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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-118936(P2015-118936A)
(43)【公開日】2015年6月25日
(54)【発明の名称】回路遮断器用トリップ装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/22 20060101AFI20150529BHJP
   H01H 71/16 20060101ALI20150529BHJP
【FI】
   H01H73/22 B
   H01H71/16
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-245752(P2014-245752)
(22)【出願日】2014年12月4日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0159511
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】オ キョン ファン
【テーマコード(参考)】
5G030
【Fターム(参考)】
5G030FC02
5G030XX09
5G030YY06
(57)【要約】
【課題】所望の定格電流を設定することができ、事故電流によるバイメタルの損傷を抑制することができ、十分な発熱量及びバイメタルの湾曲量を得て効果的に事故電流を検出することができる、回路遮断器用トリップ装置を提供する。
【解決手段】本発明による回路遮断器用トリップ装置160は、電源側又は負荷側に接続される第1端子166と、負荷側又は電源側に接続される第2端子164と、一端に一側が開放されたスロット162bが形成され、一端が第1端部162cと第2端部162dに分けられ、第1端部162cが第1端子166に接続され、第2端部162dが第2端子164に接続されるバイメタル162とを含み、バイメタル162は、第1端部162cと第2端部162d間に流れる電流により発熱し、スロット162bの長さによって発熱量が異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源側又は負荷側に接続される第1端子と、
負荷側又は電源側に接続される第2端子と、
一端に一側が開放されたスロットが形成され、前記一端が第1端部と第2端部に分けられ、前記第1端部が前記第1端子に接続され、前記第2端部が前記第2端子に接続されるバイメタルと、を含み、
前記バイメタルは、前記第1端部と前記第2端部間に流れる電流により発熱し、前記スロットの長さによって発熱量が異なる、回路遮断器用トリップ装置。
【請求項2】
前記スロットは、一方向に延びた長孔状に形成される、請求項1に記載の回路遮断器用トリップ装置。
【請求項3】
前記スロットの長さは、特定の電流値で前記バイメタルが所定の発熱量だけ発熱する長さである、請求項1又は2に記載の回路遮断器用トリップ装置。
【請求項4】
前記スロットの長さが長く形成されるほど、特定の電流値での前記バイメタルの発熱量が増加する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路遮断器用トリップ装置。
【請求項5】
前記バイメタルは、前記スロットを中心に対称となるように形成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路遮断器用トリップ装置。
【請求項6】
前記第1端子は、通電時に発熱して前記バイメタルを加熱するヒータを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路遮断器用トリップ装置。
【請求項7】
前記ヒータは、前記バイメタルに接触して伝導で前記バイメタルを加熱するものである、請求項6に記載の回路遮断器用トリップ装置。
【請求項8】
前記ヒータは、
前記バイメタルに接触して伝導で前記バイメタルを加熱する直熱部と、
前記バイメタルから離隔して対流又は輻射で前記バイメタルを加熱する放熱部と、を含む、請求項6に記載の回路遮断器用トリップ装置。
【請求項9】
前記ヒータは、前記バイメタルから離隔して対流又は輻射で前記バイメタルを加熱するものである、請求項6に記載の回路遮断器用トリップ装置。
【請求項10】
前記第1端子は、一端部が電源側又は負荷側に接続されて他端部が前記第1端部に接続されるリードワイヤを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路遮断器用トリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器用トリップ装置(trip device for circuit breaker)に関し、特にトリップ素子としてバイメタルを用いるトリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回路遮断器は、ハンドルを用いて手動で電気回路を開閉したり、短絡電流などの事故電流発生時にそれを感知して自動で回路を遮断することにより、負荷機器や回路を保護する電気機器の一種である。
