特開2015-117726(P2015-117726A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-117726(P2015-117726A)
(43)【公開日】2015年6月25日
(54)【発明の名称】軸受構造体
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/447 20060101AFI20150529BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20150529BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20150529BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20150529BHJP
   B60K 17/24 20060101ALI20150529BHJP
   F16C 27/06 20060101ALI20150529BHJP
【FI】
   F16J15/447
   F16C19/06
   F16C33/80
   F16C33/76 Z
   B60K17/24
   F16C27/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-259894(P2013-259894)
(22)【出願日】2013年12月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166187
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 祥
【テーマコード(参考)】
3D042
3J012
3J016
3J042
3J701
【Fターム(参考)】
3D042AB01
3D042DC08
3J012AB01
3J012AB03
3J012BB01
3J012CB03
3J012DB08
3J012DB13
3J012FB10
3J012GB01
3J016AA02
3J016BB03
3J016BB17
3J042AA09
3J042CA10
3J042DA10
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701FA31
3J701GA02
(57)【要約】
【課題】軸受の耐久性の低下を抑制することができる軸受構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
本発明に係る軸受構造体10は、軸部材8に外嵌される軸受20と、軸受20に外嵌されるとともに軸部材8の軸方向一端側に延在し、一端側に開口を有する円環状の円環部材31と、軸部材8に外嵌され、円環部材31の一端部と隙間を有しながら開口を覆うカバー部材70と、を備える軸受構造体10において、円環部材31の一端側下部に、円環部材31の内周側空間と外周側空間とを連通させる連通部52が設けられ、連通部52は、周方向に延在していることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材に外嵌される軸受と、
前記軸受に外嵌されるとともに前記軸部材の軸方向一端側に延在し、前記一端側に開口を有する円環状の円環部材と、
前記軸部材に外嵌され、前記円環部材の一端部と隙間を有しながら前記開口を覆うカバー部材と、
を備える軸受構造体において、
前記円環部材の一端側下部に、前記円環部材の内周側空間と外周側空間とを連通させる連通部が設けられ、
前記連通部は、周方向に延在している
ことを特徴とする軸受構造体。
【請求項2】
軸部材に外嵌される軸受と、
前記軸受に外嵌されるとともに前記軸部材の軸方向一端側に延在し、前記一端側に開口を有する円環状の円環部材と、
前記軸部材に外嵌され、前記円環部材の一端部と隙間を有しながら前記開口を覆うカバー部材と、
を備える軸受構造体において、
前記円環部材は、前記円環部材の一端側下部が鉛直方向に膨出してなる膨出部を有し、
前記膨出部は、周方向に延在している
ことを特徴とする軸受構造体。
【請求項3】
前記軸部材は、自動車用推進軸であり、
前記自動車用推進軸の中間軸受として用いられる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軸受構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部材を回転自在に支持する軸受構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車体下部に配置されて車両前後方向に延びるプロペラシャフトなどの軸部材は、軸部材に外嵌される軸受を備えた軸受構造体により回転自在に支持されている。
