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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-11816(P2015-11816A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20141216BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20141216BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20141216BHJP
   H01R 13/73 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
   H01R13/533 Z
   H01R13/46 304L
   H01R13/52 301A
   H01R13/73 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-135247(P2013-135247)
(22)【出願日】2013年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】寺島 桂太
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087EE15
5E087FF04
5E087GG02
5E087LL04
5E087LL13
5E087MM08
5E087MM12
5E087RR13
5E087RR31
(57)【要約】
【課題】気密チャンバの内部に配置された内部側相手コネクタを固定する、内部側相手コネクタ固定部に形成された雌ねじ部の内部に空気溜まりが発生したり、切削油等の残留物が残留することを回避することができる、気密チャンバの内部及び外部を電気的に相互接続するために用いられる電気コネクタを提供する。
【解決手段】電気コネクタ1は、気密チャンバの内部A及び外部Bを電気的に相互接続するために用いられる。電気コネクタ1において、内部側相手コネクタ固定部51,52に、雌ねじ部51d,52dの雄ねじ部受容部以外の部分と外側とを連通する連通部51e,52eを設けている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密チャンバの内部及び外部を電気的に相互接続するために用いられる電気コネクタであって、
前記気密チャンバの隔壁に取り付けられる一面及び該一面と反対側の他面を有する基板部と、該基板部に絶縁材を介して取付けられた複数のコンタクトと、前記基板部の一面側に設けられ、内部側相手コネクタを固定するための雌ねじ部を有する内部側相手コネクタ固定部と、前記基板部の他面側に設けられ、外部側相手コネクタを固定するための外部側相手コネクタ固定部とを備え、
前記内部側相手コネクタ固定部に、前記雌ねじ部の雄ねじ部受容部以外の部分と外側とを連通する連通部を設けたことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記連通部は、前記雌ねじ部の底部と外側とを連通するように設けられることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記基板部の一面に前記複数のコンタクトの一端側を囲むように取り付けられた、前記内部側相手コネクタが嵌合する内部側相手コネクタ嵌合用シェルと、前記基板部の他面に前記複数のコンタクトの他端側を囲むように取り付けられた、前記外部側相手コネクタが嵌合する外部側相手コネクタ嵌合用シェルとを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記内部側相手コネクタ嵌合用シェル及び前記外部側相手コネクタ嵌合用シェルは、それぞれ、列状に配置された前記複数のコンタクトを囲むようにコンタクト配列方向に細長く延びており、前記内部側相手コネクタ固定部は、細長く延びる前記内部側相手コネクタ嵌合用シェルの長手方向の両脇に一対設けられ、前記外部側相手コネクタ固定部は、細長く延びる前記外部側相手コネクタ嵌合用シェルの長手方向の両脇に一対設けられていることを特徴とする請求項3記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記基板部の一面には、前記内部側相手コネクタ嵌合用シェル及び前記内部側相手コネクタ固定部を囲むように無端状に形成されたOリング溝が形成され、前記基板部の一面が、前記Oリング溝に挿入されたOリングを介して前記気密チャンバの隔壁に取り付けられることを特徴とする請求項3又は4記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密チャンバの内部及び外部を電気的に相互接続するために用いられる電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気密チャンバの内部及び外部を電気的に相互接続する要請がある。