【0003】
図8は従来の回路遮断器を示す断面図であり、図9図8の間接式トリップ装置(indirect trip device)を示す斜視図であり、図10は従来の回路遮断器用直接式トリップ装置(direct trip device)を示す斜視図である。
【0004】
図8図10に示すように、従来の回路遮断器は、ケース10と、ケース10に固定配置される固定接触子(fixed contact)20と、固定接触子20に対して接離可能に配置される可動接触子(moving contact)30と、可動接触子30を開閉する開閉機構(switching mechanism)40と、短絡電流などの事故電流発生時にそれを感知して自動で開閉機構40がトリップする位置に動作するようにトリガする間接式トリップ装置60とを含む。開閉機構40は、手動で開閉できるようにするハンドル50と、後述するバイメタル62の湾曲時に開閉機構40のラッチ(図示せず)の拘束を解除する機能(いわゆるトリガ機能)を有するクロスバー42とを含む。
【0005】
一般に、トリップ装置は、バイメタルに電流が流れて直接発熱する直接式と、別途の発熱部材であるヒータにより加熱される間接式がある。図8に示す回路遮断器は間接式トリップ装置60を備えている。間接式トリップ装置60は、図9に示すように、一側が電源側又は負荷側回路に接続されて他側が後述する第2端子64のヒータ64bに接続される第1端子66と、一側が負荷側又は電源側回路に接続されて他側がヒータ64bを介して第1端子66に接続される第2端子64と、ヒータ64bに対向して第2端子64に結合されるバイメタル62とを含む。バイメタル62は、ヒータ64bにより加熱されて温度が上昇すると一方向に湾曲する。
【0006】
このような構成により、事故電流が通電すると、第1端子66と第2端子64間に電流が流れ、ヒータ64bが発熱する。発熱したヒータ64bはバイメタル62を加熱する。加熱されたバイメタル62は図9の右方向に湾曲する。湾曲したバイメタル62は、加圧部材62aによりクロスバー42を回動させ、開閉機構40のラッチ(図示せず)の拘束を解除する。ラッチの拘束が解除されると、開閉機構40のトリップばね(図示せず)の付勢力により、可動接触子30が固定接触子20から迅速に分離する。
【0007】
ここで、間接式トリップ装置60は、バイメタル62が直接発熱するのではなく、別途の発熱部材であるヒータ64bが発熱してバイメタル62を加熱する方式のものである。よって、間接式トリップ装置60は、事故電流によるバイメタル62の損傷を防止できるので、主に高定格電流用回路遮断器に用いられる。
【0008】
一方、図10は直接式トリップ装置60’を示す。直接式トリップ装置60’は、一側が電源側又は負荷側回路に接続されて他側がリードワイヤ66c’を介してバイメタル62’の一側に接続される第1端子66’と、一側が負荷側又は電源側回路に接続されて他側がバイメタル62’の他側に接続される第2端子64’と、一側が第1端子66’のリードワイヤ66c’に接続されて他側が第2端子64’に接続されるバイメタル62’とを含む。バイメタル62’は、通電時に電流が流れて直接発熱して湾曲する。
【0009】
このような構成により、事故電流が通電すると、第2端子64’からバイメタル62’を介して第1端子66’に電流が流れる。このとき、バイメタル62’は直接発熱する。直接発熱することにより温度が上昇したバイメタル62’は図10の右方向に湾曲する。湾曲したバイメタル62’は、加圧部材62a’によりクロスバー42を回動させ、開閉機構40のラッチ(図示せず)の拘束を解除する。ラッチの拘束が解除されると、開閉機構40のトリップばね(図示せず)の付勢力により、可動接触子30が固定接触子20から迅速に分離する。
【0010】
ここで、直接式トリップ装置60’は、バイメタル62’に電流が流れてバイメタル62’が直接発熱する方式のものである。よって、直接式トリップ装置60’は、低定格電流でも発熱量が大きいので、主に低定格電流用回路遮断器に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の回路遮断器用間接式トリップ装置60は、低定格電流で発熱量が不足し、それによりバイメタル62の湾曲量が不足するので、事故電流の検出が効果的に行われないことがある。また、従来の回路遮断器用直接式トリップ装置60’は、事故電流によりバイメタル62’が損傷することがある。
【0012】
そこで、本発明は、事故電流によるバイメタルの損傷を抑制することができ、十分な発熱量及びバイメタルの湾曲量を得て効果的に事故電流を検出することができる、回路遮断器用トリップ装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、限られた設計空間内で所望の回路遮断器の定格電流を実現することができる、回路遮断器用トリップ装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、電源側又は負荷側に接続される第1端子と、負荷側又は電源側に接続される第2端子と、一端に一側が開放されたスロットが形成され、前記一端が第1端部と第2端部に分けられ、前記第1端部が前記第1端子に接続され、前記第2端部が前記第2端子に接続されるバイメタルとを含み、前記バイメタルは、前記第1端部と前記第2端部間に流れる電流により発熱し、前記スロットの長さによって発熱量が異なる、回路遮断器用トリップ装置を提供する。
