(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-117551(P2015-117551A)
(43)【公開日】2015年6月25日
(54)【発明の名称】土留め工事用注入管の先端部材および土留め工法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/04 20060101AFI20150529BHJP
E02D 5/32 20060101ALI20150529BHJP
【FI】
E02D5/04
E02D5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-263132(P2013-263132)
(22)【出願日】2013年12月19日
(71)【出願人】
【識別番号】504092563
【氏名又は名称】山下 大地
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 大地
【テーマコード(参考)】
2D041
2D049
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA33
2D041BA42
2D049EA02
2D049FA04
2D049FB03
(57)【要約】
【課題】土留め部材の建て込みにおいて注入管を土留め部材に取り付けて打ち込むときに先端部材の中に土砂が入ることを防止し、土留め部材の引抜時において注入材の吐出が良好かつ確実に行えるようにする。
【解決手段】平坦な土留め部材接触面5と、下部に設けられたくさび状部と、上部に設けられた2以上の注入材導入口4と、注入材導入口4に続く注入材混合室6と、注入材混合室6に続く栓移動路7と、栓移動路7から土留め部材接触面5以外の面に続く注入材吐出孔8と、栓移動路7の下部から土留め部材接触面5に続く圧力抜き孔9と、栓移動路7内を上下動可能に設けられた栓12と、栓12に上向きの力を加える付勢部材14とを有し、栓12が最上部にあるときに栓12が注入材吐出孔8をふさぎ、栓12が下がった時に栓12が注入材吐出孔8をふさがないようにする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な土留め部材接触面と、下部に設けられたくさび状部と、上部に設けられた2以上の注入材導入口と、注入材導入口に続く注入材混合室と、注入材混合室に続く栓移動路と、栓移動路から土留め部材接触面以外の面に続く注入材吐出孔と、栓移動路の下部から土留め部材接触面に続く圧力抜き孔と、栓移動路内を上下動可能に設けられた栓と、栓に上向きの力を加える付勢部材とを有し、栓が最上部にあるときに栓が注入材吐出孔をふさぎ、栓が下がった時に栓が注入材吐出孔をふさがないようになした土留め工事用注入管の先端部材。
【請求項2】
栓は概ね円柱状であり、栓にはOリングが設けられている請求項1に記載の土留め工事用注入管の先端部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の土留め工事用注入管の先端部材を使用して注入材を注入して抜き跡を充填しながら土留め部材を引き抜く土留め工法であり、
栓より下側の栓移動路栓移動路にグリスを充填し、注入材吐出孔と圧力抜き孔に粘土を外側から詰め、平坦な土留め部材接触面を土留め部材に当てるようにして土留め部材の下端部に取り付け、さらに注入材導入口に注入管を接続し、この土留め部材を施工場所に打ち込んで土留め壁を形成し、
施工後には注入管で先端部材に注入材を送り込み、先端部材の注入材吐出孔より注入材を地中に注入して土留め部材の引抜き跡を充填しながら土留め部材を撤去する土留め工法。
【請求項4】
土留め部材の表面に万力を溶接し、この万力によって先端部材を土留め部材に固定し、溶接によって先端部材を土留め部材に仮留めし、万力を土留め部材から取り外した後に溶接によって先端部材を土留め部材を最終的に固定する請求項3に記載の土留め工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼矢板などで土留めを行いながら地中に水道管、ガス管、側溝、カルバートボックス等を埋設する土留め工事の施工に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に水道管、ガス管、カルバートボックス、下水管、側溝等を埋設する工事においては、まず溝の両壁を構成すべき位置に簡易矢板、鉄板、シートパイル等の土留め部材を設置して溝壁が崩れるのを防止した上で、地面を掘削して溝を形成し、溝内での水道管等の敷設作業が行われる。敷設作業が終了し溝を埋めなおした後に、土留め部材は地中から引き抜かれる。しかし、地中には土留め部材の体積分の空隙が生じることになる。この空隙を埋めるために周囲の土砂が移動し、さまざまな問題が生じうる。例えば、時間とともに溝内に充填した砂や土砂が空隙を埋めるために移動し、溝の上に敷かれた舗装面が沈下して、道路表面にくぼみを生じる。また、溝の外の土砂が移動することにより、溝の両側の地盤状態に変動をきたし、近くの建造物に影響を与えうる。さらに、周囲の地下水の状態が変われば、広範囲での影響も発生する。地下水は最も通りやすいところに水路を形成するので、土留め部材の引き抜きによって生じた空隙や、それを埋めるために移動した土砂によってできた水の通りやすい場所に新たな水路を形成し、周囲の地下水の流れが大きく変動する。この地下水の状態の変動によってそれまで保たれていた周囲の地盤の地圧のバランスがくずれ、地盤沈下等の地盤変動が生じ、そこに建造されている塀や建物等を変形させることになる。
