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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-119440(P2015-119440A)
(43)【公開日】2015年6月25日
(54)【発明の名称】移動体端末試験装置および試験方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 3/00 20060101AFI20150529BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20150529BHJP
【FI】
   H04J3/00 B
   H04W88/02 150
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-263355(P2013-263355)
(22)【出願日】2013年12月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079337
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 誠志
(72)【発明者】
【氏名】音成 伸俊
(72)【発明者】
【氏名】藤樫 晴之
【テーマコード(参考)】
5K028
5K067
【Fターム(参考)】
5K028AA11
5K028KK11
5K067AA21
5K067CC04
5K067EE02
5K067EE10
5K067FF02
5K067FF23
5K067HH23
5K067LL08
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】TDD方式の移動体端末のDLのスループットを精度よく測定する。
【解決手段】 TDD方式の1フレームを構成する所定数のサブフレームに対するDL(ダウンリンク)とUL(アップリンク)の割当てパターンを示すフレーム構成情報を、複数記憶するフレーム構成記憶部26と、スループット試験に用いるフレームの種別を指定する手段を含むシナリオ処理部24と、指定されたフレームの種別に対応するフレーム構成情報を参照し、そのフレーム中のULのサブフレームの少なくとも一つを、移動体端末1が確認/非確認メッセージを返信するための応答開始用のサブフレームに決定し、その応答開始用のサブフレームより所定サブフレーム数以上前のDLのサブフレームの少なくとも一つを、送信開始用のサブフレームに決定するタイミング制御部27とを有し、任意に指定されるフレーム種別に対してDLのスループットを正確に求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1フレームが所定数のサブフレームで時分割され、該サブフレームにダウンリンクとアップリンクが割当てられる時分割双方向通信方式を用いた移動体端末のダウンリンクのスループット試験を行なう移動体端末試験装置であって、
前記1フレームを構成する前記所定数のサブフレームに対するダウンリンクとアップリンクの割当てパターンを示すフレーム構成情報を、複数の異なる割当てパターンに対応して複数記憶するフレーム構成記憶部(26)と、
スループット試験に用いるフレームの種別を指定するフレーム種別指定手段(24)と、
前記フレーム構成記憶部に記憶されている複数のフレーム構成情報のうち、前記フレーム種別指定手段によって指定されたフレームの種別に対応するフレーム構成情報を参照して、該フレーム構成情報が示すフレーム中のアップリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、前記移動体端末が受信したユーザデータに対して確認/非確認メッセージを返信する応答開始用のサブフレームと決定するとともに、該決定した応答開始用のサブフレームより所定サブフレーム数前で且つダウンリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、スループット試験に用いるユーザデータの送信開始用のサブフレームと決定するタイミング制御部(27)とを有し、
前記タイミング制御部で決定した送信開始用のサブフレームにユーザデータを挿入して前記移動体端末へ送信し、該ユーザデータを受信した前記移動体端末から前記決定した応答開始用のサブフレームで返信される前記確認/非確認メッセージに対する計数を行なって、前記スループットを求めることを特徴する移動体端末試験装置。
【請求項2】
1フレームが所定数のサブフレームで時分割され、該サブフレームにダウンリンクとアップリンクが割当てられる時分割双方向通信方式を用いた移動体端末のダウンリンクのスループット試験を行なう移動体端末試験方法であって、
前記1フレームを構成する前記所定数のサブフレームに対するダウンリンクとアップリンクの割当てパターンを示すフレーム構成情報を、複数の異なる割当てパターンに対応して複数記憶する段階と、
