【解決手段】構造物20の基礎21側近に設けられる鋼管杭30に嵌る嵌合筒3を有する基礎21の下方に突き出す支持板2と、鋼管杭30上に載せられ、ジャッキ32の載る台座4と、ジャッキ32上に配置される基板11と、基板11の左右方向両側からそれぞれ下方に延びるねじ軸12、12とを有する持ち上げ部材5とを備え、各ねじ軸12の下方に支持板2が取り付けられる。支持板2の上方で台座4がねじ軸12に対して上下方向に移動可能であり、各ねじ軸12は、支持板2に貫通する状態で、支持板2の下方でねじ結合する下ナット16と台座4の上方にねじ結合する中ナット15とを備える。
構造物の基礎の側近に設けられる鋼管杭に嵌る嵌合筒(3)を有し、前記基礎の下方に突き出す支持板(2)と、前記鋼管杭上に載せられ、ジャッキの載る台座(4)と、その台座(4)の上方に配置される基板(11)とその基板(11)の左右方向両側からそれぞれ下方に延びるねじ軸(12)とを有する持ち上げ部材(5)とを備え、そのねじ軸(12)の下部に前記支持板(2)が取り付けられた傾斜修復器具であって、
前記持ち上げ部材(5)は、そのねじ軸(12)が前記台座(4)の左右方向両側にそれぞれ貫通し、前記支持板(2)の上方で前記台座(4)が前記ねじ軸(12)に対して上下方向に移動可能であり、前記各ねじ軸(12)が前記台座(4)の上方にねじ結合するナット(15)を備えた傾斜修復器具。
前記嵌合筒(3)が前記支持板(2)に対して別体とされ、前記支持板(2)は、前記嵌合筒(3)を後方から差し込み可能な前後方向の切り欠き(7)を有し、前記嵌合筒(3)が前記支持板(2)に保持される係止片(9)を有し、その係止片(9)が前記支持板(2)に保持される状態で、前記持ち上げ部材(5)のねじ軸(12)が前記嵌合筒(3)の係止片(9)の左右両側にそれぞれ貫通するようにした請求項1に記載の傾斜修復器具。
前記嵌合筒(3)が前記支持板(2)の切り欠き(7)に差し込まれる状態で、前記係止片(9)が、前記支持板(2)の切り欠き(7)の周縁部上に係止可能である請求項2に記載の傾斜修復器具。
前記支持板(2)は、その切り欠き(7)の左右両側の周縁部に前後方向の長穴(2a)を有し、前記持ち上げ部材(5)のねじ軸(12)は、前記支持板(2)の長穴(2a)に貫通する状態で、その支持板(2)の下方でねじ結合するナット(16)を備えた請求項3に記載の傾斜修復基部。
前記支持板(2)が左右一対のガイド片を備え、左右一対の前記ガイド片は、前記支持板(2)との間で、前記嵌合筒(3)の係止片(9)を前後方向に案内可能に保持するようにした請求項2または3に記載の傾斜修復器具。
前記ねじ軸が、上ねじ軸(12a)と下ねじ軸(12b)と、ねじ結合により前記上下ねじ軸(12a、12b)を連結する長ナット(13)とからなり、その長ナット(13)が前記ナット(15)よりも上方に位置した請求項1から5のいずれか1つに記載の傾斜修復器具。
前記支持板(2)の嵌合筒(3)が嵌められ、前記台座(4)が上部に載る鋼管杭(30)をさらに備え、その鋼管杭(30)は、その外周部にらせん状に取り付けたプレート状のブレード(31)を有し、構造物(20)の基礎(21)の側近に回転により埋設するようにしたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の傾斜修復器具。
【背景技術】
【0002】
従来から、地盤沈下による構造物の傾斜を修復するために、傾斜修復器具が用いられている。この構造物の傾斜修復器具としては、例えば、鋼管杭に上下動可能に取り付けられる持ち上げ部材と、ジャッキ載置台と、引き上げ枠とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の傾斜修復器具の持ち上げ部材は、鋼管杭の外周に上下動可能に嵌められる筒体に、側方に突出する持上げ梁を形成したものである。ジャッキ据置台は、鋼管杭に挿入可能な挿入突起を備えた筒体に、側方に突出する断面H型の台座を形成したものである。また、引き上げフレームは、門形のフレーム本体と、フレーム本体の両下端に形成した支持孔に挿通する持上げ杆とを備えるものである。