【0003】
そこで、シートパイルによる空隙を生じさせないために、シートパイルを引き抜かず、施工後も地中へ残すことが考えられる。しかし、地中に残されたシートパイルは時間とともに酸化・腐食により消失し、いずれは上述のような問題が生じることに変わりがない。また、シートパイルの素材である金属が土壌や地下水等を汚染することになる。シートパイルを使い捨てにすることは資源としても無駄な消費である。
【0004】
引用文献1(特開昭64−58713)には、鋼矢板の引抜き時に土砂を落下させて空隙を埋めることが記載されている。引用文献2(特開昭57−108311)および引用文献3(特開昭57−108312)には「地盤圧密剤」を注して空洞を埋めることが、引用文献4(特開昭49−49404)には、「充填材」を注入することが記載されている。さらに、引用文献5(特許第4897985号特許公報)には、硬化剤を送り込む流路を有し、複数の部分に長さ方向に分割されている硬化剤注入管であり、分割された硬化剤注入管同士を軸方向に挿し込むことによって各流路同士をつなぐように接続する接続部材と、土留め部材に当接する平面状の土留め部材取り付け面を有する土留め工事用硬化剤注入管が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−58713号公開特許公報
【特許文献2】特開昭57−108311号公開特許公報
【特許文献3】特開昭57−108312号公開特許公報
【特許文献4】特開昭49−49404号公開特許公報
【特許文献5】特許第4897985号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は実施が不可能なものである。土砂を地中に埋め戻すにあたっては、約25cmごとに点圧器で点圧を行い、さらに水をかけてしめ固めなければならない。しかし、鋼矢板の引抜き跡に入れられた土砂に対して点圧を行うことはできない。また、鋼矢板の引抜き中や引抜き直後に地中に水を供給すれば、かえって地盤沈下を加速させることになる。点圧も水しめも行われない土砂は空隙が多く、地盤変動を防止することができない。
【0007】
特許文献2および特許文献3には「地盤圧密剤」が記載されているが、これらの文献には「地盤圧密剤」についての具体的な説明は一切なく、結局、どのように実施すべきかは不明である。特許文献4の「充填材」についても同文献中に記載はなく、どのように実施すべきかは不明である。
【0008】
一方、特許文献5には、土留め部材、硬化剤注入管、作業手順、硬化剤の種類などが具体的に示されており、実施可能な技術が提示されている。特許文献5の
図2、
図14、0016段落、0017段落、0048段落には、先端部材が詳細に示されている。その
図14では、先端部材は略直方体状の外形を有し、特に最先端部の面は斜めに切り取られた形状に形成されており、建て込み時に土中を進行しやすくなっている。先端部材において二つの流路は合流し、液体が混合されるようになっている。側面に3つの吐出口を横方向に有する。そして、内部には栓が上下動可能に設けられているが、付勢部材により上方向に付勢されており、上面に大気圧がかかっている状態で、栓は吐出口を塞ぐ位置にある。
【0009】
しかし、本願発明者らは、特許文献5に記載の先端部材の使用を重ねることにより、問題点があることを見出した。すなわち、先端部材を土留め部材とともに地中に建て込むときに、栓が上下動して吐出口が開いた状態となり、この吐出口から土砂が内部に入り込む問題が発生した。特に、土留め部材を打撃により建て込んだり、振動式杭打機したときには、先端部材の栓の上下動が大きくなり、土砂の流入が発生しやすい。先端部材の中に土砂が入ると栓の滑らかな移動を妨げ、注入材を導入しても吐出口を開放する位置まで栓を押し下げることができない。また、注入材の流れを妨げ、良好な吐出が行えなくなる。
【0010】
