【課題】本発明は、低温下で、排ガス、特に排ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を効果的に処理できる排ガス浄化用触媒およびその製造方法を提供することを目的とする。
を含む担体に、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)およびオスミウム(Os)からなる群より選択される1種以上の触媒成分を担持させてなる触媒であって、前記金属酸化物の粒子径が10nm未満である、排ガス浄化用触媒によって達成される。
触媒成分の化合物の水溶液を、前記酸化アルミニウムと前記金属酸化物とを含む担体に含浸させた後、前記含浸して得られた担体を焼成して、触媒成分担持担体を得る工程をさらに含む、請求項7に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
前記触媒成分担持担体、または前記触媒成分担持担体および耐火性無機酸化物(担持成分)を含むスラリーを調製し、前記スラリーを三次元構造体にコートする工程をさらに含む、請求項7または8に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の形態としては、Al
2O
3と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ネオジム(Nd
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)および酸化チタン(TiO
2)からなる群より選択される1種以上の金属酸化物と、を含む担体に、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)およびオスミウム(Os)からなる群より選択される1種以上の触媒成分を担持させてなる触媒であって、前記金属酸化物の粒子径が10nm未満である排ガス浄化用触媒が提供される(以下、本発明の排ガス浄化用触媒を、単に「触媒」とも称する場合がある。)。
【0013】
すなわち、本発明の第1の排ガス浄化用触媒は、Al
2O
3、特定の金属酸化物(以下、単に「金属酸化物」と称する場合もある。)および特定の触媒成分(以下、単に「触媒成分」と称する場合もある。)が必須に存在する。このうち、触媒成分は貴金属であり、貴金属には酸化活性があるため、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)や、ガソリンまたは軽油や重油等のディーゼルエンジンの燃料の未燃焼成分である炭化水素(HC)を、無害な二酸化炭素、水、窒素などに変換して、排ガスを浄化する。
【0014】
本発明の第1の排ガス浄化用触媒は、低温下でも、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を効率よく浄化でき、特に、ディーゼルエンジンからの排ガスの浄化に有効な排ガス浄化用酸化触媒として好適に用いられる。
【0015】
上記利点が達成できるメカニズムは不明であるが、以下のように推察される。なお、本発明は、下記推論によって何ら制限されるものではない。
【0016】
本発明において、Al
2O
3と金属酸化物とは、混合物の形態であり、それぞれの一次粒子がナノオーダーで混合された混合物である。Al
2O
3と金属酸化物は、一次粒子のサイズが相違する。Al
2O
3と金属酸化物とを含む担体において、金属酸化物が特定の含量で含まれる場合、金属酸化物が10nm未満の一次粒子径を有する。すなわち、Al
2O
3と金属酸化物との質量比が、99.5:0.5〜60:40である場合、金属酸化物が10nm未満の一次粒子径を有し、好ましくは非常に微細な結晶構造またはアモルファス(非晶質)構造を有する。Al
2O
3は、好ましくは10〜100nmの一次粒子径を有する。
【0017】
本発明において、上述のように、Al
2O
3と金属酸化物とは、複合酸化物を形成せず、ナノオーダーの混合物の形態である。これは、Al
2O
3と共に含有される金属酸化物が、Al
2O
3との複合酸化物を形成しない性質を有するため、それらの酸化物からなる複合酸化物の一次粒子はほとんど存在せず、それぞれの単独酸化物の一次粒子が存在することとなる。すなわち、本発明の第1の排ガス浄化用触媒は、Al
2O
3の一次粒子と、金属酸化物の一次粒子とが分散された混合物である。当該混合物の形態は、Al
2O
3の一次粒子の間に、微細な金属酸化物の一次粒子が入り込んだ形態であると推測される。すなわち、微細な金属酸化物がAl
2O
3の一次粒子間に埋まった形態である。このとき、金属酸化物は、上述したように、一次粒子径が10nm未満であり、好ましくは非常に微細な結晶構造またはアモルファス(非晶質)構造を有する。
【0018】
本発明の第1の排ガス浄化用触媒において、Al
2O
3と金属酸化物は、複合酸化物を形成せずに、金属酸化物の一次粒子と、Al
2O
3の一次粒子とが、それぞれの一次粒子間に介在しているため、単独酸化物の一次粒子の粒成長の進行が抑制され、表面積および細孔容積の低下が十分に抑制され、担持させる触媒成分の分散性を十分に保持することができると考えられる。その結果、該担体を備えた触媒は、高温条件下で用いられても触媒活性が維持され、低温でも排ガスを浄化することができると推定される。
【0019】
以上のように、Al
2O
3と金属酸化物とが複合酸化物を形成するのではなく、Al
2O
3と10nm未満の一次粒子径を有する金属酸化物とが、特定の混合比(質量比)で含有されたナノオーダーの混合物によって、耐久性の優れた排ガス浄化用触媒が得られる。本発明の酸化触媒は、高温条件下で用いられても触媒活性が維持され、熱履歴が長くなっても、排ガスを効率よく浄化(酸化)することができる。すなわち、貴金属が、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)やガソリンまたは軽油や重油等のディーゼルエンジンの燃料の未燃焼成分である炭化水素(HC)、特に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)に効果的に作用して、より良好に排ガスを低温下でも浄化することができる。
【0020】
したがって、本発明の方法によって製造される第1の酸化触媒は、耐久性が高く、低温下でも、排ガス、特に排ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を効率よく浄化できる。このため、本発明に係る第1の酸化触媒は、高温条件下で用いられている場合でも、ディーゼルエンジンの排ガスの低温下での浄化に特に有効である。
【0021】
なお、本発明の好ましい第1の形態としては、Al
2O
3と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ネオジム(Nd
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)および酸化チタン(TiO
2)からなる群より選択される1種以上の金属酸化物と、を含む担体に、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)およびオスミウム(Os)からなる群より選択される1種以上の触媒成分を担持させてなる触媒であって、前記金属酸化物の粒子径が10nm未満である排ガス浄化用触媒が提供される。また、酸化アルミニウムと金属酸化物との質量比が、99.5:0.5〜70:30であるのが好ましい。
【0022】
本発明の第2の形態としては、60〜99.49質量部の酸化アルミニウム(Al
2O
3)と、0.5〜20質量部の酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、0.01〜10質量部の酸化ケイ素(SiO
2)および0.01〜10質量部の酸化チタン(TiO
2)からなる群より選択される1種以上の金属酸化物と、から構成される(酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムおよび金属酸化物の合計質量は100質量部である)担体に、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)およびオスミウム(Os)からなる群より選択される1種以上の触媒成分を担持させてなる排ガス浄化用触媒が提供される。
【0023】
すなわち、本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、Al
2O
3、ZrO
2、特定の金属酸化物(以下、金属酸化物のうち、SiO
2および/またはTiO
2を、「第2の金属酸化物」と称する場合もある。)および特定の触媒成分が必須に存在する。このうち、触媒成分は、上述したように、貴金属であり、貴金属には酸化活性があるため、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)や、ガソリンまたは軽油や重油等のディーゼルエンジンの燃料の未燃焼成分である炭化水素(HC)を、無害な二酸化炭素、水、窒素などに変換して、排ガスを浄化する。
【0024】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、低温下でも、一酸化炭素(CO)を効率よく浄化でき、さらには硫黄成分による被毒後においても、低温下で、一酸化炭素(CO)を効率よく浄化できるため、特に、ディーゼルエンジンからの排ガスの浄化に有効な排ガス浄化用酸化触媒として好適に用いられる。
【0025】
また、本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、有害物質、具体的には、たとえば、一酸化炭素、炭化水素、および硫黄酸化物(SOx)を含む排ガスの処理に用いるものである。すなわち、本発明は、有害物質(たとえば、一酸化炭素、炭化水素、および硫黄酸化物(SOx))を含む排ガスを効率よく浄化処理する方法を提供する。また、本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、硫黄成分被毒による触媒性能の低下が抑制されることから、硫黄酸化物(SOx)、特にSO
2を含む排ガスの処理に好適に用いられる。
【0026】
本発明の第2の触媒は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)および酸化ジルコニウム(ZrO
2)と共に、酸化ケイ素(SiO
2)および酸化チタン(TiO
2)からなる群より選択される1種以上の金属酸化物を含有することで、触媒性能の耐熱性を向上させ、燃料中の硫黄(サルファー)成分による被毒から触媒性能を保護する効果を付与することができる。上記利点が達成できるメカニズムは不明であるが、以下のように推察される。なお、本発明は、下記推論によって何ら制限されるものではない。
【0027】
ジルコニア−アルミナ(ZrO
2−Al
2O
3)に、シリカ(SiO
2)および/またはチタニア(TiO
2)を添加することで、基材の酸性度が上がることが考えられる。排ガス中の主な硫黄成分であるSOxは酸性ガスであるため、酸性度が相対的に高い基材を用いることで、基材とSOxとの親和性を低下させることができる。これにより触媒が硫黄成分による被毒を受けにくくなり、触媒性能が維持される。よって、ジルコニア−アルミナに、シリカおよび/またはチタニアを添加することにより、触媒性能を保護する効果を付与することができると推測される。シリカおよび/またはチタニアの添加量が特定の範囲未満または超える場合、それぞれの粗大な粒子が生成してしまい、触媒性能が低下する。
【0028】
本発明において、Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物は、混合物の形態であり、それぞれの一次粒子がナノオーダーで混合された混合物である。Al
2O
3と、ZrO
2および第2の金属酸化物とは、一次粒子のサイズが相違する。Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物を含む担体において、Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物が特定の含量で含まれる場合、ZrO
2は10nm未満の一次粒子径を有し、好ましくは非常に微細な結晶構造またはアモルファス(非晶質)構造を有する。さらに好ましくは、第2の金属酸化物が10nm未満の一次粒子径を有し、特に好ましくは、第2の金属酸化物が非常に微細な結晶構造またはアモルファス(非晶質)構造を有する。Al
2O
3は、好ましくは10〜100nmの一次粒子径を有する。
【0029】
本発明において、上述のように、Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物は、複合酸化物を形成せず、ナノオーダーの混合物の形態である。これは、Al
2O
3と共に含有されるZrO
2および第2の金属酸化物が、Al
2O
3との複合酸化物を形成しない性質を有するため、それらの酸化物からなる複合酸化物の一次粒子はほとんど存在せず、それぞれの単独酸化物の一次粒子が存在することとなる。すなわち、本発明の第2の形態の排ガス浄化用触媒は、Al
2O
3の一次粒子と、ZrO
2の一次粒子と、第2の金属酸化物の一次粒子とが分散された混合物である。当該混合物の形態は、Al
2O
3の一次粒子の間に、微細なZrO
2の一次粒子と、微細な第2の金属酸化物の一次粒子とが入り込んだ形態であると推測される。すなわち、微細なZrO
2および第2の金属酸化物が、Al
2O
3の一次粒子間に埋まった形態である。このとき、ZrO
2は、上述したように、一次粒子径が10nm未満であり、好ましくは非常に微細な結晶構造またはアモルファス(非晶質)構造を有する。さらに好ましくは、第2の金属酸化物は、一次粒子径が10nm未満であり、特に好ましくは非常に微細な結晶構造またはアモルファス(非晶質)構造を有する。
【0030】