【0004】
この傾斜修復器具を用いた構造物の傾斜を修復する工法は、掘削穴内の基礎の側近に打設した鋼管杭の外周に持ち上げ部材の筒体を嵌合し、鋼管杭の上端にジャッキ据置台の挿入突起を挿入して持ち上げ部材とジャッキ据置台を取り付ける。このとき、持上げ梁を基礎下面に突き合わせ、ジャッキ据置台の台座上に油圧ジャッキを載置する。
【0005】
次に、ジャッキ据置台の台座と、持ち上げ部材の持上げ梁との上方から引上げフレームを被せ、持上げ梁の下面で引上げフレームの支持孔に持上げ杆を挿入する。その後、油圧ジャッキを操作して引上げフレームを介して持ち上げ部材を引上げることで、基礎を引上げる。
【0006】
このようにして基礎を所定位置まで引上げた状態で、持ち上げ部材の筒体を鋼管杭に溶接により固定して、ジャッキ据置台と引上げフレームを取り外して、構造物の傾斜を修復することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の第一実施形態に係る傾斜修復器具を
図1〜
図10に基づいて説明する。
この傾斜修復器具1は、
図1〜
図3に示すように、構造物20の基礎21の下方に突き出す支持板2と、基礎21の側近に設けられる鋼管杭30の外周部に嵌る嵌合筒3と、鋼管杭30上に載せられ、ジャッキ32の載る台座4と、ジャッキに32より支持板2を持ち上げる持ち上げ部材5とを備える。
【0017】
支持板2は、
図2に示すように、矩形をなし、前後方向(構造物20に向かって前後方向)途中位置において直角に立ち上がる固定片6と、支持板2の後方側の縁部から中央に向かって形成された前後方向の切り欠き7と、切り欠き7の左右両側に形成された前後方向の長孔2a、2aとを備える。
【0018】
固定片6は、支持板2の左右方向(構造物に向かって左右方向)の全長に配置され、その両側に補強片8、8を備える。また、固定片6は、補強片8、8の左右方向外側に上下方向の長孔6a、6aを有する。補強片8は、固定片6の後側に配置され、固定片6を支持板2に対して直角に支持する。
【0019】
切り欠き7は、支持板2の後側縁の中央から嵌合筒3が前後方向に差し込み可能な左右方向の幅を有する。切り欠き7の前側縁は、嵌合筒3の外周に沿う半円状に形成される。切り欠き7の左右両側の長孔2aは、補強片8よりも左右方向内側に配置される。
【0020】
切り欠き7により、嵌合筒3が支持板2に対して切り欠き7内で前後方向に移動可能となる。このため、構造物20の基礎21と鋼管杭30との距離Xに応じて、支持板2に対して、切り欠き7内での嵌合筒3の前後方向の位置が調整可能となる(
図5(a)参照)。
【0021】
嵌合筒3は円筒状をなし、上端部に矩形の係止片9を備え、係止片9の中央に嵌合筒3が貫通している。係止片9は、その上面が嵌合筒3の上端面に一致し、左右方向両側に貫通孔9a、9aが設けられる。また、係止片9は、左右方向の幅が固定片6の二つの補強片8、8の間隔よりも小さく形成される。嵌合筒3は、支持板2に対して別体となっているが、支持板2にこれを貫通する円筒状の嵌合筒3を設けて、支持板2がこれと一体の嵌合筒3を有するものとしてもよい。
【0022】
嵌合筒3が支持板2の切り欠き7に差し込まれる状態において、係止片9は、支持板2の切り欠き7の周縁部上に係止可能となり、前側縁部が支持板2の固定片6よりも後側に位置する。また、この係止状態で、係止片9の左右方向両側の貫通孔9a、9aが、支持板2の左右方向両側の長孔2a、2aにそれぞれ一致する。
【0023】
