特開2015-120681(P2015-120681A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-120681ベンジルフェニルフェノキシ化合物及びそれを含む光学材料用樹脂組成物並びに該組成物を硬化させた硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-120681(P2015-120681A)
(43)【公開日】2015年7月2日
(54)【発明の名称】ベンジルフェニルフェノキシ化合物及びそれを含む光学材料用樹脂組成物並びに該組成物を硬化させた硬化物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/54 20060101AFI20150605BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20150605BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20150605BHJP
【FI】
   C07C69/54 BCSP
   C08F220/20
   C07C67/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-233696(P2014-233696)
(22)【出願日】2014年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-238719(P2013-238719)
(32)【優先日】2013年11月19日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391052574
【氏名又は名称】三光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成寿
(72)【発明者】
【氏名】青木 優
(72)【発明者】
【氏名】細井 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小宮 直城
(72)【発明者】
【氏名】村田 晃二
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB46
4H006AC48
4H006BJ50
4H006KA06
4H006KE20
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA02Q
4J100BA03Q
4J100BA06Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA63
4J100JA01
4J100JA33
4J100JA35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高屈折率であって、希釈性に優れ、かつ経時安定性に優れたベンジルフェニルフェノキシ化合物の提供。
【解決手段】下記式(I)で表されるベンジルフェニルフェノキシ化合物。

[前記式(I)中、R1及びR2は、それぞれ、水素原子又はメチル基を表す。t及びuは、それぞれ、0〜3の整数を表す。Ra、Rb及びRcは、それぞれ、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。a1、a2及びa3は、0〜4の整数を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるベンジルフェニルフェノキシ化合物。
[前記式(I)中、
1及びR2は、それぞれ、水素原子又はメチル基を表す。
t及びuは、それぞれ、0〜3の整数を表す。
a、Rb及びRcは、それぞれ、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
a1、a2及びa3は、0〜4の整数を表す。]
【請求項2】
下記式(II)で表される請求項1に記載のベンジルフェニルフェノキシ化合物。
[前記式(II)中、
1は、水素原子又はメチル基を表す。
uは、0〜3の整数を表す。
a、Rb及びRcは、それぞれ、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
a1、a2及びa3は、0〜4の整数を表す。]
【請求項3】
下記式(III)で表される請求項2に記載のベンジルフェニルフェノキシ化合物。
[前記式(III)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。]
【請求項4】
請求項1〜3に記載のベンジルフェニルフェノキシ化合物を含む光学材料用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の光学材料用樹脂組成物100重量部に対し、60重量部以上100重量部未満の前記ベンジルフェニルフェノキシ化合物を含む、請求項4に記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、前記ベンジルフェニルフェノキシ化合物と共重合可能なモノマーであって、かつアクリル酸誘導体及びメタクリル酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上のモノマーを含有する、請求項4又は5に記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項7】