スループット試験に用いるフレームの種別を指定する段階と、
前記記憶されている複数のフレーム構成情報のうち、前記指定されたフレームの種別に対応するフレーム構成情報を参照して、該フレーム構成情報が示すフレーム中のアップリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、前記移動体端末が受信したユーザデータに対して確認/非確認メッセージを返信する応答開始用のサブフレームと決定するとともに、該決定した応答開始用のサブフレームより所定サブフレーム数前で且つダウンリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、スループット試験に用いるユーザデータの送信開始用のサブフレームと決定する段階とを含み、
前記決定した送信開始用のサブフレームにユーザデータを挿入して前記移動体端末へ送信し、該ユーザデータを受信した前記移動体端末から前記決定した応答開始用のサブフレームで返信される前記確認/非確認メッセージに対する計数を行なって、前記スループットを求めることを特徴する移動体端末試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TDD(時分割双方向通信)方式の移動体端末が基地局からのダウンリンク(以下、DLと記す)データを受信する際のスループットを精度よく測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォン等の移動体端末の試験には種々の項目があるが、そのうちの重要な試験項目として、基地局からのDLデータを受信する際のスループットがどのくらいあるかを測定するスループット試験がある。
【0003】
移動体端末の試験は、移動体端末との間で基地局を模した通信を行なう所謂擬似基地局装置と呼ばれる試験装置を用いて行なうが、スループット試験は、試験装置側からDLでユーザデータを移動体端末に送信し、そのユーザデータに対して移動体端末からアップリンク(以下、ULと記す)で返信される確認/非確認(以下、ACK/NACKと記す)メッセージの数に基づいて、スループットを算出することで行なわれる。なお、この場合のスループットとは、DLで試験装置側から送信されたデータのうち移動体端末で受信確認できたデータの割合(受信成功率)とする。
【0004】
ここで、基地局から移動体端末へのDLと、移動体端末から基地局へのULを異なる周波数を用いて行なうFDD(周波数分割双方向通信)方式(例えばFDD−LTE方式)の場合、図7のように、周波数f1を用いるDLのフレームと周波数f2を用いるULのフレームを構成するサブフレーム数は同一で且つ同期しており、DLの所定のサブフレームにユーザデータDa1、Da2が挿入された信号が送信されてから、m(mは複数)サブフレーム分後のULのサブフレームにユーザデータDa1、Da2に対するACK/NACKメッセージMl、M2が挿入されて送られるように規定されている。
【0005】
したがって、スループットを試験する場合、試験装置がDLの所定のサブフレームにスループット試験用のユーザデータの挿入を開始してから、mサブフレーム分後のULのサブフレームに挿入されているACK/NACKメッセージの数を計数することで、スループットを求めることができる。
【0006】
なお、移動体端末のDLのスループットを測定する技術については、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−147640
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、DLのフレームとULのフレームの周波数が異なり、互いのサブフレームが同期しているFDD方式の場合、DLのデータ送信開始タイミングからmサブフレーム分遅れたタイミングからACK/NACKメッセージの計数を開始することで、スループットを求めることができる。
【0009】
ところが、DLとULが同一周波数を用い、時分割で双方向通信を行なうTDD(時分割双方向通信)方式(例えばTD−LTE方式)の場合、1フレームを構成する所定数(例えば10)のサブフレームにDLとULが割当てられるが、その割当てパターンが通信環境などに応じて変更できるようになっているため、スループット試験のためのDLのユーザデータの送信開始位置に対し、移動体端末がそのユーザデータに対してACK/NACKメッセージの応答を開始するタイミングが一定でなく、正しいタイミングでACK/NACKメッセージを取得してスループットの測定を行なうことができず、その測定結果に誤りが生じる恐れがあった。
【0010】
本発明は、この問題を解決し、TDD方式の移動体端末のDLのスループットを精度よく測定できる移動体端末試験装置および試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の移動体端末試験装置は、
