【解決手段】植物原料液及びホップを使用して製造される未発酵の発泡性ビールテイスト飲料であって、難消化性デキストリンの含有量が0.50〜5.00w/v%であり、pHが3.5〜5.0であり、ガス圧が0.147〜0.294MPaである未発酵の発泡性ビールテイスト飲料。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る未発酵の発泡性ビールテイスト飲料及び発泡性ビールテイスト飲料の香味向上方法の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係る飲料は、酵母によるアルコール発酵を経ることなく製造され、発泡性を備えた未発酵の発泡性ビールテイスト飲料である。
具体的には、一般にノンアルコールビール等と呼ばれるビールテイスト飲料に関する。なお、本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様(風)飲料とも称され、ビールのような味わいを奏する、つまり、ノンアルコールでありながらビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料を意味している。
【0013】
本実施形態に係る飲料は、アルコール発酵を経ることなく製造されるため、通常、実質的にはアルコールを含有しない飲料として製造される。しかしながら、本実施形態に係る飲料が効果を奏する上で、アルコールの含有量は飲料が奏する効果に影響を与えるものではない。したがって、原料に不可避的に含まれているアルコールを含有することは妨げられず、また、外部から添加されたアルコールを含有することも妨げられない。但し、本実施形態に係る飲料におけるアルコールの含有量は、1v/v%未満とすることが好ましく、0.5v/v%未満とすることがより好ましく、実質的に0.0v/v%とすることが特に好ましい。なお、アルコールの含有量は、15℃におけるエチルアルコールの容量を指す。
【0014】
本実施形態に係る飲料は、飲料中における難消化性デキストリンの含有量が所定量に調整され、pHが所定値に調整され、ガス圧が所定圧力に調整されている。そのため、アルコール発酵を経ることなく製造されるにもかかわらず、ビールに固有の香味を良好に呈し、従来の未発酵の発泡性ビールテイスト飲料と比較して、ビール様の香りが増強され、香味が向上した飲料である。
【0015】
本実施形態に係る難消化性デキストリンは、澱粉の加水分解・熱分解により生成され、各種アミラーゼ、特にヒトの消化酵素によっても分解されない成分を有する多糖である。
そして、難消化性デキストリンは、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用が認められている。
本実施形態に係る飲料においては、難消化性デキストリンは、炭酸水に溶解されて紙臭を発し、ビール様の香りを増強する作用をもたらしている。そして、ビール様の香りを増強することによって、ビールテイスト飲料としての香味を向上させている。難消化性デキストリンとしては、例えば、「パインファイバー」(登録商標)(松谷化学工業株式会社製)、「ファイバーソル」(松谷化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0016】
本実施形態に係る飲料中における、難消化性デキストリンの含有量は、0.50w/v%以上5.00w/v%以下であることが好ましく、1.00w/v%以上3.00w/v%以下であることがより好ましく、1.50w/v%以上3.00w/v%以下であることがさらに好ましい。難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%以上であると、紙臭が好ましい程度に得られ、ビール様の香りが増強された飲料となる。また、香味の調和が良好となり、ビール様の香味が向上した飲料となる。その一方で、難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%未満であると、紙臭が充分には得られず、ビール様の香りの増加は認められ難くなる。また、香味の調和を欠く飲料となる。その一方で、難消化性デキストリンの含有量が5.00w/v%を超えると、難消化性デキストリン由来の味が生じて、香味の調和を欠く飲料となる場合がある。
【0017】
本実施形態に係る飲料は、所定のガス圧となるように炭酸ガスが圧入された発泡性を備える飲料である。