例えば、集積回路を搭載した半導体チップを製造する半導体製造装置においては、内部を真空に近い状態にまで減圧することが可能な真空チャンバを用い、この真空チャンバの内部及び外部を電気的に接続することが行われる。また、チャンバの内部を窒素で充満させたり、あるいはプラズマ雰囲気とする場合がある。
【0003】
このような気密チャンバの内部と外部との電気的接続に際しては、気密チャンバ内部の気密性を保持すると同時に、気密チャンバの内部と外部との確実な電気的接続性が求められる。
従来のこの種の電気接続構造として、例えば、図11に示すものが知られている(特許文献1参照)。図11は、従来例の、真空チャンバの内部及び外部を電気的に接続する真空チャンバ用コネクタの断面図である。
【0004】
図11に示す真空チャンバ用コネクタ101は、真空チャンバ150の内部A側(真空側)及び外部B側(大気側)を電気的に相互接続するために用いられる。真空チャンバ用コネクタ101には、真空チャンバ150の内部A側で内部側相手コネクタ160が嵌合し、外部B側で外部側相手コネクタ(図示せず)が嵌合するようになっている。ここで、真空チャンバ150には、開口151が形成され、真空チャンバ用コネクタ101によって開口151が塞がれる。
真空チャンバ用コネクタ101は、セラミック基体110と、リードピン120と、セラミック基体110の外周部にろう付けされたスリーブ130とを備えている。
【0005】
セラミック基体110は、円柱形をなし、スリーブ130内を内部A側と外部B側とを仕切る。リードピン120は、セラミック基体110の中心部に取り付けられ、一端側が内部A側に突出し、他端側が外部B側に突出している。スリーブ130は、円筒形をなし、内部A側の端部に内部側相手コネクタ凸部131を、外部B側の端部に外部側相手プラグ接続用凸部132を備えている。
スリーブ130の外周面には、フランジ140がろう付けされており、真空チャンバ用コネクタ101は、フランジ140を真空チャンバ150の開口151を形成する内壁に溶接することにより、真空チャンバ150に取り付けられる。
【0006】
そして、内部側相手コネクタ160には、真空チャンバ用コネクタ101のスリーブ130に形成された内部側相手コネクタ接続用凸部131に係合するスリット161が形成されている。また、外部側相手コネクタにも、真空チャンバ用コネクタ101のスリーブ130に形成された外部側相手コネクタ接続用凸部132に係合するスリット(図示せず)が形成されている。内部側相手コネクタ160を内部A側でスリーブ130に接続すると、内部側相手コネクタ160に設けられたコンタクト(図示せず)がリードピン120に接触する。また、外部側相手コネクタを外部B側でスリーブ130に接続すると、外部側相手コネクタに設けられたコンタクト(図示せず)がリードピン120に接触する。
【0007】
なお、この真空チャンバ用コネクタ101においては、スリーブ130の内部A側に、セラミック基体110と内部側相手コネクタ160との間の空間と、真空チャンバ150の内部Aとを連通させる気抜孔133が設けられている。これにより、真空チャンバ150の内部Aが真空状態になった場合には、前記空間が気抜孔133によって高い真空度を有することになる。このため、リードピン120に数百Vの高電圧をかけても、リードピン120とスリーブ130との間に放電が発生することを低減でき、電気信号を良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−134908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、気密チャンバの内部及び外部を電気的に相互接続するための電気コネクタにおいては、ねじ止めによって内部側相手コネクタ及び外部側相手コネクタを電気コネクタに対して確実に固定する要請がある。
しかし、図11に示した真空チャンバ用コネクタ101においては、内部側相手コネクタ160及び外部側相手コネクタを真空チャンバ用コネクタ101に対してねじ止めするものではない。
