【解決手段】 太陽電池モジュール3は、板状の部材であり、一方の面が受光面5となる。太陽電池モジュール3の下端は、反射部材7と接合される。この際、太陽電池モジュール3の受光面5が、反射部材7と対向するように、太陽電池モジュール3および反射部材7が配置される。太陽電池モジュール3は、設置面9に対して角度α1で起立する。この際、受光面5と設置面9(水平方向)とのなす角度が90°以下となる。すなわち、太陽電池モジュール3は、受光面5が反射部材7側に傾斜(最大で90°以下)となる。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを利用した発電が注目されている。特に、太陽光発電は、家庭用の小規模な発電からメガソーラーと呼ばれる大規模な発電まで導入が進められている。
【0003】
図10は、複数の太陽電池モジュール101が設置された太陽電池モジュール設置構造100を示す図である。太陽電池モジュール101は、所定の角度を向けて、受光面が南に向くように配置される。たとえば、太陽電池モジュール101は、地面から10°〜30°の角度で、南方向に向けて配置される。この角度は、例えば、NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organizaition)で推奨される、発電効率の高い角度である。
【0004】
図10(a)に示すように、太陽電池モジュール101の設置間隔は、利用する太陽光の入射角度によって設定される。すなわち、太陽高度がβ1の角度以上で、発電を開始するように設定する。β1の角度としては、たとえば、30°に設定される。この場合には、
図10(a)に示すように、30°以上の角度の太陽光によって、前方の太陽電池モジュール101の陰が後方の太陽電池モジュール101に入らないように、互いの間隔が決められる。これは、太陽電池モジュール101の一部に影がかかると、その部位が発電に寄与しないばかりでなく、抵抗として働くため、発電効率が著しく低下するためである。
【0005】
図10(b)は、このような太陽電池モジュール設置構造100に対して、太陽が南中高度に達した状態を示す図である。前述したように、太陽電池モジュール101には、互いの影が入り込むことはないが、太陽電池モジュール101同士の間には、太陽光が地表に達する部位が生じる(図中領域X)。地表に達した太陽光は、発電に寄与することがないため、発電に使用できない太陽光となる。すなわち、太陽光の一部を発電に利用することができない。
【0006】
しかし、太陽電池モジュール101同士の間隔を狭くすれば、太陽高度の低い時間帯には、影の影響によって発電効率が著しく低下するため望ましくない。このため、太陽光をより有効に利用した太陽光発電システムが望まれる。
【0007】
このような地表に入射する太陽光を発電に利用する方法としては、例えば、太陽電池モジュールの前面に反射板を設置する方法がある(特許文献1)。
【0008】
また、反射鏡の上部に受光部を配置して光を受ける方法がある(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1では、必要な太陽高度範囲のすべての光を受光することは困難である。例えば、夏至の南中高度は東京では約78°程度であるが、このような角度で太陽光が反射板に入射すると、太陽電池モジュールの上方に光が反射されてしまう。このため、結果として、太陽電池モジュールを超えて反射した太陽光を発電に利用することはできない。
【0011】
また、特許文献2も、反射鏡自体の角度を太陽高度に追従させなければ、太陽光を受光部に受光することができない。また、太陽電池モジュールのように受光面積の大きなものは、太陽電池モジュールの背面に太陽光が照射されてしまい、太陽光を有効に利用することができない。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、太陽の高度によらずに、太陽光を有効に利用することが可能な太陽光発電システムおよびその設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するために第1の発明は、太陽光発電システムであって、太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールの前方に配置される反射部材と、を具備し、前記反射部材は、互いに異なる複数の方向に向けて形成される反射面を有し、太陽光発電システムを設置部へ固定した際に、前記太陽電池モジュールの受光面と水平方向とのなす角度が90度以下であり、前記太陽電池モジュールは、前記反射部材で反射した光を受光可能であることを特徴とする太陽光発電システムである。
