【解決手段】転落防止部6は、先頭車両2Aに連結される他の車両とこの先頭車両2Aとの間の隙間に乗客が転落するのを防止する。転落防止部6は、直線区間通過時には一方の先頭車両2A側の転落防止部6と他方の先頭車両2A側の転落防止部6との間に、乗客が転落しない程度の僅かな隙間を形成している。転落防止部6は、分岐器又は曲線区間通過時には一方の先頭車両2A側の転落防止部6と他方の先頭車両2A側の転落防止部6とが接触したときに撓む。転落防止部6は、先頭車両2Aの中心線L
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1〜
図4及び
図6に示す軌道1は、先頭車両2Aが走行する通路(線路)であり、先頭車両2Aの車輪4aを案内する一対のレール1aなどを備えている。先頭車両2Aは、軌道1に沿って走行する移動体であり、電車、気動車又は機関車などの鉄道車両である。先頭車両2Aは、
図1〜
図6に示す車体3と、
図3に示す台車4と、
図1〜
図5に示す転落防止構造5と、
図1〜
図7に示す気流はく離抑制構造8などを備えている。先頭車両2Aは、プラットホームからの乗客の転落を防止する転落防止機能と、気流Fの流れのはく離を抑制するはく離抑制機能とを備えている。
図1〜
図5に示す先頭車両2Aは、
図8及び
図9に示すように、この先頭車両2Aの先頭部に他の車両を連結可能な車両であり、列車を運転制御する運転室(乗務員室)を備えている。先頭車両2Aは、例えば、列車の運転制御を行うことができ原動機を有さない制御車、列車の運転制御を行うことができ原動機を有する制御電動車又は制御内燃動車などである。
【0021】
図1〜
図6に示す車体3は、乗客を積載し輸送するための構造物である。車体3は、
図1〜
図7に示す車体端面(車体前面)3aと、
図1、
図2、
図4及び
図6に示す車体側面3b,3cと、
図1〜
図3及び
図7に示す車体上面3dと、
図1及び
図3に示す車体底面3eなどを備えている。
図1〜
図7に示す車体端面3aは、先頭車両2Aの妻構え(前構体)を構成する外板(妻板)でありこの先頭車両2Aの先頭部である。車体端面3aは、量産が容易で低コストの切妻形状である。車体端面3aは、例えば、妻板が平面で側板と直角であり、角部に面取り又は丸みが形成されている。車体端面3aは、先頭車両2Aが編成中の間に連結されたときに、前後の車両間を乗客及び乗務員が移動するときに使用する妻入口3fと、乗務員が前方を看視するために運転室前面に形成された前面窓(前面ガラス)3gなどを備えている。
図1、
図2、
図4及び
図6に示す車体側面3b,3cは、先頭車両2Aの側構え(側構体)を構成する外板(側板)であり、
図1に示すように乗務員が車外を看視するための側窓3hと、乗務員が乗降するときに使用する側出入口3iなどを備えている。
図1〜
図3及び
図7に示す車体上面3dは、先頭車両2Aの屋根構え(屋根構体)を構成する外板(屋根板)であり、車室内を空気調和するための空気調和装置などの屋根上機器が設置される。
図1及び
図3に示す車体底面3eは、先頭車両2Aの床構え(床構造)を構成する外板であり、台車4などの走行装置が設置されている。
図3に示す台車4は、車体3を支持して軌道1上を走行する走行装置(走り装置)であり、レール1aと転がり接触する車輪4aなどを備えている。
【0022】
図1〜
図5に示す転落防止構造5は、車両間の隙間に乗客が転落するのを防止する構造である。転落防止構造5は、
図8(A)に示すように先頭車両2A同士を連結した場合又は
図9(A)に示すように先頭車両2Aと中間車両2Bとを連結した場合に、これらの車両間の隙間に乗客が侵入するのを防止し、駅のプラットホームから乗客が軌道1上に転落するのを防止する。転落防止構造5は、
図35に示すような従来の転落防止構造105を先頭車両2Aの運転室側とは反対側の妻面102aに配置する構造ではなく、先頭車両2Aの運転室側の妻面に配置されている。転落防止構造5は、先頭車両2A内の乗務員の視界を遮らないように、車体端面3aの両縁部の下側に配置されており、車体端面3aよりも突出して配置されている。転落防止構造5は、
図1〜
図5に示す転落防止部6と、
図5に示す装着部7などを備えている。
【0023】
図1〜
図5に示す転落防止部6は、先頭車両2Aに連結される他の車両とこの先頭車両2Aとの間の隙間に乗客が転落するのを防止する部分である。転落防止部6は、
図4及び
図5に示すように、水平面で切断したときの断面が略三角形であり、
図1〜3に示すように垂直面で切断したときの断面形状が略四角形の板状部材である。転落防止部6は、
図10(A)に示すように、直線区間通過時には一方の先頭車両2A側の転落防止部6と他方の先頭車両2A側の転落防止部6との間に、乗客が転落しない程度の僅かな隙間を形成している。一方、転落防止部6は、
図10(B)に示すように、分岐器又は曲線区間通過時には一方の先頭車両2A側の転落防止部6と他方の先頭車両2A側の転落防止部6とが接触したときに撓む。転落防止部6は、先端部6a寄りの部分が可撓性を有するように、先端部6aに向かって厚さが薄く形成されている。転落防止部6は、この転落防止部6に乗客が衝突したときに、車両間の隙間からこの乗客が離れるようにこの乗客に弾性力(反発力)を作用させる。転落防止部6は、
図1、
図4及び
図5に示すように、X軸方向(先頭車両2Aの前後方向(長さ方向))に所定の突出量だけ突出しており、Y軸方向(先頭車両2Aの左右方向(幅方向))に所定の厚みを有し、Z軸方向(先頭車両2Aの上下方向(高さ方向))に所定の長さを有する。転落防止部6は、ゴムなどの弾性体、アルミニウムなどの剛体又はこれらの組み合わせである。転落防止部6は、例えば、この転落防止部6の一部又は全部が可撓性を有する弾性体であることが好ましく、先端部6a寄りがこの先端部6aに向かって徐々に薄くなるように成形されたゴム板が好ましい。
【0024】
転落防止部6は、
図1〜
図3に示すように、先頭車両2Aの車体端面3aの両側の下側縁部に沿ってこの先頭車両2Aの車体端面3aから突出しており、
図4に示すようにこの先頭車両2Aの中心線L
0に対して内側に傾斜しており、先頭車両2Aの中心線L
0に対してこの転落防止部6の中心線L
1が傾斜角度θになるように配置されている。転落防止部6は、傾斜角度θが20°を下回ると気流Fのはく離抑制効果が低減するとともに先頭車両2Aに作用する空気抵抗が増加し、傾斜角度θが35°を超えると車両間の隙間を小さくするために転落防止部6が大型化するため、先頭車両2Aの中心線L
0に対してこの先頭車両2Aの車体端面3aの内側に傾斜角度θ=20°〜35°の範囲内で傾斜させることが好ましい。転落防止部6は、
図1〜
図5に示す先端部6aと、
図1及び
図3〜
図5に示す内側表面(内側側面)6bと、
図1、
図4及び
図5に示す外側表面(外側側面)6cと、
図5に示す取付部6dなどを備えている。転落防止部6は、ボルト又はねじなどの固定部材によって、装着部7に着脱自在に固定されている。転落防止部6は、装着部7に対して上方から下方に向かってこの転落防止部6をスライドさせることによって装着部7に取り付けられ、装着部7に対して下方から上方に向かってこの転落防止部6をスライドさせることによって装着部7から取り外される。
【0025】
図1〜
図5に示す先端部6aは、転落防止部6の先端を構成する部分である。先端部6aは、転落防止部6同士が接触したときに損傷するのを防止するために丸みが形成されている。
図1及び
図3〜
図5に示す内側表面6bは、転落防止部6の内側側面を構成する部分である。内側表面6bは、車体3の車体側面3b,3cと同様に平坦面に形成されており、車体端面3a側から見たときにこの車体端面3aの内側に位置する。
図1、
図4及び
図5に示す外側表面6cは、転落防止部6の外側側面を構成する部分である。外側表面6cは、
図5に示すように、取付部6d寄りが内側表面6bと平行に平坦面に形成されており、車体端面3a側から見たときにこの車体端面3aの外側に位置する。外側表面6cは、先端部6aに近づくほど内側表面6bに接近するように、所定の角度で傾斜する傾斜面(テーパ面)に形成されている。
図5に示す取付部6dは、転落防止部6を装着部7に取り付ける部分である。取付部6dは、転落防止部6の後端部に形成された凹凸部であり、転落防止部6の高さ方向に沿って直線状に形成されている。
【0026】
