特開2015-117658(P2015-117658A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-117658(P2015-117658A)
(43)【公開日】2015年6月25日
(54)【発明の名称】可変容量型ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/22 20060101AFI20150529BHJP
【FI】
   F04B1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-262478(P2013-262478)
(22)【出願日】2013年12月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】390017352
【氏名又は名称】仁科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】松尾 力
(72)【発明者】
【氏名】石川 洋彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐規
(72)【発明者】
【氏名】宇野 峰志
(72)【発明者】
【氏名】牧島 由和
【テーマコード(参考)】
3H070
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB04
3H070CC07
3H070CC21
3H070DD47
3H070DD55
(57)【要約】
【課題】 コントロールピストンにおける摩耗の抑制が図られた可変容量型ピストンポンプを提供する。
【解決手段】
ポンプ1のコントロールピストン50は、最小斜板傾角のとき、ピストン部58のエッジE1は第1のくり抜き部53Aの位置にあり、最大斜板傾角のとき、ピストン部58のエッジE2は第2のくり抜き部53Bの位置にあるため、ピストン収容室56の内壁面を削る事態が回避される。なお、一対のくり抜き部53A、53Bが、ピストン部58の長さL1よりも長い距離Lだけ離間しているため、最小斜板傾角のとき、ピストン部58のネジ側のエッジは第2のくり抜き部53Bよりも斜板側にあり、最大斜板傾角のとき、ピストン部58の斜板側のエッジE1は第1のくり抜き部53Aよりも斜板30から離れた位置にあるため、くり抜き部53A、53Bのエッジがピストン部の側周面を削る事態も回避されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と一体的に回転するシリンダブロック内のピストンが、斜板の傾角に応じたストロークの往復動をおこなって、作動流体の吸入および吐出をおこなう可変容量型ピストンポンプであって、
前記可変容量型ピストンポンプは、前記斜板を押圧して該斜板の傾角を調整するコントロールピストンを備え、
前記コントロールピストンは、
前記斜板に対して往復動し、かつ、円柱状の外形を有するピストン部と、
前記ピストン部を収容するピストン収容室を有するハウジングと
を有し、
前記ハウジングの前記ピストン収容室の内壁面には、前記ピストン部の往復動方向に関して前記ピストン部の長さよりも長い距離だけ離間された第1のくり抜き部および第2のくり抜き部が形成されており、
前記第1のくり抜き部は、前記ピストン部が前記斜板に最も近接したときの、前記ピストン部の斜板側のエッジの位置に形成されており、
前記第2のくり抜き部は、前記ピストン部が前記斜板から最も離間したときの、前記ピストン部の斜板側とは反対側のエッジの位置に形成されている、可変容量型ピストンポンプ。
【請求項2】
前記ピストン部には、前記斜板と対向する側に前記ピストン部よりも径が小さい円柱状の外形を有する接合部が設けられており、
前記ピストン部は、前記接合部を介して前記斜板を押圧することで傾角を変更する、請求項1に記載の可変容量型ピストンポンプ。
【請求項3】
前記斜板が、前記コントロールピストンと対向する側に曲面状の当接部を備え、
前記コントロールピストンの前記接合部が、前記当接部に接触する平面状の端面を有する、請求項2に記載の可変容量型ピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型ピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、油圧回路の油圧発生源として用いられ、斜板の傾角を調整することにより吐出容量が変更される可変容量型ピストンポンプが知られている。
【0003】
このような可変容量型ピストンポンプにおいては、その回転軸と、回転軸回りに配置された複数のシリンダボアを有するシリンダブロックとが、一体的に回転される。