【0014】
前記反射部材は、光を拡散反射させる拡散反射部材で構成されることが望ましい。
【0015】
前記反射部材の高さが、前記太陽電池モジュールの高さとほぼ等しいことが望ましい。
【0016】
前記反射部材は、赤外線を透過または吸収してもよい。
【0017】
第1の発明によれば、太陽電池モジュールを太陽光の入射側に傾けて配置することで、反射部材によって反射した太陽光を有効に受光面に入射させることができる。
【0018】
また、反射部材が複数の方向に向けて配置されるため、確実に太陽光を所望の方向に反射させることができる。
【0019】
また、反射部材の表面を拡散反射するようにすることで、受光面に対する光の分布をなだらかにすることができる。このため、太陽電池モジュールの全面に略均一な太陽光を入射させて発電を行うことができる。
【0020】
また、太陽電池モジュールと反射部材との高さを略一致させることで、太陽光発電システムを縦方向に並べて設置した際に、隣り合う太陽電池モジュールと反射部材との境界における太陽光も有効に利用することができる。
【0021】
また、反射部材が、赤外線を透過または吸収する材質で構成することで、赤外線波長領域の光が反射部材で反射して、太陽電池モジュールの受光面に入射することを抑制することができる。このため、太陽電池モジュールの温度上昇を防ぐことができる。この結果、温度上昇に起因した発電効率の低下を抑制することができる。
【0022】
第2の発明は、複数の太陽光発電システムが設置された設置構造であって、前記太陽光発電システムは、太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールの前方に配置される反射部材と、を具備し、前記反射部材は、互いに異なる複数の方向に向けて形成される反射面を有し、太陽光発電システムを設置部へ固定した際に、前記太陽電池モジュールの受光面と水平方向とのなす角度が90度以下であり、前記太陽電池モジュールは、前記反射部材で反射した光を受光可能であり、複数の前記太陽光発電システムは、前記反射部材の背面側に前記太陽電池モジュールの背面が対向するように縦方向に隙間なく併設されるとともに、横方向に隙間なく併設されることを特徴とする太陽光発電システム設置構造である。
【0023】
第2の発明によれば、所定範囲の太陽高度に対して、最大限太陽光を有効に利用した太陽電池モジュールの設置構造を得ることができる。
【0024】
この際、反射部材の表面が拡散反射するようにすることで、受光面に対する光の分布をなだらかにすることができ、太陽電池モジュールのほぼ全面を利用して発電を行うことができる。
【0025】
また、太陽電池モジュールは、水平方向に対して、設置場所の夏至の最大太陽高度と略同一角度で配置されるため、太陽電池モジュールから外れる太陽光を最小限にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、太陽の高度によらずに、太陽光を有効に利用することが可能な太陽光発電システムおよびその設置構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、太陽光発電システム1を示す側面図である。太陽光発電システム1は、太陽電池モジュール3、反射部材7等から構成される。
【0029】
太陽電池モジュール3は、板状の部材であり、一方の面が受光面5となる。受光面5に光が入射すると発電し、図示を省略したケーブル等を介して、電流が流れる。太陽電池モジュール3の種類としては、単結晶シリコン系、多結晶シリコン系、アモルファス系、化合物系など公知のモジュールを使用することができる。
【0030】
太陽電池モジュール3の下端は、反射部材7と接合される。この際、太陽電池モジュール3の受光面5が、反射部材7と対向するように、太陽電池モジュール3および反射部材7が配置される。
【0031】
太陽電池モジュール3は、設置面9に対して角度α1で起立する。この際、受光面5と設置面9(水平方向)とのなす角度が90°以下となる。すなわち、太陽電池モジュール3は、受光面5が反射部材7側に傾斜(最大で90°以下)となる。したがって、太陽電池モジュール3の受光面5は、太陽電池モジュール3の直上からは見えないように配置される。
【0032】
なお、以下の説明では、設置面9が水平である例について説明するが、設置面9が傾斜している場合には、全て、水平を基準に各角度を設定すればよい。また、以下の説明では、特に記載がない限り、角度は全て水平方向に対する角度とする。
【0033】
太陽電池モジュール3の高さと、反射部材7の高さは略一致する(図中H)。したがって、太陽光発電システム1を前後方向(図中左右方向)に並べた際、太陽電池モジュール3の最上部と反射部材7の最上部とが隙間なく連結することができる。