本実施形態に係る飲料においては、炭酸ガスのガス圧が所定圧力に調整されることによって、難消化性デキストリンがもたらす紙臭で増強されたビール様の香りが、さらに増したものとなっている。
なお、本明細書において、ガス圧は、製造された飲料の20℃におけるガス内圧力を意味し、日本農林規格に定められる方法に準じて測定される圧力である。
【0018】
本実施形態に係る飲料におけるガス圧は、0.147MPa(1.50kg/cm
2)以上0.294MPa(3.00kg/cm
2)以下であることが好ましく、0.147MPa(2.00kg/cm
2)以上0.294MPa(3.00kg/cm
2)以下であることがより好ましい。ガス圧が0.147MPa(1.50kg/cm
2)以上であると、難消化性デキストリンがもたらすビール様の香りが増強された飲料となる。また、香味の調和が良好となり、ビール様の香味が向上した飲料となる。その一方で、ガス圧が0.147MPa(1.50kg/cm
2)未満であると、難消化性デキストリンがもたらすビール様の香りが十分には増強されない。ガス圧が0.294MPa(3.00kg/cm
2)以下であると、炭酸による過剰な刺激が抑えられた飲料となる。
【0019】
本実施形態に係る飲料は、炭酸ガスが圧入された状態において所定のpHを有するようにpHが調整された飲料である。
本実施形態に係る飲料においては、飲料のpHが所定値に調整されることによって、ビールテイスト飲料としての香味の調和がもたらされている。
pHの調整方法は、特に制限されるものではないが、例えば、後記する酸味料の添加によることができる。酸味料としては、酸味が穏和な乳酸が好適である。
【0020】
本実施形態に係る飲料のpHは、3.5以上5.0以下であることが好ましく、3.7以上5.0以下であることがより好ましく、3.8以上4.2以下であることがさらに好ましい。pHが3.5以上であると、難消化性デキストリンがもたらすビール様の香りが維持された飲料となる。また、香味の調和が良好となり、ビール様の香味が向上した飲料となる。その一方で、pHが3.5未満であると、難消化性デキストリンがもたらすビール様の香りが損なわれるおそれがある。また、酸味が過剰となり、香味の調和を欠く飲料となる。pHが5.0を超えると、香味の調和が不十分な飲料となる。また、ガス圧及びpHの相互の調整が困難となる。
【0021】
本実施形態に係る飲料は、植物原料と冷水又は温水とを混合することによって調製される植物原料液を使用して製造される飲料である。したがって、本実施形態に係る飲料は、植物原料に由来する成分を含有する飲料である。
【0022】
植物原料液の調製に用いる植物原料としては、一般のビールテイスト飲料の製造に用いられる植物由来の原料であれば特に制限されるものではないが、穀物であることが好ましい。穀物としては、麦類、米、トウモロコシ、豆類、いも類、こうりやん、あわ、ひえ、きび等が挙げられる。具体的には、麦類としては、大麦、小麦、燕麦、ライ麦等が、いも類としては、ばれいしょ、さつまいも等が、豆類としては、大豆、エンドウ、小豆、緑豆、空豆等が挙げられる。
なお、穀物としては、未発芽の穀物及び発芽した穀物のいずれでもよい。
使用される植物原料液は、植物原料として、麦類、麦芽、大豆、エンドウ及びトウモロコシからなる群より選択される少なくとも1種を用いて調製することが好ましい。
【0023】
使用される植物原料液には、植物原料からあらかじめ調製された糖化液が含有されてもよく、植物原料に含まれる成分をあらかじめ抽出して得られるエキスが含有されてもよい。
このような糖化液又はエキスとしては、特に、麦芽由来のエキス分を含有する麦汁及び/又は麦芽エキスを含有することができる。
なお、本明細書において、エキス分は、糖分、タンパク質、アミノ酸、苦味質、不揮発性有機酸、ミネラル、ポリフェノール、色素成分等からなる不揮発性固形分を意味するものとする。
【0024】
使用される植物原料液には、植物原料から分離精製された植物由来タンパクが含有されてもよい。
植物由来タンパクとしては、一般のビールテイスト飲料の製造に用いられる植物から分離されるタンパクであれば特に制限されるものではないが、前記した穀物から分離されるタンパクであることが好ましく、大豆タンパク、トウモロコシタンパク又はエンドウタンパクを含有することがより好ましい。例えば、大豆タンパクとしては、「昭和フレッシュ」(昭和産業株式会社製)、エンドウタンパクとしては、「エンドウタンパク」(オルガノフードテック株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