【0010】
一方、内部側相手コネクタ及び外部側相手コネクタを電気コネクタに対してねじ止めによって固定するに際し、図12に示すような構成で、相手コネクタ204を電気コネクタ201に固定することが一般的に行なわれる。
即ち、電気コネクタ201側の取付け部202に、取付けねじ210の雄ねじ部211が螺合する雌ねじ部203を形成する。また、相手コネクタ204側の取付け部205に、雄ねじ部211が挿通する貫通孔206を形成する。そして、取付けねじ210の雄ねじ部211を、相手コネクタ204側の貫通孔206を挿通させて電気コネクタ201側の雌ねじ部203に螺合する。同時に、取付けねじ210の頭部212で相手コネクタ204側の取付け部205を押さえつけることで、相手コネクタ204を電気コネクタ201に固定する。
【0011】
この電気コネクタ201側の取付け部202に雌ねじ部203を形成する場合においては、取付けねじ210の雄ねじ部211をフルに受容できる深さを有するように雌ねじ部203を形成するのが一般的である。このため、雌ねじ部203は外部に連通していないのが一般的である。
しかし、図12に示すように、電気コネクタ201側に形成された雌ねじ部203が外部に連通していない場合、以下の問題点が生じる。
【0012】
即ち、雌ねじ部203に取付けねじ210の雄ねじ部211が螺合し、その螺合が完了した状態において、雌ねじ部203内(雌ねじ部の底側内)に空間203aが存在することになる。この空間203aには空気が存在し、空気溜まりが発生する。この空間203a内に溜まった空気は、相手コネクタ204を取付けねじ210によって取り付けた後に、じわじわと外部へ漏れ出す。そして、電気コネクタ201側に形成された雌ねじ部203が気密チャンバの内部に配置される場合には、前述の空気は気密チャンバの内部へじわじわと漏れ出すことになる。この場合において、例えば、気密チャンバの内部を真空状態にしようとすると、前述の漏れ出した空気によって真空度の達成が阻害され、気密チャンバの内部を真空にするための時間が多大にかかってしまう、という問題点がある。
【0013】
また、雌ねじ部203を形成する際に使用した切削油が雌ねじ部203内に残留したり、あるいは雌ねじ部203を切削する際に生じた金属バリなどの残留物が雌ねじ部203内に残留することがある。切削油や金属バリなどの残留物は洗浄によって除去されるが、雌ねじ部203が外部に連通していないため、洗浄が困難で、洗浄してもそれら切削油や金属バリは雌ねじ部203内に残留する可能性が高い。そして、電気コネクタ201側に形成された雌ねじ部203が内部側相手コネクタ固定部に形成された雌ねじ部であって、気密チャンバの内部側に存在する場合には、前述の切削油は気密チャンバの内部へ漏れ出すことになる。また、前述の金属バリは剥げ落ち、気密チャンバの内部へ落下する。このように、切削油が気密チャンバの内部へ漏れ出したり、金属バリが気密チャンバの内部に落下すると、装置故障の確率が非常に高くなってしまう、という問題点がある。
【0014】
従って、本発明は、これら従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、気密チャンバの内部に配置された内部側相手コネクタを固定する、内部側相手コネクタ固定部に形成された雌ねじ部の内部に空気溜まりが発生したり、切削油等の残留物が残留することを回避することができる、気密チャンバの内部及び外部を電気的に相互接続するために用いられる電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る気密チャンバの内部及び外部を電気的に相互接続するために用いられる電気コネクタであって、前記気密チャンバの隔壁に取り付けられる一面及び該一面と反対側の他面を有する基板部と、該基板部に絶縁材を介して取付けられた複数のコンタクトと、前記基板部の一面側に設けられ、内部側相手コネクタを固定するための雌ねじ部を有する内部側相手コネクタ固定部と、前記基板部の他面側に設けられ、外部側相手コネクタを固定するための外部側相手コネクタ固定部とを備え、前記内部側相手コネクタ固定部に、前記雌ねじ部の雄ねじ部受容部以外の部分と外側とを連通する連通部を設けたことを特徴としている。
【0016】
この電気コネクタにおいて、前記連通部は、前記雌ねじ部の底部と外側とを連通するように設けられることが好ましい。
また、この電気コネクタにおいて、前記基板部の一面に前記複数のコンタクトの一端側を囲むように取り付けられた、前記内部側相手コネクタが嵌合する内部側相手コネクタ嵌合用シェルと、前記基板部の他面に前記複数のコンタクトの他端側を囲むように取り付けられた、前記外部側相手コネクタが嵌合する外部側相手コネクタ嵌合用シェルとを備えているとよい。
