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特開2015-118086計時器の共振器用多角形バランスばね
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-118086(P2015-118086A)
(43)【公開日】2015年6月25日
(54)【発明の名称】計時器の共振器用多角形バランスばね
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/06 20060101AFI20150529BHJP
   F16F 1/10 20060101ALI20150529BHJP
【FI】
   G04B17/06 Z
   F16F1/10
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-248748(P2014-248748)
(22)【出願日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】13197318.2
(32)【優先日】2013年12月16日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ・コヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−リュック・エルフェ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ジャンヌレ
【テーマコード(参考)】
3J059
【Fターム(参考)】
3J059AB15
3J059BA37
3J059BB01
3J059BD04
3J059CA01
3J059GA50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コイル巻きどうしが密着することを防ぐバランスばねを提供する。
【解決手段】自身の周りに巻かれてコイル巻き群(Sint、Sext)を形成する固体の細長片23を有する、計時器の共振器用のバランスばね21に関する。細長片23は、互いに一体成形されている一連の柱状部分で形成される。2つの対向面Fint、Fextの1つは互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成され、これによって、多角形のばね21が形成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の周りに巻かれてコイル巻き群(S1、S2、S'1、S'2、S3、Sint、Sext)を形成する固体の細長片(3、23、43、63)を有する、計時器の共振器用のバランスばね(1、21、41、61)であって、
前記細長片(3、13、23、33、43、53、63、73)の少なくとも一部は、互いに一体成形されている一連の柱状部分(P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Px)で形成されており、これによって、多角形のばね(1、21、41、61)が形成される
ことを特徴とするバランスばね(1、21、41、61)。
【請求項2】
少なくとも2つの隣接した柱状部分(P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pz)が、これらの間で鈍角(α、αz1、α12)を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載のバランスばね(1、21、41、61)。
【請求項3】
前記バランスばねを形成する前記柱状部分(P1、P2)の長さは一定ではない
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバランスばね(1、21、41、61)。
【請求項4】
前記柱状部分(P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pz)の長さは、当該バランスばねの内側コイル巻き(Sint)の第1の柱状部分(P1)から外側コイル巻きの最後の柱状部分(Px、P'x、Py、P'y、Pz)まで連続的に減少する
ことを特徴とする請求項3に記載のバランスばね(1、21、41、61)。
【請求項5】
巻かれてコイル巻き群(Sint、Sext)を形成する固体の細長片(13、33、53、73)を有する計時器の共振器用のバランスばね(11、31、51、71)であって、
少なくとも1つの他のコイル巻きの方を向く各コイル巻きの2つの対向面(Fint、Fext)は、非対称であり、
前記少なくとも2つの対向面(Fint、Fext)の1つの少なくとも一部は、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成されており、これによって、多角形のばね(11、31、51、71)が形成される
ことを特徴とするバランスばね(11、31、51、71)。
【請求項6】
前記少なくとも2つの対向面の1つを形成する前記長方形部分の長さは、一定ではない
ことを特徴とする請求項5に記載のバランスばね(11、31、51、71)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの対向面の他のものは、単一のらせん状の表面で形成される
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のバランスばね(11、31、51、71)。
【請求項8】
前記少なくとも2つの対向面(Fint、Fext)の他のものの少なくとも一部は、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成される
