【実施例】
【0016】
(成形品)
実施例の成形品10は、
図1および
図2に示すように、所要形状に形成された合成樹脂製の基材12と、該基材12の表側に配設された表皮14とを備えている。基材12は、所要の厚み(3〜5mm)で矩形状をなす板状部材であり、外側の端縁が裏側へ突出している。表皮14は、基材12の表面12aに接合された被覆部14aと、該基材12の基材端縁13から端縁裏側に巻き込まれて該基材12の裏面12bに接合された巻き込み部14bとを備えており、基材12の基材端縁13は表皮14により被覆されている。これにより、成形品10の成形品端縁(端縁)11は、基材12の基材端縁13を被覆する表皮14で画成されている(
図2参照)。なお、実施例では、成形品10として、表面12aおよび裏面12bにおける基材端縁13に沿う外縁部を除く部分が平坦で矩形状をなす基材12を備えたものを例示しているが、基材12の形状は、表側へ凸となるよう湾曲した形状のものや、表面12aが凹凸部を有するもの等であってもよい。
【0017】
(成形装置)
実施例の成形品10は、
図3および
図4に示す成形装置20により成形される。成形装置20は、内部にキャビティ26が画成され、該キャビティ26内に表皮14をセットしたもとで、基材12を成形すると共に該表皮14を賦形して、基材12および表皮14を一体成形するよう構成されている。すなわち、成形装置20は、基材12をインジェクション成形する工程と、シート状の表皮14から被覆部14aおよび巻き込み部14bを賦形すると共に該表皮14を基材12に接合する工程とを同時に行い得るよう構成されている。ここで、成形装置20は、裏側成形型22および表側成形型24と、該裏側成形型22に配設された所定数の保持体30とを備え、裏側成形型22が基台21に据え付けられる固定型であると共に、この裏側成形型22の上側に可動型である表側成形型24が配置され、図示しない開閉機構により、表側成形型24が裏側成形型22に対して近接および離間するよう構成されている。
【0018】
(裏側成形型)
裏側成形型22は、成形品10の裏側において、該成形品10における成形品端縁11に沿う外縁部を除く部分の形状を規定する裏面成形面(成形面)23が形成され、該裏面成形面23の全体が上方へ突出したコア型となっている。すなわち、裏面成形面23は、成形品10の裏側において、基材12が露出する部分を成形するようになっており、実施例では平坦な長方形状となっている。そして、裏側成形型22における裏面成形面23の外周壁には、該裏面成形面23の外縁に連なる挟持面28が形成されている。この挟持面28は、裏面成形面23の外縁から表側成形型24の型開閉方向に延在するよう形成されている。ここで実施例では、表側成形型24が上下方向に型開閉するようになっていることで、挟持面28は、裏面成形面23の外縁から下方へ延在して、裏面成形面23の外縁から外方へ向いている。なお、裏面成形面23が長方形状となっているので、裏側成形型22における裏面成形面23の周囲には、該裏面成形面23の外縁方向へ90°ごとに向きが異なる4つの挟持面28が連設けられている。各挟持面28は、平坦な横長の矩形状となっている。
【0019】
(保持体)
保持体30は、
図3および
図4に示すように、裏側成形型22に対して表側成形型24の型開閉方向と交差する方向に移動可能に配設されている。保持体30は、裏側成形型22に対し近接、離間する方向へ移動可能に配設され、該裏側成形型22から離間した待機位置(
図3(a))および該裏側成形型22に当接した押付位置(
図3(b))の間で移動するようになっている。そして、保持体30は、離間位置から裏側成形型22に向け移動させて押付位置とすると、型開閉方向に曲げた表皮14の余長部分15を該裏側成形型22との間に挟んで押さえ付け可能となっている。また、保持体30は、押付位置に向け移動して、該裏側成形型22と該保持体30との間に表皮14の余長部分15を挟むことで、成形品10の成形品端縁11を規定するキャビティ26の閉塞端34より離間した保持位置29で、裏側成形型22側から表皮14を該キャビティ26に臨ませるようになっている。すなわち、保持体30は、表皮14の保持位置29で囲われる領域の外側に延在する該表皮14の余長部分15を、裏側成形型22の挟持面28との間でキャビティ26に露出しないように保持して、該表皮14の保持位置29より内側において、該表皮14の余長部分15を除く部分を、成形品構成部分としてキャビティ26に臨ませ得るように構成されている。
