【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のホットメルト接着剤は、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)とを含むホットメルト接着剤であって、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、上記ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、上記粘着付与樹脂(C)及び上記数平均分子量が200〜3000であるワックスの総重量に対して、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(A)10〜50重量%、上記ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)10〜40重量%、上記粘着付与樹脂(C)30〜60重量%及び上記数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)10〜30重量%を含有していることを特徴とする。
【0012】
本発明のホットメルト接着剤を構成しているエチレン−α−オレフィン共重合体(A)中のα−オレフィン成分としては、特に限定されないが、炭素数が3〜20のα−オレフィンが好ましい。
【0013】
炭素数が3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられ、ホットメルト接着剤に柔軟性を付与し且つ低温接着性を向上させる点から、炭素数が6〜8のα−オレフィンが好ましく、1−オクテンがより好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のα−オレフィン成分は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0014】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)中におけるα−オレフィンの含有量は、少なすぎると、ホットメルト接着剤が硬くなり、ホットメルト接着剤の低温接着性が低下する虞れがあり、多すぎると、ホットメルト接着剤の柔軟性が過度になり、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下することがあるので、3〜40重量%が好ましく、20〜40重量%が好ましく、30〜40重量%がより好ましい。
【0015】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のメルトフローレイト(MFR)は、低すぎると、ホットメルト接着剤の塗工性が低下することがあり、高すぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下することがあるので、50〜2500g/10分が好ましく、150〜2500g/10分がより好ましく、200〜800g/10分が特に好ましい。なお、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して190℃ 、荷重21.18 Nの条件下にて測定された値をいう。
【0016】
エチレン−1−オクテン共重合体としては、シングルサイトメタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−1−オクテン共重合体が、ダウケミカル社から商品名「アフィニティGA1875」( MFR:1250g/10分 )、商品名「アフィニティG A 1900」( MFR:1000g/10分 )、商品名「アフィニティGA1950」(MFR:500g/10分) にて市販されている。
【0017】
ホットメルト接着剤中におけるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)の含有量は、少なすぎると、ホットメルト接着剤の柔軟性が低下し、低温条件下において、ホットメルト接着剤の固化物が割れてしまい、ホットメルト接着剤の低温接着性が低下することがあり、多すぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下し又はホットメルト接着剤の被着体への濡れ性の低下に起因した接着不良を生じるので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量に対して、10〜50重量%に限定され、10〜40重量%が好ましい。
【0018】
本発明のホットメルト接着剤がビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)を含有していることによって、ホットメルト接着剤は優れた柔軟性を付与し、低温条件下での接着性(低温接着性)が向上している。
【0019】
ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)としては、特に限定されず、例えば、スチレン− ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS) 、スチレン− イソプレンゴム−スチレンブロック共重合体(SIS) 、スチレン− エチレン・ブチレン− スチレンブロック共重合体(SEBS) 、スチレン−エチレン・ プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられ、ホットメルト接着剤の高温条件下での接着性が優れていることから、スチレン− エチレン・ブチレン− スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・ プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が好ましく、スチレン− エチレン・ブチレン− スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)は、例えば、クレイトンポリマージャパン社から商品名「クレイトンG1652E」(スチレン含有量:29重量%)、商品名「クレイトンG1660H」(スチレン含有量:30重量%)などにて市販されている熱可塑性ブロック共重合体を用いることができる。
【0020】
ホットメルト接着剤中におけるビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)の含有量は、少なすぎると、低温条件下にてホットメルト接着剤の柔軟性が低下してホットメルト接着剤の固化物が割れてしまい、ホットメルト接着剤の低温接着性が低下することがあり、多すぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下したり、ホットメルト接着剤の被着体への濡れ性の低下に起因した接着不良を生じたり、又は、ホットメルト接着剤の溶融時の粘度が高くなってホットメルト接着剤の塗布性が低下することがあるので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量に対して、10〜40重量%に限定され、10〜30重量%が好ましい。
【0021】
ホットメルト接着剤を構成している粘着付与樹脂(C)としては、特に限定されず、例えば、テルペン系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ロジン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂、水素添加C5系石油樹脂、水素添加C9系石油樹脂、水素添加ロジン系樹脂などが挙げられ、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)との相溶性が向上し、ホットメルト接着剤の低温接着性及び高温接着性が向上するので、水素添加テルペン系樹脂、水素添加C5系石油樹脂、水素添加C9系石油樹脂、水素添加ロジン系樹脂が好ましく、ホットメルト接着剤の低温接着性及び高温接着性がより向上するので、水素添加C5系石油樹脂、水素添加C9系石油樹脂、水素添加テルペン系樹脂が好ましく、水素添加C5系石油樹脂がより好ましい。なお、粘着付与樹脂(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0022】