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のバランスばね(11、31、51、71)。
【請求項9】
前記少なくとも2つの対向面の他のものを形成する前記長方形部分の長さは、一定ではない
ことを特徴とする請求項8に記載のバランスばね(11、31、51、71)。
【請求項10】
前記長方形部分の長さは、前記バランスばねの内側コイル巻き(Sint)の第1の長方形部分から外側コイル巻き(Sext)の最後の長方形部分まで、連続的に増加する
ことを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれかに記載のバランスばね(11、31、51、71)。
【請求項11】
前記細長片(13、33、53、73)の厚みは、剛性を増加させるように局所的に厚い
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載のバランスばね(1、11、21、31、41、51、61、71)。
【請求項12】
前記内側コイル巻き(Sint)は、アーバーに固定されるように構成するコレット(65)と一体成形されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載のバランスばね(1、11、21、31、41、51、61、71)。
【請求項13】
単一片で形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれかに記載のバランスばね(1、11、21、31、41、51、61、71)。
【請求項14】
ケイ素を含有する材料で作られる
ことを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載のバランスばね(1、11、21、31、41、51、61、71)。
【請求項15】
請求項1〜請求項14に記載のバランスばね(1、11、21、31、41、51、61、71)を少なくとも1つ有する
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばねが使用されている共振器の作動を改善するために、コイル巻きどうしが密着するリスクが少なくされている多角形バランスばねに関する。
【背景技術】
【0002】
測時分野において、実質的にアルキメデススパイラル軌道を形成するように細長片が巻かれているようなバランスばねを形成することが通常である。しかし、例えば、結晶ケイ素のような新素材が測時分野において用いられてきているので、コイル巻きどうしの密着が発生するということが観測されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、コイル巻きどうしが密着することを防ぐような、従来のバランスばねの代わりになるバランスばねを提案することによって、前記課題のすべて又は一部を克服することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このために、第1の実施形態によると、本発明は、自身の周りに巻かれてコイル巻き群を形成する固体の細長片を有する、計時器の共振器用のバランスばねであって、前記細長片の少なくとも一部は、互いに一体成形されている一連の柱状部分で形成されており、これによって、多角形のばねが形成されるものに関する。
【0005】
第2の実施形態によると、本発明は、巻かれてコイル巻き群を形成する固体の細長片を有する計時器の共振器用のバランスばねであって、少なくとも1つの他のコイル巻きの方を向く各コイル巻きの2つの対向面は、非対称であり、前記少なくとも2つの対向面の1つの少なくとも一部は、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成されており、これによって、多角形のバランスばねが形成されるものに関する。
【0006】
好ましいことに、本発明のこれら2つの実施形態によると、上記のようにして得られた多角形バランスばねによって、幾何学的に、コイル巻きどうしが密着するリスクを減らすことができる。また、コイル巻きの細長片の2つの柱状部分の間又は表面の2つの長方形部分の間の接合面におけるコイル巻き間の接触面を厳しく制限することができる。
【0007】
本発明の他の有利な変形実施形態によると、以下の特徴を有する。
−第1の実施形態によると、少なくとも2つの隣接した柱状部分の間で鈍角を形成する。
−第1の実施形態によると、バランスばねを形成する柱状部分の長さは一定ではない。
−第1の実施形態によると、柱状部分の長さは、バランスばねの内側コイル巻きの第1の柱状部分から外側コイル巻きの最後の柱状部分まで連続的に減少する。
−第2の実施形態によると、前記少なくとも2つの対向面の1つを形成する長方形部分の長さは一定ではない。
−第2の実施形態によると、前記少なくとも2つの対向面の他のものは単一のらせん状の表面で形成される。
−前記少なくとも2つの対向面の他のものの少なくとも一部は、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成される。
−第2の実施形態によると、前記少なくとも2つの対向面の他のものを形成する長方形部分の長さは一定ではない。
−第2の実施形態によると、前記少なくとも2つの対向面の1つ又は他のものの長方形部分の長さは、バランスばねの内側コイル巻きの第1の長方形部分から外側コイル巻きの最後の長方形部分まで連続的に増加する。
−上記2つの実施形態によると、細長片の厚みがその剛性を増加させるために局所的に厚くされる。
−上記2つの実施形態によると、内側コイル巻きは、アーバーに固定されるように構成するコレットと一体成形されている。
−上記2つの実施形態によると、バランスばねは単一片である。