【0020】
そして、保持体30は、
図6に示すように、押付位置に移動して裏側成形型22との間で表皮14の余長部分15を挟むことで、キャビティ26に臨む表皮14に、該保持体30で一部が画成されているキャビティ26の閉塞端34側へ凸となるようたわみを形成するようになっている。すなわち、余長部分15が曲がった表皮14は、保持体30により該余長部分15が保持位置29へ移動することで、成形品10の成形品端縁11を成形する該キャビティ26の閉塞端34に向けて凸になるようたわんだ形状となる。ここで、キャビティ26の閉塞端34は、離間位置から押付位置に移動する保持体30の移動方向において、保持位置29を挟んで裏側成形型22と反対側(離間する側)に位置している。従って、保持体30の保持面31と裏側成形型22の挟持面28とにより余長部分15を保持位置29で挟んで保持した状態では、表皮14は、裏側成形型22から離間する方向へ凸になるようたわみが形成される。
【0021】
実施例では、裏側成形型22の裏面成形面23が長方形状をなして、該裏側成形型22の外周面に向きが異なる4つの挟持面28が設けられることで、各挟持面28に個別に相対する4つの保持体30が、裏側成形型22を囲むように配置されている。各保持体30は、相対する挟持面28に対し、型開閉方向である上下方向と交差する水平方向において近接、離間移動するように配設されている。なお、各保持体30は、配設向きおよび長さなどは異なるが、基本的な構成は同じであるので、同一部材、部位には同じ符号を付して説明する。
【0022】
各保持体30は、
図3および
図4に示すように、相対する挟持面28の水平方向の長さより適宜長い略直方体形状に形成されたブロック状部材である。保持体30は、裏側成形型22の挟持面28との間に表皮14の余長部分15を挟む保持面31と、この保持面31に連なり、保持面31で表皮14を押さえ付けた際にキャビティ26に臨む規定面32とを有している。保持面31は、相対する挟持面28の面形状と同じ面形状とされ、実施例では、各挟持面28が平坦な矩形状となっていることで、該保持面31は平坦な矩形面に形成されている。そして、保持面31の上縁は、相対する挟持面28の上縁と同じ高さ位置となっている。これにより、保持面31のキャビティ26に臨む上縁が、前述した表皮14の保持位置29を規定している。
【0023】
保持体30に設けられた規定面32は、
図7に示すように、成形装置20を型閉めすることで画成されるキャビティ26の外縁部分をなし、成形品10における成形品端縁11および該成形品端縁11に沿う外縁部を成形する。規定面32は、保持体30における表側成形型24の対向する面(実施例では上面)に、表側成形型24側から見て保持面31と平行に延在するように形成されている。実施例では、規定面32が、保持体30の表側成形型24に相対する外面(上面)から凹んで該表側成形型24側へ開口した溝状に形成され、成形品10の成形品端縁11の外面形状と、該成形品10の裏側における該成形品端縁11に沿う部分の外面形状および該成形品10の表側における該成形品端縁11に沿う部分の外面形状を規定する。そして、規定面32における成形品端縁11を規定する底部分がキャビティ26の閉塞端34となっており、該閉塞端34は保持位置29から離間している。
【0024】
また、保持体30は、
図4に示すように、水平方向における両端部に、保持面31に連なる部分から離間する方向に向けて拡開する傾斜状をなす接合面33が形成されている。この接合面33は、各保持体30が表皮14の余長部分15を押さえ付ける押付位置(
図6、
図7参照)に移動した際に、隣接する保持体30との干渉を回避するために形成されている。そして、各保持体30が押付位置にある場合には、保持体30の各接合面33が、隣接する保持体30の接合面33と面接触するように構成されている。従って、各保持体30が押付位置にある場合に、隣接する保持体30の規定面32が互いに連なることで、裏側成形型22の裏面成形面23の周りには、該裏面成形面23を囲む矩形の環状をなす規定面32が画成されるようになっている。
【0025】
図3および