この発明は、土留め部材の建て込みにおいて先端部材の中に土砂が入ることを防止し、土留め部材の引抜時において注入材の吐出が良好かつ確実に行えるような先端部材および土留め工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、この発明の土留め工事用注入管の先端部材は、平坦な土留め部材接触面と、下部に設けられたくさび状部と、上部に設けられた2以上の注入材導入口と、注入材導入部に続く注入材混合室と、注入材混合室に続く栓移動路と、栓移動路から土留め部材接触面以外の面に続く注入材吐出孔と、栓移動路の下部から土留め部材接触面に続く圧力抜き孔と、栓移動路内を上下動可能に設けられた栓と、栓に上向きの力を加えるバネとを有し、栓が最上部にあるときに栓が注入材吐出孔をふさぎ、栓が下がった時に栓が注入材吐出孔をふさがないようになっているようになしたものである。栓は概ね円柱状であり、栓にはOリングが設けられていることが好ましい。
【0012】
また、この発明の土留め工法は、上述の土留め工事用注入管の先端部材を使用して注入材を注入して抜き跡を充填しながら土留め部材を引き抜く土留め工法であり、
栓より下側の栓移動路栓移動路にグリスを充填し、注入材吐出孔と圧力抜き孔に粘土を外側から詰め、平坦な土留め部材接触面を土留め部材に当てるようにして土留め部材の下端部に取り付け、さらに注入材導入口に注入管を接続し、この土留め部材を施工場所に打ち込んで土留め壁を形成し、
施工後には注入管で先端部材に注入材を送り込み、先端部材の注入材吐出孔より注入材を地中に注入して土留め部材の引抜き跡を充填しながら土留め部材を撤去する。土留め部材の表面に万力を溶接し、この万力によって先端部材を土留め部材に固定し、溶接によって先端部材を土留め部材に仮留めし、万力を土留め部材から取り外した後に溶接によって先端部材を土留め部材を最終的に固定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明の先端部材および土留め工法によれば、土留め部材の建て込みにおいて先端部材の中に土砂が入ることを防止し、土留め部材の引抜時において注入材の吐出が良好かつ確実に行えるような先端部材および土留め工法を提供することができる。したがって、油圧式杭圧入引抜機だけでなく打撃式杭打機や振動式杭打機などさまざまな設備について適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】土留め工事用注入管の先端部材を示す正面図である。
【
図7】土留め部材の中央面への注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【
図8】土留め部材の側面への注入管の取り付け作業を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1は土留め工事用注入管の先端部材を示す正面図、
図2は同背面図で、
図3は同側面図、
図4は同A−A断面図、
図5は同B−B断面図である。
【0016】
先端部材1は上部部材2と下部部材3を有する。上部部材2は略直方体であり、上部には2以上の注入材導入口4a,4bが設けられている。本例では、独立した注入材導入口4が2つ並列に設けられている。上部部材2の背面は土留め部材接触面5であり、土留め部材xの表面に密着できるように平坦に形成されている。
【0017】
先端部材1の内部には注入材導入口4a,4bに続く広い空間が設けられており、注入材混合室6となっている。注入材混合室6の下には先端部材1の下面まで貫通した円形の孔が形成されており、栓移動路7となっている。栓移動路7の中程の位置から土留め部材接触面以外の面に向けて横方向に孔が貫通しており、注入材吐出孔となっている。また、栓移動路7の中程の下部には土留め部材接触面5に続く圧力抜き孔9となっている。
【0018】
下部部材3も上部は略直方体の形状であるが、先端部は正面側が斜めに切り落とされてくさび状になっている。下部部材3の背面も平坦に仕上げられ、土留め部材接触面となっている。下部部材3の上部には円柱状の突起部10が形成されており、その外径は栓移動路7の内径に対応している。この突起部10にはOリング11が取り付けられる。
【0019】
栓移動路7の中には、栓12が上下動可能に設けられる。栓12の外径は栓移動路7の内径とほぼ同じか、それより若干小さめである。そして、2つのOリング13が取り付けられている。栓12の下にはバネなどの付勢部材14が設けられ、栓12を上に押し上げる力を加えており、他に外力がかかっていないときは栓12は最上部まで押し上げられている。そして、栓12が最上部にあるときに栓12が注入材吐出孔8をふさぎ、栓12が下がった時に栓12が注入材吐出孔8をふさがないようになっている。栓12は十分な長さを有し、少し下がった程度ではまだ注入材吐出孔8されず、十分に下がりきった時に注入材吐出孔8が開放する。栓移動路7の長さは100mm以上120mm以下、栓12の長さは38mm以上42mm以下とし、バネは5Kg重以上の力が加わったときに栓12が注入材吐出孔の開放位置まで下るような強さにすることが好ましい。本例では、栓移動路7の内径は18.2mmで長さは110mm、栓12の長さは40mmであり、6Kg重の力が加わった時に栓12が注入材吐出孔8の開放位置まで下るような強さのバネを使用した。これにより、打ち込みのときの衝撃や振動では容易には注入材吐出孔8の開放位置まで下がらず、注入時には注入材の圧力により注入材吐出孔8の開放位置まで下るようにすることができる。
