【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いた測定方法は以下のとおりである。
【0059】
<乾燥状態の中空糸膜を含水させるときの含水飽和到達時点での分離機能表面に存在する水に占める中間水の存在比率の算出>
当該中間水の存在比率の算出は(1)IR測定、(2)含水飽和到達時点の決定、(3)ケモメトリックスによるデータ解析の手順で行った。
【0060】
(1) IR測定
表1記載の条件にて時間分解IR測定を実施した。サンプリングの手順は以下の通りとした。中空糸膜の内表面を蒸留水で1.5m
2あたり100mL/minで5分間洗浄したのち、中空糸膜の外表面を500mL/minで2分間洗浄することにより、プライミングを行った。プライミング後の血液処理器を分解してサンプリングした中空糸膜(試料)はあらかじめ凍結乾燥し、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室に24時間以上静置し、平衡水分率に達したもの(「乾燥状態」とする。)を測定に供した。
1)直径40mmφのKIRIYAMAろ紙(No.5C, 保留粒子1μm)を1/8の扇型にカットした。
2)試料を剃刀で開き、中空糸膜の内表面を上向きにし、
図1のようにろ紙の上に置いた。
3)ATR結晶を分離機能表面に接触させ、扇型のろ紙の円弧側の端に、マイクロシリンジを用い、蒸留水を13〜15μL滴下し、水が中空糸膜に浸透し、OHピークが飽和する時点以降まで、時間分解IR測定を実施した。
【0061】
【表1】
【0062】
測定に際しては、ATR結晶と試料との接触状態を確認するために、ポリスルホン系樹脂由来のベンゼン環(1485cm
-1付近)の強度が0.1以上であることを確認した。
なお、OHピークが飽和する時点とはポリスルホン系樹脂のベンゼン環(1485cm
-1付近)のピーク強度に対して、水酸基由来(3000〜3700cm
-1)のピーク強度の増加が観察されなくなった時点である。
【0063】
(2) 含水飽和到達時点の決定
得られたスペクトルデータをポリスルホン系樹脂由来のベンゼン環(1485cm
-1付近)の強度で規格化した。2700cm
-1と3800cm
-1でベースラインを設定し、水酸基のピーク面積を算出した。
時系列の水酸基面積強度データに対し前後各4点を含む9点のデータの平均値としてスムージング処理を実行した。スムージング処理後のデータ点に対して、そのデータ点を含めて以前のデータ10点の平均の傾き(増加率)が0以下になった点を含水飽和到達時点と決定した。
なお、傾きが0になった点以降、30点(6s)の間に5%以上面積増加が認められた場合は、飽和に達していないと判断し、さらに以降のデータで、上記条件を満たす点を含水飽和到達時点と決定した。
【0064】
(3) ケモメトリックスによるデータ解析
解析方法の基本は、alternating least square(ALS)法と呼ばれるケモメトリックスの手法の一つを用いて、下記のソフト及び計算機を用いた。
計算に用いたソフト:Mathworks (Natick, MA) MATLAB ver. R2008a
計算機:富士通 FMV LIFEBOOK
具体的な手順を以下に説明する。
0.2秒ごとに測定したスペクトルから1550〜1800cm
-1及び2700〜3800cm
-1まで波数毎の強度(3.858cm
-1ごと、計351点数になる)を行に格納し、0.2秒ごとに測定したスペクトルを列に並べて実験スペクトル行列Aを作成した。一例を
図2に示す。
次にこのスペクトル行列Aを、不凍水(本実施例では、分光学的に水素結合領域を検出しているので、「束縛水」として以下記載する。)、中間水、自由水の3つの化学成分、及び差分スペクトルからなる4成分(純スペクトル行列K)と、それぞれに対応した濃度行列Cとに分解を行なった。その際、分解を一意的に達成できるように、行列に制限を設けた。ALS法では、純スペクトル及び濃度行列は絶対に負の要素をもたない、という非負条件を科すことで、スペクトル分解を行なった。これは、吸収スペクトルや濃度は負にはならないという根拠に基づく。妥協解計算の過程では負の値が現れたとき、強制的にこれをゼロに置き換えて回帰計算を繰り返し、すべての行列要素が非負条件を満足するように収束させることによってスペクトル解、C及びKを求めた。
A=CK 計算式(1)