また、軸受構造体は、軸受内に泥水や塵埃が浸入することを防止するため、軸受の前後の端面よりも前後方向に延在して軸部材の外周を囲む環状部材と、その環状部材との間に隙間を有しながら環状部材の開口を覆うカバー部材とを備えている。
【0003】
ところで、プロペラシャフトは、フロアパネルの一部を上方に突設させてなる半円孤状のフロアトンネルに沿って配置され、プロペラシャフトの下方が覆われていないのが一般的である。このため、車両の走行により跳ね上げられた泥水がフロアトンネルに付着することがある。
そして、この泥水が車両停止中に滴下し、環状部材とカバー部材との隙間から環状部材の内周側に浸入することがある。このような事情から、下記特許文献1の環状部材では、環状部材の内周側に浸入した泥水が滞留することを防止するために、環状部材の下部に鉛直に貫通する貫通孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平07−016027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ある程度の車速で水溜まりを走行した場合、フロアトンネルに当たって跳ね返った大量の水が軸受構造体を直撃し、大量の水が環状部材の内周側に浸入する場合がある。
そして、大量の水が環状部材の内周側に浸入した場合、上記特許文献1の環状部材の貫通孔では速やかに排水することができないという問題がある。
この結果、軸受のシールを超えて軸受内部に水が浸入したり、又は軸受を構成する内輪、外輪に錆が発生したりして、軸受のグリースが流出し、軸受の耐久性の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、前記する問題に鑑みて創案された発明であって、軸受の耐久性の低下を抑制することができる軸受構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る第1の軸受構造体は、軸部材に外嵌される軸受と、前記軸受に外嵌されるとともに前記軸部材の軸方向一端側に延在し、前記一端側に開口を有する円環状の円環部材と、前記軸部材に外嵌され、前記円環部材の一端部と隙間を有しながら前記開口を覆うカバー部材と、を備える軸受構造体において、前記円環部材の一端側下部に、前記円環部材の内周側空間と外周側空間とを連通させる連通部が設けられ、前記連通部は、周方向に延在していることを特徴とする。
【0008】
前記する第1の発明によれば、円環部材に設けられた連通部が周方向に延在しており、従来技術で説明した貫通孔よりも開口面積が大きいため、円環部材の内周側に浸入した大量の水が速やかに排水される。
このため、軸受のシールを超えて軸受内部に水が浸入することが抑制されるとともに、軸受を構成する内輪、外輪に錆が発生することも抑制されて、軸受の耐久性の低下の抑制を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係る第2の軸受構造体は、軸部材に外嵌される軸受と、前記軸受に外嵌されるとともに前記軸部材の軸方向一端側に延在し、前記一端側に開口を有する円環状の円環部材と、前記軸部材に外嵌され、前記円環部材の一端部と隙間を有しながら前記開口を覆うカバー部材と、を備える軸受構造体において、前記円環部材は、前記円環部材の一端側下部が鉛直方向に膨出してなる膨出部を有し、前記膨出部は、周方向に延在していることを特徴とする。
【0010】
前記する第2の発明によれば、膨出部により円環部材の一端側の下端とカバー部材との間から、円環部材の内周側に浸入した大量の水を排水することができる。また、膨出部は周方向に延在しており、従来技術で説明した貫通孔よりも開口面積が大きいため、円環部材の内周側に浸入した大量の水が速やかに排水される。
このため、軸受のシールを超えて軸受内部に水が浸入することが抑制されるとともに、軸受を構成する内輪、外輪に錆が発生することも抑制されて、軸受の耐久性の低下の抑制を図ることができる。
【0011】
また、前記軸部材は、自動車用推進軸であり、軸受構造体が前記自動車用推進軸の中間軸受として用いられることが好ましい。
【0012】
前記する構成によれば、自動車の走行により大量の水が環状部材の内周側に浸入しても、速やかに排水されるため、軸受の耐久性の低下の抑制を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軸受の耐久性の低下を抑制することができる軸受構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る推進軸及び軸受構造体を示す全体構成図である。
図2】第1実施形態の軸受構造体を拡大した拡大図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4】第1実施形態に係る軸受構造体を下方から視た底面図である。
図5】第2実施形態の軸受構造体を断面視した断面図である。