本発明の排ガス浄化用触媒において、Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物は、複合酸化物を形成せずに、第2の金属酸化物の一次粒子と、ZrO
2の一次粒子と、Al
2O
3の一次粒子とが、それぞれの一次粒子間に介在しているため、単独酸化物の一次粒子の粒成長の進行が抑制され、表面積および細孔容積の低下が十分に抑制され、担持させる触媒成分の分散性を十分に保持することができると考えられる。その結果、該担体を備えた触媒は、高温条件下で用いられても触媒活性が維持され、低温でも排ガスを浄化することができると推定される。
【0031】
以上のように、Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物が複合酸化物を形成するのではなく、Al
2O
3と、10nm未満の一次粒子径を有するZrO
2と、第2の金属酸化物とが、特定の混合比(質量比)で含有されたナノオーダーの混合物によって、耐久性の優れた排ガス浄化用触媒が得られる。本発明の酸化触媒は、高温条件下で用いられても触媒活性が維持され、熱履歴が長くなっても、硫黄被毒後であっても、排ガスを効率よく浄化(酸化)することができる。すなわち、貴金属が、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)やガソリンまたは軽油や重油等のディーゼルエンジンの燃料の未燃焼成分である炭化水素(HC)、特に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)に効果的に作用して、より良好に排ガスを低温下でも浄化することができる。
【0032】
したがって、本発明の方法によって製造される第2の酸化触媒は、耐久性が高く、硫黄被毒後であっても、低温下で、排ガス、特に排ガス中の一酸化炭素(CO)を効率よく浄化できる。このため、本発明に係る酸化触媒は、高温条件下で用いられている場合や、触媒が硫黄被毒される場合でも、ディーゼルエンジンの排ガスの低温下での浄化に特に有効である。
【0033】
本発明のAl
2O
3と金属酸化物との一次粒子がナノオーダーで混合された混合物を、以下、「第1の酸化物混合体」、と称する場合もある。
【0034】
本発明のAl
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物の一次粒子がナノオーダーで混合された混合物を、以下、「第2の酸化物混合体」と称する場合もある。
【0035】
また、第1の酸化物混合体と、第2の酸化物混合体とを、まとめて、単に「酸化物混合体」とも称する。
【0036】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の構成要件及び実施の形態等について以下に詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0037】
まず、以下に本発明の第1の形態および第2の形態の排ガス浄化用触媒の構成成分について述べる。
【0038】
<排ガス浄化用触媒>
1.第1の酸化物混合体
本発明の第1の排ガス浄化用触媒は、Al
2O
3および金属酸化物からなる第1の酸化物混合体を含む。第1の酸化物混合体(Al
2O
3および金属酸化物)は、好ましい形態としては、触媒成分の担体として用いられる。当該担体としては、第1の酸化物混合体(Al
2O
3および金属酸化物)以外に他の成分を含んでいてもよいが、第1の酸化物混合体(Al
2O
3および金属酸化物)のみから構成されることが好ましい。また、本発明において、第1の酸化物混合体は、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0039】
本発明の排ガス浄化用触媒は、第1の酸化物混合体として金属酸化物を含む。本発明で用いられうる第1の金属酸化物としては、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ネオジム(Nd
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)および酸化チタン(TiO
2)からなる群より選択される1種以上であり、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、Al
2O
3とのナノオーダー混合物の形成しやすさという観点から、ZrO
2、Y
2O
3が好ましく、ZrO
2がより好ましい。
【0040】
また、本発明の触媒の好ましい形態としては、酸化ジルコニウム(ZrO
2)を必須で含む。すなわち、金属酸化物が、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、または酸化ジルコニウム(ZrO
2)と、酸化セリウム(CeO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ネオジム(Nd
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)および酸化チタン(TiO
2)からなる群より選択される1種以上との混合物であるのが好ましい。
【0041】
また、本発明の触媒の他の好ましい形態としては、酸化ジルコニウム(ZrO
2)と共に、酸化セリウム(CeO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ネオジム(Nd
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)および酸化チタン(TiO
2)からなる群より選択される1種以上の金属酸化物を含有する。当該形態により、触媒性能の耐熱性を向上させたり、燃料中の硫黄(サルファー)分による被毒から触媒性能を保護する効果を付与することができる。
【0042】
本発明の排ガス浄化用触媒において、第1の酸化物混合体(Al
2O
3および金属酸化物)におけるAl
2O
3と金属酸化物との質量比は、酸化物基準で、99.5:0.5〜60:40であるのが好ましく、99.5:0.5〜70:30がより好ましく、99:1〜80:20がさらに好ましく、98:2〜85:15が特に好ましく、95:5〜90:10がもっとも好ましい。金属酸化物が0.5質量%未満の場合は、触媒性能を向上させる効果が十分得られにくく、30質量%を超える場合は、金属酸化物の量が触媒性能の向上に寄与しないため、経済的でない。このような比率でそれぞれの酸化物を含有することにより、それぞれの酸化物の一次粒子が隣接し難い傾向となる。
【0043】
本発明の第1の排ガス浄化用触媒において、第1の酸化物混合体における金属酸化物は、10nm未満の粒子径を有する。好ましくは9nm未満、より好ましくは7nm未満、さらに好ましくは6nm未満、特に好ましくは5nm未満である。金属酸化物の粒子径の下限は、好ましくは0.3nmである。粒径が10nm未満の場合、Al
2O
3の一次粒子間での金属酸化物の分散性が向上して、耐久性が向上する。
【0044】
なお、本明細書中、金属酸化物の粒子径は、後述する実施例の粉末X線回折(XRD)分析によりシェラーの式を用いて求められる。ここで、粒子径5nm未満とは、粉末X線回折(XRD)分析により観測できないサイズを意味する。
【0045】
また、本発明の第1の排ガス浄化用触媒において、好ましい形態としては、金属酸化物が5nm未満であり、5nm以上の金属酸化物を含まない。すなわち、粉末X線分析において、金属酸化物に由来するピークが観測されないことが特に好ましい。
【0046】
上述したように、第1の酸化物混合体において、金属酸化物は、Al
2O
3の一次粒子内に金属が置換もしくは侵入しない金属酸化物であり、換言すると、Al
2O
3と共に複合酸化物を形成しない金属酸化物である。よって、本発明の金属酸化物は、Al
2O
3の一次粒子とは別に一次粒子を形成するため、Al
2O
3と共に複合酸化物の一次粒子を形成することはない。
【0047】
本発明の排ガス浄化用触媒において、第1の酸化物混合体におけるAl
2O
3の一次粒子の粒子径(以下、一次粒子径とも称する。)は、好ましくは10〜100nm、より好ましくは10〜70nm、さらに好ましくは10〜50nm、特に好ましくは10〜30nmである。本発明において、一次粒子径が10〜100nmの場合、金属酸化物が存在し得るAl
2O
3一次粒子の間隙が十分な量存在するため好ましい。なお、Al
2O
3の粒子径は、透過型電子顕微鏡で測定することができる。
【0048】
本発明の第1の排ガス浄化用触媒において、好ましい形態としては、Al
2O
3と金属酸化物とが、仕込み比の割合で二次粒子を形成する。本発明において、金属酸化物は非常に微細であるため、酸化物混合体(Al
2O
3と金属酸化物)の二次粒子径は、好ましくは10〜100nm、より好ましくは10〜70nm、さらに好ましくは10〜50nm、特に好ましくは10〜30nmである。
【0049】
本発明の第1の酸化物混合体(Al
2O
3および金属酸化物)のBrunauer−Emmett−Teller(以下、「BET」と称する。)比表面積は、好ましくは10〜500m
2/g、より好ましくは50〜400m
2/g、さらに好ましくは80〜380m
2/g、特に好ましくは100〜350m
2/gである。
【0050】
第1の酸化物混合体の使用量(担持量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、第1の酸化物混合体の使用量(担持量;酸化物換算)は、触媒(三次元構造体)1リットル当たり、好ましくは0.1〜500g、より好ましくは1〜300g、さらに好ましくは10〜200gの量で、用いることができる。このような範囲であれば、有害成分を十分除去(浄化)しうる。なお、第1の酸化物混合体を2種以上組み合わせて使用する場合には、第1の酸化物混合体の合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0051】
第1の酸化物混合体(Al
2O
3および金属酸化物)は、後述するように、Alの水溶性化合物と、Zr、Ce、Y、Nd、SiおよびTiからなる群より選択される1種以上の金属の水溶性化合物(たとえば、金属酸化物がZrO
2の場合、Zrの水溶性化合物)と、を含む溶液に、アルカリ性溶液を添加して混合し、Al
2O
3前駆体および金属酸化物前駆体からなる沈殿である共沈生成物(酸化物混合体の前駆体)を析出(共沈)させる(共沈工程)ことで得られる。
【0052】
2.第2の酸化物混合体
本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物からなる第2の酸化物混合体を含む。第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)は、好ましい形態としては、触媒成分の担体として用いられる。当該担体としては、第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)以外に他の成分を含んでいてもよいが、第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)のみから構成されることが好ましい。また、本発明において、第2の酸化物混合体は、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0053】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、第2の酸化物混合体として酸化ケイ素(SiO
2)および酸化チタン(TiO
2)からなる群より選択される1種以上の第2の金属酸化物を含み、これらのうち1種を単独でまたは2種を組み合わせて用いることができる。Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物から構成される担体中に、SiO
2またはTiO
2を単独で用いる場合は0.01〜10質量部、SiO
2およびTiO
2を併用する場合は、それぞれが0.01〜10質量部ずつ含むことができる。
【0054】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒において、第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)におけるそれぞれの含有量は、酸化物混合体100質量部中、酸化物基準で、Al
2O
3が60〜99.49質量部、ZrO
2が0.5〜20質量部、第2の金属酸化物が0.01〜20質量部(SiO
2が0.01〜10質量部および/またはTiO
2が0.01〜10質量部)であり、Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物の合計質量は100質量部である。このような比率でそれぞれの酸化物を含有することにより、それぞれの酸化物の一次粒子が隣接し難い傾向となる。
【0055】
また、それぞれの酸化物の好ましい含有量としては、以下である。
【0056】
第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および金属酸化物)におけるAl
2O
3の含有量は、酸化物混合体100質量部中、酸化物基準で、60〜99.49質量部、好ましくは69〜99.5質量部、より好ましくは70〜99質量部、さらに好ましくは79〜97質量部、特に好ましくは84〜95質量部、もっとも好ましくは89〜94.9質量部である。Al
2O
3が60質量部未満の場合はジルコニアおよび第2の金属酸化物の含有量が多すぎるため、これらを微細な粒子、またはアモルファス状に存在させることが難しく、99.49質量部を超える場合は十分な量のジルコニアを含有させる事が出来ず、耐熱性が低下する。
【0057】
第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)におけるZrO
2の含有量は、酸化物混合体100質量部中、酸化物基準で、0.5〜20質量部、好ましくは1〜18質量部、より好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜12質量部、特に好ましくは5〜10質量部である。ZrO
