【課題】パウダーを含有する原液を圧縮ガスにより噴射するエアゾール製品であるにもかかわらず、パウダーが分散した均一な組成物を安定的に噴射することができ、さらに含有するパウダーに起因する問題が起こりにくいエアゾール製品を提供すること。
【解決手段】パウダーを含有する原液および圧縮ガスがエアゾール容器に充填されたエアゾール製品であって、エアゾール容器のバルブが、エアゾール容器内と外部とを連通するステム孔を有するステム、前記ステムが挿入された環状のステムラバー、ならびにステムおよびステムラバーを収容するハウジングであり、エアゾール容器内の気相とハウジング内部とを連通する気相連通孔、およびエアゾール容器内の液相とハウジング内部とを連通する液相連通孔を有するハウジングを備えており、ステムを押し下げると、ステムがステムラバー内径面を摺動し、エアゾール容器内と外部との連通および気相連通孔の閉鎖が行われるエアゾール製品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のエアゾール製品は、パウダーを含有する原液および圧縮ガスがエアゾール容器に充填されたエアゾール製品であって、エアゾール容器のバルブが、ステム、ステムラバーおよび所定の気相連通孔などを備えたハウジングを備え、ステムを押し下げると、ステムがステムラバー内径面を摺動し、エアゾール容器内と外部との連通および気相連通孔の閉鎖が行われることを特徴とする。
【0017】
本発明の吐出製品の実施形態について添付の図面を参照して説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【0018】
まず、本発明のエアゾール製品に充填される原液および圧縮ガスについて説明する。なお、原液および圧縮ガスは後述する各実施形態において共通である。
【0019】
本発明のエアゾール製品に充填される原液は、パウダーを含有する原液であることを特徴とする。なお、添付の図面においては液相Bで示す。
【0020】
パウダーは、パウダー自体が有効成分として、他の有効成分を担持する担体として、付着剤などとして作用することを目的として含有する。
【0021】
パウダーとしては、例えば、クロルヒドロキシアルミニウムなどの制汗剤、酸化チタン、酸化亜鉛などの紫外線散乱剤、ゼオライトなどの発熱剤などのパウダー状有効成分、その細孔内にジエチルトルアミドやメントールなどの有効成分を担持するシリカなどの担体、シクロペンタシロキサン・ジメチコンクロスポリマーや(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーなどのシリコーンパウダー、ポリアミドやポリエチレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどの樹脂パウダー、タルク、シリカなどの使用感を向上させる補助剤などを使用することができる。
【0022】
原液中のパウダーの含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%未満の場合は、パウダーを含有することによる効果が十分得られない傾向がある。また、含有量が30質量%を超える場合は、均一な噴射が困難となる傾向がある。
【0023】
パウダーとともに原液を構成する他の成分は、使用目的(用途)などに応じて適宜選択することができる。例えば、溶媒、界面活性剤、有効成分、水溶性高分子などが挙げられる。
【0024】
前記溶媒はパウダーを原液中に分散させ、対象物にパウダーを付着しやすくする、使用感を向上させるなどの目的で用いられる。溶媒としては、例えば、水、アルコール、油性溶剤およびこれらの混合物などが挙げられ、均一系でもよく、エマルジョン系でもよい。
【0025】
前記水は有効成分を溶解させる、使用感を向上させるなどの目的で用いられ、水としては、例えば、精製水、イオン交換水などが挙げられる。
【0026】
前記アルコールは水に溶解しにくい有効成分を溶解させる、乾燥性を調整して使用感を向上させることなどを目的として含有することができる。
【0027】
アルコールとしては、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数2〜3個の1価アルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコールなどが挙げられる。
【0028】
前記油性溶剤は、親油性の有効成分を溶解させる、保湿力を上げるなどの目的で用いられる。油性溶剤としては、エステルオイル、油脂、シリコーンオイル、炭化水素およびこれらの混合物などの常温(25℃)で液体の油分が挙げられる。
【0029】