図6図5のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。実施形態では、本発明の軸受構造体を自動車用の推進軸に用いた場合を例として挙げる。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すように、推進軸1は、フロアパネル(不図示)の下面に固定された軸受構造体10により回転自在に支持されて、フロアパネルの下方で車両前部から車両後部に亘って延在する軸部材である。
そして、推進軸1の前部側が車体前部に搭載された変速装置(不図示)に連結され、一方で、推進軸1の後部側が車両後部の終減速装置(不図示)に連結されて、変速装置からの動力を終減速装置に伝達する役割を果たす。
推進軸1は、車両前方寄りに設けられて第1ジョイント5を介して変速装置側の出力軸に連結する第一推進軸3と、車両後方寄りに設けられて第2ジョイント7を介して終減速装置側の入力軸に連結する第二推進軸4と、第一推進軸3と第二推進軸4とを連結する等速ジョイント6と、で主に構成されている。
【0017】
第一推進軸3の後部には、円柱状のスタブシャフト8が溶着されており、第一推進軸3の後部から後方にスタブシャフト8が延出している。
等速ジョイント6は、第二推進軸4の前部に溶着された円筒形状の外輪部材6aと、第一推進軸3の後部に溶着されたスタブシャフト8の先端(後部)に設けられた動力伝達部材6bと、で構成されるトリポート型ジョイントである。
【0018】
図2示すように、軸受構造体10は、推進軸1の前後方向中間部を支持する中間軸受であり、スタブシャフト8に外嵌して圧入固定される軸受20と、軸受20に外嵌された防振部材30と、防振部材30に外嵌されるリングブラケット41が設けられたブラケット40と、スタブシャフト8に圧入固定されて軸受20に隣接するストッパーピース70と、を備えている。なお、本実施形態において、ストッパーピース70が特許請求の範囲に記載されるカバー部材に相当する構成である。
【0019】
リングブラケット41は、金属製の円筒状の部品であり、リングブラケット41の内周面に防振部材30の後記する外環32が圧入されている。
ブラケット40は、肉薄な金属板を曲げ加工により形成され、フロアパネルの下面に固定される部品であり、リングブラケット41が溶着されてリングブラケット41を支持するリングブラケット支持部44(図4参照)と、その両端に設けられた一対の座面42、42を備えている。また、座面42の中央部には、フロアパネルのねじ穴に螺合するボルト(図示せず)の軸部が貫通するための孔42aが形成されている。
【0020】
図3に示すように、軸受20は、内輪21と外輪22との間に複数のボール23が設けられたラジアルボールベアリングである。そして、内輪21がスタブシャフト8に外嵌されることで、推進軸1が軸受20に対して軸回りに回転自在に支持される。
また、軸受20において、内輪21と外輪22との間であってボール23の前後方向に、泥水や埃等の浸入を防止するシール24が設けられている。
さらに、内輪21と外輪22とシール24とにより囲まれた空間には、ボール23の回転の円滑化を図るためのグリースが充填されている。
【0021】
防振部材30は、軸受20の外輪22に外嵌される内環31と、内環31の外周側で内環31を取り囲んでいる外環32と、内環31と外環32との間に介設されたマウント33とを備えている。なお、実施形態に係る内環31が特許請求の範囲に記載される「環状部材」に相当する構成である。
マウント33は、弾性を有する円筒状のゴム製の部品であり、インサート成形により内環31および外環32と一体的に形成されている。
【0022】
内環31には、内環31の前端から前方に延出する環状の前方延出部31aと、内環31の後端から後方に延出する環状の後方延出部50とが設けられている。このため、軸受20の前側と後側とが内環31に覆われて、泥水、塵埃が軸受20内に浸入し難くなっている。
また、前方延出部31aと後方延出部50とのそれぞれの内周側には、オイルシール46A、46Bが設けられている。このため、前方延出部31a又は後方延出部50の内周側に泥水や塵等が浸入したとしても、軸受20には浸入しないようになっている。
【0023】
後方延出部50の後端の下側に、切り欠き52が設けられている。このため、後方延出部50の後端縁51のうち下側後端縁51aは、切り欠き52よりも上方に位置する上側後端縁51bよりも前側に位置している。また、図4に示すように、切り欠き52は、後方延出部50の周方向に延びるように形成されている。
なお、実施形態に係る切り欠き52は、特許請求の範囲に記載される「連通部」に相当する構成である。
【0024】
図3に示すように、ストッパーピース70は、円筒状の金属製の部品であり、スタブシャフト8に圧入によって固定されている。また、ストッパーピース70の前端部71は、軸受20の内輪21の後面に当接しており、軸受20の抜け止め機能を果たしている。