2が0.5質量部未満の場合は、触媒性能を向上させる効果が十分得られにくく、20質量%を超える場合は、ZrO
2の量が触媒性能の向上に寄与しないため、経済的でない。
【0058】
第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)におけるSiO
2の含有量は、酸化物混合体100質量部中、酸化物基準で、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部、より好ましくは0.05〜7質量部、さらに好ましくは0.08〜6質量部、特に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0059】
第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)におけTiO
2の含有量は、酸化物混合体100質量部中、酸化物基準で、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜9質量部、より好ましくは0.1〜7質量部、さらに好ましくは0.25〜5質量部、特に好ましくは0.5〜2.5質量部である。
【0060】
第2の金属酸化物(SiO
2、TiO
2)が、それぞれ0.01質量部未満の場合は、触媒性能を向上させる効果が十分得られにくく、10質量部を超える場合は、金属酸化物の量が触媒性能の向上に寄与しないため、経済的でない。このような比率でそれぞれの酸化物を含有することにより、それぞれの酸化物の一次粒子が隣接し難い傾向となる。
【0061】
また、本発明の第2の酸化物混合体において、SiO
2およびTiO
2を併用する場合、その含有量の合計は、酸化物混合体100質量部中、好ましくは0.02〜20質量部、より好ましくは0.03〜15質量部、さらに好ましくは0.05〜12質量部、特に好ましくは0.08〜10質量部である。
【0062】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒において、第2の酸化物混合体におけるZrO
2は、10nm未満の粒子径を有する。好ましくは9nm未満、より好ましくは7nm未満、さらに好ましくは6nm未満、特に好ましくは5nm未満である。第2の金属酸化物の粒子径の下限は、好ましくは0.3nmである。粒径が10nm未満の場合、Al
2O
3の一次粒子間での金属酸化物の分散性が向上して、耐久性が向上する。
【0063】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒において、第2の酸化物混合体における第2の金属酸化物(SiO
2、TiO
2)は、10nm未満の粒子径を有する。好ましくは9nm未満、より好ましくは7nm未満、さらに好ましくは6nm未満、特に好ましくは5nm未満である。第2の金属酸化物の粒子径の下限は、好ましくは0.3nmである。粒径が10nm未満の場合、Al
2O
3の一次粒子間での金属酸化物の分散性が向上して、耐久性が向上する。
【0064】
なお、ZrO
2および第2の金属酸化物の粒子径は、後述する実施例の粉末X線回折(XRD)分析によりシェラーの式を用いて求められる。ここで、粒子径5nm未満とは、粉末X線回折(XRD)分析により観測できないサイズを意味する。
【0065】
また、本発明の第2の排ガス浄化用触媒において、好ましい形態としては、ZrO
2の粒子径が5nm未満であり、または第2の金属酸化物の粒子径が5nm未満であり、より好ましくは、ZrO
2および第2の金属酸化物の粒子径がともに5nm未満であり、5nm以上のZrO
2および第2の金属酸化物を含まない。すなわち、粉末X線分析において、ZrO
2および第2の金属酸化物に由来するピークが観測されないことが特に好ましい。
【0066】
上述したように、第2の酸化物混合体において、ZrO
2および第2の金属酸化物は、Al
2O
3の一次粒子内に金属が置換もしくは侵入しないものであり、換言すると、Al
2O
3と共に複合酸化物を形成しないものである。よって、本発明のZrO
2および第2の金属酸化物は、Al
2O
3の一次粒子とは別に一次粒子を形成するため、ZrO
2と第2の金属酸化物とが、それぞれ、Al
2O
3と共に複合酸化物の一次粒子を形成することはない。また、本明細書中、第2の酸化物混合体において、粒子径が10nmの金属酸化物とは、ZrO
2、SiO
2またはTiO
2のうち、少なくとも1種が10nm未満であることを意味する。好ましくはZrO
2が10nm未満であり、より好ましくは含有される金属酸化物(ZrO
2と、SiO
2およびTiO
2からなる群から選択される少なくとも1種以上と)が10nm未満である。
【0067】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒において、第2の酸化物混合体におけるAl
2O
3の一次粒子の粒子径(以下、一次粒子径とも称する。)は、好ましくは10〜100nm、より好ましくは10〜70nm、さらに好ましくは10〜50nm、特に好ましくは10〜30nmである。本発明において、一次粒子径が10〜100nmの場合、第2の金属酸化物が存在し得るAl
2O
3一次粒子の間隙が十分な量存在するため好ましい。なお、Al
2O
3の粒子径は、透過型電子顕微鏡で測定することができる。
【0068】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒において、好ましい形態としては、Al
2O
3とZrO
2と第2の金属酸化物とが、仕込み比の割合で二次粒子を形成する。本発明において、ZrO
2と第2の金属酸化物とは非常に微細であるため、第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)の二次粒子径は、好ましくは10〜100nm、より好ましくは10〜70nm、さらに好ましくは10〜50nm、特に好ましくは10〜30nmである。
【0069】
本発明の第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)のBrunauer−Emmett−Teller(以下、「BET」と称する。)比表面積は、好ましくは10〜500m
2/g、より好ましくは50〜400m
2/g、さらに好ましくは80〜380m
2/g、特に好ましくは100〜350m
2/gである。
【0070】
第2の酸化物混合体の使用量(担持量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、第2の酸化物混合体の使用量(担持量;酸化物換算)は、触媒(三次元構造体)1リットル当たり、好ましくは0.1〜500g、より好ましくは1〜300g、さらに好ましくは10〜200gの量で、用いることができる。このような範囲であれば、有害成分を十分除去(浄化)しうる。なお、酸化物混合体を2種以上組み合わせて使用する場合には、酸化物混合体の合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0071】
第2の酸化物混合体(Al
2O
3、ZrO
2および第2の金属酸化物)は、後述するように、Alの水溶性化合物およびZrの水溶性化合物を含む溶液、またはAlの水溶性化合物、Zrの水溶性化合物およびTiの水溶性化合物を含む溶液を、アルカリ性溶液、またはSiの水溶性化合物を含むアルカリ性溶液に添加して混合し、Al
2O
3前駆体、ZrO
2前駆体および第2の金属酸化物前駆体からなる沈殿である共沈生成物(第2の酸化物混合体の前駆体)を析出(共沈)させる(共沈工程)ことで得られる。
【0072】
3.触媒成分
本発明の排ガス浄化用触媒は、触媒成分を含む。以下、触媒成分を、「貴金属」と称する場合もある。
【0073】
本発明で用いられる触媒成分は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)およびオスミウム(Os)からなる群より選択される1種以上である。これらの触媒成分は、単独で使用されてもあるいは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。これらのうち、好ましくは、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムが使用され、白金、パラジウム、ロジウムがより好ましい。これらのうち、触媒成分が、白金、または白金およびパラジウムであり、白金とパラジウムの質量比が1:0〜1:1であるのが好ましい。また、高価な白金の使用量を減らしても高い触媒性能が得られるため、白金およびパラジウムを併用するのがさらに好ましい。白金およびパラジウムを併用する場合は、白金とパラジウムの質量比が1:1〜40:1であるのが好ましい。より好ましくは1:1〜30:1であり、さらに好ましくは1:1〜20:1である。また、特に好ましくは1:1〜4:1であり、もっとも好ましくは1:1〜2:1である。これよりパラジウムが少ないと添加する効果がほとんど得られず、またこれよりも多くても、それ以上の効果が得られない。
【0074】
また、白金およびパラジウムを併用する場合は、白金とパラジウムとが合金化したものが好ましい。ここで、合金化とは、電子顕微鏡下で、白金とパラジウムとが、同一粒子中に存在することを意味する。合金化する方法としては、特に制限されないが、たとえば、白金を含む化合物とパラジウムを含む化合物とを、上記範囲になるように混合したものを用いればよい。すなわち、白金およびパラジウムを含む溶液に担体を含浸させることで、白金およびパラジウムが合金化されたものが担体に担持される、後述の実施例の方法で調製されたものが好ましい。
【0075】
触媒成分の使用量(担持量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、触媒成分の使用量(担持量;貴金属換算)は、触媒(三次元構造体)1リットル当たり、好ましくは0.01〜10g、より好ましくは0.3〜10gの量で、用いることができる。このような範囲であれば、有害成分を十分除去(浄化)しうる。なお、触媒成分を2種以上組み合わせて使用する場合には、触媒成分の合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0076】
4.その他の成分
本発明の第1および第2の排ガス浄化用触媒は、上記Al
2O
3、金属酸化物および触媒成分(貴金属)の化合物、またはAl
2O
3、ZrO
2、第2の金属酸化物および触媒成分(貴金属)の化合物に加えて、他の成分を含有してもよい。このような成分としては特に制限されないが、たとえば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素およびマンガン、鉄、銅、ケイ素、チタン、ジルコニウムならびにこれらの酸化物、ベータ型、ZSM−5型およびY型のゼオライトならびにこれらを鉄、銅やセリウムなどでイオン交換したものなどが挙げられる。また、上記成分の担持量は、特に制限されない。具体的には、各成分の使用量(担持量;酸化物換算)は、触媒(三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは0.1〜250g、より好ましくは0.1〜200g、さらに好ましくは1〜100gの量で、用いることができる。
【0077】
特に、本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、触媒(三次元構造体)に、さらに耐火性無機酸化物をそのままの形態で担持させるのが好ましい。以下、触媒(三次元構造体)にそのままの形態で担持される耐火性無機酸化物を、「耐火性無機酸化物(担持成分)」と称する。耐火性無機酸化物(担持成分)の担持時期は、特に制限されないが、金属酸化物担持後が好ましく、触媒成分担持後がより好ましい。たとえば、耐火性無機酸化物(担持成分)としては、通常、触媒担体として用いられるものであれば何れでもよく、たとえば、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナなどの活性アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化珪素(シリカ)などの単独酸化物、アルミナ−チタニア、ジルコニア−アルミナ、チタニア−ジルコニア、ゼオライト、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタン−アルミナなどの複合酸化物または微細混合物、およびこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ゼオライト、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリアなどの単独酸化物、シリカ−アルミナ、ランタン−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、セリア−ジルコニアなどの複合酸化物または微細混合物、およびこれらの混合物が使用される。より好ましくはゼオライトであり、さらに好ましくはβゼオライトである。ゼオライトは、炭化水素の吸着材であり、触媒が活性化する前の低温の時に排出される重質な炭化水素(HC)を吸着することができる。このとき、βゼオライトを用いる場合、シリカとアルミナのモル比(シリカ/アルミナ比)は、特に制限されないが、好ましくは15〜500、より好ましくは20〜250、さらに好ましくは25〜200であるものが特に好ましく用いられる。上記耐火性無機酸化物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0078】
耐火性無機酸化物(担持成分)の形態などは特に制限されないが、下記形態が好ましい。たとえば、耐火性無機酸化物(担持成分)のBET(Brunauer−Emmett−Teller)比表面積は、特に制限されないが、比表面積が大きいことが好ましい。好ましくは100〜650m
2/g、より好ましくは150〜600m
2/g、さらに好ましくは200〜550m