【0020】
次に、注入管について説明する。ここで、注入管とは先端部材1を含め、注入材の注入のために土留め部材に取り付けられる一連の部材の総称である。
図6は注入管を示す概念図である。
【0021】
中間ロッド21a、21bは平行に設けられた2本の円柱状のパイプである。それぞれのパイプ21a、21bが独立した薬液の流路を形成する。この中間ロッド21a、21bは長さ方向に分割されている。そして、長さ方向に差し込むことによって接続する接続部材によって接続される。
【0022】
そして、接続箇所にはブレ止め部材22が取り付けられる。ブレ止め部材22は略直方体状の外形を有し、パイプ21a、21bを収容するための2本の孔22a,22bが貫通している。このブレ止め部材22によってパイプ21a、21bの相互の位置関係が固定され、土留め部材の建て込み時などにおけるパイプ21a、21bのブレを防止する。最上部には、薬液を供給するホース23を接続するための注入材導入部材24が設けられる。
【0023】
図7は土留め部材の中央面への硬化剤注入管の取り付け作業を示す斜視図である。コの字型の断面形状を持つシートパイル(鋼矢板)を土留め部材として使用する例である。まず、先端部材1と中間ロッド21a、21bを接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで接続する。そして、中間ロッド21a、21bの他端部にブレ止め部材22を取り付ける。ブレ止め部材22も、パイプ21a、21bを孔22a,22bに通すようにして取り付けることができる。そして、先端部材1およびブレ止め部材22を鋼矢板xに溶接する。先端部材1およびブレ止め部材22は略直方体状であり、平面状の土留め部材取り付け面を有するので、簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0024】
ここで、先端部材の取付方法について詳細に説明する。まず、先端部材1を組み立てる。栓12にグリスを塗り、栓12を上部部材2の下の孔より栓移動路7の中に挿入して、最上部まで押し込む。次に、上部部材2の下の孔よりグリスを詰める。このとき、中に空気が入らないようにし、入口までいっぱいにグリスを詰める。そして、付勢部材14(バネ)を栓移動路7の中に挿入する。それから、下部部材3の突起部10を栓移動路7の中に挿入し、上部部材2と下部部材3を接続する。注入材吐出孔8に外側よりグリスを半分程度入れ、さらに粘土を詰めて封をする。圧力抜き孔9には粘土のみを詰める。
【0025】
土留め部材の下端から20cmの位置に先端部材1の最先端が位置するように取り付ける。まず、先端部材1が取り付けられるべき位置の土留め部材の表面を研磨し、より滑らかにする。先端部材1の土留め部材接触面5も研磨する。次に、土留め部材に万力を溶接で取り付ける。この万力により先端部材1を土留め部材に取り付け、点溶接によって、先端部材1を土留め部材に仮留めする。そして、万力を土留め部材から取り外す。先端部材1は土留め部材に仮留めされているので、位置がずれることはない。さらに、溶接により先端部材1を土留め部材に本付けする。こうして、先端部材1は正しい位置に、正確かつ確実に固定される。
【0026】
ついで、次の中間ロッド21a、21bを接続する。また、追加した中間ロッド21a、21bの上部にブレ止め部材22を取り付ける。中間ロッド21同士の接続も、接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで行える。ネジ式でないので中間ロッド21同士を回転する必要がないので、このように先端部から順次接続することができる。レンチなどの工具も特に要しない。中間ロッドの最上端は土留め部材の上端よりも低い位置にする。油圧式杭圧入引抜機を使用する場合であれば、土留め部材の上端よりも70cm程度低い位置に注入材導入部材24の上端部を合わせる。そして、中間ロッドの最上端には土砂の流入を防止するキャップをかぶせる。
【0027】
図8は土留め部材の側面への注入管の取り付け作業を示す斜視図である。中央面に取り付けるのと同様な手順で先端部材1を取り付ける。そして、先端部材2と中間ロッド21a、21bを接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで接続する。そして、中間ロッド21a、21bの他端部にブレ止め部材22を取り付ける。先端部材1およびブレ止め部材22を土留め部材の側面に溶接する。さらに、次の中間ロッド22を継ぎ足しながら、順次溶接して、土留め部材の側面に取り付けて行く。土留め部材の側面は傾斜しているが、中間ロッド同士の接続も、接続部材を介して長さ方向に差し込むことによって、ワンタッチで行える。ネジ式でないので中間ロッド3同士を回転する必要がないので、このように先端部から順次接続することができる。