【0017】
また、この電気コネクタにおいて、前記内部側相手コネクタ嵌合用シェル及び前記外部側相手コネクタ嵌合用シェルは、それぞれ、列状に配置された前記複数のコンタクトを囲むようにコンタクト配列方向に細長く延びており、前記内部側相手コネクタ固定部は、細長く延びる前記内部側相手コネクタ嵌合用シェルの長手方向の両脇に一対設けられ、前記外部側相手コネクタ固定部は、細長く延びる前記外部側相手コネクタ嵌合用シェルの長手方向の両脇に一対設けられているとよい。
また、この電気コネクタにおいて、前記基板部の一面には、前記内部側相手コネクタ嵌合用シェル及び前記内部側相手コネクタ固定部を囲むように無端状に形成されたOリング溝が形成され、前記基板部の一面が、前記Oリング溝に挿入されたOリングを介して前記気密チャンバの隔壁に取り付けられるとなおよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電気コネクタによれば、内部側相手コネクタ固定部に、雌ねじ部の雄ねじ部受容部以外の部分と外側とを連通する連通部を設けてある。このため、前記雌ねじ部に存在する空気は連通部を通って外側に排出される。また、前記雌ねじ部は連通部によって外側に連通しているから、洗浄は容易になる。このため、雌ねじ部を形成する際に使用した切削油が雌ねじ部内に残留したり、あるいは雌ねじ部を切削する際に生じた金属バリなどの残留物が雌ねじ部内に残留することはない。
従って、気密チャンバの内部に配置された内部側相手コネクタを固定する内部側相手コネクタ固定部に形成された雌ねじ部の内部に空気溜まりが発生したり、切削油等の残留物が残留することを回避することができる。
【0019】
これにより、内部側相手コネクタを内部側相手コネクタ固定部に固定した後、気密チャンバ内を減圧する際に、雌ねじ部に存在する空気は連通部を通って既に外側に排出されているから、当該空気は真空チャンバ内には漏れ出さない。このため、雌ねじ部から漏れ出した空気によって真空度の達成が阻害されることはなく、気密チャンバの内部を真空にするための時間を少なくすることができる。
また、内部側相手コネクタ固定部に形成された雌ねじ部の内部に空気溜まりが発生したり、切削油等の残留物が残留することを回避することができるので、残留物による装置故障の確率を極力小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る電気コネクタを気密チャンバに取り付け、外部側相手コネクタを電気コネクタに嵌合した状態の斜視図である。
図2】本発明に係る電気コネクタを気密チャンバに取り付け、外部側相手コネクタを電気コネクタに嵌合した状態を示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図3】本発明に係る電気コネクタを気密チャンバに取り付け、外部側相手コネクタを電気コネクタに嵌合した状態を示し、(A)は左面図、(B)は底面図である。
図4図3(B)における4−4線に沿う断面図である。
図5図3(B)における5−5線に沿う断面図である。
図6】外部側相手コネクタ固定部に形成された雌ねじ部に取付けねじの雄ねじ部が螺合し、外部側相手コネクタが電気コネクタに固定された状態を示す断面図である。
図7】本発明に係る電気コネクタを底面側から見た斜視図である。
図8】本発明に係る電気コネクタを示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図9】本発明に係る電気コネクタを示し、(A)は左側面図、(B)は底面図である。
図10図9(B)における10−10線に沿う断面図である。
図11】従来例の、真空チャンバの内部及び外部を電気的に相互接続するための真空チャンバ用コネクタの断面図である。
図12】相手コネクタを電気コネクタに対してねじ止めによって固定する際の一般的な固定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る電気コネクタの実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5には、本発明に係る電気コネクタ1を気密チャンバの隔壁70に取り付け、外部側相手コネクタ80を電気コネクタ1に嵌合した状態を示している。図1乃至図5においては、気密チャンバの隔壁70は、その一部が示されている。ここで、気密チャンバは、例えば、集積回路を搭載した半導体チップを製造する半導体製造装置に用いられるものであり、内部A(図4及び図5参照)を真空に近い状態にまで減圧することが可能な真空チャンバとなっている。気密チャンバは、半導体製造装置に用いられる真空チャンバに限らず、チャンバの内部を窒素で充満させたり、あるいはプラズマ雰囲気とするものであってもよい。そして、気密チャンバの隔壁70には、図4及び図5に示すように、気密チャンバの内部Aと外部Bとを連通させる開口71が形成されている。