−上記2つの実施形態によると、バランスばねは、ケイ素を含有する材料で作られる。
【0008】
最後に、本発明は、さらに、前記変形実施形態のいずれかに記載されたバランスばねを少なくとも1つ有するような計時器に関する。
【0009】
添付図面を参照して以下の説明(これに限定されない)を読むことによって、他の特徴及び利点を明確に想起することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態による2つの隣接した柱状部分についての概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態によるバランスばねの2つの例の部分的な平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態によるバランスばねの2つの例の部分的な平面図である。
図4】本発明に係るバランスばねのコレット及び内側コイル巻きの開始部分の部分的な斜視図である。
図5】本発明の第1の実施形態によるバランスばねの代替実施形態の平面図である。
図6】本発明の第1の実施形態によるバランスばねの代替実施形態の平面図である。
図7】本発明の第2の実施形態によるバランスばねの代替実施形態又は変形実施形態の平面図である。
図8】本発明の第2の実施形態によるバランスばねの代替実施形態又は変形実施形態の平面図である。
図9】本発明の第2の実施形態によるバランスばねの代替実施形態又は変形実施形態の平面図である。
図10】本発明の第2の実施形態によるバランスばねの代替実施形態又は変形実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、測時分野向けのバランスばねに関する。具体的には、このバランスばねは、計時器に取り付けられる。例えば、バランスとともに取り付けられる。これによって、計時器の規制メンバーを形成するばね仕掛けバランス共振器を形成する。
【0012】
上で説明したように、結晶ケイ素製ばねの使用によって、コイル巻きどうしの密着が発生することが観測されている。実際に、対面している2つのコイル巻きの高さHの部分(すなわち、垂直部分)は、計時器が衝撃を受けた場合などに2つのコイル巻きが近づくだけで付着するほどに非常に滑らかである。この付着は、製造時又は使用時の汚れや潤滑剤でばねが汚染することによって、さらに大きくなることがある。
【0013】
本発明に係るばね1、11、21、31、41、51、61、71は、固体の細長片3、13、23、33、43、53、63、73を有する。これは、すなわち、長さL、高さH、厚みEを有し、凹部や穴がない。細長片3、13、23、43、53、63、73は、コイル巻き群S1、S2、S'1、S'2、S3、Sext、Sintを形成するように自身の周りに巻かれる。
【0014】
好ましいことに、本発明の第1の実施形態によると、少なくとも一部の細長片3、23、43、63は、互いに一体成形されている一連の柱状部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzで形成され、これによって、多角形のばね1、21、41、61を得る。
【0015】
このようにして得られた多角形のばね1、21、41、61は、幾何学的に、コイル巻きS1、S2、S'1、S'2、S3、Sext、Sintの間で密着するリスクを減らしたり、あるいは2つの柱状部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzの間の接合面において、コイル巻きS1、S2、S'1、S'2、S3、Sext、Sintの間の接触面を厳しく制限する。実際に、各接合においては、部分Pどうしで角αを形成する。例えば、図1において、部分Pz及び部分Pz+1の間で角αz1を形成する。このように、コイル巻きS3は、各接合で、実質的に垂直で高さHに平行であって外側に隣接するコイル巻きの方を向くような接触面5を有する。
【0016】
上で説明したように、細長片3、23、43、63をそれ自身の周りに巻く必要があるので、少なくとも2つの隣接した柱状部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzは、本発明に従って、好ましくは、鈍角α、すなわち、90°よりも大きく180°未満の角αを形成する。実際に、部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzの必ずしもすべてが厳密に整列していない必要はなく、いくらかの連続する部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzが、例えば、180°である角αを形成するように連結していてもよい。
【0017】
もちろん、各柱状部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzが、少なくとも1つの他の隣接した柱状部分と鈍角を形成するように接合される。このような例を図2及び図5に示した。
【0018】
図2は、単一の細長片23で形成されたバランスばね21の部分的な図であり、これにおいて、2つの連続のコイル巻きS1、S2が、部分Px、Px+1、Px+2、Px+3及び部分Py、Py+1、Py+2、Py+3、Py+4によってそれぞれ形成される。実線で描かれたコイル巻きS1は、衝撃時の変位を示すように点線で符号S1'を付けて描かれている。従来のバランスばねとは異なり、衝撃を受けた場合には、部分Px、Px+1、Px+2、Px+3の間の接合のみがそれぞれ、外側に隣接するコイル巻きS2の部分Py、Py+1、Py+2、Py+3、Py+4などと接触する。
【0019】