使用される植物原料液には、植物由来タンパクを加水分解して得られる植物由来タンパク分解物が含有されてもよい。
植物由来タンパク分解物は、植物原料から分離精製された植物由来タンパクを熱処理、酸処理及び酵素処理のいずれで加水分解したものでもよく、分画されたものでもよい。
植物由来タンパク分解物としては、具体的には、大豆タンパク分解物又はエンドウタンパク分解物を含有していることが好ましい。例えば、大豆ペプチドとしては、「ハイニュート−AM」(登録商標)(不二製油株式会社製)や「ハイニュート−DC6」(登録商標)(不二製油株式会社製)や「ソルピー5000」(登録商標)(日清オイリオ株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係る飲料は、ホップの存在下において煮沸された植物原料液を使用して製造される飲料である。したがって、本実施形態に係る飲料は、ホップに由来する、苦味成分や、香気成分を含有する飲料である。
苦味成分としては、シス−イソフムロンやトランス−イソフムロン等のイソ−α酸が挙げられ、香気成分としては、リナロール、ゲラニオール、イオノン等のテルペン類や、酪酸エステル、プロパン酸エステル等のエステル類や、1−ヘキサナール、3−ヘキセナール等のアルデヒド類等が挙げられる。本実施形態に係る飲料においては、ホップに由来する香気成分が、難消化性デキストリンによって増強されるビール様の香りの基礎を成している。
【0027】
本実施形態に係る飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、安定剤等(これらを単に任意添加材料ということがある。)を含有してもよい。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素等を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプン等を挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム等を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール等を挙げることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、コハク酸等や、その他、酢酸、酒石酸、グルコン酸、アジピン酸、フマル酸等を挙げることができる。塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等を挙げることができる。また、安定剤としては、ペクチン、水溶性大豆多糖類等を挙げることができる。
【0028】
以上説明した本実施形態に係る飲料によれば、未発酵の発泡性ビールテイスト飲料において、ビール様の香りが付加的に増強され、ビールテイスト飲料としての香味の調和が良好となり、飲料全体として香味が向上する効果が得られる。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る飲料の製造方法と共に、未発酵の発泡性ビールテイスト飲料の香味向上方法について説明する。
【0030】
本実施形態に係る香味向上方法は、特に、飲料における難消化性デキストリンの含有量を0.50w/v%以上5.00w/v%以下に調整する工程と、飲料のpHを3.5以上5.0以下に調整する工程と、飲料のガス圧を0.147MPa(1.50kg/cm
2)以上0.294MPa(3.00kg/cm
2)以下に調整する工程と、を備えている。
本実施形態に係る香味向上方法は、これらの工程を備える限り実施の形態が制限されるものではないが、例えば、以下に説明するように実施形態に係る飲料の製造方法における工程中において行うことができるものである。そこで、本実施形態に係る香味向上方法を実施形態に係る飲料の製造方法に沿って説明する。
【0031】
本実施形態に係る飲料の製造方法は、植物原料液及びホップを使用して、アルコール発酵を経ることなく未発酵の発泡性ビールテイスト飲料を製造する方法である。
すなわち、原料の一部として植物由来の原料を使用し、アルコールの濃度が1v/v%未満である未発酵の発泡性ビールテイスト飲料を製造する方法に関する。
【0032】