25℃における屈折率が1.570以上である、請求項4〜6のいずれか一項記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、光重合開始剤又は熱重合開始剤を含有する、請求項4〜7のいずれか一項記載の光学材料用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか一項記載の光学材料用樹脂組成物を、光又は熱によって共重合させた硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベンジルフェニルフェノキシ化合物、及びそれを含む光学材料用樹脂組成物に関し、より詳細には、高屈折率コーティング材料等に好適な光学材料用樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ、ノートパソコン、携帯ゲーム機、携帯電話等の液晶表示装置は、小型化、高輝度化の要求が高くなっており、これらの性能を実現するためには、プリズムシートの高屈折率化が不可欠であることがわかっている。また、液晶表示装置の表面に施すハードコート剤は、反射防止性を向上させるために高屈折率の樹脂材料が要求されている。さらに、眼鏡レンズ、光ファイバー等の光学部材においても、反射防止性能を付与するため、高屈折率の樹脂材料が要求されている。
【0003】
上述のように、高屈折率の樹脂材料のニーズは、幅広い用途で存在し、それ故これまで高屈折率の樹脂材料を提供する試みがなされてきた。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2010−248358号公報)及び特許文献2(特開2013−053310号公報)は、高屈折率の樹脂材料として、フルオレン骨格を有する二官能アクリレート化合物を開示している。また、特許文献3(特開2012−082387号公報)には、高屈折率の樹脂材料として、以下に示す化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−248358号公報
【特許文献2】特開2013−053310号公報
【特許文献3】特開2012−082387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フルオレン骨格を有する多官能アクリレート化合物は、高屈折率である一方で非常に高粘度のため、取り扱いにはモノマー希釈による低粘度化が不可避である。従来の希釈モノマーは屈折率が低く、得られる樹脂の屈折率が低下しやすいというデメリットがあった。また、各種用途の市場ニーズにおいて、さらなる高屈折率の原材料の登場が待望されている。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高屈折率であって、希釈性に優れ、かつ経時安定性に優れたベンジルフェニルフェノキシ化合物を提供することである。当該ベンジルフェニルフェノキシ化合物を含む本発明の光学材料用樹脂組成物は、液状物に調製しやすいため、取り扱いが簡便であるという優れた効果を示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕下記式(I)で表されるベンジルフェニルフェノキシ化合物。
[前記式(I)中、
1及びR2は、それぞれ、水素原子又はメチル基を表す。
t及びuは、それぞれ、0〜3の整数を表す。
a、Rb及びRcは、それぞれ、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
a1、a2及びa3は、0〜4の整数を表す。]
〔2〕下記式(II)で表される〔1〕に記載のベンジルフェニルフェノキシ化合物。
[式(II)中、
1は水素原子又はメチル基を表す。
uは、0〜3の整数を表す。
a、Rb及びRcは、それぞれ、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
a1、a2及びa3は、0〜4の整数を表す。]
〔3〕下記式(III)で表される〔2〕に記載のベンジルフェニルフェノキシ化合物。
[前記式(III)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。]
〔4〕〔1〕〜〔3〕に記載のベンジルフェニルフェノキシ化合物を含む光学材料用樹脂組成物。
〔5〕〔4〕記載の光学材料用樹脂組成物100重量部に対し、60重量部以上100重量部未満の前記ベンジルフェニルフェノキシ化合物を含む、〔4〕に記載の光学材料用樹脂組成物。
〔6〕さらに、前記ベンジルフェニルフェノキシ化合物と共重合可能なモノマーであって、かつアクリル酸誘導体及びメタクリル酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上のモノマーを含有する、〔4〕又は〔5〕に記載の光学材料用樹脂組成物。