【0015】
前記スロットは、一方向に延びた長孔状に形成されてもよい。
【0016】
前記スロットの長さは、特定の電流値で前記バイメタルが所定の発熱量だけ発熱する長さであってもよい。
【0017】
前記スロットの長さが長く形成されるほど、特定の電流値での前記バイメタルの発熱量が増加するようにしてもよい。
【0018】
前記バイメタルは、前記スロットを中心に対称となるように形成されてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記第1端子は、通電時に発熱して前記バイメタルを加熱するヒータを含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施形態の一態様によれば、前記ヒータは、前記バイメタルに接触して伝導で前記バイメタルを加熱するものであってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態の他の態様によれば、前記ヒータは、前記バイメタルに接触して伝導で前記バイメタルを加熱する直熱部と、前記バイメタルから離隔して対流又は輻射で前記バイメタルを加熱する放熱部とを含んでもよい。
【0022】
本発明の一実施形態のさらに他の態様によれば、前記ヒータは、前記バイメタルから離隔して対流又は輻射で前記バイメタルを加熱するものであってもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態によれば、前記第1端子は、一端部が電源側又は負荷側に接続されて他端部が前記第1端部に接続されるリードワイヤを含んでもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施形態による回路遮断器用トリップ装置においては、バイメタルの一端に一側が開放されたスロットが形成され、バイメタルの一端が第1端子に接続される第1端部と第2端子に接続される第2端部に分けられ、スロットの長さを調整することにより、バイメタルの発熱量を調整することができる。つまり、スロットの長さが長く形成された場合は、第1端部と第2端部間で電流が流れる距離が長くなる。よって、抵抗値が大きくなり、バイメタルの発熱量及び湾曲量が増加するので、低定格電流でも十分な発熱量を得て効果的に事故電流を検出できる低定格電流仕様の回路遮断器を実現することができる。それに対して、スロットの長さが短く形成された場合は、第1端部と第2端部間で電流が流れる距離が短くなる。よって、抵抗値が小さくなり、バイメタルの発熱量及び湾曲量が減少するので、高定格電流でもバイメタルが損傷することなく効果的に事故電流を検出できる高定格電流仕様の回路遮断器を実現することができる。
【0025】
また、スロットの長さを調整して限られた空間内で第1端部と第2端部間で電流が流れる距離を調整することにより、所望の定格電流を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態による回路遮断器用トリップ装置を示す斜視図である。
図2図1のバイメタルを示す正面図である。
図3図2のスロットの長さが短い場合を示す正面図である。
図4図1のヒータを示す正面図である。
図5図4のヒータを示す側面図である。
図6図1の電流の方向を示す斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態による回路遮断器用トリップ装置を示す斜視図である。
図8】従来の回路遮断器を示す断面図である。
図9図8の間接式トリップ装置を示す斜視図である。
図10】従来の回路遮断器用直接式トリップ装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
まず、図1図6を参照して、本発明の第1実施形態による回路遮断器用トリップ装置について説明する。
【0029】
図1は本発明の第1実施形態による回路遮断器用トリップ装置を示す斜視図であり、図2図1のバイメタルを示す正面図であり、図3図2のスロットの長さが短い場合を示す正面図であり、図4図1のヒータを示す正面図であり、図5図4のヒータを示す側面図であり、図6図1の電流の方向を示す斜視図である。
【0030】
本発明の第1実施形態による回路遮断器用トリップ装置160は、図1図6に示すように、一端に一側が開放されたスロット162bが形成され、一端が第1端部162cと第2端部162dに分けられるバイメタル162と、第1端部162cに接続されて電源側又は負荷側回路に接続される第1端子166と、第2端部162dに接続されて負荷側又は電源側回路に接続される第2端子164とを含む。
【0031】
バイメタル162は、温度が上昇すると一方向に湾曲する部材である。バイメタル162は、一端が第1端子166と第2端子164に締結されて固定される。バイメタル162の一端は、一側が開放されたスロット162bが形成され、第1端部162cと第2端部162dに分けられる。また、バイメタル162の他端には、加圧部材162aが備えられる。よって、バイメタル162は、温度が上昇すると湾曲し、加圧部材162aによりクロスバー42を回動させる。