エステルオイルとしては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ2−エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2−エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどが挙げられる。
【0030】
油脂としては、例えば、メドウフォーム油、オリーブ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などが挙げられる。
【0031】
シリコーンオイルとしては、例えば、メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0032】
炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、イソパラフィンなどが挙げられる。
【0033】
前記溶媒を含有する場合の原液中の含有量は50〜99質量%が好ましく、60〜98質量%がより好ましい。含有量が50質量%未満の場合は、パウダーが均一に分散しにくくなり、均一な組成で噴射しにくくなる傾向がある。また、含有量が99質量%を超える場合は、パウダーや界面活性剤などの含有量が不足して均一な組成で噴射しにくくなる傾向がある。
【0034】
前記界面活性剤は、保管時に容器底部に沈降したパウダーが固くケーキングするのを防止する、使用時はパウダーを容易に分散させて均一な組成で噴射するなど、パウダーの分散性を調整するパウダー分散剤や、原液をエマルジョン化する乳化剤として用いられる。
【0035】
界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(以下、POEと示す)ソルビタンモノラウレート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットテトラステアレート、POEソルビットテトラオレエートなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、POEモノラウレート、POEモノステアレート、POEモノオレエートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、POEグリセリルモノステアレート、POEグリセリルモノオレエートなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、POE・ポリオキシプロピレン(以下、POPと示す)セチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、デカグリセリルモノラウレート、デカグリセリルモノミリステート、デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルモノオレエート、デカグリセリルジオレエート、ヘキサグリセリルモノラウレート、ヘキサグリセリルモノステアレート、ヘキサグリセリルモノオレエートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン、PEGジメチコンやPEG・PPGジメチコンなどのポリエーテル変性シリコーン、PEGポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどの分岐シリコーン鎖を有するポリエーテル変性シリコーン、アモジメチコンなどのアミノ変性シリコーンなどのシリコーン界面活性剤などが挙げられる。
【0036】
界面活性剤を含有する場合の原液中の含有量は、0.01〜15質量%が好ましく、0.10〜10質量%がより好ましい。含有量が0.01質量%未満の場合は、パウダーを分散させる効果が不足し、パウダーがケーキングしやすく、均一な組成で噴射しにくくなる傾向がある。また、含有量が15質量%を超える場合は、べたつきやすくなるなど使用感が低下する傾向がある。
【0037】
前記有効成分は製品の用途や目的などにより適宜選択して用いることができ、従来のエアゾール製品に用いられている成分を含有することができる。
【0038】
有効成分としては、例えば、パラアミノ安息香酸エステル、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、l−メントール、カンフルなどの清涼剤、アラントインヒドロキシアルミニウム、クエン酸、乳酸、酸化亜鉛、タンニン酸などの収斂剤、アラントイン、グリチルレチン酸、アズレンなどの抗炎症剤、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌・防腐剤、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェミラミンなどの抗ヒスタミン剤、サリチル酸メチル、ケトプロフェン、インドメタシン、フェルビナク、ピロキシカム、カンフル、ジフェンヒドラミン、クロタミトンなどの消炎鎮痛剤、N