【0022】
電気コネクタ1は、気密チャンバの内部A及び外部Bを電気的に相互接続するために用いられるものであり、図4及び図5に示すように、気密チャンバの隔壁70に開口71を塞ぐように取り付けられる基板部10を備えている。基板部10は、図7乃至図10に示すように、矩形状の平板で構成され、気密チャンバの隔壁70に取り付けられる一面10a及び一面10aと反対側の他面10bを有する。基板部10は、金属材料で構成される。基板部10には、図7に示すように、複数(本実施形態にあっては、4個)の取付けねじ用貫通孔11が形成されている。電気コネクタ1は、複数の取付けねじ(図示せず)を基板部10の取付けねじ用貫通孔11を挿通させて、気密チャンバの隔壁70にねじ込むことにより、図1乃至図5に示すように、隔壁70に取り付けられる。ここで、基板部10の一面10aには、図7に示すように、後述する内部側相手コネクタ嵌合用シェル30及び内部側相手コネクタ固定部51、52を囲むように無端状に形成されたOリング溝12が形成されている。そして、基板部10の一面10aは、図4及び図5に示すように、Oリング溝12に挿入されたOリング(図示せず)を介して気密チャンバ70に取り付けられる。
【0023】
そして、基板部10の略中央部10cには、図7図8(A)、図9(B)、及び図10に示すように、複数のコンタクト20が取り付けられている。複数のコンタクト20は、基板部10の長手方向(図8(A)における左右方向)に沿って2列状に配置されている。各コンタクト20は、金属製のピン状部材であり、図5図8(A)、及び図9(B)に示すように、絶縁材23を介して基板部10に取り付けられる。ここで、絶縁材23は、ガラス材であり、基板部10の開口とコンタクト20との間にガラス材を充填することにより各コンタクト20を基板部10に取り付けたガラスハーメチック構造をなしている。そして、各コンタクト20は、図5及び図10に示すように、一端21側が気密チャンバの内部A側に向けて基板部10の一面10aから突出し、他端22側が気密チャンバの外部B側に向けて基板部10の他面10bから突出する。
【0024】
また、基板部10の一面10aには、図7及び図10に示すように、複数のコンタクト20の一端21側を囲むように内部側相手コネクタ嵌合用シェル30が取り付けられている。内部側相手コネクタ嵌合用シェル30は、金属製であり、ロウ付け、溶接等により基板部10の一面10aに取り付けられる。内部側相手コネクタ嵌合用シェル30は、2列状に配置された複数のコンタクト20を囲むようにコンタクト配列方向に細長く延びている。そして、内部側相手コネクタ嵌合用シェル30には、図示しない内部側相手コネクタが嵌合し、内部側相手コネクタに設けられた相手コンタクト(図示せず)とコンタクト20の一端21側とが接続される。
【0025】
更に、基板10の他面10bには、図8及び図10に示すように、複数のコンタクト20の他端22側を囲むように外部側相手コネクタ嵌合用シェル40が取り付けられている。外部側相手コネクタ嵌合用シェル40は、金属製であり、ロウ付け、溶接等により基板部10の他面10bに取り付けられる。外部側相手コネクタ嵌合用シェル40は、2列状に配置された複数のコンタクト20を囲むようにコンタクト配列方向に細長く延びている。そして、外部側相手コネクタ嵌合用シェル40には、図1乃至図5に示すように、外部側相手コネクタ80が嵌合し、外部側相手コネクタ80に設けられた相手コンタクト82(図5参照)とコンタクト20の他端22側とが接続される。
【0026】
また、基板部10の一面10a側には、図7乃至図10に示すように、内部側相手コネクタ(図示せず)を固定するための雌ねじ部51d、52dを有する内部側相手コネクタ固定部51、52が設けられている。内部側相手コネクタ固定部51、52は、細長く延びる内部側相手コネクタ嵌合用シェル30の長手方向の両脇に一対設けられている。各内部側相手コネクタ固定部51、52は、内部側相手コネクタ固定部51、52を内部側相手コネクタ嵌合用シェル30に設けられたフランジ部30a上に接合するための接合部51a、52aを備えている。各接合部51a、52aには、基板部10の溝に入り込む突起部51b、52bが設けられている。各内部側相手コネクタ固定部51、52は、金属製であり、各接合部51a、52aをフランジ部30a上に溶接するとともに、突起部51b、52bを基板部10の溝に入り込ませることによりフランジ部30a上に接合される。