【0004】
複数のシリンダボアに収容されたピストンは、その一端部が、回転軸方向に対する傾斜した斜板に取り付けられており、この斜板の傾角が各ピストンのストローク(つまり、可変容量型ピストンポンプの吐出容量)を規定している。
【0005】
斜板の傾角は、斜板の縁部を押圧するコントロールピストンによって調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−338357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した可変容量型ピストンポンプにおいて、コントロールピストンは、シリンダの制御室への作動油を制御することで、ピストン部を斜板の向きに往復動させて、ピストン部を、少なくとも斜板に最も近接した位置と斜板から最も離間した位置とに配置することができる。このようなピストン部のシリンダ内での往復動に伴って、ピストン部端面のエッジによりシリンダの内周面が削られたり、シリンダ開口のエッジによりピストンの側周面が削られたりする。つまり、従来の構成では、コントロールピストンにおいて局所的に摩耗が生じやすいという問題を抱えていた。
【0008】
本発明は、コントロールピストンにおける摩耗の抑制が図られた可変容量型ピストンポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る可変容量型ピストンポンプは、回転軸と一体的に回転するシリンダブロック内のピストンが、斜板の傾角に応じたストロークの往復動をおこなって、作動流体の吸入および吐出をおこなう可変容量型ピストンポンプであって、可変容量型ピストンポンプは、斜板を押圧して該斜板の傾角を調整するコントロールピストンを備え、コントロールピストンは、斜板に対して往復動し、かつ、円柱状の外形を有するピストン部と、ピストン部を収容するピストン収容室を有するハウジングとを有し、ハウジングのピストン収容室の内壁面には、ピストン部の往復動方向に関してピストン部の長さよりも長い距離だけ離間された第1のくり抜き部および第2のくり抜き部が形成されており、第1のくり抜き部は、ピストン部が斜板に最も近接したときの、ピストン部の斜板側のエッジの位置に形成されており、第2のくり抜き部は、ピストン部が斜板から最も離間したときの、ピストン部の斜板側とは反対側のエッジの位置に形成されている。
【0010】
上記可変容量型ピストンポンプにおいては、コントロールピストンのピストン部が斜板に最も近接したときには、ピストン部の斜板側のエッジは、第1のくり抜き部の位置にあるためにピストン収容室の内壁面を削る事態が回避される。一方、ピストン部が斜板から最も離間したときには、ピストン部の斜板側とは反対側のエッジは、第2のくり抜き部の位置にあるため、ピストン収容室の内壁面を削る事態が回避される。なお、第1のくり抜き部および第2のくり抜き部が、ピストン部の往復動方向に関してピストン部の長さよりも長い距離だけ離間されている。そのため、ピストン部が斜板に最も近接したときには、ピストン部の斜板側とは反対側のエッジは、第2のくり抜き部よりも斜板側にあるため、第2のくり抜き部のエッジがピストン部の側周面を削る事態も回避されている。また、ピストン部が斜板から最も離間したときには、ピストン部の斜板側のエッジは、第1のくり抜き部よりも斜板から離れた位置にあるため、第1のくり抜き部のエッジがピストン部の側周面を削る事態も回避されている。
【0011】
また、ピストン部には、斜板と対向する側にピストン部よりも径が小さい円柱状の外形を有する接合部が設けられており、ピストン部は、接合部を介して斜板を押圧することで傾角を変更する態様であってもよい。この場合、ピストン部を設計する上での自由度が向上する。
【0012】
さらに、斜板が、コントロールピストンと対向する側に曲面状の当接部を備え、コントロールピストンの接合部が、当接部に接触する平面状の端面を有する態様であってもよい。この場合、斜板の傾角が変わっても、当接部に対する接合部の端面の接触を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コントロールピストンにおける摩耗の抑制が図られた可変容量型ピストンポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る可変容量型ピストンポンプを示した概略断面図である。
図2図2は、図1の可変容量型ピストンポンプの要部拡大図であり、コントロールピストンを示した図である。
図3図3は、ピストン部が斜板に最も近接したときのコントロールピストンの状態を示した斜視図である。