2/gである。また、耐火性無機酸化物粉末の平均粒径もまた、特に制限されないが、スラリーの均一性などを考慮すると、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜5μm、さらに好ましくは0.3〜3μmである。
【0079】
耐火性無機酸化物(担持成分)を含む場合、耐火性無機酸化物(担持成分)の使用量(担持量)は、触媒(たとえば、三次元構造体)1リットル(L)当たり、好ましくは1〜250g、より好ましくは10〜150g、さらに好ましくは15〜100gである。耐火性無機酸化物(担持成分)が当該範囲で含有される場合、重質な炭化水素の吸着剤としての性能とコストが見合う。なお、当該耐火性無機酸化物(担持成分)の担持量は、上述した担体としての第1または第2の酸化物混合体の担持量を含まず、別途、三次元構造体に担持させる耐火性無機酸化物の量である。
【0080】
<排ガス浄化用触媒の製造方法>
本発明の排ガス浄化用触媒を調製する方法としては、特に制限されないが、たとえば、つぎの方法がある。
【0081】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、Alの水溶性化合物と、Zr、Ce、Y、Nd、SiおよびTiからなる群より選択される1種以上の金属の水溶性化合物と、を含む溶液を、アルカリ性溶液に添加して混合し、共沈させて共沈生成物を得た後、前記共沈生成物を焼成して、前記酸化アルミニウムと前記金属酸化物とを含む担体を得る工程を含む。
【0082】
また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、触媒成分の化合物の水溶液を、前記Al
2O
3と前記金属酸化物とを含む担体に含浸させた後、前記含浸して得られた担体を焼成して、触媒成分担持担体を得る工程をさらに含んでもよい。
【0083】
また、さらに本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、触媒成分担持担体、または触媒成分担持担体および耐火性無機酸化物(担持成分)(好ましくはゼオライト)を含むスラリーを調製し、前記スラリーを三次元構造体にコートする工程を含んでいてもよい。
【0084】
1.第1または第2の酸化物混合体の製造方法
まず、本発明の酸化物混合体の製造方法を説明する。
【0085】
本発明において、酸化物混合体の好ましい製造方法としては、Alの水溶性化合物と、Zr、Ce、Y、Nd、SiおよびTiからなる群より選択される1種以上の金属の水溶性化合物と、を含む溶液を、アルカリ性溶液に添加して混合し、共沈させて共沈生成物を得た後(すなわち、酸化物混合体の前駆体を共沈させた後)、前記共沈生成物(前駆体)を焼成して、酸化物混合体(酸化アルミニウムと金属酸化物とを含む担体)を得る形態である。
【0086】
本発明の第1の酸化物混合体は、Al
2O
3と、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ネオジム(Nd
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)および酸化チタン(TiO
2)からなる群より選択される1種以上の金属酸化物と、を含めばよい。また、その製造方法は、ゾルゲル法、ゾルの混合法、機械的粉砕法など、その製造方法も特に制限されない。しかしながら、上述のような、一次粒子がナノオーダーで混合された混合物とするためには、共沈法で製造することが好ましい。
【0087】
すなわち、本発明の酸化物混合体は、Alの水溶性化合物と、Zr、Ce、Y、Nd、SiおよびTiからなる群より選択される1種以上の金属の水溶性化合物(たとえば、金属酸化物がZrO
2の場合、Zrの水溶性化合物)と、を含む溶液を、アルカリ性溶液に添加して混合し、Al
2O
3前駆体および金属酸化物前駆体からなる沈殿である共沈生成物(酸化物混合体の前駆体)を析出(共沈)させる(共沈工程)。
【0088】
また、本発明の第2の酸化物混合体は、Al
2O
3と、ZrO
2と、SiO
2およびTiO
2からなる群より選択される1種以上の金属酸化物と、を含めばよい。また、Al、Zr、TiおよびSiを同時に共沈法で製造してもよいし、AlおよびZrを共沈法で析出させて製造したものに、後からTiおよび/またはSiの水溶性化合物の水溶液を含浸させてもよい。しかし、Tiおよび/またはSiを微細な粒子、またはアモルファス状に存在させるためには同時に共沈法で製造することが好ましい。
【0089】
すなわち、本発明の第2の酸化物混合体は、Alの水溶性化合物およびZrの水溶性化合物を含む溶液、またはAlの水溶性化合物、Zrの水溶性化合物およびTiの水溶性化合物を含む溶液(以下、単に「塩溶液」と称する場合もある。)を、アルカリ性溶液またはSiの水溶性化合物を含むアルカリ性溶液に添加して混合し、Al
2O
3前駆体、ZrO
2前駆体および金属酸化物前駆体からなる沈殿である共沈生成物(酸化物混合体の前駆体)を析出(共沈)させる(共沈工程)。
【0090】
なお、Siの水溶性化合物(メタケイ酸ナトリウムなど)は、酸性溶液中では安定に存在しないが、アルカリ溶液中では安定に存在する。そのため、Siの水溶性化合物を用いる場合は、塩溶液をアルカリ性溶液に添加する前に、アルカリ性溶液にSiの水溶性化合物を溶解しておくか、AlおよびZr、またはAl、ZrおよびTiの塩溶液をアルカリ性溶液に添加して混合した後、Siの水溶性化合物を添加するのが好ましい。
【0091】
Alの水溶性化合物(Alの塩)としては、硫酸アルミニウム(硫酸塩)、硝酸アルミニウム(硝酸塩)、塩酸アルミニウム(塩酸塩)、酢酸アルミニウム(酢酸塩)などを用いることができ、硝酸アルミニウムが好ましい。さらに、たとえば硝酸アルミニウムの原料として、水酸化アルミニウムと硝酸と水とを混合して用いてもよい。なお、本発明では、上記Alの水溶性化合物は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0092】
Zr、Ce、Y、Nd、SiおよびTiからなる群より選択される金属の水溶性化合物(金属の塩)としては、たとえば、硫酸ジルコニル(硫酸塩)、硝酸ジルコニル(硝酸塩)、塩酸ジルコニル(塩酸塩)、酢酸ジルコニル(酢酸塩)、炭酸ジルコニル(炭酸塩)、塩化ジルコニル(塩化物)、水酸化ジルコニル(水酸化物)などのZrの塩;硫酸セリウム(硫酸塩)、硝酸セリウム(硝酸塩)、塩酸セリウム(塩酸塩)、酢酸セリウム(酢酸塩)、炭酸セリウム(炭酸塩)、塩化セリウム(塩化物)、水酸化セリウム(水酸化物)などのCeの塩;硫酸イットリウム(硫酸塩)、硝酸イットリウム(硝酸塩)、塩酸イットリウム(塩酸塩)、酢酸イットリウム(酢酸塩)、炭酸イットリウム(炭酸塩)、塩化イットリウム(塩化物)、水酸化イットリウム(水酸化物)などのYの塩;硫酸ネオジム(硫酸塩)、硝酸ネオジム(硝酸塩)、塩酸ネオジム(塩酸塩)、酢酸ネオジム(酢酸塩)、炭酸ネオジウム(炭酸塩)、塩化ネオジム(塩化物)、水酸化ネオジム(水酸化物)などのNdの塩;オルソケイ酸ナトリウム(Na
4SiO
4)、オルソケイ酸カリウム(K
2SiO
4)、メタケイ酸ナトリウム(Na
2SiO
3)、メタケイ酸カリウム(K
2SiO
3)、二ケイ酸ナトリウム(Na
2Si
2O
5)、二ケイ酸カリウム(K
2Si
2O
5)、四ケイ酸ナトリウム(Na
2SiO
9)、四ケイ酸カリウム(K
2SiO
9)、セスキケイ酸ナトリウム(3Na
2O・2SiO
2)、セスキケイ酸カリウム(3K
2O・2SiO
2)などのケイ酸塩(Siの塩);硫酸チタン(硫酸塩)、塩化チタン(塩化物)、チタンアルコキシドなどのTiの塩;などを用いることができる。これらのうち、Zrの金属の水溶性化合物(金属の塩)としては硝酸ジルコニルが好ましく、Siの金属の水溶性化合物(金属の塩)としてはメタケイ酸ナトリウムが好ましく、Tiの水溶性化合物(金属の塩)としては硫酸チタンが好ましい。なお、本発明では、上記金属の水溶性化合物は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0093】
上述のAlの水溶性化合物および金属の水溶性化合物(たとえば、Zrの水溶性化合物、Tiの水溶性化合物)を均一に溶解する溶媒としては、水、アルコールおよびこれらの混合物が使用できる。アルコールとしては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが用いられうる。溶媒中のAlの水溶性化合物および金属の水溶性化合物の濃度(含有量)は、特に制限されず、Al(Al
2O
3)や金属(金属酸化物)を担持させる量によって適宜選択できる。たとえば、溶液中のAlの水溶性化合物および金属の水溶性化合物の含有量が、それぞれ、0.01〜80質量%であるのが好ましい。
【0094】
そして、Alの水溶性化合物と、Zr、Ce、Y、Nd、SiおよびTiからなる群より選択される1種以上の金属の水溶性化合物を含む溶液(以下、単に「塩溶液」と称する場合もある。)を、アルカリ性溶液に添加することで、酸化物混合体の前駆体の沈殿が析出する。
【0095】
たとえば、Alの水溶性化合物およびZrの水溶性化合物、またはAlの水溶性化合物、Zrの水溶性化合物およびTiの水溶性化合物を含む溶液(塩溶液)を、アルカリ性溶液またはSiの水溶性化合物を含むアルカリ性溶液に添加することで、第2の酸化物混合体の前駆体の沈殿が析出する。
【0096】
アルカリ性溶液としては、アンモニア、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくは炭酸ナトリウムなどを溶解した水溶液またはアルコール溶液を用いることができる。アルカリ性溶液のなかで、焼成時に揮散するアンモニアもしくは炭酸アンモニウムを溶解した水溶液またはアルコール溶液がより好ましい。なお、アルカリ性溶液のpHは9以上であると、各酸化物前駆体の析出反応を促進するのでより好ましい。なお、各酸化物の前駆体は、各酸化物を構成する酸素以外の元素の水酸化物、炭酸塩もしくは硝酸塩などである。なお、アルカリ性溶液に含まれるSiの水溶性化合物の含有量は、0.01〜80質量%であるのが好ましい。
【0097】
アルカリ性溶液は、必要であれば、共沈工程中、pHを7〜10になるように、追加して添加される。当該アルカリ性溶液の添加量は、pHが7〜10になる程度の量である。共沈工程中、pHが、好ましくは8〜10になるのが好ましく、より好ましくは9〜10である。なお、Siの水溶性化合物を用いる際は、最終的に溶液のpHを、硝酸などを用いて中性付近(好ましくはpH5〜8、より好ましくは6〜8)に調整することで、酸化物前駆体を析出させる。
【0098】
アルカリ性溶液またはSiの水溶性化合物を含むアルカリ性溶液(以下、単に「アルカリ性溶液」とも称する。)は、上記塩溶液を添加し、短時間で高速に混合して酸化物混合体の前駆体を形成する。高速で混合することにより、溶液中のpHの微妙な差による各種酸化物前駆体の析出速度の差が解消される。そして、易溶性の酸化物前駆体も、難溶性の酸化物前駆体も同時に析出するため、均一な組成で各元素が分散した酸化物混合体の前駆体を形成することができる。また、混合は、5〜50℃で行うのが好ましい。なお、Siの水溶性化合物を含むアルカリ性溶液を用いた場合は、塩溶液を添加後、溶液のpHを、硝酸などを用いて中性付近(好ましくはpH5〜8、より好ましくは6〜8)に調整して、酸化物前駆体を析出させる。また、Siの水溶性化合物をアルカリ性溶液に添加する場合、塩溶液をアルカリ性溶液に添加して、得られた溶液のpHを硝酸などを用いて中性付近(好ましくはpH5〜8、より好ましくは6〜8)に調整することで、酸化物前駆体を析出させる。
【0099】
共沈して得られた酸化物混合体の前駆体を溶液から取り出し、十分に洗浄した後、50〜250℃、好ましくは70〜200℃、より好ましくは80〜150℃で、10分〜20時間、好ましくは3〜15時間乾燥させて、さらに、得られたものを、大気中、100〜1200℃、好ましくは200〜1100℃、より好ましくは300〜1000℃で、10分〜20時間、好ましくは3〜15時間焼成を行い、酸化物混合体を得る。また、大気中での焼成の前に、窒素ガスなどの不活性ガス気流中で仮焼してもよい。
【0100】
以上のように、その前駆体(Alの水溶性化合物と金属の水溶性化合物)を共沈させ、共沈したものを焼成することで、Al
2O
3および金属酸化物の酸化物混合体が得られる。金属酸化物が、Al
2O
3と固溶体を形成し難いために、当該方法が用いられうる。
【0101】
なお、以上のようにして得られた酸化物混合体としては、Al
2O
3/ZrO
2、Al
2O
3/CeO
2、Al
2O
3/Y
2O
3、Al
2O
3/Nd
2O
3、Al
2O
3/SiO
2、Al
2O
3/TiO
2などの2種の混合体、Al
2O
3/ZrO
2/CeO
2、Al
2O
3/ZrO
2/Y
2O
3、Al
2O
3/ZrO
2/Nd
2O
3、Al
2O
3/ZrO
2/SiO
2、Al
2O
3/ZrO
2/TiO
2などの3種の混合体、Al
2O
3/ZrO
2/SiO
2/TiO
2などの4種混合体など、種々の酸化物混合体が存在すると考えられる。
【0102】
本発明において、当該酸化物混合体を、触媒成分を担持させる担体として用いることができる。
【0103】
2.排ガス浄化用触媒の製造方法
次に、上述のようにして得られた酸化物混合体を用いて、本発明の排ガス浄化用触媒を調製する。
【0104】
本発明において、排ガス浄化用触媒の好ましい製造方法としては、触媒成分の化合物の水溶液を、Al
2O
3と金属酸化物とを含む担体に含浸させた後、前記含浸して得られた担体を焼成して、触媒成分担持担体を得る工程を含む。
【0105】
また、さらに本発明の排ガス浄化用触媒の好ましい製造方法としては、触媒成分担持担体、または触媒成分担持担体および耐火性無機酸化物(担持成分)(好ましくはゼオライト)を含むスラリーを調製し、前記スラリーを三次元構造体にコートする工程を含む。
【0106】