1回目の測定スペクトルをA
1,2回目の測定スペクトルをA
2,・・・測定開始からの時間tのスペクトルをA
tと表し、束縛水、中間水、自由水及び差分スペクトルをK
1,K
2,K
3,K
4と置き(この時点ではK
1,K
2,K
3,K
4のどれがどの成分かは不明)、測定開始からの時間tでの4つの成分の濃度比をC
1t,C
2t,C
3t,C
4tとおくと、計算式(1)は下記計算式(2)のように表せる。
【0065】
【数1】
【0066】
計算式(2)の行列Cに乱数を発生させ、濃度は負にはならないという非負条件より、負の値は0と置き換えた上で、スペクトルK
1,K
2,K
3,K
4を求めた。次に、スペクトルは負にならないという非負条件があるので、スペクトルKの負の値をもつ成分を0で置き換え、Cを求めた。さらに、このCから非負条件を科して、Kを求めた。KとCのすべての成分が0以上になるまで、この操作を繰り返し、解を求めた。
得られた、K,Cから、濃度がほとんどゼロになっているものが差分スペクトルであり、それ以外の3つのスペクトルのうち、1550〜1800cm
-1に大きなピークを持ち、かつ、3100〜3500cm
-1にほとんどピークを持たないものを束縛水、3400cm
-1付近にピークを持つものを中間水、3200、3400cm
-1にピークを持つ幅広いピークを自由水と帰属した。
飽和到達点から6秒間(30測定点)のC
1t,C
2t,C
3t,C
4tより、差分スペクトル分を差し引いて再度濃度比の計算を行い、束縛水、中間水、自由水のそれぞれの濃度の平均値を算出し、中間水の存在比率を求めた。
【0067】
<水分含有率の測定>
中空糸膜の水分含有率は、プライミングなどの前処理なく血液処理器を分解してサンプリングした中空糸膜(試料)約1gをサンプリングし、正確に秤量した。その後、60℃×12hrにて真空乾燥を行ったのち、秤量し、質量減量分を水分として水分含有率を算出した。乾燥前質量をW
1、乾燥後質量をW
2とすると、水分含有率W(%)は、次の計算式(5)で表される。
【0068】
【数2】
【0069】
<中空糸膜表面に存在する脂溶性ビタミン量>
血液処理器を分解して中空糸膜を採取し、水洗した後、40℃で真空乾燥した。乾燥後の中空糸膜表面の面積として0.2m
2となるように中空糸膜をガラス瓶に秤取し、1質量%のトリトンX−100(キシダ化学、化学用)水溶液を80mL加え、室温で60分間、超音波振動を加えながら、脂溶性ビタミンの抽出を行った。定量操作は、液体クロマトグラフ法により行い、脂溶性ビタミン標準溶液のピーク面積から得た検量線を用いて、抽出液の脂溶性ビタミン量を求めた。すなわち、脂溶性ビタミン量は、中空糸膜表面の面積が0.2m
2となる中空糸膜の平均値として求めることができる値である。
高速液体クロマトグラフ装置(ポンプ:日本分光PU−1580、検出器:島津RID−6A、オートインジェクター:島津SIL−6B、データ処理:東ソーGPC−8020、カラムオーブン:GL Sciences556)に、カラム(Shodex Asahipak ODP−506E packed column for HPLC)を取り付け、カラム温度40℃において、移動相である高速液体クロマトグラフィー用メタノールを流量1mL/minで通液し、紫外部の吸収ピークの面積から脂溶性ビタミン濃度を求めた。この濃度から、抽出効率を100%として、中空糸膜表面に存在する脂溶性ビタミン量(mg/m
2)を求めた。
滅菌処理により部分酸化した脂溶性ビタミン量も中空糸膜表面1m
2あたりの脂溶性ビタミン量に含めた。滅菌処理により部分酸化した脂溶性ビタミン量を定めるべく、予め検量線作成に用いる脂溶性ビタミンを空気中で50kGyの放射線に当て、部分酸化した脂溶性ビタミンの吸収ピークを予め定めておき、面積計算に用いるピーク群に含め、加算した。
【0070】
<親水性ポリマー濃度の測定>
血液処理器から中空糸膜を採取し、繊維軸に沿って切り開いて分離機能表面を露出させ、X線光電子分光法により、下記条件にて分離機能表面における親水性ポリマーの濃度を測定した。
測定装置 :サーモフィッシャー ESCALAB250
励起源 :単色化AlKα 15kV×10mA
分析サイズ :長径約1mmの楕円
光電子脱出角度 :0°(分光器の軸が試料面対して垂直)
取込領域
Survey scan:0〜1,100eV
Narrow scan:C1s、O1s、N1s、S2p、Na1s