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミドなどの害虫忌避剤、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、グラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭剤、アルブチン、コウジ酸などの美白剤、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニントリプトファン、シスチン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、塩化ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチンなどのビタミン類、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体、ビニルピロリドン・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル・アクリル酸ステアリル・ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、架橋型N,N−ジメチルアクリルアミド−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)アミンN−オキシド・メタクリル酸アルキル共重合体などの毛髪セット剤樹脂、ドクダミエキス、オウバクエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、キナエキス、サクラソウエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの各種抽出液、各種香料などが挙げられる。
【0039】
有効成分を含有する場合の原液中の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.3〜15質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%未満の場合は、有効成分の効果が不十分になりやすく、使用量が多くなる傾向がある。また、含有量が20質量%を超える場合は、均一な組成で噴射しにくく、使用感が悪くなる傾向がある。
【0040】
前記水溶性高分子はパウダーの沈降を遅くする、使用感を向上させるなどを目的として含有することができる。
【0041】
前記水溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子、カラギーナン、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどのガム質、ゼラチン、デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。
【0042】
水溶性高分子を含有する場合の原液中の含有量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましい。含有量が0.01質量%未満の場合は、水溶性高分子の効果が得られにくい傾向がある。また、含有量が5質量%を超える場合は、粘度が高くなりすぎて塗り伸ばしにくくなる、ベタつきやすくなるなど、使用感が悪くなる傾向がある。
【0043】
前記パウダーを除く原液は、溶媒に有効成分や界面活性剤などを添加して溶解させた均一系にしてもよく、有効成分の溶解性に応じて水性溶媒または油性溶媒に添加し、両者を乳化させたエマルジョン系にしてもよい。
【0044】
本発明のエアゾール製品に充填される圧縮ガスは、パウダーを含有する原液を加圧して噴射する噴射剤として充填される。つまり、本発明のエアゾール製品は噴射剤が圧縮ガスであるエアゾール製品であることを特徴とする。なお、添付の図面においては気相Aで示す。
【0045】
圧縮ガスとしては、窒素、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気などが挙げられる。
【0046】
圧縮ガスは、エアゾール製品内の圧力が25℃において0.2〜1.0MPaとなるように充填することが好ましく、0.3〜0.9MPaとなるように充填することがより好ましい。圧力が0.2MPa未満の場合、噴射後にハウジング内に残っている原液を排出する効果が弱く、パウダーがハウジング内に残りやすくなる傾向がある。また、1.0MPaを超える場合、高圧となるため安全上好ましくない。
【0047】
次に、
図1A〜
図1Dに示す本発明のエアゾール製品に係る第1の実施形態、
図2A〜
図2Cに示す本発明のエアゾール製品に係る第2の実施形態、および
図3A〜
図3Cに示す本発明のエアゾール製品に係る第3の実施形態について説明する。
【0048】
第1の実施形態