本実施形態に係る飲料の製造方法は、前記した工程が含まれる限り、飲料製造の分野で実施されている一般的な飲料の製法に準じて行われるものであり、具体的には、本実施形態に係る製造方法は、植物原料液調製工程と、発泡性付与工程と、無菌化工程と、充填工程と、を主な工程として含んでなる。
【0033】
植物原料液調製工程では、植物原料と冷水又は温水とを混合することによって、飲料の製造に使用する植物原料液の調製を行う。このような植物原料と水の混合は、適宜の温度に加温しながら行ってもよい。
【0034】
植物原料としては、一般のビールテイスト飲料の製造に用いられる植物由来の原料であれば特に制限されるものではないが、前記した穀物を用いることが好ましく、特に、麦類、麦芽、大豆、エンドウ及びトウモロコシからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
麦芽は、麦類、例えば大麦を水に浸漬させた後、所定の温度及び湿度条件の下で発芽させることによって調製することができる。調製された麦芽は、焙燥されていることが好ましく、除根されていることが好ましく、粉砕されていることが好ましい。
【0035】
植物原料液は、植物原料からあらかじめ調製された糖化液を含有するように調製してもよい。
糖化液は、植物原料と冷水又は温水とを混合した後、所定温度に加温して保持し、植物原料が含む糖質を内在性加水分解酵素の作用で糖化することによって調製することができる。調製された糖化液は、固形物が除去されていることが好ましい。
また、植物原料液は、あらかじめ植物原料に含まれる成分を抽出して得られるエキスを含有するように調製してもよい。このようなエキスは、植物原料から成分を溶媒抽出したり、糖化液に含まれる成分を濃縮することによって得ることができる。
本実施形態に係る植物原料液は、特に、麦芽由来のエキス分を含有する麦汁及び/又は麦芽エキスを含有するように調製してもよい。
【0036】
植物原料液は、植物原料から分離精製された植物由来タンパクを含有するように調製してもよい。植物由来タンパクは、植物原料と冷水又は温水とを混合した後、その溶液から分離抽出して得ることができる。
植物由来タンパクとしては、一般のビールテイスト飲料の製造に用いられる植物から分離されるタンパクであれば特に制限されるものではないが、前記した穀物から分離されるタンパクを使用することが好ましく、大豆タンパク、トウモロコシタンパク又はエンドウタンパクを含有することがより好ましい。なお、このような植物由来タンパクとしては、あらかじめ、植物から分離抽出した後、所定の画分を精製したものを使用してもよい。
【0037】
植物原料液は、植物由来タンパクを加水分解して得られる植物由来タンパク分解物を含有するように調製してもよい。
植物由来タンパクの加水分解は、酸処理やアルカリ処理、又はプロテアーゼやペプチダーゼ等の分解酵素を用いた酵素処理により行うことができるが、酵素処理によることが好ましい。
植物由来タンパク分解物としては、具体的には、大豆タンパク分解物又はエンドウタンパク分解物を含有することが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る植物原料液には、製造される飲料における難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%以上5.00w/v%以下、好ましくは1.00w/v%以上3.00w/v%以下、より好ましくは1.50w/v%以上3.00w/v%以下となるように難消化性デキストリンを添加する。
すなわち、植物原料液調製工程以降において、植物原料液の成分の濃度を調整することなく飲料を製造する場合は、植物原料液における含有量が、飲料中において達成しようとする含有量と同じ量となるように難消化性デキストリンを混合する。その一方で、植物原料液調製工程以降において、植物原料液の成分の濃度を調整して飲料を製造する場合は、濃度調整の率に応じて量を加減して難消化性デキストリンを添加する。
本実施形態に係る香味向上方法及び飲料の製造方法は、このような工程を備えることによって、紙臭が好ましい程度に得られ、ビール様の香りが増強された飲料の調製を可能としている。
【0039】
本実施形態に係る植物原料液は、製造される飲料におけるpHが3.5以上5.0以下、好ましくは3.7以上5.0以下、より好ましくは3.8以上4.2以下となるように調整する。
