特開2015-120825(P2015-120825A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-120825(P2015-120825A)
(43)【公開日】2015年7月2日
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/08 20060101AFI20150605BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20150605BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20150605BHJP
   C09J 191/06 20060101ALI20150605BHJP
【FI】
   C09J123/08
   C09J153/02
   C09J11/08
   C09J191/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-265404(P2013-265404)
(22)【出願日】2013年12月24日
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】石井 靖之
(72)【発明者】
【氏名】山本 正幸
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA182
4J040BA202
4J040DA002
4J040DA031
4J040DA041
4J040DA102
4J040DM012
4J040DN032
4J040DN072
4J040HB35
4J040JA06
4J040JB01
4J040KA26
4J040KA29
4J040KA31
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA09
4J040MB03
4J040MB05
4J040NA07
(57)【要約】
【課題】 本発明は、60℃を超える高温条件下及び−10℃よりも低い低温条件下における接着性、即ち、高温接着性及び低温接着性に優れていると共に、セットタイムの短いホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】 本発明のホットメルト接着剤は、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)とを含むことを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)とを含むホットメルト接着剤であって、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、上記ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、上記粘着付与樹脂(C)及び上記数平均分子量が200〜3000であるワックスの総重量に対して、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(A)10〜50重量%、上記ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)10〜40重量%、上記粘着付与樹脂(C)30〜60重量%及び上記数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)10〜30重量%を含有していることを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項2】
粘着付与樹脂(C)が水素添加C5系石油樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
ワックス(D)の融点が60〜120℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
ワックス(D)が、フィッシャートロプシュワックス及びパラフィンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種のワックスを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤であって、瞬間接着又は高速接着が可能であることから、包装、製本、木工などの分野において多く用いられている。
【0003】
ホットメルト接着剤は、上述のように様々な用途で用いられている。例えば、醤油、酒などが充填された容器は、通常、輸送や保管のために段ボールに収納された上でホットメルト接着剤を用いて封函される。醤油や酒などが充填された容器が段ボールに収納、封函される時、容器に充填された醤油や酒などの内容物は、通常、高温に加熱された状態であることから、内容物の熱が、ホットメルト接着剤を用いて接着される、段ボールなどの被着体に伝わり、被着体が加熱される場合がある。従って、被着体が高温となっても接着力を維持する高温接着性が要求される。一方、醤油や酒などが充填された容器を収納、封函した段ボールは、冬季には低温で保管、貯蔵されるため、このような低温条件下においても接着力を維持する低温接着性が要求される。
【0004】
しかしながら、ホットメルト接着剤の低温接着性を向上させようとすると高温接着性が低下し、高温接着性を向上させようとすると低温接着性が低下することから、ホットメルト接着剤の高温接着性と低温接着性とを両立させることが難しいという問題点を有している。
【0005】
特許文献1には、エチレン系重合体100重量部に対して、粘着付与樹脂50〜200重量部と、フィッシャートロプシュワックス2〜100重量部とを含有するホットメルト組成物であり、前記フィッシャートロプシュワックスは、融点が80〜95℃の範囲にあり、かつMw/Mnの値が、1.10以下であるホットメルト接着剤が提案され、夏季(特に盛夏期)及び冬季の双方において用いることができ通年使用が可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−323286
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のホットメルト接着剤は、夏季(特に盛夏期)及び冬季の双方において用いることは可能であるものの、醤油や酒などの内容物が高温に加熱された容器を段ボールなどに収納して、段ボールを封函するために用いるなどという更に高い温度(高温条件)下では接着性を維持することができない虞れがある。
【0008】
更に、特許文献1のホットメルト接着剤は、実施例において評価している−10℃を下回る更に厳しい温度条件(低温条件)下にて用いると、十分な接着性を維持することができない虞れがある。
【0009】
又、近年、製造効率の観点から、ホットメルト接着剤を接着部分に塗布してから固化するまでの固化時間(セットタイム)の短縮化が求められており、セットタイムの短いホットメルト接着剤が所望されている。
【0010】