部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzの間の接合が外側に隣接するコイル巻きに触れる可能性を増やすために、ばねの内側コイル巻きを形成する柱状部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzの長さは、ばねの外側コイル巻きを形成する柱状部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzの長さよりも大きくなければならない。
【0020】
しかし、接合以外における接触を完全に防ぐためには、柱状部分P1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pzの長さが、ばねの内側コイル巻きの第1の柱状部分から外側コイル巻きの最後の柱状部分まで連続的に減少する。これは、ばねの巻線の状態にかかわらず、すなわち、ばねの縮み又は伸びにかかわらずである。このような例を図3及び図6に示した。
【0021】
図3は、単一の細長片43で形成されたバランスばね41の部分的な図である。これにおいて、2つの連続のコイル巻きS'1、S'2は、部分P'x、P'x+1、P'x+2、P'x+3及び部分P'y、P'y+1、P'y+2、P'y+3、P'y+4によってそれぞれ形成される。実線で示したコイル巻きS'1が衝撃時に変位した様子を点線で符号S'1'を付けて示した。これによってすぐにわかるように、衝撃を受けた際には、幾何学的には、部分P'x、P'x+1、P'x+2、P'x+3の間のコイル巻きS'1の接合のみが、外側に隣接するコイル巻きS'2の部分P'y、P'y+1、P'y+2、P'y+3、P'y+4などとそれぞれ接触することがあり得る。
【0022】
図1図5の例において、少なくとも1つの他のコイル巻きの方を向くコイル巻きの各柱状部分の対向面Fint、Fextは、好ましくは、対称的、すなわち、平行である。しかし
、コイル巻きの各柱状部分の対向面Fint、Fextは、厚みEにわたって高さHで形成される断面が、各柱状部分でずっと連続的に変化するように、すなわち、増加し及び/又は
減少するように、非対称であることができる。したがって、各柱状部分の2つの対向面Fint、Fextの間の非対称性は、各柱状部分の長さLにわたる厚みEにおける連続的な変化をもたらす。なお、柱状部分の2つの多角形の基礎部分が、例えば、六角形又は台形、であってもよいことを理解できるであろう。
【0023】
好ましいことに、本発明の第2の実施形態によると、平面図を示す図7図10の例において示すように、少なくとも1つの他のコイル巻きの方を向く各コイル巻きの2つの対向面Fint、Fextは、非対称である。なお、厚みEにわたって高さHで形成される断面が連続的に変化することを理解できるであろう。すなわち、バランスばねの細長片の長さにわたってずっと増加又は減少している。実際に、2つの対向面Fint、Fextの間の非対称性によって、バランスばねの細長片の長さにわたっての厚みEにおける連続的な変化がもたらされる。
【0024】
好ましくは、前記少なくとも2つの対向面Fint、Fextの1つの少なくとも一部は、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成され、多角形のばね11、31、51、71を形成する。
【0025】
このようにして得られた多角形のばね11、31、51、71によって、内側コイル巻きSintと外側コイル巻きSextの間のコイル巻きどうしが密着するリスクを減少させることが幾何学的に可能になり、そして、さらに、2つの長方形部分の間の接合面(図7〜10において点が記載されている)においてコイル巻きどうしが接触する面を厳しく制限することも可能になっている。実際に、第1の実施形態におけるように、各接合において2つの長方形部分が角αを形成する。したがって、内側コイル巻きSintは、各接合において、外側に隣接するコイル巻きの方を向き、かつ、高さHに実質的に垂直で平行であるような接触面を有する。
【0026】
上で説明したように、細長片13、33、53、73をそれ自身の周りに巻く必要があるので、少なくとも2つの隣接した長方形部分が、本発明によれば、好ましくは、鈍角α、すなわち、90°よりも大きく180°未満の角αを形成する。実際に、これらの長方形部分は必ずしもすべてが厳密に整列していない必要はなく、いくつかの連続する部分が、例えば180°である角αを成すように連結することが有用であることもある。
【0027】
また、図7図10の例に示すように、各長方形部分が、少なくとも1つの他の隣接する長方形部分と鈍角を成すように接合されることも、もちろん可能である。
【0028】
また、前記少なくとも2つの対向面の1つを形成する長方形部分の長さは、一定である必要はない。したがって、図7及び図9に示す第1の代替実施形態によると、内側コイル巻きSintから開始して、各コイル巻きの外面Fextは、お互い一体成形されており、各長方形部分の長さが一定であるような一体成形されている一連の長方形部分で形成される(各接合の箇所に点が記載されている)。
【0029】
反対に、図8及び図10に示す第2の代替実施形態によると、内側コイル巻きSintから開始して、各コイル巻きの外面Fextは、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成され、各長方形部分の長さは一定ではない。
【0030】
好ましくは、長方形部分の長さは、内側コイル巻きSintの外面Fextの第1の長方形部分からバランスばね31、71の外側コイル巻きSextの外面Fextの最後の長方形部分まで、連続的に増加する。
【0031】
図7図10に示すように、各コイル巻きの各対向面Fint、Fextどうしが非対称、すなわち、平行でないので、他の面の幾何学的構成は無制限となる。これは、各柱状部分の対向面Fint、Fextが好ましくは対称的、すなわち、平行であるような、第1の実施形態と異なる。したがって、第1の変形実施形態によると、前記少なくとも2つの対向面Fintの他のものFextは、従来のバランスばねのように、単一のらせん状の表面で形成される。