【0027】
そして、各内部側相手コネクタ固定部51、52は、各接合部51a、52aの内部側相手コネクタ嵌合用シェル30寄りの部分で基板部10から離れる方向に突出する雌ねじ形成部51c、52cを備えている。各雌ねじ形成部51c、52cには、各雌ねじ形成部51c、52cの先端(図10における下端)から各接合部51a、52aに至るまで延びる前述した雌ねじ部51d、52dが形成されている。各雌ねじ部51d、52dには、図6に示す雌ねじ部62dと同様に、内部側相手コネクタ(図示せず)を電気コネクタ1に固定するための取付けねじ(図示せず)の雄ねじ部が螺合される。そして、各内部側相手コネクタ固定部51、52の接合部51a、52aには、図10に示すように、雌ねじ部の51d、52dの雄ねじ部受容部以外の部分と外側とを連通する連通部51e、52eが設けられている。各連通部51e、52eは、雌ねじ部51d、52dの底部と外側とを連通するように接合部51a、52aの内部側相手コネクタ嵌合用シェル30側の端面から雌ねじ部51d、52dの底部を通過した位置まで穿設されている。
【0028】
なお、各雌ねじ部51d、52dの先端には、電気コネクタ1に固定するための取付けねじ(図示せず)の雄ねじ部を雌ねじ部51d、52dに案内するための傾斜面51f、52fが形成されている。
一方、基板部10の他面10bにも、図4及び図7乃至図10に示すように、外部側相手コネクタ80を固定するための雌ねじ部61d、62dを有する外部側相手コネクタ固定部61、62が設けられている。外部側相手コネクタ固定部61、62は、細長く延びる外部側相手コネクタ嵌合用シェル40の長手方向の両脇に一対設けられている。各外部側相手コネクタ固定部61、62は、外部側相手コネクタ固定部61、62を外部側相手コネクタ嵌合用シェル40に設けられたフランジ部40a上に接合するための接合部61a、62aを備えている。各接合部61a、62aには、基板部10の溝に入り込む突起部61b、62bが設けられている。各外部側相手コネクタ固定部61、62は、金属製であり、各接合部61a、62aをフランジ部40a上に溶接するとともに、突起部61b、62bを基板部10の溝に入り込ませることによりフランジ部40a上に接合される。
【0029】
そして、各外部側相手コネクタ固定部61、62は、各接合部61a、62aの外部側相手コネクタ嵌合用シェル40寄りの部分で基板部10から離れる方向(図10における上方向)に突出する雌ねじ形成部61c、62cを備えている。各雌ねじ形成部61c、62cには、各雌ねじ形成部61c、62cの先端(図10おける上端)から各接合部61a、62aに至るまで延びる前述した雌ねじ部61d、62dが形成されている。各雌ねじ部61d、62dには、図6に示すように(図6には雌ねじ部62dのみ図示)、外部側相手コネクタ80を電気コネクタ1に固定するための取付けねじ90の雄ねじ部91が螺合される。そして、各外部側相手コネクタ固定部61、62の接合部61a、62aには、図4及び図10に示すように、雌ねじ部の61d、62dの雄ねじ部受容部以外の部分と外側とを連通する連通部61e、62eが設けられている。各連通部61e、62eは、雌ねじ部61d、62dの底部と外側とを連通するように接合部61a、62aの外部側相手コネクタ嵌合用シェル40側の端面から雌ねじ部61d、62dの底部を通過した位置まで穿設されている。
なお、各雌ねじ部61d、62dの先端には、外部側相手コネクタ80を電気コネクタ1に固定するための取付けねじ90の雄ねじ部91を雌ねじ部61d、62dに案内するための傾斜面61f、62fが形成されている。
【0030】
次に、電気コネクタ1に嵌合する内部側相手コネクタ及び外部側相手コネクタ80について説明する。内部側相手コネクタの構成は、外部側相手コネクタ80と同一であるため、外部側相手コネクタ80のみの構成について説明する。
外部側相手コネクタ80は、図1乃至図5に示すように、複数の相手コンタクト82を取り付けたハウジング81を備えている。また、外部側相手コネクタ80は、図4及び図5に示すように、ハウジンング81の外周部の上方側を覆う金属製の第1シェル83と、ハウジング81の下方側を覆う金属製の第2シェル86とを備えている。複数のコンタクト82は、電気コネクタ1に設けられたコンタクト20に対応した2列状に配置されている。そして、ハウジンング81の外周部の下方側を覆うシェル86は、図4及び図5に示すように、電気コネクタ1の外部側相手コネクタ嵌合用シェル40内に嵌合される外形を有する。