すなわち、本発明のひとつの実施形態では、酸化物混合体に、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、RuおよびOsからなる群より選択される1種以上の触媒成分(貴金属)を担持させて、本発明の排ガス浄化用触媒が得られる。
【0107】
また、他の実施形態としては、本発明の排ガス浄化用触媒には、触媒成分を担持させた担体(触媒成分担持担体)と耐火性無機酸化物(担持成分)(好ましくはゼオライト)と、を担持することができる。また、さらには、本発明の排ガス浄化用触媒には、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類元素の少なくとも1種以上を担持することができる。
【0108】
排ガス浄化用触媒の調製方法としては、次の方法が挙げられる。
【0109】
(1)触媒成分(貴金属)の化合物(原料)の水溶液に、酸化物混合体(担体)を加え、十分に混合した後、必要により乾燥・焼成し、触媒成分担持担体(酸化物混合体)の粉体を得る。これを水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで必要により乾燥・焼成して完成触媒とする方法、
(1’)触媒成分(貴金属)の化合物(原料)の水溶液に、酸化物混合体(担体)を加え、十分に混合した後、必要により乾燥・焼成し、触媒成分担持担体(酸化物混合体)の粉体を得る。さらに当該触媒成分担持担体の粉体に、さらに耐火性無機酸化物(担持成分)を混合して、これを湿式粉砕して水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで乾燥し、必要により焼成し完成触媒とする方法、
(2)触媒成分(貴金属)の化合物(原料)および酸化物混合体を一括し、水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで必要により乾燥・焼成して完成触媒とする方法、
(2’)触媒成分(貴金属)の化合物(原料)および酸化物混合体を一括し、必要によりさらに耐火性無機酸化物(担持成分)を混合して、水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで必要により乾燥・焼成して完成触媒とする方法、
(3)触媒成分(貴金属)の化合物(原料)および酸化物混合体を一括し、水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで必要により乾燥・焼成し、さらに該三次元構造体をアルカリ金属などの成分の化合物(原料)の水溶液に浸漬した後、必要により乾燥・焼成して完成触媒とする方法、
(3’)触媒成分(貴金属)の化合物(原料)および酸化物混合体を一括し、必要によりさらに耐火性無機酸化物(担持成分)を混合して、水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで必要により乾燥・焼成し、さらに該三次元構造体をアルカリ金属などの成分の化合物(原料)の水溶液に浸漬した後、必要により乾燥・焼成して完成触媒とする方法、
(4)アルカリ金属などの成分の化合物(原料)の水溶液に、酸化物混合体(担体)を加え、十分に混合した後、必要により乾燥・焼成し、アルカリ金属担持担体(酸化物混合体)の粉体を得る。これを水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで必要により乾燥・焼成し、さらに該三次元構造体を触媒成分の化合物(原料)の水溶液に浸漬した後、必要により乾燥・焼成して完成触媒とする方法などがある。
【0110】
(4’)アルカリ金属などの成分の化合物(原料)の水溶液に、酸化物混合体(担体)を加え、必要によりさらに耐火性無機酸化物(担持成分)を混合して、十分に混合した後、必要により乾燥・焼成し、アルカリ金属担持担体(酸化物混合体)の粉体を得る。これを水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで必要により乾燥・焼成し、さらに該三次元構造体を触媒成分の化合物(原料)の水溶液に浸漬した後、必要により乾燥・焼成して完成触媒とする方法などがある。
【0111】
(5)触媒成分(貴金属)の化合物(原料)、酸化物混合体およびアルカリ金属などの成分の化合物(原料)を一括して、必要によりさらに耐火性無機酸化物(担持成分)を混合して、水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆し、ついで必要により乾燥・焼成して完成触媒とする方法、
本発明では、上述の担持方法において、まず、触媒成分担持担体(酸化物混合体)の粉体を得た後、これを水性スラリーとし、該水性スラリーを三次元構造体に被覆して乾燥・焼成して完成触媒とする(1)の方法、または触媒成分担持担体(酸化物混合体)の粉体を得た後、これを水性スラリーとし、さらに耐火性無機酸化物(担持成分)を混合して、該水性スラリーを三次元構造体に被覆して乾燥・焼成して完成触媒とする(1’)の方法で製造することが好ましい。以下に、(1)および(1’)の方法について説明する。
【0112】
本発明において使用される触媒成分、上述の調製方法において使用される触媒成分の化合物(原料)としては、特に制限されず、触媒成分を、そのままの形態で添加してあるいは他の形態で添加して、その後所望の形態(貴金属の形態)に変換してもよい。本発明では、触媒成分の化合物を水性媒体に添加するため、触媒成分は、他の形態、特に、水溶性貴金属塩(貴金属の水溶性化合物)、すなわち、貴金属を含む塩溶液の形態で添加されることが好ましい。ここで、水溶性貴金属塩は、特に制限されることなく、排ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。具体的には、たとえば、パラジウムの場合には、パラジウム;塩化パラジウムなどのハロゲン化物;パラジウムの、硝酸塩、硫酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、テトラアンミンパラジウム、ヘキサアンミンパラジウムのハロゲン化物;無機塩類;カルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、ジニトロジアンミンパラジウム、酸化物などが挙げられる。好ましくは硝酸塩、ジニトロジアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウム、ヘキサアンミンパラジウムの硝酸塩;カルボン酸塩;および水酸化物が挙げられ、硝酸塩(硝酸パラジウム)、テトラアンミンパラジウムおよびヘキサアンミンパラジウムの硝酸塩;カルボン酸塩;水酸化物がより好ましい。また、白金の場合には、たとえば、白金;臭化白金、塩化白金などのハロゲン化物;白金のヘキサヒドロキソ酸塩、テトラニトロ酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、テトラアンミン白金、ヘキサアンミン白金のハロゲン化物;無機塩類;カルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、ジニトロジアンミン白金、酸化物などが挙げられる。好ましくは、ジニトロジアンミン白金、テトラアンミン白金およびヘキサアンミン白金の硝酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、ヘキサヒドロキソ酸塩が挙げられ、ジニトロジアンミン白金、テトラアンミン白金およびヘキサアンミン白金の硝酸塩、カルボン酸塩、水酸化物、ヘキサヒドロキソ酸塩がより好ましい。また、たとえば、ロジウムの場合には、ロジウム;塩化ロジウムなどのハロゲン化物;ロジウムの、硝酸塩、硫酸塩、ヘキサアンミン塩、ヘキサシアノ酸塩などの、無機塩類;酢酸塩などのカルボン酸塩;および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが挙げられる。好ましくは、硝酸塩、ヘキサアンミン塩が挙げられ、硝酸塩(硝酸ロジウム)がより好ましい。なお、本発明では、上記貴金属の化合物(貴金属源)は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。混合する場合は、同種のものを用いるのが好ましい。
【0113】
触媒成分の化合物の使用量(担持量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、上記触媒成分の使用量(担持量;貴金属換算)となるような量である。
【0114】
上述の触媒成分の化合物(水溶性貴金属塩)を均一に溶解する水溶液としては、水、水とアルコールの混合物が使用できる。アルコールとしては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが用いられうる。水溶液中の水溶性金属塩の濃度(含有量)は、特に制限されず、触媒成分を担持させる量によって適宜選択できる。たとえば、水溶液中の水溶性貴金属塩の含有量が、0.01〜80質量%であるのが好ましい。
【0115】
酸化物混合体(担体)に、触媒成分を担持させる方法としては、水溶液中の触媒成分が酸化物混合体と十分均一に接触して、次の乾燥・焼成工程で、触媒成分が十分、酸化物混合体に担持される条件であれば特に制限されない。上述した水溶性貴金属塩の水溶液に酸化物混合体(担体)を加え、十分に混合した後、50〜250℃、好ましくは70〜200℃、より好ましくは80〜150℃で、10分〜20時間、好ましくは3〜15時間乾燥させて、さらに、得られたものを、大気中、100〜1200℃、好ましくは200〜1100℃、より好ましくは300〜1000℃で、10分〜20時間、好ましくは1〜15時間焼成を行い、触媒成分担持担体(酸化物混合体)の粉体を得る。また、大気中での焼成の前に、窒素ガスなどの不活性ガス気流中で仮焼してもよい。
【0116】
また、本発明において、好ましい形態では、触媒成分を担持した酸化物混合体(触媒成分担持担体)を三次元構造体上に担持させる。
【0117】
また、本発明において、好ましい形態では、触媒成分を担持した触媒成分担持担体(酸化物混合体)と、耐火性無機酸化物(担持成分)とを三次元構造体上に担持させる。
【0118】
上述の方法で得られた触媒成分担持担体を、または触媒成分担持担体および耐火性無機酸化物(担持成分)を、三次元構造体上に担持させる方法としては、特に制限されないが、これらを含む水性スラリーを調製した後、該水性スラリーを三次元構造体にコート(担持)させるのが好ましい。
【0119】
水性スラリーを調製する方法は、特に制限されないが、たとえば湿式粉砕により調製される。湿式粉砕は、通常公知の方法によって行われ、特に制限されないが、ボールミルなどが好ましく使用される。または、アトライター、ホモジナイザ、超音波分散装置、サンドミル、ジェットミル、ビーズミルなどの従来公知の手段を用いることができる。ここで、湿式粉砕条件は、特に制限されない。たとえば、湿式粉砕時の温度は、通常、5〜40℃、好ましくは室温(25℃)程度である。また、湿式粉砕時間は、通常、10分〜20時間である。なお、湿式粉砕時間は、使用する湿式粉砕装置によって異なり、たとえば、アトライター等の粉砕効率の高い装置を使用した場合には、10〜60分程度であり、ボールミル等を使用した場合には、5〜20時間程度である。なお、湿式粉砕の際に用いられる溶媒としては、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコールが使用でき、特に水が好ましい。湿式粉砕の際の溶媒中の担持成分(たとえば、触媒成分担持担体(酸化物混合体)と耐火性無機酸化物(担持成分))の濃度(含有量)は、特に制限されず、触媒成分担持担体(酸化物混合体)と耐火性無機酸化物(担持成分)を担持させる量によって適宜選択できる。たとえば、溶液中の触媒成分担持担体(酸化物混合体)と耐火性無機酸化物(担持成分)の含有量の合計が、0.1〜80質量%であるのが好ましい。
【0120】
上述の方法で得られた水性スラリーを三次元構造体上に担持(コート)させる方法としては、特に制限されないが、ウォッシュコートにより担持させるのが好ましい。ウォッシュコートは、通常公知の方法によって行われ、特に制限されず、ウォッシュコート条件も、特に制限されない。たとえば、該水性スラリーに、三次元構造体を浸漬し、余剰のスラリーを除き、焼成することにより、触媒成分担持担体(酸化物混合体)、または触媒成分担持担体(酸化物混合体)および耐火性無機酸化物(担持成分)が、三次元構造体に担持された排ガス浄化用酸化触媒が製造されうる。水性スラリーを三次元構造体にウォッシュコートする際の条件は、水性スラリー中の担持成分、たとえば、触媒成分担持担体(酸化物混合体)と耐火性無機酸化物(担持成分)とが三次元構造体と十分均一に接触して、次の乾燥・焼成工程でこれらの成分が十分三次元構造体に担持される条件であれば特に制限されない。
【0121】
このとき、三次元構造体に担持させる耐火性無機酸化物(担持成分)としては、通常内燃機関用の触媒に用いられるものであれば、特に制限されず何れのものであってもよいが、上述したように、炭化水素の吸着材であるゼオライトが好ましい。耐火性無機酸化物(担持成分)としては、公知の方法で得られたものが用いられ、市販品を用いることができ、具体的には、上述した耐火性無機酸化物がそのままの形態で添加される。耐火性無機酸化物(担持成分)の使用量(担持量)は、特に制限されず、浄化(除去)する有害成分の濃度によって適宜選択できる。具体的には、上記耐火性無機酸化物(担持成分)の使用量となるような量である。
【0122】
次に、触媒成分担持担体(酸化物混合体)、または触媒成分担持担体(酸化物混合体)および耐火性無機酸化物(担持成分)を被覆した三次元構造体は、50〜250℃、好ましくは70〜200℃、より好ましくは80〜180℃で、1分〜20時間、好ましくは5分〜15時間乾燥させて、さらに、得られたものを、大気中、100〜1200℃、好ましくは200〜1100℃、より好ましくは300〜1000℃で、10分〜20時間、好ましくは30分〜15時間焼成し、本発明の排ガス浄化用触媒を得る。
【0123】