図4に示すように、裏側成形型22の外周部には、外方へ延出した台座部27が設けられており、各保持体30は、該台座部27に設置された第1ガイド部35により、該挟持面28に対して近接、離間移動が可能となっている。また、台座部27には、各保持体30に個別に対応した移動手段としての第1アクチュエータ36が、該保持体30の裏側成形型22と反対側に設置されており、該第1アクチュエータ36のロッド36aの先端が、対応の保持体30に連結されている。従って、各保持体30は、第1アクチュエータ36の作動により裏側成形型22側へ近づく方向へ移動して、保持面31と挟持面28とで表皮14の余長部分15を挟んで押さえ付ける押付位置(
図3(b)、
図6、
図7参照)と、裏側成形型22から離れる方向へ移動して、保持面31と挟持面28との間に隙間を画成する待機位置(
図3(a)、
図4、
図5参照)との間で移動可能に構成されている。なお、第1ガイド部35は、台座部27から上方に突出して設けられ、該台座部27の表面と保持体30の底部との間に隙間が画成されている。
【0026】
(端末保持手段)
台座部27には、
図4〜
図6に示すように、裏側成形型22の挟持面28と各保持体30の保持面31とで押さえ付けられる前に、表皮14を該裏側成形型22に保持する端末保持手段としてのクランプ40が複数(実施例では10個)配設されている。クランプ40は、裏面成形面23を覆うように裏側成形型22に配置された表皮14の端末部を所要の間隔毎に保持することで、裏側成形型22の挟持面28と保持体30の保持面31とで表皮14の余長部分15を押さえ付ける際に、該表皮14が裏面成形面23の面方向へずれるのを規制するものである。具体的に、クランプ40は、板片状の部材であり、台座部27と保持体30との間の隙間に配設され、図示省略した作動手段により台座部27の上面に対して近接、離間移動(実施例では上下方向に移動)が可能に配設されている。すなわち、クランプ40は、台座部27の上面から離間して、該台座部27と該クランプ40との間に表皮14の端末部の挿脱を許容する非クランプ位置(
図5参照)と、台座部27の上面に近接して、該台座部27の上面とで表皮14の端末部を保持するクランプ位置(
図6参照)とに移動するよう構成されている。なお、裏側成形型22に配置されるシート状の表皮14は、裏側成形型22の裏面成形面23および挟持面28を覆い得るサイズの略矩形に形成されているので、4つのクランプ40により、該表皮14の端末部における各角部を保持するようになっている。
【0027】
(脱型手段)
裏側成形型22には、
図3(a)、
図3(b)および
図4に示すように、成形品10を押し上げて裏側成形型22から脱型させる脱型手段が配設されている。この脱型手段は、所定数(実施例では4本)の突き出しピン42を備えている。各突き出しピン42は、成形装置20において基材12を成形すると共に表皮14を賦形して得られた成形品10を、裏側成形型22から押し出して脱型させる。また、各突き出しピン42は、後述する成形品10の製造工程において、保持体30で表皮14を挟む前に、表皮14を裏側成形型22から離間した状態、すなわち該表皮14を表側成形型24側へ浮かせた状態で該裏側成形型22に配置する際にも作動するようになっている。
【0028】
前述した各突き出しピン42は、裏側成形型22に設けられたスライド機構により、該裏側成形型22にスライド移動可能に配設され、実施例では表側成形型24の型開閉方向と同じ方向(上下方向)に移動するようになっている。このスライド機構は、裏側成形型22を貫通するよう成形されて裏面成形面23に開口する第2ガイド部44と、裏側成形型22の裏側に配設された第2アクチュエータ45とを備えている。各突き出しピン42は、第2ガイド部44にスライド移動可能に配設されると共に、第2アクチュエータ45のロッド45aに後端(下端)側が連結されている。従って、各突き出しピン42は、第2アクチュエータ45の作動により、裏面成形面23から裏側成形型22内に没入して、先端43が該裏面成形面23と面一となる待機位置(
図3(b)、
図7参照)と、裏側成形型22から突き出した突出位置(
図3(a)、
図9(b)参照)との間を、上下方向に移動可能となっている。また、各突き出しピン42は、表皮14を弛ませる際に、突出位置での突き出し高さより低い突き出し高さとなる中間突出位置(
図5、