【0025】
ストッパーピース70の後端部には、径方向外側に突出して内環31の後部開口を覆うフランジ部72が形成されている。
また、フランジ部72とそのフランジ部72の前方に配置される内環31の後端縁51と間隔は、以下のようになっている。
図4に示すように、フランジ部72と内環31の上側後端縁51bとの間隔D1は、ラビリンス効果により水等が浸入し難い程度の隙間となっており、内環31の上側後端縁51bとフランジ部72との間から内環31の内周側に水等が浸入し難くなっている。
一方で、後方延出部50の下側後端縁51aとフランジ部72との間隔D2は、切り欠き52により、上側後端縁51bとフランジ部72との隙間よりも大きくなっている。このため、内環31の内周側に浸入した水が切り欠き52を介して内環31の外側に排水され易くなっている。
また、切り欠き52は、周方向に延在して排水できる面積が比較的大きいため、内環31の内周側に浸入した大量の水を速やかに排水することができるようになっている。
【0026】
図3に示すように、ストッパーピース70の中間部には、径方向外側に突出する突出部73が形成されている。この突出部73によれば、内環31の後端縁51とフランジ部72との間から浸入した水が突出部73の後端面73aが受け止められ、水が軸受20側に浸入することが防止される。
また、後端面73aは、下側後端縁51aよりも後方に位置している。このため、後端面73aに受け止められた水が後端面73aに沿って自重により下方に移動した場合に、切り欠き52に向かって落下するようになっている。
さらに、突出部73と内環31(後方延出部50)の内周面50aとの距離がラビリンス効果により水等が浸入し難い程度の隙間となっている。このため、切り欠き52を介して水等が浸入したとしても、突出部73と後方延出部50との間からさらに軸受20側に水が浸入することを防止している。
【0027】
上記した第1実施形態に係る軸受構造体10によれば、周方向に延在して排水できる面積が比較的大きい切り欠き52が設けられているため、内環31の内周側に大量の水が浸入しても速やかに排水することができる。
このため、軸受20のシール24を超えて軸受20内部に水が浸入することが抑制されるとともに、軸受20を構成する内輪21、外輪22に錆が発生することも抑制されて、軸受20の耐久性の低下の抑制を図ることができる。
【0028】
以上、実施形態に係る軸受構造体10について説明したが、本発明はこれに限定されるものでない。内環31の内周側の大量の水を排出するために、実施形態では、内環31の後端の下部に切り欠き52が設けられているが、内環31の後端でなく、内環31の後部を貫通するとともに周方向に延びる長孔であってもよい。このような長孔であっても、内環31の内周側空間と外周側空間とを連通させて排水することができるからである。
【0029】
(第2実施形態)
つぎに第2実施形態に係る軸受構造体10Aについて説明する。
図5に示すように、第2実施形態に係る軸受構造体10Aは、軸受20と、内環31Aを有する防振部材30と、リングブラケット41が設けられたブラケット40と、ストッパーピース70と、を備えている。第2実施形態の軸受構造体10Aは、内環31Aを有している点において、内環31を有している第1実施形態の軸受構造体10と相違する。以下、相違点である内環31Aの構成について説明する。
【0030】
内環31Aには、後端から後方に延出する環状の後方延出部50Aが設けられている。
図5図6に示すように、後方延出部50Aは、後方延出部50Aの後端の下部が鉛直方向に膨出してなる膨出部60を有している。
この膨出部60により、内環31の後端縁51のうち下側に位置する下側後端縁61と、ストッパーピース70のフランジ部72との間隔が大きくなっており、内環31の内周側の水が排水され易いように形成されている。
また、図6に示すように、膨出部60は、周方向に延在しており、排水できる面積が比較的大きい。このため、内環31の内周側に大量の水が浸入しても多くの水を排水することができる。
【0031】
上記した第2実施形態に係る軸受構造体10によれば、内環31に設けられた膨出部60により、内環31の内周側に大量の水が浸入しても速やかに排水することができ、軸受20の耐久性の低下の抑制を図ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 推進軸
6 等速ジョイント
8 スタブシャフト
10 軸受構造体
20 軸受
30 防振部材
31、31A 内環(環状部材)
32 外環
40 ブラケット
41 リングブラケット
50、50A 後方延出部
51(51a、51b、61) 後端縁
52 切り欠き(連通部)
60 膨出部
70 ストッパーピース(カバー部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6