【0032】
本実施形態において、スロット162bは、一側が開放された長孔状に形成され、その長さ(開放された一側から反対側の他側までの長さ)Lは、設計する定格電流によって、図2のように長くしてもよく、図3のように短くしてもよい。しかし、これに限定されるものではなく、スロット162bは、第1端部162cと第2端部162d間で電流が流れる最短距離を調整することができれば、一側が開放された円形孔状など、様々な形状に形成することができる。
【0033】
また、バイメタル162は、感度を高めてスロット162bの長さLの調整による定格電流の調整を容易にするために、スロット162bを中心に左右対称となるように形成される。つまり、バイメタル162は、第1端部162cと第2端部162dが対称となるように形成される。
【0034】
第1端子166は、電源側又は負荷側回路に接続される第1端子部166aと、一側が第1端子部166aに接続されて他側がバイメタル162の第1端部162cに結合されて通電時に発熱するヒータ166bとを含む。
【0035】
ヒータ166bは、略長方形の発熱部材で備えられてもよい。ヒータ166bは、バイメタル162の第1端部162cに結合されてバイメタル162に接触する直熱部166b1と、直熱部166b1からオフセットされてバイメタル162から離隔して第1端子部166aに接続される放熱部166b2とを含む。直熱部166b1は図の下部に相当する一面であり、放熱部166b2は図の上部に相当する他面であってもよい。
【0036】
本実施形態の場合、ヒータ166bは、図の下部に直熱部166b1が形成され、図の上部に放熱部166b2が形成されている。これにより、直熱部166b1がバイメタル162の第1端部162cに接続されてバイメタル162の図の下部に接触し、放熱部166b2が第1端子部166aに接続されてバイメタル162の図の上部から離隔している。しかし、これに限定されるものではなく、ヒータ166bは様々に形成可能である。一例として、ヒータは、上部に直熱部が形成され、下部に放熱部が形成されてもよい。こうすると、放熱部がバイメタル162の第1端部162cに接続されてバイメタル162の図の下部から離隔し、直熱部が第1端子部166aに接続されてバイメタル162の図の上部に接触する。他の例として、ヒータは、中間部に直熱部が形成され、上下部にそれぞれ放熱部が形成されてもよい。こうすると、下部の放熱部がバイメタル162の第1端部162cに接続されてバイメタル162の図の下部から離隔し、直熱部がバイメタル162の図の中間に接触し、上部の放熱部が第1端子部166aに接続されてバイメタル162の図の上部から離隔する。
【0037】
また、本実施形態の場合、ヒータ166bは、直熱部166b1と放熱部166b2を同時に備えた直放熱式で構成される。しかし、これに限定されるものではなく、ヒータ166bは他の方式で構成されてもよい。一例として、ヒータは、直熱部のみを備えた直熱式で構成されてもよい。すなわち、ヒータは、平坦に形成されて全体がバイメタル162に接触し、その一側がバイメタル162の第1端部162cに接続され、その他側が第1端子部166aに接続されてもよい。他の例として、ヒータは、放熱部のみを備えた放熱式で構成されてもよい。すなわち、ヒータは、全体がバイメタル162から離隔し、その一側がバイメタル162の第1端部162cに接続され、その他側が第1端子部166aに接続されてもよい。
【0038】
また、第2端子164は、バイメタル162を支持するブラケットの役割を果たし、バイメタル162を負荷側又は電源側回路に通電可能に接続する。第2端子164は、負荷側又は電源側回路に接続される第2端子部164aと、第2端子部164aから略垂直に延設されてバイメタル162の第2端部162dに接続される結合部164bとを含む。
【0039】
以下、本発明の第1実施形態による回路遮断器用トリップ装置160の作用効果について説明する。
【0040】
まず、電流は第2端子部164aから結合部164b、第2端部162d、第1端部162c及びヒータ166bを介して第1端子部166aに流れる。バイメタル162は、第2端部162dから第1端部162cに流れる電流により直接発熱する。また、バイメタル162は、発熱するヒータ166bにより加熱される。すなわち、バイメタル162は、直熱部166b1の伝導で加熱され、放熱部166b2の対流又は輻射で加熱される。なお、本実施形態のように、バイメタル162が直接発熱しかつヒータ166bにより加熱される方式を直間接式という。直間接式で温度が上昇したバイメタル162は、図1の右方向に湾曲する。正常電流では、バイメタル162の発熱量及び湾曲量が少ないので、バイメタル162は回路遮断器の開閉機構40をトリップさせない。それに対して、回路に短絡電流などの事故電流が発生すると、バイメタル162の発熱量及び湾曲量が増加するので、バイメタル162は加圧部材162aでクロスバー42を加圧して回動させる。すると、クロスバー42の回動により、開閉機構40のラッチ(図示せず)の拘束が解除される。そして、ラッチの拘束解除により、可動接触子30が固定接触子20から迅速に分離する。
【0041】