【0034】
反射部材7は、複数の方向に向けて反射部7a〜7dが形成される。なお、図に示す例では、反射部材7は、4か所の反射部7a〜7dがそれぞれ異なる向きに連続する例を示すが、本発明はこれに限られない。例えば、反射部の個数(角度)が3か所以下であってもよく、互いに連続して湾曲した形状であってもよい。少なくとも、互いに異なる角度の反射部を複数有すればよい。なお、反射部材7の設計方法および、太陽光の反射態様の詳細は後述する。
【0035】
図2は、太陽光発電システム1を複数併設した太陽光発電システム設置構造10を示す図である。太陽電池モジュール3の受光面5は、南側に向けて配置される。すなわち、太陽電池モジュール3の南側に反射部材7が位置するように、太陽光発電システム1が設置される。
【0036】
太陽光発電システム1は、隣り合う太陽光発電システム1の太陽電池モジュール3同士、反射部材7同士が連続するように、左右方向に連結される。また、前述したように、太陽電池モジュール3の上部と隣り合う太陽光発電システム1の反射部材7の上端部が接続され、前後方向にも連結される。
【0037】
このように、本発明の太陽光発電システム1は、隙間なく並べることができる。このように配置することで、太陽光を最大限有効に利用することができる。なお、太陽光発電システム1同士の間に、作業等のための多少の隙間を形成してもよい。
【0038】
次に、太陽光発電システム1の設計方法について説明する。まず、
図3に示すように、太陽電池モジュール3の配置を決定する。太陽電池モジュール3は、受光面5が鉛直方向に対して下側(最大でも鉛直方向と一致)に向くように配置される。ここで、設置面9に対する受光面5のなす角度α1は、太陽光発電システム1が使用される地域の夏至における太陽の南中高度に設定される。例えば、東京の夏至の南中高度は約78°であるため、α1は78°に設定される。また、反射材の設計においては正反射するという前提で設計する。
【0039】
次に、
図1における反射部材7の配置を検討する。まず、反射部7dの位置を設定する。反射部7dは
図4に示すように、以下のようにして設定される。まず、太陽電池モジュール3の上端から、受光面5の向く方向に向けて、設置面9との角度がα2となるように直線を下す(直線S)。α2は、設置地域の夏至の太陽の南中高度(最大高度)であるため、α2はα1と同一の大きさで、向きのみが反対側になる。
【0040】
この直線Sと設置面9との交点から太陽電池モジュール3の下端までの区間(直線A)上に反射部7dが設定される。ここで、直線Aの端部(太陽電池モジュール3とは逆側の端部であって
図4のB)に、α1の角度の太陽光が入射すると、太陽光は太陽電池モジュール3の上端に入射する。したがって、
図4のAの範囲に入射した太陽光は、全て受光面5に向けて反射することができる。
【0041】
次に、直線Aの端部Bから南側に
図1における反射部7cを設定する。まず、
図5に示すように、Bから、水平方向に対して所定角度α3の角度の直線(直線C)を設定する。α3は、以下のようにして求めることができる。
【0042】
反射部7dで最大南中高度の太陽光が反射した場合に、この反射光と太陽電池モジュール3とのなす角度α4は、180°―α1×2で表される。α1=78°の場合には、α4=24°となる。次に、α3=α4/2と設定する。すなわち、上述の例では、α3=12°とする。このようにすることで、反射部7c(直線C上)で反射した反射光と反射部7dで反射した反射光のなす角度がα4となる。
【0043】
次に、反射部7cの範囲を設定する。反射部7cは、最大南中高度α1の角度の太陽光が入射した場合でも、受光面5の上に反射光が逃げない範囲で設定される。すなわち、α1−α3×2の角度の反射光を想定し、この角度で太陽電池モジュール3の上端を通る直線(
図5のT)を設定した際に、直線Cと直線Tが交わる点(
図5のE)が、反射部7cの端部となる。すなわち、反射部7cは、B位置〜E位置の範囲(
図5のD)に設定される。
【0044】
このように、直線Cの端部(太陽電池モジュール3とは逆側の端部であって図中E)に、α1の角度の太陽光が入射すると、太陽光は正反射して太陽電池モジュール3の上端に入射する。したがって、
図5のDの範囲に入射した太陽光は、全て受光面5に向けて反射することができる。
【0045】
次に、
図1における反射部7bを設定する。まず、
図6に示すように、Eから、水平方向に対して所定角度α5の角度の直線(直線F)を設定する。α5は、以下のようにして求めることができる。
【0046】