図5に示す装着部7は、転落防止部6をはく離抑制部9Aに着脱自在に装着する部分である。装着部7は、転落防止部6を保持した状態でこの転落防止部6をはく離抑制部9Aに取り付ける。装着部7は、転落防止部6を支持する支持構造として機能する。装着部7は、取付部7a,7bと、内側表面7cと、外側表面7dなどを備えている。装着部7は、はく離抑制部9Aのフィン部10にボルト又はねじなどの固定部材によって着脱自在に固定されている。
【0027】
取付部7aは、転落防止部6を装着部7に取り付ける部分である。取付部7aは、装着部7の先端部に凹状に形成された溝であり、装着部7の高さ方向に沿って直線状に形成されている。取付部7aは、転落防止部6の取付部6dの凹凸部と嵌合し、転落防止部6を着脱するときにこの転落防止部6を上下方向に移動自在にガイドする。取付部7bは、装着部7をはく離抑制部9Aに取り付ける部分である。取付部7bは、装着部7の後端部に平坦状に形成されており、装着部7の高さ方向に沿って取付部7aと同様に直線状に形成されている。内側表面7cは、装着部7の内側側面を構成する部分である。内側表面7cは、転落防止部6の内側表面6bに沿って流れる気流Fがこの内側表面7cに沿って流れるように、この内側表面7cの先端部が転落防止部6の内側表面6bに平滑に接続されている。外側表面7dは、装着部7の外側側面を構成する部分である。外側表面7dは、転落防止部6の外側表面6cに沿って流れる気流Fがこの外側表面7dに沿って流れるように、この外側表面7dの先端部が転落防止部6の外側表面6cに平滑に接続されている。
【0028】
図1〜
図7に示す気流はく離抑制構造8は、先頭車両2Aが走行するときにこの先頭車両2Aの先頭部からの気流Fのはく離を抑制する構造である。気流はく離抑制構造8は、車体端面3aに衝突した気流Fを車体側面3b,3c及び車体上面3dに導くことによって、気流Fのはく離を抑制して先頭車両2Aの空気抵抗を低減するとともに、先頭車両2Aの先頭部の見かけの車両断面積が増大するのを抑制して、トンネル微気圧波の発生を低減する。気流はく離抑制構造8は、先頭車両2Aのトンネル突入時に発生するトンネル内の圧力変動を抑制して、車体3が気密構造であるときに車体3に作用する繰り返し荷重によって発生する車体構造疲労を低減する。気流はく離抑制構造8は、先頭車両2Aのトンネル突入時に発生するトンネル内の圧力変動に起因して車体3内の乗客に発生する耳の不快感や違和感である耳つん現象を低減する。気流はく離抑制構造8は、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属、アクリル樹脂などの合成樹脂、繊維強化プラスチック(FRP) 又はゴムなどによって形成されている。気流はく離抑制構造8は、
図1〜
図7に示すように、先頭車両2Aからの気流Fのはく離を抑制するはく離抑制部9A〜9Cなどを備えている。気流はく離抑制構造8は、
図1及び
図2に示すように、車体端面3aの両縁部及び上縁部に沿って、この車体端面3aを囲むように配置されている。
【0029】
図1〜
図5に示すはく離抑制部9Aは、先頭車両2Aの車体端面3aに向かう気流Fを転落防止部6の表面からこの先頭車両2Aの車体側面3b,3cに導くことによって、先頭車両2Aからの気流Fのはく離を抑制する。はく離抑制部9Aは、
図5に示すように、転落防止部6及び装着部7と車体端面3aとの間に配置されており、
図1〜
図4に示すようにこの車体端面3aの両縁部に沿って、車体端面3aの両側の下半分(側下半分)に配置されている。はく離抑制部9Aは、先頭車両2Aに支持されており先頭車両2A側に着脱自在に装着可能である。はく離抑制部9Aは、
図1、
図3〜
図5に示すフィン部10と、
図4及び
図5に示す支持部11などを備えている。
【0030】
図1〜
図3及び
図7(B)に示すはく離抑制部9Bは、先頭車両2Aの車体端面3aに衝突した気流Fをこの先頭車両2Aの車体側面3b,3cに導くことによって、この先頭車両2Aからの気流Fのはく離を抑制する部分である。はく離抑制部9Bは、
図1及び
図2に示すように、はく離抑制部9Aが配置されている箇所を除く車体端面3aの両縁部と車体端面3aの肩部とに沿って配置されている。はく離抑制部9Bは、車体端面3aの両側の上半分(側上半分)と、車体端面3aの両側の下端(側下端)と、車体端面3aの両縁部と上縁部とが交わる肩部(両肩部)とに配置されている。はく離抑制部9Bは、
図1〜
図3、
図6及び
図7(B)に示すルーバー部12と、
図6及び
図7(B)に示す支持部13などを備えている。
【0031】
図1〜
図3及び
図7(A)に示すはく離抑制部9Cは、先頭車両2Aの車体端面3aに衝突した気流Fをこの先頭車両2Aの車体上面3dに導くことによって、この先頭車両2Aからの気流Fのはく離を抑制する部分である。はく離抑制部9Cは、
図1及び
図2に示すように、車体端面3aの上縁部(屋根部)に沿って配置されている。はく離抑制部9Cは、
図1〜
図3及び
図7(A)に示すフィン部14と、
図1、
図3及び
図7(A)に示す誘導部15と、
図3及び
図7(A)に示す支持部16などを備えている。
【0032】
図1、
図3〜
図5に示すフィン部10は、転落防止部6の外側表面6cから先頭車両2Aの車体側面3b,3cに向かって気流Fを導くとともに、転落防止部6の内側表面6bと先頭車両2Aの車体側面3b,3cとの間の間隙部Δ
1に気流Fを導く部分である。フィン部10は、
図5に示すように、外観が羽根板状の部材であり、凹状湾曲面10aと、凸状湾曲面10bと、取付部10cなどを備えている。フィン部10の先端部は、
図3及び
図5に示すように、車体端面3a側に湾曲しており、車体端面3aよりも僅かに前方に突出している。フィン部10の後端部は、
図3に示すように、車体側面3b,3c側に湾曲してこれらの表面と平行に形成されており、これらの表面よりも僅かに突出している。
【0033】
図5に示す凹状湾曲面10aは、転落防止部6の内側表面6bと先頭車両2Aの車体側面3b,3cとの間の間隙部Δ
1に気流Fを導く部分である。凹状湾曲面10aは、先頭車両2Aと対向する側のフィン部10の内側表面を構成しており、車体端面3a側に湾曲している。凹状湾曲面10aは、先端部(気流Fの上流側)から後端部(気流Fの下流側)に向かって間隙部Δ
1が徐々に狭くなるように配置されている。凹状湾曲面10aは、転落防止部6の内側表面6bを通過して装着部7の内側表面7cに沿って流れる気流Fがこの凹状湾曲面10aに沿って流れるように、この凹状湾曲面10aの先端部が装着部7の内側表面7cに平滑に接続されている。
【0034】
凸状湾曲面10bは、転落防止部6の外側表面6cから先頭車両2Aの車体側面3b,3cに向かって気流Fを導く部分である。凸状湾曲面10bは、先頭車両2Aと対向する側とは反対側のフィン部10の外側表面を構成しており、車体端面3a側に湾曲している。凸状湾曲面10bは、転落防止部6の外側表面6cを通過して装着部7の外側表面7dに沿って流れる気流Fがこの凸状湾曲面10bに沿って流れるように、この凸状湾曲面10bの先端部(気流Fの上流側)が転落防止部6の外側表面6cに平滑に接続されており、この凸状湾曲面10bの後端部(気流Fの下流側)が凹状湾曲面10aの後端部に平滑に接続されている。
【0035】
取付部10cは、はく離抑制部9Aを装着部7に取り付ける部分である。取付部10cは、はく離抑制部9Aの先端部に平坦状に形成されており、フィン部10の高さ方向に沿って直線状に形成されている。取付部10cは、装着部7側の取付部7bと着脱自在に接合する。
【0036】
図4及び
図5に示す支持部11は、フィン部10を車体3に支持する部分である。支持部11は、フィン部10の長さ方向(先頭車両2Aの高さ方向)に所定の間隔をあけて複数配置されており、フィン部10の凹状湾曲面10aと車体3とを連結する。支持部11は、上流側及び下流側の端部に丸みが付与されており、両面が平坦な板状の部材である。支持部11は、ボルト又はねじなどの固定部材によって車体3に着脱自在に固定されている。
【0037】
図6及び
図7(B)に示すルーバー部12は、車体側面3b,3cと内側フィン部12aとの間の間隙部Δ
21に気流Fを通過させるとともに、内側フィン部12aと外側フィン部12bとの間の間隙部Δ
22に気流Fを通過させる部分である。ルーバー部12は、
図1〜
図3及び