図1Aに示すエアゾール製品は、パウダーを含有する原液(液相B)および圧縮ガス(気相A)が、有底筒状の容器本体1の開口部にバルブ2が固着されたエアゾール容器に充填されたエアゾール製品である。
【0049】
容器本体1は、円筒状の胴部と、その胴部の下端を閉じる底部と、胴部の上端から縮径するように延びる肩部と、肩部の上端に設けられるビード部とからなる一体成形体である。この容器本体は、金属スラグをインパクト成型や絞りしごき加工などにより有底筒状にし、その上部を絞って肩部を成型し、ビード加工することにより成型される。前記ビード部にバルブ2のマウンティングキャップ25が固定されている。なお、容器本体1としては、アルミニウムやブリキなどを用いた金属製容器以外にも、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂、耐圧ガラスなどを用いて有底筒状に成形したものを用いることもできる。
【0050】
バルブ2は、容器本体の開口部(ビード部)にガスケットを介して固着され、開口部を閉じるマウンティングキャップ25と、マウンティングキャップ25の中央に保持され、下端にディップチューブ234が接続されたハウジング23と、ハウジング内部に上下動自在に収容されるステム21と、前記ステムが挿入された環状のステムラバー22と、ステム21を常時上向きに付勢するスプリングとを備える。
【0051】
マウンティングキャップ25は、有底筒状の本体と、本体の上部外周に設けられる逆U字状の被せ部と、本体の底部の中央にハウジングを装着する保持部とを備えている。マウンティングキャップ25はガスケットを介して被せ部を容器本体1のビード部に被せ、本体の円筒部を外方に拡張するように変形させることで容器本体1のビード部に固着される。
【0052】
ハウジング23は、スプリングを支持する底部231と、底部から上方に伸びる筒状の胴部と、胴部の上部内面にステムラバー22を保持するラバー保持部と、胴部の上部外面に外側に突出するフランジ部と、底部231の周辺部から下方に伸びる筒状のチューブ装着部と、チューブ装着部内の底部231に設けられたハウジング内部とエアゾール容器内とを連通する液相連通孔233と、底部231の中心に設けられたハウジング内部とエアゾール容器内とを連通する気相連通孔232とを備えている。
【0053】
ステム21は、筒状のステム上部と、略円柱状のステム下部とからなる。ステム上部は上端に開口213を有し、その開口213から中部まで延びるステム内通路と、その外周にステム内通路の下部と連通するステム孔211とを備えている。ステム下部はスプリングの上端と当接して上方に付勢力を受ける。また、ステム下部には気相連通孔232を閉鎖する閉鎖部212を備えている。ステム下部を閉鎖部とすることにより、ステム孔211の開放と気相連通孔232の閉鎖とのタイミングの調整が容易となる。
【0054】
ステムラバー22は、ハウジング23のラバー保持部に保持された環状部材であり、その内径にはステム21のステム上部が挿入されており、非噴射時はステム上部の下端(ステム孔より下の位置)に配置され、噴射時にはステム21がステムラバー22の内径面を下方に摺動することでステム孔211がハウジング23内部と連通し、内容物が噴射される。
【0055】
第1の実施形態に係るエアゾール製品の非噴射時は、
図1Aに示すようにステム孔211がステムラバー22より上方(開口213側)に存在するため、ハウジング23内部およびエアゾール容器内部が外部と遮断されている。ハウジング23内部は気相連通孔232を介して気相Aと連通しているため、ハウジング内部は気相A(圧縮ガス)で満たされている。また、ハウジング内部は液相連通孔233およびディップチューブ234を介して液相Bと通じているが、気相連通孔232を備えるため、ディップチューブ234内の液相Bの水面は他の液相Bの水面とほぼ同じ高さになり、それより上方は気相Aで満たされている。
【0056】
第1の実施形態に係るエアゾール製品は、エアゾール製品を上下に振って容器本体の底部に沈降していたパウダーを分散させた後、ステム21を下方に押し込むと、
図1Bに示すように、ステム21がステムラバー22の内径面を摺動し、ステム孔211がステムラバー22より下方に移動することでステム孔211が開放され、ハウジング23内部、液相連通孔233、ディップチューブ234内、および容器本体1内が外部と連通することで内容物が噴射される。なお、ディップチューブ234としてフレキシブルなチューブや、下端に重りを付したチューブを使用することでエアゾール容器を傾けてもチューブの下端が液相内に配置されやすくなり、噴射剤のみが噴射されることを抑制することができる。
【0057】