図6参照)に停止可能となっている。なお、中間突出位置は、表皮14に付与する弛み量に応じて設定される。また、突き出しピン42の配設数や配設位置は、成形品10の大きさや形状に基づいて適宜に設定される。
【0029】
(注入ノズル)
裏側成形型22には、
図3および
図8に示すように、図示省略した樹脂材料供給部に接続されて、裏面成形面23の所要位置に開口した注入ノズル(ゲート)47が配設されている。この注入ノズル47は、裏側成形型22と表側成形型24とを型閉めして画成されたキャビティ26内において、キャビティに収容された表皮14と裏側成形型22の裏面成形面23との間に、溶融した樹脂材料Pを射出するよう構成されている。
【0030】
(表側成形型)
表側成形型24は、
図3(b)および
図7に示すように、各保持体30が押付位置において、裏側成形型22に対して型開閉される。そして、表側成形型24は、型閉め状態において、押付位置にある保持体30の上面に、該表側成形型24の裏側成形型22に対向する壁部の外縁側が面接触するようになる。そして、表側成形型24の裏側成形型22に対向する壁部において、保持体30との面接触する部分で囲まれた中央側が、キャビティ26を画成する表面成形面25となっている。
【0031】
従って、実施例の成形装置20は、各保持体30が押付位置において、裏側成形型22に対して表側成形型24を型閉めすると、各保持体30と表側成形型24とが面接触することで、裏側成形型22の裏面成形面23、表側成形型24の表側成形面25および保持体30の規定面32により、キャビティ26が画成される(
図3(b)、
図7参照)。そして、保持体30の規定面32により、キャビティ26の閉塞端34が、裏側成形型22から離間した位置に画成され、該閉塞端34から離間した基材12の裏側に、裏側成形型22の挟持面28と保持体30の保持面31とが位置し、該保持面31の位置が表皮14を保持する保持位置29となっている。すなわち、保持体30による表皮14の保持位置29は、裏側成形型22の外周縁に沿って位置し、成形品10の成形品端縁11を成形するキャビティ26の閉塞端34から離間している。
【0032】
(製造方法)
次に、前述のように構成された成形装置20を使用した成形品10の製造方法につき、
図5〜
図9を引用して説明する。
【0033】
(裏側成形型に対する表皮の配置)
先ず、
図5に示すように、予め所定サイズの矩形状に裁断されたシート状の表皮14を、裏側成形型22に配置する。この賦形前の表皮14を裏側成形型22に配置するに先立ち、裏側成形型22から表側成形型24を離間させて成形装置20を型開き状態に保持し、各保持体30を裏側成形型22から離間させて待機位置に保持し、各クランプ40を台座部27から離間させて非クランプ位置に保持すると共に、各突き出しピン42を中間突出位置に停止させる。このもとで、シート状の表皮14を、裏側成形型22を覆うように上方から配置する。そして、表皮14における裏側成形型22の上方から側方へ延出した余長部分15を、裏側成形型22と該裏側成形型22から離間した保持体30との間(実施例では下方)へ臨むよう曲げて、該表皮14の外縁部を台座部27に接触させる。そして、表皮14の端末部を、各クランプ40と台座部27との間へ差し込んだ状態で、各クランプ40をクランプ位置へ移動させることで、該表皮14の端末部を台座部27の上面とで挟んで保持する。
【0034】
ここで、各突き出しピン42が中間突出位置としてあると共に、表皮14が弾力性や柔軟性を有している。これにより、各クランプ40で端末部をクランプした状態の表皮14は、
図5に示すように、裏側成形型22の上方においては、突き出しピン42の先端43に支持されて裏面成形面23から離間していると共に、裏側成形型22の側方においては、該裏側成形型22の挟持面28から側方へ離間している。また、裏側成形型22の上方から側方へ曲げた表皮14は、裏側成形型22から離間している。すなわち、表皮14は、保持体30で挟む前に、裏側成形型22の裏面成形面23および挟持面28から浮かせた状態で配置される。
【0035】
(保持体による表皮の保持)
裏側成形型22に対する表皮14の配置が完了したら、