嵌合筒3の上方に配置される台座4は、係止片9と同じ大きさの矩形の板体であり、下面中央に固定される嵌合リング10と、左右方向両側に設けられる貫通孔4a、4aとを有する。嵌合リング10は、円環状をなし、その内径が鋼管杭30の外径よりも大きく、内部に鋼管杭30が嵌合可能となる。
【0024】
また、台座4は、嵌合リング10を鋼管杭30内に嵌合した状態において、貫通孔4aが、係止片9の貫通孔9aに一致する。
【0025】
持ち上げ部材5は、台座4の上方に配置される基板11と、基板11の左右方向両側からそれぞれ下方に延びるねじ軸12と、ねじ軸12にねじ込み可能な下ナット16とを有する。基板11は、係止片9の左右方向の幅と同じ幅の矩形の板体であり、左右方向両側にねじ軸12が通る貫通孔11a、11aを有する。
【0026】
ねじ軸12は、
図3に示すように、上ねじ軸12a及び下ねじ軸12bが長ナット13により上下方向に連結されたものである。ねじ軸12は、上端部が基板11の左右両側の貫通孔11a、11aにそれぞれ挿通される状態で、上ナット14、14により、基板11に取り付けられる。
【0027】
なお、ねじ軸12は、上ねじ軸12aと下ねじ軸12bとに分離可能であるが、1本のねじ軸から構成してもよい。ねじ軸12が、上ねじ軸12aと下ねじ軸12bと分離可能であれば、後述のように、構造物の傾斜修復後、長ナット13を回転操作し、基板11と共に上ねじ軸12aを下ねじ軸12bから取り外すことが可能となる。
【0028】
また、ねじ軸12は、下ねじ軸12bに中ナット15がねじ結合し、中ナット15よりも下方において、台座4の左右方向両側の貫通孔4a、4aにそれぞれ挿通される。このため、下ねじ軸12bは、台座4の上方にねじ結合する中ナット15を備えるものとなる。
【0029】
また、ねじ軸12は、台座4の下方において、固定ナット17がねじ結合し、固定ナットの17よりも下方において、嵌合筒3が支持板2の切り欠き7に嵌め合わされる状態の係止片9の貫通孔9a、及び支持板2の長孔2aに挿通される。さらに、支持板2よりも下方において、下ナット16がねじ軸12の下端部に嵌め合わされる。下ナット16により、支持板2がねじ軸12に対して取り付けられる。
【0030】
この発明の傾斜修復器具1は上記のような構成であり、以下にその使用方法を
図4〜10に基づいて説明する。
【0031】
まず、基礎21が布基礎である構造物20において、傾斜修復箇所における基礎21の下方及び側近を掘削する。続いて、
図4(a)に示すように、構造物20の外壁から外側に突き出す基礎21の突出部21aを掘削ドリルなどで砕いて除去し、傾斜修復の作業空間Sを確保する。なお、構造物の基礎がべた基礎である場合等、構造物の基礎において、外壁から外側に突き出す突出部がないときは、この突出部を除去する必要はない。
【0032】
続いて、
図4(b)に示すように、基礎21の外側の側近において、複数の鋼管杭30を、基礎21下方の地盤から反力が得られるまで、順次上下方向に連結しつつ、回転により埋設する。ここで、鋼管杭30としては、その外周部にらせん状に取り付けられたプレート状のブレード31を備えるものを採用することができる。この場合、鋼管杭30は、公知の回転装置(図示省略)、例えばオーガ回転装置等を用いて回転させて地面に埋設する。
【0033】
ここで、鋼管杭30として、ブレード31を備えていないものを用いてもよい。この場合、油圧、空気圧、機械式などのハンマ、重錘等で鋼管杭30を打撃して、地面中に貫入させることができる。その一方で、ブレード31を備える鋼管杭30を用いると、ブレード31が地面に食い込むため、打撃貫入させる鋼管杭を用いた場合よりも、鋼管杭30が安定する。また、回転させることで、鋼管杭30はブレード31により地中を掘り進み、反力が得られる目標深度まで容易に到達させることが可能となる。
【0034】
次に、