図4図4は、ピストン部が斜板に最も近接したときのコントロールピストンの状態を示した断面図である。
図5図5は、ピストン部が斜板から最も離間したときのコントロールピストンの状態を示した斜視図である。
図6図6は、ピストン部が斜板から最も離間したときのコントロールピストンの状態を示した断面図である。
図7図7は、異なる態様のくり抜き部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
(可変容量型ピストンポンプ)
【0016】
まず、本実施形態に係る可変容量型ピストンポンプ(以下、単にポンプと称す。)について、図1を参照しつつ説明する。
【0017】
ポンプ1は、ポンプハウジング10と、ポンプハウジング10から突出する回転軸20とを備えている。
【0018】
ポンプハウジング10は、その内部にクランク室12を有する。ポンプハウジング10は、フロントハウジング10a、センタハウジング10b、リヤハウジング10cを接合することによって形成されている。
【0019】
回転軸20は、クランク室12内において支持されている。回転軸20は、そのポンプハウジング10からの突出端部が、図示しない動力取出装置に連結されており、エンジンにより直接回転されるようになっている。
【0020】
ポンプハウジング10のクランク室12には、回転軸20に一体回転可能にスプライン嵌合されたシリンダブロック14が収容されている。シリンダブロック14のシリンダボア14aは、シリンダブロック14において回転軸20の周囲に複数が形成され、各シリンダボア14a内にはそれぞれピストン16が収容されている。
【0021】
また、ポンプハウジング10のクランク室12には、ポンプハウジング10に支軸30aを介して支持され、かつ、回転軸20の軸線方向に揺動可能な斜板30が収容されている。斜板30により、シリンダブロック14に収容された各ピストン16は、その一端部(図1の左端部)が球面継手で連結されたシューを介して押接され、また、シリンダブロック14はリヤハウジング10cの内端壁面に止着されたバルブプレート40に押接される。
【0022】
そして、シリンダブロック14が回転軸20と一体的に回転されることにより、各ピストン16が斜板30の傾角により規定されたストロークを往復動されるとともに、シリンダボア14aがバルブプレート40に透設された円弧状をなす吸入ポート40aおよび吐出ポート40bと交互に連通される。これにより作動油が吸入ポート40aからシリンダボア14a内に吸入され、シリンダボア14a内の作動油はポンプ作用により吐出ポート40bから吐出される。なお、吸入通路10dおよび吐出通路10eはリヤハウジング10cに形成され、それぞれ吸入ポート40aおよび40bと連通されている。
(コントロールピストン)
【0023】
ポンプ1は、さらにコントロールピストン50を備えている。コントロールピストン50は、ポンプハウジング10のセンタハウジング10bの側部に設けられており、クランク室12に連通するハウジング52を有する。
【0024】
図1および図2に示すように、コントロールピストン50のハウジング52は、回転軸20に対して傾いた方向に延在し、かつ、斜板30の縁部に向かって延びる略円筒状の形状を有している。
【0025】
ハウジング52の開口のうち、斜板30から遠い方の開口は、ネジ54によって塞がれている。それにより、ハウジング52内にはピストン収容室56が画成され、このピストン収容室56にピストン部58が収容されている。なお、ピストン収容室56のうち、ピストン部58とネジ54との間の空間は、作動油が流入する制御室56aとして機能する。
【0026】
ピストン部58は、長さL1である円柱状の外形を有しており、ピストン部58の径D1は、ピストン収容室56の内壁面との間に隙間がないように、かつ、ピストン収容室56においてピストン部58が摺動できるように設計される。
【0027】
このようなピストン部58においては、斜板30側の端面におけるエッジE1と、ネジ54側(すなわち、斜板側とは反対の側)の端面におけるエッジE2とが形成される。
【0028】
また、ピストン部58には、その斜板30側に、ピストン部58の中心軸と同一の中心軸を有する小径部59が設けられており、ピストン部58と小径部59とは一体成型されている。小径部59は、長さL2の円柱状の外形を有しており、その径D2は、ピストン部の径D1より小さく(D2<D1)設計されている。小径部59の斜板30側の端面は、平面状であり、後述する斜板30の縁部30bの球32に接触する。
【0029】