この過程で、スロット162bは、第2端部162dから第1端部162cまで電流が流れる距離が長くなるようにしてもよい。これにより、抵抗値が大きくなり、バイメタル162の発熱量及び湾曲量が増加する。
【0042】
ここで、図2に示すように、スロット162bの長さLが長く形成された場合は、第2端部162dから第1端部162cまで電流が流れる距離が長くなる。これにより、抵抗値が大きくなり、低定格電流でもバイメタル162の発熱量及び湾曲量が増加する。それに対して、図3に示すように、スロット162bの長さLが短く形成された場合は、第2端部162dから第1端部162cまで電流が流れる距離が短くなる。これにより、抵抗値が小さくなり、高定格電流でもバイメタル162の発熱量及び湾曲量が減少する。つまり、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置160は、スロット162bの長さLを調整して第2端部162dから第1端部162cまで電流が流れる距離を調整することにより、抵抗値を調整し、バイメタル162の発熱量及び湾曲量を調整し、所望の定格電流を設定することができる。
【0043】
本実施形態においては、電流が第2端子部164aから第1端子部166aに流れるように構成されているが、電流が第1端子部166aから第2端子部164aに流れるように構成されてもよい。
【0044】
ここで、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置160は、一端に一側が開放されたスロット162bが形成され、一端が第1端部162cと第2端部162dに分けられるバイメタル162と、第1端部162cに接続されて電源側又は負荷側回路に接続される第1端子166と、第2端部162dに接続されて負荷側又は電源側回路に接続される第2端子164とを含む。このようなトリップ装置160は、スロット162bの長さLを調整することにより、限られた空間内で第1端部162cと第2端部162d間で電流が流れる距離を調整することができる。これにより、抵抗値を調整し、バイメタル162の発熱量及び湾曲量を調整し、所望の定格電流を設定することができる。つまり、スロット162bの長さLが長く形成された場合は、第1端部162cと第2端部162d間で電流が流れる距離が長くなる。よって、抵抗値が大きくなり、バイメタル162の発熱量及び湾曲量が増加するので、低定格電流でも十分な発熱量を得て効果的に事故電流を検出できる低定格電流仕様の回路遮断器を実現することができる。それに対して、スロット162bの長さLが短く形成された場合は、第1端部162cと第2端部162d間で電流が流れる距離が短くなる。よって、抵抗値が小さくなり、バイメタル162の発熱量及び湾曲量が減少するので、高定格電流でもバイメタル162が損傷することなく効果的に事故電流を検出できる高定格電流仕様の回路遮断器を実現することができる。また、スロット162bの長さLを調整することにより、低定格電流仕様と高定格電流仕様の間で所望の定格電流仕様の回路遮断器を実現することができる。
【0045】
また、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置160においては、第1端子166がヒータ166bを含むので、バイメタル162は、第1端部162cと第2端部162d間に流れる電流による発熱だけでなく、ヒータ166bによる加熱により温度が上昇する。すなわち、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置160は、直間接式トリップ装置で構成される。よって、バイメタル162が損傷することなく十分な発熱量を確保することにより、動作信頼性を向上させる効果を最大化できる回路遮断器を実現することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置160は、ヒータ166bが直熱式で構成されてもよい。よって、バイメタル162の損傷を防止する機能を有しながらも、低定格電流用に適した回路遮断器を実現することができる。
【0047】
さらに、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置160は、ヒータ166bが放熱式で構成されてもよい。よって、バイメタル162の損傷をより効果的に防止し、高定格電流用に適した回路遮断器を実現することができる。
【0048】
さらに、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置160は、ヒータ166bが直放熱式で構成されてもよい。よって、直熱式と放熱式の欠点を補完した回路遮断器を実現することができる。
【0049】
次に、図7を参照して、本発明の第2実施形態による回路遮断器用トリップ装置について説明する。
【0050】
図7は本発明の第2実施形態による回路遮断器用トリップ装置を示す斜視図である。
【0051】
前述した第1実施形態と同一又は相当部分には説明の便宜上同一符号を付し、一部の構成については重複する説明を省略する。
【0052】
本発明の第2実施形態による回路遮断器用トリップ装置260は、前述した第1実施形態とは異なり、ヒータ166bの代わりにリードワイヤ266cを含む。