図7(B)に示す内側フィン部12aと、外側フィン部12bと、
図1〜
図3に示す透過部12c,12dなどを備えている。
【0038】
図1〜
図3及び
図7(B)に示す内側フィン部12aは、気流Fの向きを変える部分である。内側フィン部12aは、
図6及び
図7(B)に示すように、車体3と外側フィン部12bとの間に配置されている。内側フィン部12aは、
図7(B)に示すように、車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面12e及び凸状湾曲面12fを備える羽根板状の部材であり、先頭車両2Aと対向する側の表面に凹状湾曲面12eを備え、先頭車両2Aと対向する側とは反対側の表面に凸状湾曲面12fを備えている。内側フィン部12aの先端部は、車体端面3a側に湾曲しており、車体端面3aよりも僅かに前方に突出している。内側フィン部12aの後端部は、車体側面3b,3c側に湾曲してこれらの表面と平行に形成されており、これらの表面よりも僅かに突出している。
【0039】
図1〜
図3及び
図7(B)に示す外側フィン部12bは、内側フィン部12aとの間で気流Fの向きを変える部分である。外側フィン部12bは、
図6及び
図7(B)に示すように、内側フィン部12aの外側に所定の間隔をあけて配置されている。外側フィン部12bは、
図7(B)に示すように、車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面12g及び凸状湾曲面12hを備えており、内側フィン部12aと同様の羽根板状の部材である。外側フィン部12bは、内側フィン部12aと対向する側の表面に凹状湾曲面12gを備え、内側フィン部12aと対向する側とは反対側の表面に凸状湾曲面12hを備えている。外側フィン部12bの先端部は、車体端面3a側に湾曲しており、内側フィン部12aの先端部よりも僅かに前方に突出している。外側フィン部12bの後端部は、内側フィン部12aの後端部よりも僅かに前方に突出している。
【0040】
図1〜
図3に示す透過部12c,12dは、先頭車両2Aの運転者が外部を看視するための部分である。透過部12c,12dは、先頭車両2Aの運転室内の乗務員が外部を看視可能なように、
図1に示す前面窓3g及び側窓3hと対向する部分に形成されている。透過部12c,12dは、
図1に示すように、ルーバー部12が運転者の視界を遮らないように、運転者の視界領域内に形成された透明又は半透明な部分であり、
図1及び
図3に示すように透過部12cは内側フィン部12aの一部に形成されており、透過部12dは外側フィン部12bの一部に形成されている。透過部12cは、例えば、ポリカーボネートなどの合成樹脂又は強化ガラスなどによって形成されている。
【0041】
図6及び
図7(B)に示す支持部13は、内側フィン部12a及び外側フィン部12bを車体3に支持する部分である。支持部13は、内側フィン部12a及び外側フィン部12bの長さ方向(先頭車両2Aの高さ方向)に所定の間隔をあけて複数配置されており、内側フィン部12aと外側フィン部12bとを連結するとともに、この内側フィン部12aと車体3とを連結する。支持部13は、上流側及び下流側の端部に丸みが付与されて両面が平坦な板状の部材であり、ボルト又はねじなどの固定部材によって車体3に着脱自在に固定されている。
【0042】
図1〜
図3及び
図7(A)に示すフィン部14は、車体上面3dとの間の間隙部Δ
3に気流Fを通過させる部分である。フィン部14は、
図1及び
図2に示すように、車体上面3dの中心部に気流Fを導く部分が、この車体上面3dの両縁部に気流Fを導く部分よりも、先頭車両2Aの進行方向前側(車体端面3aの前方)に突出している。フィン部14は、気流Fの向きを変える部分である。フィン部14は、
図7(A)に示すように、車体端面3a側に湾曲する凹状湾曲面14g及び凸状湾曲面14hを備える羽根板状の部材であり、先頭車両2Aと対向する側の表面に凹状湾曲面14gを備え、先頭車両2Aと対向する側とは反対側の表面に凸状湾曲面14hを備えている。フィン部14の先端部は、
図3及び
図7(A)に示すように、車体端面3a側に湾曲しており、車体端面3aよりも僅かに前方に突出している。フィン部14の後端部は、車体上面3d側に湾曲してこの車体上面3dの表面と平行に形成されており、この車体上面3dの表面よりも僅かに突出している。
【0043】
図1、
図3及び
図7(A)に示す誘導部15は、フィン部14を通過する気流Fが先頭車両2Aの車体上面3dに沿って流れるように、この気流Fをこの先頭車両2Aの車体上面3dで誘導する部分である。誘導部15は、車体上面3dと所定の間隔をあけてこの車体上面3dと平行に配置した平行平板部であり、
図1及び
図3に示すように両縁部が車体上面3dに沿って湾曲している。誘導部15は、
図1、
図3及び
図7(A)に示すように、整流部15aなどを備えている。
【0044】
図1、
図3及び
図7(A)に示す整流部15aは、車体上面3dとフィン部14との間の間隙部Δ
3を通過する気流Fを車体上面3dに沿って導くために、この気流Fを整流する部分である。整流部15aは、フィン部14の後端部から先頭車両2Aの車体上面3dと略平行に伸びる整流板(延長平板)部分である。整流部15aは、略均一な厚さ及び幅の長板状の部材である。整流部15aは、フィン部14の後方の車体上面3dに、この車体上面3dとの間に間隔をあけて配置されており、フィン部14の後端部から車体上面3dに沿って平行に伸びている。整流部15aは、フィン部14の凹状湾曲面14g及び凸状湾曲面14hに沿って流れる気流Fがこの整流部15aの内側表面及び外側表面に沿って流れるように、この整流部15aの先端部がフィン部14に平滑に接続されている。
【0045】
図3及び
図7(A)に示す支持部16は、整流部15aを車体3に支持する部分である。支持部16は、整流部15aの長さ方向(先頭車両2Aの幅方向)に所定の間隔をあけて複数配置されており、整流部15aと車体3とを連結する。支持部16は、上流側及び下流側の端部に丸みが付与されており、両面が平坦な板状の部材であり、ボルト又はねじなどの固定部材によって車体3に着脱自在に固定されている。
【0046】
次に、この発明の第1実施形態に係る車両の転落防止構造の作用を説明する。
(転落防止機能)
図8及び
図9に示す列車T
1,T
2は、軌道1を運転させる目的で組成された車両である。列車T
1,T
2は、例えば、旅客を輸送するために組成された旅客列車である。
図8に示す列車T
1は、終着駅又は始発駅が異なる2つの列車T
11,T
12によって編成されている。
図9に示す列車T
2は、終着駅が異なる2つの列車T
21,T
22によって編成されている。先頭車両2Aは、列車T
1,T
2を運転制御する運転室(乗務員室)を備えており、列車T
11,T
12,T
21,T
22の編成中において先頭又は後尾に連結される車両である。中間車両2Bは、列車T
1,T
2を運転制御する運転室(乗務員室)を備えておらず、先頭及び後尾の先頭車両2A間に連結されており、列車T
1,T
2の編成中において中間に連結される車両である。
【0047】
鉄道車両には、
図8に示すように、列車T
1を始発駅から終着駅まで運転するときに、異なる始発駅の列車T
11,T
12同士又は異なる終着駅の列車T
11,T
12同士を分割併合しながら運転する多層建て列車が存在する。このような多層建て列車は、例えば、
図8(A)に示すように、始発駅は同じであるが終着駅が異なる複数の列車T
11,T
12を一つの列車T
1として併合して編成し、
図8(B)に示すように終着駅が異なるそれぞれの列車T
11,T
12を途中駅で分割して終着駅まで運転している。また、このような多層建て列車は、例えば、
図8(B)に示すように、終着駅は同じであるが始発駅が異なる複数の列車T
11,T
12を途中駅で一つの列車T
1として併合して編成し、
図8(A)に示すようにこの列車T
1を終着駅まで運転している。このような多層建て列車では、
図8(A)に示すように、列車T
1側の先頭車両2Aと列車T
2側の先頭車両2Aとが互いに向かい合った状態で連結されて一つの列車T
1として運行される。
【0048】
一方、鉄道車両には、
図9に示すように、列車T
2を運行中に編成を増結及び解結する増解結が実施される。このような増解結では、例えば、