反射部7bで最大南中高度の太陽光が反射した場合に、この反射光が太陽電池モジュール3に対して垂直に入射する角度を求める。最大南中高度の太陽光の入射角度はα1である。また、受光面5は、α1の角度で起立する。したがって、α5=α1−45°で算出することができる。α1=78°の場合には、α5=33°となる。
【0047】
次に、反射部7bの範囲を設定する。反射部7bは、最大南中高度α1の角度の太陽光が入射した場合でも、受光面5の上に反射光が逃げない範囲で設定される。すなわち、α1−α5×2の角度の反射光を想定し、この角度で太陽電池モジュール3の上端を通る直線(図中U)を設定した際に、直線Fと直線Uが交わる点(
図6のI)が、反射部7bの端部となる。すなわち、反射部7bは、E位置〜I位置の範囲(
図6のG)に設定される。
【0048】
このように、直線Fの端部(太陽電池モジュール3とは逆側の端部であって図中I)に、α1の角度の太陽光が入射すると、太陽光は正反射して太陽電池モジュール3の上端に入射する。したがって、図中Gの範囲に入射した太陽光は、全て受光面5に向けて反射することができる。
【0049】
次に、
図1における反射部7aを設定する。まず、
図7に示すように、Iから、水平方向に対して所定角度α7の角度の直線(直線K)を設定する。α7は、以下のようにして求めることができる。
【0050】
反射部7aで最大南中高度の太陽光が反射した場合に、この反射光が太陽電池モジュール3に向けて水平に反射する角度を求める。最大南中高度の太陽光の最大入射角度はα1である。したがって、α7=α1/2で求められる。α1=78°の場合には、α7=39°となる。
【0051】
次に、反射部7aの範囲を設定する。反射部7aは、最大南中高度α1の角度の太陽光が入射した場合でも、受光面5の上に反射光が逃げない範囲で設定される。すなわち、太陽電池モジュール3の上端を通る水平線(
図7のJ)を設定した際に、直線Kと直線Jが交わる点(
図7のL)が、反射部7aの端部となる。
【0052】
このように、直線Kの端部(太陽電池モジュール3とは逆側の端部であって
図7のL)に、α1の角度の太陽光が入射すると、太陽光は正反射して太陽電池モジュール3の上端に入射する。したがって、反射部7aに入射した太陽光は、全て受光面5に向けて反射することができる。
【0053】
次に、設定された反射部7a〜7dが適切に設定されたかどうかを確認する。
図8に示すように、太陽電池モジュール3の下端から、水平方向に対してα8の角度の入射光を想定する。この入射光が南側から入射した際における、直線Jとの交点をMとすると、Mが、反射部7aの端部Lよりも太陽電池モジュール3側に位置することを確認する。MがLよりも南側に位置してしまうと、角度α8の角度の光が、反射部7aによって遮られてしまい、受光面5に入射しなくなる。
【0054】
なお、α8は例えば、最大南中高度α1/3で設定される。α1=78°の場合には、α8=26°となる。すなわち、α8は、太陽光発電システム1が発電を開始する最低太陽高度である。
【0055】
なお、α8が小さすぎると、太陽高度がより低い時間から発電を開始することができるが、周囲の建物や木などの影ができやすく、発電が安定しにくい。また、太陽光発電システム1のサイズが大きくなる。一方、α8を大きくしすぎると、それ以下の太陽高度では、効率よく発電を行わせることができなくなる。したがって、α8は、α1/3程度とすることが望ましい。以上により、
図1における反射部材7の設計が完了する。
【0056】
図9は、このようにして設計された太陽光発電システム1に対する、太陽光の入射角度に対する反射光の示す図である、
図9(a)に示すように、太陽高度が発電を開始する設定角度(α8)となると、全ての太陽光は、太陽電池モジュール3の受光面5に直接入射する。この際、反射部材7によって、影ができることがない。なお、太陽電池モジュール3の上方を通過した太陽光は、隣り合う太陽光発電システム1の受光面5に入射する。
【0057】
なお、太陽の方向によって、太陽光は、南側からではなく、東西方向(紙面に垂直な方向)にずれた方向から入射する場合があるが、この場合であっても、横方向に太陽光発電システム1を併設することで、隣り合う他の太陽光発電システム1の受光面5に太陽光を入射することができる。
【0058】
太陽高度があがり、太陽の最大高度(夏至の南中高度)に達すると、
図9(b)に示すように、全ての太陽光は、反射部材7に入射し、反射部材7の反射光を受光面5で受ける。例えば、反射部7aは、α1の1/2の角度に設定されるため、反射光は全て水平方向となり、受光面5に入射する。また、反射部7dの範囲では、必ず受光面5の範囲に太陽光を反射するため、太陽光が太陽電池モジュール3の上方に漏れることがない。また、反射部7b、7cは、最大角度α1の太陽光に対しても、受光面5の最上部より上に反射光が行くことがないため、必ず、受光面5の範囲に太陽光が反射される。