1フレームが所定数のサブフレームで時分割され、該サブフレームにダウンリンクとアップリンクが割当てられる時分割双方向通信方式を用いた移動体端末のダウンリンクのスループット試験を行なう移動体端末試験装置であって、
前記1フレームを構成する前記所定数のサブフレームに対するダウンリンクとアップリンクの割当てパターンを示すフレーム構成情報を、複数の異なる割当てパターンに対応して複数記憶するフレーム構成記憶部(26)と、
スループット試験に用いるフレームの種別を指定するフレーム種別指定手段(24)と、
前記フレーム構成記憶部に記憶されている複数のフレーム構成情報のうち、前記フレーム種別指定手段によって指定されたフレームの種別に対応するフレーム構成情報を参照して、該フレーム構成情報が示すフレーム中のアップリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、前記移動体端末が受信したユーザデータに対して確認/非確認メッセージを返信する応答開始用のサブフレームと決定するとともに、該決定した応答開始用のサブフレームより所定サブフレーム数前で且つダウンリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、スループット試験に用いるユーザデータの送信開始用のサブフレームと決定するタイミング制御部(27)とを有し、
前記タイミング制御部で決定した送信開始用のサブフレームにユーザデータを挿入して前記移動体端末へ送信し、該ユーザデータを受信した前記移動体端末から前記決定した応答開始用のサブフレームで返信される前記確認/非確認メッセージに対する計数を行なって、前記スループットを求めることを特徴する。
【0012】
また、本発明の請求項2の移動体端末試験方法は、
1フレームが所定数のサブフレームで時分割され、該サブフレームにダウンリンクとアップリンクが割当てられる時分割双方向通信方式を用いた移動体端末のダウンリンクのスループット試験を行なう移動体端末試験方法であって、
前記1フレームを構成する前記所定数のサブフレームに対するダウンリンクとアップリンクの割当てパターンを示すフレーム構成情報を、複数の異なる割当てパターンに対応して複数記憶する段階と、
スループット試験に用いるフレームの種別を指定する段階と、
前記記憶されている複数のフレーム構成情報のうち、前記指定されたフレームの種別に対応するフレーム構成情報を参照して、該フレーム構成情報が示すフレーム中のアップリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、前記移動体端末が受信したユーザデータに対して確認/非確認メッセージを返信する応答開始用のサブフレームと決定するとともに、該決定した応答開始用のサブフレームより所定サブフレーム数前で且つダウンリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、スループット試験に用いるユーザデータの送信開始用のサブフレームと決定する段階とを含み、
前記決定した送信開始用のサブフレームにユーザデータを挿入して前記移動体端末へ送信し、該ユーザデータを受信した前記移動体端末から前記決定した応答開始用のサブフレームで返信される前記確認/非確認メッセージに対する計数を行なって、前記スループットを求めることを特徴する。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明では、予め、時分割双方向通信方式において1フレームを構成する所定数のサブフレームに対するダウンリンクとアップリンクの割当てパターンを示すフレーム構成情報を、複数の異なる割当てパターンに対応して複数記憶しておき、スループット試験に用いるフレームの種別が指定されたときに、その記憶されている複数のフレーム構成情報のうち、指定されたフレームの種別に対応するフレーム構成情報を参照して、そのフレーム構成情報が示すフレーム中のアップリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、移動体端末が受信したユーザデータに対して確認/非確認メッセージを返信する応答開始用のサブフレームと決定するとともに、その決定した応答開始用のサブフレームより所定サブフレーム数前で且つダウンリンクに割り当てられたサブフレームの少なくとも一つを、スループット試験に用いるユーザデータの送信開始用のサブフレームと決定し、その決定した送信開始用のサブフレームにユーザデータを挿入して移動体端末へ送信し、そのユーザデータを受信した移動体端末から決定した応答開始用のサブフレームで返信される確認/非確認メッセージに対する計数を行なって、スループットを求めている。
【0014】
このため、TDD方式の移動体端末のスループット試験に用いられる複数種のフレーム構成のいずれが指定されても、移動体端末へ送信したユーザデータに対して、所望のアップリンクのサブフレームで移動体端末からの確認/非確認メッセージの返信を受けることができ、その移動体端末のダウンリンクのスループットを正しく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の構成図