噴射時に、気相連通孔232が気相Aと連通した状態が維持されている場合、本発明のエアゾール製品は噴射剤として圧縮ガスを含有することから、噴射開始直後に圧縮ガスの全量が排出されてしまい、エアゾール組成物の噴射ができなくなる。しかしながら、本発明のエアゾール製品においては、ステム21を押し下げることによりエアゾール容器内と外部との連通に加え、ステム21の下部に設けられた閉鎖部212による気相連通孔232の閉鎖が行われるため、気相Aの圧縮ガスの噴出を防ぐことができる。
【0058】
また、気相連通孔232と閉鎖部212とが接触する箇所または閉鎖部212に、ゴムなどのシール性に優れた部材を設けることが好ましい。例えば、
図1Cおよび
図1Dに示すように、ステムの閉鎖部212に環状溝214を設け、その環状溝にOリング215を装着することで、気相連通孔232をシールしながらステムを下方に移動させることができるため、気相連通孔232をシールしてからステム孔211を開放しやすくなり、圧縮ガスが噴射操作時に外部に排出されることを効果的に防ぐことができる。この実施の形態では、気相連通孔232を円筒状にしており、ステムを押し下げたときにOリング215が気相連通孔により圧縮されてシールしながら移動させることができる。なお、
図1Cおよび
図1Dにはハウジング部およびステム部のみを示すが、他の部位については
図1Aおよび
図1Bと同様である。
【0059】
そして、ステム21の押し込みを止めると、ステム21がスプリングの上方への付勢により、ステム21がステムラバー22の内径面を摺動してステム孔211がステムラバーより上方に移動することで、ハウジング23内部と外部とが遮断されて噴射が停止する。ここで、気相連通孔232が設けられていない場合、噴射の停止時にハウジング23内部に存在する原液は、次回の噴射時までハウジング内に存在し続けることになり、この存在時間が長期間に及ぶとパウダーが沈降して固まってしまい、次回の噴射時などに振盪しても細かいパダーに戻らず、ハウジング内やステム孔における詰まりが発生し、均一な組成で噴射することが困難となったり、噴射自体が困難となるおそれがある。しかしながら、本発明のエアゾール製品においては、非噴射時には気相連通孔232が開放されるため気相Aに存在する圧縮ガスがハウジング23内に導入され、噴射時にハウジング23内部に存在したパウダーを含有する原液は液相連通孔233およびディップチューブ234を通じて液相Bに戻される。つまり、本発明のエアゾール製品においては、非噴射時にはハウジング23内にパウダーを含有する原液が存在しないため、ハウジング内やステム孔における詰まりを抑制することができる。また、パウダーを含有する原液のほぼ全量がエアゾール容器内にあり、次回噴射する前にエアゾール製品を上下に振ることでエアゾール容器内の気相を利用して攪拌することができるためパウダーを均一に分散させやすく、均一な組成で噴射することができる。
【0060】
さらに、噴射時にステム孔211付近に原液中のパウダーが付着した場合であっても、本発明のエアゾール製品においては、ステム21が上昇して元の位置に戻るときにステムラバー22の内径面を摺動してステム孔付近に付着したパウダーがかき落とされ、パウダーがステムラバーとの間に挟み込まれるのを防止することができる。
【0061】
第2の実施形態
図2Aに示すエアゾール製品は、パウダーを含有する原液(液相B)および圧縮ガス(気相A)が、有底筒状の容器本体1の開口部にバルブ2が固着されたエアゾール容器に充填されたエアゾール製品である。容器本体1、マウンティングキャップ25およびステムラバー22は第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0062】
バルブ2は、容器本体の開口部(ビード部)にガスケットを介して固着され、開口部を閉じるマウンティングキャップ25と、マウンティングキャップ25の中央に保持され、下端にディップチューブ234が接続されたハウジング23と、ハウジング内部に上下動自在に収容されるステム21と、前記ステムが挿入された環状のステムラバー22と、ステム21を常時上向きに付勢するスプリングとを備える。
【0063】
ハウジング23は、スプリングを支持する底部231と、底部から上方に伸びる筒状の胴部と、胴部の上部内面にステムラバー22を保持するラバー保持部と、胴部の上部外面に外側に突出するフランジ部と、底部231の周辺部から下方に伸びる筒状のチューブ装着部と、チューブ装着部内の底部231に設けられたハウジング内部とエアゾール容器内とを連通する液相連通孔233と、底部231の中心に設けられたハウジング内部とエアゾール容器内とを底部231の中心から上方に伸びる筒状部を通じて連通する気相連通孔232とを備えている。
【0064】