【0059】
以上説明したように、本発明によれば、太陽光を最大限利用して発電を行うことができるため、極めて高い発電効率を得ることができる。特に、設定された太陽高度の範囲内においては、理論上、全ての太陽光を効率よく受光面5に反射することができるため、太陽光を地面や太陽電池モジュールの上方に逃がすことがない。
【0060】
このような効果は、太陽電池モジュール3の設置角度を、従来とは逆の下方に受けることで効率よく達成することができる。なお、太陽電池モジュール3は、鉛直に設定することも可能であるが、α1を太陽の最大南中高度に設定するためには、通常α1は90°未満で設定されることが望ましい。
【0061】
このように、太陽電池モジュール3の受光面が、上方に向かないため、受光面5への汚れなどの付着や堆積がない。このため、受光面5の汚れによる発電効率の低下を抑制することができる。
【0062】
また、例えば積雪のある地域では、通常、モジュールに太陽光が到達できる雪の厚さになるまで効率は落ちたままになる。しかし、本発明では、受光面に雪が直接堆積することがない。このため、反射板にたとえ雪が堆積しても、雪による反射によって、効率はやや落ちるとしても、発電を行うことが可能である。特に雪は、反射率が高く、発電に必要な光量を十分に確保することができる。
【0063】
また、反射部材7と太陽電池モジュール3の上端の高さを一致させることで、反射部材7と太陽電池モジュール3とを連結する際に、連結部での太陽光の無駄を最小限にすることができる。
【0064】
このように、あらゆる方向からの光を反射することができるため、本発明の太陽光発電システム1は、曇りの日においても、高い発電効率を発揮することができる。通常、曇天においては、太陽光は直接光ではなく散乱光となることが知られている。本発明では、このような散乱光であっても、効率よく受光面5に反射して、発電を行うことができる。したがって、従来の太陽光発電システムでは、曇りになると、急激に発電量が低下するが、本発明では、発電量の低下は小さく、影響が小さい。
【0065】
なお、反射部材7の材質としては、各種使用することができるが、拡散反射を行うことができる材質であることが望ましい。前述したように、太陽電池モジュール3は、受光面5に均一な光が入射する際に、最も発電効率が高くなり、受光のムラが生じると、発電効率が低下する。一方、本発明では、太陽高度によって、受光面5へ入射する太陽光が、部分的に光の強い部分と弱い部分とが生じる恐れがある。このため、反射光を多少拡散させることで、多少の光漏れを生じるものの、受光面5への入射光のムラを抑制し、受光面5の全面に略均一な太陽光を入射させることができる。この結果、発電量を高めることができる。なお、反射光の拡散によって、反射光の一部が受光面5から漏れたとしても、本発明では、少なくとも反射光の中心が受光面5に入射するため、漏れ光の影響は小さい。
【0066】
このような拡散反射を起こす拡散反射部材としては、例えば、内部に微細気泡を有する発泡体(例えば、古河電気工業社製のMCPET(登録商標)、MCPOLYCA(登録商標))を用いることができる。また、白色塗装や表面の凹凸等によって拡散させることもできる。
【0067】
また、反射部材7の材質としては、赤外線領域の波長の光を吸収または透過する材質を使用することが望ましい。通常、赤外線領域の光は、太陽光発電にはあまり寄与しない。一方、赤外線が受光面5に入射すると、太陽電池モジュール3の温度を上昇させる。太陽電池モジュール3は、温度が上昇することで、発電効率が低下する。このため、反射部材7によって赤外線を吸収または透過させることで、赤外線が太陽電池モジュール3に反射することを抑制することができる。したがって、温度上昇に伴う、太陽電池モジュール3の発電効率の低下を抑制することができる。
【0068】
このような反射部材7の材質としては、金属(アルミニウムなど)を適用することができる。また、前述した発泡樹脂であっても、赤外線の反射が抑制されるため、望ましい。
【0069】
このようにして、反射部材7が赤外線を吸収または透過させると、反射部材7の温度が上昇する。このため、反射部材7の下部に、蓄熱ようの媒体(例えば水)などを流すことで、熱を利用することもできる。
【0070】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば、反射部の数を減らすこともできる。この場合、太陽高度によっては、受光面に全ての反射光が入射せずに多少の漏れ光が生じる恐れがある。しかし、本発明によれば、入射光全体に対する漏れ光の影響を小さくすることができるため、高い効率で発電を行うことができる。