本発明は、60℃を超える高温条件下及び−10℃よりも低い低温条件下における接着性、即ち、高温接着性及び低温接着性に優れていると共に、セットタイムの短いホットメルト接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のホットメルト接着剤は、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)とを含むホットメルト接着剤であって、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、上記ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、上記粘着付与樹脂(C)及び上記数平均分子量が200〜3000であるワックスの総重量に対して、上記エチレン−α−オレフィン共重合体(A)10〜50重量%、上記ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)10〜40重量%、上記粘着付与樹脂(C)30〜60重量%及び上記数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)10〜30重量%を含有していることを特徴とする。
【0012】
本発明のホットメルト接着剤を構成しているエチレン−α−オレフィン共重合体(A)中のα−オレフィン成分としては、特に限定されないが、炭素数が3〜20のα−オレフィンが好ましい。
【0013】
炭素数が3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられ、ホットメルト接着剤に柔軟性を付与し且つ低温接着性を向上させる点から、炭素数が6〜8のα−オレフィンが好ましく、1−オクテンがより好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のα−オレフィン成分は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0014】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)中におけるα−オレフィンの含有量は、少なすぎると、ホットメルト接着剤が硬くなり、ホットメルト接着剤の低温接着性が低下する虞れがあり、多すぎると、ホットメルト接着剤の柔軟性が過度になり、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下することがあるので、3〜40重量%が好ましく、20〜40重量%が好ましく、30〜40重量%がより好ましい。
【0015】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のメルトフローレイト(MFR)は、低すぎると、ホットメルト接着剤の塗工性が低下することがあり、高すぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下することがあるので、50〜2500g/10分が好ましく、150〜2500g/10分がより好ましく、200〜800g/10分が特に好ましい。なお、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して190℃ 、荷重21.18 Nの条件下にて測定された値をいう。
【0016】
エチレン−1−オクテン共重合体としては、シングルサイトメタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−1−オクテン共重合体が、ダウケミカル社から商品名「アフィニティGA1875」( MFR:1250g/10分 )、商品名「アフィニティG A 1900」( MFR:1000g/10分 )、商品名「アフィニティGA1950」(MFR:500g/10分) にて市販されている。
【0017】
ホットメルト接着剤中におけるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)の含有量は、少なすぎると、ホットメルト接着剤の柔軟性が低下し、低温条件下において、ホットメルト接着剤の固化物が割れてしまい、ホットメルト接着剤の低温接着性が低下することがあり、多すぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下し又はホットメルト接着剤の被着体への濡れ性の低下に起因した接着不良を生じるので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量に対して、10〜50重量%に限定され、10〜40重量%が好ましい。
【0018】
本発明のホットメルト接着剤がビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)を含有していることによって、ホットメルト接着剤は優れた柔軟性を付与し、低温条件下での接着性(低温接着性)が向上している。
【0019】
ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)としては、特に限定されず、例えば、スチレン− ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS) 、スチレン− イソプレンゴム−スチレンブロック共重合体(SIS) 、スチレン− エチレン・ブチレン− スチレンブロック共重合体(SEBS) 、スチレン−エチレン・ プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられ、ホットメルト接着剤の高温条件下での接着性が優れていることから、スチレン− エチレン・ブチレン− スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・ プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が好ましく、スチレン− エチレン・ブチレン− スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)は、例えば、クレイトンポリマージャパン社から商品名「クレイトンG1652E」(スチレン含有量:29重量%)、商品名「クレイトンG1660H」(スチレン含有量:30重量%)などにて市販されている熱可塑性ブロック共重合体を用いることができる。
【0020】
ホットメルト接着剤中におけるビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)の含有量は、少なすぎると、低温条件下にてホットメルト接着剤の柔軟性が低下してホットメルト接着剤の固化物が割れてしまい、ホットメルト接着剤の低温接着性が低下することがあり、多すぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下したり、ホットメルト接着剤の被着体への濡れ性の低下に起因した接着不良を生じたり、又は、ホットメルト接着剤の溶融時の粘度が高くなってホットメルト接着剤の塗布性が低下することがあるので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量に対して、10〜40重量%に限定され、10〜30重量%が好ましい。