【0032】
図7に示す例において、バランスばね11は、単一のらせん状の表面で形成される内面Fintを有し、一方、その外面Fextは、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成され(各接合には点が記載されている)、各長方形部分の長さは一定である。このように、幾何学的に、細長片13の厚みEは一定ではないことを理解できるであろう。
【0033】
図8に示す例において、バランスばね31は、単一のらせん状の表面で形成される内面Fintを有し、一方、その外面Fextは互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成され、これらの長方形部分それぞれの長さは一定ではない。より詳細には、長方形部分の長さは、バランスばね31の内側コイル巻きSintの外面Fextの第1の長方形部分から外側コイル巻きSextの外面Fextの最後の長方形部分まで、連続的に増加する。このようにして、幾何学的に、細長片33の厚みEも一定ではないことを理解できるであろう。
【0034】
第2の変形実施形態によると、前記少なくとも2つの対向面Fint、Fextの他のものも、第1の面と同様に、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成することができる。
【0035】
図9に示す例において、ばね51の内面Fintと外面Fextはそれぞれ、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成され(各接合に点が記載されている)、これらの長方形部分それぞれの長さは一定である。なお、各面Fint、Fextのために選ばれる一定の長さは同一ではない。実際に、内面Fintの各長方形部分の一定な長さは、外面Fextの各長方形部分の一定な長さよりも小さい。したがって、幾何学的に、細長片53の厚みEが一定ではないことを理解できるであろう。
【0036】
図10に示す例において、ばね71の内面Fintと外面Fextはそれぞれ、互いに一体成形されている一連の長方形部分で形成され(各接合に点が記載されている)、これらの長方形部分それぞれの長さは一定ではない。具体的には、面Fint、Fextそれぞれにおいて、長方形部分の長さは、ばね71の内側コイル巻きSintの第1の長方形部分から外側コイル巻きSextの最後の長方形部分まで、連続的に増加する。なお、各面Fint、Fextのために選ばれる最小長さは同一ではない。実際に、内面Fintの第1の長方形部分の最小長さは、外面Fextの第1の長方形部分の最小長さよりも小さい。したがって、幾何学的に、細長片73の厚みEは一定ではないことを理解できるであろう。
【0037】
もちろん、本発明は、図示した例に限定されず、当業者が想起することができる様々な改変を行うことができる。具体的には、実施形態、変形実施形態又は代替実施形態を組み合わせることができる。したがって、例えば、バランスばねの長さの1つの部分を実施形態のうちの1つによって形成し、かつ、バランスばねの長さの別の部分を別の実施形態によって形成することができる。
【0038】
また、多角形バランスばね1、11、21、31、41、51、61、71は、さらに、アーバーに固定されるように構成するコレットと一体成形されている内側コイル巻きSintを有することができる。このような例を図4に示す。図4は、内側コイル巻きSintが、互いに角α12を成すように接続され第1の部分P1がコレット65と一体成形されているような部分P1、P2などで形成されている、単一の細長片63で形成されたバランスばね61の部分的な図を示す。コレット65は、実質的に三弁花状であり、これは、例えば、バランススタッフを受けるように意図された穴64を有する。
【0039】
また、実施形態にかかわらず、バランスばね1、11、21、31、41、51、61、71の細長片3、13、23、33、43、53、63、73の厚みEを、局所的に改変して、例えば、厚くして、例えば、細長片3、13、23、33、43、53、63、73の剛性を大きくするように局所的に改変することも想起することができる。
【0040】
上の例についての記載を読むことによって、バランスばね1、11、21、31、41、51、61、71が単一片であることができるということは明確である。すなわち、細長片3、13、23、33、43、53、63、73は、材料の不連続性がないように作ることができる。このようなバランスばねは、ケイ素を含有する材料で作ることができる。すなわち、例えば、単結晶ケイ素、多結晶ケイ素、ドープされた単結晶ケイ素、ドープされた多結晶ケイ素、ドープされた又はドープされていない炭化ケイ素、ドープされた又はドープされていない窒化ケイ素、ドープされた又はドープされていない石英又はシリカのような酸化ケイ素である。実際に、このような材料の異方性エッチングを湿式又は乾式法によって行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
1、11、21、31、41、51、61、71、3、13、23、33、43、53、63、73 細長片
65 コレット
73 バランスばね
α、αz1、α12 鈍角
int、Fext 対向面
1、P2、Px、P'x、Py、P'y、Pz 柱状部分
1、S2、S'1、S'2、S3、Sint、Sext コイル巻き群
int 内側コイル巻き
ext 外側コイル巻き
図1
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図10