図5(a)に示すように、基礎21の外面と鋼管杭30の径方向の中心との距離Xを測定する。そして、支持板2の切り欠き7に嵌合筒3を差し込み、係止片9を切り欠き7の周縁部上に係止させ、嵌合筒3の係止片9と支持板2とを固定する。その固定は、前記測定に基づいて、予め、作業空間Sの外で溶接により行われる。固定により、嵌合筒3の径方向の中心と、固定片6の補強片8側と反対面とが、距離Xと同じ距離Yとなる。
【0035】
続いて、
図5(b)に示すように、支持板2のうち、固定片6に対して補強片8側と反対側の部分(受け部分)を鋼管杭30よりも後側に配置させた状態で、嵌合筒3を鋼管杭30に通す。
【0036】
嵌合筒3を鋼管杭30に通した状態で、
図6(a)に示すように、支持板2の受け部分が基礎21の下方に位置するまで、支持板2を作業空間S内で回転させる。支持板2の回転後、
図6(b)に示すように、支持板2を上昇させて、支持板2の受け部分を基礎21の下部に突き合わせるとともに、固定片6を基礎21の側面に沿わせる。
【0037】
この状態で、
図7(a)に示すように、固定片6の長孔6a、6aに座金を介してボルト22をそれぞれ挿通し、基礎21にねじ込むことで、基礎21に対して支持板2を仮固定する。ここで、ボルト22によるねじ込みは、後述するジャッキ32の操作後に行う本締めとして行うことができる。
【0038】
また、固定片6は、左右方向両側に上下方向の長孔6a、6aを有しているため、長孔6a内において基礎21に対して上下方向任意の位置にボルト22をねじ込むことができる。必要に応じて複数本のボルト22をねじ込んでもよい。
【0039】
次に、
図7(b)に示すように、係止片9の貫通孔9a及び支持板2の長孔2aにねじ軸12の下ねじ軸12bを挿通し、下ねじ軸12bに対して、支持板2の下部に下ナット16を締め付け、係止片9の上部に固定ナット17を締め付ける。下ナット16と固定ナット17とを締め付けると、係止片9と支持板2が一体化され、嵌合筒3が係止片9を介して支持板2に保持される。
【0040】
下ナット16と固定ナット17との締め付け後、台座4の貫通孔4aにねじ軸12の下ねじ軸12bを挿通し、鋼管杭30の最上端の外周部に台座4の嵌合リング10を嵌め、台座4よりも上方で、下ねじ軸12bに中ナット15を締め付ける。
【0041】
次に、
図8(a)に示すように、台座4の上にジャッキ32を載せ、下ねじ軸12bの上部に上ねじ軸12aを長ナット13により連結してねじ軸12とする。ねじ軸12の上ねじ軸12aに、持ち上げ部材5の基板11の左右方向両側の貫通孔11a、11aをそれぞれ挿通し、ジャッキ32のピストン32a上に基板11を配置する。なお、ジャッキ32は、油圧式、機械式、空気圧式など、公知のものを適用することができる。
【0042】
その後、基板11上において、上ナット14を上ねじ軸12aに締め付ける。このとき、ジャッキ32のピストン32aは、最も下方に位置した状態となっている。
【0043】
以上のようにして、基礎21の下部に傾斜修復器具1が取り付けられる。続いて、
図8(b)に示すように、ジャッキ32を操作して、そのピストン32aを上昇させる。ここで、台座4は、鋼管杭30上に載っており、下方に移動できないことから、ピストン32aの上昇に伴い、持ち上げ部材5により、支持板2が引き上がる。
【0044】
すなわち、ピストン32aの上昇に伴い、基板11が上昇し、基板11に取り付けたねじ軸12を介して、支持板2が引き上げられる。支持板2の引き上げに伴って、基礎21が引き上がる。
【0045】
基礎21を所定位置まで引き上げた状態では、ねじ軸12に締め付けられる中ナット15が、台座4に対して基板11の引き上げ高さ分だけ上方に移動している(
図8(b)の一点鎖線参照)。この状態の中ナット15を回転させて(
図8(b)の実線参照)、台座4に突き合わせる。