【0021】
ホットメルト接着剤を構成している粘着付与樹脂(C)としては、特に限定されず、例えば、テルペン系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ロジン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂、水素添加C5系石油樹脂、水素添加C9系石油樹脂、水素添加ロジン系樹脂などが挙げられ、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)との相溶性が向上し、ホットメルト接着剤の低温接着性及び高温接着性が向上するので、水素添加テルペン系樹脂、水素添加C5系石油樹脂、水素添加C9系石油樹脂、水素添加ロジン系樹脂が好ましく、ホットメルト接着剤の低温接着性及び高温接着性がより向上するので、水素添加C5系石油樹脂、水素添加C9系石油樹脂、水素添加テルペン系樹脂が好ましく、水素添加C5系石油樹脂がより好ましい。なお、粘着付与樹脂(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0022】
C5系石油樹脂とは、ナフサの熱分解によって副生されたC5留分を重合して得られる樹脂をいう。
【0023】
C9系石油樹脂とは、ナフサの熱分解によって副生されたC9留分を重合して得られる樹脂をいう。
【0024】
テルペン系樹脂とは、松の木からロジンを得る際に同時に得られるテレピン油を原料とした樹脂であり、テレピン油にはガムテレピン油、ウッドテレピン油、サルフェートテレピン油がある。
【0025】
粘着付与樹脂(C)としては、例えば、ヤスハラケミカル社から商品名「クリアロンP11」にて市販されている水素添加テルペン系樹脂、イーストマンケミカル社から商品名「イーストタックC115W」にて市販されている水素添加C5系石油樹脂、出光興産社から商品名「アイマーブP125」にて市販されている水素添加C5系石油樹脂、荒川化学社から商品名「アルコンP115」にて市販されている水素添加C9系石油樹脂、荒川化学社から商品名「アルコンP125」にて市販されている水素添加C9系石油樹脂、荒川化学社から商品名「KR−612」にて市販されている水素添加ロジン系樹脂などが用いることができる。
【0026】
ホットメルト接着剤中における粘着付与樹脂(C)の含有量は、少なすぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下したり、ホットメルト接着剤の被着体への濡れ性の低下に起因した接着不良を生じたり、又は、ホットメルト接着剤の溶融時の粘度が高くなってホットメルト接着剤の塗布性が低下することがあり、多すぎると、低温条件下にてホットメルト接着剤の柔軟性が低下してホットメルト接着剤の固化物が割れてしまい、ホットメルト接着剤の低温接着性が低下することがあるので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量に対して、30〜60重量%に限定され、35〜55重量%が好ましい。
【0027】
ホットメルト接着剤を構成しているワックス(D)としては、特に限定されず、例えば、フィッシャートロプシュワックスやポリエチレンワックスなどの合成ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然系ワックスなどが挙げられるが、ホットメルト接着剤の低温接着性及び高温接着性に優れていることから、フィッシャートロプシュワックス及びパラフィンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種のワックスを含むことが好ましく、フィッシャートロプシュワックス及びパラフィンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種のワックスを含むことがより好ましく、フィッシャートロプシュワックス及び精製パラフィンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種のワックスを含むことが特に好ましく、フィッシャートロプシュワックスを含むことが最も好ましい。ワックス(D)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0028】
ワックス(D)としては、例えば、サゾール社から商品名「サゾールH−1」にて市販されているフィッシャートロプシュワックス(融点108℃)、日本精蝋社から商品名「HNP−9」にて市販されている精製パラフィンワックス(融点75℃)などを用いることができる。
【0029】
ワックス(D)の数平均分子量は、低すぎると、ホットメルト接着剤の高温接着性が低下し、高すぎると、ホットメルト接着剤の溶融粘度が高くなり、ホットメルト接着剤の塗布性が低下し、又は、ホットメルト接着剤のセットタイムが長くなるので、200〜3000に限定され、300〜2500が好ましい。
【0030】
なお、本発明において、ワックス(D)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。即ち、ワックスの数平均分子量は、ワックスを1.0重量%の濃度となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させることにより試料溶液を調製し、この試料溶液を用いて下記条件によるGPC法により、標準ポリスチレンを基準として、屈折率検出計を用いて測定することができる。
【0031】
具体的には、ワックスを1.0重量%の濃度となるようにTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させることにより試料溶液を調製する。
【0032】
測定装置としては、送液装置がLC−9A、屈折率検出計がRID−6A、カラムオーブンがCTO−6A、データ解析装置がC−R4Aからなるシステム(いずれも島津製作所社製)を使用することができる。GPCカラムとしては、例えば、GPC−805(排除限界400万)3本、GPC−804(排除限界40万)1本(以上すべて島津製作所社製)をこの順に接続して使用することができる。又、測定条件は、試料注入量25μL(マイクロリットル)で、溶出液テトラヒドロフラン(THF)、送液量1.0mL/分、カラム温度45℃とする。
【0033】
ワックス(D)の融点は、ホットメルト接着剤の高温接着性に優れ且つセットタイムを短縮化することができるので、60〜120℃が好ましく、70〜110℃がより好ましい。ワックスの融点は、示差走査熱量計を用いて30〜150℃まで昇温速度5℃/分の加熱条件下にて測定された値をいう。示差走査熱量計としては、島津製作所社から商品名「DSC−60」にて市販されている装置を用いることができる。
【0034】