また、本発明では、上記焼成工程中または上記焼成工程後に、必要に応じて、三次元構造体を、還元ガス(たとえば、水素5%、窒素95%の気流下)を用いて処理するのが好ましい。ここで、還元ガスとして水素ガス、一酸化炭素ガス等を用いることができ、水素ガスが好ましい。還元ガスは、上記ガスを単独で使用してもあるいは上記2種のガスを混合して使用してもあるいは上記1種もしくは2種のガスを他のガスと混合して使用してもよい。上記ガスを他のガスと混合して使用することが好ましく、水素ガスを窒素ガスで希釈して使用することがより好ましい。この場合の還元ガスの添加量は、乾燥した三次元構造体を所望の程度に処理できる量であれば特に制限されないが、三次元構造体の処理雰囲気が、1〜10体積%の還元ガスを含むことが好ましく、3〜5体積%の還元ガスを含むことがより好ましい。また、乾燥した三次元構造体の還元ガスによる処理条件は、特に制限されない。たとえば、乾燥した三次元構造体を、上記した還元ガスを10〜100ml/分で流通しながら、150〜600℃で1〜10時間、処理することが好ましい。
【0124】
ここで、三次元構造体は、特に制限されず、一般的に排気ガス浄化用触媒の調製に使用されるのと同様のものが使用できる。たとえば、三次元構造体としては、ハニカム担体などの耐熱性担体が挙げられるが、一体成型のハニカム構造体(ハニカム担体)が好ましく、たとえば、モノリスハニカム担体、プラグハニカム担体などが挙げられる。
【0125】
モノリス担体としては、通常、セラミックハニカム担体と称されるものであればよく、特に、炭化ケイ素(SiC)、コージェライト、ムライト、ベタライト、アルミナ(α−アルミナ)、シリカ、ジルコニア、チタニア、リン酸チタン、アルミニウムチタネート、スポンジュメン、アルミノシリケート、マグネシウムシリケート、ゼオライト、シリカなどを材料とするハニカム担体が好ましく、なかでもコージェライト質のものが特に好ましい。その他、ステンレス鋼、Fe−Cr−Al合金などの酸化抵抗性の耐熱性金属を用いて一体構造体とした、いわゆるメタルハニカム担体も用いられる。また、三次元構造体は、ガスがそのまま通過しうるフロースルー型(オープンフロー型)、排ガス中のススをこすことができるフィルター型、プラグ型など、いずれのタイプを使用してもよい。また、三次元一体構造体ではなくても、ペレット担体等も挙げることができる。ここで、プラグ型のハニカムとは、多数の通孔を有しかつガスの導入面に市松上に開孔と閉孔を有し、通孔の一方が開孔であれば同一の通孔の他方が閉孔となっているハニカムである。当該プラグハニカム担体には各孔間の壁に微細な孔があり、排ガスは開孔からハニカムに入り、当該微細な孔を通して他の孔を通りハニカム外に出るものである。
【0126】
これらのハニカム担体は、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などで製造される。そのガス通過口(セル形状)の形は、六角形、四角形、三角形またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は100〜1200セル/平方インチであれば十分に使用可能であり、好ましくは200〜900セル/平方インチ、より好ましくは300〜600セル/平方インチである。
【0127】
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、上記(3)〜(5)の方法に記載のように、酸化物混合体および触媒成分に加えて、他の成分を含有してもよい。このような成分としては特に制限されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素およびマンガンならびにこれらの酸化物、ベータ型、ZSM−5型およびY型のゼオライトならびにおよびこれらを鉄、銅やセリウムなどでイオン交換したものなどが挙げられる(以下、「アルカリ金属などの成分」または単に「成分」と称する場合がある。)。ここで用いられるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられる。同様にして、アルカリ土類金属としては、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。希土類元素としては、たとえば、セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウムなどが挙げられる。上記アルカリ金属などの成分は、金属そのままの形態であってもあるいは酸化物の形態であってもよい。また、上記成分は、そのままの形態で添加してあるいは他の形態で添加して、その後所望の形態(たとえば、アルカリ金属の形態)に変換してもよい。本発明では、アルカリ金属などの成分は、他の形態、特に、水溶性化合物の形態で添加されることが好ましい。ここで、水溶性化合物は、特に制限されることなく、排ガスの浄化の分野で用いられている原料を用いることができる。なお、本発明では、上記アルカリ金属などの成分は、単独であってもあるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0128】
また、本発明の排ガス浄化用触媒が他の成分を含有する場合、触媒調製時の調製液の粘度、取り扱いの便を考慮すると、完成触媒の最終段階でアルカリ金属などの成分の化合物(原料)を添加または担持する方法が好ましい。
【0129】
上述したように、本発明の排ガス浄化用触媒は、耐久性が高く、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)やガソリンまたは軽油や重油等のディーゼルエンジンの燃料の未燃焼成分である炭化水素(HC)、特に一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の、低温下での浄化能に優れる。
【0130】
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒の排ガスの浄化能は、一酸化炭素(CO)については、50%CO転化率を示す温度が、特に制限されないが、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃、特に好ましくは180℃以下である。なお、50%CO転化率の下限温度は、低いほど好ましいが、触媒性能を一定に維持するために、好ましくは140℃以上である。また、炭化水素(HC)については、50%HC転化率を示す温度が、特に制限されないが、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃、特に好ましくは180℃以下である。なお、50%HC転化率の下限温度は、低いほど好ましいが、触媒性能を一定に維持するために、好ましくは140℃以上である。なお、上述の50%CO転化率および50%HC転化率の測定は、後述の実施例の方法に従ったものである。
【0131】
ゆえに、本発明の方法によって製造される排ガス浄化用触媒は、内燃機関の排ガス(特に、HC、CO)の浄化に好適に使用されうる。本発明に係る触媒は、内燃機関の排気ガス中に還元性ガスを含む排気ガスを処理するのに好適に使用でき、特にガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関からの加速時などの還元性の高い排気ガス中に含まれる炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)の浄化に優れた効果を奏する。
【0132】
また、上述したように、本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、耐久性が高く、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)やガソリンまたは軽油や重油等のディーゼルエンジンの燃料の未燃焼成分である炭化水素(HC)、特に一酸化炭素(CO)の、低温下(たとえば、160℃以下)での浄化能に優れる。
【0133】
また、本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、触媒性能の耐熱性を向上させ、燃料中の硫黄(サルファー)分による被毒から触媒性能を保護する効果を付与することができる。
【0134】
したがって、本発明は、本発明に係る排ガス浄化用触媒に対し、排ガスを接触させることを有する、排ガスの浄化方法をも提供する。
【0135】
排ガスの組成については特に制限はないが、本発明の触媒は、ボイラ、焼却炉、ディーゼルエンジンおよび各種工業プロセスから排出される一酸化炭素(CO)の分解活性に優れるため、これら一酸化炭素(CO)を含む排ガスの処理に好適に用いられる。また、本発明の第2の触媒は、硫黄被毒を受けた場合でも触媒性能の低下が抑制されるため、硫黄酸化物(SOx)、特にSO
2を含む排ガスの処理に好適に用いられる。
【0136】
本発明による触媒は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガスの浄化に使用され、そのときの排ガス及び触媒は、空間速度が好ましくは1,000〜500,000hr
−1、より好ましくは5,000〜150,000hr
−1、ガス線速が好ましくは0.1〜8.5m/秒、より好ましくは0.2〜4.2m/秒で接触させることが好ましい。
【0137】
また、本発明による触媒は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガスの浄化に使用され、リーン雰囲気下において、たとえば、排ガス中にCOが、好ましくは10〜50,000体積ppm、より好ましくは50〜15,000体積ppm、さらに好ましくは50〜5,000体積ppm含まれている場合に、好適にCOを酸化することができる。また、リーン雰囲気下において、たとえば、排ガス中にHCが、好ましくは10〜50,000体積ppm、より好ましくは10〜10,000体積ppm、さらに好ましくは10〜5,000体積ppm含まれている場合(炭素(C1)換算)に、好適にHCを酸化することができる。
【0138】
また、本発明に係る触媒の前段(流入側)または後段(流出側)に同様の、または異なる排気ガス浄化触媒を配置してもよい。
【実施例】
【0139】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、下記の製造例において、特に断らない限り、「%」および「ppm」は質量基準である。
【0140】
〔実施例1−1〕
硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O)1442.22gを0.95Lの脱イオン水に完全に溶解させ、さらに硝酸ジルコニル水溶液(ZrO
2換算で濃度20質量%)20.0gを加えて良く攪拌し、混合水溶液を作製した。この溶液をアンモニアでpH9に調整した水溶液2L中に滴下した。滴下中、温度25℃で、溶液のpHが7から10の範囲になるようアンモニア水で調節した。沈殿が生成するので、これをろ取して脱イオン水でよく洗ったのち、120℃で8時間乾燥させ、400℃で5時間、700℃で5時間焼成してジルコニア−アルミナA(ジルコニア2質量%、アルミナ98質量%)を得た。
【0141】
次に、白金0.887gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液およびパラジウム0.443gに相当する硝酸パラジウム溶液を脱イオン水で希釈した混合水溶液42.22gに、ジルコニア−アルミナA60gを含浸させた後、当該ジルコニア−アルミナAを120℃で8時間乾燥させて粉体を得て、さらに当該粉体を500℃で1時間焼成し、貴金属担持ジルコニア−アルミナAを得た。この貴金属担持ジルコニア−アルミナA61.33gと脱イオン水90mLとを混合し、湿式粉砕することでスラリーとした。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した0.0303Lのコージュライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5%窒素95%気流下、500℃で3時間処理して、担体の容量1L当たり61.33g(白金0.887g、パラジウム0.443g、ジルコニア−アルミナA60.0g)の触媒成分がコートされた触媒1−aを得た。
【0142】
〔実施例1−2〕
硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O)1397.7gを脱イオン水0.91Lに完全に溶解させ、さらに硝酸ジルコニル水溶液(ZrO
2換算で濃度20質量%)50.0gを加えて良く攪拌し、混合水溶液を作製した。この溶液をアンモニアでpH9に調整した水溶液2L中に滴下した。滴下中、温度25℃で、溶液のpHが7から10の範囲になるようアンモニア水で調節した。沈殿が生成するので、これをろ取して脱イオン水でよく洗ったのち、120℃で8時間乾燥させ、400℃で5時間、700℃で5時間焼成してジルコニア−アルミナB(ジルコニア5質量%、アルミナ95質量%)を得た。
【0143】
次に、白金0.887gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液7.86gおよびパラジウム0.443gに相当する硝酸パラジウム溶液3.16gを脱イオン水で希釈した混合水溶液42.22gをジルコニア−アルミナB60gに含浸させた後、当該ジルコニア−アルミナBを120℃で8時間乾燥させて粉体を得て、さらに当該粉体を500℃で1時間焼成して貴金属担持ジルコニア−アルミナBを得た。この貴金属担持ジルコニア−アルミナB61.33gと脱イオン水90mLとを混合し、湿式粉砕することでスラリーとした。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した0.0303Lのコージュライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5%窒素95%気流下、500℃で3時間処理して、担体の容量1L当たり61.33g(白金0.887g、パラジウム0.443g、ジルコニア−アルミナB60.0g)の触媒成分がコートされた触媒1−bを得た。