なお、ピストン部58には、ネジ54側の端面の近傍に、溝58aが設けられている。溝58aは、制御室56aに流入した作動油がピストン部58の全周に亘って行きわることを促す等の機能を有する。
【0030】
そして、ハウジング52の内壁面には、一対のくり抜き部(第1のくり抜き部53Aおよび第2のくり抜き部53B)が設けられている。一対のくり抜き部53A、53Bにおいては、ハウジング52のピストン収容室56の内壁面は、ピストン部58の周側面から離れるように窪んでいる。一対のくり抜き部53A、53Bは、いずれも矩形状の断面を有しており、また、ピストン部58の往復動の方向(すなわち、ピストン部の延在方向、中心軸方向)に関して長さLだけ離間している。一対のくり抜き部53A、53Bの離間長さLは、ピストン部58の長さL1よりも長く(L>L1)設計されている。
【0031】
以下、各くり抜き部53A、53Bが設けられる位置について、より詳しく説明する。
【0032】
まず、第1のくり抜き部53Aの位置について、図3、4を参照しつつ説明する。
【0033】
図3、4は、ピストン部58が斜板30に最も近接したときのコントロールピストン50の状態を示している。この状態は、コントロールピストン50の制御室56aに作動油を流入させて、大気圧であるクランク室12と制御室56aとの間に差圧を生じさせる。それにより、ピストン部58には、ネジ54から斜板30に向かう方向の力(油圧力)が負荷されて、ピストン部58が斜板30側に移動する。
【0034】
このとき、ピストン部58は、小径部59を介して斜板30の縁部30bを押圧する。より具体的には、斜板30の縁部30bにはコントロールピストン50と対向する側に、曲面状の当接部として球32が設けられており、小径部59の端面が球32を押圧する。その結果、斜板30は、最小斜板傾角(たとえば、0.1〜4°)の状態となり、ポンプ1の吐出量が最小となる。なお、球32のような曲面状の当接部を設けることで、斜板30の傾角が変わっても、斜板30の縁部30bと小径部59の端面との接触面積を十分に確保することができ、確実な接触および押圧が実現される。
【0035】
第1のくり抜き部53Aは、この状態のときに、ピストン部58の斜板30側のエッジE1に対応する位置に形成される。すなわち、エッジE1は、第1のくり抜き部53Aが形成されていることで、この状態のときは、ハウジング52の内壁面とは接しない。一方、ピストン部58のネジ54側のエッジE2は、くり抜き部53A、53Bの離間長さLがピストン部58の長さL1よりも長いため、一対のくり抜き部53A、53Bの間において、ハウジング52の内壁面と接している。
【0036】
図3、4のように、ネジ54側からピストン部58に向かう方向の力が負荷されている場合、ピストン部58の斜板30側のエッジE1が、ハウジング52の内壁面に接していると、その箇所の内壁面が削られる事態が生じる。または、第2のくり抜き部53Bのエッジ(斜板側のエッジ)が、ピストン部58の側周面に接していると、その箇所の側周面が削られる事態が生じる。
【0037】
そこで、上述したコントロールピストン50においては、ピストン部が斜板に最も近接した最小斜板傾角のときに、エッジE1が第1のくり抜き部53Aに位置し、かつ、エッジE2が第2のくり抜き部53Bよりも斜板30側に位置するように、くり抜き部53A、53Bの位置を設計している。
【0038】
その結果、上述した事態が回避され、コントロールピストン50における摩耗が抑制されている。
【0039】
続いて、第2のくり抜き部53Bの位置について、図5、6を参照しつつ説明する。
【0040】
図5、6は、ピストン部58が斜板30から最も離間したときのコントロールピストン50の状態を示している。この状態では、コントロールピストン50の制御室56aは、大気圧となっており、大気圧であるクランク室12と制御室56aとの間に差圧は実質的にゼロである。このとき、ピストン部58には、斜板30からネジ54に向かう方向の力(付勢力)が負荷されて、ピストン部58がネジ54側に移動する。上述の付勢力は、図示しない付勢手段(たとえば、クランク室12内に配置された復帰バネ)により与えられる。
【0041】
このとき、斜板30の縁部30bが、小径部59を介してピストン部58を押圧する。より具体的には、斜板30の縁部30bに設けられた球32が、小径部59の端面を押圧する。その結果、斜板30は、最大斜板傾角の状態となり、ポンプ1の吐出量が最大となる。
【0042】
第2のくり抜き部53Bは、この状態のときに、ピストン部58のネジ54側のエッジE2に対応する位置に形成される。すなわち、エッジE2は、第2のくり抜き部53Bが形成されていることで、この状態のときは、ハウジング52の内壁面とは接しない。一方、ピストン部58の斜板30側のエッジE1は、くり抜き部53A、53Bの離間長さLがピストン部58の長さL1よりも長いため、一対のくり抜き部53A、53Bの間において、ハウジング52の内壁面と接している。