前記ステム21は、筒状のステム上部と、略円柱状のステム下部とからなる。ステム上部は上端に開口213を有し、その開口213から中部まで延びるステム内通路と、その外周にステム内通路の下部と連通するステム孔211とを備えている。ステム下部はスプリングの上端と当接して上方に付勢力を受ける。また、ステム下部には気相連通孔232を閉鎖する閉鎖部212を備えている。なお、第2の実施形態におけるステム下部の長さは、ハウジングの底部231の中心から上方に伸びる筒状部の高さに応じて適宜調整すればよく、また当該調整によりステム孔211の開放と気相連通孔231の閉鎖とのタイミングの調整が可能である。
【0065】
第2の実施形態に係るエアゾール製品の非噴射時は、
図2Aに示すようにステム孔211がステムラバー22より上方(開口213側)に存在するため、ハウジング23内部およびエアゾール容器内部が外部と遮断されている。ハウジング23内部は気相連通孔232を介して気相Aと連通しているため、ハウジング内部は気相A(圧縮ガス)で満たされている。また、ハウジング内部は液相連通孔233およびディップチューブ234を介して液相Bと通じているが、気相連通孔232を備えるため、ディップチューブ234内の液相Bの水面は他の液相Bの水面とほぼ同じ高さになり、それより上方は気相Aで満たされている。
【0066】
第2の実施形態に係るエアゾール製品は、エアゾール製品を上下に振って容器本体の底部に沈降していたパウダーを分散させ、ステム21を下方に押し込むと、
図2Bに示すように、ステム21がステムラバー22の内径面を摺動し、ステム孔211がステムラバー22より下方に移動することで、ハウジング23内部、液相連通孔233、ディップチューブ234内、および容器本体1内が外部と連通することで内容物が噴射される。第1の実施形態と同様にステム21を押し下げることによりエアゾール容器内と外部との連通に加え、ステム21の下部に設けられた閉鎖部212による気相連通孔232の閉鎖が行われるため、気相Aの圧縮ガスの噴出を防ぐことができる。また、気相連通孔232と閉鎖部212が接触する箇所または閉鎖部212に、ゴムなどのシール性に優れた部材を新たに設けることが好ましい。
【0067】
そして、ステム21の押し込みを止めると、ステム21がスプリングの上方への付勢により、ステム21がステムラバー22の内径面を摺動してステム孔211がステムラバーより上方に移動することで、ハウジング23内部と外部とが遮断されて噴射が停止する。非噴射時には閉鎖部212により閉鎖されていた気相連通孔232が開放され、気相Aに存在する圧縮ガスがハウジング23内に導入されるため、噴射時にハウジング23内部に存在したパウダーを含有する原液は液相連通孔233およびディップチューブ234を通じて液相Bに戻される。つまり、本発明のエアゾール製品においては、非噴射時にはハウジング23内にパウダーを含有する原液が存在しないため、ハウジング内やステム孔における詰まりを抑制することができる。
【0068】
特に第2の実施形態においては気相連通孔232のハウジング内の開口232aが、液相連通孔233のハウジング内の開口233aよりも上方に存在するため、ハウジング23内の原液が液相Bに戻りやすいという特徴を有する。
【0069】
さらに、噴射停止時にハウジング23内に存在する原液が、液相Bに戻りやすくなることから、
図2Cに示すようにハウジング23の底部231に、液相連通孔233の開口233aに向かって低くなる傾斜を設けることが好ましい。
【0070】
なお、噴射時にステム孔211付近に原液中のパウダーが付着した場合であっても、ステム21が上昇して元の位置に戻るときにステムラバー22の内径面を摺動してステム孔付近に付着したパウダーがかき落とされ、パウダーがステムラバーとの間に挟み込まれるのを防止することができる点は第1の実施形態と同様である。
【0071】
第3の実施形態
図3Aに示すエアゾール製品は、パウダーを含有する原液(液相B)および圧縮ガス(気相A)が、有底筒状の容器本体1の開口部にバルブ2が固着されたエアゾール容器に充填されたエアゾール製品である。容器本体1、マウンティングキャップ25およびステムラバー22は第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0072】
バルブ2は、容器本体の開口部(ビード部)にガスケットを介して固着され、開口部を閉じるマウンティングキャップ25と、マウンティングキャップ25の中央に保持され、下端にディップチューブ244が接続されたハウジング24と、ハウジング内部に上下動自在に収容されるステム21と、ステム21のステム孔211を開閉するステムラバー22と、ステム21を常時上向きに付勢するスプリングとを備える。
【0073】
ハウジング24は、上部ハウジング24aと、上部ハウジング24aの下端に嵌装される下部ハウジング24bと、上部ハウジング24aと下部ハウジング24bの間に保持される弁ラバー243とからなる。
【0074】
上部ハウジング24aは、スプリングを支持する底壁と、底壁から上下に伸びる筒状の胴部と、胴部の上部内面にステムラバー22を保持するラバー保持部と、胴部の上部外面に外側に突出するフランジ部とを備えている。さらに、底壁の中心部にはステム21の下部を貫通させる開口を備える。