図9(A)に示すように、列車T
21に列車T
22を併合して一つの列車T
2を編成し、
図9(B)に示すように途中駅で列車T
2から列車T
22を解結(切り離し)して列車T
21を編成し、この列車T
21を終着駅まで運転している。また、このような増解結では、例えば、
図9(B)に示すように、ある列車T
21に途中駅で列車T
22を増結して一つの列車T
2として併合して編成し、
図9(A)に示すようにこの列車T
2を終着駅まで運転している。このような増解結では、
図9(A)に示すように、列車T
1側の先頭車両2Aと列車T
2側の中間車両2Bとが互いに向かい合った状態で連結されて一つの列車T
2として運行される。
【0049】
従来の鉄道車両では、
図35に示すように、中間車両102A,102B同士を連結するときにこれらの中間車両102A,102Bの連結部の隙間を転落防止部106によって塞ぎ、乗客がプラットホームから転落するのを防止している。しかし、従来の鉄道車両では、先頭車両が転落防止部を備えていないため、先頭車両同士を連結した場合や中間車両と先頭車両とを連結した場合には、先頭車両同士の連結部や先頭車両と中間車両との連結部に隙間が形成される。
【0050】
図8及び
図9に示すように、先頭車両2Aの先頭部に転落防止部6が存在するため、
図8(A)に示すように、多層建て列車の先頭車両2A同士を連結したときに、この先頭車両2A同士の連結部の隙間を転落防止部6が塞ぐ。その結果、先頭車両2A同士の連結部の隙間に乗客がプラットホームから転落するのを転落防止部6が防止する。また、
図9(A)に示すように、列車を増解結する場合であっても先頭車両2Aと中間車両2Bとを連結したときに、先頭車両2Aと中間車両2Bとの連結部の隙間を転落防止部6が塞ぐ。その結果、先頭車両2Aと中間車両2Bとの連結部の隙間に乗客がプラットホームから転落するのを転落防止部6が防止する。
【0051】
図10(A)に示すように、先頭車両2A同士を連結した状態でこれらの先頭車両2Aが直線区間を走行すると、先頭車両2A同士の連結部の隙間を転落防止部6が塞ぐ。一方、
図10(B)に示すように、先頭車両2Aが直線区間から曲線区間に進入すると、軌道1の外側(外軌側)の先頭車両2Aの角部については互いに離間して先頭車両2A同士の連結部の隙間が広くなり、軌道1の内側(内軌側)の先頭車両2Aの角部については互いに接近して先頭車両2A同士の連結部の隙間が狭くなる。
図10(B)に示すように、先頭車両2Aが曲線区間を通過して、一方の先頭車両2A側の転落防止部6と他方の先頭車両2A側の転落防止部6とが接触しても、双方の転落防止部6が撓むため転落防止部6が破損しない。また、
図10に示すように、先頭車両2Aの車体上面3dの両縁部に気流Fを導くはく離抑制部9Cの突出長さが、この先頭車両2Aの車体上面3dの中心部に気流Fを導くはく離抑制部9Cの突出長さよりも短い。このため、先頭車両2Aが曲線区間を移動するときに、一方の先頭車両2A側のはく離抑制部9Cと他方の先頭車両2A側のはく離抑制部9Cとが干渉しない。
【0052】
(はく離抑制機能)
例えば、
図1〜
図3、
図6及び
図7に示すはく離抑制部9B,9Cが存在しない状態で先頭車両2AがX軸方向に走行すると、車体端面3aに衝突した気流Fがこの車体端面3aの上縁部及び側縁部からはく離して、車体側面3b,3c及び車体上面3dの前端部から先頭車両2Aの進行方向後側(下流側)に離れた位置でこのはく離した気流Fが再付着する。このため、車体端面3aからの気流Fのはく離によって先頭車両2Aの先頭部の見かけの断面積が増加し、トンネルなどの固定構造物内に先頭車両2Aが突入するときに発生する圧力変動が増大する。
【0053】
一方、
図1〜
図3、
図6及び
図7(B)に示すはく離抑制部9Bが存在する状態で先頭車両2AがX軸方向に走行すると、車体端面3aに衝突した気流Fが車体側面3b,3cと内側フィン部12aとの間の間隙部Δ
21を気流Fが通過するとともに、内側フィン部12aと外側フィン部12bとの間の間隙部Δ
22を気流Fが通過する。また、
図1〜
図3及び
図7(A)に示すはく離抑制部9Cが存在する状態で先頭車両2AがX軸方向に走行すると、車体端面3aに衝突した気流Fが車体上面3dとフィン部14との間の間隙部Δ
3を気流Fが通過する。車体上面3dとフィン部14との間の間隙部Δ
3を通過する気流Fが誘導部15によって車体上面3dと整流部15aとの間に導かれる。
【0054】
図1〜
図5に示すはく離抑制部9Aを備える先頭車両2AがX軸方向に走行すると、転落防止部6の先端部6aに向かう気流Fが転落防止部6の外側表面6c及び装着部7の内側表面7cに沿って流れ、転落防止部6の内側表面6b及び装着部7の外側表面7dから車体側面3b,3cに沿って気流Fが流れる。また、はく離抑制部9Aを備える先頭車両2AがX軸方向に走行すると、転落防止部6の先端部6aに向かう気流Fが転落防止部6の内側表面6b及び装着部7の内側表面7cに沿って流れ、車体側面3b,3cとフィン部10の凹状湾曲面10aとの間の間隙部Δ
1を気流Fが通過して、車体側面3b,3cに沿って気流Fが流れる。
【0055】
このため、車体端面3aから車体側面3b,3c及び車体上面3dに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離して先頭車両2Aの先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に先頭車両2Aが突入するときに発生する圧力変動が低減される。
【0056】
この発明の第1実施形態に係る車両の転落防止構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、先頭車両2Aがこの先頭車両2Aの先頭部に他の車両を連結可能な車両であり、この先頭車両2Aに連結される他の車両とこの先頭車両2Aとの間の隙間に、乗客が転落するのを防止する転落防止部6を先頭車両2Aが備えている。このため、例えば、
図8(A)に示すような多層建て列車T
1の場合に、先頭車両2A同士の連結部の隙間に乗客が転落するのを防止することができる。また、
図9(A)に示すような増解結をする列車T
2の場合に、先頭車両2Aと中間車両2Bとの連結部の隙間に乗客が転落するのを防止することができる。その結果、先頭車両2Aと他の車両とを連結したときにこれらの連結部の隙間に乗客が転落するのを防止して安全性を向上させることができる。
【0057】
(2) この第1実施形態では、先頭車両2Aの車体端面3aに向かう気流Fを転落防止部6の内側表面6b及び外側表面6cからこの先頭車両2Aの車体側面3b,3cに導くことによって、この先頭車両2Aからの気流Fのはく離をはく離抑制部9Aが抑制する。このため、転落防止部6に衝突した気流Fが車体端面3aからはく離するのを抑制することができる。
【0058】
(3) この第1実施形態では、転落防止部6の外側表面6cから先頭車両2Aの車体側面3b,3cに向かってフィン部10が気流Fを導くとともに、転落防止部6の内側表面6bと先頭車両2Aの車体側面3b,3cとの間の間隙部Δ
1にフィン部10が気流Fを導く。このため、転落防止部6に衝突した気流Fがはく離するのを抑制して、先頭車両2Aの空気抵抗を低減することができるとともに、先頭車両2Aの先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制して、トンネル微気圧波の発生を低減することができる。また、車体端面3aに衝突した気流Fが車体側面3b,3cとフィン部10との間の間隙部Δ
1から車体側面3b,3cに抜けるため、先頭車両2Aの空気抵抗を低減することができる。
【0059】
(4) この第1実施形態では、転落防止部6をはく離抑制部9Aに装着部7が着脱自在に装着する。このため、既存の先頭車両の構造を大規模に改造せずにこの既存の先頭車両に転落防止部6を低コストで簡単に装着することができる。また、転落防止部6が劣化、損傷又は汚損したときにこの転落防止部6を簡単に取り外すことができ、新しい転落防止部6に短時間で簡単に交換することができる。
【0060】