Pass Energy
Survey scan:100eV
Narrow scan:20eV
分離機能表面における親水性ポリマーの濃度は、ポリヒドロキシアルキルメタクリレートの場合は硫黄や窒素を含有しないので、硫黄量からポリスルホン系樹脂量由来の炭素及び酸素量を計算、窒素量からポリビニルピロリドンの由来の炭素及び酸素量を計算し、差分の炭素及び酸素量を重合体由来として質量濃度換算した。多糖類のナトリウム塩の場合はナトリウム量から多糖類の量を計算し、構造によって窒素や硫黄量を計算して、差分の窒素や硫黄からポリビニルピロリドン及びポリスルホン系樹脂量を算出した。X線光電子分光法では、水素は検出されないので、計算から除外した。炭素量、酸素量、窒素量、硫黄量、ナトリウム量は、C1s、O1s、N1s、S2p、Na1sの面積強度から各元素の相対感度係数(C1s:1.00、O1s:2.72、N1s:1.68、S2p:1.98、Na1s:10.2)を用いて相対量(atomic%)として測定した。
(分離機能表面における親水性ポリマーの質量濃度)/(分子機能表面におけるポリビニルピロリドンの質量濃度)として、分離機能表面における親水性ポリマーの存在量を求めた。
【0071】
<炭素数4以下のケトン及び/又はアルコールの測定>
中空糸膜に含有される、炭素数4以下のケトン及び/又はアルコールの、中空糸膜1gあたりの含有量は、以下の方法により測定した。
血液処理器の解体を行い、恒量となるまで真空乾燥を行う。その後、中空糸膜を取り出す。この質量を精秤した(Wg)後、N−メチル−2−ピロリドンを加え、攪拌し、溶解した後、ガスクロマトグラフ(GC)により炭素数4以下のケトン及び/又はアルコールの濃度y(%)を算出した。
続いて、Wとyより中空糸膜1gあたりの質量を算出した。
【0072】
<乳酸脱水素酵素(LDH)活性の測定>
中空糸膜の血液適合性は膜表面への血小板の付着性で評価し、膜に付着した血小板に含まれる乳酸脱水素酵素の活性を指標として定量化した。
生理食塩水(大塚生食注、大塚製薬)にて中空糸膜の内表面を蒸留水で1.5m
2あたり100mL/minで5分間洗浄したのち、中空糸膜の外表面を500mL/minで2分間洗浄することにより、プライミングを行った。プライミング後の血液処理器を分解して採取した中空糸膜を有効長15cm、膜面積が5×10
-3m
2となるように両端をエポキシ樹脂で加工し、ミニモジュールを作成した。このミニモジュールに対し、生理食塩水10mLを中空糸膜の内表面側に流し洗浄した。その後、ヘパリン加人血15mL(ヘパリン1000IU/L)を1.3mL/minの流速で上記作製したミニモジュールに37℃で4時間循環させた。生理食塩水によりミニモジュールの内側を10mL、外側を10mLでそれぞれ洗浄した。洗浄したミニモジュールから長さ7cmの中空糸膜を全体の半数本採取後、これを細断してLDH測定用のスピッツ管に入れたものを測定用試料とした。
次に、燐酸緩衝溶液(PBS)(和光純薬工業)にTritonX−100(ナカライテスク株式会社)を溶解して得た0.5容量%のTritonX−100/PBS溶液をLDH測定用のスピッツ管に0.5mL添加後、超音波処理を60分行って中空糸膜に付着した細胞(主に血小板)を破壊し、細胞中のLDHを抽出した。この抽出液を0.05mL分取し、さらに0.6mMのピルビン酸ナトリウム溶液2.7mL、1.277mg/mLのニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)溶液0.3mLを加えて反応させ、直ちにその0.5mLを分取して340nmの吸光度を測定した。残液をさらに37℃で1時間反応させた後に340nmの吸光度を測定し、反応直後からの吸光度の減少を測定した。同様に血液と反応させていない中空糸膜(ブランク)についても吸光度を測定し、下記計算式(4)により吸光度の差を算出した。本方法では、この減少幅が大きいほどLDH活性が高い、すなわち膜表面への血小板の付着量が多いことを意味する。尚、測定は3回行い、平均値として記載した。
Δ340nm=(サンプルの反応直後吸光度−サンプルの60分後吸光度)−(ブランクの反応直後吸光度−ブランクの60分後吸光度) 計算式(4)
血液適合性が優れる中空糸膜としては、LDH活性が40(Δabs/hr・m
2)以下のものを血液適合性が良好と判断して○とし、40(Δabs/hr・m