【0046】
中ナット15の回転操作により、ねじ軸12は中ナット15が台座4に突き当たる位置で保持され、ねじ軸12に引き上げられた支持板2で基礎21を引き上げた状態で保持される。すなわち、中ナット15の回転操作によって、支持板2で基礎21を引き上げた状態で保持することができる。このため、従来の傾斜修復器具の場合と異なり、大掛かりな溶接作業が不要となり、傾斜修復の作業性が良好なものとなる。
【0047】
また、溶接作業に伴って、基礎21の直下又は側近に予め深い穴を空ける必要がなく、鋼管杭30を基礎21の側近に回転により埋め込み可能な作業空間が確保されていればよい。
【0048】
その後、ピストン32aを押し下げてジャッキ32を台座4から取り外す。その後、
図9に示すように、長ナット13を回転操作し、上ねじ軸12aを下ねじ軸12bから取り外す。最後に、構造物20の基礎21を土で埋め戻して、構造物の傾斜修復作業を終える。
【0049】
また、構造物の傾斜修復作業が終了した後、時間経過に伴い、構造物の傾斜が再発した場合であっても、この実施形態の傾斜修復器具を再利用することができる。
【0050】
すなわち、地面を台座4の下方まで掘り、台座4上にジャッキ32を載せ、下ねじ軸12bの上部に長ナット13により上ねじ軸12aを連結する。そして、ジャッキ32のピストン32a上に基板11を載せて、基板11上において、上ナット14を上ねじ軸12aに締め付ける。
【0051】
このようにして、再度、基礎21の下部に傾斜修復器具1を取り付けることができ、上述した手順で基礎21を持ち上げることができので、傾斜修復作業を再度容易に行うことができる。
【0052】
なお、この第一実施形態では、支持板2の切り欠き7に嵌合筒3を差し込み、係止片9を切り欠き7の周縁部上に係止させ、嵌合筒3の係止片9と支持板2とを固定しているが、これに限られない。例えば、
図10(a)、(b)に示すように、支持板2の下方に、嵌合筒3の係止片9を溶接により固定してもよい。この場合、嵌合筒3が鋼管杭30に挿通可能であり、かつ嵌合筒3の径方向の中心と、固定片6の補強片8側と反対面とが、距離Xと同じ距離Yとなるように固定される。
【0053】
この発明に係る第二実施形態を
図11〜13に基づいて説明する。
この第二実施形態においては、
図11に示すように、支持板2が、左右の補強片8、8の左右方向内側に左右一対の上部ガイド片23を備えている点で、前述した第一実施形態と相違する。上部ガイド片23を備える以外の構成は、前記第一実施形態と同様であり、第一実施形態の構成と同じ構成と考えられるものには、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0054】
この実施形態の左右一対の上部ガイド片23は、帯状をなし、固定片6と補強片8とに、支持板2の切り欠き7の周縁部に対して間隔をもって固定されている。また、左右一対の上部ガイド片23は、前後方向の長孔23aが形成され、その長孔23aが支持板2の長孔2aに一致している。
【0055】
各上部ガイド片23の後縁部は、支持板2の後縁部と一致しており、左右の上部ガイド片23の左右方向の間隔は、支持板2の切り欠き7の左右方向の幅よりも大きく形成される。上部ガイド片23と支持板2の切り欠き7の周縁部との間隔は、嵌合筒3の係止片9の厚みよりも大きく形成され、左右一対の上部ガイド片23は、支持板2との間において係止片9を前後方向に差し込み可能に案内する。
【0056】
図12に示すように、左右一対の上部ガイド片23は、支持板2との間に係止片9が差し込まれるとともに、嵌合筒3が支持板2の切り欠き7に差し込まれる。この状態で、上部ガイド片23の長孔23a、係止片9の貫通孔9a及び支持板2の長孔2aにねじ軸12の下ねじ軸12bが挿通される。挿通される下ねじ軸12bに対して、支持板2の下部に下ナット16が締め付けられ、上部ガイド片23の上部に固定ナット17が締め付けられる。