【0144】
〔実施例1−3〕
硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O)1324.3gを脱イオン水0.82Lに完全に溶解させ、さらに硝酸ジルコニル水溶液(ZrO
2換算で濃度20質量%)100.0gを加えて良く攪拌し、混合水溶液を作製した。この溶液をアンモニアでpH9に調整した水溶液2L中に滴下した。滴下中、温度25℃で、溶液のpHが7から10の範囲になるようアンモニアで調節した。沈殿が生成するので、これをろ取して脱イオン水でよく洗ったのち、120℃で8時間乾燥させ、400℃で5時間、700℃で5時間焼成してジルコニア−アルミナC(ジルコニア10質量%、アルミナ90質量%)を得た。
【0145】
次に、白金0.887gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液7.86gおよびパラジウム0.443gに相当する硝酸パラジウム溶液3.16gを脱イオン水で希釈した混合水溶液42.22gをジルコニア−アルミナC60gに含浸させた後、当該ジルコニア−アルミナCを120℃で8時間乾燥させて粉体を得て、さらに当該粉体を500℃で1時間焼成して貴金属担持ジルコニア−アルミナCを得た。この貴金属担持ジルコニア−アルミナC61.33gと脱イオン水90mLとを混合し、湿式粉砕することでスラリーとした。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した0.0303Lのコージュライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5%窒素95%気流下、500℃で3時間処理して、担体の容量1L当たり61.33g(白金0.887g、パラジウム0.443g、ジルコニア−アルミナC60.0g)の触媒成分がコートされた触媒1−cを得た。
【0146】
〔実施例1−4〕
硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O)1250.7gを脱イオン水0.82Lに完全に溶解させ、さらに硝酸ジルコニル水溶液(ZrO
2換算で濃度20質量%)150.0gを加えて良く攪拌し、混合水溶液を作製した。この溶液をアンモニアでpH9に調整した水溶液2L中に滴下した。滴下中、温度25℃で、溶液のpHが7から10の範囲になるようアンモニアで調節した。沈殿が生成するので、これをろ取して脱イオン水でよく洗ったのち、120℃で8時間乾燥させ、400℃で5時間、700℃で5時間焼成してジルコニア−アルミナD(ジルコニア15質量%、アルミナ85質量%)を得た。
【0147】
次に、白金0.887gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液7.86gおよびパラジウム0.443gに相当する硝酸パラジウム溶液3.16gを脱イオン水で希釈した混合水溶液42.22gをジルコニア−アルミナD60gに含浸させた後、当該ジルコニア−アルミナDを120℃で8時間乾燥させて粉体を得て、さらに当該粉体を500℃で1時間焼成して貴金属担持ジルコニア−アルミナDを得た。この貴金属担持ジルコニア−アルミナD61.33gと脱イオン水90mLとを混合し、湿式粉砕することでスラリーとした。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した0.0303Lのコージュライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5%窒素95%気流下、500℃で3時間処理して、担体の容量1L当たり61.33g(白金0.887g、パラジウム0.443g、ジルコニア−アルミナD60.0g)の触媒成分がコートされた触媒1−dを得た。
【0148】
〔実施例1−5〕
硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O)1030.1gを脱イオン水0.67Lに完全に溶解させ、さらに硝酸ジルコニル水溶液(ZrO
2換算で濃度20質量%)300.0gを加えて良く攪拌し、混合水溶液を作製した。この溶液をアンモニアでpH9に調整した水溶液2L中に滴下した。滴下中、温度25℃で、溶液のpHが7から10の範囲になるようアンモニア水で調節した。沈殿が生成するので、これをろ取して脱イオン水でよく洗ったのち、120℃で8時間乾燥させ、400℃で5時間、700℃で5時間焼成してジルコニア−アルミナE(ジルコニア30質量%、アルミナ70質量%)を得た。
【0149】
次に、白金0.887gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液7.86gおよびパラジウム0.443gに相当する硝酸パラジウム溶液3.16gを脱イオン水で希釈した混合水溶液42.22gをジルコニア−アルミナE60gに含浸させた後、当該ジルコニア−アルミナEを120℃で8時間乾燥させて粉体を得て、さらに当該粉体を500℃で1時間焼成して貴金属担持ジルコニア−アルミナEを得た。この貴金属担持ジルコニア−アルミナE61.33gと脱イオン水90mLとを混合し、湿式粉砕することでスラリーとした。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した0.0303Lのコージュライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5%窒素95%気流下、500℃で3時間処理して、担体の容量1L当たり61.33g(白金0.887g、パラジウム0.443g、ジルコニア−アルミナE60.0g)の触媒成分がコートされた触媒1−eを得た。
【0150】
〔比較例1−1〕
硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O)735.8gを脱イオン水0.48Lに完全に溶解させ、さらに硝酸ジルコニル水溶液(ZrO
2換算で濃度20質量%)500.0gを加えて良く攪拌し、混合水溶液を作製した。この溶液をアンモニアでpH9に調整した水溶液2L中に滴下した。滴下中、温度25℃で、溶液のpHが7から10の範囲になるようアンモニア水で調節した。沈殿が生成するので、これをろ取して脱イオン水でよく洗ったのち、120℃で8時間乾燥させ、400℃で5時間、700℃で5時間焼成してジルコニア−アルミナF(ジルコニア50質量%、アルミナ50質量%)を得た。
【0151】
次に、白金0.887gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液7.86gおよびパラジウム0.443gに相当する硝酸パラジウム溶液3.16gを脱イオン水で希釈した混合水溶液42.22gをジルコニア−アルミナF60gに含浸させた後、当該ジルコニア−アルミナFを120℃で8時間乾燥させて粉体を得て、さらに当該粉体を500℃で1時間焼成して貴金属担持ジルコニア−アルミナFを得た。この貴金属担持ジルコニア−アルミナF61.33gと脱イオン水90mLとを混合し、湿式粉砕することでスラリーとした。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した0.0303Lのコージュライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5%窒素95%気流下、500℃で3時間処理して、担体の容量1L当たり61.33g(白金0.887g、パラジウム0.443g、ジルコニア−アルミナF60.0g)の触媒成分がコートされた触媒1−fを得た。
【0152】
〔比較例1−2〕
硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O)1471.7gを秤量し、脱イオン水0.96Lに完全に溶解させた。この溶液をアンモニアでpH9に調整した水溶液2L中に滴下した。滴下中、温度25℃で、溶液のpHが7から10の範囲になるようアンモニアで調節した。沈殿が生成するので、これをろ取して脱イオン水でよく洗ったのち、120℃で8時間乾燥させ、400℃で5時間、700℃で5時間焼成してアルミナG(ジルコニア0質量%、アルミナ100質量%)を得た。
【0153】
次に、白金0.887gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液7.86gおよびパラジウム0.443gに相当する硝酸パラジウム溶液3.16gを脱イオン水で希釈した混合水溶液42.22gを、アルミナGに含浸させた後120℃で8時間乾燥させて粉体を得て、さらに当該粉体を500℃で1時間焼成して貴金属担持アルミナを得た。この貴金属担持アルミナ61.33gと脱イオン水90mLを湿式粉砕することでスラリーとした。このスラリーに、直径24mm、長さ67mmの円柱状に切り出した0.0303Lのコージュライト担体(商品名「Celcor」コーニング社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル400個)を浸漬してウォッシュコートし、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5%窒素95%気流下、500℃で3時間処理して、担体の容量1L当たり61.33g(白金0.887g、パラジウム0.443g、アルミナG60.0g)の触媒成分がコートされた触媒1−gを得た。
【0154】
<XRD分析>
実施例1−1〜1−5および比較例1−1で得られたジルコニア−アルミナA〜Fの各担体を、XRD分析(全自動多目的X線回折装置 X’Pert PRO MPD (PW3040/60) X線管球:Cu、スペクトリス株式会社製)を行った(
図1)。
【0155】
図1のように、ジルコニア−アルミナA(ジルコニア含量が2質量%)、B(ジルコニア含量が5質量%)、C(ジルコニア含量が10質量%)のものは、2θ 29〜32°にピークを有していないことから、正方晶の結晶を有していないことが分かる。また、ジルコニア−アルミナD(ジルコニア含量が15質量%)、E(ジルコニア含量が30質量%)、F(ジルコニア含量が50質量%)は、2θ 29〜32°にピークを有しており、正方晶の結晶を有していることが分かる。なお、2θ 27〜29°付近にわずかに表れているピークは、ジルコニアの単斜晶の結晶由来のピークである。
【0156】
次に、ジルコニア−アルミナD(ジルコニア含量が15質量%)、E(ジルコニア含量が30質量%)、F(ジルコニア含量が50質量%)を、比較例1−2で示したアルミナ(G)と混ぜて、測定試料中のジルコニアを10質量%に希釈した。これらを、それぞれ、ジルコニア−アルミナD'(ジルコニア含量15質量%を10質量%に希釈)、E'(ジルコニア含量30質量%を10質量%に希釈)、F'(ジルコニア含量50質量%を10質量%に希釈)と称する。このジルコニア−アルミナD'、E'、F'と、ジルコニア−アルミナCの各担体を、XRD分析(全自動多目的X線回折装置 X'Pert PRO MPD (PW3040/60) X線管球:Cu、スペクトリス株式会社製)を行った(
図2)。
【0157】
図2より、ジルコニア−アルミナD’、E’、F’を、ジルコニア−アルミナCと比較すると、ジルコニア含量10質量%であっても、2θ 29〜32°のピーク強度が相違することがわかる。
【0158】
したがって、この結果から、ジルコニア−アルミナD’、E’、F’には、正方晶の結晶が存在し、一方、ジルコニア−アルミナA、B、Cには、正方晶の結晶が存在しないことが示唆される。
【0159】
よって、ジルコニア−アルミナD、E、Fには、正方晶の結晶が存在し、一次粒子径5nm以上の金属酸化物(ジルコニア)を有していることが示唆されたといえる。また、ジルコニア−アルミナA、B、Cは、2θ 27〜29°および2θ 29〜32°にピークが観測されないため、ジルコニア−アルミナ中のジルコニアが、粒子径5nm未満の非常に微細な結晶構造またはアモルファス構造を有していると考えられる。
【0160】
正方晶の結晶が観測されたジルコニア−アルミナD、E、Fの粒子径について、2θ 29〜32°のピーク(正方晶の結晶ピーク)から、シェラーの式を用いて計算した。なお、結晶子径を、粒子径として求めた。
【0161】
【数1】
【0162】
その結果、粒子径の平均値として、ジルコニア−アルミナD:5nm、ジルコニア−アルミナE:7〜8nm、ジルコニア−アルミナF:7〜8nmであった。
【0163】
<電子顕微鏡観察>
実施例1−1〜1−5および比較例1−1、1−2で得られたジルコニア−アルミナA〜Gの各担体を、電子顕微鏡観察(H−7650、日立ハイテクノロジーズ社製)を行い、アルミナの粒子径が10〜30nmであることが確認できた。
【0164】
<耐久処理>
実施例1−1〜1−5および比較例1−1、1−2に示した1−a、1−b、1−c、1−d、1−e、1−f、1−gの各触媒を、電気炉にて700℃で30時間の間、水蒸気6体積%、酸素10体積%、窒素84体積%雰囲気中で熱処理を行うことで耐久処理を行った。これはディーゼルエンジンでの使用を想定した耐久である。
【0165】
<排気ガス浄化触媒の性能評価>
上記耐久処理後の各触媒を、表1の条件のガス(空間速度40000hr
−1、ガス線速0.75m/秒)を流通させながら20℃/分の昇温速度でガスを昇温した際に、触媒出口において一酸化炭素が50%浄化された時点の触媒の入口温度をCOT50、同様にプロピレンが50%浄化された時点の触媒の入口温度をHCT50として、それぞれの触媒中の貴金属担持基材であるジルコニアーアルミナやアルミナ中のZrO
2含有率に対してプロットしたグラフを
図3および
図4に示した。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
図3および
図4に示すように、実施例1−1〜1−5の触媒1−a、1−b、1−c、1−d、1−eは、比較例1−1および1−2の触媒1−fおよび1−gに対して、より低温からCO、プロピレンを酸化することができることが確認できた。一方でZrO