(5) この第1実施形態では、先頭車両2Aの車体端面3aに衝突した気流Fをこの先頭車両2Aの車体側面3b,3cに導くことによって、この先頭車両2Aからの気流Fのはく離をはく離抑制部9Bが抑制する。また、この第1実施形態では、先頭車両2Aの車体端面3aに衝突した気流Fをこの先頭車両2Aの車体上面3dに導くことによって、この先頭車両2Aからの気流Fのはく離をはく離抑制部9Cが抑制する。このため、簡単な構造によって車体端面3aに衝突した気流Fがはく離するのを抑制することができる。
【0061】
(6) この第1実施形態では、先頭車両2Aの車体側面3b,3cと内側フィン部12aとの間の間隙部Δ
21にルーバー部12が気流Fを通過させるととともに、この内側フィン部12aと外側フィン部12bとの間の間隙部Δ
22にルーバー部12が気流Fを通過させる。また、この第1実施形態では、先頭車両2Aの車体上面3dとの間の間隙部Δ
3にフィン部14が気流Fを通過させる。このため、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離するのを抑制して、先頭車両2Aの空気抵抗を低減することができるとともに、先頭車両2Aの先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制して、トンネル微気圧波の発生を低減することができる。また、車体3に作用する繰り返し荷重によって発生する車体構造疲労を低減することができるとともに、気圧変動に起因して車体3内の乗客に発生する耳つん現象を低減することができる。
【0062】
(7) この第1実施形態では、フィン部14を通過する気流Fが先頭車両2Aの車体上面3dに沿って流れるように、この気流Fを先頭車両2Aの車体上面3dで誘導部15が誘導する。このため、誘導部15が車体上面3dで気流Fの流れを整えて気流Fが車体上面3dに沿って流れ、気流はく離抑制効果をより一層向上させることができる。
【0063】
(8) この第1実施形態では、先頭車両2Aの車体端面3aの下側両縁部に沿ってこの先頭車両2Aの車体端面3aから転落防止部6が突出しており、この先頭車両2Aの中心線L
0に対して転落防止部6が内側に傾斜する。このため、転落防止部6を内側に傾斜させることによって、車体端面3aに丸みを付与したのと同様の構造になり、車体端面3a付近ではく離した気流Fを車体側面3b,3cに再付着させることができる。その結果、気流Fのはく離抑制効果を向上させることができるとともに空気抵抗を低減することができ、トンネル微気圧波を低減することができる。
【0064】
(9) この第1実施形態では、転落防止部6が先端部6aに向かって厚さが薄く形成されている。このため、転落防止部6に作用する空気抵抗を低減して、異音や振動の発生を抑えることができるとともに、転落防止部6に可撓性を付与することができる。その結果、例えば、プラットホーム側から侵入する乗客に対して転落防止部6が強く接触せず柔らかく接触して、プラットホーム側に乗客を押し返すことができる。
【0065】
(10) この第1実施形態では、転落防止部6が弾性体、剛体又はこれらの組み合わせである。例えば、転落防止部6の全部を弾性体で形成したり、転落防止部6の一部を弾性体に形成したり、転落防止部6の全部を剛体に形成したりすることができる。このため、例えば、先頭車両2A同士が曲線区間を通過するときに、一方の先頭車両2A側の転落防止部6と他方の先頭車両2A側の転落防止部6とが接触しても、双方の転落防止部6が撓むため転落防止部6が破損するのを防ぐことができる。
【0066】
(第2実施形態)
以下では、
図1〜
図10に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図11〜
図14に示す転落防止部6は、先頭車両2Aの車体端面3aの両側の下側縁部に沿ってこの先頭車両2Aの車体端面3aから突出しており、
図13に示すようにこの先頭車両2Aの中心線L
0に対して略平行である。転落防止部6は、
図13に示すように、先頭車両2Aの中心線L
0に対してこの転落防止部6の中心線L
1が略平行(先頭車両2Aの進行方向に対して略平行)になるように配置されている。
【0067】
この発明の第2実施形態に係る車両の転落防止構造には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態では、先頭車両2Aの車体端面3aの下側両縁部に沿ってこの先頭車両2Aの車体端面3aから転落防止部6が突出しており、この先頭車両2Aの中心線L
0に対して転落防止部6が略平行である。このため、気流Fのはく離抑制効果を向上させることができるとともに空気抵抗を低減することができ、トンネル微気圧波を低減することができる。
【0068】
(第3実施形態)
図15〜
図18に示す先頭車両2Aは、
図1〜
図14に示す先頭車両2Aとははく離抑制部9Aの構造が異なる。
図15〜
図18に示すはく離抑制部9Aは、フィン部17などを備えている。フィン部17は、転落防止部6の外側表面6cから先頭車両2Aの車体側面3b,3cに向かって気流Fを導く部分である。フィン部17は、
図18に示すように、
図5及び
図14に示すフィン部10と同様に外観が羽根板状の部材であり、凸状湾曲面17aと、取付部17b,17cなどを備えている。フィン部17の先端部は、
図15、
図17及び
図18に示すように、車体端面3a側に湾曲しており、車体端面3aよりも僅かに前方に突出している。フィン部17の後端部は、
図3に示すように、車体側面3b,3c側に湾曲しており、これらの表面との間に段差部が形成されないように、これらの表面と同一高さ(面一)で連続している。フィン部17は、
図18に示すように、
図5及び
図14に示すフィン部10とは異なり、このフィン部17の内側表面と車体側面3b,3cとの間に隙間部を形成しておらず、転落防止部6の内側表面6bと先頭車両2Aの車体側面3b,3cとの間を気流Fが通過しない。
【0069】
図18に示す凸状湾曲面17aは、転落防止部6の外側表面6cから先頭車両2Aの車体側面3b,3cに向かって気流Fを導く部分である。凸状湾曲面17aは、先頭車両2Aと対向する側とは反対側のフィン部10の外側表面を構成しており、車体端面3a側に湾曲している。凸状湾曲面17aは、転落防止部6の外側表面6cを通過して装着部7の外側表面7dに沿って流れる気流Fがこの凸状湾曲面17aに沿って流れるように、この凸状湾曲面17aの先端部(気流Fの上流側)が転落防止部6の外側表面6cに平滑に接続されており、この凸状湾曲面17aの後端部(気流Fの下流側)が車体側面3b,3cの先端部に平滑に接続されている。
【0070】
取付部17bは、はく離抑制部9Aを装着部7に取り付ける部分である。取付部17bは、はく離抑制部9Aの先端部に平坦状に形成されており、フィン部17の高さ方向に沿って直線状に形成されている。取付部17bは、装着部7側の取付部7bと着脱自在に接合する。
【0071】
取付部17cは、装着部7を先頭車両2Aに取り付ける部分である。取付部17cは、はく離抑制部9Aの後端部に平坦状に形成されており、取付部17bと同様にフィン部17の高さ方向に沿って直線状に形成されている。取付部17cは、先頭車両2Aの車体端面3aと着脱自在に接合する。
【0072】
次に、この発明の第3実施形態に係る車両の転落防止構造の作用を説明する。
図15〜
図18に示すように、先頭車両2AがX軸方向に走行すると、転落防止部6の先端部6aに向かう気流Fが転落防止部6の外側表面6c及び装着部7の内側表面7cに沿って流れ、転落防止部6の内側表面6b及び装着部7の外側表面7dから車体側面3b,3cに沿って気流Fが流れる。このため、車体端面3aから車体側面3b,3cに気流Fが導かれて、これらの表面に沿って気流Fが流れる。その結果、車体端面3aに衝突した気流Fがはく離して先頭車両2Aの先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制し、トンネルなどの固定構造物内に先頭車両2Aが突入するときに発生する圧力変動が低減される。
【0073】
この発明の第3実施形態に係る車両の転落防止構造には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第3実施形態では、転落防止部6の外側表面6cから先頭車両2Aの車体側面3b,3cに向かって気流Fをフィン部17が導く。このため、転落防止部6に衝突した気流Fがはく離するのを抑制して、先頭車両2Aの空気抵抗を低減することができるとともに、先頭車両2Aの先頭部の見かけの断面積が増大するのを抑制して、トンネル微気圧波の発生を低減することができる。