【0057】
下ナット16と固定ナット17とが締め付けられると、係止片9は、上部ガイド片23と支持板2との間に、前後方向の全長にわたって挟まれた状態となる。このため、嵌合筒3が係止片9を介して支持板2に保持される。
【0058】
上記構成の第二実施形態では、
図13(a)に示すように、上述した第一実施形態の場合と同様に、まず、基礎21の下方に傾斜修復の作業空間Sを確保する。その後、支持板2の受け部分を鋼管杭30よりも後側に配置させた状態で、嵌合筒3の係止片9を支持板2と左右一対の上部ガイド片23との間に差し込む。
【0059】
この状態で、
図13(b)に示すように、嵌合筒3を鋼管杭30に通す。なお、嵌合筒3を鋼管杭30に通した後、嵌合筒3の係止片9を支持板2と左右一対の上部ガイド片23との間に差し込んでもよい。
【0060】
続いて、第一実施形態の場合と同様に、基礎21に対して支持板2を仮固定する。その後、
図13に示すように、上部ガイド片23の長孔23a、係止片9の貫通孔9a及び支持板2の長孔2aにねじ軸12の下ねじ軸12bを挿通する。挿通した下ねじ軸12bに対して、支持板2の下部に下ナット16を締め付け、上部ガイド片23の上部に固定ナット17を締め付ける。そして、第一実施形態の場合と同様の傾斜修復の作業を行う。
【0061】
傾斜修復の作業において、鋼管杭30と基礎21との間に間隔があることから、支持板2を持ち上げ部材5により持ち上げる際、傾斜修復器具1に対して基礎21側に傾く傾斜モーメントが作用する。
【0062】
この実施形態では、係止片9は、上部ガイド片23と支持板2との間に前後方向の全長にわたって挟まれた状態である。この係止片9を介して嵌合筒3は、鋼管杭30に確実に支えられて、反力が作用する。この反力によって上記傾斜モーメントに対抗することができ、基礎21をより安定して持上げることができる。
【0063】
この発明の第三実施形態を
図14〜16に基づいて説明する。
この第三実施形態においては、
図14に示すように、支持板2がその下面に左右一対の下部ガイド片24、24を備えている点で、前述した第一実施形態と相違する。下部ガイド片24、24を備える以外の構成は、前記第一実施形態と同様であり、第一実施形態の構成と同じ構成と考えられるものには、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0064】
この実施形態の左右一対の下部ガイド片24は、帯状の受け板部24aと、受け板部24aの幅方向(左右方向)の片側に長さ方向(前後方向)の全長に形成されたフランジ24bとを有する。
【0065】
下部ガイド片24は、支持板2の下面に対して、左右の補強片8の下方にフランジ24bが固定され、受け板部24aが左右方向内側に配置されている。また、下部ガイド片24は、前後方向の長孔24cが形成され、その長孔24cが支持板2の長孔2aに一致している。
【0066】
各下部ガイド片24の後縁部は、支持板2の後縁部と一致しており、左右の下部ガイド片24の受け板部24aの左右方向における間隔は、支持板2の切り欠き7の左右方向の幅よりも大きく形成される。下部ガイド片24と支持板2の切り欠き7の周縁部との間隔は、嵌合筒3の係止片9の厚みよりも大きく形成され、左右一対の下部ガイド片24は、支持板2との間において係止片9を前後方向に差し込み可能に案内する。
【0067】
図15に示すように、左右一対の下部ガイド片24は、その受け板部24aと支持板2との間に係止片9が差し込まれるとともに、嵌合筒3が支持板2の切り欠き7に差し込まれる。この状態で、下部ガイド片24の長孔24c、係止片9の貫通孔9a及び支持板2の長孔2aにねじ軸12の下ねじ軸12bが挿通される。挿通される下ねじ軸12bに対して、下部ガイド片24の下部に下ナット16が締め付けられ、係止片9の上部に固定ナット17が締め付けられる。