図2】TDD方式のフレーム構成の種別を示す図
図3】一つのフレーム構成についての処理を説明するための図
図4】別のフレーム構成についての処理を説明するための図
図5】各フレーム構成について、応答開始位置とそれを基準とする送信開始位置との対応関係を示す図
図6】本発明の実施形態の処理手順を示すフローチャート
図7】FDD方式のスループット試験を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した移動体端末試験装置(以下単に試験装置と記す)20の全体構成図である。
【0017】
試験装置20は、1フレームが所定数のサブフレームで時分割され、それらのサブフレームにDLとULが割当てられるTDD(時分割双方向通信)方式を用いた移動体端末1のダウンリンクのスループット試験を行なうものであり、送受信部21と試験処理部22によって構成されている。なお、TD−LTE方式では、この1フレームを無線フレームと呼んでいるが、ここでは、単にフレームと記す。
【0018】
送受信部21は、試験処理部22からのデータ信号で変調された高周波信号を試験対象の移動体端末1に与え、移動体端末1からの高周波信号を受信復調し、得られたデータ信号を試験処理部22に与える。
【0019】
試験処理部22は、送受信部21を介して移動体端末1との間で基地局を模した通信を行い、移動体端末1に対する種々の試験を行なうが、ここでは、主に移動体端末1のDLのスループット試験を行なうために必要な構成要件を示す。
【0020】
試験処理部22は、データ処理部23、シナリオ処理部24、ユーザデータ発生部25、フレーム構成記憶部26、タイミング制御部27、スループット測定部28によって構成されている。
【0021】
データ処理部23は、ユーザデータ発生部25から出力されたユーザデータを、タイミング制御部27から通知された所定のタイミングでDLのサブフレームに挿入して、これを送信データとして送受信部21に与え、送受信部21の受信データからスループット測定に必要なACK/NACKメッセージを抽出し、スループット測定部28へ与える。また、シナリオ処理部24からの制御データを送信データに含めて出力し、送受信部21からの受信データから制御データを抽出してシナリオ処理部24に与える。
【0022】
シナリオ処理部24は、試験装置20の全体の試験手順を定義したシナリオを予め記憶し、その手順にしたがって、移動体端末1との間の接続やスループット試験に必要な移動体端末1との間の制御データの授受、ユーザデータ発生部25へのデータ発生指示、タイミング制御部27へのフレーム構成種別通知(フレーム種別指定手段)、スループット測定部28への測定指示等の処理を行なう。
【0023】
ユーザデータ発生部25は、シナリオ処理部24からのデータ発生指示を受けて、スループット試験に用いるDLのユーザデータを発生させる。
【0024】
フレーム構成記憶部26には、予め、スループット試験で用いるフレームを構成する所定数のサブフレームに対するダウンリンクとアップリンクの割当てパターンを示すフレーム構成情報が、複数の異なる割当てパターンに対応して複数記憶されている。
【0025】
図2は、TD−LTE方式で用いる7種類のフレームを表すものであり、記号UがULのサブフレーム、記号DがDLのサブフレーム、記号Sがスペシャルサブフレームである。なお、スペシャルサブフレームSは、ギャップ部を挟んでその前にDL部(DwPTS)、後ろにUL部(UpPTS)が存在しているが、スループット試験においては、DL部を用いてユーザデータ送信を行なうDLのサブフレームとして扱う。
【0026】
この図2からわかるように、フレームの構成は、スペシャルサブフレームSが10サブフレーム(10ms)中1つ存在するもの(スイッチポイント間隔10ms)と、スペシャルサブフレームSが10サブフレーム中5ms間隔で2つ存在するもの(スイッチポイント間隔5ms)に大別され、その二つのタイプそれぞれについて、サブフレームD、Lの割当てパターンが異なっている。
【0027】
これら7種類の異なる構成のフレームのいずれを使うかは、シナリオ処理部24がシナリオにしたがって指定することになるが、DLのサブフレーム(スペシャルサブフレームSのDL部も含む)に挿入されたユーザデータを受けた移動体端末1がそのユーザデータに対するACK/NACKメッセージを返信するまでには、データ復調、誤りチェック等を処理のために相応の時間が必要ある。
【0028】
したがって、例えばユーザデータが挿入されたDLのサブフレームの直後のサブフレームがULであっても、そのULのサブフレームでACK/NACKメッセージを返信することはできず、それより後のULのサブフレームでの応答を待たなければならない。しかも、試験に用いるフレームの構成は、シナリオ処理部24の指定により任意に変化するので、ユーザデータを挿入したDLのサブフレーム送信後にその応答が得られるULのタイミングも一定でない。