【0074】
(第4実施形態)
図19〜
図22に示す転落防止部6は、先頭車両2Aの車体端面3aの両側の下側縁部に沿ってこの先頭車両2Aの車体端面3aから突出しており、
図21に示すようにこの先頭車両2Aの中心線L
0に対して略平行である。転落防止部6は、
図21に示すように、先頭車両2Aの中心線L
0に対してこの転落防止部6の中心線L
1が略平行になるように配置されている。フィン部17は、
図21及び
図22に示すように、このフィン部17の内側表面と車体側面3b,3cとの間に隙間部を形成しておらず、転落防止部6の内側表面6bと先頭車両2Aの車体側面3b,3cとの間を気流Fが通過しない。この第4実施形態には、第1実施形態及び第3実施形態と同様の効果がある。
【0075】
(第5実施形態)
図23及び
図24に示す先頭車両2Aは、
図1〜
図22に示す先頭車両2Aとは異なり、車体端面3aの側縁部及び上縁部が後方に後退しており、流線形に近似した構造に形成されている。
図23及び
図24に示す先頭車両2Aは、プラットホームからの乗客の転落を防止する転落防止機能を備えているが、気流Fのはく離を抑制するはく離抑制機能を備えておらず、
図1〜
図22に示す先頭車両2Aとは異なりはく離抑制部9A〜9Cを備えていない。車体3は、
図23及び
図24に示すように、台枠3jを備えており、台枠3jは先頭車両2Aの車体底面3eの一部を構成する部材であり、梁状部材を組み立てた骨組である。
【0076】
転落防止構造5は、
図23〜
図27に示す転落防止部6と、
図23、
図24及び
図27に示す装着部18などを備えている。転落防止部6は、
図23に示すように、外側表面6cが車体側面3b,3cよりも僅かに内側になるように、先頭車両2Aの中心線に対してこの転落防止部6の中心線が略平行に配置されている。転落防止部6は、
図25に示すように、車体端面3a側から見たときに、この転落防止部6の下端部が内側に僅かに湾曲している。転落防止部6は、
図27に示す先端部6aと、内側表面6bと、外側表面6cと、取付部6dと、
図26に示す外周部6eなどを備えている。外周部6eは、転落防止部6の外周を構成する部分である。外周部6eは、
図27に示す内側表面6bと外側表面6cとの間に形成されており、
図26に示すように先頭車両2Aの側面から見たときの外観が凸状の湾曲面である。
【0077】
図23、
図24及び
図27に示す装着部18は、転落防止部6を先頭車両2Aに着脱自在に装着する部分である。装着部18は、
図23及び
図24に示すように、転落防止部6を保持した状態でこの転落防止部6を車体3に取り付ける。装着部18は、先頭車両2Aの車体3にボルト又はねじなどの固定部材によって着脱自在に固定されている。装着部18は、転落防止部6を支持する支持構造として機能し、転落防止部6を車体3に強固に固定する。装着部18は、
図23に示すように、車体端面3aの両縁部の下側に配置されている。装着部18は、
図23、
図24及び
図25に示す保持部18aと、
図23及び
図24に示す支持部18b,18cなどを備えている。
【0078】
図23、
図24及び
図25に示す保持部18aは、転落防止部6を保持する部分である。保持部18aは、
図25に示すように、転落防止部6の後端部を保持し転落防止部6を所定の姿勢に保持する。保持部18aは、車体端面3a側から見たときに、転落防止部6と同様に保持部18aの下端部が内側に僅かに湾曲している。保持部18aは、
図25に示すように、固定部18dと、収容部18eと、補強部18fなどを備えている。
【0079】
図25に示す固定部18dは、転落防止部6の後端部を固定する部分である。固定部18dは、取付部18gを備えている。取付部18gは、転落防止部6を固定部18dに取り付ける部分である。取付部18gは、固定部18dの先端部に凹状に形成された溝であり、固定部18dの高さ方向に沿って直線状に形成されている。取付部18gは、転落防止部6の取付部6dの凹凸部と嵌合し、転落防止部6を着脱するときにこの転落防止部6を上下方向に移動自在にガイドする。収容部18eは、固定部18d及び補強部18fを収容する部分である。収容部18eは、例えば、金属製のケーシング部材であり、転落防止部6よりも厚く形成されている。収容部18eは、転落防止部6を突出させる突出孔18hを備えている。補強部18fは、収容部18eを補強する部分である。補強部18fは、板状部材を略S字状に屈曲させて形成されており、先端部が固定部18dに着脱自在に固定されており、後端部が収容部18eに固定されている。
【0080】
図23及び
図24に示す支持部18b,18cは、保持部18aを支持する部分である。支持部18bは、保持部18aの下側背面を連結された状態で先頭車両2Aの台枠3jに着脱自在に固定されている。支持部18cは、空気抵抗を受ける転落防止部6を強固に支持するために、先頭車両2Aのうち比較的強度が高い台枠3jから斜め上方に立ち上がり、保持部18aと車体3とを連結して保持部18aを下方から支持する。支持部18cは、保持部18aの上側背面を連結された状態で先頭車両2Aの車体端面3aに着脱自在に固定されている。支持部18cは、一方の端部が保持部18aに固定され、他方の端部が車体端面3aに固定されており、保持部18aを一定の姿勢に保持し保持部18aを補強するステーとして機能する。支持部18cは、先頭車両2Aの前面窓3gの下縁部の近傍の車体端面3aから外側斜め前方に突出し、保持部18aと車体3とを連結して保持部18aを側方から支持する。
【0081】
この発明の第5実施形態に係る車両の転落防止構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第5実施形態では、先頭車両2Aがこの先頭車両2Aの先頭部に他の車両を連結可能な車両であり、この先頭車両2Aに連結される他の車両とこの先頭車両2Aとの間の隙間に、乗客が転落するのを防止する転落防止部6を先頭車両2Aが備えている。このため、先頭車両2A同士を連結したときに、一方の先頭車両2A側の転落防止部6の先端部6aと他方の先頭車両2A側の転落防止部6の先端部6aとが突き合せた状態になり、転落防止部6が侵入防止柵として機能し、プラットホームから軌道1上の乗客の転落を防止し安全性を向上させることができる。
【0082】
(2) この第5実施形態では、転落防止部6を先頭車両2Aに装着部18が着脱自在に装着する。このため、既存の先頭車両の構造を大規模に改造せずにこの既存の先頭車両に転落防止部6を低コストで簡単に装着することができる。また、転落防止部6が劣化、損傷又は汚損したときにこの転落防止部6を簡単に取り外すことができ、新しい転落防止部6に短時間で簡単に交換することができる。さらに、装着部18の保持部18a及び転落防止部6を多種多様な先頭車両2Aの形状にかかわらず共通部品として設計し、装着部18の支持部18b,18cを多種多様な先頭車両2A毎の形状に合わせた専用部品として設計することによって、転落防止構造5を導入する際の初期費用や保守費用を低減することができる。
【実施例】
【0083】
次に、この発明の実施例について説明する。
(風洞試験装置)
図28に示す風洞試験装置20は、模型車両30に向けて空気を流したときにこの模型車両30の表面の流れの様子を観察する装置である。風洞試験装置20は、空気を吹き出すノズル(吹出口)20aと、このノズル20aからの空気を模型車両30に流す風洞測定部20bと、床面上の昇降台に設置される地面板20cと、この地面板20c上に模型車両30を支持する支柱20dと、風洞測定部20bからの空気を吸い込む図示しない吸込部(コレクタ)などを備えている。風洞試験では、風洞測定部20bが密閉型である公益財団法人鉄道総合技術研究所の大型低騒音風洞の密閉型測定部(幅5m×高さ3m×長さ20m)を使用した。風洞試験は、
図28に示すように、風洞試験装置20の風洞測定部20bに模型車両30を設置し、模型車両30に働く空気抵抗、及び模型車両30の先頭部周りの流れの可視化を測定項目として実施した。地面板20cは、長さ1490mm×幅790mmの合板製であり、幅720mm×高さ600mmのノズル20aの底面とこの地面板20cの表面とが一致するように設置した。模型車両30は、断面が翼型形状である2.5m間隔の2本の支柱20dによって、この模型車両30の下面が支持されている。