すなわち、後記する発泡性付与工程において植物原料液のpHが大きく変動するため、製造される飲料において所定のpHが達成されるように、植物原料液におけるpHの調整を行う。
本実施形態に係る香味向上方法及び飲料の製造方法は、このような工程を備えることによって、香味の調和が良好で、ビール様の香味が向上した飲料の調製を可能としている。
pHの調整方法は、特に制限されるものではないが、酸味料を添加する方法を用いることができる。この場合において、酸味料は、一種又は複数種を組み合わせて用いることができるが、製造される飲料の呈味の観点から、乳酸を用いることが好ましい。
なお、必要な場合には、除酸剤等を添加することによりpHを増大させることができる。除酸剤としては、炭酸カルシウム、アンモニア等が挙げられる。
【0040】
植物原料液調製工程では、ホップを使用する。すなわち、この工程において、ホップの存在下で植物原料液の煮沸を行う。植物原料液をホップの存在下で煮沸することによって、ホップに由来するα酸をビール特有の苦味を呈するイソ−α酸に変換させることができる。また、ビール様の香りの基礎を成す香気成分を植物原料液中に抽出することができる。
【0041】
加えるホップとしては、任意の品種を用いることができ、生鮮のホップ、又は乾燥したホップ、例えば、プレスホップ、ホップパウダー、ホップペレットの形態としたものを用いることができる。
また、植物原料液には、あらかじめホップに由来する成分を溶媒抽出して得られるホップエキスを添加してもよい。
ホップエキスは、例えば、ホップの毬花に含まれる成分を溶媒抽出することによって調製することができる。溶媒としては、飲料製造上許容される溶媒、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸メチル、グリセリン、ジエチルエーテル等を用いることができる。
【0042】
植物原料液には、前記した任意添加材料を添加してもよい。また、植物原料液調製工程において、植物原料液に水を混合し、植物原料液における各成分の濃度が、製造される飲料の成分の濃度となるように調整してもよい。
【0043】
発泡性付与工程では、製造される飲料におけるガス内圧が、ゲージ圧で0.147MPa(1.50kg/cm
2)以上0.294MPa(3.00kg/cm
2)以下、好ましくは0.147MPa(2.00kg/cm
2)以上0.294MPa(3.00kg/cm
2)以下となるように調製された植物原料液に炭酸ガスを混合して発泡性を付与する。
本実施形態に係る香味向上方法及び飲料の製造方法は、このような工程を備えることによって、難消化性デキストリンがもたらすビール様の香りが増強された飲料の調製を可能としている。
炭酸ガスを混合する方法としては、植物原料液に炭酸ガスを圧入する方法、植物原料液に炭酸水を混合する方法のいずれでもよい。
すなわち、植物原料液の成分の濃度が、製造される飲料の成分の濃度に既に調整されている場合には、炭酸ガスを圧入することにより、発泡性を備える飲料が調製される。その一方で、植物原料液の成分の濃度が、製造される飲料の成分の濃度に調整されていない場合には、所定の混合比で炭酸水を混合して成分の濃度を調整することにより、発泡性を備える飲料が調製される。
なお、このような工程は、充填工程と併せた一体の工程として行うことができる。
【0044】
無菌化工程では、殺菌処理又は除菌処理を行うことによって、製造される飲料を無菌化する。
殺菌処理としては、用いた植物原料や飲料のpH等に応じて、例えば、65℃以上の所定温度で加熱処理を行う。なお、殺菌処理は、発泡性付与工程の前に植物原料液に対して行うことができ、或いは充填工程の後に容器詰め飲料に対して行うことができる。
除菌処理としては、発泡性付与工程の前に植物原料液に対してろ過を行う。ろ過材としては、珪藻土や樹脂性フィルタを用いることができる。
【0045】
充填工程では、調製された飲料を、洗浄済みの缶、瓶、ペットボトル等の製品容器に充填することによって容器詰め飲料が製造される。
【0046】
以上、飲料の製造方法に沿って説明したように、本実施形態に係る香味向上方法によれば、難消化性デキストリンの含有量を調整する工程を備えることによって、未発酵の発泡性ビールテイスト飲料のビール様の香りを付加的に増強し、飲料のpHを調整する工程を備えることによって、ビールテイスト飲料としての香味の調和を良好にすることができる。また、飲料のガス圧を調整する工程を備えることによって、難消化性デキストリンがもたらすビール様の香りをより増強することができる。ひいては、未発酵の発泡性ビールテイスト飲料において、飲料全体としての香味を向上させることができる。