図6に示すように、各第1アクチュエータ36を作動させて、各保持体30を、待機位置から押付位置へ移動させる。このとき、裏側成形型22の挟持面28から離間していた表皮14の余長部分15を、押付位置へ移動中の保持体30で該挟持面28側へ移動させる。そして、保持体30を押付位置とすることで、表皮14の余長部分15を、裏側成形型22の挟持面28と保持体30の保持面31とで挟んで押さえ付ける。
【0036】
(表皮へのたわみ付与)
ここで、
図6に示すように、表皮14において、裏側成形型22の挟持面28と保持体30の保持面31との間に位置している余長部分15は、保持体30に押されて裏側成形型22側(挟持面28側)の保持位置29へ移動するが、保持体30より上方に位置するキャビティ26に臨む表皮の成形品構成部分は、移動する保持体30に押されない。すなわち、保持体30の押付位置への移動により表皮14の余長部分15が保持位置29へ移動することで、該余長部分15が表皮14の曲がった部分より裏側成形型22側に位置するようになるので、該表皮14に、保持体30による表皮14の保持位置29よりも、成形品10の成形品端縁11を成形するキャビティ26の閉塞端34側に向けて凸になるようたわみが形成される。換言すると、裏側成形型22の成形面23および挟持面28から浮かせた表皮14における余長部分15を、押付位置に向け移動させる保持体30で保持位置29へ移動させることで、該表皮14は裏側成形型22から外側へ凸になるようたわんだ状態となり、該表皮14のたわみが形成された側に、キャビティ26の閉塞端34が位置するようになる。
【0037】
(成形装置の型閉め)
次に、
図7に示すように、突き出しピン42を待機位置まで移動させると共に、裏側成形型22に対して表側成形型24を近接移動させ、成形装置20を型閉めする。このとき、表皮14の成形品構成部分は、型閉め時における表側成形型24の表面成形面25の位置より高く浮いていた場合に、表側成形型24の表面成形面25により裏側成形型22の裏面成形面23側へ押される。これにより、キャビティ26に収容された表皮14に形成されたたわみが、成形品10の成形品端縁11を成形する該キャビティ26の閉塞端34に向けて更にたわんだ状態となる。
【0038】
(樹脂材料の注入)
成形装置20の型閉めが完了したら、
図8に示すように、注入ノズル47を介して、基材12をなす樹脂材料Pを、表皮14のキャビティ26に収容された部分(成形品構成部分)と裏側成形型22の裏面成形面23との間に注入する。これにより、注入ノズル47から注入された樹脂材料Pが、表皮14を押しながらキャビティ26内へ広がっていき、
図8(a)に示すように、樹脂材料Pに押された表皮14は、該閉塞端34に向けてスムーズに変形する。そして、表皮14は、
図8(b)に示すように、樹脂原料Pにより、キャビティ26の閉塞端34を画成する保持体30の規定面32および表側成形型24の表面成形面25に押し付けられる。換言すると、キャビティ26に注入する樹脂材料Pにより、保持体30による表皮14の保持位置29で囲われる領域の外側に向けて該表皮14を変形させて、保持体30の規定面32および表側成形型24の表面成形面25に該表皮14を押し付ける。
【0039】
そして、キャビティ26内へ所定量の樹脂材料Pの注入が完了し、所定の硬化時間が経過して樹脂材料Pが硬化することで、基材12の成形が完了する。また、基材12の成形に伴って表皮14が賦形され、基材12の表側に表皮14を配置すると共に、該基材12における基材端縁13の端縁裏側にかけて該表皮14を配置する。すなわち、表皮14は、樹脂材料Pの硬化により基材12を成形することで、基材12の表面12aに接合された被覆部14aおよび該基材12の基材端縁13から端縁裏側へ巻き込んで該基材12の裏面12bに接合された巻き込み部14bが賦形される。そして、保持体30による表皮14の保持位置29が、巻き込み部14bの端縁となる(
図9(a)参照)。
【0040】
(成形品の取り出し)
基材12の成形完了後に、
図9(a)に示すように、表側成形型24を裏側成形型22から離間させて、成形装置20を型開きする。次いで、