図28(A)に示すように、ノズル20aの先端から模型車両30の車両先頭部32の端面までの距離は1565mm、地面板20cの表面から模型車両30の底面までの距離は229mm(実物のレール底面から車両底面までの距離に相当)であり、試験風速U=180km/h(=50m/s)に設定した。模型車両30の幅W=560mmを代表長さとしたレイノルズ数は、Re=1.9×10
6となる。ここで、Re=UW/ν、模型車両30の幅W、空気の動粘性係数ν=1.5×10
-5 m
2/sである。この値は、現車のレイノルズ数Re=6.2×10
6(試験風速U=120km/h=33.3m/s、現車の幅W=2.8m)の約3分の1の大きさである。風洞試験では、模型車両30の上流側で発達する密閉型風洞測定部の地面板20c上の境界層の測定への影響を少なくするために、境界層吸い込み装置を常に稼働させた。模型車両30の密閉型風洞測定部に対する断面積の比(閉塞率)は、約2.1%[0.56×0.56/(5.0×3.0)=0.021]である。
図28(A)(B)に示すように、座標系は、模型車両30の車両先頭部32の上端の幅方向の中心点を原点として、レール方向(流れ方向)をX軸、まくらぎ方向をY軸、これらの右手座標系で鉛直上方をZ軸として設定した。
【0084】
(模型車両)
図28及び
図29に示す模型車両30は、実際の鉄道車両を模擬(縮小)した大型風洞試験用模型車両である。模型車両30は、
図2及び
図25に示す車両本体部31と、
図24(C)に示す車両本体部31の先端部に着脱自在に装着される車両先頭部32と、
図24(C)に示す車両本体部31の後端部に着脱自在に装着される車両後尾部33と、はく離抑制部34A〜34Cと、転落防止部35などを備えている。模型車両30は、実際の在来線型車両の5分の1の縮尺模型である。模型車両30は、高さH=560mm、幅W=560mm、全長L(7W)=3920mmであり、在来線型車両1両に相当する長さである。模型車両30は、車両断面が矩形であって、屋根面が完全にフラットな板であり、側面と屋根面が接続する部分が角であり、先端部及び後端部の形状も角である。模型車両30は、1両であり、2本の支柱20dを除き、床下機器類は一切無くフラットである。模型車両30は、先頭部から長さ0.5Wの部分に相当する車両先頭部32が交換可能な構造であり、0.5〜6.5Wの部分に相当する車両本体部31が直方体で空気抵抗測定装置40に固定する構造であり、後尾部の6.5〜7Wの部分に相当する車両後尾部33が先頭部と同様に交換可能な構造である。車両先頭部32には、
図30(A)に示すように、実際の在来線型車両の先頭部模型を設置した。車両後尾部33には、角部の丸みR=0.107Wの直方体を設置した。
図30に示すはく離抑制部34A〜34Cは、
図1〜
図7及び
図11〜
図22に示すはく離抑制部9A〜9Cに対応し、車両先頭部32に着脱自在に交換可能な構造である。
図30に示す転落防止部35は、
図1〜
図5及び
図11〜
図22に示す転落防止部6に対応し、車両先頭部32に着脱自在に交換可能な構造である。
【0085】
(空気抵抗測定装置)
図28(C)に示す空気抵抗測定装置40は、模型車両30に作用する空気抵抗を測定する装置である。空気抵抗測定装置40は、支柱20dに天秤部が固定された状態で地面板20c下に設置されている。空気抵抗測定装置40は、ピラミッド天秤(島津製作所製 ピラミッド形ロードセル式六分力天秤)であり、模型車両30に作用する空気抵抗(流れ方向に作用する力)を測定する。空気抵抗の測定では、サンプリング周波数は100Hzであり、1回の収録で30.07秒間のデータを収録し、測定した空気抵抗F
Dから空気抵抗係数C
Dを算出した。空気抵抗係数C
Dは、C
D=D
a/(0.5ρU
2A')で定義した。ここで、D
aは、空気抵抗(N)であり、ρは空気密度(kg/m
3)であり、A'は模型車両30の正面から見た投影面積(0.56×0.56=0.3136m
2)である。なお、測定される空気抵抗F
Dは、支柱20dの空気抵抗分も含んでいる。
【0086】
(タフト法による可視化)
図28及び
図29に示すように、模型車両30の周りの流れの様子を調べるためタフト法による可視化を実施した。ここで、タフト法とは、物体表面の流れの様子を糸又は毛糸などの気流糸を用いて観察し、流れの方向、はく離域及び不安定域などを可視化したものである。
図28及び
図29に示すタフト50は、模型車両30の表面の流れの様子を観察するための部材である。タフト50は、白色の綿糸#30であり、
図29(A)(B)に示す車体表面(屋根面及び側面)の所定の位置にあけられた小さな穴に差し込まれてボンドで固定されている。タフト50は、車両先頭部32の周りの4列分については固定間隔50mmピッチで配置し、この4列分についてはタフト50の長さを30mmに設定し、車両本体部31の34列分については固定間隔100mmピッチで配置し、この34列分についてはタフト50の長さを40mmに設定した。流れの様子は、ディジタルカメラで記録した。タフト50の動きを捉えるためにカメラのシャッタ速度は1/20秒に設定した。風洞試験では、タフト50が主流と逆方向に向いている領域を流れのはく離領域と見なし、タフト50が主流方向を向いている場合をはく離無しの領域と見なした。なお、流れは、はく離領域とはく離無し領域との間で再付着する。
【0087】
(はく離抑制部及び転落防止部の模型)
図30に示すはく離抑制部34A〜34C及び転落防止部35を、
図28及び
図29に示す模型車両30の車両先頭部32に取り付けて、風洞試験装置20によって模型車両30に作用する空気抵抗及び車両先頭部32周りの流れの可視化を測定した。はく離抑制部34A〜34Cは、
図29(C)及び
図30(A)に示すように、
図1〜
図7及び
図11〜
図22に示すはく離抑制部9A〜9Cと同じ位置に取り付けられており、はく離抑制部34Aは車両先頭部32の側下半分に取り付けられており、はく離抑制部34Bは車両先頭部32の側上半分、側下端及び肩部に取り付けられており、はく離抑制部34Cは上縁部に取り付けられている。転落防止部35は、
図30(A)に示すように、
図1〜
図5及び
図11〜
図22に示す転落防止部6と同じ位置である車両先頭部32の側上半分に取り付けた。転落防止部35については、形状を様々に変化させて流れのはく離抑制効果の大きい形状について検討した。風洞試験では、
図31に示すように、実施例1-1〜1-4及び実施例2-1〜2-4についてそれぞれ4種類ずつ取り付け角度を変えて、合計8種類の形状について検討した。
【0088】
(実施例1-1〜1-4)
図31(A)〜(D)に示す実施例1-1〜1-4は、はく離抑制部34Aと模型車両30の車両先頭部32との間に隙間が形成されておらず、
図15〜
図22に示す第3実施形態及び第4実施形態に対応する。
図31(A)に示す実施例1-1は、転落防止部35の中心線が模型車両30の中心線に対して平行であり、
図19〜
図22に示す第4実施形態に対応する。
図31(B)〜(D)に示す実施例1-2〜1-4は、転落防止部35の中心線が模型車両30の中心線に対して傾斜角度θで傾斜しており、
図15〜
図18に示す第3実施形態に対応する。
図31(B)〜(D)に示す実施例1-2〜1-4は、傾斜角度θを最大30°程度まで少しずつ変化させており、
図31(B)に示す実施例1-2は傾斜角度θ=8.5°であり、
図31(C)に示す実施例1-3は傾斜角度θ=16°であり、
図31(D)に示す実施例1-4は傾斜角度θ=30°である。
【0089】
(実施例2-1〜2-4)
図31(E)〜(H)に示す実施例2-1〜2-4は、
図31(A)〜(D)に示す実施例1-1〜1-4とは異なり、はく離抑制部34Aと模型車両30の車両先頭部32との間に隙間が形成されており、車両先頭部32に向かう空気流がこの隙間を通り抜けることが可能である。
図31(E)〜(H)に示す実施例2-1〜2-4は、
図1〜
図5及び
図11〜
図14に示す第1実施形態及び第2実施形態に対応する。
図31(E)に示す実施例2-1は、転落防止部35の中心線が模型車両30の中心線に対して平行であり、
図11〜
図14に示す第2実施形態に対応する。
図31(F)〜(H)に示す実施例2-2〜2-4は、転落防止部35の中心線が模型車両30の中心線に対して傾斜角度θで傾斜しており、
図1〜