〔7〕25℃における屈折率が1.570以上である、〔4〕〜〔6〕のいずれか記載の光学材料用樹脂組成物。
〔8〕さらに、光重合開始剤又は熱重合開始剤を含有する、〔4〕〜〔7〕のいずれか記載の光学材料用樹脂組成物。
〔9〕〔4〕〜〔8〕のいずれか記載の光学材料用樹脂組成物を、光又は熱によって共重合させた硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のベンジルフェニルフェノキシ化合物は、高屈折率であって、希釈性に優れ、かつ経時安定性に優れる。当該ベンジルフェニルフェノキシ化合物を含む本発明の光学材料用樹脂組成物は、液状物に調製しやすいため、取り扱いが簡便であるという優れた効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ベンジルフェニルフェノキシ化合物>
本発明のベンジルフェニルフェノキシ化合物は、下記式(I)で表される。
[前記式(I)中、
1及びR2は、それぞれ、水素原子又はメチル基を表す。
t及びuは、それぞれ、0〜3の整数を表す。
a、Rb及びRcは、それぞれ、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
a1、a2及びa3は、0〜4の整数を表す。]
【0011】
上記式(I)中のRa、Rb及びRcにおける炭化水素基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
上記のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基のような直鎖状アルキル基;iso−ブチル基、tert−ブチル基のように分岐状アルキル基が挙げられる。
上記の脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式の脂環式炭化水素基;アダマンチル基、ノルボルニル基等の多環式の脂環式炭化水素基が挙げられる。
上記の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、p−メチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等が挙げられる。
t及びuは、0〜2であることが好ましく、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。t及びuの整数値が小さいほど、分子内に占めるベンゼン環の割合が多くなるため、高屈折率の化合物を得ることができる。
a1、a2及びa3は、1以上であってもよいが、高屈折率のベンジルフェニルフェノキシ化合物を得る観点からは、0であることが好ましい。ベンジルフェニルフェノキシ化合物に含まれるベンゼン環に置換基がないことにより、化合物中のベンゼン環の割合を多くすることができ、屈折率を高めることができる。本発明のベンジルフェニルフェノキシ化合物は、分子構造中に硫黄原子及びハロゲン原子を含まないことにより、臭気や経時の色味の変化を抑えることができる。
a1が2以上の場合、複数のRaはそれぞれ同一又は相異なり、a2が2以上の場合、複数のRbはそれぞれ同一又は相異なり、a3が2以上の場合、複数のRcはそれぞれ同一又は相異なる。
【0012】
上記tが0である以下の式(II)で表されるベンジルフェニルフェノキシ化合物が好ましい。tが0であることにより、化学構造的に合成しやすいという利点がある。
[式(II)中、
1は水素原子又はメチル基を表す。
uは、0〜3の整数を表す。
a、Rb及びRcは、それぞれ、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
a1、a2及びa3は、0〜4の整数を表す。]
【0013】
上記t、u、a1、a2及びa3がいずれも0である以下の式(III)で表されるベンジルフェニルフェノキシ化合物であることが好ましい。かかる化合物は、屈折率が高い上に、化学構造的に合成しやすいというメリットもある。
[前記式(III)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。]
【0014】
かかるベンジルフェニルフェノキシ化合物は、高屈折率の硬化膜を形成するための光学材料用樹脂組成物に好適に用いられる。本発明の化合物を含む光学材料用樹脂組成物は、従来の化合物に比して、経時安定性に優れる上に、屈折率も高いという性質を示す。
【0015】
式(1)で表される化合物が高屈折率を示す理由はおそらく、1分子中に含まれるベンゼン環の割合が多いことによるものと考えられる。つまり、ベンゼン環は比較的動きやすいπ原子を当該ベンゼン環平面に垂直方向に含むため、かかるπ電子の作用により環平面方向の屈折率が高められるものと推察される。
【0016】
<ベンジルフェニルフェノキシ化合物の製造方法>