C5系石油樹脂とは、ナフサの熱分解によって副生されたC5留分を重合して得られる樹脂をいう。
【0023】
C9系石油樹脂とは、ナフサの熱分解によって副生されたC9留分を重合して得られる樹脂をいう。
【0024】
テルペン系樹脂とは、松の木からロジンを得る際に同時に得られるテレピン油を原料とした樹脂であり、テレピン油にはガムテレピン油、ウッドテレピン油、サルフェートテレピン油がある。
【0025】
粘着付与樹脂(C)としては、例えば、ヤスハラケミカル社から商品名「クリアロンP11」にて市販されている水素添加テルペン系樹脂、イーストマンケミカル社から商品名「イーストタックC115W」にて市販されている水素添加C5系石油樹脂、出光興産社から商品名「アイマーブP125」にて市販されている水素添加C5系石油樹脂、荒川化学社から商品名「アルコンP115」にて市販されている水素添加C9系石油樹脂、荒川化学社から商品名「アルコンP125」にて市販されている水素添加C9系石油樹脂、荒川化学社から商品名「KR−612」にて市販されている水素添加ロジン系樹脂などが用いることができる。
【0026】
ホットメルト接着剤中における粘着付与樹脂(C)の含有量は、少なすぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下したり、ホットメルト接着剤の被着体への濡れ性の低下に起因した接着不良を生じたり、又は、ホットメルト接着剤の溶融時の粘度が高くなってホットメルト接着剤の塗布性が低下することがあり、多すぎると、低温条件下にてホットメルト接着剤の柔軟性が低下してホットメルト接着剤の固化物が割れてしまい、ホットメルト接着剤の低温接着性が低下することがあるので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量に対して、30〜60重量%に限定され、35〜55重量%が好ましい。
【0027】
ホットメルト接着剤を構成しているワックス(D)としては、特に限定されず、例えば、フィッシャートロプシュワックスやポリエチレンワックスなどの合成ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然系ワックスなどが挙げられるが、ホットメルト接着剤の低温接着性及び高温接着性に優れていることから、フィッシャートロプシュワックス及びパラフィンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種のワックスを含むことが好ましく、フィッシャートロプシュワックス及びパラフィンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種のワックスを含むことがより好ましく、フィッシャートロプシュワックス及び精製パラフィンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種のワックスを含むことが特に好ましく、フィッシャートロプシュワックスを含むことが最も好ましい。ワックス(D)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0028】
ワックス(D)としては、例えば、サゾール社から商品名「サゾールH−1」にて市販されているフィッシャートロプシュワックス(融点108℃)、日本精蝋社から商品名「HNP−9」にて市販されている精製パラフィンワックス(融点75℃)などを用いることができる。
【0029】
ワックス(D)の数平均分子量は、低すぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下し、高すぎると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が高くなり、ホットメルト接着剤の塗布性が低下し、又は、ホットメルト接着剤のセットタイムが長くなるので、200〜3000に限定され、300〜2500が好ましい。
【0030】
なお、本発明において、ワックス(D)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。即ち、ワックスの数平均分子量は、ワックスを1.0重量%の濃度となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させることにより試料溶液を調製し、この試料溶液を用いて下記条件によるGPC法により、標準ポリスチレンを基準として、屈折率検出計を用いて測定することができる。
【0031】
具体的には、ワックスを1.0重量%の濃度となるようにTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させることにより試料溶液を調製する。
【0032】
測定装置としては、送液装置がLC−9A、屈折率検出計がRID−6A、カラムオーブンがCTO−6A、データ解析装置がC−R4Aからなるシステム(いずれも島津製作所社製)を使用することができる。GPCカラムとしては、例えば、GPC−805(排除限界400万)3本、GPC−804(排除限界40万)1本(以上すべて島津製作所社製)をこの順に接続して使用することができる。又、測定条件は、試料注入量25μL(マイクロリットル)で、溶出液テトラヒドロフラン(THF)、送液量1.0mL/分、カラム温度45℃とする。
【0033】
ワックス(D)の融点は、ホットメルト接着剤の高温接着性に優れ且つセットタイムを短縮化することができるので、60〜120℃が好ましく、70〜110℃がより好ましい。ワックスの融点は、示差走査熱量計を用いて30〜150℃まで昇温速度5℃/分の加熱条件下にて測定された値をいう。示差走査熱量計としては、島津製作所社から商品名「DSC−60」にて市販されている装置を用いることができる。
【0034】
ホットメルト接着剤中のワックス(D)の含有量は、少なすぎると、ホットメルト接着剤の粘度が高くなって塗布性が低下し、又は、ホットメルト接着剤の固化速度が遅くなってセットタイムが長くなり、多すぎると、ホットメルト接着剤の固化物が硬くて脆くなって接着性が低下するので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量に対して、10〜30重量%に限定され、15〜25重量%が好ましい。
【0035】
本発明のホットメルト接着剤には、物性を損なわない範囲内において、例えば、充填剤、増量剤、粘度調整剤、揺変性付与剤、軟化剤(可塑剤)、プロセスオイル、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、糸引き抑制剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0036】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、チバスペシャリティケミカルズ社から商品名「イルガノックス1010」又は商品名「イルガノックス1076」 にて市販されているヒンダードフェノール系酸化防止剤、チバスペシャリティケミカルズ社から商品名「イルガフォス168」にて市販されているホスフィト系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0037】
ホットメルト接着剤中における酸化防止剤の含有量は、ホットメルト接着剤の高温接着性が向上するので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量100重量部に対して0.1〜3重量部が好ましい。
【0038】
本発明のホットメルト接着剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、従来からホットメルト接着剤の製造に一般的に用いられている各種攪拌混練機を用いて、必須成分であるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)、並びに、必要に応じて配合される各種添加剤の各所定量を120〜190℃で加熱溶融して均一に攪拌混練することにより、所望のホットメルト接着剤を製造する方法が挙げられる。