【0068】
下ナット16と固定ナット17とが締め付けられると、係止片9は、支持板2と下部ガイド片24の受け板部24aとの間に、前後方向の全長にわたって挟まれた状態となる。このため、嵌合筒3が係止片9を介して支持板2に保持される。
【0069】
上記構成の第三実施形態では、
図16(a)に示すように、上述した第一実施形態の場合と同様に、まず、基礎21の下方に傾斜修復の作業空間Sを確保する。その後、支持板2の受け部分を鋼管杭30よりも後側に配置させた状態で、嵌合筒3の係止片9を支持板2と左右一対の下部ガイド片24の受け板部24aとの間に差し込む。
【0070】
この状態で、
図16(b)に示すように、嵌合筒3を鋼管杭30に通す。なお、嵌合筒3を鋼管杭30に通した後、嵌合筒3の係止片9を支持板2と左右一対の下部ガイド片24との間に差し込んでもよい。
【0071】
続いて、第一実施形態の場合と同様に、基礎21に対して支持板2を仮固定する。その後、
図16に示すように、下部ガイド片24の長孔24c、係止片9の貫通孔9a及び支持板2の長孔2aにねじ軸12の下ねじ軸12bを挿通する。挿通した下ねじ軸12bに対して、下部ガイド片24の下部に下ナット16を締め付け、係止片9の上部に固定ナット17を締め付ける。そして、第一実施形態の場合と同様の傾斜修復の作業を行う。
【0072】
この実施形態では、係止片9は、下部ガイド片24の受け板部24aと支持板2との間に前後方向の全長にわたって挟まれた状態である。この係止片9を介して嵌合筒3は、鋼管杭30に確実に支えられて、反力が作用する。この反力によって上記傾斜モーメントに対抗することができ、上記第二実施形態と同様に、基礎21をより安定して持上げることができる。
構造物の基礎の側近に設けられる鋼管杭に嵌る嵌合筒(3)を有し、前記基礎の下方に突き出す支持板(2)と、前記鋼管杭上に載せられ、ジャッキの載る台座(4)と、その台座(4)の上方に配置される基板(11)とその基板(11)の左右方向両側からそれぞれ下方に延びるねじ軸(12)とを有する持ち上げ部材(5)とを備え、そのねじ軸(12)の下部に前記支持板(2)が取り付けられた傾斜修復器具であって、
前記持ち上げ部材(5)は、そのねじ軸(12)が前記台座(4)の左右方向両側にそれぞれ貫通し、前記支持板(2)の上方で前記台座(4)が前記ねじ軸(12)に対して上下方向に移動可能であり、前記各ねじ軸(12)が前記台座(4)の上方にねじ結合するナット(15)を備え、前記嵌合筒(3)が前記支持板(2)に対して別体とされ、前記支持板(2)は、前記嵌合筒(3)を後方から差し込み可能な前後方向の切り欠き(7)を有し、前記嵌合筒(3)が前記支持板(2)に保持される係止片(9)を有し、その係止片(9)が前記支持板(2)に保持される状態で、前記持ち上げ部材(5)のねじ軸(12)が前記嵌合筒(3)の係止片(9)の左右両側にそれぞれ貫通するようにした傾斜修復器具。
前記嵌合筒(3)が前記支持板(2)の切り欠き(7)に差し込まれる状態で、前記係止片(9)が、前記支持板(2)の切り欠き(7)の周縁部上に係止可能である請求項1に記載の傾斜修復器具。
前記支持板(2)は、その切り欠き(7)の左右両側の周縁部に前後方向の長穴(2a)を有し、前記持ち上げ部材(5)のねじ軸(12)は、前記支持板(2)の長穴(2a)に貫通する状態で、その支持板(2)の下方でねじ結合するナット(16)を備えた請求項2に記載の傾斜修復基部。
前記支持板(2)が左右一対のガイド片を備え、左右一対の前記ガイド片は、前記支持板(2)との間で、前記嵌合筒(3)の係止片(9)を前後方向に案内可能に保持するようにした請求項1または2に記載の傾斜修復器具。