温度制御装置11と、対象物Xを収納室10の床面より高く位置するように支持する支持部12と、支持部12に支持されるとともに対象物Xの配置位置に電場を発生させる電極13と、電極13を制御する電極制御装置14とを備えている。
【0119】
この品質維持装置1Jは、電極13に電圧が印加されて発生する電場により、対象物Xの品質を維持することができる。具体的には、印加された電極13から放電により発生する、あるいはまた電極に接触した対象物Xからの放電によって発生するオゾンによる殺菌の効果により、菌の増殖や腐敗が抑制されて対象物Xの品質を維持することができる。
【0120】
このとき、温度制御装置11は、対象物Xに応じて定められる温度に収納室10内の温度を制御する。具体的には、保存に最適な温度は対象物Xの種別毎に異なるため、この種別に定められる温度に制御する。
【0121】
また、電極制御装置14は、対象物Xに応じて定められる電圧を電極13に印加する。この品質維持装置1Jの電極制御装置14は、解凍装置1A〜1Iの電極制御装置14と比較して、低い電圧を電極13に印加する。これにより、対象物Xの温度が上昇して対象物Xが劣化することを防止することができる。保存に最適な電圧や周波数の条件は対象物Xの種別に応じて異なるため、この種別に定められる条件で電極13を制御する。
【0122】
なお、品質維持装置1Jも、電極制御装置14によって独立して制御される複数の電極13を有していてもよい。また、品質維持装置1Jは、水槽15、接地電極16、水分吸収材17、絶縁材18又はオゾン分解装置19を有していてもよい。さらに、品質維持装置1Jのサイズは、限定されない。
【0123】
第11実施形態に係る品質維持装置1Jは、荷電粒子等の電場効果や、オゾンを利用して菌の増殖や腐敗を防止し、品質を維持することができる。
【0124】
[第1変形例]
図16に示すように、第1変形例に係る解凍装置2Aは、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、電極13が収納室10の床と並行に配置されるのではなく、いずれかの側面と並行に配置される点で異なる。
【0125】
このとき、電極13に対象物Xの一端が接触するように対象物Xを配置させる必要がある。また、対象物Xの別の部分が収納室10に接しないように配置させる必要がある。このため、対象物Xが収納室10の壁や天井に接しないように絶縁物で形成したストッパーを設置することがこのましい。
【0126】
この場合、電極13に水分が溜まることはないが、支持部12は水分が溜まらず、対象物Xから生じる水が収納室10の床に落下するような構成であることが好ましい。
【0127】
また、解凍装置2Aは、水槽15、接地電極16、水分吸収材17、絶縁材18、オゾン分解装置19又は排水処理槽20を有していてもよい。
【0128】
なお、対象物Xが解凍する対象物でなく、品質を維持する対象物Xに置き換え、品質維持装置としても同様である。
【0129】
[第2変形例]
図17(a)に示すように、第2変形例に係る解凍装置2Bは、
図1を用いて上述した第1実施形態に係る解凍装置1Aと比較して、板部材21に支えられる複数の電極13及び接地電極16が床と並行して配置され、各電極13及び接地電極16の間に対象物Xが配置される点で異なる。この場合、電極13上の対象物Xが別の電極13、設置電極16又は収納室10の壁や天井と接することで異なる複数の電極13及び設置電極16間で導電路が生じないようにする必要がある。したがって、電極13上の対象物Xが別の電極13や設置電極16と接しないように、また収納室10の壁や天井に接しないように絶縁物で形成したストッパーを設置することが好ましい。各電極13は電極制御装置14により個別に制御できる。なお、対象物Xを絶縁物で形成された支持部材上に配置することで、電極13に対しフローティングの状態で配置してもよい。
【0130】
または、
図17(b)に示すように、複数の電極13及び接地電極16が側面と並行して板部材21に支えられて配置され、各電極13及び接地電極16の間に対象物Xが配置される点で異なる。この場合も、電極13と接する対象物Xが別の電極13、設置電極16又は収納装置10の壁や天井と接することで異なる複数の電極13及び設置電極16間で導電路が生じないようにする必要がある。したがって、ある電極13と接する対象物Xは別の電極13や設置電極16に接しないように、また解凍装置2Bの壁や天井に接しないように絶縁物で形成したストッパーを設置することが好ましい。各電極13は電極制御装置14により個別に制御できる。
【0131】
また、