【0029】
これに対応するために、タイミング制御部27は、フレーム構成記憶部26に記憶されているフレーム構成のうち、シナリオ処理部24から指定されたフレームの種別に対応するフレーム構成の情報を参照し、指定されたフレーム構成のULのサブフレームのうち、送信しようとするユーザデータに対して移動体端末1からACK/NACKメッセージが返信される少なくとも一つのサブフレームを応答開始用のサブフレームと決定し、その応答開始用のサブフレームでACK/NACKメッセージが返信されるためのDLのサブフレームを、ユーザデータの送信開始用のサブフレームとして決定する。
【0030】
このタイミング制御部27によって決定された送信開始用のサブフレームのタイミング情報はデータ処理部23に通知され、応答開始用のサブフレームのタイミング情報はスループット測定部28に通知される。
【0031】
スループット測定部28は、タイミング制御部27から通知されたタイミングから、ACK/NACKメッセージに対する計数を開始するメッセージ計数部28aと、その計数結果からスループットを算出するスループット算出部28bにより構成され、試験対象の移動体端末1のDLのスループットTPを求める。
【0032】
なお、スループットTPは、ACKメッセージの計数結果をA、NACKメッセージの計数結果をNとすれば、
TP(%)=100×A/(A+N)
となる。このようにして求められたスループットTPは、例えば図示しない表示部に表示される。
【0033】
ここで、移動体端末1からACK/NACKメッセージの返信を受けるULのサブフレームと、それを応答開始位置とするための送信開始用のDLのサブフレームとの関係について説明する。
【0034】
例えば、図2のフレーム種別5では、1フレーム中にULのサブフレームはUの一つしか存在しないので、ACK/NACKメッセージの返信はこの唯一のサブフレームUを使用することになる。
【0035】
そして、図3に示すように、移動体端末1がn番目のフレーム中のULサブフレームUでACK/NACKメッセージを返信するためには、そのサブフレームを基準として少なくとも4サブフレーム以上前のDLのサブフレームを使用する。即ち、一つの前のn−1番目のフレームの中の1〜7番目のDLサブフレームD〜DおよびスペシャルサブフレームS、さらにその前のn−2番目のフレームの中の8番目のDLサブフレームDの少なくとも一つを用いる必要がある。
【0036】
つまり、応答開始用のULのサブフレームを基準とし、その基準から前に数えて4〜9番目までの各サブフレームおよび11〜13番目までの各サブフレームが、ユーザデータ挿入が可能な送信開始用のDLのサブフレームの候補となる。
【0037】
また、例えば、図2のフレーム種別0で、図4のように移動体端末1がn番目のフレームの1番目のULのサブフレームUを応答開始用のサブフレームとして使用する場合には、それより1つ前のn−1番目のフレームのスペシャルサブフレームSを、ユーザデータの送信開始用のサブフレームとし、また、n番目のフレームの3番目のULのサブフレームUを応答開始用のサブフレームとして使用する場合には、そのn番目のフレームの先頭のDLサブフレームDをユーザデータユーザデータの送信開始用のサブフレームとすることができる。また、n番目のフレームの4番目のULのサブフレームUを応答開始用のサブフレームとして使用する場合には、そのn番目のフレームの最初のスペシャルサブフレームSをユーザデータの送信開始用のサブフレームとすることができ、さらに、n番目のフレームの6番目のULのサブフレームUを応答開始用のサブフレームとして使用する場合には、そのn番目のフレームの2番目のDLサブフレームDをユーザデータの送信開始用のサブフレームとすることができる。
【0038】
つまり、ACK/NACKメッセージを受けようとするULのサブフレームから数えて4サブフレーム以上13サブフレーム以内のDLおよびスペシャルのサブフレームが、ユーザデータの送信開始用のサブフレームの候補となる。
【0039】
なお、実際にスループットを精度よく求めるためには、多くのユーザデータを用いることが望ましく、上記のデータ挿入対象のすべてのDLのサブフレーム(スペシャルサブフレーム含む)をユーザデータの送信に用い、これらすべてのユーザデータに対する移動体端末1からのACK/NACKメッセージをULのサブフレームで返信させることで、最も高い精度で試験が行なえる。
【0040】
即ち、図3のフレーム種別5の場合、応答開始位置から前に数えて4サブフレーム目から13サブフレーム目のうち、10サブフレーム目のULを除いたすべてのサブフレームを用いてユーザデータを送信し、これらすべてのユーザデータに対するACK/NACKメッセージを一つのULサブフレームUで受けてその累積値からスループット算出を行なえばよい。また、図4のフレーム種別0の場合には、n−1番目のフレームのサブフレームSおよびn番目のフレームの各サブフレームS、D、Dを用いてユーザデータを送信し、4つの応答開始位置U、U、U、Uのすべてを用いて、それら各サブフレームで返信されたACK/NACKメッセージの累積値からスループット算出を行なえばよい。