【0028】
土留め部材に注入管1を取り付けたら、地中に建て込む。油圧式杭圧入引抜機を使用してもよいが、打撃式杭打機や振動式杭打機などを使用することもできる。この場合、かなりの衝撃や振動が先端部材にも加わる。しかし、栓12は栓移動路7の最上部に位置しているのでこれ以上は上昇できない。また、強いバネを付勢部材として使用しており、さらに栓12は十分な長さを有するので、注入材吐出孔8が開放される位置までは容易に下がらない。栓移動路7にグリスを詰めることにより栓12はさらに下がりにくくなっている。これにより、土留め部材の建て込み中に土砂が注入材吐出孔8より進入することが確実に防止される。
【0029】
この発明の先端部材では、圧力抜き孔を通って土砂が進入しにくい構造になっている。先端部材の背面は土留め部材と表面に密着するように平坦になっている。また、先端部は正面から背面にかけて斜めに切り落とされてくさび状になっているので、土留め部材の打ち込みにおいて、先端部材を土留め部材に押しつけようとする力がかかり、土留め部材と先端部材の間に隙間が生じにくい。しかし、それでも、圧力抜き孔を通って土砂が進入する場合があった。本例では、栓移動路7にグリスを充填し、さらに圧力抜き孔に粘土を詰めて封じたので、圧力抜き孔からの土砂の流入も防止される。
【0030】
設置する土留め部材の全てに注入管を取り付けなくてもよい。地盤における注入材の浸透のしやすさに等に応じ、たとえば、2〜6本おきに注入管付きの土留め部材を使用してもよい。こうして、工事に必要な土留め壁を形成することにより、埋設などの工事が安全に実施できる。
【0031】
そして、工事が終了したら、土留め部材の引く抜きを行う。最上部の注入材導入部材24に薬液のホースを接続する。土留め部材は基本的に端から順次引き抜くが、注入管1により地中に硬化剤を注入しながら行う。この実施例では2本の独立したパイプ21a、21bにより独立した流路を有するので、2液性の硬化剤を使用することができる。
【0032】
土留め部材の引抜き跡を迅速に充填するためには、硬化剤としては2液を混合するゲルタイムの短いものが好ましい。
瞬結性の硬化剤の例について説明する。A液として水ガラス(JIS3号ケイ酸ナトリウム)80リットルに水120リットルを加えたものを用意する。B液としては、高炉セメントB種に無機系懸濁型水ガラス系グラウト用硬化剤を加えたものを用意する。例えば、高炉セメントB種50Kg、YMS45(三興コロイド化学株式会社)10Kgおよび178.7リットルを混合してB液とする。YMS45は硫酸カルシウムと水酸化カルシウムを主成分とする薬剤である。このA液とB液を1対1で使用することにより、また、高炉セメントB種50Kg、YMS90(三興コロイド化学株式会社)5Kgおよび181.4リットルを混合してB液とすると、20℃でのゲルタイムが1〜2分、4週強度0.5〜1N/mm
2となる。これらの硬化剤は、毒物や劇物を含まない安全性の高い無公害薬剤である。
【0033】
ついで、緩結性の硬化剤の例について説明する。高炉セメントB種50Kg、ベントナイト10Kg、セメントミルク凝結硬化促進剤であるYMS2000(三興コロイド化学株式会社)4Kgおよび177.8リットルを混合する。これによって、流動性消失時間が30〜40分、4週強度0.71N/mm
2となる。
【0034】
ホースより注入材が注入管に注入されると、注入材の圧力によって栓12が下方向に押し下げられる。注入材の圧力は強いので、付勢部材の力に抗して栓12を押し下げ、注入材吐出孔8が開放される。また、栓移動路7の下部には圧力抜き孔9が設けられているので、栓移動路7の中の空気やグリスは圧力抜き孔9を通って外部に排出される。したがって、栓12はスムーズに下方へ移動し、栓移動路7の側壁に横向きに設けられた栓移動路7は確実に開放される。二つの流路を通ってきた2種類の薬液(A液、B液)は先端部材1の注入材混合室で混合され、注入材吐出孔8より横向きに地中に注入される。
【0035】
先端部材1より地中に注入された注入材は、先に引き抜かれた土留め部材および注入管付き鋼矢板自体によってできる空隙を埋める。したがって、空隙に起因する地中の土壌の移動や地下水の水路の変化に伴う地盤状態の変動が発生しない。
【0036】
引き抜きが完了したら、ホースを取り外し、次に引き抜く土留め部材に取り付ける。以下、同様の作業を繰り返して、全ての土留め部材を撤去する。
【符号の説明】
【0037】
1.先端部材
2.上部部材
3.下部部材
4.注入材導入口
5.土留め部材接触面
6.注入材混合室
7.栓移動路
8.注入材吐出孔
9.圧力抜き孔
10.突起部
11.Oリング
12.栓
13.Oリング
14.付勢部材
21.中間ロッド
22.ブレ止め部材
23.ホース
24.注入材導入部材