図9(b)に示すように、第2アクチュエータ45を作動させて、各突き出しピン42を裏面成形面23から突き出させるようにして、基材12と表皮14とが接合した成形品10を裏側成形型22から脱型させるように付勢する。ここで、各保持体30を押付位置に保持していることで、表皮14の余長部分15は、裏側成形型22の挟持面28と保持体30の保持面31とで押さえ付けられた状態となっている。従って、保持体30で表皮14の余長部分15を保持した状態で、得られた成形品10を各突き出しピン42により上方へ付勢することで、表皮14を、保持体30による該表皮14の保持位置29に沿って切断する。そして、表皮14が保持位置29に沿って切断されることで、得られた成形品10を、突き出しピン42により裏側成形型22から上方へ脱型する。これにより、成形装置20から成形品10が取り出され、該成形品10の製造工程が完了する。
【0041】
(脆弱部)
表皮14には、
図10に示すように、保持体30による該表皮14の保持位置29に沿う脆弱部16を、前工程において予め設けるようにしてもよい。この脆弱部16は、表皮14に、保持位置29に沿って延在するV状溝を設けることで薄肉にしたものである。このように、表皮14に脆弱部16を設けておくことで、基材12の成形および表皮14の賦形後に、表皮14を切断し易くなる。また、表皮14を切断する際に、基材12に接合された表皮14が、該基材12から剥がれることを防止し得る。更に、脆弱部16に沿って表皮14が切断されるので、表皮14の切断部位が綺麗になり、成形品10の美観を向上させ得る。なお、脆弱部16は、薄肉とした部位に限らず、表皮14の保持位置29に沿って切込みを形成したり、表皮14の保持位置29に沿って多数の小孔を所要間隔でミシン目状に形成したもの等であってもよい。
【0042】
実施例の成形装置20を使用した成形品の製造方法によれば、成形品10の成形品端縁11を成形するキャビティ26の閉塞端34より離間した位置で、保持体30の保持面31と裏側成形型22の挟持面28との間に表皮14の余長部分15を挟むようにした。そして、余長部分15を押さえ付けた状態で、裏側成形型22とキャビティ26に収容された表皮14との間に基材12をなす樹脂材料Pを注入することで、表皮14がキャビティ26の閉塞端34側へ変形して成形品10の成形品端縁11が成形されると同時に、表皮14が成形品端縁11から裏側に巻き込んだ形状に賦形される。そして、注入した樹脂材料Pが硬化すると、基材12が成形されると共に、基材12の表側および該基材12の端縁裏側にかけて表皮14が配置され、基材12と表皮14とが接合した成形品10を得ることができる。また、保持体30の保持面31と裏側成形型22の挟持面28との間に表皮14の余長部分15を挟むことで、キャビティ26に臨む表皮14に、該保持体30による表皮14の保持位置29からキャビティ26の閉塞端34に向けて凸になるたわみを形成するので、樹脂材料Pにより押された表皮14が該キャビティ26の閉塞端34に向けて変形し易くなり、成形品10の成形品端縁11を好適に成形することができる。このように、成形装置20により、基材12の成形時に、表皮14を基材12の表側に配置するだけでなく、該表皮14を該基材12の端縁裏側へ巻き込むように賦形し得るので、基材12の成形後に、表皮14を、基材12の端縁裏側へ巻き込んで接合する作業が不要となり、成形品を効率よく製造することができる。
【0043】
そして、裏側成形型22の裏面成形面23および挟持面28から浮かせた状態で表皮14を該裏側成形型22に配置したもとで、裏側成形型22の挟持面28と該裏側成形型22側へ移動させた保持体30の保持面31とで表皮14の余長部分15を挟むようにしたので、キャビティ26に臨む表皮14に、該キャビティ26の閉塞端34側へ凸になるたわみを形成し易い。特に、表皮14を、裏側成形型22から浮かせると共に余長部分15を曲げた状態で該裏側成形型22に配置するので、表皮14の余長部分15を保持位置29で押さえた際には、キャビティ26に臨んで裏面成形面23から浮いた表皮14に、保持体30で一部が画成されたキャビティ26の閉塞端34側へ凸となるようたわみを形成することができる。
【0044】
そして、裏側成形型22の裏面成形面23とキャビティ26に臨む表皮14の成形品構成部分との間に、基材12をなす樹脂材料Pを注入して、該樹脂材料Pに押された表皮14を、閉塞端34を形成する保持体30の規定面32および成形品10の表側を成形する表側成形型24の表面成形面25に押し付けた状態で基材12を成形するので、成形品10の成形品端縁11を綺麗に成形することができる。また、表皮14を介して基材12の基材端縁13の形状が規定されるので、該基材端縁13も適切な形状に成形することができる。そして、表皮14の賦形が手作業によらないので、得られた各成形品10における表皮14の外面形状が一定となり、成形品10の品質の安定化も図ることができる。