2)を超えるものは血液適合性が良好でないと判断して×とした。
【0073】
<血液処理器の抗酸化性能測定>
塩化第二鉄6水和物を純水に溶解し、0.3w/v%(溶液100mL中の溶質の量(g))水溶液を調製した。次いで、血液処理器を分解して中空糸膜を採取し、水洗した後、40℃で真空乾燥した。乾燥後の中空糸膜1gと塩化第二鉄水溶液20mLとをガラス瓶に秤取し、60mmHgで10分間脱泡した後、振とう下で30℃×4時間インキュベートした(中空糸膜表面に存在する脂溶性ビタミンが鉄(III)イオンを還元し、鉄(II)が生じる。)。インキュベートした水溶液を2.6mL、エタノール0.7mL、別途調製した0.5w/v%の2,2’−ビピリジルエタノール水溶液0.7mLを混合し、振とう下で30℃×30分間インキュベートした(鉄(II)とビピリジルとが錯体を形成し、呈色する)。分光計を用いて、呈色した液の520nmにおける吸光度を測定した。
中空糸膜の代わりに、濃度既知の脂溶性ビタミンエタノール溶液を用いて、同様のインキュベーション、呈色反応、吸光度の測定を行って、検量線を作成し、中空糸膜表面1m
2が発現する抗酸化性能を、脂溶性ビタミンの質量相当値として求めた(小数点以下第一位を四捨五入した)。
中空糸膜表面1m
2あたりの脂溶性ビタミンの質量相当値が10(mg/m
2)以上の場合を抗酸化性能が良好であると判断して○とし、10(mg/m
2)未満の場合を抗酸化性能が良好でないと判断して×とした。
【0074】
<血液処理器の抗酸化性能安定性測定>
過酷な環境下で保存した際の、抗酸化性能の低下の防止効果について、以下の方法に評価した。製造直後の血液処理器、及び60℃恒温槽の中で6日間保管した血液処理器のそれぞれの抗酸化性能について、以下の方法により測定した。
また、測定した抗酸化性能の値を用い、下記計算式(5)により、60℃加熱による抗酸化性能安定性を算出した。
抗酸化性能安定性(%)=(60℃加熱処理品の抗酸化性能)/(製造直後品の抗酸化性能)×100 計算式(5)
計算式(5)で算出された抗酸化性能安定性が70(%)以上である場合、安定性が良好と評価して○とし、70(%)未満の場合は安定性が良好でないと評価して×とした。
【0075】
<内表面から溶出した硝酸イオン濃度の測定>
プライミングなどの前処理なく血液処理器を分解してサンプリングした中空糸膜を有効長15cm、膜面積が12.2×10
-3m
2となるように両端をエポキシ樹脂で加工し、ミニモジュールを作成した。このミニモジュールに対し、37℃の注射用蒸留水(大塚製薬)を3mL/minの速度で流れ方向が上から下になるようにミニモジュールをセットして中空糸膜の内表面側に流し、出てきた液をPS透明スピッチ(滅菌済:アズワン株式会社 コード:2-466-01)に5mlサンプリングした。この溶液中の硝酸イオン濃度を表2記載の条件でイオンクロマトにより定量した。
【0076】
【表2】
非特許文献2によると、硝酸性窒素としての無毒性量(NOAEL)は1.5mg/kg体重/日であるが、これは経口摂取であり、安全係数を1000倍として、体重60kgの人が週3回透析したと仮定すると、透析1回あたりの許容量は0.21mg/sessionとなる。2.5m
2の膜面積をもつ血液処理器を用いた場合は、本測定での硝酸イオン濃度の許容濃度は0.21ppmと計算される。硝酸イオン濃度が0.21ppm以下の場合は○とし、0.21ppmを超える場合は×とした。
【0077】
<血液処理器の透水性能測定>
実施例及び比較例で製造された中空糸膜型血液処理器を、一定圧力(200mmHg)、温度(37℃)条件下において、血液処理器内を純水で全濾過させ、濾過に要する時間を測定した。この結果より、透水性能(UFR(mL/hr・mmHg))を算出した。
中空糸膜型血液処理器を3本以上測定し、平均値との差(偏差)の2乗を平均し、(これを変数と同じ次元で示すために)平方根をとった標準偏差(ばらつきσ)を求めた。算出された透水性能が60(UFR(mL/hr・mmHg))以上である場合、安定性が良好と評価して○とし、60(UFR(mL/hr・mmHg))未満の場合は安定性が良好でないと評価して×とした。
また、透水性能ばらつきについては、2.0以上である場合同一群内での性能ばらつきが大きく良好でないと評価し×とし、2.0未満を同一群内での性能ばらつきが小さく良好であると評価し○とした。