本発明のベンジルフェニルフェノキシ化合物の製造方法は、ベンジルオルソフェニルフェノール(又はベンジルパラフェニルフェノール)のヒドロキシル基(OH基)に対し、ジアクリル酸無水物又はジメタクリル酸無水物をエステル化反応させることにより、当該OH基にアクリレート基を導入して得られる。反応機構の詳細は実施例にて詳述する。なお、実施例1〜4においては、t、u、a1、a2及びa3がいずれも0の場合の合成手順を説明するが、これらの各文字が1以上であっても同様であり、下記の合成手順以外の合成方法として、フィッシャーエステル化反応、エステル交換反応、塩化(メタ)アクリルによるショッテン・バウマン反応など、各種のエステル化反応でもベンジルフェニルフェノキシ化合物を得ることができる。また、ベンゼン環とヒドロキシル基(OH基)との間にポリエチレングリコール鎖又はポリプロピレングリコール鎖を有していてもよい。なお、ベンジルオルソフェニルフェノール(又はベンジルパラフェニルフェノール)のヒドロキシル基(OH基)と、当該ヒドロキシル基に結合するベンゼン環との間に、炭素数1〜3のアルカンジイル基を有する場合、及び(ポリ)オキシエチレン鎖又は(ポリ)オキシプロピレン鎖を有する場合も、同様の製造方法で製造することができる。
【0017】
<光学材料用樹脂組成物>
本発明の光学材料用樹脂組成物は、上記ベンジルフェニルフェノキシ化合物を少なくとも含む。かかる化合物を含むことにより、光学材料用樹脂組成物を液状物として調製しやすいという優れた効果を示す。液状物として調製しやすいことにより、硬化前の形状を自由に制御することができる。
【0018】
上記ベンジルフェニルフェノキシ化合物は、光学材料用樹脂組成物100重量部に対し、60重量部以上100重量部未満で含むことが好ましい。このような割合で含まれることにより、光学材料用樹脂組成物の屈折率を顕著に高め得るという優れた効果を示す。上記ベンジルフェニルフェノキシ化合物の含有量は、65重量部以上90重量部以下が好ましく、より好ましくは70重量部以上85重量部以下である。
【0019】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、ベンジルフェニルフェノキシ化合物と共重合可能なモノマーであって、かつアクリル酸誘導体及びメタクリル酸誘導体からなる群より選ばれる1種以上のモノマーを含むことが好ましい。このようなモノマーをベンジルフェニルフェノキシ化合物とともに硬化させることにより、硬化物の硬度を高め得る。ここで、アクリル酸誘導体としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、(ポリ)オキシエチレン鎖を有するアクリル酸及び(ポリ)オキシプロピレン鎖を有するアクリル酸が挙げられる。また、メタクリル酸誘導体としては、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、(ポリ)オキシエチレン鎖を有するメタクリル酸及び(ポリ)オキシプロピレン鎖を有するメタクリル酸が挙げられる。
【0020】
本発明の光学材料用樹脂組成物は、光重合開始剤又は熱重合開始剤のいずれかを含有することが好ましい。かかる開始剤のいずれかを含むことにより、熱又は光を照射したときに、ベンジルフェニルフェノキシ化合物の共重合反応を進行させることができ、共重合の開始のタイミングを適切に制御し得るというメリットがある。
【0021】
<硬化物>
本発明の硬化物は、上記光学材料用樹脂組成物を共重合させて得られるものである。かかる共重合は、光によって開始する重合反応であることが好ましい。光硬化は、熱硬化に比して、重合開始のタイミングを制御しやすいからである。
【0022】
かかる硬化物は、25℃における屈折率が1.570以上であることが好ましい。このような屈折率を示す材料が各種用途に要求されているからである。この屈折率は、1.585以上であることが好ましく、より好ましくは1.590以上である。
【0023】
<用途>
本発明の硬化物は、液晶テレビ、ノートパソコン、携帯ゲーム機、携帯電話等の液晶表示装置に用いるプリズムシート、液晶表示装置の表面に施すハードコート剤、眼鏡レンズ、光ファイバー等の分野で有用である。
【実施例】
【0024】
実施例を挙げて本発明を説明する。実施例1〜4では、本発明のベンジルフェニルフェノキシ化合物(ベンジルフェニルフェノール(メタ)アクリル酸エステル)を合成した。
【0025】
(実施例1)
シクロヘキサン200gに対し、下記式(2)で表されるベンジルオルソフェニルフェノール100gと、メトキノン0.5gと、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.2gと、ハイドロキノン0.05gと、メタンスルホン酸7gとを溶解させた。
【0026】
上記で得られた反応液を70℃に加熱した後、53.3gのジアクリル酸無水物を5分間滴下した。滴下終了後、70〜75℃に保ちながら7時間攪拌することにより、エステル化反応させた。反応終了後の反応液を、20重量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより、有機層を濃縮し、下記式(3)で表されるベンジルオルソフェニルフェノールアクリル酸エステル(液体)を得た。
【0027】