【0045】
また、実施例の製造方法では、得られた成形品10を裏側成形型22から脱型させる突き出しピン42を、裏側成形型22と保持体30とで表皮14を挟む前に突き出すようにしたので、表皮14が該裏側成形型22から離間した状態で裏側成形型22に配置されるようになり、該樹脂材料Pの注入時に変形する変形代を該表皮14に確保することができる。そして、表皮14に変形代が確保されることで、樹脂材料Pの注入時には、キャビティ26に収容された表皮14が、該樹脂材料Pにより成形品端縁11を規定する閉塞端34側へ変形し易くなると共に、保持体30の規定面32および表側成形型24の表面成形面25に該表皮14を押し付け易くすることができる。従って、表皮14を無理なく賦形させることができるので、該表皮14の変形不良が生じ難くなり、得られた成形品10の基材12や表皮14に形状不良が発生することを防止し得る。また、樹脂材料Pの注入前に、表皮14に変形代を確保することで、表皮14が伸び難い材料から形成されていても、該表皮14を適切に賦形することができる。更に、成形装置20を構成する既存の突き出しピン42により、裏側成形型22に配置する表皮14を該裏側成形型22から浮いた状態としたり、該表皮14に変形代を確保することができ、別途の手段を追加装備する必要がないので、製造コストを抑えることができる。
【0046】
また、実施例の製造方法に使用される成形装置20は、表皮14の余長部分15を裏側成形型22の挟持面28とで挟む保持体30を、該裏側成形型22に設けられた台座部27に配設した構成となっている。これにより、表側成形型24を裏側成形型22から離間移動させて成形装置20を型開きした後に、裏側成形型22および保持体30で表皮14の余長部分15を挟んで押さえ付けた状態で、各突き出しピン42を突出位置へ突き出すようにすることで、保持体30による表皮14の保持位置29に沿って該表皮14を切断して、余長部分15を切り離すことができる。従って、成形品10の脱型工程および余長部分15の切り離し工程を同時に実施することができ、成形品10の脱型後に、表皮14を切断して余長部分15を切り離す作業が省略されるので、成形品10の製造効率を高めることができる。
【0047】
更に、表皮14に、保持体30による表皮14の保持位置29に沿う脆弱部16を予め設けておくことで、基材12の成形および表皮14の賦形後に、表皮14の切断による余長部分15の切り離しが容易になる。また、表皮14を脆弱部16に沿って切断する際に、基材12に接合された表皮14の剥がれを防止し得る。更に、切断部位が綺麗になり、成形品10の美観を向上させ得る。
【0048】
(変更例)
本発明は、前述した実施例に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)所要位置に開口が開設された成形品においては、該成形品を成形する成形装置の裏側成形型において、該開口を規定する部位に隣接して保持体を配設することで、基材の表側から開口を介して該開口の端縁裏側へ巻き込むように表皮を賦形することが可能である。
(2)保持体30の配設数や配設位置は、実施例で例示した4つに限らず、成形品10のサイズや端縁形状等により決定される。
(3)複数の保持体30により表皮14を押さえ付けるタイミングは、全ての保持体30を同時に押付位置へ移動させるようにしたり、適宜の時間差をもって個別に押付位置へ移動させるようにしてもよい。
(4)保持体30による表皮14の保持位置29を調節することで、基材12の裏側に巻き込む巻き込み部14bの長さを変化させることができる。なお、保持体30による表皮14の保持位置29の一部を、基材12の基材端縁13(キャビティ26の閉塞端34)に合わせることで、成形品端縁11の一部範囲において表皮14を基材端縁13のの端面だけに配置することができる。