【0078】
[実施例1]
製膜紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700 溶解度パラメータδ 9.90)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(ビー・エー・エス・エフ K90)3.5質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド79.0質量%に溶解して均一な溶液とした。製膜紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は20質量%であった。この製膜紡糸原液を60℃に保ち、N,N−ジメチルアセトアミド58.1質量%と水41.9質量%との混合溶液からなる中空内液とともに、2重環状紡口から吐出させ、0.96mのエアーギャップを通過させて75℃の水からなる凝固浴へ浸漬し、80m/分にて巻き取った。巻き取った糸束を切断後、束の切断面上方から80℃の熱水シャワーを2時間かけて洗浄することにより膜中の残溶剤を除去し、該膜をさらに乾燥室に入れ、180℃の加熱水蒸気を導入し、乾燥することにより含水量が1%未満の乾燥膜を得た。
なお、乾燥後の膜厚が35μm、内径が185μmとなるように製膜紡糸原液及び中空内液の吐出量を調整した。
次に、乾燥後の膜を、モジュールに組み上げたときの有効膜面積が1.5m
2になるように束にして、PEフィルムに包装後、液体の導入及び導出用の2本のノズルを有する筒状容器に充填して両端部をウレタン樹脂で包埋後、硬化したウレタン部分を切断して中空糸膜が開口した端部に加工した。この両端部に血液導入(導出)用のノズルを有するヘッダーキャップを装填し、有効膜面積が1.5m
2の血液処理器の形状に組み上げた。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に、α−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.11質量%溶解したコート液を、24℃温度下で血液処理器の血液導入ノズルから中空糸膜の内表面側に1分間通液してα−トコフェロールを接触させた。その後、エアフラッシュして内空部の残液を除去した後、イソプロパノール雰囲気の24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、α−トコフェロールを固定化した。
大気雰囲気下、25kGyでγ線滅菌を実施し血液処理器を得た。
【0079】
[実施例2]
製膜紡糸原液は、ジメチルアセトアミド(キシダ化学、試薬特級)79質量%に、ポリスルホン(ソルベイ、P−1700)17質量%及びポリビニルピロリドン(ビー・エー・エス・エフ、K−90)4質量%を溶解して作成した。製膜紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は24質量%であった。
中空内液は、ジメチルアセトアミド60質量%水溶液に、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート(アルドリッチ、重量平均分子量330,000、溶解度0.1g未満)を0.1質量%となるように溶解して作成した。
チューブインオリフィス型の紡糸口金から、製膜紡糸原液及び中空内液を吐出させた。吐出時の製膜紡糸原液の温度は40℃とした。吐出した製膜紡糸原液をフードで覆った落下部を経て水よりなる60℃の凝固浴に浸漬して凝固させた。紡糸速度は30m/分とした。
凝固後、水洗、モジュールに組み上げたときの有効膜面積が1.5m
2になるように束にして、PEフィルムに包装後、乾燥室に入れ、180℃の加熱水蒸気を導入し、乾燥を行って中空糸膜を得た。水洗温度は90℃、水洗時間は180秒とした。
なお、乾燥後の膜厚が35μm、内径が185μmとなるように製膜紡糸原液及び中空内液の吐出量を調整した。
次に、アセトン57質量%の水溶液に、α−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.64質量%溶解したコート液を、24℃温度下で血液処理器の血液導入ノズルから中空糸膜の内表面側に1分間通液してα−トコフェロールを接触させた。その後、エアフラッシュして中空部の残液を除去した後、アセトン雰囲気の24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、α−トコフェロールを固定化した。