【0075】
下部ハウジング24bは、上部ハウジング24aの下端に嵌装されており、底部の中心部から下方に伸びる筒状のチューブ装着部と、チューブ装着部内の底部にハウジング内部とエアゾール容器内とを連通する液相連通孔242とを備えている。
【0076】
弁ラバー243は環状の弾性体であり、上部ハウジング24aの底壁の下面と下部ハウジング24bとの間に保持されており、ステム21を押し下げるとリップ先端がステム下部により押圧される漏斗型の弁ラバーである。
【0077】
また、上部ハウジング24aの下端の一部および下部ハウジング24bの上端の一部には横溝が設けられており、両横溝によりハウジングの側面に設けられた気相連通孔241を構成している。気相連通孔241は、ハウジング内部とエアゾール容器内とを連通する。
【0078】
前記ステム21は、
図3Cに示すように、筒状のステム上部と断面が十字型のステム下部とからなる。ステム上部は上端に開口213を有し、その開口213から中部まで延びるステム内通路と、その外周にステム内通路の下部と連通するステム孔211とを備えている。ステム下部はスプリングの上端と当接して上方に付勢力を受ける。また、ステム下部にはステム21を押し下げることで弁ラバーを押圧する閉鎖部212を備える。
【0079】
第3の実施形態に係るエアゾール製品の非噴射時は、
図3Aに示すようにステム孔211がステムラバー22より上方(開口213側)に存在するため、ハウジング24内部およびエアゾール容器内部が外部と遮断されている。ハウジング24内部は気相連通孔241を介して気相Aと連通しているため、ハウジング内部は気相A(圧縮ガス)で満たされている。なお、
図3Aにおけるステム21の下端である閉鎖部212は弁ラバー243と当接しているが、
図3C(b)に示すように、閉鎖部212は十字型をしているため、閉鎖部212と弁ラバー243の間には隙間があり、連通している。また、ハウジング内部は液相連通孔242およびディップチューブ244を介して液相Bと通じているが、気相連通孔241を備えるため、ディップチューブ244内の液相Bの水面は他の液相Bの水面とほぼ同じ高さになり、それより上方は気相Aで満たされている。
【0080】
第3の実施形態に係るエアゾール製品は、エアゾール製品を上下に振って容器本体の底部に沈降していたパウダーを分散させ、ステム21を下方に押し込むと、
図3Bに示すように、ステム21がステムラバー22の内径面を摺動し、ステム孔211がステムラバー22より下方に移動することで、ハウジング24内部、液相連通孔242、ディップチューブ244内、および容器本体1内が外部と連通し、内容物が噴射される。第1および第2の実施形態と同様にステム21を押し下げることによりエアゾール容器内と外部との連通に加え、ステム21の下部に設けられた閉鎖部212が弁ラバー243を押圧することで気相連通孔241の閉鎖が行われるため、気相Aの圧縮ガスの排出を防ぐことができる。
【0081】
そして、ステム21の押し込みを止めると、スプリングの上方への付勢によりステム21がステムラバー22の内径面を摺動し、ステム孔211がステムラバーより上方に移動することで、ハウジング24内部と外部とが遮断されて噴射が停止する。非噴射時には閉鎖部212および弁ラバー243により閉鎖されていた気相連通孔241が開放され、気相Aに存在する圧縮ガスがハウジング24内に導入されるため、噴射時にハウジング24内部に存在したパウダーを含有する原液は液相連通孔242およびディップチューブ244を通じて液相Bに戻される。つまり、本発明のエアゾール製品においては、非噴射時にはハウジング24内にパウダーを含有する原液が存在しないため、ハウジング内やステム孔における詰まりを抑制することができる。
【0082】
なお、噴射時にステム孔211付近に原液中のパウダーが付着した場合であっても、ステム21が上昇して元の位置に戻るときにステムラバー22の内径面を摺動してステム孔付近に付着したパウダーがかき落とされ、パウダーがステムラバーとの間に挟み込まれるのを防止することができる点は第1および第2の実施形態と同様である。
【0083】
本発明のエアゾール製品は、容器本体にパウダーを含有する原液を充填後、容器本体にバルブを固着して密閉し、バルブから圧縮ガスを充填することにより製造することができる。なお、圧縮ガスは、バルブを固着する前にアンダーカップ充填により充填してもよい。
【0084】
本発明のエアゾール製品は、パウダーを含有する原液を圧縮ガスにより噴射するエアゾール製品であるにもかかわらず、パウダーが分散した均一な組成物を安定的に噴射することができ、さらに含有するパウダーに起因する問題が起こりにくいエアゾール製品であることから、制汗剤、日焼け防止剤、害虫忌避剤、頭髪用セット剤などに好適に用いることができる。