【0031】
そして、第1シェル83及び第2シェル86のそれぞれには、図4に示すように、第1シェル83及び第2シェル86の長手方向両端から突出する一対の取付け部84が設けられている。各取付け部84は、電気コネクタ1の外部側相手コネクタ固定部61、62に対して外部側相手コネクタ80を固定するためのものである。このため、図2(B)、図4及び図6に示すように、各取付け部84は、外部側相手コネクタ80を電気コネクタ1に固定する際に、各外部側相手コネクタ固定部61、62の雌ねじ形成61c、62c上に位置する。また、各取付け部84には、取付けねじ90の雄ねじ部91が挿通可能な貫通孔85が形成されている。
【0032】
次に、このように構成された電気コネクタ1を気密チャンバの隔壁70に取付け、内部側相手コネクタ及び外部側相手コネクタ80を電気コネクタ1に固定する方法について図1乃至図6を参照して説明する。
先ず、図1乃至図5に示すように、電気コネクタ1の基板部10を気密チャンバの隔壁70に形成された開口71を塞ぐように隔壁70に取付ける。この際に、基板部10の一面10aが隔壁70に接するようにし、Oリング溝12に挿入されたOリング(図示せず)を介して、複数の取付けねじ(図示せず)を基板部10の取付けねじ用貫通孔11を挿通させて、隔壁70にねじ込む。ここで、電気コネクタ1は、Oリング(図示せず)を介して隔壁70に取り付けられるから、電気コネクタ1と隔壁70との間の気密性は保持できる。また、各コンタクト20が基板部10の開口とコンタクト20との間にガラス材を充填することにより基板部10に取り付けられるので、基板部10の開口とコンタクト20との間の気密性も保持することができる。更に、電気コネクタ1の基板部10は、複数の取付けねじによって隔壁70に取り付けられるから、溶接等の接合によって隔壁70に取り付けられる場合と異なり、着脱可能となっている。
【0033】
そして、電気コネクタ1を気密チャンバの隔壁70に取り付けた後、内部側相手コネクタ及び外部側相手コネクタ80を電気コネクタ1に固定する。
外部側相手コネクタ80を電気コネクタ1に固定する際には、先ず、図1乃至図5に示すように、電気コネクタ1の外部側相手コネクタ嵌合用シェル40に外部側相手コネクタ80の第2シェル86を嵌合させる。これにより、電気コネクタ1のコンタクト20と外部側相手コネクタ80の相手コンタクト82との電気的接続をとる。このとき、外部側相手コネクタ80の第1シェル83及び第2シェル86に設けられた取付け部84が、図4に示すように、各外部側相手コネクタ固定部61、62の雌ねじ形成61c、62c上に位置する。そして、図6に示すように、取付けねじ90の雄ねじ部91を取付け部84の貫通孔85を介して雌ねじ形成61c、62cに形成されている雌ねじ部61d、62dに螺合する。これにより、取付けねじ90の頭部92が外部側相手コネクタ80の取付け部84を押さえつけ、外部側相手コネクタ80が電気コネクタ1に固定される。
【0034】
ここで、各外部側相手コネクタ固定部61、62の接合部61a、62aには、図4及び図10に示すように、雌ねじ部の61d、62dの雄ねじ部受容部以外の部分と外側とを連通する連通部61e、62eが設けられている。このため、雌ねじ部の61d、62dに存在する空気は連通部61e、62eを通って外側に排出される。また、雌ねじ部61d、62dは連通部61e、62eによって外側に連通しているから、洗浄は容易となる。このため、雌ねじ部61d、62dを形成する際に使用した切削油は連通部61e、62eを介して容易に外側に排出され、雌ねじ部61d、62d内に残留したりしない。また、雌ねじ部61d、62dを切削する際に生じた金属バリなどの残留物が雌ねじ部61d、62d内に残留することはない。また、各連通部61e、62eは、雌ねじ部61d、62dの底部と外側とを連通するように形成されているから、効率良く空気を排出したり、残留物を排出することができる。
【0035】