得られた中空糸膜から有効膜面積1.5m
2のモジュールを組み上げ、大気雰囲気下、20kGyで電子線滅菌を実施し血液処理器を得た。
【0080】
[実施例3]
製膜紡糸原液は、ジメチルアセトアミド(キシダ化学、試薬特級)79質量%に、ポリスルホン(ソルベイ、P−1700)17質量%及びポリビニルピロリドン(ビー・エー・エス・エフ、K−90)4質量%を溶解して作成した。製膜紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は24質量%であった。
中空内液は、ジメチルアセトアミド60質量%水溶液を用いた。
チューブインオリフィス型の紡糸口金から、製膜紡糸原液及び中空内液を吐出させた。吐出時の製膜紡糸原液の温度は40℃とした。吐出した製膜紡糸原液をフードで覆った落下部を経て水よりなる60℃の凝固浴に浸漬して凝固させた。紡糸速度は30m/分とした。
凝固後、水洗を行い、モジュールに組み上げたときの有効膜面積が1.5m
2になるように束にして、PEフィルムに包装後、乾燥室に入れ、180℃の加熱水蒸気を導入し、乾燥を行って中空糸膜を得た。水洗温度は90℃、水洗時間は180秒とした。
なお、乾燥後の膜厚が35μm、内径が185μmとなるように製膜紡糸原液及び中空内液の吐出量を調整した。
次に、イソプロパノール57質量%の水溶液に、α−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を3.2質量%溶解したコート液を、24℃温度下で血液処理器の血液導入ノズルから中空糸膜の内表面側に1分間通液してα−トコフェロールを接触させた。その後、エアフラッシュして中空部の残液を除去した後、イソプロパノール雰囲気の24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、α−トコフェロールを固定化した。
得られた中空糸膜から有効膜面積1.5m
2のモジュールを組み上げ、大気雰囲気下、25kGyでγ線滅菌を実施し血液処理器を得た。
【0081】
[実施例4]
製膜紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700 溶解度パラメータδ 9.90)17質量%、ポリビニルピロリドン(ビー・エー・エス・エフ、K−90)4質量%、α−トコフェロール(和光純薬工業 特級)0.6質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド78.4質量%に溶解して作成した。製膜紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は24質量%であった。
中空内液には、ジメチルアセトアミド60質量%水溶液に、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート(アルドリッチ、重量平均分子量330,000、溶解度0.1g未満)を0.1質量%となるように溶解して作成した。
チューブインオリフィス型の紡糸口金から、製膜紡糸原液及び中空内液を吐出させた。吐出時の製膜紡糸原液の温度は40℃とした。吐出した製膜紡糸原液をフードで覆った落下部を経て水よりなる60℃の凝固浴に浸漬して凝固させた。紡糸速度は30m/分とした。
凝固後、水洗を行い、乾燥機に導入し、120℃で2分間乾燥後、さらに160℃で0.5分間の加熱処理を行った後、クリンプを付与したポリスルホン系中空糸膜を巻き取った。モジュールに組み上げたときの有効膜面積が1.5m
2になるように束にして、PEフィルムに包装した。
なお、乾燥後の膜厚を45μm、内径を185μmに合わせるように紡糸原液及び中空内液の吐出量を調整した。
得られた中空糸膜から有効膜面積1.5m
2のモジュールを組み上げ、大気雰囲気下25kGyでγ線滅菌を実施し血液処理器を得た。
【0082】
[実施例5]
製膜紡糸原液として、ジメチルアセトアミド(キシダ化学、試薬特級)79質量%に、ポリスルホン(ソルベイ、P−1700)17質量%、ポリビニルピロリドン(ビー・エー・エス・エフ、K−90)4質量%を溶解して作成した。製膜紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は24質量%であった。