【0041】
また、データ数をより多くするために、上記処理を複数フレーム分行ない、そのメッセージ累計値を用いてスループット算出を行なうこともできる。
【0042】
図5は、上記関係をまとめたものであり、7種類のフレーム構造について、ACK/NACKメッセージを受ける応答開始用のULのサブフレームを基準とし、その基準から数えて何番目前のサブフレーム(DLサブフレームおよびスペシャルサブフレームS)をユーザデータの送信開始用とすればよいかを表している。
【0043】
前記したタイミング制御部27は、この図5の関係を予め記憶していて、シナリオ処理部24から指定された種別のフレーム構成を参照し、そのフレーム構成において、ULのうちACK/NACKメッセージを得るための応答開始用のサブフレームを決定し、その決定した応答開始用のサブフレームでACK/NACKメッセージを受けられるユーザデータの送信開始用のサブフレームを求め、その送信開始用のサブフレームのタイミング情報をデータ処理部23に通知するともに、スループット測定部28に対し、応答開始用のサブフレームのタイミング情報を通知する。
【0044】
このため、試験者がシナリオ処理部24に試験条件を記録する際に、所望のフレームの種別を指定するだけで、そのフレームの構成に対して最適な応答開始用のULのサブフレームと、送信開始用のサブフレームとが決定され、その形成されたサブフレームによるスループット試験を確実に行なうことができる。
【0045】
図6は、この試験装置20の試験処理部22の処理手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて、試験装置20の動作を説明する。
【0046】
始めに、シナリオ処理部24により、移動体端末1との間で各種制御データの送受信を行い、呼接続およびデータ通信チャネルを確立させる(S1)。
【0047】
次に、シナリオ処理部24がスループット試験に用いるフレームの種別をタイミング制御部27に通知する(S2)。
【0048】
この通知を受けたタイミング制御部27が、通知された種別のフレーム構成に基づいて応答開始位置となるULのサブフレームを決定し、これをスループット測定部28に通知するとともに、それに対応するユーザデータの送信開始位置となるサブフレームを決定し、データ処理部23へ通知する(S3)。
【0049】
次に、シナリオ処理部24がユーザデータ発生部25へのデータ発生指示およびスループット測定部28への測定開始指示を行う(S4)。
【0050】
この指示に対して、ユーザデータ発生部25がスループット試験に用いる誤りの無いユーザデータをデータ処理部23に出力するが、データ処理部23は、移動体端末1との間で通信に用いる所定のフレームのDLのサブフレームのうち、タイミング制御部27から通知されている送信開始用のサブフレームにユーザデータに挿入して送受信部21へ送信し、試験対象の移動体端末1にこのユーザデータを伝達させる(S5)。
【0051】
このユーザデータを受信した移動体端末1は、端末内部で受信したユーザデータの誤りチェック(CRC)を行い、誤りが無ければACKメッセージ、誤りがあればNACKメッセージを、そのユーザデータを受信したサブフレームから数えて所定番目後のULのサブフレームに挿入して返信することになる。
【0052】
移動体端末1からULのサブフレームで返信されたメッセージは、送受信部21およびデータ処理部23を介してスループット測定部28に送出されるが、スループット測定部28は、タイミング制御部27から通知されている応答開始用のサブフレームの受信タイミングからACK/NACKのメッセージの計数を開始し、例えばその総和A+Nが所定数K(送ったデータ数)に達した段階で、その計数値A、Nを用いてスループットTPの計算を行なう(S6〜S8)。
【0053】
このように構成されているので、実施形態の試験装置20では、試験者が、フレームの種別によるACK/NACKメッセージの応答タイミングとユーザデータの送信タイミングとの関係を考慮して試験手順を設定するという手間をかけることなく、TDD方式の移動体端末1のDLのスループットを精度よく測定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1……移動体端末、20……移動体端末試験装置、21……送受信部、22……試験処理部、23……データ処理部、24……シナリオ処理部、25……ユーザデータ発生部、26……フレーム構成記憶部、27……タイミング制御部、28……スループット測定部、28a……メッセージ計数部、28b……スループット算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7