(5)成形装置20の型閉め前に、表皮14を、該成形装置20の型閉め時に成形品10の表側を成形する表面成形面25の位置よりも裏側成形型22から離れた位置まで浮かせた状態で該裏側成形型22に配置し、成形装置20の型閉め時に、表面成形面25で表皮14を裏側成形型22側へ押すようにして、キャビティ26に臨む表皮14に、キャビティ26の閉塞端34側への凸になるようたわみを形成してもよい。このように表皮14を裏側成形型22に配置することで、樹脂材料Pの注入前に、閉塞端34側への表皮14のたわみ量を大きくすることができると共に、該表皮14の変形代を大きく確保することができる。なお、実施例では、脱型手段である突き出しピン42の中間突出位置を、成形装置20の型閉め時における表面成形面25の位置よりも該突き出しピン42の先端43が高い位置となるよう設定することで、表皮14を表面成形面25より裏側成形型22から離れた位置まで浮かせた状態で裏側成形型22に配置することが可能である。
(6)脱型手段42は、突き出しピン42以外であってもよい。例えば、脱型手段42は、裏側成形型22の裏面成形面23の所要位置に複数形成した吹き出し孔から、裏面成形面23の外方へ空気を吹き出す構成であってもよい。このような脱型手段42は、各吹き出し孔から吹き出した空気の圧力を利用して、裏側成形型22に配置する表皮14を、保持体30による押さえ付け前に裏面成形面23および挟持面28から浮かせることが可能である。
(7)脱型手段により表皮14を裏側成形型22の成形面23より浮かせるタイミングは、保持体30および裏側成形型22で表皮14の余長部分15を挟む前に限らず、保持体30および裏側成形型22で表皮14の余長部分15を挟むのと同時であってもよいし、保持体30および裏側成形型22で表皮14の余長部分15を挟んだ後であってもよい。
(8)保持体30の保持面31における表皮14の保持位置29に沿う位置に、裏側成形型22側に向いた切断刃を設け、得られた成形品10を突き出しピン42により脱型する前に、裏側成形型22側(挟持面28側)へ保持体30を更に付勢して、表皮14を切断刃で破断するようにしてもよい。また、裏側成形型22の挟持面28における表皮14の保持位置29に沿う位置に、保持体30側に向いた切断刃を設け、得られた成形品10を突き出しピン42により脱型する前に、裏側成形型22側(挟持面28側)へ保持体30を更に付勢して、表皮14を切断刃で破断するようにしてもよい。
(9)裏側成形型22への表皮14の配置は、シート状の表皮14を把持して搬送する供給装置等により自動化するようにしてもよい。
(10)実施例の成形装置20は、成形品10の裏側を成形する裏側成形型22を固定型とすると共に、該成形品10の表側を成形する表側成形型24を可動型とした構成であるが、成形品10の表側を成形する表側成形型24を固定型とすると共に、成形品10の裏側を成形する裏側成形型22を可動型としてもよい。
(11)裏側成形型22の挟持面28および保持体30の保持面31で表皮14の余長部分15を保持する場合は、当該表皮14の端末部に至る当該余長部分15の全体を保持するようにしてもよい。
(12)表皮14は、裏側成形型22から延出した余長部分15だけを該裏側成形型22から浮かせた状態で、裏側成形型22に配置するようにしてもよい。このように、少なくとも余長部分15が裏側成形型22から浮かせてあることで、保持体30を押付位置へ移動させて該余長部分15を保持位置29で押さえることで、キャビティ26に臨む表皮14に、該保持体30に設けられたキャビティ26の閉塞端34側へ凸となるようたわみを形成することが可能である。
(13)保持体30の配設位置を変更することで、表皮14を裏側成形型22に配置するに際し、該裏側成形型22から延出した該表皮14の余長部分15を、曲げずに該裏側成形型22と保持体30との間に臨ませるようにしてもよい。
(14)成形装置20は、裏側成形型22と表側成形型24とが上下方向に型開きするものに限らず、裏面成形面23および表面成形面25が縦向きとなるよう配置されて横方向に型開きするものや、裏面成形面23および表面成形面25が傾斜して配置されて斜め方向に型開きするものであってもよい。また、成形装置20は、裏側成形型22および表側成形型24が上下逆の関係で配設されたものであってもよい。
(15)本願の製造方法により製造される成形品は、基材12の表側に配置された表皮14が該基材12の基材端縁13を介して該基材12の裏側へ巻き込まれた表皮付きの成形品の全てが対象とされる。例えば、ピラーガーニッシュ、グローブボックスのリッド、ドアパネルおよびインストルメントパネル等の車両内装部材や、家具等が挙げられる。