このようにして行われる未発酵の発泡性ビールテイスト飲料の製造方法は、前記したビール様の香りが増強され、香味が向上した未発酵の発泡性ビールテイスト飲料の製造に好適である。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の実施例を例示して、本発明についてより具体的に説明する。
【0048】
はじめに、炭酸水に溶解させた難消化性デキストリンが発する香りを官能試験に基づいて評価した。
評価対象サンプルとしては、難消化性デキストリンの含有量が表1に示される濃度となるように溶解させた炭酸水をサンプル(No.C−1〜No.C−7に係るサンプル)としてそれぞれ調製した。
なお、難消化性デキストリンとしては、「パインファイバー」(登録商標)(松谷化学工業株式会社製)を用いた。
【0049】
官能試験は、難消化性デキストリンを溶解させたサンプルが発する紙臭を評価項目として行った。
各サンプルの評価は、サンプルを試飲した5名のパネリストに下記評価基準に則って1〜5点の5段階評価で独立点数付けさせ、それらの平均値を算出することによって数値化した。
【0050】
(紙臭)
5点:極めて強い紙臭がある。
4点:強い紙臭がある。
3点:紙臭がある。
2点:弱い紙臭がある。
1点:全く紙臭がない。
【0051】
表1に、No.C−1〜No.C−7に係る各サンプルについて、官能試験の結果を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、炭酸水中において難消化性デキストリンの含有量が0.00w/v%から3.00w/v%に増大するにしたがって、紙臭が強くなることが確認され、難消化性デキストリンの含有量と紙臭の強さには正の相関があることが示唆された。
【0054】
次に、難消化性デキストリンの含有量、pH、ガス圧が、未発酵の発泡性ビールテイスト飲料の香りや香味に与える影響を官能試験に基づいて評価した。
以下の試験において、評価対象サンプルの発泡性ビールテイスト飲料は、麦汁を植物原料液として使用して製造した。麦汁は、粉砕された大麦麦芽と50℃の温水とを混合し、65℃に加温して保持することによって糖化した後、この糖化液から穀皮を除去し、ホップを加えて煮沸したものを用いた。
また、難消化性デキストリンとしては、「パインファイバー」(登録商標)(松谷化学工業株式会社製)を用い、pHの調整には、乳酸を用いた。
【0055】
官能試験は、「香り評価」及び「総合評価」の2種の評価項目について行った。「香り評価」の項目については、ビール様の香りの強さを評価し、「総合評価」の項目については、香味の調和の有無を一つの指標として、ビールテイスト飲料の香味として適しているか否かを評価した。
各サンプルの評価は、サンプルを試飲した8名のパネリストに下記評価基準に則って1〜5点の5段階評価で各評価項目について独立点数付けさせ、項目毎に平均値を算出することによって数値化した。
【0056】
(香り評価)
5点:極めて強いビール様の香りがある。
4点:強いビール様の香りがある。
3点:ビール様の香りがある。
2点:弱いビール様の香りがある。
1点:全くビール様の香りがない。
【0057】
(総合評価)
5点:非常に好ましい香味である。
4点:かなり好ましい香味である。
3点:好ましい香味である。
2点:許容できる香味である。
1点:不適な香味である。
【0058】
はじめに、発泡性ビールテイスト飲料において、飲料中における難消化性デキストリンの含有量が、飲料の香りや香味に与える影響を評価した。
評価対象サンプルは、麦汁由来のエキス成分の終濃度が3.0w/v%となるように植物原料液を使用して調製し、難消化性デキストリンの含有量が表2に示される濃度となるサンプル(No.1−1〜No.1−5に係るサンプル)をそれぞれ調製した。
なお、各サンプルのガス圧は、0.147MPa(2.00kg/cm
2)となるように炭酸水を加えることによって調整した。
調製された各サンプルのpHは、約4.9であった。
【0059】