2が過剰である触媒1−fでは却ってCO、プロピレンの酸化が起こりにくくなっていることが確認できた。
【0169】
〔実施例2−1〕
硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O)6917gを脱イオン水4.5Lに完全に溶解させ、さらに硝酸ジルコニル水溶液(ZrO
2換算で濃度20質量%)250.0g、硫酸チタンの硫酸溶液(TiO
2換算で濃度30質量%)100.0gを加えて良く攪拌し、混合水溶液を作製した。この溶液をアンモニアでpH10に調整した温度25℃の水溶液10L中に滴下した。滴下中、溶液のpHが7から10の範囲になるようアンモニア水で調節した。沈殿が生成するので、これをろ取して脱イオン水でよく洗ったのち、120℃で8時間乾燥させ、400℃で5時間、700℃で5時間焼成して、チタニア−ジルコニア−アルミナA(チタニア0.1質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.9質量%)を得た。
【0170】
白金12.6gに相当する量のジニトロジアンミン白金水溶液およびパラジウム6.3gに相当する硝酸パラジウム溶液を脱イオン水で希釈した混合水溶液480mLに、チタニア−ジルコニア−アルミナA(チタニア0.1質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.9質量%)700.8gを含浸させた後、当該チタニア−ジルコニア−アルミナAを120℃で8時間乾燥させて粉体を得て、さらに当該粉体を500℃で1時間焼成し、貴金属担持チタニア−ジルコニア−アルミナA719.7gを得た。この貴金属担持チタニア−ジルコニア−アルミナAとベータゼオライト(シリカ/アルミナ比(モル比)=35、表面積543m
2/g、平均粒子径0.6μm)280.3g、脱イオン水1200mLとを混合し、湿式粉砕することでスラリーとした。このスラリーに、直径103mm、長さ130mmのコージュライト担体(日本ガイシ社製、セルの数:断面積1平方インチ当たりセル600個)を浸漬してウォッシュコートし、余分なスラリーを除いた後、150℃で5分乾燥後、500℃で1時間の空気焼成を行い、さらに水素5%窒素95%気流下、500℃で3時間処理して、担体の容量1L当たり148.2g(白金1.8g、パラジウム0.9g、チタニア−ジルコニア−アルミナA100g、ベータゼオライト40g)の触媒成分がコートされた触媒2−aを得た。
【0171】
〔実施例2−2〕
実施例2−1と同様の方法で、硝酸アルミニウム9水和物、硝酸ジルコニル水溶液および硫酸チタンの硫酸溶液の量を変更して、チタニア−ジルコニア−アルミナB(チタニア1.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.0質量%)を得た。
【0172】
次に、実施例2−1において、チタニア−ジルコニア−アルミナAをチタニア−ジルコニア−アルミナB(チタニア1.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.0質量%)に変更した以外は、同じ方法で触媒2−bを得た
〔実施例2−3〕
実施例2−1と同様の方法で、硝酸アルミニウム9水和物、硝酸ジルコニル水溶液および硫酸チタンの硫酸溶液の量を変更して、チタニア−ジルコニア−アルミナC(チタニア5.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ90.0質量%)を得た。
【0173】
次に、実施例2−1において、チタニア−ジルコニア−アルミナAをチタニア−ジルコニア−アルミナC(チタニア5.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ90.0質量%)に変更した以外、同じ方法で触媒2−cを得た。
【0174】
〔実施例2−4〕
硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O)6917gを脱イオン水4.5Lに完全に溶解させ、さらに硝酸ジルコニル水溶液(ZrO
2換算で濃度20質量%)250.0gを加えて良く攪拌し、混合水溶液を作製した。この溶液をメタケイ酸ナトリウム47.3gとアンモニアでpH10に調整した温度25℃の水溶液10L中に滴下した。滴下中、溶液のpHが7から10の範囲になるようアンモニア水で調節した。滴下終了後、硝酸により中性付近(pH5〜8)になるようにpHを調整した。生じた沈殿をろ取して脱イオン水でよく洗ったのち、120℃で8時間乾燥させ、400℃で5時間、700℃で5時間焼成して、シリカ−ジルコニア−アルミナD(シリカ0.1質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.9質量%)を得た。
【0175】
次に、実施例2−1において、チタニア−ジルコニア−アルミナAをシリカ−ジルコニア−アルミナD(シリカ0.1質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.9質量%)に変更した以外、同じ方法で触媒2−dを得た。
【0176】
〔実施例2−5〕
実施例2−4と同様の方法で、硝酸アルミニウム9水和物、硝酸ジルコニル水溶液およびメタケイ酸ナトリウムの量を変更して、シリカ−ジルコニア−アルミナE(シリカ1.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.0質量%)を得た。
【0177】
次に、実施例2−1において、チタニア−ジルコニア−アルミナAをシリカ−ジルコニ
ア−アルミナE(シリカ1.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.0質量
%)に変更した以外、同じ方法で触媒2−eを得た。
【0178】
〔実施例2−6〕
実施例2−4と同様の方法で、硝酸アルミニウム9水和物、硝酸ジルコニル水溶液およびメタケイ酸ナトリウムの量を変更して、シリカ−ジルコニア−アルミナF(シリカ5.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ90.0質量%)を得た。
【0179】
実施例2−1において、チタニア−ジルコニア−アルミナAをシリカ−ジルコニア−アルミナF(シリカ5.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ90.0質量%)に変更した以外、同じ方法で触媒2−fを得た。
【0180】
〔比較例2−1〕
実施例2−1と同様の方法で、硝酸アルミニウム9水和物、硝酸ジルコニル水溶液および硫酸チタンの硫酸溶液の量を変更して、ジルコニア−アルミナG(ジルコニア5.0質量%、アルミナ95.0質量%)を得た。
【0181】
次に、実施例2−1において、チタニア−ジルコニア−アルミナAをジルコニア−アルミナG(ジルコニア5.0質量%、アルミナ95.0質量%)に変更した以外は、同じ方法で触媒2−gを得た。
【0182】
<XRD分析>
実施例2−1〜2−6および比較例2−1で得られたチタニア−ジルコニア−アルミナA〜C、シリカ−ジルコニア−アルミナD〜Fおよびジルコニア−アルミナGの各担体を、XRD分析(全自動多目的X線回折装置 X’Pert PRO MPD (PW3040/60) X線管球:Cu、スペクトリス株式会社製)を行った(
図5、
図6)。
【0183】
(1)チタニア−ジルコニア−アルミナのXRD分析
図5のグラフにおいて、(A)は実施例2−1で得られたチタニア−ジルコニア−アルミナA(チタニア0.1質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.9質量%)の担体、(B)は実施例2−2で得られたチタニア−ジルコニア−アルミナB(チタニア1.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.0質量%)の担体、(C)は実施例2−3で得られたチタニア−ジルコニア−アルミナC(チタニア5.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ90.0質量%)の担体、(G)は比較例2−1で得られたジルコニア−アルミナG(ジルコニア5.0質量%、アルミナ95.0質量%)の担体を表す。
【0184】
図5のグラフにおいて、2θ 30〜70°に観測されるピークはすべて、アルミナ由来のピークである。ジルコニアは、2θ 29〜32°(正方晶の結晶)および2θ 27〜29°(単斜晶の結晶)にピークを有するが、(A)〜(C)には当該ピークが観測されなかった。よって、(A)〜(C)のチタニア−ジルコニア−アルミナ担体中のジルコニアが、粒子径5nm未満の非常に微細な結晶構造またはアモルファス構造を有していると考えられる。また、チタニアは、2θ 25°付近(アナターゼ型結晶)および2θ 28°付近(ルチル型結晶)にピークを有するが、(A)〜(C)には当該ピークが観測されなかった。よって、(A)〜(C)のチタニア−ジルコニア−アルミナ担体中のチタニアが、粒子径5nm未満の非常に微細な結晶構造またはアモルファス構造を有していると考えられる。
【0185】
(2)シリカ−ジルコニア−アルミナのXRD分析
図6のグラフにおいて、(D)は実施例2−4で得られたシリカ−ジルコニア−アルミナD(シリカ0.1質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.9質量%)の担体、(E)は実施例2−5で得られたシリカ−ジルコニア−アルミナE(シリカ1.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ94.0質量%)の担体、(F)は実施例2−6で得られたシリカ−ジルコニア−アルミナF(シリカ5.0質量%、ジルコニア5.0質量%、アルミナ90.0質量%)の担体、(G)は比較例2−1で得られたジルコニア−アルミナG(ジルコニア5.0質量%、アルミナ95.0質量%)の担体を表す。
【0186】
図6のグラフにおいて、2θ 30〜70°に観測されるピークはすべて、アルミナ由来のピークである。(D)〜(F)には、ジルコニアの結晶のピーク(2θ 29〜32°(正方晶の結晶)および2θ 27〜29°(単斜晶の結晶))が観測されないため、(D)〜(F)のシリカ−ジルコニア−アルミナ担体中のジルコニアが、粒子径5nm未満の非常に微細な結晶構造またはアモルファス構造を有していると考えられる。また、シリカは、2θ 20〜28°付近にピークを有するが、(D)〜(F)には当該ピークが観測されなかった。よって、(D)〜(F)のシリカ−ジルコニア−アルミナ担体中のシリカが、粒子径5nm未満の非常に微細な結晶構造またはアモルファス構造を有していると考えられる。
【0187】
<電子顕微鏡観察>
実施例2−1〜2−6および比較例2−1で得られたチタニア−ジルコニア−アルミナA〜C、シリカ−ジルコニア−アルミナD〜Fおよびジルコニア−アルミナGの各担体を、電子顕微鏡観察(H−7650、日立ハイテクノロジーズ社製)を行い、アルミナの粒子径が10〜30nmであることが確認できた。
【0188】
<耐久処理>
触媒の耐久には以下の1、2および3の処理を順番に行った。
【0189】
1.熱耐久
実施例2−1〜2−6および比較例2−1に示した2−a〜2−gまでの各触媒を、電気炉にて700℃で50時間の間、大気雰囲気下で熱処理を行うことで熱耐久処理を行った。
【0190】
2.硫黄被毒
熱耐久処理後の触媒を、排気量3.1Lのディーゼルエンジンにて、硫黄成分を400ppm含有する軽油を燃料として、トルク15Nm、回転数2000rpmの条件で、排気ガス流に100分間暴露させて硫黄成分による被毒を行った。なお、排ガスに含まれる硫黄成分の総量は、二酸化硫黄換算で、10.8g(±10%)である。
【0191】
3.再生処理
2の硫黄被毒時と同じエンジンにて、JIS2号軽油を燃料に用いて、トルク13Nm、回転数2000rpmの条件にて、排気ガス流れの触媒上流側からJIS2号軽油を排気ガス流れ中に添加し、15分間保持した。なお、JIS2号軽油の添加量は酸化触媒上での燃焼熱にて、触媒の出口部分での温度が670℃になる程度の量である。このようにして、2の硫黄被毒の工程で付着させた硫黄成分を、燃焼熱にて一部脱離させた。
【0192】
これは、通常のディーゼルエンジンでの使用においての熱負荷や硫黄成分による被毒によって生じる、触媒性能の低下を模擬した耐久である。
【0193】
<排気ガス浄化触媒の性能評価>
上記耐久処理後の各触媒を、9.84Lのディーゼルエンジンの排気ガス流路から、排気ガスを一部分岐し、触媒を通過させてCOの浄化性能の評価を行った。燃料はJIS2号軽油を用いた。評価は、アイドルからトルク250Nm、回転数1110rpmまで13秒かけて変化させて行った。この際、触媒入口での排気ガス温度は110℃から160℃まで上昇した。結果を
図7、
図8に示した。
【0194】
図7、
図8から明らかなように、ジルコニアーアルミナに貴金属を担持した触媒に比べ、チタニアやシリカを含むジルコニアーアルミナは、排気ガス中の硫黄成分で被毒を受けた後でも、高いCO酸化性能を示した。
【0195】
なお、本出願は、2011年3月4日に出願された日本国特許出願第特願2011−047643号および2011年4月28日に出願された日本国特許出願第特願2011−101608号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
触媒成分の化合物の水溶液を、前記酸化アルミニウムと前記金属酸化物とを含む担体に含侵させた後、前記含浸して得られた担体を焼成して、触媒成分担持担体を得る工程をさらに含む、請求項5に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
前記触媒成分担持担体、または前記触媒成分担持担体および耐火性無機酸化物(担持成分)を含むスラリーを調製し、前記スラリーを三次元構造体にコートする工程をさらに含む、請求項6に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。