図5に示す第1実施形態に対応する。
図31(F)〜(H)に示す実施例2-2〜2-4は、レール長さ方向を0°として車両先頭部32の前面(内側)方向に最大30°程度まで少しずつ変化させており、
図31(F)に示す実施例2-2は傾斜角度θ=11°であり、
図31(G)に示す実施例2-3は傾斜角度θ=22°であり、
図31(H)に示す実施例2-4は傾斜角度θ=33°である。
【0090】
(空気抵抗の測定結果)
図32に示す空気抵抗係数C
Dは、
図30に示すように、肩部、側上半分及び側下端にはく離抑制部34Bを設置し、上縁部にはく離抑制部34Cを設置し、側下半分のはく離抑制部34A及び転落防止部35の形状を変化させた場合の実施例1-1〜1-4及び実施例2-1〜2-4の空気抵抗係数C
Dの測定結果である。
図32に示す比較例は、はく離抑制部34A〜34C及び転落防止部35を設置しなかった場合の空気抵抗係数C
Dの測定結果である。
【0091】
空気抵抗係数C
Dは、
図32に示すように、無対策の比較例が最も大きいことが確認された。実施例1-1〜1-4と実施例2-1〜2-4とを比較すると、実施例2-1〜2-4のほうが実施例1-1〜1-4よりも空気抵抗係数C
Dが小さいことが確認された。このため、
図1〜
図5及び
図11〜
図22に示すような転落防止部6を先頭車両2Aに設置する場合には、はく離抑制部9Aと車体側面3b,3cとの間に隙間を形成し、車体端面3aに向かう空気流れがこの隙間を通り抜ける構造にすることによって、先頭車両2Aに作用する空気抵抗を低減可能なことが確認された。
【0092】
実施例1-1〜1-4と実施例2-1〜2-4とをそれぞれ比較した場合には、
図32に示すように転落防止部35がレール長さ方向に対して平行な方向に向いている実施例1-1及び実施例2-1の空気抵抗係数C
Dが最も大きいことが確認された。このため、
図1〜
図5及び
図11〜
図22に示すような転落防止部6を先頭車両2Aに設置する場合には、レール長さ方向に対して転落防止部6を内側(車体端面3a方向)に傾ける構造にすることによって、先頭車両2Aに作用する空気抵抗を低減可能なことが確認された。
【0093】
また、実施例1-2〜1-4と実施例2-2〜2-4とをそれぞれ比較した場合には、転落防止部35をレール長さ方向に対する傾斜角度θが大きくなるにつれて空気抵抗係数C
Dが小さくなり、実施例1-4及び実施例2-4程度の傾斜角度θで空気抵抗係数C
Dが略一定値になることが確認された。このため、
図1〜
図5及び
図15〜
図18に示すような転落防止部6を先頭車両2Aに傾斜角度θだけ傾けて設置する場合には、傾斜角度θを15°〜35°の範囲内に設定することによって、先頭車両2Aに作用する空気抵抗を最も効果的に低減可能なことが確認された。
【0094】
さらに、空気抵抗係数C
Dは、
図32に示すように、実施例2-3及び実施例2-4が最も小さいことが確認された。このため、
図1〜
図5に示すような転落防止部6を先頭車両2Aに傾斜角度θだけ傾けて設置し、かつ、はく離抑制部9Aと車体側面3b,3cとの間に隙間を形成する場合には、特に傾斜角度θを20°〜35°の範囲内に設定することによって、先頭車両2Aに作用する空気抵抗を最も効果的に低減可能なことが確認された。
【0095】
(流れの可視化による測定結果)
図28及び
図29に示すタフト50の動きからはく離の有無などを確認し、
図33に示すように模型車両30の車両先頭部32の周りの流れの様子を判定した。ここで、
図33に示すタフト列番号は、模型車両30の上面及び側面で空気流がはく離する位置(側面)を示すタフト50の番号であり、車両先頭部32の端面から最も離れた位置で逆流の状態を示すタフト50の番号である。
図34(B)に示すように、無対策の比較例の場合には、模型車両30の上面及び側面ともにタフト50の乱れが大きい。
図34(B)に示すように、模型車両30の上面及び側面のタフト50の向きにはばらつきがあるが、先頭から1〜5列目(0.09〜0.64W)では流れと逆方向にタフト50が向き、6〜9列目(0.82〜1.36W)では逆方向から順方向へタフト50の向きが変化し、10列目(1.54W)以降では順方向にタフト50が向いている。これらのタフト50の変化より車両先頭部32の端部から流れがはく離しており、タフト50の9列目(1.36W)付近で再付着していることが確認された。
【0096】
一方、
図34(A)に示すように、空気抵抗係数C
Dが最も小さい実施例2-4の場合には、車両先頭部32の上面及びはく離抑制部34Cの上面に貼り付けたタフト50が流れ方向(順方向)に沿って真直ぐに並んでいることから、模型車両30の上面にははく離が存在しない。一方、模型車両30の側面のタフト50は、側上半分及び側下端の後流側が5列目及び4列目までやや乱れているが、7列目以降では順方向にタフト50が向いており、タフト50の6列目付近で再付着していることが確認された。
【0097】
図33に示すように、実施例1-1〜1-4及び実施例2-1〜2-4は、無対策の比較例に比べて、はく離位置を示すタフト列番号が小さく、流れがはく離しても直ぐに再付着しておりはく離領域が狭いことが確認された。特に、実施例1-3及び実施例2-2〜2-4については、はく離領域のレール長さ方向の長さが5列目(0.64W)であり、いずれも略同じはく離位置になることが確認された。
【0098】
以上より、実施例2-3及び実施例2-4が最も流れのはく離抑制効果が高く、かつ、空気抵抗が小さくなり、微気圧波の低減効果が期待できることが確認された。また、転落防止部35と模型車両30の表面との間に隙間を形成し、模型車両30の前面への空気流れがこの隙間を模型車両30の側面へ抜ける構造にすることによって、流れのはく離抑抑制効果を向上させることが確認された。さらに、転落防止部35を模型車両30の内側に20°〜35°傾斜させることによって、流れのはく離抑抑制効果をより一層向上させることが確認された。
【0099】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、先頭車両2A同士を連結する場合又は先頭車両2Aと中間車両2Bとを連結する場合を例に挙げて説明したが、先頭車両2Aの運転室側とは反対側の妻面と先頭車両2Aの運転室側の妻面とを連結する場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、転落防止部6の先端部6a寄りの外側表面6cの一部を傾斜面に形成する場合を例に挙げて説明したが、外側表面6cの全部を傾斜面に形成することもできる。さらに、この第1実施形態〜第4実施形態では、転落防止部6及びはく離抑制部9Aを車体端面3aの側下半分に設置し、はく離抑制部9Bを車体端面3aの側下端に設置する場合を例に挙げて説明したが、はく離抑制部9Bを省略し、転落防止部6及びはく離抑制部9Aを側下端まで伸ばして設置することもできる。
【0100】
(2) この第1実施形態〜第4実施形態では、はく離抑制部9Bが内側フィン部12a及び外側フィン部12bの二重羽根構造である場合を例に挙げて説明したが、外側フィン部12bを省略してはく離抑制部9Bを1枚フィン構造にすることもできる。同様に、この第1実施形態〜第4実施形態では、はく離抑制部9Cがフィン部14の1枚フィン構造である場合を例に挙げて説明したが、はく離抑制部9Cを内側フィン部及び外側フィン部の二重羽根構造にすることもできる。また、この第1実施形態〜第4実施形態では、はく離抑制部9Cを車体端面3aの上縁部に設置する場合を例に挙げて説明したが、はく離抑制部9Cを省略することもできる。さらに、この第1実施形態〜第4実施形態では、車体端面3aの形状が切妻形状である場合を例に挙げて説明したが、車体端面3aの縁部に面取り又は丸みがなく直角の場合や流線型の場合などについてもこの発明を適用することができる。
【0101】
(3) この第5実施形態では、車体端面3aの形状がこの車体端面3aの上側を後方に傾斜させた形状である場合を例に挙げて説明したが、車体端面3aを切妻形状にした場合や、車体端面3aの縁部に丸みを形成した場合などについてもこの発明を適用することができる。また、この第5実施形態では、先頭車両2Aの中心線に対して転落防止部6の中心線が略平行になるようにこの転落防止部6を配置する場合を例に挙げて説明したが、車体端面3a側に転落防止部6を傾斜させて配置させることもできる。