中空内液は、ジメチルアセトアミド60質量%水溶液に、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート(アルドリッチ、重量平均分子量330,000、溶解度0.1g未満)を0.1質量%となるように溶解して作成した。
チューブインオリフィス型の紡糸口金から、製膜紡糸原液及び中空内液を吐出させた。吐出時の製膜紡糸原液の温度は40℃とした。吐出した製膜紡糸原液をフードで覆った落下部を経て水よりなる60℃の凝固浴に浸漬して凝固させた。紡糸速度は30m/分とした。
凝固後、水洗、モジュールに組み上げたときの有効膜面積が1.5m
2になるように束にして、PEフィルムに包装後、乾燥室に入れ、180℃の加熱水蒸気を導入し、乾燥を行って中空糸膜を得た。水洗温度は90℃、水洗時間は180秒とした。
なお、乾燥後の膜厚が35μm、内径が185μmとなるように製膜紡糸原液及び中空内液の吐出量を調整した。
次に、テトラヒドロフラン57質量%の水溶液に、α−トコフェロール(和光純薬工業 特級)を0.64質量%溶解したコート液を、24℃温度下で血液処理器の血液導入ノズルから中空糸膜の内表面側に1分間通液してα−トコフェロールを接触させた。その後、エアフラッシュして中空部の残液を除去した後、テトラヒドロフラン雰囲気の24℃の乾燥空気を30分間通気して溶媒を乾燥除去することにより、α−トコフェロールを固定化した。
得られた中空糸膜から有効膜面積1.5m
2のモジュールを組み上げ、大気雰囲気下、20kGyで電子線滅菌を実施し血液処理器を得た。
【0083】
[比較例1]
製膜紡糸原液は、ジメチルアセトアミド(キシダ化学、試薬特級)79質量%に、ポリスルホン(ソルベイ、P−1700)17質量%及びポリビニルピロリドン(ビー・エー・エス・エフ、K−90)4質量%を溶解して作成した。製膜紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は24質量%であった。
中空内液は、ジメチルアセトアミド60質量%水溶液を用いた。
チューブインオリフィス型の紡糸口金から、製膜紡糸原液及び中空内液を吐出させた。吐出時の製膜紡糸原液の温度は40℃とした。吐出した製膜紡糸原液をフードで覆った落下部を経て水よりなる60℃の凝固浴に浸漬して凝固させた。紡糸速度は30m/分とした。
凝固後、水洗を行い、モジュールに組み上げたときの有効膜面積が1.5m
2になるように束にして、PEフィルムに包装後、乾燥室に入れ、180℃の加熱水蒸気を導入し、乾燥を行って中空糸膜を得た。水洗温度は90℃、水洗時間は180秒とした。
なお、乾燥後の膜厚が35μm、内径が185μmとなるように製膜紡糸原液及び中空内液の吐出量を調整した。
得られた中空糸膜から有効膜面積1.5m
2のモジュールを組み上げ、大気雰囲気下、25kGyでγ線滅菌を実施し血液処理器を得た。
【0084】
[比較例2]
紡糸原液として、ポリスルホン(ソルベイ P−1700 溶解度パラメータδ 9.90)17質量%及びポリビニルピロリドン(ビー・エー・エス・エフ、K−90)4質量%、α−トコフェロール(和光純薬工業 特級)1.9質量%を、N,N−ジメチルアセトアミド77.1質量%に溶解して作成した。製膜紡糸原液中のポリスルホンに対するポリビニルピロリドンの混和比率は24質量%であった。
中空内液には、ジメチルアセトアミド42質量%水溶液を用いた。
チューブインオリフィス型の紡糸口金から、製膜紡糸原液及び中空内液を吐出させた。吐出時の製膜紡糸原液の温度は40℃とした。吐出した製膜紡糸原液をフードで覆った落下部を経て水よりなる60℃の凝固浴に浸漬して凝固させた。紡糸速度は30m/分とした。
凝固後、水洗を行い、乾燥機に導入し、120℃で2分間乾燥後、さらに160℃で0.5分間の加熱処理を行った後、クリンプを付与したポリスルホン系中空糸膜を巻き取った。モジュールに組み上げたときの有効膜面積が1.5m
2になるように束にして、PEフィルムに包装した。
なお、乾燥後の膜厚を45μm、内径を185μmに合わせるように紡糸原液及び中空内液の吐出量を調整した。
得られた中空糸膜から有効膜面積1.5m
2のモジュールを組み上げ、大気雰囲気下25kGyでγ線滅菌を実施し血液処理器を得た。
【0085】
実施例及び比較例で得られた血液処理器の測定結果について、表3に示す。
【表3】