【0043】
図5、6のように、斜板30側からピストン部58に向かう方向の力が負荷されている場合、ピストン部58のネジ54側のエッジE2が、ハウジング52の内壁面に接していると、その箇所の内壁面が削られる事態が生じる。または、第1のくり抜き部53Aのエッジ(ネジ側のエッジ)が、ピストン部58の側周面に接していると、その箇所の側周面が削られる事態が生じる。
【0044】
そこで、上述したコントロールピストン50においては、ピストン部58が斜板30から最も離間した最大斜板傾角のときに、エッジE2が第2のくり抜き部53Bに位置し、かつ、エッジE1が第1のくり抜き部53Aよりもネジ54側に位置するように、くり抜き部53A、53Bの位置を設計している。
【0045】
その結果、上述した事態が回避され、コントロールピストン50における摩耗が抑制されている。
【0046】
加えて、上述したコントロールピストン50は、ピストン部58と斜板30との間に介在する接合部として、小径部59を備えている。
【0047】
小径部59は、ハウジング52の内壁面と接する側周面およびエッジを有しないため、上述したくり抜き部53A、53Bの位置とは無関係に、その長さL2を設計することができる。そのため、ピストン部58が同一寸法であっても、小径部59の長さを設計変更することで、斜板30の傾角等を調整することができる。すなわち、ピストン部58の設計上の自由度が向上している。
【0048】
また、上述したコントロールピストン50は小径部59を備えるため、ピストン部58を斜板30に接するまで延長する必要がなく、ピストン部58は、常に、ハウジング52のピストン収容室56内に存在する。すなわち、ハウジング52の斜板30側の開口から、ピストン部58が突出しない。そのため、ハウジング52の斜板30側の開口のエッジにより、ピストン部58の側周面が削られる事態が回避される。
【0049】
さらに、小径部59は、ピストン部58と一体成型されているため、小径部59とピストン部58とが別体である場合に比べて、コントロールピストン50の部品点数が少なく、構造の簡素化が図られている。
【0050】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0051】
たとえば、くり抜き部の断面形状は、矩形状に限らず、図7の(a)〜(c)に示したような断面形状であってもよい。図7(a)でも、上述したくり抜き部と同様の効果を奏する上、エッジが湾曲していることで、ピストン部の側周面を削る事態がより効果的に抑制される。また、図7(b)に示した三角形断面、および、図7(c)に示した半円形断面のくり抜き部38Bであっても、上述したくり抜き部と同様の効果を奏する。
【0052】
一対のくり抜き部の断面形状が、同一であっても異なっていてもよい。また、断面形状が同じ場合であっても、その寸法(くり抜き深さ等)を異ならせてもよい。たとえば、斜板側の第1のくり抜き部は、その位置および寸法形状によりコントロールピストンの差圧が変わるため、その差圧調整のために、第1のくり抜き部の寸法形状を第2のくり抜き部に対して変更してもよい。
【0053】
また、ピストン部と斜板との間に介在する接合部は、上述した小径部に限らず、斜板の縁部とピストン部とを連結するロッド状の部材であってもよい。このようなロッド状の部材には、上述した小径部同様、円柱状の外形を有し、かつ、ピストン部よりも径が小さいものが採用され得る。この場合、ロッド状の部材を交換することで、容易に、ピストン部の位置を調整することができる。
【0054】
さらに、斜板の縁部に曲面状の当接部として設けられた球は、小径部との間の摩擦を低減できさえすれば、回転しても回転しなくてもよい。曲面状の当接部は、球に限らず、斜板の縁部に設けた球面突起やコロであってもよい。
【0055】
また、上述したコントロールピストンは、ポンプの回転軸に対して傾斜するように設けられているが、必ずしも傾斜する必要はなく、ポンプの回転軸に対して平行に設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…可変容量型ピストンポンプ、30…斜板、32…球、50…コントロールピストン、52…ハウジング、53A…第1のくり抜き部、53B…第2のくり抜き部、58…ピストン部、59…小径部、E1、E2…エッジ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7