表2に、No.1−1〜No.1−5に係る各サンプルについて、官能試験の結果を示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示すように、「香り評価」の項目では、難消化性デキストリンの含有量が0.00w/v%から3.00w/v%に増大するにしたがって、評価が向上した。難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%以上であるNo.1−2〜No.1−5に係る各サンプルでは、紙臭が感じられ、ビール様の香りが増強されているとの評価が得られた。
また、「総合評価」の項目では、同様に、難消化性デキストリンの含有量が0.00w/v%から3.00w/v%に増加するにしたがって、評価が向上した。難消化性デキストリンの含有量が0.50w/v%以上であるNo.1−2〜No.1−5に係る各サンプルでは、許容できる香味を超える好ましい香味が感じられ、全体として香味が良好であるとの評価が得られた。
【0062】
以上の結果から、難消化性デキストリンの含有量が増加すると、未発酵の発泡性ビールテイスト飲料においてビール様の香りや香味が向上し得ることが認められた。
【0063】
次に、発泡性ビールテイスト飲料において、pHが、飲料の香りや香味に与える影響を評価した。
【0064】
評価対象サンプルは、麦汁由来のエキス成分の終濃度が3.0w/v%となるように植物原料液を使用して調製し、難消化性デキストリンの含有量が1.50w/v%となるように添加し、pHが表3に示される値となるサンプル(No.2−1〜No.2−6に係るサンプル)をそれぞれ調製した。
なお、各サンプルのpHは、乳酸水溶液を添加することによって調整した。
また、各サンプルのガス圧は、0.147MPa(2.00kg/cm
2)となるように炭酸水を加えることによって調整した。
【0065】
表3に、No.2−1〜No.2−6に係る各サンプルについて、官能試験の結果を示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示すように、「香り評価」の項目では、pHが3.5以上の範囲において、紙臭が感じられ、ビール様の香りが維持されているとの評価が得られた。
また、「総合評価」の項目では、No.2−3に係るサンプルにおいて好ましい香味が得られ、最も高い評価が得られた。評価は、pHが4.0付近のNo.2−3に係るサンプルをピークとして、No.2−2及びNo.2−4に係る各サンプルにおいても比較的高く、pHが3.5以上の範囲においては、好ましい香味であるとの評価が多く、発泡性ビールテイスト飲料全体として香味が良好であると判断された。
【0068】
以上の結果から、pHが3.5以上5.0以下であると、難消化性デキストリンによってもたらされるビール様の香りが維持されると共に、ビールテイスト飲料としての香味の調和も良好となり、ビール様の香味が向上した飲料となることが認められた。
【0069】
次に、発泡性ビールテイスト飲料において、ガス圧が、飲料の香りや香味に与える影響を評価した。
【0070】
評価対象サンプルは、麦汁由来のエキス成分の終濃度が3.0w/v%となるように植物原料液を使用して調製し、難消化性デキストリンの含有量が1.50w/v%となるように添加し、各サンプルのガス圧が表4に示される値となるように炭酸水を加えることによってサンプル(No.3−1〜No.3−7に係るサンプル)をそれぞれ調製した。
調製された各サンプルのpHは、約4.9であった。
【0071】
表4に、No.3−1〜No.3−7に係る各サンプルについて、官能試験の結果を示す。
【0072】
【表4】
【0073】
表4に示すように、「香り評価」の項目では、ガス圧が0.000MPa(0.00k
g/cm
2)から0.294MPa(3.00kg/cm
2)に増大するにしたがって、評価が向上した。ガス圧が0.147MPa(1.50kg/cm
2)以上であるNo.3−3〜No.3−7に係る各サンプルでは、紙臭が感じられ、ビール様の香りが増強されているとの評価が得られた。
また、「総合評価」の項目では、同様に、ガス圧が0.000MPa(0.00kg/cm
2)から0.294MPa(3.00kg/cm
2)に増大するにしたがって、評価が向上した。ガス圧が0.147MPa(1.50kg/cm
2)以上であるNo.3−3〜No.3−7に係る各サンプルでは、好ましい香味であるとの評価が多く、発泡性ビールテイスト飲料全体として香味が良好であると判断された。
【0074】
以上の結果から、ガス圧が増大すると、難消化性デキストリンによってもたらされるビール様の香りや香味がさらに向上し得ることが認められた。