ホットメルト接着剤中のワックス(D)の含有量は、少なすぎると、ホットメルト接着剤の粘度が高くなって塗布性が低下し、又は、ホットメルト接着剤の固化速度が遅くなってセットタイムが長くなり、多すぎると、ホットメルト接着剤の固化物が硬くて脆くなって接着性が低下するので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量に対して、10〜30重量%に限定され、15〜25重量%が好ましい。
【0035】
本発明のホットメルト接着剤には、物性を損なわない範囲内において、例えば、充填剤、増量剤、粘度調整剤、揺変性付与剤、軟化剤(可塑剤)、プロセスオイル、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、糸引き抑制剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0036】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、チバスペシャリティケミカルズ社から商品名「イルガノックス1010」又は商品名「イルガノックス1076」 にて市販されているヒンダードフェノール系酸化防止剤、チバスペシャリティケミカルズ社から商品名「イルガフォス168」にて市販されているホスフィト系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0037】
ホットメルト接着剤中における酸化防止剤の含有量は、ホットメルト接着剤の高温接着性が向上するので、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)の総重量100重量部に対して0.1〜3重量部が好ましい。
【0038】
本発明のホットメルト接着剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、従来からホットメルト接着剤の製造に一般的に用いられている各種攪拌混練機を用いて、必須成分であるエチレン−α−オレフィン共重合体(A)、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との熱可塑性ブロック共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び数平均分子量が200〜3000であるワックス(D)、並びに、必要に応じて配合される各種添加剤の各所定量を120〜190℃で加熱溶融して均一に攪拌混練することにより、所望のホットメルト接着剤を製造する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のホットメルト接着剤は、上述の構成を有していることから、低温条件及び高温条件下の接着性に優れ且つセットタイムが短く高速接着を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0041】
(実施例1〜7、比較例1〜9)
表1に示した所定量のエチレン−1−オクテン共重合体(A1)(ダウケミカル社製 商品名「アフィニティG A1950 」、 MFR:500g/10分、1−オクテン成分の含有量:36重量%)、エチレン−1−オクテン共重合体(A2)(ダウケミカル社製 商品名「アフィニティGA1900」、 MFR:1000g/10分、1−オクテン成分の含有量:36重量%)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS、クレイトンポリマージャパン社製 商品名「クレイトンG1652E」、スチレン成分の含有量:29重量%)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS、クラレ社製 商品名「セプトン2063」、スチレン成分の含有量:13重量%)、水素添加C5系石油樹脂(イーストマンケミカル社製 商品名「イーストタックC115W」)、水素添加C9系石油樹脂(荒川化学社製 商品名「アルコンP115」)、水素添加テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製 商品名「クリアロンP115」)、水素添加ロジン系樹脂(荒川化学社製 商品名「KR−612」)、フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製 商品名「サゾールワックスH1」、数平均分子量:750、融点:108℃)、精製パラフィンワックス(日本精蝋社製 商品名「HNP−9」、数平均分子量:500、融点:75℃)、ポリプロピレンワックス(リコセン社製 商品名「リコセンPP6102」、数平均分子量:3800、融点:130℃)及び酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ社製 商品名「イルガノックス1010」)を万能攪拌混練機( ダルトン社製 商品名「25AM 型」、攪拌具:フック) に供給して160℃に加熱して完全に溶融させた後に回転数60rpmにて1時間に亘って攪拌、混練してホットメルト接着剤を得た。
【0042】
得られたホットメルト接着剤の接着性及びセットタイムを下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0043】
(接着性)
ホットメルト接着剤の接着性をJAI−7に準拠して測定した。具体的には、K−ライナー段ボール片の一面にホットメルト接着剤を180℃ 、塗布量3 g/mで塗布した。オープンタイム2 秒及びセットタイム2秒とし、K−ライナー段ボール片のホットメルト接着剤塗布面に別のK−ライナー段ボール片をプレス圧7.8kPa にて貼り合わせて積層体を作製した。上記要領でもう一つの積層体を作製した。一方の積層体を−20℃に設定された恒温槽中に供給して12時間に亘って放置した後、−20℃の雰囲気下にてK−ライナー段ボール片同士を手で強制的に剥離させた。他方の積層体を70℃に設定された恒温槽中に供給して12時間に亘って放置した後、70℃の雰囲気下にてK −ライナー段ボール片同士を手で強制的に剥離させた。
【0044】
積層体において、K−ライナー段ボール片同士がホットメルト接着剤を介して接着していた総面積をS1とした。積層体のK−ライナー段ボール片同士を手で強制的に剥離した後、何れか一方のK−ライナー段ボール片が材破した部分の総面積をS2とした。下記式に基づいて材破率(%)を算出した。
材破率(%)=100×S2/S1
【0045】
(セットタイム)
K−ライナー段ボール片の一面にホットメルト接着剤を180℃ 、塗布量2 g/mで塗布した。オープンタイム2 秒とし、K−ライナー段ボール片のホットメルト接着剤塗布面に別のK−ライナー段ボール片をプレス圧7.8kPa にて貼り合わせて積層体を複数枚、作製した。
【0046】
25℃の雰囲気中において積層体のK−ライナー段ボール片同士を手で強制的に剥離させ、接着性の測定時と同様の要領で材破率を算出し、材破率が80%となるセットタイムを測定した。
【0047】
【表1】