上記化合物の同定は、プロトン核磁気共鳴分光法により行なった。結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3、δ in ppm)7.20−7.38(m,13H),6.32(d,1H),6.08(dd,1H),5.84(d,1H),3.91(s,2H)
【0028】
(実施例2)
実施例1における「53.3gのジアクリル酸無水物」を「65.1gのジメタクリル酸無水物」に代えたことが異なる他は、実施例1と同様にして下記式(4)で表されるベンジルオルソフェニルフェノールメタクリル酸エステル(液体)を得た。
上記化合物の同定は、プロトン核磁気共鳴分光法により行なった。結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3、δ in ppm)7.20−7.38(m,13H),6.06(s,1H),5.52(s,1H),3.91(s,2H),1.79(s,3H)
【0029】
(実施例3)
シクロヘキサン70gに対し、下記式(5)で表されるベンジルパラフェニルフェノール30gと、メトキノン0.2gと、2,6−ジ-tert-ブチル−4−メチルフェノール0.07gと、ハイドロキノン0.02gと、メタンスルホン酸2gとを溶解させた。
【0030】
上記で得られた反応液を70℃に加熱した後、16.0gのジアクリル酸無水物を5分間滴下した。滴下終了後、70〜75℃で5時間攪拌することにより、エステル化反応させた。反応終了後の反応液を、20重量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより、有機層を濃縮し、下記の式(6)で表されるベンジルパラフェニルフェノールアクリル酸エステル(固体)を得た。
上記化合物の同定は、プロトン核磁気共鳴分光法により行なった。結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3、δ in ppm):7.16−7.53(m,13H),6.52(d,1H),6.30(dd,1H),5.99(d,1H),3.96(s,2H)
【0031】
(実施例4)
実施例3における「16.0gのジアクリル酸無水物」を「19.5gのジメタクリル酸無水物」に代えたことが異なる他は、実施例3と同様にして下記式(7)で表されるベンジルオルソフェニルフェノールメタクリル酸エステル(固体)を得た。
上記化合物の同定は、プロトン核磁気共鳴分光法により行なった。結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3、δ in ppm):7.17−7.54(m,13H),6.26(s,1H),5.72(s,1H),3.96(s,2H),2.01(s,3H)
【0032】
(特性評価)
実施例1〜4のベンジルフェニルフェノキシ化合物に対し、表1の左欄に示す物性評価を行なった。
【0033】
【表1】
表1中「外観」は、目視による外観評価である。
表1中「屈折率」は、アッベ屈折計(アタゴ株式会社製)を用いて、25℃における屈折率を測定した値である。
表1中「粘度」は、E型粘度計(東機産業株式会社製)により、25℃における粘度を測定した値である。
表1中「融点」は、示差走査熱量計(株式会社リガク製)により測定した値である。
【0034】
(実施例5〜10)
以下の表2に示す配合比で各材料を混合することにより、光学材料用樹脂組成物を作製した。表2中、組成物の含有量を表す数値は質量部を意味する。
【0035】
【表2】
※1 JER 1001:ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製)
※2 エトキシ化オルソフェニルフェノールアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
※3 ダロキュア1173:光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製)
※4 「硬化性」は、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン株式会社製)を用いて1000mJ/cmの紫外線を照射することにより、組成物を重合させて硬化物を形成し、当該硬化物を指触で評価した結果である。完全に膜状に硬化している場合に「◎」、完全に膜状に硬化しているとまでは言えずとも十分な硬化が認められた場合に「○」と評価した。
表2中「屈折率」及び「粘度」は、表1の評価方法と同様の方法により評価した結果である。
表2の「粘度」及び「屈折率」に示す結果から、本発明の光学材料用樹脂組成物は、液状であることから希釈性に優れ、かつ屈折率が高いという性質を示すことが明らかとなった。さらに、実施例5〜10の「硬化性」の結果から、本発明の光学材料用樹脂組成物を光硬化させたときに、十分な硬化性を有することも実証された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の化合物を含む組成物及びその硬化物は、液晶テレビ、ノートパソコン、携帯ゲーム機、携帯電話等の液晶表示装置に用いるプリズムシート、液晶表示装置の表面に施すハードコート剤、眼鏡レンズ、光ファイバー等に好適に用いることができ、産業上有用である。