一方、内部側相手コネクタを電気コネクタ1に固定する際には、先ず、電気コネクタ1の内部側相手コネクタ嵌合用シェル30に内部側相手コネクタの第2シェル(図示せず)を嵌合させる。これにより、電気コネクタ1のコンタクト20と内部側相手コネクタの相手コンタクト(図示せず)との電気的接続をとる。このとき、内部側相手コネクタの第1シェル(図示せず)及び第2シェルに設けられた取付け部(図示せず)が、各内部側相手コネクタ固定部51、52の雌ねじ形成51c、52c上に位置する。そして、取付けねじの雄ねじ部(図示せず)を取付け部の貫通孔(図示せず)を介して雌ねじ形成51c、52cに形成されている雌ねじ部51d、52dに螺合する。これにより、取付けねじの頭部(図示せず)が内部側相手コネクタの取付け部を押さえつけ、内部側相手コネクタが電気コネクタ1に固定される。
【0036】
ここで、各内部側相手コネクタ固定部51、52の接合部51a、52aには、図4及び図10に示すように、雌ねじ部の51d、52dの雄ねじ部受容部以外の部分と外側とを連通する連通部51e、52eが設けられている。このため、雌ねじ部の51d、52dに存在する空気は連通部51e、52eを通って外側に排出される。また、雌ねじ部51d、52dは連通部51e、52eによって外側に連通しているから、洗浄は容易となる。このため、雌ねじ部51d、52dを形成する際に使用した切削油が雌ねじ部51d、52d内に残留したり、あるいは雌ねじ部51d、52dを切削する際に生じた金属バリなどの残留物が雌ねじ部51d、52d内に残留することはない。
【0037】
従って、本実施形態に係る電気コネクタ1によれば、気密チャンバの内部に配置された内部側相手コネクタを固定する内部側相手コネクタ固定部51、52に形成された雌ねじ部51d、52dの内部に空気溜まりが発生したり、切削油等の残留物が残留することを回避することができる。
そして、内部側相手コネクタ及び外部側相手コネクタ80を電気コネクタ1に固定した後、気密チャンバ内を減圧し、真空状態にする。ここで、雌ねじ部の51d、52dに存在する空気は連通部51e、52eを通って既に外側に排出されているから、当該空気は真空チャンバ内には漏れ出さない。このため、雌ねじ部51d、52dから漏れ出した空気によって真空度の達成が阻害されることはなく、気密チャンバの内部を真空にするための時間を少なくすることができる。
【0038】
また、雌ねじ部51d、52dを形成する際に使用した切削油はすでに外側に排出され雌ねじ部51d、52d内に残留しない。このため、当該切削油が気密チャンバの内部へ漏れ出すことはない。さらに、雌ねじ部51d、52dを切削する際に生じた金属バリなどの残留物はすでに排出されて雌ねじ部51d、52d内に残留していないので、前述の金属バリが気密チャンバの内部へ落下することはない。このため、残留物による装置故障の確率を極力小さくすることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、連通部は、少なくとも内部側相手コネクタ固定部51、52に設ければよく、内部側相手コネクタ固定部51、52及び外部側相手コネクタ固定部61、62の双方に設ける必要は必ずしもない。
また、連通部51e,52e、61e,62eは、雌ねじ部51d,52d、61d,62dの雄ねじ部受容部以外の部分と外側とを連通するように設ければよく、雌ねじ部51d,52d、61d,62dの底部と外部とを連通するように設けられる必要は必ずしもない。
【0040】
更に、内部側相手コネクタ固定部51、52は、細長く延びる内部側相手コネクタ嵌合用シェル30の長手方向の両脇に一対設けられている必要は必ずしもない。また、外部側相手コネクタ固定部61、62は、細長く延びる外部側相手コネクタ嵌合用シェル40の長手方向の両脇に一対設けられている必要は必ずしもない。
更に、外部側相手コネクタ固定部61、62に代えて、外部側相手コネクタのベイルロックに係止するロック部を設けてもよい。
また、基板部10は、複数の取付けねじによって気密チャンバの隔壁70に取り付けられる必要はなく、隔壁70に溶接等によって接合してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 電気コネクタ
10 基板部
10a 一面
10b 他面
12 Oリング溝
20 コンタクト
21 コンタクトの一端
22 コンタクトの他端
23 絶縁材
30 内部側相手コネクタ嵌合用シェル
40 外部側相手コネクタ嵌合用シェル
51,52 内部側相手コネクタ固定部
51d,52d 雌ねじ部
51e,52e 連通部
61,62 外部側相手コネクタ固定部
61d,62d 雌ねじ部
61e,62e 連通部
70 気密チャンバの隔壁
A 内部
B 外部
図1
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