図17に示すように、電極13と設置電極16をそれぞれ複数有する構成の場合、放電用の電極13と接地電極16とを交互に設置することが望ましい。
【0132】
例えば、
図17に示すように、複数の電極13及び接地電極16を利用して各電極13を異なる条件で独立して制御することで、異なる複数の種類の対象物Xを同時に解凍することが可能となる。このとき、電極13、接地電極16及び板部材21で形成される各空間を小型化することで、解凍装置2B全体を小型化することができる。この解凍装置2Bは、少量多品種の対象物Xを同時に解凍する場合に有効である。また、
図17(a)に示す解凍装置2Bは、設置面積が狭い場合であっても、縦方向に積み上げることで、小型化を実現することもできる。また例えば、
図17(b)に示す解凍装置2Bの場合、設置場所の高さがとれない場合であっても、幅方向に広い面積をとることができるとき、高さを低くすることができる。
【0133】
なお、ここでは、電極13及び接地電極16を備える構成であるが、電極13に印加する電圧が導電路を発生しない程度と低い場合、接地電極16の代わりに全て電極13とする構成であってもよい。
【0134】
この場合、支持部12は水分が溜まらず、対象物Xから生じる水が収納室10の床に落下するような構成であることが好ましい。また、
図17(a)に示す例の場合、電極13及び接地電極16も水分が溜まらず、水が落下する構成であることが好ましい。
【0135】
また、解凍装置2Bは、水槽15、接地電極16、水分吸収材17、絶縁材18、オゾン分解装置19又は排水処理槽20を有してもよい。
【0136】
なお、対象物Xの解凍が終了後、対象物Xの品質を維持するために、品質維持装置としても使用できる。
【0137】
[第3変形例]
上述した解凍装置又は品質維持装置は、一般的な冷蔵庫の中に設けられていてもよい。例えば、
図18に示すように、第3変形例に係る解凍装置2Cは、通常の冷蔵機能に加え、電場を利用する解凍機能を備え、冷蔵庫内に備えられる。
【0138】
この収納室10は、冷蔵室の一部として冷蔵庫内に設けられており、解凍がされない際には、冷蔵室として利用することができる。解凍の後に、解凍した対象物を保存する品質保持装置として利用してもよい。
【0139】
また、解凍装置2Cは、水槽15、接地電極16、水分吸収材17、絶縁材18、オゾン分解装置19又は排水処理槽20を有していてもよい。
【0140】
なお、対象物Xが解凍する対象物でなく、品質を維持する対象物Xに置き換え、品質維持装置としても同様である。
【0141】
[第4変形例]
また、解凍装置は、一般的な電子レンジと一体型であってもよい。すなわち、電子レンジに通常の調理機能に加え、電場を利用する解凍機能を備えていてもよい。ここでは、
図18を参照して説明する。
【0142】
電子レンジの機能の一部として解凍機能が設けられる場合、対象物Xを解凍後、解凍機能から、通常の調理機能に切替えて解凍された対象物を調理することもできる。例えば、対象物Xが解凍されたか否かは、赤外線センサにより検知することができる。
【0143】
例えば、温度センサ(図示せず)を有し、対象物Xである食品の中あるいは表面に解凍されてない部分が残っていないことを確認できるようにしてもよい。
【0144】
また、ターンテーブルを放電極13とし、内壁を接地極16にしてもよい。
【0145】
また、解凍装置2Cは、水槽15、接地電極16、水分吸収材17、絶縁材18、オゾン分解装置19又は排水処理槽20を有していてもよい。
【0146】
なお、対象物Xが解凍する対象物でなく、品質を維持する対象物Xに置き換え、品質維持装置としても同様である。
【0147】
[第1使用例]
対象物Xが肉類又は魚類である場合に解凍装置で解凍する実験で得られた最適な使用例を説明する。
【0148】
(解凍例1)解凍対象物Xの温度が−5℃以下の場合、温度制御装置11により、収納室10内の温度を対象物Xの種目毎に定められる設定温度に設定し、電極制御装置14により雰囲気の放電電場数kV/mを印加して対象物Xの温度が設定温度になるまで解凍し、加工が可能になるまで解凍する。
【0149】
(解凍例2)対象物Xの解凍を急ぐ場合は、電極制御装置14の設定電圧を対象物Xの種目ごとに定められた設定電圧値よりも高めに設定し、対象物Xの温度が例えば温度制御装置11の設定温度に近づいた場合、電極制御装置14の設定電圧値を、対象物Xの種別毎に定められる電圧値に変更する。その結果、対象物Xの温度は温度制御装置11の設定温度に収斂する。
【0150】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。