【0053】
本発明の第2実施形態による回路遮断器用トリップ装置260は、図7に示すように、一端に一側が開放されたスロット162bが形成され、一端が第1端部162cと第2端部162dに分けられるバイメタル162と、第1端部162cに接続されて電源側又は負荷側回路に接続される第1端子266と、第2端部162dに接続されて負荷側又は電源側回路に接続される第2端子164とを含む。
【0054】
第1端子266は、電源側又は負荷側回路に接続される第1端子部166aと、一側が第1端子部166aに接続されて他側がバイメタル162の第1端部162cに接続されるリードワイヤ266cとを含む。
【0055】
リードワイヤ266cは、第1端子部166aと第1端部162cを通電可能に接続する。
【0056】
以下、本発明の第2実施形態による回路遮断器用トリップ装置260の作用効果について説明する。
【0057】
まず、電流は第2端子部164aから結合部164b、第2端部162d、第1端部162c及びリードワイヤ266cを介して第1端子部166aに流れる。バイメタル162は、第2端部162dから第1端部162cに流れる電流により直接発熱する。なお、本実施形態のように、バイメタル162が直接発熱する方式を直接式という。直接式で温度が上昇したバイメタル162は、図7の右方向に湾曲する。正常電流では、バイメタル162の発熱量及び湾曲量が少ないので、バイメタル162は回路遮断器の開閉機構40をトリップさせない。それに対して、回路に短絡電流などの事故電流が発生すると、バイメタル162の発熱量及び湾曲量が増加するので、バイメタル162は加圧部材162aでクロスバー42を加圧して回動させる。すると、クロスバー42の回動により、開閉機構40のラッチ(図示せず)の拘束が解除される。そして、ラッチの拘束解除により、可動接触子30が固定接触子20から迅速に分離する。
【0058】
ここで、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置260は、一端に一側が開放されたスロット162bが形成され、一端が第1端部162cと第2端部162dに分けられるバイメタル162と、第1端部162cに接続されて電源側又は負荷側回路に接続される第1端子266と、第2端部162dに接続されて負荷側又は電源側回路に接続される第2端子164とを含む。このようなトリップ装置260は、スロット162bの長さLを調整することにより、限られた空間内で第1端部162cと第2端部162d間で電流が流れる距離を調整することができる。これにより、抵抗値を調整し、バイメタル162の発熱量及び湾曲量を調整し、所望の定格電流を設定することができる。つまり、スロット162bの長さLが長く形成された場合は、第1端部162cと第2端部162d間で電流が流れる距離が長くなる。よって、抵抗値が大きくなり、バイメタル162の発熱量及び湾曲量が増加するので、低定格電流でも十分な発熱量を得て効果的に事故電流を検出できる低定格電流仕様の回路遮断器を実現することができる。それに対して、スロット162bの長さLが短く形成された場合は、第1端部162cと第2端部162d間で電流が流れる距離が短くなる。よって、抵抗値が小さくなり、バイメタル162の発熱量及び湾曲量が減少するので、高定格電流でもバイメタル162が損傷することなく効果的に事故電流を検出できる高定格電流仕様の回路遮断器を実現することができる。また、スロット162bの長さLを調整することにより、低定格電流仕様と高定格電流仕様の間で所望の定格電流仕様の回路遮断器を実現することができる。
【0059】
また、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置260においては、第1端子266がリードワイヤ266cを含むので、バイメタル162は、第1端部162cと第2端部162d間に流れる電流による発熱により温度が上昇する。すなわち、本実施形態の回路遮断器用トリップ装置260は、直接式トリップ装置で構成される。よって、前述した第1実施形態より単純で安価な回路遮断器を実現することができる。
【0060】
本実施形態の回路遮断器用トリップ装置260の他の構成要素、すなわちバイメタル162、スロット162b、第2端子164などの形状、接続関係、作用効果については、前述した第1実施形態と同一又は相当部分であるので重複を避けるために省略する。
【0061】
また、本発明による回路遮断器用トリップ装置160、260以外の回路遮断器の他の構成要素及び作用効果については、従来と同じであるので重複を避けるために省略する。
【符号の説明】
【0062】
20 固定接触子
30 可動接触子
40 開閉機構
42 クロスバー
160 トリップ装置
162 バイメタル
162a 加圧部材
162b スロット
162c 第1端部
162d 第2端部
164 第2端子
164a 第2端子部
164b 結合部
166 第1端子
166a 第1端子部
166b ヒータ
166b1 直熱部
166b2 放熱部
260 トリップ装置
266 第1端子
266c リードワイヤ
L スロットの長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10